(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】基板処理装置およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220127BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 J
(21)【出願番号】P 2020534024
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2018029277
(87)【国際公開番号】W WO2020026445
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】久門 佐多雄
(72)【発明者】
【氏名】谷山 智志
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037937(WO,A1)
【文献】特開平07-006956(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェハを所定の軸に沿って所定の間隔で配列した状態で保持する基板保持具と、
前記基板保持具の下方に配置される断熱アセンブリと、
前記基板保持具及び前記断熱アセンブリを収容する筒状の空間を形成する処理室と、
前記処理室内の前記複数のウェハのそれぞれの側部に向いて穿設された1ないし複数の開口によって、前記処理室と流体連通するガス供給機構と、
前記複数のウェハのそれぞれの側に向いて穿設された1ないし複数の主排気口によって前記処理室と流体連通するガス排出機構と、
前記ガス排出機構に連通し、前記処理室内の雰囲気を排出する排気ポートと、
前記処理室の側壁に設けられ、前記断熱アセンブリに面する位置において、前記処理室内と前記排気ポートとを連通させる中間排気口と、
前記処理室の側壁に設けられ、前記中間排気口に対応する高さ位置において、前記処理室内と前記ガス供給機構とを連通させる供給室排気口と、を備え、
前記断熱アセンブリは、前記中間排気口に対応する高さ位置において、前記中間排気口に対応する高さよりも上方および下方の外径よりも小さな外径を有するくびれが形成された基板処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給機構は、
前記処理室の側面の外側に、前記軸に平行に形成され、前記複数のウェハのそれぞれに対応して前記処理室の側面に穿設された複数のスリット開口によって、前記処理室と流体連通する複数の供給室を備え、
前記ガス排出機構は、
前記処理室の側面の外側であって前記供給室と異なる位置に形成され、前記処理室の側面に穿設された主排気口によって前記処理室と流体連通する排気室を備え、
前記排気ポートは、前記排気室に連通し、前記排気室内の雰囲気を排出し、
前記中間排気口は、前記処理室内と前記排気室内とを連通させ、
前記供給室排気口は、前記処理室内と前記供給室内とを連通させる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数の供給室の底の開口からそれぞれ挿入されて設けられ、前記ウェハに対してガスを提供するチューブ状のインジェクタと、
前記インジェクタのそれぞれを、前記処理室の外に設けられた対応するガス供給源に流体連通させる供給管と、を更に備えた請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記断熱アセンブリの下方にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記処理室、前記供給室及び前記排気室の下端の外周に一体に形成されたフランジと、
下端に前記基板保持具を出し入れ可能な開口を有し、前記フランジを支持する筒状のマニホールドと、
前記マニホールドの下端の開口を開閉可能に閉塞する蓋と、
前記ウェハを前記処理室の外から加熱するヒータと、を備え、
前記断熱アセンブリは、前記ウェハの直径よりも大きく、前記処理室の内径よりも小さい直径を有する円筒のボディを有する請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記断熱アセンブリの下方に供給されたパージガスが前記排気ポートに排出される経路のうち、前記供給室の底開口、前記供給室、前記スリット開口、前記ウェハの近傍、前記主排気口、前記排気室の順で流れる第1経路のコンダクタンスが、
前記断熱アセンブリの周囲、前記排気室の順で流れる第2経路のコンダクタンスよりも大きくなり、
前記供給室の底開口、前記供給室、前記供給室排気口、前記くびれの周囲、前記中間排気口、前記排気室の順で流れる第3経路のコンダクタンスよりも小さくなるように構成された請求項2乃至4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記供給室排気口、前記ウェハの中心、前記中間排気口、及び前記排気ポートは、一直線上に配置される請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記中間排気口は、前記排気ポートの管軸の延長線上の位置において開口する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記インジェクタは、前記複数のウェハの内の最下段のウェハと同じもしくはそれより高い高さに設けられた吐出口からガスを供給し、前記ウェハを処理している間であって圧力の時間変動が最も大きくタイミングにおいて、前記吐出口から前記供給室排気口に向かう下降流が前記供給室内に生じる流量でガスを供給する請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記断熱アセンブリは、底が分離するように構成され、その内部の前記くびれよりも上方および下方に、前記くびれの内径よりも小さな直径を有する複数の断熱板又は反射板を備える請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記断熱アセンブリは、前記くびれよりも上方に配置された複数の断熱板又は反射板よりも上に、前記ウェハを加熱する補助ヒータを備える請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理室は、収容可能な最大の前記ウェハの直径の104~108%の内径の筒状に構成され、第1及乃至第3のノズルは、前記処理室の側部の一部を外側に張り出して形成された供給バッファ内にそれぞれ隔離された状態で収容される請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記供給室及び前記排気室は、前記処理室と分離不能に構成される請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項13】
請求項1の基板処理装置の前記処理室にウェハを搬入する工程と、
前記ウェハを処理する工程と、
を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程における基板(ウェハ)の熱処理では、例えば縦型基板処理装置が使用されている。縦型基板処理装置では基板保持具によって複数の基板を垂直方向に配列して保持し、基板保持具を処理室内に搬入する。その後、処理室外に設置されたヒータによって基板を加熱した状態で処理室内に処理ガスを導入し、基板に対して薄膜形成処理等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
急激な圧力変動により、炉口部下部での膜割れが巻き上げられ、基板上にパーティクルが落ちる場合がある。
本発明の目的は、上記パーティクルを低減する基板処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、基板処理装置は、(a)複数のウェハを所定の軸に沿って所定の間隔で配列した状態で保持する基板保持具と、(b)前記基板保持具の下方に配置される断熱アセンブリと、(c)前記基板保持具及び前記断熱アセンブリを収容する筒状の空間を形成する処理室と、(d)前記処理室内の前記複数のウェハのそれぞれの側部に向いて穿設された1ないし複数の開口によって、前記処理室と流体連通するガス供給機構と、(e)前記複数のウェハのそれぞれの側に向いて穿設された1ないし複数の主排気口によって前記処理室と流体連通するガス排出機構と、(f)前記ガス排出機構に連通し、前記処理室内の雰囲気を排出する排気ポートと、(g)前記処理室の側壁に設けられ、前記断熱アセンブリに面する位置において、前記処理室内と前記排気ポートとを連通させる中間排気口と、(h)前記処理室の側壁に設けられ、前記中間排気口に対応する高さ位置において、前記処理室内と前記ガス供給機構とを連通させる供給室排気口と、を備える。前記断熱アセンブリは、前記中間排気口に対応する高さ位置において、前記中間排気口に対応する高さよりも上方および下方の外径よりも小さな外径を有するくびれが形成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、炉口部下部のパーティクルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施形態の基板処理装置における断熱アセンブリの縦断面図。
【
図3】実施形態の基板処理装置における反応管の断面を含む斜視図。
【
図4】実施形態の基板処理装置における反応管の断面図。
【
図5】実施形態の基板処理装置における反応管の底面図。
【
図6】実施形態の基板処理装置における軸パージガスの流れを示す図。
【
図7】実施形態の基板処理装置におけるコントローラの構成図。
【
図9】モデル化された反応管内の排気経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の基板処理装置1は、半導体集積回路の製造における熱処理工程を実施する縦型熱処理装置として構成され、処理炉2を備えている。処理炉2は、処理炉2を均一に加熱するために、複数のヒータユニットからなるヒータ3を有する。ヒータ3は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより、基板処理装置1の設置床に対して垂直に据え付けられている。ヒータ3は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ3の内側に、反応容器(処理容器)を構成する反応管4が配設されている。反応管4は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管4は、下端のフランジ部4Cにおいて互いに結合した外管4Aと内管4Bとを有する2重管構造を有する。外管4Aと内管4Bの上端は閉じられ、内管4Bの下端は開口している。フランジ部4Cは、外管4Aよりも大きな外径を有し、外側へ突出している。反応管4の下端寄りには、外管4A内と連通する排気ポートである排気出口4Dが設けられる。これらを含む反応管4全体は単一の材料で一体に形成される。外管4Aは、内側を真空にしたときの圧力差に耐えうるように、比較的肉厚に構成されている。
【0011】
マニホールド5は、円筒又は円錐台形状で金属製又は石英製であり、反応管4の下端を支えるように設けられる。マニホールド5の内径は、反応管4の内径(フランジ部4Cの内径)よりも大きく形成されている。これにより、反応管4の下端(フランジ部4C)と後述するシールキャップ19との間に後述する円環状の空間を形成される。この空間もしくはその周辺の部材を炉口部と総称する。
【0012】
内管4Bは、排気出口4Dよりも反応管の奥側で、その側面において内側と外側を連通させる主排気口4Eを有し、また、主排気口4Eと反対の位置において供給スリット4Fを有する。主排気口4Eは、ウェハ7が配置されている領域に対して開口する単一の縦長の開口である。供給スリット4Fは、円周方向に伸びたスリットであり、各ウェハ7に対応するように垂直方向に並んで設けられている。
【0013】
内管4Bは更に、排気出口4Dよりも反応管4の奥側で且つ主排気口4Eよりも開口側の位置に、処理室6と排気空間(排気室)Sとを連通させる中間排気口4Gが設けられる。また、フランジ部4Cにも、処理室6と排気空間S下端とを連通させる底排気口4H、底排気口4J(
図3参照)及びノズル導入孔4K(
図5参照)が形成される。言い換えれば、排気空間Sの下端は、フランジ4Cによって底排気口4H、4J等を除き閉塞されている。中間排気口4G及び底排気口4Hは、主に後述の軸パージガスを排気するように機能する。
【0014】
外管4Aと内管4Bの間の排気空間Sには、供給スリット4Fの位置に対応させて、原料ガス等の処理ガスを供給する1本以上のノズル8が設けられている。ノズル8には、処理ガス(原料ガス)を供給するガス供給管9がマニホールド5を貫通してそれぞれ接続されている。
【0015】
それぞれのガス供給管9の流路上には、上流方向から順に、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)10および開閉弁であるバルブ11が設けられている。バルブ11よりも下流側では、不活性ガスを供給するガス供給管12がガス供給管9に接続されている。ガス供給管12には、上流方向から順に、MFC13およびバルブ14が設けられている。主に、ガス供給管9、MFC10、バルブ11により、処理ガス供給系である処理ガス供給部が構成される。それらに更にMFC13およびバルブ14を含めて、ガス供給系と呼ぶ。
【0016】
インジェクタであるノズル8は、ノズル室42内に、反応管4の下部からまっすぐ立ち上がるように設けられている。ノズル8の側面や上端には、ガスを供給する1ないし複数のノズル孔8Hが設けられている。複数のノズル孔8Hは、供給スリット4Fのそれぞれの開口に対応させて、反応管4の中心を向くように開口させることで、内管4Bを通り抜けてウェハ7に向けてガスを噴射することができる。
【0017】
排気出口4Dには、処理室6内の雰囲気を排気する排気管15が接続されている。排気管15には、処理室6内の圧力を検出する圧力検出器(圧力計)としての圧力センサ16および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ17を介して、真空排気装置としての真空ポンプ18が接続されている。APCバルブ17は、真空ポンプ18を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室6内の真空排気および真空排気停止を行うことができる。更に、真空ポンプ18を作動させた状態で、圧力センサ16により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室6内の圧力を調整することができるように構成される。主に、排気管15、APCバルブ17、圧力センサ16により、排気系が構成される。真空ポンプ18を排気系に含めて考えてもよい。
【0018】
マニホールド5の下方には、マニホールド5の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ19が設けられている。シールキャップ19は、例えばステンレスやニッケル基合金等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ19の上面には、マニホールド5の下端と当接するシール部材としてのOリング19Aが設けられている。
【0019】
また、シールキャップ19上面には、マニホールド5の下端内周より内側の部分に対し、シールキャップ19を保護するカバープレート20が設置されている。カバープレート20は、例えば、石英、サファイヤ、またはSiC等の耐熱耐蝕性材料からなり、円盤状に形成されている。カバープレート20は、機械的強度が要求されないため、薄い肉厚で形成されうる。カバープレート20は、シールキャップ19と独立して用意される部品に限らず、シールキャップ19の内面にコーティングされた或いは内面が改質された、窒化物等の薄膜或いは層であってもよい。カバープレート20はまた、円周の縁からマニホールド5の内面に沿って立ち上がる壁を有しても良い。
【0020】
基板保持具としてのボート21は、複数枚、例えば25~200枚のウェハ7を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持する。そこではウェハ7は、一定の間隔を空けて配列させる。ボート21は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。反応管4は、ボート21を安全に搬入出可能な最小限の内径を有することが望ましい場合がある。
【0021】
ボート21の下部には後述する断熱アセンブリ22が配設されている。断熱アセンブリ22は、上下方向の熱の伝導或いは伝達が小さくなるような構造を有し、通常、内部に空洞を有する。内部は軸パージガスによってパージされうる。反応管4において、ボート21が配置されている上部分を処理領域A、断熱アセンブリ22が配置されている下部分を断熱領域Bと呼ぶ。
【0022】
シールキャップ19の処理室6と反対側には、ボート21を回転させる回転機構23が設置されている。回転機構23には、軸パージガスのガス供給管24が接続されている。ガス供給管24には、上流方向から順に、MFC25およびバルブ26が設けられている。このパージガスの1つの目的は、回転機構23の内部(例えば軸受け)を、処理室6内で用いられる腐食性ガスなどから守ることである。パージガスは、回転機構23から軸に沿って排出され、断熱アセンブリ22内に導かれる。
【0023】
ボートエレベータ27は、反応管4の外部下方に垂直に備えられ、シールキャップ19を昇降させる昇降機構(搬送機構)として動作する。これにより、シールキャップ19に支えられたボート21およびウェハ7が、処理室6内外に搬入出される。なお、シールキャップ19が最下位置に降りている間、シールキャップ19の代わりに反応管4の下端開口を塞ぐシャッタ(不図示)が設けられうる。
【0024】
外管4Aの外壁には、温度センサ28が設置されている。温度センサ28は、上下に並んで配列された複数の熱電対によって構成されうる。温度センサ28により検出された温度情報に基づきヒータ3への通電具合を調整することで、処理室6内の温度が所望の温度分布となる。
【0025】
コントローラ29は、基板処理装置1全体を制御するコンピュータであり、MFC10, 13、バルブ11,14、圧力センサ16、APCバルブ17、真空ポンプ18、ヒータ3、キャップヒータ34(
図2参照)、温度センサ28、回転機構23、ボートエレベータ27等と電気的に接続され、それらから信号を受け取ったり、それらを制御したりする。
【0026】
次に、断熱アセンブリ22について
図2を用いて説明する。断熱アセンブリ22は、回転台37、断熱体保持具38、円筒部39および断熱体40により構成されており、回転台37は底板(受け台)を構成する。
【0027】
回転台37は、サブヒータ支柱33を貫通させる貫通孔が中心に形成された円盤形状を有し、回転軸36の上端部に載せられ、カバープレート20と所定の間隔h1を空けて固定されている。回転台37には、直径(幅)h2の排気孔37Aが、縁寄りに回転対称に複数形成されている。これにより、断熱アセンブリは、底が分離するように構成される。回転台37の上面には、断熱体40を保持する断熱体保持具38と円筒部39が、同心に載置され、ネジ等によって固定されている。
【0028】
断熱体保持具38は、中心にサブヒータ支柱33を貫通させる空洞を有する円筒形状に構成される。断熱体保持具38の内周とサブヒータ支柱33との間に、断熱アセンブリ22内の上方へ軸パージガスを供給する、円環状の断面を有する流路が形成される。断熱体保持具38の下端には、回転台37よりも小さな外径の外向きフランジ形状の足38Cを有する。一方、断熱体保持具38の上端は、そこからサブヒータ支柱33が突き出させるように広がって開口する、軸パージガスの供給口38Bを構成している。
【0029】
断熱体保持具38の柱には、断熱体40として複数の反射板40Aと断熱板40Bが、同軸に設置されている。
【0030】
円筒部39は、内管4Bとの間隙Gが所定の値となるような外径を有する。間隙Gは、処理ガスや軸パージガスの通り抜けを抑制するために、狭く設定することが望ましく、例えば、7.5mm~15mmとするのが好ましい。円筒部39の上端は、平坦な板で閉じており、そこにボート21が設置される。円筒部39の直径はウェハ7の直径よりも大きく、処理室6の内径よりも小さい。円筒部39は筒状の構造であるが、一部外周を絞った(円筒部39の上部および下部の直径よりの小さい直径の)くびれ39aが排気出口4D、中間排気口4G、供給室排気口4Lと同じ高さに設けられている。言い換えると、供給室排気口4L、くびれ39a、中間排気口4Gおよび排気出口4Dは一直線上に配置されている。くびれ39aは断熱板40Bよりも上方であり反射板40Aよりも下方に位置し、くびれ39aの内径は反射板40Aおよび断熱板40Bの直径よりも大きい。
【0031】
回転機構23のケーシング(ボディ)23Aは、シールキャップ19の下面に気密に固定される。ケーシング23Aの内部では、内側から順に、円筒形状の内軸23Bと、内軸23Bの直径よりも大きな直径の円筒形状に形成された外軸23Cとが、同軸に設けられる。回転軸36に結合される外軸23Cはケーシング23Aとの間に介設されたベアリング(不図示)によって回転自在に支承される一方、サブヒータ支柱33に結合される内軸23Bは、ケーシング23Aと回転不能に固定される。
【0032】
内軸23Bの内側には、サブヒータ支柱33が、垂直に挿通されている。サブヒータ支柱33は、石英製のパイプであり、その上端において補助ヒータであるキャップヒータ34を同心に保持する。キャップヒータ34は、円管を円環状に形成され構成され、外部から隔絶された内部には電熱線コイル34Bを収納している。電熱線コイル34Bやそれに付随する温度センサのリード線(不図示)は、サブヒータ支柱33を通って、シールキャップ19の外側へ取り出される。
【0033】
ガス供給管24によってケーシング23A内に導入された軸パージガスは、回転軸36の内側及び外側を上に流れる。回転軸36の内側に流入した軸パージガスは、断熱体保持具38とサブヒータ支柱33との間の流路を上向きに流れ、供給口38Bから出た後は、断熱体保持具38と円筒部39の内壁との間の空間を下向きに流れて、排気孔37Aから断熱アセンブリ22外へ排気される。回転軸36の外側に流入した軸パージガスは、回転軸36とカバープレート20の間を半径方向に広がって流れながら排気孔37Aからの軸パージガスと合流した後、炉口部をパージする。
【0034】
次に、反応管について
図3~5を用いて説明する。
図3に示すように、内管4Bには、処理室6内に処理ガスを供給するための供給スリット4Fが縦方向にウェハ7と同数、横方向に3個、格子状に並んで形成されている。内管4Bの内側すなわち処理室6は収容可能な最大のウェハ7の直径の104~108%の内径の筒状に構成されている。供給スリット4Fの横方向の並びの間や両端の位置において、外管4Aと内管4Bの間の排気空間Sを区画するように縦方向に伸びた仕切り板41が、それぞれ設けられる。複数の仕切り板41によって、主たる排気空間Sから分離された区画は、供給室であるノズル室(供給バッファ)42を形成する。すなわち、ノズル室42は内管4Bの側部の一部を外側に張り出して形成されている。結果的に排気空間Sは、断面においてC字型に形成されることになる。処理領域A付近において、ノズル室42と内管4B内を直接つなぐ開口は、供給スリット4Fのみである。
【0035】
仕切り板41は、内管4Bとは連結されるものの、外管4Aと内管4Bの温度差に起因する応力を避けるために外管4Aとは連結させず、わずかな隙間を有するように構成することができる。ノズル室42は、排気空間Sから完全に隔離される必要はなく、特に上端や下端において排気空間Sと通じた開口もしくは隙間を有しうる。ノズル室42は、その外周側が外管4Aによって区画されるものに限らず、外管4Aの内面に沿った仕切り板を別途設けても良い。
【0036】
内管4Bには、断熱アセンブリ22の側面に向かって開口する位置に、中間排気口4G、供給室排気口4Lが設けられている。中間排気口4Gは、排気出口4Dと同じ向きに設けられ、その開口の少なくとも1部が、排気出口4Dの管と重なるような高さに配置されている。供給室排気口4Lは中間排気口4Gと対向する位置に配置される。
【0037】
図4に示すように、3つのノズル室42には、ノズル8a~8cがそれぞれ設置されている。ノズル8a~8cの側面には、反応管4の中心方向を向いて開口したノズル孔8Hがそれぞれ設けられている。ノズル孔8Hから噴出されたガスは、供給スリット4Fから内管4B内に流れるように意図されているが、一部のガスは直接流入しない。
【0038】
ノズル8a~8cには、
図1に示されるようなガス供給管9、バルブ11、MFC10、ガス供給管12、バルブ14およびMFC13からなるガス供給系が、それぞれ別個に接続され、互いに異なるガスが供給されうる。仕切り板41により、各ノズル8a~8cはそれぞれ独立した空間内に設置されるため、各ノズル8a~8cから供給される処理ガスがノズル室42内で混ざり合う事を抑制することができる。またノズル室42に滞留するガスは、ノズル室42の上端や下端から排気空間Sへ排出されうる。このような構成により、ノズル室42内で処理ガスが混ざり合って薄膜が形成されたり、副生成物が生成されたりすることを抑制することができる。なお
図4においてのみ、ノズル室42の隣の排気空間Sに、反応管の軸方向(上下方向)に沿って任意で設置されうるパージノズル8dが示されている。以降、パージノズル8dは存在しないものとして説明する。
【0039】
図5に示すように、フランジ部4Cには、排気空間Sとフランジ下方とを接続する開口として、底排気口4H、4J及びノズル導入孔4Kが設けられている。底排気口4Hは、排気出口4Dに最も近い場所に設けられた長孔であり、底排気口4Jは、C字型の排気空間Sに沿って6箇所に設けられた小孔である。ノズル導入孔4Kは、その開口からノズル8a~8cが挿入され、通常、石英製のノズル導入孔カバー8S(
図1参照)によって塞がれる。底排気口4Jは、後述するように開口が大きすぎると、そこを通過する軸パージガスの流速が低下し、排気空間Sから原料ガス等が拡散によって炉口部に侵入してしまう。そのため、中央部の径を小さくした(くびれさせた)孔として形成する場合がある。
【0040】
次に、軸パージガスの排出経路について
図6を用いて説明する。ガス供給管24からの軸パージガスは、回転台37とカバープレート20の間の隙間(h1)を、拡散バリアを形成しながら半径方向に流れて、炉口部に放出される。そこでは軸パージガスは、原料ガスの炉口部への流入を抑制し、炉口部へ拡散などで侵入した原料ガスを希釈し、軸パージガスの流れに乗せて排出することで、炉口部に副生成物が付着したり劣化したりすることを防ぐ役割をしている。軸パージガスの排出経路は凡そ以下のように5つある。
【0041】
経路P1:底排気口4H又は4Jから排気空間Sに入り、排気出口4Dに至る
経路P2:内管4Bと断熱アセンブリ22の間の間隙Gを通り、中間排気口4Gから排気空間Sに入り、排気出口4Dに至る
経路P3:内管4Bと断熱アセンブリ22の間の間隙Gを通って処理領域Aに入り、主排気口4Eから排気空間Sに入り、排気出口4Dに至る
経路P4:ノズル導入孔4Kからノズル室42に入り、処理領域Aを横断して主排気口4Eから排気空間Sに入り、排気出口4Dに至る
経路P5:ノズル導入孔4Kからノズル室42に入り、供給室排気口4Lから内管4Bと断熱アセンブリ22の間の間隙Gおよび断熱アセンブリ22のくびれ39aを通り、中間排気口4Gから排気空間Sに入り、排気出口4Dに至る。
【0042】
軸パージガスが処理領域Aに流入する経路P3とP4は、処理領域Aの下方において処理ガスの濃度が低下し、基板間均一性が損なわれるため、基板に対する処理にとっては望ましくない。特に本例の反応管4は、主排気口4Eの圧力損失が小さいという特徴があるため、経路P3やP4に軸パージガスが引き込まれやすい。もしノズル導入孔カバー8Sと底排気口4Jを両方とも設けなかった場合、軸パージガスは専ら経路P4に流れてしまう。そのため本例では、中間排気口4Gの開口を大きくするとともに間隙Gを小さくし、経路P3よりも経路P2に流れやすくする。また、経路P5を形成し、経路P4よりも経路P5に流れにやすくする。またノズル導入孔4Kは、ノズル導入孔カバー8Sによって塞ぐなどして実質的な開口を十分小さくし、経路P4に流れにくくする。中間排気口4Gによって、処理ガス及び軸パージガスを流している時の円筒部39の側面には、処理領域A側および炉口部側の圧力が高く、中間排気口4G付近が最も圧力が低くなるような好ましい圧力勾配が形成される。この圧力勾配においては、経路P3による軸パージガスの処理領域への流入、及び処理ガスの炉口部への流入(拡散)の両方が抑制される。なお軸パージガスの供給が過剰であると、経路P1やP2の圧力損失が増加し、この圧力勾配が悪化しうる。
【0043】
一方で、C字型の排気空間Sの最奥部は、ノズル室42に突き当たって袋小路になっているため、クリーニングガス等の処理ガスが滞留しやすい。このとき、底排気口4Jによって排気空間Sと炉口部とが流通可能になると、軸パージガスが多い(炉口部側の圧力が高い)ときは、経路P3で軸パージガスが排気空間Sに流入して滞留を解消し、軸パージガスが少ないときは、逆に処理ガスが排気空間Sに流入或いは拡散して底排気口4Jから排出されるので、どちらにおいても滞留ガスの排気に寄与する。なお滞留ガスは、微量であれば炉口部に侵入しても十分希釈されるため問題ない。
【0044】
しかし、底排気口4Jを大きくし、経路P1のコンダクタンスを大きくしすぎると、経路P1を含む全ての経路で軸パージガスの最大流速が低下し、流れに逆らう方向の拡散によって処理ガスが炉口部に侵入しやすくなる。
【0045】
以上を纏めると、経路P4及びP3のコンダクタンスを、経路P1、P2及びP5のいずれもよりも小さくすること、及び、経路P1及びP2のコンダクタンスは、炉口部への処理ガスの侵入が許容量以下になるように上限が設けられることが望ましい。
【0046】
次に、コントローラ29について
図7を用いて説明する。コントローラ29は、MFC10、13、25、バルブ11、14、26、圧力センサ16、APCバルブ17、真空ポンプ18、ヒータ3、キャップヒータ34、温度センサ28、回転機構23、ボートエレベータ27等の各構成と電気的に接続され、それらを自動制御する。コントローラ29は、CPU(Central Processing Unit)212、RAM(Random Access Memory)214、記憶装置216、I/Oポート218を備えたコンピュータとして構成される。RAM214、記憶装置216、I/Oポート218は、内部バス220を介して、CPU212とデータ交換可能なように構成される。I/Oポート218は、上述の各構成に接続されている。コントローラ29には、例えばタッチパネル等との入出力装置222が接続されている。
【0047】
記憶装置216は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置216内には、基板処理装置1の動作を制御する制御プログラムや、処理条件に応じて基板処理装置1の各構成に成膜処理等を実行させるためのプログラム(プロセスレシピやクリーニングレシピ等のレシピ)が読み出し可能に格納されている。RAM214は、CPU212によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0048】
CPU212は、記憶装置216から制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置216からレシピを読み出し、レシピに沿うように各構成を制御する。
【0049】
コントローラ29は、外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ、CDやDVD等の光ディスク、HDD)224に持続的に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置216や外部記憶装置224は、コンピュータ読み取り可能な有体の媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置224を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0050】
次に、上述の基板処理装置1を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理(以下、成膜処理ともいう)のシーケンス例について
図8を用いて説明する。
【0051】
ここでは、ノズル8を2本以上設け、ノズル8aから第1の処理ガス(原料ガス)としてヘキサクロロジシラン(HCDS)ガスを、ノズル8bから第2の処理ガス(反応ガス)としてアンモニア(NH3)ガスをそれぞれ供給し、ウェハ7上にシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置1の各構成の動作はコントローラ29により制御される。
【0052】
本実施形態における成膜処理では、処理室6内のウェハ7に対してHCDSガスを供給する工程と、処理室6内からHCDSガス(残留ガス)を除去する工程と、処理室6内のウェハ7に対してNH3ガスを供給する工程と、処理室6内からNH3ガス(残留ガス)を除去する工程と、を所定回数(1回以上)繰り返すことで、ウェハ7上にSiN膜を形成する。本明細書では、この成膜シーケンスを、便宜上、以下のように表記する。
【0053】
(HCDS→NH3)×n ⇒ SiN。
【0054】
(ウェハチャージおよびボートロード)
複数枚のウェハ7がボート21に装填(ウェハチャージ)されると、ボート21は、ボートエレベータ27によって処理室6内に搬入(ボートロード)される。このとき、シールキャップ19は、Oリング19Aを介してマニホールド5の下端を気密に閉塞(シール)した状態となる。ウェハチャージする前のスタンバイの状態から、バルブ26を開き、円筒部39内へ少量の軸パージガスが供給されうる。
【0055】
(圧力調整)
処理室6内、すなわち、ウェハ7が存在する空間が所定の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ18によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室6内の圧力は、圧力センサ16で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ17が、フィードバック制御される。円筒部39内へのパージガス供給及び真空ポンプ18の作動は、少なくともウェハ7に対する処理が終了するまでの間は維持する。
【0056】
(昇温)
処理室6内から酸素等が十分排気された後、処理室6内の昇温が開始される。処理室6が成膜に好適な所定の温度分布となるように、温度センサ28が検出した温度情報に基づきヒータ3、キャップヒータ34への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ3等による処理室6内の加熱は、少なくともウェハ7に対する処理(成膜)が終了するまでの間は継続して行われる。キャップヒータ34への通電期間は、ヒータ3による加熱期間と一致させる必要はない。成膜が開始される直前において、キャップヒータ34の温度は、成膜温度と同温度に到達し、マニホールド5の内面温度は180℃以上(例えば260℃)に到達していることが望ましい。
【0057】
また、回転機構23によるボート21およびウェハ7の回転を開始する。回転機構23により、回転軸36、回転台37、円筒部39を介してボート21が回転されることで、キャップヒータ34は回転させずにウェハ7を回転させる。これにより加熱のむらが低減される。回転機構23によるボート21およびウェハ7の回転は、少なくとも、ウェハ7に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0058】
(成膜)
処理室6内の温度が予め設定された処理温度に安定すると、
図8に示すように、ステップS1~4を繰り返し実行する。なお、ステップS1を開始する前に、バルブ26を開き、軸パージガスの供給を増加させてもよい。
【0059】
[ステップS1:原料ガス供給工程]
ステップS1では、処理室6内のウェハ7に対し、HCDSガスを供給する。バルブ11を開くと同時にバルブ14を開き、ガス供給管9内へHCDSガスを、ガス供給管12内へN2ガスを流す。HCDSガスおよびN2ガスは、それぞれMFC10、13により流量調整され、ノズル8aを介して処理室6内へ供給され、排気管15から排気される。ウェハ7に対してHCDSガスを供給することにより、ウェハ7の最表面上に、第1の層として、例えば、1原子層未満から数原子層の厚さのシリコン(Si)含有膜が形成される。
【0060】
[ステップS2:原料ガス排気工程]
第1の層が形成された後、バルブ11を閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ17は開いたままとして、真空ポンプ18により処理室6内を真空排気し、処理室6内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のHCDSガスを処理室6内から排出する。また、バルブ14やバルブ26を開いたままとして、供給されたN2ガスは、ガス供給管9や反応管4内、炉口部をパージする。
【0061】
[ステップS3:反応ガス供給工程]
ステップS3では、処理室6内のウェハ7に対してNH3ガスを供給する。バルブ(不図示)の開閉制御を、ステップS1におけるバルブ11,14の開閉制御と同様の手順で行う。NH3ガスおよびN2ガスは、それぞれMFC(不図示)により流量調整され、ノズル8bを介して処理室6内へ供給され、排気管15から排気される。ウェハ7に対して供給されたNH3ガスは、ステップS1でウェハ7上に形成された第1の層、すなわちSi含有層の少なくとも一部と反応する。これにより第1の層は窒化され、Si及びNを含む第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと変化(改質)される。
【0062】
[ステップS4:反応ガス排気工程]
第2の層が形成された後、バルブを閉じ、NH3ガスの供給を停止する。そして、ステップS1と同様の処理手順により、処理室6内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室6内から排出する。
【0063】
以上の4つのステップを非同時に、すなわち、オーバーラップさせることなく行うサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウェハ7上に、所定組成及び所定膜厚のSiN膜を形成することができる。
【0064】
上述のシーケンスの処理条件としては、例えば、
処理温度(ウェハ温度):250~700℃、
処理圧力(処理室内圧力):10~4000Pa、
HCDSガス供給流量:1~2000sccm、
NH3ガス供給流量:100~10000sccm、
N2ガス供給流量(ノズル):100~10000sccm、
N2ガス供給流量(回転軸):100~500sccm、
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値に設定することで、成膜処理を適正に進行させることが可能となる。
【0065】
HCDS等の熱分解性ガスは、石英よりも金属の表面において副生成物の膜を形成しやすい場合がある。HCDS(及びアンモニア)に晒された表面は、特に260℃以下のときにSiO、SiONなどが付着しやすい。
【0066】
(パージおよび大気圧復帰)
成膜処理が完了した後、バルブ14および図示しないバルブを開き、ガス供給管12および図示しないガス供給管からN2ガスを処理室6内へ供給し、排気管15から排気する。これにより、処理室6内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、残留する原料や副生成物が処理室6内から除去(パージ)される。その後、APCバルブ17が閉じられ、処理室6内の圧力が常圧になるまでN2ガスが充填される(大気圧復帰)。
【0067】
(ボートアンロードおよびウェハディスチャージ)
ボートエレベータ27によりシールキャップ19が下降され、マニホールド5の下端が開口される。そして、処理済のウェハ7が、ボート21に支持された状態で、マニホールド5の下端から反応管4の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウェハ7は、ボート21より取出される。
【0068】
上述の成膜処理を行うと、加熱されていた反応管4内の部材の表面、例えば、外管4Aの内壁、ノズル8aの表面、内管4Bの表面、ボート21の表面等に、窒素を含むSiN膜等が堆積し、薄膜を形成しうる。そこで、これらの堆積物の量、すなわち、累積膜厚が、堆積物に剥離や落下が生じる前の所定の量(厚さ)に達したところで、クリーニング処理が行われる。クリーニング処理は、反応管4内へフッ素系ガスとして例えばF2 ガスを供給することで行われる。
【0069】
次に、モデル化された反応管4内の排気経路について
図9を用いて説明する。このモデルは簡略化されており、例えば主排気口4Eを出た処理ガスが、排気空間Sを下降する際の抵抗は、主排気口4Eの抵抗に含まれ、中間排気口4Gや底排気口4Jを出た軸パージガスが排気空間Sを横に流れる際の抵抗は、それら中間排気口4Gや底排気口4Jの抵抗に含まれる。
図9を参照すると、ガス供給管24からの軸パージガスは、炉口部の全周にほぼ均等に供給される。またノズル8からの処理ガスは、通常はその殆どが供給スリット4F、主排気口4Eを通って、排気出口4Dに吸い込まれる。主排気口4E、中間排気口4G、底排気口4H、4Jよりも排気出口4D寄りが、排気空間Sに対応する。
【0070】
このとき、中間排気口4Gや底排気口4Hは、処理ガスの主たる排気経路から外れるため、排気出口4D並に圧力が低く、近傍のガスを吸い込む。従って、中間排気口4Gは、軸パージガスが間隙Gの下部分を上向きに流れる流れを形成し、底排気口4Hは、炉口部において余剰の若しくは処理ガスの希釈に役立った後の軸パージガスを排出するドレインとして機能する。中間排気口4Gは、軸パージガスが間隙Gの下部分を上向きに流れる流れを形成し、底排気口4Hは、炉口部において余剰の若しくは処理ガスの希釈に役立った後の軸パージガスを排出するドレインとして機能する。
【0071】
主排気口4Eの内管4B内側の圧力は、主排気口4Eの内側の圧力とほぼ同じか、わずかに低くなるように、主排気口4E、間隙Gのコンダクタンス及び軸パージガス流量が設定されうる。間隙Gの上部分では、コンダクタンス及び圧力差(全圧)がともに小さいため、ガス分子の移動は抑制される。つまり間隙Gには上下方向に濃度差が存在するが、断面積が小さく距離が長いため、移流及び拡散の量は少ない。間隙Gの下部分では、軸パージガスの上昇流により拡散バリアが形成されるため、中間排気口4Gまで拡散してきた処理ガスは、軸パージガスの排気出口4Dへ向かう流れに乗って排出される。
【0072】
底排気口4Jから排気空間Sの下端に流入する経路は、それ以外に抵抗性の箇所がないため、比較的小さく設定された底排気口4J自体のコンダクタンスによって流量が決まる。排気空間Sの下端に軸パージガスが噴射されることで、C字状の断面の排気空間Sの閉塞部分にガスの移流や攪拌が生じ、滞留している処理ガスやクリーニングガスを効果的にパージできる。もし底排気口4Jが無い場合、行き止まりとなったこの経路のパージが困難で、上述の圧力スイングに多くの回数が必要となることが理解されよう。
【0073】
ノズル導入孔4Kは、そのコンダクタンスを実質的な0よりも大きい有意な値とすると、ノズル室42内に上下方向の穏やかな流れを生じさせる。特に、ノズル室42の上端も小さく開口していると、処理領域Aでのガス分布への影響を抑えつつ、この上下方向の流れによってノズル室42のガス置換性を向上させうる。一般的には、ノズル導入孔4Kをわずかに上向きに流れるように、軸パージガスの流量が設定されると、炉口部への原料ガスの侵入防止の観点で好ましい。過大な底排気口4Hや4Jは、より多くの流量の軸パージガスを要求する。供給室排気口4Lから内管4Bの内側に流入する経路は、間隙Gの上下方向からの流れと合流し、中間排気口4Gから排出される。
【0074】
原料ガス以外のガスを供給するノズル8であれば、ノズル導入孔4Kのコンダクタンスを大きくすることは容易である。例えば、ノズル8が軸パージガスと同じパージガス(N2)を供給するものであれば、両パージガスの流量(圧力)の制御しだいで、ノズル導入孔4Kでパージガスを上向きにも下向きにも流すことができる。通常、軸パージガスの流量は所定値を下回らないように設定されるため、ノズル8からのパージガスを増やした場合、ノズル室42から溢れたパージガスは、ノズル導入孔4Kから供給室排気口4Lに入り、中間排気口4Gや底排気口4Jを通って排気空間Sに流入し、そこで滞留ガスのパージに貢献しうる。
【0075】
本実施形態では、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)中間排気口4G、供給室排気口4L及びくびれ39aを設けたことにより、内管4B内に流れたパージガスが外管と内管の間の排気空間Sへ積極的に流れるようになり、処理領域Aへ流れ込むパージガスの流量が軽減される。
(b)中間排気口4G、供給室排気口4L及びくびれ39aを中間排気口と同じ高さに設けたことにより、急激な圧力変動により、炉口部下部での膜割れが巻き上げられ、基板上にパーティクルが落ちる場合でも、パーティクルを排気側に引き込むことができる。
【0076】
なお、反応管4は、外管4Aと内管4Bが一体に形成されたものに限らず、別個の部材として形成され、それぞれマニホールド5に載せられてもよい。その場合、外管4Aと内管4Bの開口端付近で排気空間と炉口部とを流通させる隙間が、底排気口4H、4Jに相当しうる。或いは、外管4A、内管4Bとマニホールド5が、全て石英で一体に形成されても良い。
【0077】
また、排気空間Sは、複数のウェハ7に対して開口した主排気口と、排気出口4Dとを流体連通させる空間または流路として構成されば十分であり、それらをガス排出機構と呼ぶ。主排気口は、1つまたは複数の開口として構成されうる。
【0078】
同様に、複数のウェハ7のそれぞれの側部に向いて穿設された1ないし複数の開口によって、前記処理室と流体連通し、個々のウェハにガスの流れ(移流)を供給できる空間または流路を、ガス供給機構と定義し、それはノズル室42又はノズル8を含む。
【0079】
上述の実施形態では、ウェハ上に成膜を行う例について説明した。しかしながら、本発明は、このような態様に限定されず、酸化や窒化などの改質処理、拡散処理、エッチング処理等の処理であっても、急激な圧力変動により、炉口部下部での膜割れが巻き上げられ、基板上にパーティクルが落ちる場合には有用である。
【0080】
また、実施形態では、反応管は2重管タイプ(耐圧円筒管(外管4A)+非耐圧ライナー管(内管4B)+非耐圧バッファ(ノズル室42))の例について説明したが、1重管タイプ(耐圧円筒管+耐圧バッファ)であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 基板処理装置 2 処理炉、 3 ヒータ、 4 反応管、 4A 外管、 4B 内管、 4C フランジ部、 4D 排気出口(Outlet)、
4E 主排気口、 4F 供給スリット、 4G 中間排気口、 4H、4J 底排気口、 4K ノズル導入孔、 4L 供給室排気口、 5 マニホールド、 6 処理室、 7 ウェハ、 22 断熱アセンブリ、 39 円筒部、 39a くびれ。