(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】近赤外線吸収性感光性組成物、硬化膜、光学フィルタ、パターン形成方法、積層体、固体撮像素子、画像表示装置及び赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20220127BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220127BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G02B5/22
G03F7/004 505
G03F7/027
(21)【出願番号】P 2020546034
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035552
(87)【国際公開番号】W WO2020054719
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018172358
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019027998
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】荒山 恭平
(72)【発明者】
【氏名】松村 季彦
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043185(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159479(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/104283(WO,A1)
【文献】特開2017-067863(JP,A)
【文献】特開2016-166320(JP,A)
【文献】特開2017-149896(JP,A)
【文献】特開2018-041047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G03F 7/004
G03F 7/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(SQ2)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化1】
式(SQ2)中、環Z
3
および環Z
4
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を含む縮合環を表し
環Z
5
および環Z
6
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
3
~環Z
6
が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
5
~Rs
8
はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
Ar
1
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n1は1または2を表す;
【化2】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項2】
式(SQ3)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化3】
式(SQ3)中、環Z
7
および環Z
8
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、
環Z
9
および環Z
10
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の含窒素複素環を表し、
環Z
7
~環Z
10
が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Ar
2
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n2は0~2の整数を表す;
【化4】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項3】
式(SQ4)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化5】
式(SQ4)中、環Z
11
および環Z
12
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
11
および環Z
12
が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
10
およびRs
11
はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
Rs
12
およびRs
13
はそれぞれ独立して置換基を表し、
Rs
10
とRs
12
およびRs
11
とRs
13
は結合して5員環、6員環を形成してもよく、
n3は0~2の整数を表し、
n4およびn5は各々独立に0~5の整数を表し、
n4が2以上の場合は、複数のRs
12
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
12
のうち2個のRs
12
同士が結合して環を形成してもよく、
n5が2以上の場合は、複数のRs
13
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
13
のうち2個のRs
13
同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
3
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す;
【化6】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項4】
式(SQ5)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化7】
式(SQ5)中、Rs
31
~Rs
38
はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rs
31
~Rs
38
のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
Rs
39
およびRs
40
はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
Rs
41
およびRs
42
はそれぞれ独立して置換基を表し、Rs
41
とRs
42
は単結合または連結基を介して連結しており、
Xs
1
およびXs
2
はそれぞれ独立して、COまたはSO
2
を表し、
Ar
4
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n6は0である;
【化8】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項5】
式(SQ5)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化9】
式(SQ5)中、Rs
31
~Rs
38
はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rs
31
~Rs
38
のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成しており、
Rs
39
およびRs
40
はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
Rs
41
およびRs
42
はそれぞれ独立して置換基を表し、Rs
41
とRs
42
は単結合または連結基を介して連結していてもよく、
Xs
1
およびXs
2
はそれぞれ独立して、COまたはSO
2
を表し、
Ar
4
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n6は0である;
【化10】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項6】
式(SQ5)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化11】
式(SQ5)中、Rs
31
~Rs
38
はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rs
31
~Rs
38
のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
Rs
39
およびRs
40
はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
Rs
41
およびRs
42
はそれぞれ独立して置換基を表し、Rs
41
とRs
42
は単結合または連結基を介して連結していてもよく、
Xs
1
およびXs
2
はそれぞれSO
2
を表し、
Ar
4
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n6は0である;
【化12】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項7】
式(SQ5)で表わされる化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化13】
式(SQ5)中、Rs
31
~Rs
38
はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rs
31
~Rs
38
のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
Rs
39
およびRs
40
はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
Rs
41
およびRs
42
はそれぞれ独立して置換基を表し、Rs
41
とRs
42
は単結合または連結基を介して連結していてもよく、
Xs
1
およびXs
2
はそれぞれ独立して、COまたはSO
2
を表し、
Ar
4
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n6は1または2を表す;
【化14】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項8】
式(SQ6)で表わされる化合物および式(SQ7)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも少なくとも1種のオキソカーボン化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化15】
式(SQ6)中、環Z
13
および環Z
14
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
13
および環Z
14
が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
101
およびRs
102
はそれぞれ独立して置換基を表し、
n10は0~2の整数を表し、
n11およびn12は各々独立に0~6の整数を表し、
n11が2以上の場合は、複数のRs
101
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
101
のうち2個のRs
101
同士が結合して環を形成してもよく、
n12が2以上の場合は、複数のRs
102
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
102
のうち2個のRs
102
同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
10
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す;
式(SQ7)中、環Z
15
および環Z
16
はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
15
および環Z
16
が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
103
およびRs
104
はそれぞれ独立して置換基を表し、
n13は0~2の整数を表し、
n14およびn15は各々独立に0~5の整数を表し、
n14が2以上の場合は、複数のRs
103
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
103
のうち2個のRs
103
同士が結合して環を形成してもよく、
n15が2以上の場合は、複数のRs
104
は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
104
のうち2個のRs
104
同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
11
は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す;
【化16】
式中、Xa
1
~Xa
8
はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
a
を表し、Rx
a
は水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
【請求項9】
さらに樹脂を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
【請求項10】
前記樹脂が、酸基を有する樹脂を含む、請求項
9に記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
【請求項11】
前記重合性化合物の100質量部に対して前記酸基を有する樹脂を10~1000質量部含む、請求項
10に記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
【請求項12】
さらに顔料誘導体を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性感光性組成物から得られる硬化膜。
【請求項14】
請求項
13に記載の硬化膜を有する光学フィルタ。
【請求項15】
光学フィルタが、近赤外線カットフィルタまたは近赤外線透過フィルタである、請求項
14に記載の光学フィルタ。
【請求項16】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の近赤外線吸収性感光性組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、
前記組成物層をパターン状に露光する工程と、
前記組成物層の未露光部を現像除去する工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項17】
請求項
13に記載の硬化膜と、有彩色着色剤を含むカラーフィルタとを有する積層体。
【請求項18】
請求項
13に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
【請求項19】
請求項
13に記載の硬化膜を有する画像表示装置。
【請求項20】
請求項
13に記載の硬化膜を有する赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキソカーボン化合物を含む近赤外線吸収性感光性組成物に関する。また、本発明は、オキソカーボン化合物を含む近赤外線吸収性感光性組成物を用いた硬化膜、光学フィルタ、パターン形成方法、積層体、固体撮像素子、画像表示装置及び赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、それには近赤外線カットフィルタを用いることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1~3には、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物を含む近赤外線吸収性組成物を用いて近赤外線カットフィルタなどを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2016/186050号公報
【文献】特開2016-074649号公報
【文献】特開2018-041047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、近赤外線吸収性組成物を用いてフォトリソグラフィ法によりパターン形成を行うことが検討されている。このように、近年では、フォトリソグラフィ法に適した近赤外線吸収性組成物の開発が望まれている。
【0006】
よって、本発明は、フォトリソグラフィ法でパターン形成が可能な新規な近赤外線吸収性感光性組成物を提供することを目的とする。また、硬化膜、光学フィルタ、パターン形成方法、積層体、固体撮像素子、画像表示装置及び赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を提供する。
<1> 下記式(SQ1)で表される化合物および下記式(CR1)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも1種のオキソカーボン化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含む近赤外線吸収性感光性組成物;
【化1】
式(SQ1)中、Rs
1およびRs
2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す;
式(CR1)中、Rc
1およびRc
2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。
<2> 式(SQ1)のRs
1およびRs
2の少なくとも一方が下記式(1)で表わされる基であり、
式(CR1)のRc
1およびRc
2の少なくとも一方が下記式(1)で表わされる基である、<1>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物;
【化2】
式(1)中、環Z
1は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、芳香族複素環または芳香族複素環を含む縮合環を表し、
環Z
2は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
1および環Z
2が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
*は結合手を表す。
<3> 式(SQ1)で表される化合物が、下記式(SQ2)または下記式(SQ3)で表わされる化合物である、<1>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物;
【化3】
式(SQ2)中、環Z
3および環Z
4はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、
環Z
5および環Z
6はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
3~環Z
6が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
5~Rs
8はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
Ar
1は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n1は0~2の整数を表す;
式(SQ3)中、環Z
7および環Z
8はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、
環Z
9および環Z
10はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の含窒素複素環を表し、
環Z
7~環Z
10が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Ar
2は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n2は0~2の整数を表す;
【化4】
式中、Xa
1~Xa
8はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
aを表し、Rx
aは水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
<4> 式(SQ1)で表される化合物が、下記式(SQ4)で表わされる化合物である、<1>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物;
【化5】
式(SQ4)中、環Z
11および環Z
12はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
11および環Z
12が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
10およびRs
11はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
Rs
12およびRs
13はそれぞれ独立して置換基を表し、
Rs
10とRs
12およびRs
11とRs
13は結合して5員環、6員環を形成してもよく、
n3は0~2の整数を表し、
n4およびn5は各々独立に0~5の整数を表し、
n4が2以上の場合は、複数のRs
12は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
12のうち2個のRs
12同士が結合して環を形成してもよく、
n5が2以上の場合は、複数のRs
13は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
13のうち2個のRs
13同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
3は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す;
【化6】
式中、Xa
1~Xa
8はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
aを表し、Rx
aは水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
<5> 式(SQ1)のRs
1およびRs
2の少なくとも一方が下記式(10)で表わされる基であり、
式(CR1)のRc
1およびRc
2の少なくとも一方が下記式(10)で表わされる基である、<1>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物;
【化7】
式中、R
11~R
14はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、R
11~R
14のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
R
20はアリール基またはヘテロアリール基を表し、
R
21は置換基を表し、
X
10はCOまたはSO
2を表す。
<6> 式(SQ1)で表される化合物が、下記式(SQ5)で表わされる化合物である、<1>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物;
【化8】
式(SQ5)中、Rs
31~Rs
38はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rs
31~Rs
38のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
Rs
39およびRs
40はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
Rs
41およびRs
42はそれぞれ独立して置換基を表し、Rs
41とRs
42は単結合または連結基を介して連結していてもよく、
Xs
1およびXs
2はそれぞれ独立して、COまたはSO
2を表し、
Ar
4は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n6は0~2の整数を表す;
【化9】
式中、Xa
1~Xa
8はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRx
aを表し、Rx
aは水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。
<7> さらに樹脂を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
<8>樹脂が、酸基を有する樹脂を含む、<7>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
<9> 重合性化合物の100質量部に対して酸基を有する樹脂を10~1000質量部含む、<8>に記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
<10> さらに顔料誘導体を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収性感光性組成物。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収性感光性組成物から得られる硬化膜。
<12> <11>に記載の硬化膜を有する光学フィルタ。
<13> 光学フィルタが、近赤外線カットフィルタまたは近赤外線透過フィルタである、<12>に記載の光学フィルタ。
<14> <1>~<10>のいずれか1つに記載の近赤外線吸収性感光性組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、
組成物層をパターン状に露光する工程と、
組成物層の未露光部を現像除去する工程と、を含むパターン形成方法。
<15> <11>に記載の硬化膜と、有彩色着色剤を含むカラーフィルタとを有する積層体。
<16> <11>に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
<17> <11>に記載の硬化膜を有する画像表示装置。
<18> <11>に記載の硬化膜を有する赤外線センサ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フォトリソグラフィ法でパターン形成が可能な新規な近赤外線吸収性感光性組成物を提供することができる。また、硬化膜、光学フィルタ、パターン形成方法、積層体、固体撮像素子、画像表示装置及び赤外線センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TOSOH TSKgel Super HZM-HとTOSOH TSKgel Super HZ4000とTOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラムを用い、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いることによって求めることができる。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<近赤外線吸収性感光性組成物(感光性組成物)>
本発明の近赤外線吸収性感光性組成物は、後述する式(SQ1)で表される化合物および後述する式(CR1)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも1種のオキソカーボン化合物と、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤と、を含むことを特徴とする。以下、「式(SQ1)で表される化合物」を「化合物(SQ1)」ともいう。また、「式(CR1)で表される化合物」を「化合物(CR1)」ともいう。また、化合物(SQ1)と化合物(CR1)とを合わせてオキソカーボン化合物Aともいう。また、「近赤外線吸収性感光性組成物」を「感光性組成物」ともいう。
【0012】
本発明の感光性組成物は、フォトリソグラフィ法でのパターン形成性に優れている。本発明の感光性組成物を用いることにより、所定の波長の光を選択的に透過または遮光できる硬化膜のパターン(例えば、所定の波長の近赤外線を選択的に遮光する硬化膜のパターンや、所定の波長の赤外線を選択的に透過させる硬化膜のパターン)を形成することができる。
【0013】
本発明の感光性組成物の好ましい態様として、以下の第1の態様、および、第2の態様が挙げられる。
【0014】
(第1の態様)
後述する式(SQ1)のRs1およびRs2の少なくとも一方が後述する式(1)で表わされる基であり、後述する式(CR1)のRc1およびRc2の少なくとも一方が後述する式(1)で表わされる基である態様。
【0015】
(第2の態様)
後述する式(SQ1)のRs1およびRs2の少なくとも一方が後述する式(10)で表わされる基であり、後述する式(CR1)のRc1およびRc2の少なくとも一方が下記式(10)で表わされる基である態様。
【0016】
第1の態様によれば、得られる硬化膜の耐湿性をより向上させることもできる。このような効果が得られるメカニズムとしては以下によるものであると推測される。化合物(SQ1)や化合物(CR1)が後述する式(1)で表わされる基を有することにより、化合物(SQ1)の下記式(SQ-a)で表される部分構造の近傍や、化合物(SQ1)の下記式(CR-a)で表される部分構造の近傍の立体障害が高くなると推測される。更には、これらの部分構造の近傍が疎水的になると推測される。その結果、これらの化合物が加水分解されにくくなり、優れた耐湿性が得られたと推測される。
【化10】
【0017】
また、第2の態様によれば、得られる硬化膜の耐光性をより向上させることもできる。このような効果が得られるメカニズムとしては以下によるものであると推測される。化合物(SQ1)や化合物(CR1)が後述する式(10)で表わされる基を有することにより、色素平面(化合物(SQ1)における式(SQ-a)の部位や、化合物(CR1)における式(CR-a)の部位)に対して、式(10)で表される基が張り出したような構造をとると推測される。このため、製膜時において、これらの化合物同士は立体障害を避けるようにずれて重なり合いやすく、膜中でのこれらの化合物がJ会合を形成しやすくなり、更には、そのJ会合配列が安定すると推測される。その結果、優れた耐光性が得られたと推測される。
【0018】
以下、本発明の感光性組成物の各成分について説明する。
【0019】
<<オキソカーボン化合物A>>
本発明の感光性組成物は、式(SQ1)で表される化合物(化合物(SQ1))および式(CR1)で表わされる化合物(化合物(CR1))から選ばれる少なくとも1種のオキソカーボン化合物(オキソカーボン化合物A)を含む。このオキソカーボン化合物Aは、近赤外線吸収剤として好ましく用いられる。
【化11】
式(SQ1)中、Rs
1およびRs
2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す;
式(CR1)中、Rc
1およびRc
2はそれぞれ独立して一価の有機基を表す。
【0020】
オキソカーボン化合物Aは、クロロホルム溶液中において波長600~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましく、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることがより好ましく、波長700~1100nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることがさらに好ましい。なお、オキソカーボン化合物Aのクロロホルム溶液中での極大吸収波長は、オキソカーボン化合物Aのクロロホルム溶液を調製し、このクロロホルム溶液の吸光度を測定することによって算出することができる。
【0021】
なお、式(SQ1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化12】
【0022】
また、式(CR1)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化13】
【0023】
(化合物(SQ1))
まず、化合物(SQ1)(式(SQ1)で表される化合物)について説明する。
【0024】
式(SQ1)中、Rs1およびRs2は、それぞれ独立して一価の有機基を表す。Rs1およびRs2が表す一価の有機基は、アリール基、ヘテロアリール基、式(R1)で表される基、式(1)で表される基、および、式(10)で表される基が挙げられる。
【0025】
式(SQ1)において、Rs1およびRs2の少なくとも一方が下記式(1)で表わされる基であるか、Rs1およびRs2の少なくとも一方が下記式(10)で表わされる基であることが好ましい。
【0026】
【化14】
式(R1)中、R
1~R
3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、As
3はヘテロアリール基を表し、n
r1は、0以上の整数を表し、R
1とR
2は、互いに結合して環を形成してもよく、R
1とAs
3は、互いに結合して環を形成してもよく、R
2とR
3は、互いに結合して環を形成してもよく、n
r1が2以上の場合、複数のR
2およびR
3はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、*は結合手を表す。
【0027】
【化15】
式(1)中、環Z
1は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、芳香族複素環または芳香族複素環を含む縮合環を表し、環Z
2は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、環Z
1および環Z
2が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、*は連結手を表す。
【0028】
【化16】
式(10)中、R
11~R
14はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、R
11~R
14のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、R
20はアリール基またはヘテロアリール基を表し、R
21は置換基を表し、X
10はCOまたはSO
2を表す。
【0029】
Rs
1およびRs
2が表わすアリール基の炭素数は、6~48が好ましく、6~22がより好ましく、6~12が特に好ましい。Rs
1およびRs
2が表わすヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は、1~30が好ましく、1~12がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の種類としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環がさらに好ましい。ヘテロアリール基の具体例としては、イミダゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、インドレニン環基、ピリジン環基、ピラジン環基、ピロール環基、フラン環基、チオフェン環基、ピラゾール環基、イソオキサゾール環基、イソチアゾール環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピリリウム環基、チオピリリウム環基、レピジニウム環基及びこれらの環を含む縮合環基が挙げられる。Rs
1およびRs
2が表わすアリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基T、後述する可溶化基、後述する電子求引性基および、下記式(R-SQ)で表される基などが挙げられる。式(R-SQ)中、R
sq
1は一価の有機基を表す。R
sq
1が表す一価の有機基は、アリール基、ヘテロアリール基、式(R1)で表される基、式(1)で表される基、および、式(10)で表される基が挙げられる。
【化17】
【0030】
[式(R1)で表される基]
次に、式(R1)で表される基について説明する。式(R1)におけるR1~R3は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。置換基としては、後述する置換基T、後述する可溶化基および後述する電子求引性基が挙げられる。R1~R3が表す置換基はアルキル基であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。R1~R3は水素原子であることが好ましい。式(R1)におけるAs3はヘテロアリール基を表す。As3が表すヘテロアリール基は、Rs1およびRs2の項で説明したヘテロアリール基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0031】
式(R1)において、R1とR2は、互いに結合して環を形成してもよく、R1とAs3は、互いに結合して環を形成してもよく、R2とR3は、互いに結合して環を形成してもよい。上記の環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、-CH-およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が好ましい。
【0032】
式(R1)におけるnr1は、0以上の整数を表す。nr1は0~2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0が更に好ましい。式(R1)において、nr1が2以上の場合、複数のR2およびR3はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
[式(1)で表される基について]
次に式(1)で表される基について説明する。式(1)において、環Z1は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、芳香族複素環または芳香族複素環を含む縮合環を表す。芳香族複素環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリリウム環、チオピリリウム環、レピジニウム環などが挙げられ、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピリリウム環、チオピリリウム環、レピジニウム環が好ましく、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環がより好ましい。芳香族複素環を含む縮合環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリリウム環、チオピリリウム環、レピジニウム環から選ばれる1個以上の環(2個以上の場合は同じ種類の環であってもよく、異なる種類の環であってもよい)と、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環から選ばれる環(好ましくはベンゼン環、ナフタレン環)との縮合環;イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリリウム環、チオピリリウム環、レピジニウム環から選ばれる2個以上の環(2個以上の場合は同じ種類の環であってもよく、異なる種類の環であってもよい)の縮合環などが挙げられる。縮合環の縮合数は、より優れた分光特性が得られやすいという理由から2~6が好ましく、2~4がより好ましい。
【0034】
式(1)において、環Z2は1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表す。環Z2が表す炭化水素環および複素環は、5~7員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましい。炭化水素環の具体例としては、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、シクロオクタトリエン環、シクロノネン環、シクロノナジエン環、シクロノナトリエン環、シクロノナテトラエン環等のシクロアルケン環が挙げられ、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環およびシクロオクテン環が好ましく、シクロペンテン環およびシクロヘキセン環がより好ましい。環Z2が表す複素環は、含窒素複素環であることが好ましい。
【0035】
環Z1および環Z2が有してもよい置換基としては、後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。また、環Z1が有してもよい置換基は、電子求引性基であることも好ましい。この態様によれば、より優れた分光特性が得られやすい。ハメットの置換基定数σ値(シグマ値)が正の置換基は、電子求引性基として作用する。ここで、ハメット則で求められた置換基定数にはσp値とσm値がある。これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。本発明においては、ハメットの置換基定数σ値が0.1以上の置換基を電子求引性基として例示することができる。σ値は、0.15以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、好ましくは1.0以下である。電子求引性基の具体例としては、ハロゲン原子、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置き換えられたアルキル基、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置き換えられたアリール基、ニトロ基、シアノ基、シアノメチル基、-CH=C(CN)2、-C(CN)=C(CN)2、-P(CN)2、-N=NCN、-CORz、-COORz、-OCORz、-NHCORz、-CONHRz、-SORz、-SO2Rz、-SO2ORz、-NHSO2Rzまたは-SO2NHRzが挙げられる。Rzは、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置き換えられていてもよいアルキル基、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置き換えられていてもよいアリール基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはシアノメチル基を表す。ここで、シアノメチル基には、モノシアノメチル基(-CH2CN)、ジシアノメチル基(-CH(CN)2)およびトリシアノメチル基(-C(CN)3)が含まれる。水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置き換えられていてもよいアルキル基は、炭素数が1~6が好ましく、炭素数1~5がより好ましく、炭素数1~4がさらに好ましい。水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置き換えられていてもよいアリール基は、炭素数6~14が好ましく、炭素数6~10がより好ましい。これらのアルキル基とアリール基は、水素原子の全部がフッ素原子で置き換えられていてもよく、一部のみがフッ素原子で置き換えられていてもよく、フッ素原子で置き換えられていなくてもよい。
【0036】
式(1)で表される基は、式(1-1)または式(1-2)で表される基であることが好ましい。
【化18】
【0037】
式(1-1)中、環Z1aは1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、環Z2aは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表す。環Z1aおよび環Z2aが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。R5およびR7はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。
【0038】
式(1-1)において、環Z1aが表す多環芳香族環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環から選ばれる5または6員環の含窒素複素環を含む縮合環が挙げられ、前述の含窒素複素環から選ばれる1個以上の環(2個以上の場合は同じ種類の含窒素複素環であってもよく、異なる種類の含窒素複素環であってもよい)と、ベンゼン環またはナフタレン環との縮合環;前述の含窒素複素環から選ばれる2個以上の環(同じ種類の含窒素複素環であってもよく、異なる種類の含窒素複素環であってもよい)の縮合環などが挙げられる。多環芳香族環に含まれる環の数(縮合環の縮合数)は、より優れた分光特性が得られやすいという理由から2~6が好ましく、2~4がより好ましい。
【0039】
式(1-1)において、環Z2aが表す4~9員の炭化水素環および複素環としては、式(1)の環Z2の項で説明したものが挙げられる。
【0040】
式(1-1)において、環Z1aおよび環Z2aが有してもよい置換基、並びにR5およびR7が表す置換基としては、後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。また、環Z1aが有してもよい置換基は、電子求引性基であることも好ましい。電子求引性基としては上述した基が挙げられる。
【0041】
式(1-2)中、環Z1bは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、環Z2bは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の含窒素複素環を表し、環Z1aおよび環Z2aが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
式(1-2)において、環Z1bが表す多環芳香族環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環から選ばれる5または6員環の含窒素複素環を含む縮合環が挙げられ、前述の含窒素複素環から選ばれる1個以上の環(2個以上の場合は同じ種類の含窒素複素環であってもよく、異なる種類の含窒素複素環であってもよい)と、ベンゼン環またはナフタレン環との縮合環;前述の含窒素複素環から選ばれる2個以上の環(同じ種類の含窒素複素環であってもよく、異なる種類の含窒素複素環であってもよい)の縮合環などが挙げられる。多環芳香族環に含まれる環の数(縮合環の縮合数)は、より優れた分光特性が得られやすいという理由から2~6が好ましく、2~4がより好ましい。
【0043】
式(1-2)において、環Z2bが表す含窒素複素環は、5~7員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましい。
【0044】
式(1-2)において、環Z1bおよび環Z2bが有してもよい置換基としては、後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。また、環Z1bが有してもよい置換基は電子求引性基であることも好ましい。電子求引性基としては上述した基が挙げられる。
【0045】
式(1)で表される基は、式(1-3)で表される基であることも好ましい。この態様によれば、より耐湿性に優れた硬化膜が得られやすい。
【化19】
式(1-3)中、環Z
2cは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
2cが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
R
1cは水素原子または置換基を表し、
R
2cは置換基を表し、
R
1cとR
2cは結合して5員環、6員環を形成してもよく、
r4が2以上の場合は、複数のR
12は、同一であっても異なっていてもよく、複数のR
2cのうち2個のR
2c同士が結合して環を形成してもよく、
r4は0~5の整数を表す。
【0046】
式(1-3)の環Z2cは式(1)の環Z2と同義であり、好ましい範囲も同様である。環Z2cが有してもよい置換基およびR1cが表す置換基としては後述する置換基T、後述する可溶化基が挙げられる。R1cはアルキル基であることが好ましい。R2cが表す置換基としては後述する置換基T、後述する可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられ、電子求引性基であることが好ましい。また、R2cはアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン原子であることが好ましく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子であることがより好ましく、アルキル基、ハロゲン化アルキル基であることが更に好ましい。式(1-3)において、R1cとR2cは結合して5員環、6員環を形成してもよい。これらの基が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、これらの基同士が結合して形成される環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。式(1-3)において、r4は0~5の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、1~2が特に好ましい。また、r4が2以上の場合は、複数のR2cは、同一であっても異なっていてもよく、複数のR2cのうち2個のR2c同士が結合して環を形成してもよい。R2c同士が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、これらの基同士が結合して形成される環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。
【0047】
式(1)で表される基は、式(1-4)で表される基または式(1-5)で表される基で表される基であることも好ましい。この態様によれば、より耐湿性に優れた硬化膜が得られやすい。
【化20】
【0048】
式(1-4)中、環Z2dは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z2dが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
R1dは置換基を表し、
r5が2以上の場合は、複数のR1dは、同一であっても異なっていてもよく、複数のR1dのうち2個のR1d同士が結合して環を形成してもよく、
r5は0~6の整数を表す。
【0049】
式(1-5)中、環Z2eは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z2eが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
R1eは置換基を表し、
r6が2以上の場合は、複数のR1eは、同一であっても異なっていてもよく、複数のR1eのうち2個のR1e同士が結合して環を形成してもよく、
r6は0~5の整数を表す。
【0050】
式(1-4)の環Z2dおよび式(1-5)の環Z2eは、式(1)の環Z2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0051】
環Z2dが有してもよい置換基、環Z2eが有してもよい置換基、R1dが表す置換基およびR1eが表す置換基としては後述する置換基T、後述する可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。r5が1以上の場合、R1dが表す置換基の少なくとも一つは電子求引性基であることが好ましい。r6が1以上の場合、R1eが表す置換基の少なくとも一つは電子求引性基であることが好ましい。
【0052】
式(1-4)において、r5は0~6の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、1~2が特に好ましい。また、r5が2以上の場合は、複数のR1dは、同一であっても異なっていてもよく、複数のR1dのうち2個のR1d同士が結合して環を形成してもよい。R1d同士が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、これらの基同士が結合して形成される環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。
【0053】
式(1-5)において、r6は0~5の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、1~2が特に好ましい。また、r6が2以上の場合は、複数のR1eは、同一であっても異なっていてもよく、複数のR1eのうち2個のR1e同士が結合して環を形成してもよい。R1e同士が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。また、これらの基同士が結合して形成される環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。
【0054】
[式(10)で表される基について]
次に式(10)で表される基について説明する。式(10)において、R11~R14はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、R11~R14のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。R11~R14が表す置換基としては、後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。
【0055】
式(10)において、R20はアリール基またはヘテロアリール基を表し、アリール基であることが好ましい。アリール基の炭素数は、6~48が好ましく、6~22がより好ましく、6~12が特に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は、1~30が好ましく、1~12がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の種類としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数としては、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環がさらに好ましい。アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tや後述する可溶化基が挙げられる。アリール基およびヘテロアリール基は、J会合を形成しやすくなり耐光性が向上するという理由から置換基を有さないものであることが好ましい。
【0056】
式(10)において、R21は置換基を表す。R21が表す置換基としては、後述する置換基Tや可溶化基が挙げられ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OCORt1または-NHCORt1が好ましい。Rt1は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0057】
式(10)において、X10はCOまたはSO2を表す。X10がCOの場合は、耐熱性が向上するという効果が期待できる。X10がSO2の場合は、可視透明性が向上するという効果が期待できる。
【0058】
(置換基T)
置換基Tとしては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、-ORt1、-CORt1、-COORt1、-OCORt1、-NRt1Rt2、-NHCORt1、-CONRt1Rt2、-NHCONRt1Rt2、-NHCOORt1、-SRt1、-SORt1、-SO2Rt1、-SO2ORt1、-NHSO2Rt1または-SO2NRt1Rt2が挙げられる。Rt1およびRt2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。Rt1とRt2が結合して環を形成してもよい。
【0059】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がより好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アルキニル基の炭素数は、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~25が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環のヘテロアリール基または縮合数が2~8の縮合環のヘテロアリール基が好ましく、単環のヘテロアリール基または縮合数が2~4の縮合環のヘテロアリール基がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した置換基が挙げられる。
【0060】
(可溶化基)
可溶化基としては、以下の式(W)で表される基が挙げられる。
-S100-L100-T100 ・・・(W)
【0061】
式(W)において、S100は、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、単環であっても多環であってもよい。単環が好ましい。アリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。ヘテロアリーレン基は、単環であっても多環であってもよい。単環が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子が好ましい。ヘテロアリーレン基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
【0062】
式(W)において、L100は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONRL1-、-NRL1CO-、-SO2-、-ORL2-、または、これらを組み合わせてなる基を表し、RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、RL2は、アルキレン基を表す。L100は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-COO-、-OCO-、-CONRL1-、-SO2-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基であることが好ましく、柔軟性および溶剤溶解性の観点から、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基であることがより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、-O-または-ORL2-であることが更に好ましく、アルキレン基、-O-、または-ORL2-であることが特に好ましい。
【0063】
L100が表すアルキレン基の炭素数は、1~40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が一層好ましく、13以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキレン基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐のアルキレン基が好ましく、分岐のアルキレン基が特に好ましい。アルキレン基の分岐数は、例えば、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。L100が表すアルケニレン基およびアルキニレン基の炭素数は、2~40が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、8以上が一層好ましく、10以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルケニレン基およびアルキニレン基は直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましく、分岐が特に好ましい。分岐数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。
【0064】
RL1は、水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4が更に好ましく、1~2が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよい。
【0065】
RL2は、アルキレン基を表す。RL2が表すアルキレン基は、L100で説明したアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0066】
式(W)において、T100は、アルキル基、シアノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホ基、ホスホリル基、ボリル基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、トリアルキルシリル基またはトリアルコキシシリル基を表す。アルキル基、トリアルキルシリル基が有するアルキル基およびトリアルコキシシリル基が有するアルキル基の炭素数は、1~40が好ましい。下限は、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が一層好ましく、13以上が特に好ましい。上限は、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
【0067】
式(W)において、S100が単結合で、L100がアルキレン基で、T100がアルキル基の場合は、L100とT100に含まれる炭素数の総和は、3以上であることが好ましく、溶剤溶解性の観点から6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。また、S100がアリーレン基またはヘテロアリーレン基の場合は、L100とT100に含まれる炭素数の総和は、3以上が好ましく、溶剤溶解性の観点から6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
【0068】
式(W)の好ましい態様としては、S100が単結合であり、L100がアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、-O-、-S-、-NRL1-、-COO-、-OCO-、-CONRL1-、-SO2-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基であり、T100がアルキル基またはトリアルキルシリル基である組み合わせが挙げられる。L100は、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-ORL2-または、これらを組み合わせてなる基がより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、-O-または-ORL2-が更に好ましく、アルキレン基、-O-、または-ORL2-が特に好ましい。T100はアルキル基がより好ましい。
【0069】
式(W)において、-L100-T100部分は、分岐アルキル構造を含むことも好ましい。具体的には、-L100-T100部分は、分岐のアルキル基または分岐のアルコキシ基であることが特に好ましい。-L100-T100部分の分岐数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。-L100-T100部分の炭素数は、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上が更に好ましい。上限は、例えば40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
【0070】
式(W)において、-L100-T100部分は、不斉炭素を含むことも好ましい。この態様によれば、オキソカーボン化合物Aが複数の光学異性体を含むことができ、その結果、オキソカーボン化合物Aの溶剤溶解性を更に向上できる。不斉炭素の数は1~4個が好ましい。
【0071】
化合物(SQ1)は、下記式(SQ2)または下記式(SQ3)で表わされる化合物であることが好ましい。この態様によれば、得られる硬化膜の耐湿性をより向上させることもできる。
【化21】
【0072】
式(SQ2)中、環Z3および環Z4はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、
環Z5および環Z6はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z3~環Z6が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs5~Rs8はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
Ar1は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n1は0~2の整数を表す。
【0073】
式(SQ3)中、環Z7および環Z8はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、5または6員環の含窒素複素環を有する多環芳香族環を表し、
環Z9および環Z10はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の含窒素複素環を表し、
環Z7~環Z10が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Ar2は下記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n2は0~2の整数を表す。
【0074】
式(SQ2)の環Z3および環Z4は、式(1-1)の環Z1aと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(SQ2)の環Z5および環Z6は、式(1-1)の環Z2aと同義であり、好ましい範囲も同様である。環Z3~環Z6が有してもよい置換基、並びにRs5~Rs8が表す置換基としては、上述した置換基T、上述した可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。式(SQ2)において、Ar1は、化合物の極大吸収波長をより長波長側へシフトさせやすく、可視透明性および近赤外遮蔽性を向上させやすいという理由から式(Ar-2)~(Ar-4)のいずれかで表される基であることが好ましい。式(SQ2)において、n1は0~2の整数を表し、0または1であることが好ましい。
【0075】
式(SQ3)の環Z7および環Z8は式(1-2)の環Z1bと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(SQ3)の環Z9および環Z10は式(1-2)の環Z1bと同義であり、好ましい範囲も同様である。環Z7~環Z10が有してもよい置換基としては、上述した置換基T、上述した可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。式(SQ3)において、Ar2は化合物の極大吸収波長をより長波長側へシフトさせやすく、可視透明性および近赤外遮蔽性を向上させやすいという理由から式(Ar-2)~(Ar-4)のいずれかで表される基であることが好ましい。式(SQ3)において、n2は0~2の整数を表し、0または1であることが好ましい。
【0076】
【0077】
式中、Xa1~Xa8はそれぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子またはNRxaを表し、Rxaは水素原子または置換基を表し、*は結合手を表す。Rxaが表す置換基としては、上述した置換基Tが挙げられ、アルキル基であることが好ましい。Xa1およびXa2の少なくとも一方、Xa3およびXa4の少なくとも一方、Xa5およびXa6の少なくとも一方、ならびにXa7およびXa8の少なくとも一方はそれぞれ独立して酸素原子またはNRxaであることが好ましい。
【0078】
化合物(SQ1)は、下記式(SQ4)で表わされる化合物であることも好ましい。この態様によれば、得られる硬化膜の耐湿性をより顕著に向上させることもできる。
【化23】
式(SQ4)中、環Z
11および環Z
12はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z
11および環Z
12が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs
10およびRs
11はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、
Rs
12およびRs
13はそれぞれ独立して置換基を表し、
Rs
10とRs
12およびRs
11とRs
13は結合して5員環、6員環を形成してもよく、
n3は0~2の整数を表し、
n4およびn5は各々独立に0~5の整数を表し、
n4が2以上の場合は、複数のRs
12は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
12のうち2個のRs
12同士が結合して環を形成してもよく、
n5が2以上の場合は、複数のRs
13は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs
13のうち2個のRs
13同士が結合して環を形成してもよく、
Ar
3は上記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す。
【0079】
式(SQ4)の環Z11および環Z12は、式(1)の環Z2と同義であり、好ましい範囲も同様である。環Z11および環Z12が有してもよい置換基、Rs10~Rs13が表す置換基としては、上述した置換基T、上述した可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。式(SQ4)において、Rs10とRs12およびRs11とRs13は結合して5員環、6員環を形成してもよい。これらの基が結合して形成される環は、炭化水素環であってもよく、複素環であってもよい。式(SQ4)において、n3は0~2の整数を表し、0または1であることが好ましい。式(SQ4)において、n4およびn5は各々独立に1~5の整数を表し、1~3の整数が好ましく、1または2がより好ましく、1が更に好ましい。式(SQ4)において、n4が2以上の場合は、複数のRs12は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs12のうち2個のRs12同士が結合して環を形成してもよい。また、n5が2以上の場合は、複数のRs13は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs13のうち2個のRs13同士が結合して環を形成してもよい。Rs12同士が結合して形成される環、および、Rs13同士が結合して形成される環は、4~9員の炭化水素環または複素環であることが好ましく、5~7員の炭化水素環または複素環であることがより好ましく、5または6員の炭化水素環または複素環であることが更に好ましい。式(SQ4)のAr3は式(Ar-2)~(Ar-4)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0080】
化合物(SQ1)は、下記式(SQ5)で表わされる化合物であることも好ましい。この態様によれば、得られる硬化膜の耐光性をより向上させることもできる。
【化24】
式(SQ5)中、Rs
31~Rs
38はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rs
31~Rs
38のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
Rs
39およびRs
40はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
Rs
41およびRs
42はそれぞれ独立して置換基を表し、Rs
41とRs
42は単結合または連結基を介して連結していてもよく、
Xs
1およびXs
2はそれぞれ独立して、COまたはSO
2を表し、
Ar
4は式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表し、
n6は0~2の整数を表す。
【0081】
式(SQ5)において、Rs31~Rs38はそれぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。Rs31~Rs38が表す置換基としては、上述した置換基T、上述した可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。また、Rs31~Rs38のうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。これらの基同士が結合して形成される環は、4~9員の炭化水素環または複素環であることが好ましく、5~7員の炭化水素環または複素環であることがより好ましく、5または6員の炭化水素環または複素環であることが更に好ましく、5または6員の炭化水素環であることがより一層好ましい。
【0082】
式(SQ5)において、Rs39およびRs40はそれぞれ独立して、アリール基またはヘテロアリール基を表し、アリール基であることが好ましい。アリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。ヘテロアリール基は、単環のヘテロアリール基または縮合数が2~8の縮合環のヘテロアリール基が好ましく、単環のヘテロアリール基または縮合数が2~4の縮合環のヘテロアリール基がより好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよいが、耐光性に優れた膜を形成しやすいという理由から無置換であることが好ましい。
【0083】
Rs41およびRs42はそれぞれ独立して置換基を表す。Rs41およびRs42が表す置換基としては、上述した置換基Tが挙げられ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OCORt1または-NHCORt1が好ましい。Rt1は、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。Rs41とRs42は単結合または連結基を介して連結していてもよく、より優れた耐光性が得られやすいという理由から連結していることが好ましい。連結基としては、-CH2-、-CO-、-O-、-NH-およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる基が挙げられる。
【0084】
式(SQ5)において、Xs1およびXs2はそれぞれ独立して、COまたはSO2を表す。式(SQ5)において、Ar4は式(Ar-2)~(Ar-4)のいずれかで表される基であることが好ましい。式(SQ5)において、n6は0~2の整数を表し、0または1であることが好ましく、0であることが更に好ましい。
【0085】
化合物(SQ1)は、下記式(SQ6)または式(SQ7)で表わされる化合物であることも好ましい。この態様によれば、得られる硬化膜の耐湿性をより顕著に向上させることもできる。
【化25】
【0086】
式(SQ6)中、環Z13および環Z14はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z13および環Z14が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs101およびRs102はそれぞれ独立して置換基を表し、
n10は0~2の整数を表し、
n11およびn12は各々独立に0~6の整数を表し、
n11が2以上の場合は、複数のRs101は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs101のうち2個のRs101同士が結合して環を形成してもよく、
n12が2以上の場合は、複数のRs102は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs102のうち2個のRs102同士が結合して環を形成してもよく、
Ar10は上記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す。
【0087】
式(SQ7)中、環Z15および環Z16はそれぞれ独立して、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z15および環Z16が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
Rs103およびRs104はそれぞれ独立して置換基を表し、
n13は0~2の整数を表し、
n14およびn15は各々独立に0~5の整数を表し、
n14が2以上の場合は、複数のRs103は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs103のうち2個のRs103同士が結合して環を形成してもよく、
n15が2以上の場合は、複数のRs104は、同一であっても異なっていてもよく、複数のRs104のうち2個のRs104同士が結合して環を形成してもよく、
Ar11は上記式(Ar-1)~(Ar-4)のいずれかで表される基を表す。
【0088】
式(SQ6)の環Z13および環Z14、並びに、式(SQ7)の環Z15および環Z16は、式(1)の環Z2と同義であり、好ましい範囲も同様である。環Z13~環Z18が有してもよい置換基、Rs101~Rs104が表す置換基としては、上述した置換基T、上述した可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。Ar10~Ar11は、式(Ar-2)~(Ar-4)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0089】
式(SQ6)において、n10は0~2の整数を表し、0または1であることが好ましい。式(SQ6)において、n11およびn12は各々独立に0~6の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、1~2が特に好ましい。
【0090】
式(SQ7)において、n13は0~2の整数を表し、0または1であることが好ましい。式(SQ7)において、n14およびn15は各々独立に0~5の整数を表し、0~4が好ましく、0~3がより好ましく、0~2が更に好ましく、1~2が特に好ましい。
【0091】
(化合物(CR1))
次に、化合物(CR1)(式(CR1)で表される化合物)について説明する。
【0092】
式(CR1)中、Rc1およびRc2は、それぞれ独立して一価の有機基を表す。Rc1およびRc2が表す一価の有機基は、アリール基、ヘテロアリール基、上述した式(R1)で表される基、上述した式(1)で表される基、および、上述した式(10)で表される基が挙げられる。
【0093】
式(CR1)において、Rc1およびRc2の少なくとも一方が上述した式(1)で表わされる基であるか、Rc1およびRc2の少なくとも一方が上述した式(10)で表わされる基であることが好ましい。
【0094】
Rc1およびRc2が表わすアリール基、ヘテロアリール基、式(R1)で表される基、式(1)で表される基および式(10)で表される基については、式(SQ1)のRs1およびRs2の項で説明した範囲と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0095】
Rc1およびRc2の好ましい態様として、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して上述した式(1-1)である態様、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して上述した式(1-2)である態様、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して上述した式(1-3)である態様、
Rc1およびRc2がそれぞれ独立して上述した式(1-4)である態様、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して上述した式(1-5)である態様、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して上述した式(10)である態様が挙げられる。
【0096】
また、式(CR1)において、Rc
1およびRc
2の少なくとも一方が、縮合環のアリール基またはヘテロアリール基であることが好ましく、下記式(100)で表される基または下記式(101)で表される基であることがより好ましく、下記式(101)で表される基であることが更に好ましい。
【化26】
【0097】
式(100)中、環Z100は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z100が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
R100は水素原子または置換基を表し、
n100が2以上の場合は、複数のR100は、同一であっても異なっていてもよく、複数のR100のうち2個のR100同士が結合して環を形成してもよく、
n100は0~3の整数を表す。
【0098】
式(101)中、環Z101は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、4~9員の炭化水素環または複素環を表し、
環Z101が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、
R101~R103はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、
R101とR102は互いに結合して環を形成していてもよく、
R102とR103は互いに結合して環を形成していてもよく、
n101が2の場合は、2個のR101は、同一であっても異なっていてもよく、2個のR101同士が結合して環を形成してもよく、
n101は0~2の整数を表す。
【0099】
式(100)の環Z100および式(100)の環Z101が表す炭化水素環および複素環は、芳香族環であってもよく、非芳香族環であってもよいが、芳香族環であることが好ましい。式(100)の環Z100および式(100)の環Z101が表す炭化水素環および複素環は、5~7員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましい。なかでも、式(100)の環Z100および式(100)の環Z101は、5または6員環の炭化水素環、および、ヘテロ原子を1~3個有する5員環の複素環であることが好ましく、ヘテロ原子を1~3個有する5員環の複素環であることが更に好ましい。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のいずれであってもよいが、可視光透過率を高める観点から、窒素原子および硫黄原子が好ましい。
【0100】
環Z100および環Z101の具体例としては、ピロリジン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアゾール環等が挙げられ、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環およびトリアゾール環が好ましい。また、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、またはトリアゾール環において、環の一部として有する-NH-は、水素原子が置換されておらず、かつ窒素原子がクロコニウム骨格に結合するベンゼン環の2位の炭素に結合する構成がより好ましい。
【0101】
環Z100および環Z101が有してもよい置換基、ならびに、R100~R103が表す置換基としては、上述した置換基T、上述した可溶化基および上述した電子求引性基が挙げられる。
【0102】
オキソカーボン化合物Aの具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0103】
本発明の感光性組成物の全固形分中におけるオキソカーボン化合物Aの含有量は0.1~70質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の感光性組成物がオキソカーボン化合物Aを2種以上含む場合、それらの合計量は上記範囲内であることが好ましい。
【0104】
<<近赤外線吸収剤>>
本発明の感光性組成物は、上述したオキソカーボン化合物A以外の近赤外線吸収剤(他の近赤外線吸収剤)を含有することができる。他の近赤外線吸収剤としては、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物、ジベンゾフラノン化合物、金属酸化物、金属ホウ化物等が挙げられる。ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-068731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられる。スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0040に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/190162号公報の段落番号0072に記載の化合物、特開2016-074649号公報の段落番号0196~0228に記載の化合物、特開2017-067963号公報の段落番号0124に記載の化合物、国際公開WO2017/135359号公報に記載の化合物、特開2017-114956号公報に記載の化合物、特許6197940号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/120166号公報に記載の化合物などが挙げられる。シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-088426号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/190162号公報の段落番号0090に記載の化合物などが挙げられる。イミニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物、特開2012-012399号公報に記載の化合物、特開2007-092060号公報に記載の化合物、国際公開WO2018/043564号公報の段落番号0048~0063に記載の化合物が挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物が挙げられる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-077153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、酸化亜鉛、Alドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ二酸化スズ、ニオブドープ二酸化チタン、酸化タングステンなどが挙げられる。酸化タングステンの詳細については、特開2016-006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。金属ホウ化物としては、ホウ化ランタンなどが挙げられる。ホウ化ランタンの市販品としては、LaB6-F(日本新金属(株)製)などが挙げられる。また、金属ホウ化物としては、国際公開WO2017/119394号公報に記載の化合物を用いることもできる。酸化インジウムスズの市販品としては、F-ITO(DOWAハイテック(株)製)などが挙げられる。
【0105】
本発明の感光性組成物が他の近赤外線吸収剤を含有する場合、他の近赤外線吸収剤の含有量は、本発明の感光性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
また、他の近赤外線吸収剤と上述したオキソカーボン化合物Aとの合計量は、本発明の感光性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の感光性組成物が、他の近赤外線吸収剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の感光性組成物は、他の近赤外線吸収剤を実質的に含まない態様とすることもできる。本発明の感光性組成物が、他の近赤外線吸収剤を実質的に含まないとは、他の近赤外線吸収剤の含有量が感光性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、他の近赤外線吸収剤を含有しないことがさらに好ましい。
【0106】
<<有彩色着色剤>>
本発明の感光性組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤としては、例えば、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、赤色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、青色着色剤などが挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料と染料とを併用してもよい。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。また、顔料には、無機顔料または有機‐無機顔料の一部を有機発色団で置換した材料を用いることもできる。無機顔料や有機‐無機顔料の一部を有機発色団で置換することで、色相設計をしやすくできる。顔料としては以下に示すものが挙げられる。
【0107】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214,231,232等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42,60,61等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87,88等(以上、青色顔料)。
【0108】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子数が平均8~12個であり、塩素原子数が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/118720号公報に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料としてCN106909027Aに記載の化合物、リン酸エステルを配位子として有するフタロシアニン化合物などを用いることもできる。
【0109】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0110】
また、黄色顔料として、特開2017-201003号公報に記載されている顔料、特開2017-197719号公報に記載されている顔料を用いることができる。また、黄色顔料として、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【化33】
式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、-OHまたは-NR
5R
6であり、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、=Oまたは=NR
7であり、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R
5~R
7が表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
【0111】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0112】
また、黄色顔料として、特開2018-062644号公報に記載の化合物を用いることもできる。この化合物は顔料誘導体としても使用可能である。
【0113】
赤色顔料として、特開2017-201384号公報に記載の構造中に少なくとも1つ臭素原子が置換したジケトピロロピロール系顔料、特許第6248838号の段落番号0016~0022に記載のジケトピロロピロール系顔料などを用いることもできる。また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。
【0114】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物も好ましく用いることができる。また、黄色染料として、特開2013-054339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-026228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0115】
本発明の感光性組成物が有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の感光性組成物の全固形分に対して0.1~70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
有彩色着色剤の含有量は、上述したオキソカーボン化合物Aの100質量部に対し、10~1000質量部が好ましく、50~800質量部がより好ましい。
また、有彩色着色剤と上述したオキソカーボン化合物Aと上述した他の近赤外線吸収剤との合計量は、本発明の感光性組成物の全固形分に対して1~80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。本発明の感光性組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0116】
また、本発明の感光性組成物は、有彩色着色剤を実質的に含有しないことも好ましい。有彩色着色剤を実質的に含有しないとは、有彩色着色剤の含有量が、感光性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、有彩色着色剤を含有しないことがさらに好ましい。
【0117】
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の感光性組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450~650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900~1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0118】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報、国際公開WO2014/208348号公報、特表2015-525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、特開2017-226821号公報の段落番号0016~0020に記載の化合物、C.I.Pigment Black 31、32、Lumogen Black FK4280などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平01-170601号公報、特開平02-034664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0119】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
【0120】
本発明の感光性組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、感光性組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の感光性組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しないことも好ましい。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、感光性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
【0121】
<<顔料誘導体>>
本発明の感光性組成物が顔料を含む場合、更に顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、顔料の一部分を、酸性基、塩基性基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの塩、並びにこれらの塩の脱塩構造が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。また、上記塩の脱塩構造としては上記の塩から塩を形成する原子または原子団が脱離した基が挙げられる。例えば、カルボキシル基の塩の脱塩構造は、カルボキシラート基(-COO-)である。塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基及びこれらの塩、並びにこれらの塩の脱塩構造が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。また、上記塩の脱塩構造としては上記の塩から塩を形成する原子または原子団が脱離した基が挙げられる。
【0122】
顔料誘導体は、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、アミノ基、ピリジニル基、これらの塩またはこれらの脱塩構造から選ばれる少なくとも1種の基を有することが好ましく、スルホ基、カルボキシル基、アミノ基を有することがより好ましい。顔料誘導体がこのような基を有することで、分散安定性が向上するという効果が得られる。
【0123】
オキソカーボン化合物Aとして顔料を用いた場合、顔料誘導体としては、π共役平面を有する化合物であることが好ましく、オキソカーボン化合物Aに含まれるπ共役平面と同一の構造のπ共役平面を有する化合物であることがより好ましい。また、顔料誘導体のπ共役平面に含まれるπ電子の数は8~100個であることが好ましい。上限は、90個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましい。下限は10個以上であることが好ましく、12個以上であることがより好ましい。また、顔料誘導体は、下記式(SQ-a)で表される部分構造を含むπ共役平面を有するか、または、下記式(CR-a)で表される部分構造を含むπ共役平面を有する化合物であることも好ましい。
【化34】
上記式中、波線は結合手を表す。
【0124】
顔料誘導体は、下記式(Syn1)で表される化合物および下記式(Syn2)で表わされる化合物から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい。
【化35】
【0125】
式(Syn1)中、Rsy1およびRsy2はそれぞれ独立して有機基を表し、L1は単結合またはp1+1価の基を表し、A1はスルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、アミノ基、ピリジニル基、これらの塩またはこれらの脱塩構造から選ばれる基を表し、p1およびq1はそれぞれ独立して1以上の整数を表す。p1が2以上の場合、複数のA1は同一であってもよく、異なっていてもよい。q1が2以上の場合、複数のL1およびA1は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0126】
式(Syn2)中、Rsy3およびRsy4はそれぞれ独立して有機基を表し、L2は単結合またはp2+1価の基を表し、A2はスルホ基、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、アミノ基、ピリジニル基、これらの塩またはこれらの脱塩構造から選ばれる基を表し、p2およびq2はそれぞれ独立して1以上の整数を表す。p2が2以上の場合、複数のA2は同一であってもよく、異なっていてもよい。q2が2以上の場合、複数のL2およびA2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
式(Syn1)のRsy1およびRsy2が表す有機基、並びに、式(Syn2)のRsy3およびRsy4が表す有機基としては、アリール基、ヘテロアリール基、上述した式(R1)で表される基、上述した式(1)で表される基、上述した式(10)で表される基が挙げられる。これらの詳細および好ましい範囲については、上述したオキソカーボン化合物Aの項で説明した内容と同様である。
【0128】
式(Syn1)のL1が表すp1+1価の基、および、式(Syn2)のL2が表すp2+1価の基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-NRL-、-NRLCO-、-CONRL-、-NRLSO2-、-SO2NRL-およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。RLは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。炭化水素基は脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、またはこれらの基から水素原子を1個以上除いた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。複素環基は、単環または縮合数が2~4の縮合環が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。炭化水素基および複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられる。また、RLが表すアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。RLが表すアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。RLが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。RLが表すアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。
【0129】
顔料誘導体の具体例としては、後述する実施例に記載の化合物が挙げられる。本発明の感光性組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。本発明の感光性組成物が顔料誘導体を2種以上含む場合、それらの合計量は上記範囲内であることが好ましい。
【0130】
<<重合性化合物>>
本発明の感光性組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、ラジカル、酸または熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。本発明において、重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和結合基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。本発明で用いられる重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0131】
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0132】
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0133】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0134】
また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0135】
重合性化合物は、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0136】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0137】
重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0138】
重合性化合物は、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0139】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0140】
重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。また、重合性化合物としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0141】
感光性組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は0.1~60質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。本発明の感光性組成物が重合性化合物を2種以上含む場合、それらの合計量は上記範囲内であることが好ましい。
【0142】
<<光重合開始剤>>
本発明の感光性組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0143】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0144】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0145】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680号公報に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/164127号公報の段落番号0025~0038に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0146】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0147】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0148】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0149】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0150】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0151】
【0152】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0153】
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0154】
光重合開始剤は、オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α-アミノケトン化合物が50~600質量部が好ましく、150~400質量部がより好ましい。
【0155】
感光性組成物の全固形分中の光重合開始剤の含有量は0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の感光性組成物が光重合開始剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0156】
<<溶剤>>
本発明の感光性組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や感光性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0157】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0158】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0159】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0160】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0161】
溶剤の含有量は、本発明の感光性組成物の全量に対し、10~90質量%であることが好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより一層好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
【0162】
また、本発明の感光性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、感光性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の感光性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として感光性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した感光性組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0163】
<<樹脂>>
本発明の感光性組成物は、樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を感光性組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で使用することもできる。
【0164】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、4000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0165】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、特開2017-206689号公報の段落番号0041~0060に記載の樹脂、特開2018-010856号公報の段落番号0022~007に記載の樹脂を用いることもできる。
【0166】
本発明において、樹脂として酸基を有する樹脂を用いることが好ましい。この態様によれば、感光性組成物の現像性を向上させることができ、矩形性に優れた画素を形成しやすい。酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する樹脂は、例えば、アルカリ可溶性樹脂として用いることができる。
【0167】
酸基を有する樹脂は、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を側鎖に有する繰り返し単位を樹脂の全繰り返し単位中5~70モル%含むことがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の上限は、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。酸基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量の下限は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0168】
酸基を有する樹脂は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことも好ましい。この態様によれば、優れた現像性を有しつつ、耐溶剤性に優れた膜が得られやすい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
【0169】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【0170】
【0171】
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化39】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の詳細については、特開2010-168539号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0172】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-029760号公報の段落番号0317の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0173】
本発明で用いられる樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含むことも好ましい。
【化40】
式(X)中、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0174】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0175】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましい。酸基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000~100000が好ましい。また、酸基を有する樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~20000が好ましい。
【0176】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。
【化41】
【0177】
本発明の感光性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40mgKOH/g以上が好ましく、50mgKOH/g以上がより好ましく、60mgKOH/g以上が更に好ましく、70mgKOH/g以上がより一層好ましく、80mgKOH/g以上が特に好ましい。上限は、200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0178】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、現像残渣の発生をより抑制できる。
【0179】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0180】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0181】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えばデンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0182】
また、上述した酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)を分散剤として用いることもできる。
【0183】
また、分散剤として用いる樹脂は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることも好ましい。この態様によれば、優れた現像性を有しつつ、耐溶剤性に優れた膜が得られやすい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量は、樹脂の全繰り返し単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。
【0184】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-111、161など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0185】
感光性組成物の全固形分中における樹脂の含有量は、5~60質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
また、感光性組成物の全固形分中における酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)の含有量は、5~60質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
また、樹脂全量中における酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)の含有量は、優れた現像性が得られやすいという理由から30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、95質量%とすることもでき、90質量%以下とすることもできる。
【0186】
また、感光性組成物の全固形分中における重合性化合物と樹脂との合計の含有量は、0.1~80質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましい。上限は、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
また、本発明の感光性組成物は、重合性化合物の100質量部に対して、酸基を有する樹脂を10~1000質量部含有することが好ましい。下限は20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。この態様によれば、優れた現像性が得られやすい。上限は900質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。この態様によれば、優れた硬化性が得られやすい。
【0187】
<<エポキシ基を有する化合物>>
本発明の感光性組成物は、エポキシ基を有する化合物を含有することができる(以下、更にエポキシ化合物ともいう)。エポキシ化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ化合物は、エポキシ基を1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の数の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の数の下限は、2個以上が好ましい。エポキシ化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0188】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0189】
エポキシ化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0190】
本発明の感光性組成物がエポキシ化合物を含有する場合、感光性組成物の全固形分中におけるエポキシ化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。着色組成物に含まれるエポキシ化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0191】
<<シランカップリング剤>>
本発明の感光性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0192】
本発明の感光性組成物がシランカップリング剤を含有する場合、感光性組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0193】
<<重合禁止剤>>
本発明の感光性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルなどが挙げられる。感光性組成物の全固形分中の重合禁止剤の含有量は、0.0001~5質量%が好ましい。本発明の感光性組成物が重合禁止剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0194】
<<界面活性剤>>
本発明の感光性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0195】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。感光性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0196】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、感光性組成物中における溶解性も良好である。
【0197】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0198】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造のアクリル系化合物であって、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(例えばメガファックDS-21)が挙げられる。
【0199】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との共重合体を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤については、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0200】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることができる。ブロックポリマーとしては、例えば特開2011-089090号公報に記載された化合物が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素共重合体を用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化42】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0201】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する繰り返し単位を含む含フッ素共重合体を用いることができる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0202】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0203】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。感光性組成物の全固形分中の界面活性剤の含有量は、0.001~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。本発明の感光性組成物が界面活性剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0204】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の感光性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、後述する実施例に記載の化合物を用いることもできる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、特許第6268967号公報の段落番号0049~0059に記載された化合物を用いることもできる。感光性組成物の全固形分中の紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明の感光性組成物が紫外線吸収剤を2種以上含む場合、それらの合計量は上記範囲内であることが好ましい。
【0205】
<<その他添加剤>>
本発明の感光性組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2004-295116号公報の段落番号0155~0156に記載の添加剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-090147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などが挙げられる。また、国際公開WO2017/164024号公報に記載された酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤の市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。また、後述する実施例に記載の化合物を用いることもできる。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0206】
また、本発明の感光性組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、SiO2等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1~100nmが好ましく、3~70nmがより好ましく、5~50nmが最も好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよく、この際、コア部が中空状であってもよい。
【0207】
また、本発明の感光性組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開WO2017/164127号公報の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0208】
本発明の感光性組成物の粘度(25℃)は、1~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0209】
本発明の感光性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離の金属の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。この態様によれば、顔料分散性の安定化(凝集抑止)、分散性向上に伴う分光特性の向上、硬化性成分の安定化や、金属原子・金属イオンの溶出に伴う導電性変動の抑止、表示特性の向上などの効果が期待できる。更には、特開2012-153796号公報、特開2000-345085号公報、特開2005-200560号公報、特開平08-043620号公報、特開2004-145078号公報、特開2014-119487号公報、特開2010-083997号公報、特開2017-090930号公報、特開2018-025612号公報、特開2018-025797号公報、特開2017-155228号公報、特開2018-036521号公報などに記載された効果も得られる。上記の遊離の金属の種類としては、Na、K、Ca、Sc、Ti、Mn、Cu、Zn、Fe、Cr、Fe、Co、Mg、Al、Ti、Sn、Zn、Zr、Ga、Ge、Ag、Au、Pt、Cs、Bi等が挙げられる。また、本発明の感光性組成物は、顔料などと結合または配位していない遊離のハロゲンの含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。感光性組成物中の遊離の金属やハロゲンの低減方法としては、イオン交換水による洗浄、ろ過、限外ろ過、イオン交換樹脂による精製等の方法が挙げられる。
【0210】
本発明の感光性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や感光性組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。また、本発明の感光性組成物の保存条件としては特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、特開2016-180058号公報に記載された方法を用いることもできる。
【0211】
<感光性組成物の調製方法>
本発明の感光性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。感光性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して感光性組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して感光性組成物として調製してもよい。
【0212】
また、感光性組成物の調製に際しては、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスを実施するための手段の具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機については、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」、「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を使用することができる。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて顔料を微細化処理してもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0213】
感光性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、感光性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0214】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NXIYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0215】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0216】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0217】
<硬化膜>
次に、本発明の硬化膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の感光性組成物から得られるものである。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタや近赤外線透過フィルタなどに好ましく用いることができる。
【0218】
本発明の硬化膜は、支持体上に積層した状態で用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコンなどの半導体基材や、透明基材が挙げられる。透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、結晶、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。透明基材の材質としてはガラスが好ましい。すなわち、透明基材はガラス基材であることが好ましい。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅含有ガラスなどが挙げられる。銅含有ガラスとしては、銅を含有するリン酸塩ガラス、銅を含有するフツリン酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。結晶としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。また、支持体と本発明の膜との密着性を高めるため、支持体の表面には下地層などが設けられていてもよい。
【0219】
本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の硬化膜は700~1200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、波長400~550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400~550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700~1000nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0220】
本発明の硬化膜を近赤外線透過フィルタとして用いる場合、本発明の硬化膜は、例えば、以下の(1)または(2)のいずれかの分光特性を有することが好ましい。
(1):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400~830nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000~1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である硬化膜。この硬化膜は、波長400~830nmの範囲の光を遮光して、波長940nmを超える光を透過させることができる。
(2):膜の厚み方向における光の透過率の、波長400~950nmの範囲における最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1100~1300nmの範囲における最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である硬化膜。この硬化膜は、波長400~950nmの範囲の光を遮光して、波長1040nmを超える光を透過させることができる。
【0221】
本発明の硬化膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、上述した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、硬化性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などをさらに含有することができる。これらの詳細については、上述した材料が挙げられ、これらを用いることができる。
【0222】
本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の硬化膜をカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の硬化膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の硬化膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の硬化膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の硬化膜が形成されていてもよく、本発明の硬化膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0223】
本発明の硬化膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0224】
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過させるものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本発明において、近赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0225】
<光学フィルタ>
次に、本発明の光学フィルタについて説明する。本発明の光学フィルタは、上述した本発明の硬化膜を有する。光学フィルタとしては、近赤外線カットフィルタや近赤外線透過フィルタなどが挙げられる。
【0226】
本発明の光学フィルタを近赤外線透過フィルタとして用いる場合、近赤外線透過フィルタは、例えば、可視光を遮光し、波長900nm以上の波長の光を透過するフィルタなどが挙げられる。
【0227】
光学フィルタにおける本発明の硬化膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。厚さは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0228】
本発明の光学フィルタを近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の硬化膜の他に、さらに、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040~0070、0119~0145に記載の吸収層が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014-041318号公報の段落番号0255~0259に記載の誘電体多層膜が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0229】
また、本発明の光学フィルタは、本発明の硬化膜の表面に保護層を設けてもよい。保護層を設けることで、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01~10μmが好ましく、0.1~5μmがさらに好ましい。保護層の形成方法としては、有機溶剤に溶解した樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al2O3、Mo、SiO2、Si2N4などが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂、SiO2、Si2N4を含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0230】
樹脂組成物を塗布して保護層を形成する場合、樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる有機溶剤は、公知の有機溶剤(例えば、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、シクロペンタノン、乳酸エチル等)を用いることが出来る。保護層を化学気相蒸着法にて形成する場合、化学気相蒸着法としては、公知の化学気相蒸着法(熱化学気相蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法)を用いることができる。
【0231】
保護層は、必要に応じて、有機・無機微粒子、特定波長(例えば、紫外線、近赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。有機・無機微粒子の例としては、例えば、高分子微粒子(例えば、シリコーン樹脂微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン樹脂微粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤および近赤外線吸収剤としては、上述した素材が挙げられる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全重量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%がさらに好ましい。
【0232】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0233】
本発明の光学フィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0234】
また、本発明の光学フィルタは、本発明の硬化膜の画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素とを有する態様も好ましい態様である。
【0235】
本発明の光学カットフィルタは、本発明の組成物を用いて得られる膜の画素(パターン)と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素(パターン)とを有する態様も好ましい態様である。
【0236】
<パターン形成方法>
次に、本発明のパターン形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法は、上述した本発明の感光性組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、組成物層の未露光部を現像除去する工程と、を含む。以下各工程について説明する。
【0237】
組成物層を形成する工程では、本発明の感光性組成物を用いて、支持体上に組成物層を形成する。感光性組成物が塗布される支持体としては、特に限定は無く、シリコンなどの半導体基材や上述した透明基材が挙げられる。支持体には、有機膜や無機膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは支持体表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。また、支持体としてガラス基材を用いる場合においては、ガラス基材の表面に無機膜を形成したり、ガラス基材を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。
【0238】
感光性組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、樹脂組成物の塗布方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0239】
感光性組成物を塗布して形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベークを150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、有機素材の特性をより効果的に維持することができる。プリベーク時間は、10~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0240】
次に、組成物層をパターン状に露光する。例えば、組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、組成物層の露光部分を硬化することができる。
【0241】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0242】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。パルス露光の場合、パルス幅は、100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、50000000W/m2以上であることが好ましく、100000000W/m2以上であることがより好ましく、200000000W/m2以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、1000000000W/m2以下であることが好ましく、800000000W/m2以下であることがより好ましく、500000000W/m2以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間のことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0243】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、または、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0244】
次に、組成物層の未露光部を現像除去してパターン(画素)を形成する。組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、有機溶剤やアルカリ現像液などが挙げられる。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0245】
現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)であることが好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0246】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことも好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、KR1020170122130Aに記載の方法で行ってもよい。
【0247】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の硬化膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の硬化膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0248】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の硬化膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の硬化膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタの各色の画素は、隔壁により仕切られた空間、例えば格子状に仕切られた空間に埋め込められていてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0249】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の硬化膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-045676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430~485nm)、緑色領域(530~580nm)および黄色領域(580~620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加えさらに赤色領域(650~700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0250】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の硬化膜を有する。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0251】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、近赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および近赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0252】
近赤外線カットフィルタ111は本発明の感光性組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過および吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-043556号公報の段落番号0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。近赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。近赤外線透過フィルタ114は本発明の感光性組成物を用いて形成することもできる。
【0253】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。また、
図1に示す赤外線センサにおいて、近赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112の位置が入れ替わっても良い。また、固体撮像素子110と近赤外線カットフィルタ111との間、および/または、固体撮像素子110と近赤外線透過フィルタ114との間に他の層が配置されていてもよい。他の層としては、硬化性化合物を含む組成物を用いて形成された有機物層などが挙げられる。また、カラーフィルタ112上に平坦化層が形成されていてもよい。
【実施例】
【0254】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0255】
<分散液の調製>
下記表に記載の種類の化合物A、顔料誘導体、分散樹脂および溶剤を、それぞれ下記の表に記載の質量部で混合し、更に直径0.3mmのジルコニアビーズ117質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。なお、化合物Aは以下の混練研磨処理を施したものを用いた。
【0256】
(混練研磨処理条件)
化合物A10.6質量部、摩砕剤149.4質量部および粘結剤28質量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に添加し、装置中の混練物の温度が70℃になるように温度コントロールして、2時間混練した。摩砕剤は中性無水芒硝E(平均粒子径(体積基準の50%径(D50))=20μm、三田尻化学製)、粘結剤はジエチレングリコールを使用した。混練研磨後の混練物を、24℃の水20Lで水洗処理して摩砕剤および粘結剤を取り除き、加熱オーブンで80℃24時間の処理を行った。
【0257】
【0258】
【0259】
上記表に素材は以下の通りである。
(化合物A)
A-a-1~A-e-5:上述したオキソカーボン化合物Aの具体例で示した構造の化合物A-a-1~A-e-5
R-1:NK-5060((株)林原製、シアニン化合物)
R-2:Excolor TX-EX 708K(日本触媒(株)製、フタロシアニン化合物)
【0260】
(分散樹脂)
E-1:下記構造の樹脂(酸価=32.3mgKOH/g、アミン価=45.0mgKOH/g、重量平均分子量=22900)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
E-2:下記構造の樹脂(酸価=99.1mgKOH/g、重量平均分子量=38000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
E-3:下記構造の樹脂(酸価=87.0mgKOH/g、重量平均分子量=18000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
E-4:下記構造の樹脂(酸価=85.0mgKOH/g、重量平均分子量=22000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
E-5:下記構造のブロック型樹脂(アミン価=90mgKOH/g、4級アンモニウム塩価=30mgKOH/g、重量平均分子量=9800)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
E-6:下記構造の樹脂(酸価=43mgKOH/g、重量平均分子量=9000)。側鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
【化43】
【化44】
【0261】
(顔料誘導体)
F-1~F-7:下記構造の化合物
【化45】
【0262】
(溶剤)
D-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0263】
<感光性組成物の調製>
下記表に記載の成分を、それぞれ下記の表に記載の質量部で混合して、感光性組成物を調製した。
【0264】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0265】
上記表に記載の素材は以下の通りである。
【0266】
(化合物A)
A-b-9、A-c-3、A-e-6:上述したオキソカーボン化合物Aの具体例で示した構造の化合物A-b-9、A-c-3、A-e-6
【0267】
(分散液)
分散液1~79、R1、R2:上述した分散液1~79、R1、R2
【0268】
(アルカリ可溶性樹脂)
G-1:下記構造の樹脂(酸価=69.2mgKOH/g、重量平均分子量=10000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
G-2:下記構造の樹脂(酸価=91.3mgKOH/g、重量平均分子量=41000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
G-3:下記構造の樹脂(酸価=76.8mgKOH/g、重量平均分子量=17000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
G-4:下記構造の樹脂(酸価=110mgKOH/g、重量平均分子量=10000)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
G-5:下記構造の樹脂(酸価=184mgKOH/g、重量平均分子量=9700)。主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比を表す。
【化46】
【0269】
(重合性化合物)
B-1:下記構造の化合物の混合物(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3)
B-2:下記構造の化合物
B-3:下記構造の化合物の混合物(左側化合物を55~63モル%含有)
B-4:下記構造の化合物
【化47】
【0270】
(光重合開始剤)
C-7、C-8、C-13、C-15:上述したオキシム化合物の具体例で示した構造の化合物C-7、C-8、C-13、C-15
【0271】
(紫外線吸収剤)
H-1~H-3:下記構造の化合物
【化48】
【0272】
(酸化防止剤)
I-1~I-3:下記構造の化合物
【化49】
【0273】
(添加剤)
L-1~L-3:下記構造の化合物
【化50】
【0274】
(界面活性剤)
J-1:下記構造の化合物(重量平均分子量=14000、下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である)
【化51】
【0275】
(重合禁止剤)
K-1:p-メトキシフェノール
【0276】
(溶剤)
D-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
D-2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
D-3:シクロペンタノン
D-4:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
D-5:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
【0277】
<硬化膜の作製>
(実施例1~163、比較例1、2)
各感光性組成物を、ガラス基板(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して、500mJ/cm2の露光量で全面露光した。次いで現像液(CD-2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理し、次いで、スピン乾燥した。さらに、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を得た。
【0278】
<分光特性の評価>
得られた硬化膜の400~1100nmの波長範囲の吸収スペクトルを分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。波長650~1100nmにおける最大吸光度(Absλmax)を測定し、最大の吸光度を1とした時の、「400~600nmの平均吸光度」について、下記基準で評価した。この吸光度を1としたときに、400~600nmの吸光度が小さいほど、急峻な分光形状を有しており、可視領域の高い透明性と近赤外領域の高い遮蔽性を両立しているため、優れた分光特性であると言える。
A:0.05未満
B:0.05以上、0.1未満
C:0.1以上、0.2未満
D:0.2以上、0.3未満
E:0.3以上
【0279】
<耐光性の評価>
得られた硬化膜に対し、Xeランプにて紫外線カットフィルタを通して10万ルクスの光を5時間照射した後、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)にて、光の照射前後の色差のΔEab値を測定した。ΔEab値の小さい方が耐光性が良好であることを示す。なお、ΔEab値は、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2
A:ΔEab値<2.5
B:2.5≦ΔEab値<5
C:5≦ΔEab値<10
D:10≦ΔEab値<15
E:15≦ΔEab値
【0280】
<耐湿性の評価>
得られた硬化膜を、85℃、相対湿度95%の高温高湿下で1000時間放置して耐湿試験を行った。耐湿試験前後の硬化膜のそれぞれについて、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長650~1100nmにおける最大吸光度(Absλmax)と、波長400~650nmにおける最小吸光度(Absλmin)とを測定し、「Absλmax/Absλmin」で表される吸光度比を求めた。
|{(耐湿試験前の膜の吸光度比-耐湿試験後の膜の吸光度比)/耐湿試験前の膜の吸光度比}×100|(%)で表される吸光度比変化率を、以下の基準で評価した。結果を以下の表に示す。
A:吸光度比変化率≦2%
B:2%<吸光度比変化率≦4%
C:4%<吸光度比変化率≦7%
D:7%<吸光度比変化率≦10%
E:10%<吸光度比変化率
【0281】
<フォトリソグラフィ性の評価>
感光性組成物を、塗布後の膜厚が0.7μmになるように、下塗り層付きシリコンウェハ上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱して組成物層を得た。次いで、得られた組成物層に対し、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1.1μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光(露光量は線幅1.1μmとなる最適露光量を選択)した。次いで、露光後の組成物層に対し、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗し、パターンを得た。得られたパターンの下地上に残る残渣の量を画像の2値化処理により、下記基準で評価した。
A:残渣量が下地全面積の1%以下
B:残渣量が下地全面積の1%を超え3%以下
C:残渣量が下地全面積の3%超
【0282】
<露光時分光変動の評価>
上述した硬化膜の作製において、露光前後の膜のそれぞれについて、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長650~1100nmにおける最大吸光度(Absλmax)を測定し、
|{(露光前の膜の吸光度-露光後の膜の吸光度)/露光前の膜の吸光度}×100|(%)で表される吸光度変化率を、以下の基準で評価した。
A:吸光度変化率≦2%
B:2%<吸光度変化率≦4%
C:4%<吸光度変化率≦7%
D:7%<吸光度変化率≦10%
E:10%<吸光度変化率
【0283】
【0284】
上記表に示す通り、実施例の感光性組成物はフォトリソグラフィ性が良好であった。
また、オキソカーボン化合物Aとして、上述した式(1)で表される基を有する化合物であるA-b-1~A-b-11、A-c-1~A-c-9を用いた実施例9~18、31~35、37~45、49~56、61~70、76~81、85~92、97~102、106~109、112~119、124~129、133~136、152~159は耐湿性に優れた硬化膜を形成することができた。
また、オキソカーボン化合物Aとして、上述した式(10)で表される基を有する化合物であるA-e-1~A-e-6を用いた実施例26~30、32~33、36、38~39、46~48、57~60、71~75、82~84、93~96、103~105、110~111、120~123、130~132、137~138は耐光性に優れた硬化膜を形成することができた。
また、オキソカーボン化合物Aとして、上述した式(1)または式(10)で表わされる基を有する化合物であるA-b-1~A-b-11、A-c-1~A-c-9、A-e-1~A-e-6を用いた実施例は露光時の分光変動が小さかった。
【0285】
<分散液保存安定性の評価>
(実施例201~224)
製造直後の分散液の粘度を測定した。粘度を測定した分散液を45℃の恒温槽で72時間保管したのち、粘度を測定した。なお、粘度は、分散液の温度を23℃に調整して測定した。以下の計算式から増粘率を算出し、保存安定性を評価した。
増粘率(%)=((45℃の恒温槽で72時間保管後の分散液の粘度/製造直後の分散液の粘度)-1)×100
A:組成物の増粘率が5%以下。
B:組成物の増粘率が5%を超えて、7%以下。
C:組成物の増粘率が7%を超えて、10%以下。
D:組成物の増粘率が10%を超えて、15%以下。
E:組成物の増粘率が15%を超えている。
【表13】
【0286】
上記表に示す通り、酸価が80mgKOH/g以上の酸性分散剤であるE-2~E-4、または、ポリイミン系分散剤であるE-1を用いた分散液14、17、30、34~44、47~48、51~52(実施例201~214、217~218、221~222)は保存安定性に優れていた。また、化合物Aの部分構造を有する顔料誘導体であるF-2~F-7を用いた分散液35~36、38~39、41~42、44、48、52(実施例205~206、208~209、211~212、214、218、222)は特に保存安定性に優れていた。
【0287】
<耐溶剤性の評価>
(実施例301~330)
上記で作製した硬化膜をシクロヘキサノンに1時間浸漬させて耐溶剤性試験を行った。耐溶剤性試験前後の膜のそれぞれについて、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長650~1100nmにおける最大吸光度(Absλmax)を測定し、
|{(耐溶剤性試験前の膜の吸光度-耐溶剤試験後の膜の吸光度)/耐溶剤試験前の膜の吸光度}×100|(%)で表される吸光度変化率を、以下の基準で評価した。
A:吸光度比変化率≦2%
B:2%<吸光度比変化率≦4%
C:4%<吸光度比変化率≦7%
D:7%<吸光度比変化率≦10%
E:10%<吸光度比変化率
【表14】
【0288】
上記表に示す通り、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含むアルカリ可溶性樹脂であるG-1、G-2を用いた実施例301~316、320~321、325~326、330は耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができた。また、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含む分散剤であるE-3、E-4を用いた実施例304~305、308~309、312~313は特に耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができた。
【符号の説明】
【0289】
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:近赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層