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特許7015619臨時固定用粘着シートおよびこれを使用した半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】臨時固定用粘着シートおよびこれを使用した半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220127BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20220127BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J11/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020538833
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2019004372
(87)【国際公開番号】W WO2019199085
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0042889
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0034620
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】セラ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ホ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ジュ・イ
【審査官】宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110922515(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃で300mm/minの速度で引張時、MD(Machine Direction)方向の延伸率が200%以上である基材フィルム;および
ベンゾイルフェニル基を含む第1(メタ)アクリレート系繰り返し単位とヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選択された1種以上の官能基を含む第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位を含むバインダー樹脂および300nm以上の波長で活性を有する光開始剤を含む粘着層を含み、
前記粘着層を90℃~150℃の温度で熱処理して測定した初期粘着力(A1)に対する前記熱処理された粘着層に光照射して測定した粘着力(A2)間の比率が30%以下である、臨時固定用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着層を90℃~150℃の温度で熱処理して測定した初期粘着力(A1)に対する前記熱処理された粘着層に光照射して測定した粘着力(A2)間の比率(R)は、下記一般式1で定義される、請求項1に記載の臨時固定用粘着シート:
[一般式1]
R(%)=A2’*100/A1’
上記一般式1中、A1’は、100℃で3時間熱処理した以後に前記粘着層の粘着力であり、
A2’は、前記熱処理された粘着層に200nm~500nm領域の複合波長の紫外線を100mJ/cm~1000mJ/cm光量で照射した以後に測定した粘着層の粘着力である。
【請求項3】
前記基材フィルムは、300nm以上の波長の透過率が50%以上である、請求項1または2に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項4】
前記基材フィルムは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-アルキルアクリレート共重合体、およびポリブチレンテレフタレートからなる群より選択される1種以上の高分子化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項5】
記第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位の20~95モル%は、光重合性(メタ)アクリレート系側鎖を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項6】
前記光開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセティックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセティックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、およびチオキサントンからなる群より選択された1種以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項7】
半導体工程の保護フィルム、キャリアフィルムまたはピックアップ工程用フィルムとして使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項8】
前記基材フィルムが形成されていない粘着層の一面に離型フィルムをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項9】
前記基材フィルムの一面に粘着層が形成され、
前記粘着層の基材フィルムが形成されていない面に離型フィルムをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項10】
前記粘着層は2個の層から形成され、
前記基材フィルムの両面に粘着層がそれぞれ形成され、
前記粘着層の基材フィルムが形成されていない面に離型フィルムをそれぞれさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の臨時固定用粘着シートの粘着層を半導体装置の所定部分に付着する段階;
前記粘着シートが付着された半導体装置に対して、所定の工程を経る段階;
前記所定の工程を経た以後、前記臨時固定用粘着シートの基材フィルムに対して紫外線を照射する段階;および
前記臨時固定用粘着シートを半導体装置から脱着する段階;を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2018年4月12日付韓国特許出願第10-2018-0042889号および2019年3月26日付韓国特許出願第10-2019-0034620号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、臨時固定用粘着シートおよびこれを使用した半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器の小型化、薄型化、大容量化傾向が拡大され、これによる半導体パッケージの高密度化、高集積化に対する必要性が急激に大きくなっている。これを反映して、半導体チップの大きさが次第に大きくなり、同時にチップの厚さは薄くなっている。
【0004】
薄型の半導体チップは製造工程中にハンドリングが難しい問題があり、よって、粘着シートなどを使用して臨時的に薄型の半導体チップを固定し、臨時固定された状態でこれを加工、処理および移送する工程を行う方法が適用されている。
【0005】
しかし、半導体の製造工程のうちの多数の工程が高温の条件下で行われるため工程中に粘着力低下の問題が発生しないように粘着シートの高い耐熱性が要求されている。また、一連の工程が完了した後に固定された薄型の半導体チップの分離する工程において、半導体チップに損傷を与えなくて、表面に残渣物などが残らないように十分な剥離性も要求されている。
【0006】
最近、臨時粘着素材として、紫外線照射によって粘着力が低下される紫外線硬化型粘着剤が使用されている。しかし、従来の粘着剤の場合、粘着剤内の光開始剤などの添加剤が高温の工程で熱分解されるか、添加剤の移動現象によって、剥離段階での粘着力低下が不充分な問題があった。
【0007】
よって、臨時固定用として使用されるために、粘着力、耐熱性および剥離性を全て優れた水準で満足させるための粘着シートの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐熱性に優れて半導体の製造工程のうちの高温の工程を経ても十分な粘着力を実現し、剥離段階で光硬化による十分な粘着力低下を示すことができる臨時固定用粘着シートを提供するためのものである。
【0009】
また、本発明は、前記臨時固定用粘着シートを使用した半導体装置の製造方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、23℃で300mm/minの速度で引張時、MD(Machine Direction)方向の延伸率が200%以上である基材フィルム;および光反応性官能基を有するバインダー樹脂、300nm以上の波長で活性を有する光開始剤および多官能性架橋剤を含む粘着層を含み、前記粘着層を90℃~150℃の温度で熱処理して測定した初期粘着力(A1)に対する前記熱処理された粘着層に光照射して測定した粘着力(A2)間の比率が30%以下である、臨時固定用粘着シートが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、前記臨時固定用粘着シートの粘着層を半導体装置の所定部分に付着する段階;前記粘着シートが付着された半導体装置に対して、所定の工程を経る段階;前記所定の工程を経た以後、前記臨時固定用粘着シートの基材フィルムに対して紫外線を照射する段階;および前記臨時固定用粘着シートを半導体装置から脱着する段階;を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【0012】
以下、発明の実施形態による臨時固定用粘着シートおよびこれを使用した半導体装置の製造方法について詳しく説明する。
【0013】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0015】
本明細書で使用される‘含む’の意味は、特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0016】
そして、本明細書で‘第1’および‘第2’のように序数を含む用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【0017】
本発明者らの継続的な研究の結果、半導体の製造工程に使用される臨時固定用粘着シートにおいて、優れた延伸特性を有し紫外線透過性のある耐熱性高分子から基材フィルムを形成し、前記基材フィルムの透過波長領域での光重合が開始される特定成分から粘着層を形成することによって、半導体の製造工程中に優れた粘着力を実現し、高温の工程を経ても剥離段階で光硬化によって十分な粘着力低下効果を示すことを確認した。これにより、半導体の製造工程効率が向上され、製造された半導体の品質が非常に優れるのを確認した。
【0018】
I.臨時固定用粘着シート
本発明の一実施形態によれば、基材フィルムと粘着層を含み、前記接着層を90℃~150℃の温度で熱処理して測定した初期粘着力(A1)に対する前記熱処理された粘着層に光照射して測定した粘着力(A2)間の比率が30%以下である、臨時固定用粘着シートが提供される。
【0019】
好ましくは、前記粘着層を90℃~150℃の温度で熱処理して測定した初期粘着力(A1)に対する前記熱処理された粘着層に光照射して測定した粘着力(A2)間の比率(R)は下記一般式1で定義できる。
【0020】
[一般式1]
R(%)=A2’*100/A1’
上記一般式1中、A1’は、100℃で3時間熱処理した以後の前記粘着層の粘着力であり、
A2’は、前記熱処理された粘着層に200nm~500nm領域の複合波長の紫外線を100mJ/cm~1000mJ/cm光量で照射した以後に測定した粘着層の粘着力である。
【0021】
前記粘着層の粘着力比率(R)は、半導体の製造工程中に高温の条件を経ても優れた粘着力を実現し、光硬化による剥離段階で十分な粘着力低下効果を示す指標であり、本願発明による臨時固定用粘着シートは、前記粘着力比率(R)値が30%以下を満足することによって、半導体の製造工程に適用されて、工程効率を顕著に向上させ、高品質の半導体を製造することができるようにする。前記粘着力比率(R)は、粘着層の素材や粘着層の工程条件などを調節して導出することができる。
【0022】
本発明で前記粘着力比率(R)が30%を超過する場合、光硬化による十分な剥離力効果を実現することができず、この場合、対象半導体表面に粘着残余物が存在するか、半導体損傷を誘発するなどの問題が発生することがある。好ましくは、前記変化率は20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下であり得る。
【0023】
基材フィルム
本発明の一実施形態による基材フィルムは半導体の製造工程中に発生する高温の条件下で劣化および変形などが発生せず、延伸率が200%以上で延伸特性に優れてピックアップ工程時適用が容易な素材である。
【0024】
本発明において、前記基材フィルムは23℃で300mm/minの速度で引張時MD(Machine Direction)方向の延伸率が200%以上を満足するものであって、前記延伸率が200%未満である場合、ピックアップ工程成功率が顕著に低下することがある。本発明において、前記基材フィルムの延伸率は好ましくは250%以上、さらに好ましくは300%以上を満足するものであり得る。
【0025】
本発明において、前記基材フィルムは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、およびエチレン-アルキルアクリレート共重合体、ポリブチレンテレフタレートからなる群より選択される1種以上の高分子化合物を含むことができる。好ましくは、ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレートを含むものであってもよい。
【0026】
本発明において、基材フィルムが2種以上の高分子化合物が含まれる場合、前述の高分子をそれぞれ含むフィルムが2層以上積層された構造のフィルムまたは前述の高分子が2以上含まれている単一層のフィルムを全て含むのである。
【0027】
また、前記基材フィルムは前述の耐熱性高分子成分を含み、同時に300nm以上の波長で透過率が50%以上を満足することによって、後述の粘着層内の光開始剤が容易に光重合反応を開始することができるようにする。
【0028】
前記基材フィルムが、300nm以上の波長で透過率が50%未満である場合、粘着層の光開始剤の光吸収が十分でなくて、粘着シートを分離する段階で粘着力の低下が十分でないことがある。
【0029】
前記基材フィルムの厚さは特に限定されず、通常5~500μmの厚さで形成することができ、好ましくは10~300μmの厚さまたは50~100μmの厚さで形成することができる。この場合、半導体の高温工程で支持が可能であり、粘着シートの剥離段階で損傷なく剥離が可能である。
【0030】
前記基材フィルムは、本発明が目的とする効果に影響を与えない範囲内で性能を向上させるための追加的な処理を経たものであってもよい。例えば、基材フィルムの表面にマット処理、コロナ放電処理、プライマー処理または架橋処理などの慣用的な物理的または化学的処理を加えることができる。
【0031】
粘着層
本発明の一実施形態による粘着層は、前記基材フィルムの一面に形成されてもよく、前述の粘着力比率(R)を満足する特定素材から形成される。本発明において、前記粘着層は熱によって優れた粘着力を実現し、紫外線照射によって優れた粘着力低下効果を実現する素材から形成され、特に、光反応性官能基を有するバインダー樹脂と特定光開始剤を組み合わせて使用することによって、基材フィルムから相対的に低い透過率で波長が透過されても、優れた光開始効率および高温工程後にも優れた粘着力低下効果を実現することができるようにする。
【0032】
本発明において、前記粘着層は光反応性官能基を有するバインダー樹脂および300nm以上の波長で活性を有する光開始剤を含む粘着層を含むことによって、前記成分の組み合わせで高温の条件下でも半導体の製造工程中に十分な粘着力を実現し、剥離段階で光硬化による粘着力低下が容易である。
【0033】
本発明において、前記粘着層は、前述の成分を含む粘着層形成用組成物を使用して形成することができる。
【0034】
本発明において、前記光反応性官能基を有するバインダー樹脂は互いに異なる2種以上のアクリル系繰り返し単位を含み、これらの特定グラフト共重合構造によって、高温の工程でも優れた粘着安定性を実現することができる。
【0035】
本発明において、前記第1(メタ)アクリレート繰り返し単位のベンゾイルフェニル基は紫外線照射によってラジカルを発生させて硬化反応を開始し、高温工程後にも安定した粘着力低下効果を実現することができるようにする。前記ベンゾイルフェニル基は、下記化学式1で表される官能基を意味することができる。
【0036】
【化1】
【0037】
前記ベンゾイルフェニル基は、第1(メタ)アクリルアクリレート系繰り返し単位に1以上置換されてもよい。
【0038】
前記第1(メタ)アクリレート系繰り返し単位は、前記ベンゾイルフェニル基を有する化合物と(メタ)アクリレート系化合物の付加反応で得られた単量体に由来したものであってもよい。具体的には、ベンゾイルフェニルメチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルエチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルn-プロピル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルイソプロピル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルn-ブチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルt-ブチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルsec-ブチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルペンチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニル2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニル2-エチルブチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルn-オクチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルイソオクチル(メタ)アクリレート、ベンゾイルフェニルイソノニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0039】
本発明において、前記第2(メタ)アクリレート繰り返し単位はヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基などの構造によって架橋構造を実現することができ、これにより、3次元架橋構造を通じて粘着剤の凝集力を向上させて、半導体工程中に十分な粘着力を示すことができる。
【0040】
前記ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基は、第2(メタ)アクリルアクリレート系繰り返し単位に1以上置換されてもよい。
【0041】
前記第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位は、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリレート系単量体に由来したものであってもよく、このような単量体としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
前記第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位は、カルボキシ基を含む(メタ)アクリレート系単量体に由来したものであってもよく、このような単量体としては(メタ)アクリル酸(acrylic acid)、クロトン酸(crotonic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)などが挙げられる。
【0043】
前記第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位は窒素含有官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体に由来したものであってもよく、このような単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。
【0044】
本発明による、第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位の20~95モル%は、光重合性(メタ)アクリレート系側鎖を含むことができる。前記光重合性(メタ)アクリレート系側鎖は第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位のヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基と結合可能な光重合性化合物に由来したものであってもよく、具体的には、イソシアネート基またはエポキシ基を有する化合物に由来したものであってもよい。
【0045】
前記光重合性化合物の具体的な例としては、ヒドロキシ基と反応できる化合物として、(メタ)アクリロイルオキシイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m-プロフェニル-α、α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、またはアリルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物を(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルと反応させて得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物および(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを反応させて得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;などが挙げられる。また、カルボキシル基と反応できる化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレートまたはアリルグリシジルエーテルなどの一種または二種以上が挙げられるが、これに制限されるのではない。
【0046】
前記光重合性(メタ)アクリレート系側鎖が前記第2(メタ)アクリレート繰り返し単位の20モル%未満に置換される場合、紫外線照射による剥離力低下が十分でない恐れがあり、95モル%を超過して置換される場合、紫外線照射前の粘着剤の凝集力が低下する恐れがある。
【0047】
本発明において、前記光反応性官能基を有するバインダー樹脂は、前述の第1(メタ)アクリレート系繰り返し単位および第2(メタ)アクリレート系繰り返し単位以外に追加の(メタ)アクリレート系繰り返し単位をさらに含むことができる。
【0048】
例えば、前述の特定官能基を含まない繰り返し単位であって、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環族(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレートなどに由来した繰り返し単位であってもよい。
【0049】
脂肪族(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0050】
脂環族(メタ)アクリレートとしては、炭素数3~30のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、具体的には、イソボルニルアクリレート(IBOA)、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタアクリレート、ジシクロペンテニルオキシメタアクリレートなどが挙げられる。
【0051】
芳香族(メタ)アクリレートとしては、炭素数6~30の芳香族基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、具体的には、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノールEO(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
本発明において、前記光反応性官能基を有するバインダー樹脂は重量平均分子量が100,000~3,000,000g/molであってもよく、好ましくは400,000~2,000,000g/molであってもよい。前記範囲の重量平均分子量を有する場合、適正コーティング性と凝集力を示し、剥離段階で被着材に残余物が残るなどの問題が発生しなくて好ましい。
【0053】
本発明において、光開始剤は300nm以上の波長で活性を有する成分であって、前述の基材フィルムから透過された波長で光重合を開始して粘着層の粘着力を容易に低下させる成分である。
【0054】
前記光開始剤は、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセティックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセティックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノペニル)-ブタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、チオキサントンなどが挙げられ、好ましくは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドを使用することができる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用することができる。前記成分から形成される場合、本願発明の基材フィルムを通じて透過される紫外線による活性が優れる。
【0055】
本発明において、前記光開始剤は、前記光反応性官能基を有するバインダー樹脂100重量部を基準にして、0.1~40重量部、好ましくは1~20重量部で含まれてもよく、前記含量範囲で含まれる場合、効果的な硬化反応を誘導し、硬化後残存成分による物性低下などを防止することができる。
【0056】
本発明において、前記粘着層は、多官能性架橋剤をさらに含むことができる。
【0057】
本発明において、多官能性架橋剤は粘着層に凝集力を付与する成分であって、例えばイソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物および金属キレート系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。前記イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物および金属キレート系化合物は当分野で通常使用される化合物であれば特別な制限なく使用することができる。
【0058】
本発明において、前記架橋剤は、前記光反応性官能基を有するバインダー樹脂100重量部に対して0.1~30重量部で含まれてもよく、好ましくは1~10重量部で含まれてもよい。前記架橋剤が0.1重量部未満である場合、粘着層の凝集力が不足なことがあり、前記架橋剤が40重量部超過である場合、粘着層が光硬化以前に粘着力が十分に確保されず剥離現象などが発生することがある。
【0059】
前記のような成分を含む粘着層を基材フィルム上に形成する方法は特に限定されず、例えば、基材フィルム上に直接本発明の粘着層形成用組成物を塗布して粘着層を形成する方法、または剥離性基材上に一応粘着層形成用組成物を塗布して粘着層を製造し、前記剥離性基材を使用して粘着層を基材フィルム上に転写する方法などを使用することができる。
【0060】
この時、粘着層形成用組成物を塗布および乾燥する方法は特に限定されず、例えば、前記それぞれの成分を含む組成物をそのまま、または適当な有機溶剤に希釈してコンマコーター、グラビアコーター、ダイコーターまたはリバースコーターなどの公知の手段で塗布した後、60℃~200℃の温度で10秒~30分間溶剤を乾燥させる方法を使用することができる。また、前記過程では粘着剤の十分な架橋反応を行わせるためのエージング(aging)工程を追加的に行うこともできる。
【0061】
前記粘着層の厚さは特に限定されず、通常5~100μmの厚さで形成することができ、前記厚さ範囲で形成される場合、半導体の高温工程で支持が可能であり、粘着シートの剥離段階で損傷なく剥離が可能である。
【0062】
本発明において、前記粘着層上に形成された離型フィルムを追加的に含むことができる。使用できる離型フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムなどの一種または二種以上のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0063】
前記のような離型フィルムの表面はアルキド系、シリコン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系またはワックス系などの一種または二種以上で離型処理されていてもよく、このうち、特に耐熱性を有するアルキド系、シリコン系またはフッ素系などの離型剤が好ましい。
【0064】
前記離型フィルムは通常10μm~500μm、好ましくは20μm~200μm程度の厚さで形成することができるが、これに制限されるのではない。
【0065】
本発明による、臨時固定用粘着シートは、半導体工程の保護フィルム、キャリアフィルムまたはピックアップ工程用フィルムとして使用することができる。特に、ピックアップ工程用フィルムに適用される場合、基材フィルムの優れた延伸特性と粘着層の低い剥離力特性でダイシングのピックアップ成功率を顕著に向上させることができる。
【0066】
また、本発明による臨時固定用粘着シートは、粘着層は1つ以上含むことができ、これにより、基材フィルムに対して一面または両面に形成することができる。
【0067】
また、前記臨時固定用粘着シートを製造する方法は特に限定されず、例えば、基材フィルム上に粘着層および離型フィルム(必要によって)を順次に形成する方法、または基材フィルムに粘着層が形成された離型フィルムを別途に製造した後、これをラミネーションさせる方法などを使用することができる。
【0068】
前記でラミネーション方法は特に限定されず、ホットロールラミネートまたは積層プレス法を使用することができ、このうち、連続工程の可能性および効率性側面からホットロールラミネート法が好ましい。ホットロールラミネート法は10℃~100℃の温度で0.1Kgf/cm~10Kgf/cmの圧力で行うことができるが、これに制限されるのではない。
【0069】
図1および図2は、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10の断面図を示したものである。
【0070】
図1(a)に示すように、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、基材フィルム100および粘着層200が積層された構造であってもよい。
【0071】
前記粘着シート10が半導体の製造工程に適用される場合、前記粘着層200の基材フィルム100が形成されていない面200(a)が半導体装置の所定部分に付着され得る。
【0072】
図1(b)に示すように、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、基材フィルム100、粘着層200および離型フィルム300が順次に積層された構造であってもよい。
【0073】
前記粘着シート10が半導体の製造工程に適用される場合、前記粘着層200から離型フィルム300を剥離した後、離型フィルム300が剥離された粘着層200の一面が半導体装置の所定部分に付着され得る。
【0074】
図2(a)に示すように、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、基材フィルム100の両面に2個の粘着層210、220がそれぞれ形成された構造であってもよい。
【0075】
この場合、第1粘着層210、基材フィルム100、第2粘着層220が順次に積層された構造であってもよい。
【0076】
前記粘着シート10が半導体の製造工程に適用される場合、粘着層のうちのいずれか一つの基材フィルム100が形成されていない面が半導体装置の所定の部分に付着され得る。例えば、前記第2粘着層220の基材フィルム100が形成されていない面220(a)が半導体装置の所定の部分に付着され得る。
【0077】
図2(b)に示すように、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、第1離型フィルム310、第1粘着層210、基材フィルム100、第2粘着層220、および第2離型フィルム320が順次に積層された構造であってもよい。
【0078】
前記粘着剤シート10が半導体の製造工程に適用される場合、前記第2粘着層210、220から離型フィルム310、320を剥離した後、離型フィルム310、320が剥離された粘着層210、220の一面が半導体装置の所定部分に付着され得る。
【0079】
以後、前記粘着シート10の剥離段階で、第1粘着層210側に紫外線を照射して下部基材フィルム100を通過して、第2粘着層220を光硬化させることができる。これにより、粘着層200の粘着力が低下され半導体装置から臨時固定用粘着シート10が容易に剥離できる。
【0080】
II.半導体装置の製造方法
本発明の他の一実施形態によれば、前述の臨時固定用粘着シートを使用した半導体装置の製造方法が提供される。
【0081】
通常、半導体装置の製造中には高温の条件下に行われる工程が含まれ、この場合、基材フィルムや粘着層が熱分解されるか、粘着層内に含まれる添加剤などが脱離される問題があった。このような場合、半導体の製造工程中に十分な粘着力を実現することができないか、粘着シートの光硬化による剥離段階で十分な粘着力低下を実現することができなかった。
【0082】
本発明による臨時固定用粘着シートは、紫外線透過性のある素材から基材フィルムを形成し、前記基材フィルムの透過波長領域での光重合開始および反応性を向上させることができる特定成分から粘着層を形成することによって、前述の問題点を全て改善した。これにより、半導体の製造工程効率が向上され、製造された半導体の品質が非常に優れることを確認した。
【0083】
本発明の一実施形態による半導体装置の製造方法は、前述の臨時固定用粘着シートの粘着層を半導体装置の所定部分に付着する段階;前記粘着シートが付着された半導体装置に対して、所定の工程を経る段階;前記所定の工程を経た以後、前記臨時固定用粘着シートの基材フィルムに対して紫外線を照射する段階;および前記臨時固定用粘着シートを半導体装置から脱着する段階;を含む。
【0084】
本発明において、前記前述の臨時固定用粘着シートに関する内容を前述の内容を全て含み、前記半導体装置の製造方法は後述の細部的な工程条件を除いて通常知られた製造方法などが格別な制限なく適用できる。
【0085】
本発明の一実施形態による半導体装置の製造方法において、前記紫外線照射段階は粘着層の光硬化を開始する段階であり、これにより、粘着層の粘着力低下で半導体装置から粘着シートを容易に剥離することができるようにする。
【0086】
本発明の一実施形態による半導体装置の製造方法において、前記臨時固定用粘着シートが離型フィルムをさらに含む場合、前記粘着シートの粘着層を半導体装置の所定部分に付着する前、粘着層から離型フィルムを剥離する段階をさらに含むことができる。
【0087】
前述の方法によって半導体装置の製造工程効率が向上され製造された半導体の品質が非常に優れることを確認した。
【発明の効果】
【0088】
本発明による臨時固定用粘着シートは、半導体製造工程中に適正粘着力を有し、光硬化によって容易に粘着力が低下され工程が完了した後の剥離が容易である。
【0089】
また、本発明による臨時固定用粘着シートは、耐熱性が優れて、半導体の製造工程に適用されて高温の工程を経ても、粘着シートの剥離段階で光硬化による十分な粘着力低下を示すことができる。
【0090】
特に、ピックアップ工程用フィルムに適用される場合、基材フィルムの優れた延伸特性と粘着層の低い剥離力特性でダイシングのピックアップ成功率を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本発明の一実施形態による、臨時固定用粘着シート10の断面構造を概略的に示したものである。
図2】本発明の一実施形態による、臨時固定用粘着シート10の断面構造を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみで限定するのではない。
【実施例
【0093】
製造例:粘着層形成用組成物の製造
製造例1
窒素ガスが還流され温度調節が容易なように冷却装置を設置した反応器に、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)75g、4-ベンゾイルフェニルメタクリレート5gとヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20gから構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準にして連鎖移動剤(CTA:chain transfer agent)であるn-DDM 400ppmと溶剤としてエチルアセテート(EAc)100gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で30分以上十分に混合した。以後、温度は62℃に上昇維持し、反応開始剤であるV-60(Azobisisobutylonitrile)300ppmの濃度を投入し反応を開始させた後、6時間重合して1次反応物を製造した。
【0094】
前記1次反応物に2-メタクロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)24g(1次反応物内のHEAに対して90モル%)および触媒(DBTDL:dibutyl tin dilaurate)を0.24g配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化基を導入して(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(a-1)を製造した。
【0095】
前記(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(a-1)100gにTDI系イソシアネート硬化剤4g、光開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド2gを混合して粘着層形成用組成物(A-1)を製造した。
【0096】
製造例2
窒素ガスが還流され温度調節が容易なように冷却装置を設置した反応器に、エチルアクリレート20g、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)63g、4-ベンゾイルフェニルアクリレート2gとヒドロキシエチルアクリレート(HEA)15gから構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準にして連鎖移動剤(CTA:chain transfer agent)であるn-DDM(n-dodecyl mercaptan)400ppmと溶剤としてエチルアセテート(EAc)100gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で30分以上十分に混合した。以後、温度は62℃に上昇維持し、反応開始剤であるV-60(Azobisisobutylonitrile)300ppmの濃度を投入して反応を開始させた後、6時間重合して1次反応物を製造した。
【0097】
前記1次反応物に2-メタクロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)15g(1次反応物内のHEAに対して76モル%)および触媒(DBTDL:dibutyl tin dilaurate)0.15gを配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化基を導入して(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(a-2)を製造した。
【0098】
前記(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(a-2)100gにTDI系イソシアネート硬化剤5g、光開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド3gを混合して粘着層形成用組成物(A-2)を製造した。
【0099】
製造例3
前記製造例1の(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(a-1)100gにTDI系イソシアネート硬化剤4g、光開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン3gを混合して粘着層形成用組成物(A-3)を製造した。
【0100】
比較製造例1
窒素ガスが還流され温度調節が容易なように冷却装置を設置した反応器に、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)80g、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20gから構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準にして連鎖移動剤(CTA:chaintransferagent)であるn-DDM 400ppmと溶剤としてエチルアセテート(EAc)100gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で30分以上十分に混合した。以後、温度は62℃に上昇維持し、反応開始剤であるV-60(Azobisisobutylonitrile)300ppmの濃度を投入して反応を開始させた後、6時間重合して1次反応物を製造した。
【0101】
前記1次反応物に2-メタクロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)24g(1次反応物内のHEAに対して90モル%)および触媒(DBTDL:dibutyl tin dilaurate)0.24g配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化基を導入して(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(b-1)を製造した。
【0102】
前記(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(b-1)100gにTDI系イソシアネート硬化剤4g、光開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド2gを混合して粘着層形成用組成物(A-2)を製造した。
【0103】
比較製造例2
前記製造例1の(メタ)アクリレート系バインダー樹脂(a-1)100gにTDI系イソシアネート硬化剤4gを混合して粘着層形成用組成物(B-2)を製造した。
【0104】
実施例および比較例
実施例1
前記製造例1の粘着層形成用組成物(A-1)を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)上に塗布した後、110℃で3分間乾燥して約30μm厚さの粘着層を形成した。形成された粘着層100μm厚さの基材フィルムポリプロピレンフィルムに貼り合わせた後、エージングを経て臨時固定用粘着シートを得た。
【0105】
実施例2~3および比較例1~2
下記表1の成分および使用量を適用した点を除いて実施例1と同様な方法で臨時固定用粘着シートを製造した。基材フィルムの延伸率(%)は、幅5mm、長さ40mmの試片を23℃で300mm/minの速度で引張時MD(Machine Direction)の延伸率である。
【0106】
【表1】
【0107】
実験例1:粘着力および剥離力評価
実施例および比較例によって製造された臨時固定用粘着シートに対して、下記の方法で粘着力および光硬化による剥離力を評価し、その結果を表2に記載した。
【0108】
実施例および比較例で製造された臨時固定用粘着シートを幅25mmになるようにカッティングした後、シリコンウエハーに2kgのローラを用いて付着したサンプルを準備した。
【0109】
その次に、シリコンウエハーに付着された臨時固定用粘着シートの基材面が接触されるように100℃のホットプレートで3時間放置した熱処理したサンプルを準備した。
【0110】
(1)粘着特性評価
前記粘着シートに対して、Stable Micro Systems.社のTexture Analyzerを使用して300mm/minの速度、180度角度で粘着力(gf/25mm)を測定した。
【0111】
(2)剥離特性評価
前記で準備した熱処理をしていないサンプルと熱処理を行ったサンプルに対してそれぞれ光量300mJ/cm条件の紫外線(200nm~500nm領域の複合波長を有する水銀ランプ使用)を基材フィルム側から照射したサンプルと照射していないサンプルに対して評価した結果値を評価した。
【0112】
また、前記測定した粘着力を通じて下記式を通じて粘着力比率(R)を測定した。
[一般式1]
R(%)=A2’*100/A1’
上記一般式1中、A1’は100℃で3時間熱処理した以後に測定した粘着層の粘着力であり、A2’は熱処理した以後紫外線を照射した後に測定した粘着層の粘着力である。
【0113】
実験例2:ピックアップ特性評価
実施例および比較例によって製造された臨時固定用粘着シートに対して、離型フィルムを剥ぎ取った後、粘着層面をミラーウエハー(8インチ、厚さ80μm)に温度25℃でマウンティングした。その次に、シリコンウエハーに付着された臨時固定用粘着シートの基材フィルム面が接触されるように100℃のホットプレートで3時間放置した熱処理したサンプルを準備した。
【0114】
熱処理したサンプルに対してチップ大きさが10mm×10mmになるように下記条件でダイシングを実施した。次いで、ダイシングされたサンプルに光量300mJ/cmの紫外線を基材面で照射してピックアップ特性測定用サンプルを準備した。
【0115】
前記準備されたサンプルをSPA-400(SHINKAWA)用いて下記の条件でピックアップを行って成功率を測定した結果を表2に示した。
【0116】
-ダイシング条件-
機器:DFD-650(DISCO)
ブレードタイプ:27HEBB(DISCO)
カッティングブレード高さ(cut depth):80um
ダイシングスピード:50mm/s
ブレード回転数:40,000rpm
【0117】
-ピックアップ条件-
機器:SPA-400(SHINKAWA)
エキスパンディング高さ:3mm
ニードル個数:10個
ニードル上げ高さ(needle piunge up height):0.2mm
ニードル上げ速度(needle piunge up speed):10mm/s
【0118】
【表2】
【0119】
上記表2から確認できるように、本発明によって製造された臨時工程用粘着シートは熱工程後にも粘着力比率(R)が30%未満であって粘着力低下が大きくて粘着剤残余物なく除去が可能であるのを確認した。これと比較して、比較例1~比較例2は熱工程後の粘着力比率(R)が30%以上であって粘着力が高くて粘着剤残余物発生およびピックアップ成功率が不足した。比較例3は粘着力変化率も低いだけでなく基材フィルムの延伸特性不足でピックアップ工程が不可能であるのを確認した。
【符号の説明】
【0120】
10:臨時固定用粘着シート
100:基材フィルム
200、210、220:粘着層
300、310、320:離型フィルム
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】