(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20220127BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220127BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220127BHJP
【FI】
G02B5/02 B
B32B27/18 Z
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2020529207
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2018014841
(87)【国際公開番号】W WO2019107923
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160635
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0148331
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クワンソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ウ・シン
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010217(WO,A1)
【文献】特開2009-217065(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/18 - 27/26
G02B 1/10 - 1/18
G02B 5/02 - 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層とを含み、
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が0.5~5μmの金属微粒子および平均粒径が0.5~5μmの無機酸化物微粒子を含み、
前記無機酸化物微粒子の総含有量は光硬化性官能基を含むバインダー100重量部に対して5~30重量部の範囲であり、
下記計算式1を満たす、
ディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式1]
-0.25G
*+87.5≦Tt≦-0.05G
*+89.5
上記計算式1において、
G
*は、JIS Z 8741基準により測定された60(d)光沢度値が10以上50以下であり、
Ttは、JIS K 7361基準により測定された透過度値が80以上である。
【請求項2】
下記計算式2で表される相対視認性評価値が3以上である、請求項1に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式2]
視認性評価値=B1/A1
上記計算式2において、
A1は、JIS K 7361基準により測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準により測定されたヘイズ値が20~25であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線45゜の方向からレーザ光を照射したとき、正面から測定した輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線45゜の方向から同じレーザ光を照射したとき、正面から測定した輝度値である。
【請求項3】
下記計算式3で表される、輝度比値が80%以上である、請求項1または2に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式3]
輝度比=(B2/A2)×100
前記計算式3において、
A2は、JIS K 7361基準により測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準により測定されたヘイズ値が20~25であるフィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面から測定した輝度値であり、
B2は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面から測定した輝度値である。
【請求項4】
下記計算式4で表される白濁度比値が3.3以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式4]
白濁度比=B3/A3
前記計算式4において、
A3は、JIS K 7361基準により測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準により測定されたヘイズ値が20~25であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、9lxの条件で、正面7cmの高さから測定した輝度値(cd/m
2)であり、
B3は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、9lxの条件で、正面7cmの高さから測定した輝度値(cd/m
2)である。
【請求項5】
前記金属微粒子は、アルミニウム、金、銀、マグネシウム、白金、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、スズおよびクロムからなる群より選ばれた1種以上の金属を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項6】
前記無機酸化物微粒子は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、インジウム、スズ、亜鉛、バリウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた1種以上の無機元素の酸化物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項7】
前記金属微粒子は、前記光硬化性樹脂層のバインダー成分100重量部に対して、0.1~10重量部で含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項8】
下記計算式5を満たす、請求項1から7のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式5]
1<MW×t<50
上記計算式5において、
MWは、前記光硬化性樹脂層内の前記金属微粒子の重量比率(w%)であり、
tは、前記光硬化性樹脂層の乾燥厚さ(μm)である。
【請求項9】
前記光硬化性樹脂層内に含まれている前記金属微粒子と前記無機酸化物微粒子の重量比率は1:100~1:2である、請求項1から8のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項10】
JIS K 7136基準により測定された内部ヘイズ値は25以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項11】
500g荷重でHB以上の鉛筆硬度を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項12】
前記基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate,EVA)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer,COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂、およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項13】
ディスプレイパネルおよび請求項1から12のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年11月28日付の韓国特許出願第10-2017-0160635号および2018年11月27日付の韓国特許出願第10-2018-0148331号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置に関する。
【0003】
より詳しくは、光硬化性樹脂層内に分散した金属微粒子および無機酸化物微粒子を含み、レーザポインタに対する視認性を高めることができ、優れた物理的、光学的特性を示しながらも、特にレーザポインタ光に対する正反射現象を防止できるディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0004】
講義や会議、発表などでプレゼンテーションを行う場合、ディスプレイ装置で資料画像を再生し、資料画像の上にレーザポインタを用いてスクリーンなどを指しながらプレゼンテーションを行う形態が一般的である。
【0005】
従来は、ビームプロジェクタをスクリーンや壁に投影してプレゼンテーションを行う場合が多かった。しかし、プロジェクタ方式は、コントラスト比と画質が良くない短所があった。最近では、LCD、PDP、OLEDなど多様な駆動方式の大型ディスプレイパネルが多く供給され、ディスプレイ自体に直接画像を表示してプレゼンテーションを行うことが可能になった。
【0006】
しかし、ディスプレイ装置は発光特性があり、特定角度の正反射以外にレーザ光を散乱させる因子がないので、レーザポインタの視認性が顕著に低下する短所がある。
【0007】
したがって、過度な追加工程なしでディスプレイ装置でレーザポインタの視認性を改善する方法に対する開発が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、LCD、PDP、OLEDなどのディスプレイパネルにおいて、低コストでレーザポインタに対する視認性を向上させることができ、かつ優れた物理的、光学的特性を示すことができるディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
基材と、
前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層とを含み、
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が0.5~5μmの金属微粒子および平均粒径が0.5~5μmの無機酸化物微粒子を含み、
下記計算式1を満たす、
ディスプレイパネル用視認性改善フィルムを提供する。
【0010】
[計算式1]
-0.25G*+87.5≦Tt≦-0.05G*+89.5
【0011】
上記計算式1において、
G*は、JIS Z 8741基準により測定された60(d)光沢度値が10以上50以下であり、
Ttは、JIS K 7361基準により測定された透過度値が80以上である。
【0012】
また、本発明は、ディスプレイパネルおよび上述したディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムによれば、ディスプレイ装置上で低下したレーザポインタの視認性を顕著に向上させることができる。
【0014】
また、このような効果は、ディスプレイの駆動方式やパネル内部のカラーフィルタ、積層構造などに対する変更なくディスプレイパネルの外部にフィルム形態で適用することによって得ることができるので、過度な工程変更やコスト増加を必要としないから生産コストを節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、
基材と、
前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層とを含み、
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が0.5~5μmの金属微粒子および平均粒径が0.5~5μmの無機酸化物微粒子を含み、
下記計算式1を満たす、
ディスプレイパネル用視認性改善フィルムが提供される。
【0016】
[計算式1]
-0.25G*+87.5≦Tt≦-0.05G*+89.5
【0017】
上記計算式1において、
G*は、JIS Z 8741基準により測定された60(d)光沢度値が10以上50以下であり、
Ttは、JIS K 7361基準により測定された透過度値が80以上である。
【0018】
また、本発明のディスプレイ装置は、ディスプレイパネルおよび上述したディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含む。
【0019】
本明細書において「上面」という用語は、フィルムがディスプレイパネルに取り付けられたときに視聴者側に向かうように配置された面を意味し、「上部」は、視聴者側に向かう方向を意味する。逆に、「下面」または「下部」は、フィルムがディスプレイパネルに取り付けられたとき、視聴者の反対側に向かうように配置された面または方向を意味する。
【0020】
本明細書において、単にヘイズ値、あるいは全体ヘイズ値とは、フィルムに他の処理をせず、それ自体に対して測定したヘイズ値(Ht)を意味する。このような全体ヘイズ値(Ht)は、フィルムの表面凹凸から起因するヘイズ値とフィルム内部に含まれている粒子などから起因するヘイズ値の合計によって示す。
【0021】
本明細書において、内部ヘイズ値(Hi)とは、上述のように、フィルム内部に含まれている粒子などから起因するヘイズ値を意味する。具体的には、このような内部ヘイズ値は、表面に凹凸が形成されたフィルムにおいて、表面凹凸から起因する要因、つまり、表面ヘイズを除去するために、フィルム表面に透明な粘着フィルムを付着して表面凹凸を除去した後、測定したヘイズ値を意味する。
【0022】
また、本明細書において使われる用語は、単に例示的な実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0023】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものとして言及される場合は、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上にさらに形成され得ることを意味する。
【0024】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0025】
以下、本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルム、およびそれを含むディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、
基材と、
前記基材の少なくとも一面に備えられる光硬化性樹脂層とを含み、
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が0.5~5μmの金属微粒子および平均粒径が0.5~5μmの無機酸化物微粒子を含み、
下記計算式1を満たす、
ディスプレイパネル用視認性改善フィルムが提供される。
【0027】
[計算式1]
-0.25G*+87.5≦Tt≦-0.05G*+89.5
【0028】
上記計算式1において、
G*は、JIS Z 8741基準により測定された60(d)光沢度値が10以上50以下であり、
Ttは、JIS K 7361基準により測定された透過度値が80以上である。
【0029】
本発明のコーティング組成物を用いて形成されたディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、レーザポインタに使われる波長領域の光に対して特徴的な散乱特性を示すことができ、レーザポインタの視認性向上に寄与することができる。
【0030】
このようなディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、光硬化性官能基を含むバインダーの硬化物、および前記光硬化性バインダーの内部に分散した金属微粒子および無機酸化物微粒子を含む。
【0031】
一般的に使われるディスプレイパネル用フィルムとしては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)などのポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate,EVA)などのポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer,COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)などからなる基材が挙げられる。
【0032】
前記基材の中でも、特にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが光学的特性に優れているので多く使われている。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記光硬化性樹脂層は、基材の一面あるいは両面に形成することもできる。特に、前記樹脂層を基材の上部、すなわち視聴者方向に向かうように形成する場合、前記樹脂層はハードコート層の役割を兼ねることになる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、基材上にコーティングおよび紫外線硬化して光硬化性樹脂層を形成し、ディスプレイパネルの少なくとも一面上に積層してディスプレイパネル用視認性改善フィルムとして使用できるコーティング組成物を使用する。
【0035】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを製造するためのコーティング組成物は、光硬化性官能基を含むバインダー;前記バインダー内に分散しており、平均粒径が0.5~5μmの金属微粒子;また前記バインダー内に分散しており、平均粒径が0.5~5μmの無機酸化物微粒子;光重合開始剤;および溶媒などを含むことができる。
【0036】
前記光硬化性官能基を含むバインダーは、紫外線によって重合反応を起こすことができる不飽和官能基を含む化合物であれば、特に制限されないが、光硬化性官能基としては、(メタ)アクリレート基、アリル基、アクリロイル基、またはビニル基を含む化合物であり得る。本発明の一実施形態によれば、前記光硬化性官能基を含むバインダーは、多官能アクリレート系モノマー、多官能アクリレート系オリゴマー、および多官能アクリレート系弾性高分子からなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0037】
本発明の明細書でアクリレート系とは、アクリレートだけでなくメタクリレート、またはアクリレートやメタクリレートに置換基が導入された誘導体をすべて意味する。
【0038】
前記多官能アクリレート系モノマーは、アクリレート系官能基を2個以上含むモノマーを意味する。より具体的には、例えば、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(PETA)、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられるが、本発明のコーティング組成物はこれらに限定されるものではない。前記多官能アクリレート系モノマーは、互いに架橋されて保護フィルムに一定の鉛筆強度と耐摩耗性を付与する役割をする。
【0039】
前記多官能アクリレート系モノマーは、単独でまたは互いに異なる種類を組み合わせて使用することができる。
【0040】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、アクリレート官能基を2個以上含むオリゴマーであり、重量平均分子量が約1,000~約10,000g/mol、または約1,000~約5,000g/mol、または約1,000~約3,000g/molの範囲を有することができる。
【0041】
また、本発明の一実施形態によれば、前記多官能アクリレート系オリゴマーは、ウレタン(urethane)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、プロピレンオキシド(propylene oxide)、またはカプロラクトン(caprolactone)中の1種以上に変性されたアクリレート系オリゴマーであり得る。前記変性された多官能アクリレート系オリゴマーを使用する場合、変性によって前記多官能アクリレート系オリゴマーに柔軟性がさらに付与されて保護フィルムのカール特性および可撓性が増加し得る。
【0042】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、単独でまたは互いに異なる種類を組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記多官能アクリレート系弾性高分子は柔軟性と弾性に優れ、アクリレート官能基を2個以上含む高分子であり、重量平均分子量が約100,000~約800,000g/mol、または約150,000~約700,000g/mol、または約180,000~約650,000g/molの範囲を有することができる。
【0044】
前記多官能アクリレート系弾性高分子を含むコーティング組成物を用いて形成した保護フィルムは、機械的物性を確保しながらも高い弾性または柔軟性を確保することができ、カール(curl)またはクラック(crack)の発生も最少化することができる。
【0045】
前記多官能アクリレート系弾性高分子のさらに他の例としては、ウレタン系アクリレート高分子が挙げられる。前記ウレタン系アクリレート高分子は、アクリルポリマーの主鎖にウレタン系アクリレートオリゴマーが側鎖として連結されている形態を有する。
【0046】
一方、本発明の一実施形態によれば、前記コーティング組成物は金属微粒子を含み、レーザポインタに対する光散乱特性を示すことができる。前記コーティング組成物が金属微粒子を含む場合、それを用いて硬化した光硬化性樹脂層は、レーザポインタに用いられるレーザ光を効果的に反射/散乱させ、視認性を高めることができる。
【0047】
一般的に、ディスプレイパネル用フィルムなどを製造する場合、コーティング組成物などに有機粒子あるいは酸化金属などの無機微粒子を使用する場合が多いが、これは当該粒子が高い透過率を有しているからである。
【0048】
このような透過型粒子などは、主に屈折と回折によって光散乱を起こす反面、金属粒子は光を反射させる。より具体的には、透過型粒子の場合、光が通過する経路に沿って回折と屈折による光散乱が連続して起こり、これにより、光が広がり曇った光が現れるが、金属粒子の場合には光を透過させず反射によって光散乱が発生するので、光の経路に沿って散乱が連続して発生せず、光の広がり現象が発生しなくなる。
【0049】
バインダーとの屈折率の差が大きい金属酸化物系無機粒子を用いる場合、高い光散乱効果を得ることができるが、粒子の高い透過率によってコントラスト比が大きく低下する短所がある。
【0050】
ディスプレイ装置のコントラスト比は、ディスプレイパネルから出る画像の明るさとフィルムによる明るさの差に起因するものであるが、透過型粒子を使用する場合、粒子によってフィルム内の明るさが増加し、結果としてパネルとフィルムとの間の明るさの差が小さくなるので、コントラスト比が低下する。
【0051】
したがって、本発明の実施形態によるディスプレイパネル用フィルムは、金属微粒子を使用し、レーザポインタ光の視認性を向上させることができながらも、同時に高いコントラスト比を実現することができる。
【0052】
前記金属微粒子の平均粒径は、光の散乱効果を最適化する側面において0.5μm以上であり得、ヘイズおよびコーティングの厚さを適切にするための側面において5μm以下であり得る。より好ましくは約0.5~約3μm、または約1~約3μmの粒子であり得る。
【0053】
前記金属微粒子の平均粒径が小さすぎると、光の散乱によるレーザポインタ光に対する視認性改善効果が微小であり、前記金属微粒子の平均粒径が大きすぎると、フィルムの表面に突出を形成して透明度、透過度など光学的物性を低下させる要因になる。
【0054】
前記金属微粒子の平均粒径は、前記樹脂層に含まれる全体金属微粒子の粒径を確認して求めることができ、前記金属微粒子の粒径は、前記樹脂層の断面などで確認可能である。また、前記微粒子の平均粒径は、前記樹脂層の製造時に使用される全体金属微粒子の粒径やこれらの平均粒径によっても確認可能である。
【0055】
前記金属微粒子は、0.5~5μmの平均粒径を有する個別微粒子群(group)であり得、このような群(group)に含まれる個別微粒子は0.1~25μmの粒径を有することができる。より具体的には、前記群(group)に含まれる個別微粒子の95%、または99%が0.1~25μmの粒径を有することができる。
【0056】
このような条件を満たす金属は、より具体的な例として、アルミニウム、金、銀、マグネシウム、白金、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、スズおよびクロムからなる群より選ばれた1種以上の金属、またはこれらの合金などが挙げられるが、本発明は必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、前記光硬化性官能基を含むバインダーの総重量を100重量部とすると、前記金属微粒子を約0.1~約10重量部、好ましくは約0.5~約10重量部、または約0.5~約5重量部で含み得る。
【0058】
前記金属微粒子が過度に少なく含まれると、これによる当該波長での光反射効果が微小であり、レーザポインタの視認性向上効果が充分でなく、過度に多く含まれる場合、ディスプレイ装置の色再現性および輝度が低下し、コーティング組成物の他の物性が低下し得るので、このような観点から上記範囲で含まれることが好ましい。
【0059】
一方、このような金属微粒子は単独で使用することもできるが、光硬化性樹脂層に混合されたとき、分散性を高めるための側面において分散液にあらかじめ分散している形態で使用することがより好ましい。
【0060】
また、本発明の一実施形態によれば、前記コーティング組成物は、無機酸化物微粒子をさらに含み、レーザポインタに対する光散乱特性を示すことができる。前記コーティング組成物が無機酸化物微粒子を含む場合、それを用いて硬化した光硬化性樹脂層は光を散乱させる特徴を有して、レーザポインタに用いられるレーザ光の散乱により、視認性を高める効果を奏することができる。
【0061】
前記無機酸化物微粒子の平均粒径は、光の散乱効果を最適化する側面において0.05μm以上であり得、ヘイズおよびコーティングの厚さを適切にするための側面において10μm以下、より具体的には、前記無機酸化物微粒子は、平均粒径が約1~約10μm、好ましくは約1~約5μm、より好ましくは約1~約3μmの粒子であり得る。
【0062】
前記無機酸化物微粒子の平均粒径が小さすぎると、光の散乱によるレーザポインタ光に対する正反射防止効果が微小であり、平均粒径が10μmを超えると、ヘイズが増加するという問題が発生することがある。
【0063】
前記無機酸化物微粒子の平均粒径は、前記樹脂層に含まれる全体無機酸化物微粒子の粒径を確認して求めることができ、前記無機酸化物微粒子の粒径は、前記樹脂層の断面などで確認可能である。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、前記樹脂層の製造時に使用される全体無機酸化物微粒子の粒径やこれらの平均粒径によっても確認可能である。
【0064】
前記無機酸化物微粒子は、0.5~5μmの平均粒径を有する個別微粒子群(group)であり得、このような群(group)に含まれる個別微粒子は0.1~25μmの粒径を有することができる。より具体的には、前記群(group)に含まれる個別微粒子の95%、または99%が0.1~25μmの粒径を有することができる。
【0065】
前記無機酸化物微粒子は、眩しさ防止フィルムの形成のために使用される種類であれば、その構成に制限なく使用することができる。
【0066】
例えば、前記無機酸化物微粒子は、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、インジウム、スズ、亜鉛、バリウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた1種以上の無機元素の酸化物を使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
前記無機酸化物微粒子の総含有量は、前記光硬化性官能基を含むバインダー100重量部に対して、約1~約30重量部、好ましくは約5~約30重量部、より好ましくは約5~約20重量部の範囲であり得る。
【0068】
前記無機酸化物微粒子の総含有量が少なすぎると、外部凹凸による表面ヘイズ値が十分に具現されず、多すぎるとコーティング組成物の粘度が高くなってコーティング性が不良になり、外部散乱によるヘイズ値が大きすぎてコントラスト比(contrast ratio)が低下することができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前記無機酸化物微粒子は、前記光硬化性官能基を含むバインダーの硬化樹脂との屈折率の差が約0.1以下、好ましくは約0.07以下、より好ましくは約0.05以下であり得る。前記屈折率の差が大きすぎると、内部散乱が増加してヘイズ値が増加する反面、コントラスト比が低下することができる。
【0070】
一方、前記光硬化性樹脂層内に含まれている前記金属微粒子および前記無機酸化物微粒子の重量比率は約1:100~約1:2、または約1:25~約1:2であることが好ましい。
【0071】
上記の範囲から外れて、無機微粒子が過度に多く含まれる場合、コントラスト比および視野角の低下が発生することができ、金属微粒子が過度に多く含まれる場合、輝度およびコントラスト比が低下する問題が発生することができる。
【0072】
本発明のコーティング組成物に含まれる前記光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルマート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノンジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、現在の市販されている商品としは、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。これら光重合開始剤は、単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、前記光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、全体コーティング組成物の物性を阻害せずとも、効果的な光重合を達成するために前記光硬化性官能基を含むバインダーの総重量を100重量部とすると、前記光重合開始剤を約0.1~約10重量部で含み得る。
【0074】
本発明のコーティング組成物に含まれる前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので特に制限しないが、前記光硬化性官能基を含むバインダー100重量部に対して約50~約200重量部、好ましくは約100~約200重量部で含み得る。前記有機溶媒が上記の範囲内にあると適切な流動性および塗布性を有することができる。
【0076】
一方、本発明のコーティング組成物は、上述した成分の他にも界面活性剤、酸化防止剤、UV安定剤、レベリング剤、防汚剤など本発明の属する技術分野で通常使用される添加剤をさらに含み得る。また、その含有量は、本発明のコーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので特に制限しないが、例えば、全体コーティング組成物100重量部に対して約0.1~約10重量部で含まれ得る。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記コーティング組成物を用いて形成した光硬化性樹脂層において、樹脂層の厚さおよび内部に分散した金属微粒子は、下記のような計算式5を満たすことが好ましい。
【0078】
[計算式5]
1<MW×t<50
【0079】
上記計算式5において、
MWは、前記光硬化性樹脂層内の前記金属微粒子の重量比率(w%)であり、
tは、前記光硬化性樹脂層の乾燥厚さ(μm)である。
【0080】
金属微粒子は、上述のように、レーザポインタ光を透過させず、反射によって光散乱が発生するので、このような特性は光硬化性樹脂層の単位面積当たり含まれる金属微粒子の量により調節することができる。したがって、光硬化性樹脂層全体に対する金属微粒子の単純含有量だけでなく、コーティング層の厚さも重要な要素として作用することができる。
【0081】
このような側面において、光硬化性樹脂層内の金属微粒子の重量比率(w%)と前記光硬化性樹脂層の乾燥厚さは、上記のような計算式5を満たすことが好ましい。
【0082】
上記計算式5を満たさない場合、光反射および散乱効果が低下して、レーザポインタの視認性向上効果が不十分になるか、ディスプレイ装置の色再現性および輝度が低下し、フィルムの機械的物性が低下することができる。
【0083】
また、光硬化性樹脂層の乾燥厚さは約1μm以上に、例えば、約1~約10μm、または約1~約5μm、または約3~約5μmの厚さを有することができ、このような厚さの範囲内で適切な光学物性および物理的特性を示すことができる。
【0084】
前記のような本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、透明のプラスチック基材にコーティング組成物を塗布し、光硬化させて形成することができる。
【0085】
コーティング組成物およびそれを構成する各成分に対する具体的な説明および例示は、上述したとおりである。
【0086】
前記コーティング組成物を塗布する方法は、本発明の属する技術分野で用いられる方法であれば特に制限されず、例えばバーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング方式などを用いることができる。
【0087】
次に、塗布されたコーティング組成物に紫外線を照射して光硬化反応を行うことによって、保護フィルムを形成することができる。前記紫外線を照射する前にコーティング組成物の塗布面を平坦化し、コーティング組成物に含まれた溶媒を揮発させるために乾燥する過程をさらに行い得る。
【0088】
前記紫外線の照射量は、例えば約20~約600mJ/cm2であり得る。紫外線照射の光源としては、本発明の属する技術分野で用いられるものであれば特に制限されず、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト(black light)蛍光ランプなどを用いることができる。
【0089】
前記本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、上述したように特定の金属微粒子および無機酸化物微粒子を含み、液晶ディスプレイでレーザポインタによって入射されるレーザ光を効果的に反射させることができ、レーザポインタの視認性を高めることができながらも、輝度とコントラスト比が高く、特に正反射防止特性を実現することができるディスプレイ装置を提供することができる。
【0090】
具体的には、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式1を満たす。
【0091】
[計算式1]
-0.25G*+87.5≦Tt≦-0.05G*+89.5
【0092】
上記計算式1において、
G*は、JIS Z 8741基準により測定された60(d)光沢度値が10以上50以下であり、
Ttは、JIS K 7361基準により測定された透過度値が80以上である。
【0093】
上記計算式1を満たす場合、ディスプレイパネルでレーザポインタによって入射されるレーザ光を効果的に反射させることができ、レーザポインタの視認性を高めることができながらも、正反射を一定程度に制限することによって、レーザポインタ光が正反射され、画像を眺める視聴者の目に直接入射することを効果的に防ぐことができる。
【0094】
そして、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式2で表される相対視認性評価値が約3以上、好ましくは約4以上であり得る。
【0095】
[計算式2]
視認性評価値=B1/A1
【0096】
上記計算式2において、
A1は、JIS K 7361基準により測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準により測定されたヘイズ値が20~25であるフィルム、より好ましくは透過度が90~95であり、ヘイズ値が22~25であるフィルム、さらに好ましくは透過度が約90であり、ヘイズ値が約22であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線45゜の方向からレーザ光を照射したとき、正面から測定した輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線45゜の方向から同じレーザ光を照射したとき、正面から測定した輝度値である。
【0097】
上記のように、本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、一般的なUV硬化型コーティング層を用いる場合と比べると、金属微粒子による散乱/反射光で、照射前の輝度に比べて、輝度が約50%以上、好ましくは約60%以上上昇する効果を実現することができ、これにより、レーザポインタの視認性を顕著に向上させることができる。
【0098】
また、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式3で表される輝度比値が約80%以上、好ましくは約85~約95%であり、優れた光学的特性を有することができる。
【0099】
[計算式3]
輝度比=(B2/A2)×100
【0100】
前記計算式3において、
A2は、JIS K 7361基準により測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準により測定されたヘイズ値が20~25であるフィルム、より好ましくは透過度が90~95であり、ヘイズ値が22~25であるフィルム、さらに好ましくは透過度が約90であり、ヘイズ値が約22であるフィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面から測定した輝度値であり、
B2は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面から測定した輝度値である。
【0101】
また、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式4で表される白濁度比値が3.3以下、好ましくは約3以下である。
【0102】
[計算式4]
白濁度比=B3/A3
【0103】
前記計算式4において、
A3は、JIS K 7361基準により測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準により測定されたヘイズ値が20~25であるフィルム、より好ましくは透過度が90~95であり、ヘイズ値が22~25であるフィルム、さらに好ましくは透過度が約90であり、ヘイズ値が約22であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、9lxの条件で、正面7cmの高さから測定した輝度値(cd/m2)であり、
B3は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、9lxの条件で、正面7cmの高さから測定した輝度値(cd/m2)である。
【0104】
そして、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、JIS K 7361により測定された内部ヘイズ値が約25%以下、好ましくは約15%以下、または約5~約15%であり得る。
【0105】
光学フィルムなどにおいて、フィルムの内部に含まれる導入粒子に応じて透過率およびヘイズ特性が変化するが、一般的には類似の光学特徴を有する光散乱粒子が多く含まれるほど透過度が低くなり、ヘイズが増加する傾向を示す。
【0106】
しかし、使用する粒子の種類によっては透過度とヘイズの特徴的な関係を有することができる。特に金属微粒子は、樹脂層に含まれたとき、上述したような反射特性により光に対する透過率を低くしながらも、一般的に使用される有機微粒子、または無機酸化物微粒子に比べて低いヘイズ値を示し得るため、特に、透過型光散乱粒子を使用する場合と比べると、同一の透過率値を示しても相対的に低いヘイズ値を有し得る特徴がある。
【0107】
特に、光透過率値は、粒子含有量に応じて変化するが、透過率が高すぎると光を散乱または反射させるための粒子の量が絶対的に不足して、適切な視認性を実現できない問題が発生し得、透過率が低すぎると視認性は良好であるが、コントラスト比および輝度低下問題が発生して、ディスプレイで実現しようとする画像の画質が低下する問題が発生し得る。
【0108】
したがって、上述した透過率(Tt)の範囲および、特定の金属微粒子および無機酸化物微粒子を使用することに起因する特徴的な内部ヘイズ値を限定して、レーザポインタの使用に対して優れた視認性を有しながらも、同時に優れたコントラスト比を実現することができる。
【0109】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムにおいて、前記樹脂層が形成される基材は、通常ディスプレイパネル用として使用されるガラス、または透明のプラスチック樹脂を使用することができる。より具体的には、本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)などのポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate,EVA)などのポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer,COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)などが挙げられる。
【0110】
好ましくは、前記基材は、トリアセチルセルロース(TAC)を含むフィルムであり得る。
【0111】
前記基材の厚さは特に限定されないが、フィルムの強度および他の物性を満たすことができる範囲であって、約20~約100μm、または約20~約60μmの厚さを有する基材を用いることができる。
【0112】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、500g荷重での鉛筆軽度がHB以上、または1H以上、または2H以上であり得る。
【0113】
また、摩擦試験機にスチールウール(steel wool)#0を取り付けた後、200g荷重、または300g荷重、または400g荷重で10回往復させる場合にスクラッチが発生しない耐摩耗性を示すことができる。
【0114】
本発明の一実施形態によれば、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、基材;前記基材の上部に備えられる樹脂層;および前記樹脂層の上部に形成される反射防止層および防眩層のうちいずれか一つ以上の機能性コーティング層をさらに含む形態であり得る。
【0115】
反射防止層は、既存のディスプレイパネル用フィルムにおける反射防止効果に加え、レーザポインタの使用時、正反射を防止することによってレーザポインタ光が正反射し、画像を眺める視聴者の目に直接入射することを効果的に防ぐことができる。このような反射防止層は、既存のディスプレイ装置用フィルム、あるいは偏光板用光学フィルムなどに使われている通常の反射防止層、具体的には、例えば、屈折率が異なる多数の層を形成させて光の干渉を用いる反射防止層や反射防止コーティング(Anti reflection,AR)などを特に制限なく用いることができる。
【0116】
また、前記防眩層は、表面の凹凸によりレーザポインタの使用時、レーザポインタ光を乱反射させることによって、画像を眺める視聴者の目に直接正反射光が入射することを効果的に防ぐことができる。このような防眩層は、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて表面に凹凸を付与する方法(Anti-glare,AG)などを特に制限なく使用することができる。
【0117】
上述した反射防止層および防眩層などを備える場合、このような機能性コーティング層は、フィルムの最上部に位置することが好ましい。
【0118】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、ディスプレイパネルおよび上述したディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0119】
この時、前記ディスプレイパネルは、駆動方式や構造などに特に制限されず、具体的には、LCDパネル、PDPパネル、あるいはOLEDパネルにもすべて適用され得る。
【0120】
前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムとディスプレイパネルは、別途の接着剤などを使用してラミネーションすることにより接着させ得る。使用可能な接着剤としては当該技術分野に知られているものであれば特に制限されない。例えば、水系接着剤、一液型または二液型のポリビニルアルコール(PVA)系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレンブタジエンゴム系(SBR系)接着剤、またはホットメルト型接着剤などがあるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0121】
また、前記樹脂層が粘着層の役割を兼ねることは、上述の通りであり、樹脂層が粘着層の役割を兼ねない場合には、前記樹脂層が形成されていない基材面がディスプレイパネル側に付着するようにし、前記樹脂層は外側に位置するように積層して、レーザポインタが入射する側を直接対面する構造であることが好ましい。
【0122】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、発明の権利範囲はこれによって定められない。
【0123】
<実施例>
金属微粒子:平均粒径が約2μmのアルミニウム粒子をトルエンに分散させて、固形分20w%の分散液を準備した(以下、金属分散液)。
【0124】
無機酸化物微粒子:Nipsil SS-50B(12.6重量部)、Nipsil SS-50F(6.3重量部)(Nippon Silica Industry、Ltd.)をトルエン(81.1重量部)に分散させて、固形分18.9%の分散液を準備した(以下、無機分散液)。
【0125】
バインダー:ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート23.5重量部(以下、PETA)、6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーであるEBECRYL1290(Allnex社製)23.5重量部(以下、6UA)、光重合開始剤としてIrgacure184 3.5重量部(以下開始剤)、添加剤としてMegafaceF-477(製造会社:株式会社DIC)0.5重量部(以下添加剤)、有機溶媒として2-BuOH24.5重量部とメチルエチルケトン24.5重量部(以下MEK)を混合して、100重量部のバインダー組成物を準備した(以下、バインダー組成物)。
【0126】
前記金属微粒子分散液、無機酸化物微粒子分散液、およびバインダーを下記表1の組成により混合して、コーティング組成物を製造した。#8barを用いて基材のTAC(厚さ:80μm)上にコーティングし、90℃で2分30秒間乾燥した後、水銀ランプを利用して硬化して(約200mj/cm2)、平均乾燥厚さが5μmのディスプレイパネル用視認性改善フィルムを製造した。
【0127】
【0128】
比較例16:LG ChemのA25フィルムを比較例のものとして準備した。
【0129】
Tt値の測定:
前記実施例および比較例で製造したディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、Murakami社製のHM-150 haze meterを用いて、JIS K 7361基準により透過度(Tt)値を測定した。
【0130】
ヘイズ値の測定:
Murakami社製のHM-150 haze meterを用いて、JIS K 7136基準により前記実施例および比較例で製造したディスプレイパネル用視認性改善フィルムのヘイズ値を測定した。
【0131】
内部ヘイズ(Hi)値は、表面凹凸に起因する値を排除するために、前記実施例および比較例で製造されたディスプレイパネル用視認性改善フィルム上部に粘着フィルム(LG化学社製、S7)をラミネーティングした後、保護フィルムを剥がしてフィルム表面の凹凸を除去した後、測定した。
【0132】
輝度比の測定:
前記比較例16においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムを、粘着フィルムを用いてガラススライドに接合し、電源が入ったLCDパネルの上面に置いて、正面5.5cmの高さから測定した輝度値を求め(A2)、
実施例および比較例においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、同様の方法によってガラススライドに接合し、同じ条件で測定した輝度値を求めた後(B2)、
各実施例および比較例で測定した輝度値をマッチングして、輝度比を計算した(測定装置:Konica Minolta社製、CA-210,LCDパネル:4.7インチ、Gray scale255,297.2cd/m2)。
【0133】
測定は、3.5lx以下の暗室で行った。
【0134】
レーザポインタの視認性評価:
前記比較例16においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムを、粘着フィルムを用いてガラススライドに接合し、ブラックアクリル板上に置いて、法線45゜の方向から535nmレーザを照射したとき、正面から測定した輝度値を求め(A1)、
実施例および比較例においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、同様の方法によってガラススライドに接合し、同じ条件で測定した輝度値を求めた後(B1)、
各実施例および比較例で測定した輝度値をマッチングして、視認性評価値を計算した(測定装置:Konica Minolta社製、CA-210,レーザポインタ:3M社製、LP-7000)。
【0135】
測定は、3.5lx以下の暗室で行った。
【0136】
白濁度比の測定:
前記比較例16においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムを、粘着フィルムを用いてガラススライドに接合し、ブラックアクリル板上に置いて、正面7cmの高さから輝度値を測定し(A3)、
実施例および比較例においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、同様の方法によってガラススライドに接合し、同じ条件で測定した輝度値を求めた後(B3)、
各実施例および比較例で測定した輝度値をマッチングして、白濁度比を計算した(測定装置:Konica Minolta社製、CA-210)。
【0137】
測定は、9lxの環境下で行った。
【0138】
60度(degree)gloss値の測定:
前記実施例および比較例においてのディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、JIS Z 8741基準により、Gloss meter(BYK Gardner社製、micro-tri-gloss4520)を用いて測定した。
【0139】
前記測定結果を下記表2に整理した。
【0140】
【0141】
上記表2を参照すると、本発明の一実施形態によるディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、正反射を抑制して、視聴者の不便を解消できながらも、レーザポインタ光に対する視認性を非常に効果的に向上できることが分かった。
【0142】
特に、本発明の実施例によるフィルムにおいては、特定の金属微粒子および無機酸化物微粒子を一定の範囲において使用し、フィルムの表面ヘイズ値が相対的に低いながらも透過度値が非常に高く、また、比較例においてのフィルムなどに比べて白濁度値が相対的に低いながらも輝度比値が高くて、全体的に光学的物性に非常に優れていながらも、レーザポインタ光に対する選択的な視認性を向上できることを明確に確認することができた。