(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像方法、及びカメラシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/235 20060101AFI20220127BHJP
G03B 7/04 20210101ALI20220127BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20220127BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220127BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H04N5/235 300
G03B7/04
G03B7/091
G03B15/00 H
H04N5/232 290
H04N5/232 380
H04N5/232 450
H04N5/232 939
(21)【出願番号】P 2020510050
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2019012410
(87)【国際公開番号】W WO2019188933
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2018065048
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】杉原 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤
(72)【発明者】
【氏名】石田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 真彦
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136087(JP,A)
【文献】特開2012-160852(JP,A)
【文献】特開平7-98471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/235
G03B 7/04
G03B 7/091
G03B 15/00
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズにより被写体の光学像が結像される撮像素子により前記被写体の画像を取得する撮像部と、
前記撮像部で取得する前記画像において白飛びが発生するか否かを判断する判断部と、
前記撮像部に対し、前記撮像素子から間欠的に複数の前記画像を取得する第1のモードと、前記撮像素子から連続的に前記画像を取得する第2のモードと、のいずれかを設定するモード設定部であって、前記白飛びが発生すると判断された場合は前記第1のモードを設定し、前記白飛びが発生しないと判断された場合は前記第2のモードを設定するモード設定部と、
前記画像における被写体の移動を検出する検出部と、
前記第1のモードで取得した前記複数の前記画像を前記検出部で検出された前記被写体の移動に応じて位置合わせし、前記位置合わせした前記複数の前記画像を合成して合成画像を生成する画像生成部と、
あらかじめ設定された露光時間で露光を制御する露光制御部と、
を備え、
前記判断部は、前記露光制御部により設定された前記露光時間が第1のしきい値以上である場合は前記白飛びが発生すると判断して前記モード設定部に前記第1のモードを設定させる撮像装置。
【請求項2】
前記判断部は、露光開始時において前記判断を行う請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記第1のモードにおいて取得する画像の数及び/または画素数を、前記画像の露光時間に応じて設定する請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記検出の結果に応じて撮影方向の変更を促す情報を提示する情報提示部をさらに備え、
前記検出部は、前記画像における前記被写体の移動方向を検出する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記被写体の移動に追従させて自動的に撮影方向を変更する撮影方向変更部をさらに備え、
前記モード設定部は、前記画像を取得する際の前記撮影レンズの焦点距離が第2のしきい値より長い場合は前記撮影方向変更部により前記撮影方向を変更しながら前記画像を取得する請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記モード設定部が前記第1のモードと前記第2のモードとのうちいずれのモードを設定したかをユーザに報知する報知部をさらに備える請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像生成部で生成した前記合成画像を記憶する記憶部をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮影レンズにより被写体の光学像が結像される撮像素子により前記被写体の画像を取得する撮像部を備える撮像装置における撮像方法であって、
前記撮像部で取得する前記画像において白飛びが発生するか否かを判断する判断工程と、
前記撮像部に対し、前記撮像素子から間欠的に複数の前記画像を取得する第1のモードと、前記撮像素子から連続的に前記画像を取得する第2のモードと、のいずれかを設定するモード設定工程であって、前記白飛びが発生すると判断された場合は前記第1のモードを設定し、前記白飛びが発生しないと判断された場合は前記第2のモードを設定するモード設定工程と、
前記画像における被写体の移動を検出する検出工程と、
前記第1のモードで取得した前記複数の前記画像を前記検出工程で検出された前記被写体の移動に応じて位置合わせし、前記位置合わせした前記複数の前記画像を合成して合成画像を生成する画像生成工程と、
あらかじめ設定された露光時間で露光を制御する露光制御部と、
を有し、
前記判断工程では、前記露光制御部により設定された前記露光時間が第1のしきい値以上である場合は前記白飛びが発生すると判断して前記モード設定工程で前記第1のモードを設定させる撮像方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の撮像装置と、前記撮影レンズと、を備えるカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、撮像方法、及びカメラシステムに関し、特に長時間露光による撮影の効果を得る撮像装置、撮像方法、及びカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
写真撮影においては、長時間露光によりいわゆる「流し撮り(主要被写体が静止し背景が流れるように見える撮影)」、あるいは主要被写体の移動軌跡を強調する撮影が行われることがある。このような長時間露光の効果を得る手法として、長時間の連続的な露光を行う撮影方法の他に、複数回の短時間露光により取得した複数の画像を合成して長時間露光の効果を奏する画像を取得する撮影方法が知られている。これらの撮影方法は撮影条件に応じて切り替えることができる。例えば特許文献1では、連続的な露光を行う第1のモードと複数の画像を取得及び合成する第2のモードとをシャッター速度(露光時間)に応じて切り替えることが記載されている。第1のモードではシフトレンズの駆動による防振制御(手振れ補正)が行われ、第2のモードでは通常の防振制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した長時間露光による効果(背景が流れる度合い、被写体が移動する度合い、流れ及び/または移動の滑らかさ等)を高めるには、長時間の連続的な露光が効果的な場合が多い。一方、長時間の連続的な露光を行うと、被写体の明るさ等の条件によっては撮影画像の露出が不適切(明るすぎる)になるおそれがある。このような問題に対し、上述した特許文献1では露光時間が長い場合に第1のモードで連続的な露光を行うので、撮影画像の露出を適正にするのは困難である。
【0005】
このように、従来の技術は撮影条件に応じて適切な撮影モードを設定するものではなく、長時間露光の効果を奏する画像を良好な画質で得ることができなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、長時間露光の効果を奏する画像を良好な画質で得られる撮像装置、撮像方法、及びカメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る撮像装置は、撮影レンズにより被写体の光学像が結像される撮像素子により被写体の画像を取得する撮像部と、撮像部で取得する画像において白飛びが発生するか否かを判断する判断部と、撮像部に対し、撮像素子から間欠的に複数の画像を取得する第1のモードと、撮像素子から連続的に画像を取得する第2のモードと、のいずれかを設定するモード設定部であって、白飛びが発生すると判断された場合は第1のモードを設定し、白飛びが発生しないと判断された場合は第2のモードを設定するモード設定部と、画像における被写体の移動を検出する検出部と、第1のモードで取得した複数の画像を検出部で検出された被写体の移動に応じて位置合わせし、位置合わせした複数の画像を合成して合成画像を生成する画像生成部と、を備える。
【0008】
第1の態様に係る撮像装置は、取得する画像において白飛びが発生すると判断された場合は、撮像素子から間欠的に複数の画像を取得する第1のモードを撮像部に設定して間欠的に露光することにより複数の画像を取得して合成画像を生成し、一方、白飛びが発生しないと判断された場合は連続的な露光を行う第2のモードを撮像部に設定して画像を取得する。第1の態様において判断部が「白飛びが発生する」と判断した場合、第1のモードで間欠的な画像取得の露光時間、露光回数を設定することにより、白飛びの発生を防止することができる。また、第1のモードでは、画像生成部が複数の画像を被写体の移動に応じて位置合わせ(例えば、移動及び/または回転により主要被写体を一致させる)及び合成することにより、長時間露光の効果(背景の流れ、被写体の軌跡等)を奏する合成画像を得ることができる。画像生成部は、合成画像を生成する際に、ぼかし処理等他の画像処理を施して長時間露出の効果を高めてもよい。一方、判断部が「白飛びが発生しない」と判断した場合は、第2のモードで連続的な露光より画像を取得するので、露光時間に応じた効果を奏する画像を得ることができる。このように第1の態様によれば、白飛びが発生しない良好な画質で長時間露光の効果を得ることができる。
【0009】
なお第1の態様及び以下の各態様において、「白飛び」とは撮像素子の出力が飽和してしまい被写体の輝度差を画像でまったく、またはほとんど表現できない状態(本来は輝度に差がある部分が、全て最高輝度もしくは最高輝度に近い輝度になってしまう状態)ということができる。また、「間欠的に複数の画像を取得する」は「撮像素子を間欠的に露光して、個々の露光に対応した複数の画像を取得する」態様と「撮像素子を連続的に露光しつつ、(電子シャッター等により)撮像素子から間欠的に画像を読み出し、個々の読み出しに対応した複数の画像を取得する」態様とのいずれにより行ってもよい。
【0010】
なお、第1の態様に係る撮像装置はレンズ一体型カメラのカメラ本体、レンズ交換型カメラの本体部分、監視カメラの本体部分等に適用できるが、これらの例に限定されるものではない。
【0011】
第2の態様に係る撮像装置は第1の態様において、あらかじめ設定された露光時間で露光を制御する露光制御部をさらに備え、判断部は、露光制御部により設定された露光時間が第1のしきい値以上である場合は白飛びが発生すると判断してモード設定部に第1のモードを設定させる。第2の態様は白飛びの判断の具体例を規定するもので、判断部は、あらかじめ設定された露光時間(当初露光時間)が長時間(具体的には、当初露光時間≧第1のしきい値)の場合、白飛びが発生すると判断し、モード設定部が判断結果に基づいて第1のモードを設定する。第1のしきい値は、被写体の種類及び/または得ようとする効果(内容、程度)に応じて設定してよい。また、第1のしきい値はユーザの指定に応じて設定してもよいし、ユーザの指定によらずに撮像装置が設定してもよい。
【0012】
第3の態様に係る撮像装置は第1または第2の態様において、判断部は、露光開始時において判断を行う。第3の態様における「露光開始時」には、長時間露光モードへの移行操作がなされた時点で判断する場合、移行後にモード設定を指示する操作に応じて判断する場合、長時間露光モードへの移行後に撮影準備指示に応じて判断する場合、及び撮影指示がされてから実際の露光が開始される前に判断する場合を含めることができるが、これらの態様に限定されるものではない。
【0013】
第4の態様に係る撮像装置は第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、撮像部は、第1のモードにおいて取得する画像の数及び/または画素数を、画像の露光時間に応じて設定する。第4の態様は複数の画像を取得、処理、合成する際の撮像装置への負荷を軽減するためのもので、撮像部は、所望の効果を得るために設定された露光時間(当初露光時間)が長く負荷が高い場合は、撮影及び合成する画像の数及び/または画素数を減らすことができる。これらの対応に加えて、間欠的に取得する個々の画像の露光時間(多重露光時間)を当初露光時間に応じて設定することも好ましい。
【0014】
第5の態様に係る撮像装置は第1から第4の態様のいずれか1つにおいて、検出の結果に応じて撮影方向の変更を促す情報を提示する情報提示部をさらに備え、検出部は、画像における被写体の移動方向を検出する。第5の態様によれば、ユーザは提示された情報を参照して撮影方向の変更操作(パン及び/またはチルト)を容易に行うことができる。情報の提示は、画面表示、音声出力等により行うことができる。
【0015】
第6の態様に係る撮像装置は第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、被写体の移動に追従させて自動的に撮影方向を変更する撮影方向変更部をさらに備え、モード設定部は、画像を取得する際の撮影レンズの焦点距離が第2のしきい値より長い場合は撮影方向変更部により撮影方向を変更しながら画像を取得する。撮影方向変更部により自動的に撮影方向を変更することで、ユーザに対する露光中のパンチルト操作の負担を減らすことができる。撮影方向の変更による効果(背景の流れる度合い等)は焦点距離が長い場合に高くなるので、第6の態様では(焦点距離>第2のしきい値)となる場合に撮影方向変更部を用いた撮影を行うこととしている。これにより第6の態様では、露光中のパンチルト操作の効果を効率的に得ることができる。なお、撮影方向変更部の構成としては、例えばレンズ及び/または撮像素子の方向を変更する態様、ミラー等の光学部材を駆動して撮影方向を変更する態様を挙げることができるが、これらの態様に限定されるものではない。
【0016】
第7の態様に係る撮像装置は第1から第6の態様のいずれか1つにおいて、モード設定部が第1のモードと第2のモードとのうちいずれのモードを設定したかをユーザに報知する報知部をさらに備える。第7の態様によれば、設定されたモードをユーザが認識することができる。ユーザへの報知は画面表示、発光、振動、音声出力等により行うことができる。
【0017】
第8の態様に係る撮像装置は第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、画像生成部で生成した合成画像を記憶する記憶部をさらに備える。記憶部に記憶された合成画像を画面表示、通信、印刷等により出力してもよい。
【0018】
上述した目的を達成するため、本発明の第9の態様に係る撮像方法は、撮影レンズにより被写体の光学像が結像される撮像素子により被写体の画像を取得する撮像部を備える撮像装置における撮像方法であって、撮像部で取得する画像において白飛びが発生するか否かを判断する判断工程と、撮像部に対し、撮像素子から間欠的に複数の画像を取得する第1のモードと、撮像素子から連続的に画像を取得する第2のモードと、のいずれかを設定するモード設定工程であって、白飛びが発生すると判断された場合は第1のモードを設定し、白飛びが発生しないと判断された場合は第2のモードを設定するモード設定工程と、画像における被写体の移動を検出する検出工程と、第1のモードで取得した複数の画像を検出工程で検出された被写体の移動に応じて位置合わせし、位置合わせした複数の画像を合成して合成画像を生成する画像生成工程と、を有する。第9の態様によれば、第1の態様と同様に長時間露光の効果を奏する画像を良好な画質で得ることができる。
【0019】
第9の態様に係る撮像方法は、第2から第8の態様と同様の構成をさらに有していてもよい。また、これら態様の撮像方法を撮像装置及び/またはカメラシステムに実行させるプログラム、及びそのようなプログラムのコンピュータ読み取り可能なコードを記録した非一時的記録媒体も本発明の態様として挙げることができる。
【0020】
上述した目的を達成するため、本発明の第10の態様に係るカメラシステムは、第1から第8の態様のいずれか1つに係る撮像装置と、撮影レンズと、を備える。第10の態様に係るカメラシステムは、第1から第8の態様のいずれか1つに係る撮像装置を備えるので、長時間露光の効果を奏する画像を良好な画質で得ることができる。第10の態様に係るカメラシステムはレンズ一体型カメラ、レンズ交換型カメラ、監視カメラ等に適用できるが、これらの具体例に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の撮像装置、撮像方法、及びカメラシステムによれば、長時間露光の効果を奏する画像を良好な画質で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るカメラシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、画像処理部の機能構成を示す図である。
【
図3】
図3は、撮影方向の変更の様子を示す図である。
【
図4】
図4は、撮影方向の変更の様子を示す他の図である。
【
図5】
図5は、撮像方法の全体フローチャートである。
【
図6】
図6は、撮影条件と撮影モードとの関係を示す表である。
【
図7】
図7は、撮像方法の個別フローチャートである。
【
図8】
図8は、撮影方向の変更を促す情報の表示例を示す図である。
【
図9】
図9は、合成画像の生成の様子を示す図である。
【
図10】
図10は、合成画像の生成の様子を示す他の図である。
【
図11】
図11は、合成画像の生成の様子を示すさらに他の図である。
【
図12】
図12は、撮像方法の他の個別フローチャートである。
【
図13】
図13は、撮像方法のさらに他の個別フローチャートである。
【
図14】
図14は、撮像方法のさらに他の個別フローチャートである。
【
図15】
図15は、多重露光及び長時間露光による効果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る撮像装置、撮像方法、及びカメラシステムを実施するための形態について詳細に説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
<撮像装置の全体構成>
図1は第1の実施形態に係るカメラシステム10(撮像装置、カメラシステム)の構成を示す図である。カメラシステム10は交換レンズ100(撮影レンズ、撮像部)及び撮像装置本体200(撮像装置)により構成され、後述するズームレンズ110を含む撮影レンズにより被写体像(光学像)を撮像素子210に結像させる。交換レンズ100と撮像装置本体200とは、図示せぬマウントを介して装着及び取り外しすることができる。
【0025】
<交換レンズの構成>
交換レンズ100は、ズームレンズ110(ズームレンズ、撮影レンズ)と、フォーカスレンズ120(撮影レンズ)と、絞り130と、レンズ駆動部140と、可変頂角プリズム150とを備える。レンズ駆動部140は、画像処理装置240(
図2の露光制御部240A)からの指令に応じてズームレンズ110、フォーカスレンズ120を進退駆動してズーム(光学ズーム)調整、フォーカス調整を行う。ズーム調整及びフォーカス調整は、画像処理装置240からの指令に応じて行う他に、ユーザが行ったズーム操作、フォーカス操作(図示せぬズームリング、フォーカスリングの回動等)に応じて行ってもよい。また、レンズ駆動部140は画像処理装置240からの指令に応じて絞り130を制御し、露出を調整する。一方、ズームレンズ110及びフォーカスレンズ120の位置、絞り130の開放度等の情報が画像処理装置240に入力される。なお、交換レンズ100は光軸L1を有する。
【0026】
<撮像装置本体の構成>
撮像装置本体200は、撮像素子210(撮像部)、AFE220(AFE:Analog Front End、撮像部)、A/D変換器230(A/D:Analog to Digital、撮像部)、及び画像処理装置240を備える。撮像素子210は、多数の受光素子がマトリクス状に配列された受光面を備える。そして可変頂角プリズム150、ズームレンズ110、フォーカスレンズ120、及び絞り130を透過した被写体光が撮像素子210の受光面上に結像され、各受光素子によって電気信号に変換される。撮像素子210の受光面上にはR(赤),G(緑),またはB(青)のカラーフィルタが設けられており、各色の信号に基づいて被写体のカラー画像を取得することができる。なお、撮像素子210としては、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)等の様々な光電変換素子を用いることができる。AFE220は撮像素子210から出力されるアナログ画像信号のノイズ除去、増幅等を行い、A/D変換器230は、取り込んだアナログ画像信号を階調幅があるデジタル画像信号に変換する。
【0027】
<画像処理装置の構成>
図2は、画像処理装置240(画像処理装置)の機能構成を示す図である。画像処理装置240は、露光制御部240A(露光制御部)、判断部240B(判断部)、モード設定部240C(モード設定部)、検出部240D(検出部)、画像生成部240E(画像生成部)、情報提示部240F(情報提示部)、撮影方向変更部240G(撮影方向変更部)、及び報知部240H(報知部)を備え、A/D変換器230から入力されたデジタル画像信号に基づいて合成画像の生成等の処理を行う。画像処理装置240による処理の詳細は後述する。
【0028】
画像処理装置240の機能は、各種のプロセッサ(processor)を用いて実現できる。各種のプロセッサには、例えばソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能を実現する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が含まれる。また、上述した各種のプロセッサには、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)も含まれる。さらに、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路なども、上述した各種のプロセッサに含まれる。
【0029】
各部の機能は1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ)で実現されてもよい。また、複数の機能を1つのプロセッサで実現してもよい。複数の機能を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、画像処理装置本体、サーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能として実現する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、システム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能は、ハードウェア的な構造として、上述した各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0030】
上述したプロセッサあるいは電気回路がソフトウェア(プログラム)を実行する際は、実行するソフトウェアのプロセッサ(コンピュータ)読み取り可能なコードをROM(Read Only Memory)等の非一時的記録媒体に記憶しておき、プロセッサがそのソフトウェアを参照する。非一時的記録媒体に記憶しておくソフトウェアは、画像の入力、ズーム処理、合成処理等を実行するためのプログラムを含む。ROMではなく各種光磁気記録装置、半導体メモリ等の非一時的記録媒体にコードを記録してもよい。ソフトウェアを用いた処理の際には例えばRAM(Random Access Memory)が一時的記憶領域として用いられ、また例えば不図示のEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)に記憶されたデータを参照することもできる。
【0031】
画像処理装置240は、上述の各部の他にROM242(ROM:Read Only Memory、非一時的記録媒体)を備える。ROM242には、画像の入力、ズーム処理、合成処理等に必要なプログラム(本発明に係る撮像方法を実行するためのプログラムを含む)のコンピュータ読み取り可能なコードが記録される。
【0032】
<操作部>
操作部250は図示せぬレリーズボタン、操作用ボタン(例えば十字ボタン、Quickボタン、OKボタン等)、ダイヤル、スイッチ等を有し、ユーザは撮影条件設定、撮影指示、合成画像生成指示、画像処理内容及び/または程度の設定等、各種の操作を行うことができる。なお、モニタ270をタッチパネルで構成して操作部250として使用してもよい。
【0033】
<記憶部>
記憶部260は各種の光磁気記録媒体、半導体メモリ等の非一時的記録媒体及びその制御回路により構成され、撮影画像、合成画像等を記憶する。記録媒体は撮像装置本体200に対し着脱できるタイプを用いることができる。
【0034】
<モニタ及びファインダ>
モニタ270(表示装置)は例えば液晶表示パネルにより構成され、ライブビュー画像、撮影画像、合成画像、撮影補助情報等を表示することができる。モニタ270は撮像装置本体200の背面側、天面側等に配置することができる。同様に、ファインダ280も例えば液晶表示パネル、プリズム、レンズ等により構成され、ユーザは図示せぬ接眼部を介してライブビュー画像、撮影画像、合成画像、撮影補助情報等を視認することができる。ファインダ280としては「光学式ビューファインダ(OVF:Optical View Finder)」、「電子式ビューファインダ(EVF:Electronic View Finder)」、あるいはこれらの組合せである「ハイブリッド式ビューファインダ(HVF:Hybrid View Finder)」を用いることができる。
【0035】
<偏光可動部>
可変頂角プリズム150(撮影方向偏光部)は、光軸方向の前後に配置された2枚の透明板ガラスの間に高屈折率の液体が封入されて構成され、交換レンズ100の先端部(被写体側)に装着されている。撮影方向変更部240Gからの指令により、側面に設けられた蛇腹状の伸縮部152をレンズ駆動部140が伸縮させて液体の傾きを変えることにより、被写体光の屈折角(すなわち撮影方向)を変化させることができる。
図3の(a)部分は光軸L1が変化していない状態を示し、(b)部分は伸縮部の伸縮により光軸が図の下方向に変化し光軸L2となった状態を示している。なお、伸縮部152を伸縮させる箇所を複数箇所(例えば3箇所、4箇所等)設けることにより、光軸の方向を2軸周りに変化させることができる。なお、可変頂角プリズム150のような光学要素を交換レンズ100の先端部ではなく基端部に設けてもよい。
【0036】
撮影方向の変更は、可変頂角プリズムではなくミラーの駆動により行うこともできる。例えば、
図4の(a)部分に示すように2枚のミラー160を対向して配置し、(b)部分に示すようにこれらミラー160の向きを変化させる(撮影方向変更部240Gからの指令によりレンズ駆動部140が駆動する)ことにより、光軸の方向(すなわち撮影方向)を変化させることができる(
図4の(b)部分では図の下向きに変化させた光軸L3を示している)。なお、ミラー160を2軸周りに回転させることにより、光軸の方向を2軸周りに変化させることができる。
【0037】
上述した可変頂角プリズム150、ミラー160のような部材及び/または機構を交換レンズ100に設けるのに代えて、またはこれに加えて、圧電素子等のデバイスにより撮像素子の向きを変えることで撮影方向を変更してもよい。
【0038】
<撮像方法の処理>
上述した構成のカメラシステム10における撮像方法の処理について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る撮像方法を示すフローチャートである。
【0039】
<白飛びが発生するか否かの判断>
操作部250の図示せぬボタン、スイッチ等に対する操作により長時間露光モードが開始されると、判断部240Bが、設定された露光時間(以下、「当初露光時間」という)が第1のしきい値以上か否か判断する(ステップS100:判断工程)。露光制御部240Aはユーザの操作に応じて当初露光時間を設定してもよいし、ユーザの操作によらずに設定してもよい。露光制御部240Aは、得ようとする効果の内容(例えば背景、被写体が流れて見えること)及びその程度に応じて当初露光時間を設定することができる。
【0040】
当初露光時間が第1のしきい値以上である場合、判断部240Bは「白飛びが発生する」と判断し、ステップS110へ進む。この場合、詳細を後述するように第1のモード(多重露光により撮影するモード)が設定される。一方、当初露光時間が第1のしきい値未満である場合、判断部240Bは「白飛びが発生しない」と判断し、ステップS120へ進む。この場合、詳細を後述するように第2のモード(連続的な露光により撮影するモード)が設定される。なお「白飛び」とは、「撮像素子210の出力が飽和してしまい被写体の輝度差を画像でまったく、またはほとんど表現できない状態(本来は輝度に差がある部分が、全て最高輝度もしくは最高輝度に近い輝度になってしまう状態)」ということができる。
【0041】
第1のしきい値は数十秒程度(例えば、60秒)とすることができるが、この値に限定されるものではない。また、得ようとする画像の露出状態はユーザによって異なる場合があるので、得ようとする効果の内容及び/または程度、被写体の種類等の条件に応じて第1のしきい値を変化させてもよい。このような第1のしきい値の設定により、白飛び防止して良好な画質の画像を得ることができる。
【0042】
<白飛び発生の判断タイミング>
ステップS100における白飛びが発生するか否かの判断(具体的には、露光時間が第1のしきい値以上であるか否かの判断)は露光開始時に行う。「露光開始時に行う」に該当する場合には、例えば長時間露光モードへの移行操作がなされた時点で判断する場合、移行後にモード設定を指示する操作に応じて判断する場合、長時間露光モードへの移行後に図示せぬシャッターボタンへの操作による撮影準備指示に応じてAE条件(AE:Automatic Exposure、自動露出制御)及びAF条件(AF:Automatic Focus、自動焦点制御)が決定した際に判断する場合、及び図示せぬシャッターボタンへの操作による撮影指示がされてから実際の露光が開始される前に判断する場合を含めることができるが、これらの態様に限定されるものではない。
【0043】
<焦点距離に基づく判断>
第1の実施形態では、露出時間に基づく白飛び発生有無の判断に加えて、交換レンズ100の焦点距離を考慮してモードを設定する。具体的には、「白飛びが発生する」と判断された場合(ステップS100でYES)、モード設定部240Cは交換レンズ100の焦点距離が第2のしきい値以下であるか否かを判断し(ステップS110)、判断が肯定された場合はステップS200へ進んで第1のモード(1)を設定する。ステップS110の判断が否定された場合はステップS300へ進んで第1のモード(2)を設定する。
【0044】
具体的には、ステップS110の判断が肯定された場合(焦点距離≦第2のしきい値)、多重露光により撮影し撮影方向の自動変更は行わない「第1のモード(1)」を設定する(ステップS200:モード設定工程)。一方、ステップS110の判断が否定された場合(焦点距離>第2のしきい値)、可変頂角プリズム150の駆動による被写体の移動量が大きく効果的な撮影が可能であるため、撮影方向変更部240Gがレンズ駆動部140を介して可変頂角プリズム150を駆動し、撮影方向を変更しながら多重露光での撮影を行う「第1のモード(2)」を設定する(ステップS300:モード設定工程)。
【0045】
焦点距離に対するしきい値(上述した「第2のしきい値」)は、例えば、撮像素子の大きさを「35mmフルサイズ」に換算した場合(いわゆる「35mm換算」の場合)に35mm以上50mm以下とすることができるが、この値に限定されるものではない。
【0046】
「白飛びは発生しない」と判断され(ステップS100でNO)第2のモードを設定する場合も、モード設定部240Cは交換レンズ100の焦点距離が第2のしきい値以下であるか否かを判断する(ステップS120)。判断が肯定された場合はステップS400へ進み、モード設定部240Cは長時間露光(連続的な露光)により撮影する第2のモード(1)を設定する。一方、ステップS110の判断が否定された場合はステップS500へ進み、モード設定部240Cは、撮影方向変更部240Gがレンズ駆動部140を介して可変頂角プリズム150を駆動し撮影方向を変更しながら長時間露光(連続的な露光)での撮影を行う第2のモード(2)を設定する。
【0047】
露光時間及び焦点距離のしきい値に応じたモード設定の様子をまとめた表を
図6に示す。
【0048】
<各モードでの処理>
ステップS200,S300,S400,S500で設定されたモードに従い、撮影、画像処理が行われる(
図5では全体をまとめて「ステップS600」と記載している)。以下、ステップS600における各モードでの具体的な処理について説明する。
【0049】
<第1のモード(1)での処理>
図5のステップS200で第1のモード(1)が設定された場合の処理を
図7に示す。第1のモード(1)が設定されると、報知部240Hはモニタ270及び/またはファインダ280への表示により、第1のモード(1)を設定したことをユーザに報知する(ステップS210:報知工程)。図示せぬスピーカーによる音声出力で報知してもよい。
【0050】
第1のモード(1)では、ステップS100の判断において「露光時間(当初露光時間)が第1のしきい値以上なので、白飛びが発生する」と判断されている。そこで第1のモード(1)では、この「当初露光時間」未満の露光時間(以下、「多重露光時間」という)での撮影(間欠的な画像取得、多重露光)を複数回行うことにより、白飛びを防止しつつ長時間露光の効果を得る。例えば、当初露光時間が10秒で「白飛びが発生する」と判断された場合、当初露光時間内に多重露光時間が0.5秒の撮影を10回繰り返すことが考えられる。なお、多重露光の回数を増やせば長時間露光(連続的な露光)と同様の効果(背景の流れ、被写体の軌跡等の滑らかさ)を得ることができるが、多数回の撮影及び処理(位置合わせ、画像処理、合成等)を行うとシステムに対する負荷が高くなる。そこで露光制御部240A(撮像部)は、得ようとする効果(当初露光時間に対応)に加えてシステムに対する負荷を考慮して取得する画像の数(フレーム数)、多重露光時間、及び画素数を設定し(ステップS220:露光時間設定工程)、設定した条件で撮像素子210(撮像部)を制御してiフレーム目の露光を行う(ステップS230:撮影工程)。
【0051】
検出部240Dは撮影した画像から被写体及びその移動を検出し(ステップS240:検出工程)、情報提示部240Fは検出の結果に応じて撮影方向の変更を促す情報を提示する(ステップS250:情報提示工程)。情報の提示は、例えば
図8に示すように、情報提示部240Fがファインダ280の表示領域1000に撮影方向の変更(パン及び/またはチルトの方向)を示す記号等を示すことにより行うことができる。
図8の例では、合計8個の矢印1010,1020のうち左向きの矢印1020を表示している(実際に表示している矢印を実線で図示、その他を点線で図示)。このような表示はファインダ280ではなくモニタ270に行ってもよい。表示の際に、撮影方向の変更量に応じて矢印の長さを変化させてもよい。また、表示に代えて、または表示に加えて図示せぬスピーカーにより音声出力(例えば、「左方向にパンして下さい」)してもよい。このような情報の提示により、ユーザは撮影方向の変更操作を容易に行うことができ、長時間露光の効果を奏する画像を容易に撮影することができる。なお、ステップS240において、検出部240Dは、撮影タイミングの異なる画像間で主要被写体の位置を比較して動きベクトルを算出すること等により被写体の移動方向及び移動量を検出することができる。
【0052】
露光制御部240A、検出部240D、情報提示部240Fは、ステップS230からS250までの制御(撮像素子210から間欠的に複数の画像を取得する制御;多重露光)を撮影枚数Nの分(ステップS260でYESになるまで)繰り返し、ステップS270に進む。
【0053】
上述したステップS230での各回の露光(撮影)により得られた画像(撮影画像)の例を
図9に示す。
図9において、撮影画像1031,1032,1033は被写体901,902,903(主要被写体)の移動により撮影範囲が異なる画像であり、画像生成部240Eは、これらの撮影画像1031,1032,1033から合成画像を生成する(ステップS270:画像生成工程)。ステップS270における合成画像の生成例について、以下説明する。
【0054】
<合成画像の生成例1>
画像生成部240Eは、各画像を移動、回転、拡大、縮小させて被写体901,902,903を一致させ、位置合わせした複数の画像を合成して仮合成画像1100を生成する。
図9に示すように、仮合成画像1100はパノラマ状の合成画像である。また、画像生成部240Eは、
図10における画像1101~1105のように切り出し範囲が異なる複数の画像を仮合成画像1100から切り出す。切り出し範囲を変えることで、被写体が移動する効果を合成画像に付与することができる。画像生成部240Eは、切り出した画像に対し、ぼかし、明度及び/または彩度の変更、拡大、縮小、変形等の画像処理を施す。この際、最終的な合成画像の明るさが長時間露光(連続的な露光)の場合と同じになるように、個々の画像の明るさを調整してもよい。画像処理の内容及び程度はユーザの指定に応じて設定してもよいし、ユーザの指定によらずに設定してもよい。画像生成部240Eは、画像処理を施した画像を合成して最終合成画像(合成画像)を生成する。
図10の例では、仮合成画像1100から切り出した画像1101~1105、及びそれらの画像を半透明化して重ね合わせ、最終合成画像1200(合成画像)を生成している。これらの処理により、所望の効果(背景の流れ、被写体の軌跡等効果の内容及びその度合い)を奏する画像を生成することができる。また、画像生成部240Eは、最終合成画像1200を記憶部260に記憶させ(画像記憶工程)、モニタ270に表示させる(画像表示工程)。撮影画像、仮合成画像等を記憶及び/または表示させてもよい。
【0055】
<合成画像の生成例2>
生成例2では、画像生成部240Eは、撮影画像を位置合わせする際に被写体901,902,903を少しずつずらす。ずらす量は、奏する効果(流れ、移動等)の内容及び程度に応じて設定することができる。また、画像生成部240Eは、それぞれの撮影画像に対し、ぼかし、明度及び/または彩度の変更、拡大、縮小、変形等の画像処理を施す。画像処理の内容及び程度はユーザの指定に応じて設定してもよいし、ユーザの指定によらずに設定してもよい。画像生成部240Eは、画像処理を施した画像を合成して最終合成画像(合成画像)を生成する。これらの処理により、例えば
図11の最終合成画像1300、あるいは最終合成画像1301のように被写体が画像の右から左に動いていく効果を強調した画像を得ることができる。生成した最終合成画像は、記憶部260に記憶させ(画像記憶工程)、モニタ270に表示させる(画像表示工程)。撮影画像を記憶及び/または表示させてもよい。
【0056】
<第1のモード(2)での処理>
図5のステップS300で第1のモード(2)が設定された場合の処理を
図12に示す。第1のモード(2)が設定されると、報知部240Hは第1のモード(1)の場合と同様に、第1のモード(2)を設定したことをユーザに報知する(ステップS310:報知工程)。露光制御部240A(撮像部)は、第1のモード(1)の場合と同様に、得ようとする効果に加えてシステムに対する負荷を考慮し、取得する画像の数(フレーム数)、多重露光時間、及び画素数を当初露光時間に応じて設定し(ステップS320:露光時間設定工程)、撮像素子210(撮像部)を制御してiフレーム目の露光を行い画像を撮影する(ステップS330:撮影工程)。
【0057】
第1のモード(2)は多重露光を行う(撮像素子210から間欠的に複数の画像を取得する)点で第1のモード(1)と共通しているが、上述のように焦点距離が長い(焦点距離>第2のしきい値)場合についてのモードである。このため、検出部240Dにより検出した被写体の移動に追従させて撮影方向変更部240Gがレンズ駆動部140を介して可変頂角プリズム150を駆動し、自動的に撮影方向を変更しながら(ステップS350:撮影方向変更工程)多重露光での撮影(ステップS330)を行う。露光制御部240Aは、撮影枚数NになりステップS360の判断が肯定されるまで多重露光での撮影を繰り返させる。第1のモード(2)では、このような撮影により可変頂角プリズム150の駆動により効果的な撮影(被写体の移動量等、長時間露光の効果が大きな撮影)を行うことができる。
【0058】
なお、第1のモード(2)の処理において、取得する画像の数、多重露光時間、及び画素数の設定(ステップS320:露光時間設定工程)、被写体及びその移動の検出(ステップS340:検出工程)は、上述した第1のモード(1)と同様に行うことができる。また、ステップS330における各回の露光により得られた撮影画像から合成画像(最終画像)を生成、記憶、及び表示する処理(ステップS370の画像生成工程、ステップS380の画像記憶工程、画像表示工程)についても、上述した第1のモード(1)と同様に行うことができる。これらの処理により、第1のモード(2)においても、所望の効果(背景の流れ、被写体の軌跡等効果の内容及びその度合い)を奏する合成画像(最終合成画像)を得ることができる。
【0059】
<第2のモード(1)での処理>
図5のステップS400で第2のモード(1)が設定された場合の処理を
図13に示す。第2のモード(1)が設定されると、報知部240Hは第1のモードの場合と同様に、第2のモード(1)を設定したことをユーザに報知する(ステップS410:報知工程)。露光制御部240A(撮像部)は撮像素子210(撮像部)を制御して露光を開始し(ステップS420:撮影工程)、検出部240Dは指定されたフレームレートで被写体及びその移動方向を検出する(ステップS430:検出工程)。そして情報提示部240Fは、第1のモードの場合と同様に、検出結果に応じて撮影方向の変更を促す情報を提示する(ステップS440:情報提示工程、
図8等を参照)。これによりユーザは撮影方向の変更操作を容易に行うことができ、長時間露光の効果を奏する画像を容易に撮影することができる。
【0060】
指定された露光時間が経過して露光が終了すると(ステップS450でYES)、露光制御部240Aは撮影画像を記憶部260に記憶させ(ステップS460)、またモニタ270に表示させる(ステップS470)。第2のモード(1)は長時間露光を行う(撮像素子210から連続的に画像を取得する)ので、露光時間(当初露光時間)に応じた効果を得ることができる。なお、
図10について上述したのと同様の処理(画像の切り出し、処理、合成)を撮影画像に対し施して長時間露光の効果をさらに高めてもよい。
【0061】
<第2のモード(2)での処理>
図5のステップS500で第2のモード(2)が設定された場合の処理を
図14に示す。第2のモード(2)が設定されると、報知部240Hは第2のモード(1)の場合と同様に第2のモード(2)を設定したことをユーザに報知し(ステップS510:報知工程)、露光制御部240A(撮像部)は撮像素子210(撮像部)を制御して露光を開始する(ステップS520:撮影工程)。第2のモード(2)は連続的な露光を行う(撮像素子210から連続的に画像を取得する)点で第2のモード(1)と共通しているが、上述のように焦点距離が長い(焦点距離>第2のしきい値)場合についてのモードである。このため、検出部240Dにより検出(ステップS530:検出工程)した被写体の移動に追従させて撮影方向変更部240Gがレンズ駆動部140を介して可変頂角プリズム150を駆動し、自動的に撮影方向を変更しながら(ステップS540:撮影方向変更工程)撮影を行う。長時間露光での撮影は、指定された露光時間(当初露光時間)が経過しステップS550の判断が肯定されるまで繰り返される。第2のモード(2)では、このような撮影により可変頂角プリズム150の駆動による被写体の移動量が大きく効果的な撮影(長時間露光の効果が大きな撮影)を行うことができる。指定された露光時間が経過して露光が終了すると(ステップS550でYES)、露光制御部240Aは撮影画像を記憶部260に記憶させ(ステップS560)、またモニタ270に表示させる(ステップS570)。
図10について上述したのと同様の処理(画像の切り出し、処理、合成)を撮影画像に対し施して長時間露光の効果をさらに高めてもよい。
【0062】
<多重露光及び長時間露光の効果>
図15は多重露光及び長時間露光の効果の例を示す図である。画像2000は多重露光による画像の例を示しており、被写体の軌跡(図中の黒部分)が不連続的(段階的)に薄くなっている。これに対し画像2001は長時間露光(連続的な露光)による画像の例を示しており、被写体の軌跡(図中の灰色部分)が連続的に薄くなっている。画像2000に示すような多重露光の場合の不連続的な変化は多重露光の数(フレーム数)を増やせば連続的になるが、ステップS220,S320について上述したように、得ようとする効果に加えシステムに対する負荷を考慮して多重露光の数、多重露光時間、及び画素数を設定することが好ましい。なお、画像2001の露光時間は画像2000の露光時間(多重露光時間)の合計よりも長いので画像2001の方が明るくなっているが、個々の画像または合成後の画像の明るさを画像処理により調整することで、画像2000の明るさを画像2001と同じにすることができる。
【0063】
<その他>
以上で本発明の実施形態に関して説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第1の実施形態におけるカメラシステム10は、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末等により実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 カメラシステム
100 交換レンズ
110 ズームレンズ
120 フォーカスレンズ
130 絞り
140 レンズ駆動部
150 可変頂角プリズム
152 伸縮部
160 ミラー
200 撮像装置本体
210 撮像素子
220 AFE
230 A/D変換器
240 画像処理装置
240A 露光制御部
240B 判断部
240C モード設定部
240D 検出部
240E 画像生成部
240F 情報提示部
240G 撮影方向変更部
240H 報知部
242 ROM
250 操作部
260 記憶部
270 モニタ
280 ファインダ
901 被写体
902 被写体
903 被写体
1000 表示領域
1010 矢印
1020 矢印
1031 撮影画像
1032 撮影画像
1033 撮影画像
1100 仮合成画像
1101 画像
1102 画像
1103 画像
1104 画像
1105 画像
1200 最終合成画像
1300 最終合成画像
1301 最終合成画像
2000 画像
2001 画像
L1 光軸
L2 光軸
L3 光軸
N 撮影枚数
S100~S600 撮像方法の各ステップ