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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】脳梗塞の治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/52 20060101AFI20220128BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K38/52
A61K35/12
A61K48/00
A61P25/00
A61P9/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018550246
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2017040395
(87)【国際公開番号】W WO2018088464
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2016220805
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506364400
【氏名又は名称】株式会社ステムリム
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100156111
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】玉井 克人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 尊彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】青戸 隆博
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-530029(JP,A)
【文献】特表2011-528804(JP,A)
【文献】特開2011-190210(JP,A)
【文献】MARK, H.B. et al.,虚血性脳卒中,メルクマニュアル,Vol.18,2007年,p.1903-1908, ISBN:978-4-8222-0398-6,特に第1903頁右欄第8行~9行、第1904頁左欄第7行~8行
【文献】YURCHENKO, et al.,CD147 Is a Signaling Receptor for Cyclophilin B,Biochemical and Biophysical Research Communications,2001年,Vol.288,p.786-788, ISSN: 0006-291X,特にAbstract、第787頁左欄第28行~39行、第788頁右欄第5行~8行、Figure 1
【文献】Genome Biology,2005年,Vol.6, No.7,Article 226
【文献】Current Topics in Medicinal Chemistry,2003年,Vol.3,pp.1315-1347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 35/00-35/768
A61K 48/00
A61P 25/00
A61P 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチジルプロリルイソメラーゼB(PPIB)タンパク質、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞を含む、脳梗塞の治療のための医薬組成物であって、
PPIBタンパク質が、
a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
b)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1~5個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質;
c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質;または
d)配列番号:4に記載の核酸配列と90%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるタンパク質、
ある、医薬組成物
【請求項2】
PPIBタンパク質が
)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質;または
)配列番号:4に記載の核酸配列と95%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるタンパク質、
である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
PPIBタンパク質をコードする核酸を含む、脳梗塞の治療のための医薬組成物であって、
PPIBタンパク質をコードする核酸が、
i)配列番号:4に記載の核酸配列からなる核酸;または
ii)配列番号:4に記載の核酸配列と90%以上の配列同一性を有する核酸、
である、医薬組成物
【請求項4】
PPIBタンパク質をコードする核酸が
ii)配列番号:4に記載の核酸配列と95%以上の配列同一性を有する核酸、
である、請求項3に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内タンパク質を含む脳梗塞の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
脳梗塞はいわゆる脳卒中と呼ばれる脳血管疾患に分類され、脳血管疾患の死亡者のうち6割(年間約7万人)が脳梗塞を原因として死亡している(非特許文献1)。脳梗塞は幸運にも生命の危機を脱したとしても、四肢の麻痺、言語障害、記憶障害など社会復帰をするためには深刻な後遺症をしばしば余儀なくされる。脳梗塞は脳の血管に血栓がつまることが原因であるため、血栓溶解療法が最も優れた治療法として知られているが、長時間にわたり虚血状態になった神経細胞は再生することが困難なことや副作用から血栓溶解療法に使用される医薬品t-PA(アルテプラーゼ)を使用することが出来る患者は発症後4.5時間以内とされている。そのため、実際に日本の医療現場でt-PAが適用されている患者は、脳梗塞患者全体の5~6%であると推定されており(非特許文献2)、大部分の患者に対しては有効な治療方法が無い状況となっている。血栓溶解療法以外の治療法としては、抗凝固療法(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬:ダビガトラン等)、脳保護療法(抗酸化薬:エダラボン)が推奨されているが血栓溶解療法ほどの効果は得られていない。このため、脳梗塞の治療に有効な新規医薬が求められている。
【0003】
ヒトのペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼB(以下、PPIB、PPIaseB、ペプチジルプロリルトランスイソメラーゼBとも称する)はシクロフィリンBとも呼ばれ、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼA(以下、PPIAと称する)に続くシクロスポリンA結合タンパク質としてクローニングされている(非特許文献3および4)。PPIBの特徴として、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ活性を有すること、さらにその活性はシクロスポリンA(CsA)によって阻害されることが知られている。また、PPIBは216アミノ酸からなるタンパク質であり、一部のドメインにおいてPPIAと相同性を示す。一方、PPIAとは異なり、PPIBのN末端側には疎水性の残基に富む領域が存在し、小胞体移行(ER-directed)シグナル配列となっているため、PPIBは細胞外に分泌されることが特徴として知られている(非特許文献3および5)。
【0004】
PPIAおよびPPIBはHIV-1粒子形成に重要なタンパク質であることが報告されている。PPIAおよびPPIBはHIV-1がアセンブリする際にカプシドタンパク質に結合しウイルス内に取り込まれる。CsAなどのPPIAおよびPPIB阻害物質存在下では、PPIAおよびPPIBのカプシドタンパク質への結合が阻害され、宿主細胞のウイルスの複製も阻害されることが明らかになっている(非特許文献6)。
【0005】
乳がん培養細胞の上清中に含まれる骨髄間葉系幹細胞の遊走活性物質を探索した試験において、PPIBが見出され、CD147に対する抗体によって遊走活性が抑制されることから骨髄間葉系幹細胞表面のCD147が標的レセプターになっていることが明らかになっている(非特許文献7)。
【0006】
炎症に対するPPIBの役割としては、CD147を介したヒトの好中球の遊走活性があることが報告されている(非特許文献8)。PPIBのリガンド結合部位はPPIAと同様のセントラルコア領域があるが、N末端にはPPIAにはないグリコサミノグリカン(GAGs)との結合部位が存在する。PPIBはCD147を介しCD4+CD45RO+のT細胞の細胞外マトリックスに対する接着を促進するが、PPIAにはこの活性はなく、むしろ競合し抑制する。PPIBは炎症因子として、ケモカイン様の活性を持つPPIAとは異なる機能を有することが明らかになっている(非特許文献9および10)。
【0007】
PPIAはマクロファージにおいて炎症性サイトカインであるTNF-αの生産を促進することが知られているが、一方、PPIBはそのような活性を持たないばかりか、マクロファージをPPIBで前処理することによって、LPSによるTNF-αの生産亢進まで抑制することが明らかになっている(非特許文献11)。
【0008】
このように、PPIBはその構造、酵素活性、標的レセプター等においてPPIAと共通する性質を有する一方、PPIB独自の性質を有することも知られており、特に炎症に対してはPPIB独自の様々な影響を与えていると考えられる。
【0009】
また、PPIBは前述のペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ活性によって、シャペロンとしてコラーゲンIのフォールディングにかかわっていることが明らかになっており、PPIBの欠損が骨形成不全の原因のひとつと考えられている(非特許文献12および13)。
【0010】
上述の通りPPIBは多機能であることが知られているが、特定の疾患を有する対象においてPPIBの投与が生体に及ぼす影響は不明な点が多く、脳梗塞の治療薬として使用できるかどうかは不明であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】平成27年(2015)人口動態統計(確定数)の概況、第6表、厚生労働省
【文献】脳神経外科、2015年12月号(Vol.43,No.12),pp.1055-1070
【文献】Price ER et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Mar 1;88(5):1903-7.
【文献】Spik G et al., J Biol Chem. 1991 Jun 15;266(17):10735-8.
【文献】Hasel KW et al., Mol Cell Biol. 1991 Jul;11(7):3484-91.
【文献】Luban J et al., Cell. 1993 Jun 18;73(6):1067-78.
【文献】Lin SY et al., Exp Cell Res. 2008 Oct 15;314(17):3107-17.
【文献】Yurchenko V et al., Biochem Biophys Res Commun. 2001 Nov 9;288(4):786-8.
【文献】Allain F et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Mar 5;99(5):2714-9.
【文献】Yurchenko V et al., J Biol Chem. 2002 Jun 21;277(25):22959-65.
【文献】Marcant A et al., J Immunol. 2012 Aug 15;189(4):2023-32.
【文献】Smith T et al., J Biol Chem. 1995 Aug 4;270(31):18323-8.
【文献】Barnes AM et al., N Engl J Med. 2010 Feb 11;362(6):521-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の一つは、脳梗塞の治療に有効な新規医薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、様々な生体内タンパク質の生理活性を試験した結果、ペプチジルプロリルイソメラーゼB(以下、PPIBとも称する)が動物モデルにおいて脳梗塞の治療効果を示すことを見出した。したがって、本発明は一の態様において、PPIBタンパク質を含有する脳梗塞の治療のための医薬組成物を提供する。
【0014】
すなわち、本発明は、ある態様において、
(1)ペプチジルプロリルイソメラーゼB(PPIB)タンパク質、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞を含む、脳梗塞の治療のための医薬組成物;
(2)PPIBタンパク質が、
a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
b)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1個もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質;
c)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質;
d)配列番号:4に記載の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質;
e)配列番号:4に記載の核酸配列と70%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;
f)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質のホモログのアミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列を含むタンパク質;または
g)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質のオルソログのアミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列を含むタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するタンパク質、
である、(1)の医薬組成物;
(3)PPIBタンパク質をコードする核酸を含む、脳梗塞の治療のための医薬組成物;
(4)PPIBタンパク質をコードする核酸が、
i)配列番号:4に記載の核酸配列を含む核酸;
ii)配列番号:4に記載の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸;または
iii)配列番号:4に記載の核酸配列と70%以上の配列同一性を有する核酸、
である、(3)に記載の医薬組成物、
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、各群のマウスの体重変化を示すグラフである。データは平均値±標準誤差(N=8)で示す。
図2図2は、マウスにおける一過性脳虚血による脳梗塞に対するPPIBタンパク質の治療効果を示すグラフである。マウスの右中大脳動脈を60分間閉塞後再灌流し、再灌流後2日目に脳を取り出し、脳梗塞体積をTTC染色より算出した。溶媒または被験物質は再灌流の6および24時間後に(合計2回)静脈内投与した。値は平均±標準誤差(N=8)で示す。** p<0.01で溶媒群と有意差あり(one-way ANOVA)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、一の態様において、PPIBタンパク質、PPIBタンパク質をコードする核酸、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞を含む、脳梗塞の治療のための医薬組成物を提供する。
【0017】
ヒトPPIBは全長216アミノ酸からなるタンパク質である(配列番号:1)。生体内では細胞外へ分泌される過程でシグナル配列(配列番号:1のアミノ酸位置1-33)が除去され、配列番号:1のアミノ酸位置34-216に相当するアミノ酸配列からなる成熟タンパク質(配列番号:3)が機能を発揮すると考えられる。
【0018】
PPIBタンパク質として、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質が例示できるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、PPIBタンパク質には、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質も含まれる。そのようなタンパク質として、例えば以下のものが挙げられる:
a)配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1個もしくは複数個、例えば1個~約40個、1個~約30個、1個~約20個、1個~約10個、1個~約5個、例えば1個、2個、3個、4個もしくは5個、または1個~4個、例えば1個、2個、3個もしくは4個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加したアミノ酸配列を含み、またはからなり、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質;
b)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と約80%以上、例えば約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、またはからなり、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質;
c)配列番号:4に記載の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質;
d)配列番号:4に記載の核酸配列と約70%以上、例えば約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質;
e)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質(ヒトPPIB)のホモログ(即ちオルソログまたはパラログ)のアミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質;
f)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質(ヒトPPIB)のオルソログのアミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質であって、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と約80%以上、例えば約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列同一性を有し、且つ、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質。
【0019】
なお、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質は、システイン残基を有している。したがって、ある実施形態において、例えば当該タンパク質の製造および精製時における性質および立体構造の安定化や分子間ジスルフィド結合の抑制等を目的として、システイン残基を別のアミノ酸に置換してもよい。
【0020】
PPIBタンパク質をコードする核酸として、配列番号:4に記載の核酸配列を含む、またはからなる核酸が例示できるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、PPIBタンパク質をコードする核酸には、配列番号:4に記載の核酸配列を含む、またはからなる核酸と機能的に同等な核酸も含まれる。そのような核酸として、例えば以下のようなものが挙げられる:
a)配列番号:4に記載の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸;
b)配列番号:4に記載の核酸配列と約70%以上、例えば約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列同一性を有する核酸。
【0021】
塩基配列やアミノ酸配列の同一性の決定は、インターネットを利用したホモロジー検索サイトを利用して行うことができる(例えば、European Bioinformatics Institute(EBI)のウェブサイトにおいて、FASTA、BLAST、PSI-BLAST、およびSSEARCH等の相同性検索が利用できる:http://www.ebi.ac.uk/Tools/sss/)。また、National Center for Biotechnology Information(NCBI)において、BLASTを用いた検索を行うことができる(例えば、NCBIのウェブサイトにおけるBLASTのページ;https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi; Altschul, S.F. et al., J. Mol. Biol., 1990, 215(3):403-10; Altschul, S.F. & Gish, W., Meth. Enzymol., 1996, 266:460-480; Altschul, S.F. et al., Nucleic Acids Res., 1997, 25:3389-3402)。
【0022】
本明細書において、「核酸」とは、ヌクレオチドが重合した分子であり、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド等を含む。また、一本鎖または二本鎖のDNA等を含む。さらに、天然のヌクレオチドのみで形成されたもの、および非天然の塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドを一部に含むもの、あるいは合成核酸も含む。典型的には、核酸はDNAである。
【0023】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、具体的には例えば6×SSC、40%ホルムアミド、25℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSC、55℃での洗浄といった条件を示すことができる。ストリンジェンシーは、塩濃度、ホルムアミドの濃度、あるいは温度といった条件に左右されるが、当業者であればこれらの条件を必要なストリンジェンシーを得られるように設定することは自明である。例えば、Sambrook et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1989)等を参照。ハイブリダイゼーションを利用することによって、例えば配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質以外のPPIBタンパク質のホモログをコードするDNAの単離が可能である。
【0024】
本明細書において、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と「機能的に同等」とは、脳梗塞の動物モデルにおいて当該タンパク質と同質の薬効を示すことをいい、ここにいう「同質」とは、定性的評価において同じであることを意味する。配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質の例としては、配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と同質の薬効(例えば脳梗塞巣を縮小させる効果)であって、且つ、定量的評価において配列番号:3に記載のアミノ酸配列を含む、またはからなるタンパク質と比較して少なくとも約10%、例えば約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%以上の薬効を示すタンパク質が挙げられる。
【0025】
PPIBタンパク質、またはその機能的に同等なタンパク質は、糖鎖等の生理的な修飾、蛍光や放射性物質のような標識、あるいは他のタンパク質との融合といった各種の修飾を加えたタンパク質であってもよい。また、製造および精製時におけるタンパク質の性質および構造の安定化や、分子間ジスルフィド結合の抑制等を目的として、システイン残基における-SH基の酸化(例えばスルホ基への変換)、グルタチオン化、ニトロシル化、アルキル化、マレイミドとの結合等を行ったものでもよい。これらのいずれも、PPIBと機能的に同等である限り、PPIBタンパク質として使用できる。
【0026】
PPIBタンパク質の入手方法は特に限定されず、組換え発現(哺乳類細胞、酵母、大腸菌、昆虫細胞等)、無細胞系を用いた合成、遺伝子導入がされていない細胞の培養上清からの抽出、市販品購入などが例示できる。例えば、宿主に応じたシグナル配列をコードする核酸配列および配列番号:4の核酸配列を有する核酸を宿主細胞に導入し、組換え発現後の培養上清から回収する方法や、宿主細胞に配列番号:4の核酸配列を有する核酸を導入し、組換え発現後に細胞を破砕して回収する方法、配列番号:4の核酸配列を有する核酸を鋳型として無細胞系で合成するなどの方法が挙げられる。これらに使用される細胞は特に限定されず、例えばHEK293細胞が挙げられる。
【0027】
得られたPPIBタンパク質は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一なタンパク質として精製することができる。タンパク質の分離、精製は、通常のタンパク質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択および/または組み合わせることによりタンパク質を分離、精製することができる。
【0028】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Marshak et al., Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0029】
また、PPIBタンパク質は、実質的に精製されたタンパク質であることが好ましい。本明細書における、「実質的に精製された」とは、PPIBタンパク質の精製度(タンパク質成分全体におけるPPIBタンパク質の割合)が、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、100%若しくは100%に近いことを意味する。100%に近い上限は当業者の精製技術や分析技術に依存するが、例えば、99.999%、99.99%、99.9%、99%などである。
【0030】
また、上記の精製度を有するものであれば、如何なる精製方法によって精製されたものでも、実質的に精製されたタンパク質に含まれる。例えば、上記のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、および/または組み合わせることにより、実質的に精製されたタンパク質を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本態様の医薬組成物の有効成分としてのPPIBタンパク質、PPIBタンパク質をコードする核酸、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞の形態は特に限定されず、例えば、PPIBタンパク質、PPIBタンパク質をコードするDNAが挿入されたベクター、PPIBタンパク質をコードするDNAが挿入されたベクターを導入した細胞などが挙げられる。
【0032】
PPIBタンパク質を分泌する細胞は、例えば、PPIBタンパク質をコードするDNAに分泌シグナルをコードするDNAを結合させたDNAを、公知の発現ベクターや遺伝子治療用ベクターに挿入することで作製されたベクターを、線維芽細胞(例えば正常皮膚線維芽細胞およびそれに由来する株化細胞)などの哺乳類細胞や昆虫細胞、その他の細胞に導入することによって作製することができる。分泌シグナルをコードするDNAとしては配列番号:5の核酸配列を有するDNAが例示されるが、これに限定されない。これら細胞が由来する動物種に特に制限はないが、ベクターが投与される対象動物種の細胞、対象自身の細胞、あるいはベクターが投与される対象の血縁にあたる者に由来する細胞を使用することが好ましい。
【0033】
PPIBタンパク質をコードするDNAは、PPIBタンパク質をコードする限り、cDNAであっても、ゲノムDNAであってもよく、また、天然のDNAであっても、人工的に合成されたDNAであってもよい。PPIBタンパク質をコードするDNAは、典型的には、ベクター(例えば遺伝子治療用ベクター)に挿入された状態で、本態様の医薬組成物に含有される。
【0034】
遺伝子治療用ベクターとしては、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノアソシエートウイルスベクター、センダイウイルスベクター、センダイウイルスエンベロープベクター、パピローマウイルスベクター、などが例示できるが、これらに限定されるものではない。該遺伝子治療用ベクターには、遺伝子発現を効果的に誘導するプロモーターDNA配列や、遺伝子発現を制御する因子、DNAの安定性を維持するために必要な分子が含まれてもよい。
【0035】
本態様の医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A参照)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。
【0036】
本態様の医薬組成物の投与方法として、経口投与または非経口投与が挙げられ、係る投与方法としては具体的には、注射投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられる。注射投与の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などによって本態様の医薬組成物を全身または局部的(例えば、皮下、皮内、皮膚表面、眼球あるいは眼瞼結膜、鼻腔粘膜、口腔内および消化管粘膜、膣・子宮内粘膜、または損傷部位など)に投与できる。
【0037】
また、患者の年齢、症状等により適宜投与方法を選択することができる。PPIBタンパク質を投与する場合、例えば、一回の投与につき、体重1kgあたり約0.0000001mgから約1000mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり約0.00001から約100000mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。PPIBタンパク質を分泌する細胞やPPIBタンパク質をコードするDNAが挿入された遺伝子治療用ベクターを投与する場合も、損傷組織において、PPIBタンパク質の量が上記範囲内となるように投与することができる。しかしながら、本組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。
【0038】
本明細書において使用される用語、「患者」または「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物が挙げられ、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモットなどが例示できるが、これらに制限されない。
【0039】
本明細書で使用される用語、「治療」は、例えば、症状の緩和、改善、および/または除去、軽減および/または安定化(例えばより進んだ段階へと進行しないこと)のいずれかを指す。
【0040】
本発明は、さらに以下の態様も提供する:
(1)PPIBタンパク質、PPIBタンパク質をコードする核酸、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞を対象に投与することを含む、脳梗塞の治療方法;
(2)脳梗塞の治療における使用のためのPPIBタンパク質、PPIBタンパク質をコードする核酸、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞;
(3)脳梗塞の治療のための医薬の製造におけるPPIBタンパク質、PPIBタンパク質をコードする核酸、またはPPIBタンパク質を分泌する細胞の使用。
【0041】
これらの態様における、PPIBタンパク質、その機能的に同等なタンパク質、PPIBタンパク質をコードする核酸、PPIBタンパク質を分泌する細胞、それらの形態、製剤化、投与方法、および投与量についての説明や他の実施形態は上記のとおりである。
【0042】
本明細書において引用された先行技術文献は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書と引用文献の記載に不一致がある場合、本明細書の記載により調整される。
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例は必ずしも本発明を限定する意図ではない。
【実施例
【0044】
実施例1:マウス脳梗塞に対するヒトPPIBの効果
試験材料
動物:
C57BL/6N系雄性マウス(微生物グレードSPF)を7週齢で日本クレア(東京都)より購入し、3日以上動物飼育室で馴化させた後23~25gで使用した。動物は、室温22±2℃、湿度50%±20%、照明時間12時間(午前7時から午後7時)に設定された動物飼育室にて飼育した。固形飼料CE-2(オリエンタル酵母工業)および水道水を自動摂取させ、1ケージ当たり3匹で飼育した。
【0045】
薬物:
被験物質としてヒトペプチジルプロリルイソメラーゼB(PPIB)を用いた。当該ヒトPPIBは、配列番号:2の核酸配列を有するDNAが挿入されたベクターをHEK293細胞に導入し、当該細胞を培養した後の上清から精製して得たものである。こうして得られた当該ヒトPPIBは、配列番号:1のアミノ酸配列からなるタンパク質として細胞内で合成された後、細胞外へ分泌される際にシグナル配列が除去されて成熟タンパク質となったものであるため、配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質である。当該ヒトPPIBが配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質であることは、N末端側のペプチドシークエンシングおよび質量分析(MALDI-TOF/TOF)によって確認した。溶媒として生理食塩液(大塚生食注、大塚製薬)を用いた。被験物質は大塚蒸留水(大塚製薬)に1mg/mlになるように溶解し、50μLごとに分注し、使用するまで-30℃に保存した。被験物質をマウスに投与する前に、保存した被験物質を溶解し、大塚生食注200μLを加えて目的の濃度(0.2mg/mL)に希釈した。投与溶液は、投与するまで氷上に保管した。
【0046】
器具:
塞栓子は、全長20mmの6号ナイロン糸(6-0、ネスコスーチャーナイロン糸)先端を半田ゴテで丸くし、先端7mmをシリコン樹脂(Dow Corning、RTVシーラント732)で直径0.21~0.23mmになるようにコーティングしたものを使用した。
【0047】
試験方法
一過性脳虚血:
麻酔器(MK-A110D、室町機械)を用い、C57BL/6N系雄性マウスをイソフルラン(アボットジャパン)麻酔下(導入時3%、維持2%)で、正中切開により右頸動脈を剥離し、総頸動脈および外頸動脈に糸をかけた後、総頸動脈および外頸動脈の血流を一時的に遮断した。外頸動脈より塞栓子を挿入し、外頸動脈を切断後、外頸動脈と内頸動脈の分岐部より10.5mmを内頸動脈に挿入し中大脳動脈の起始部を閉塞させた後手術創を閉じた。脳梗塞作製時の手術中はヒートマットを使用して、マウスの直腸温を36.5~37.5℃に保持した。虚血中のマウスはケージに戻し、自由飼育させた。梗塞60分後に麻酔下で塞栓子を引き抜き、切り口を閉じた。再灌流時は直腸温の調節はしなかった。手術は顕微鏡(POM-50 II、Konan Medical)下で行った。
【0048】
体重測定:
手術前、手術後1および2日に体重測定を行った。
【0049】
投与:
被験物質または溶媒の投与は、虚血再灌流の6および24時間後に合計2回投与した。投与溶液を1mLのシリンジに充填し、27Gの注射針を用いて尾静脈より液量0.2mL投与した。
【0050】
脳梗塞領域の測定:
虚血再灌流の2日後にマウスを麻酔下で腹大動脈切断により放血致死し、脳を採取した。採取した脳は、マウス用脳スライサー(Zivic Instruments)を用いて、大脳と小脳の境界より厚さ2mmの大脳横断切片を4枚作製した。それらを1% 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)(Sigma)を用いて37℃で30分間染色した。脳切片は顕微鏡(倍率x1.5、Olympus)を用いて撮像し、梗塞巣の大きさは、画像解析ソフト(Photoshop CS5、Adobe)を用い、各脳切片について、左側脳面積、右側脳非障害面積および右側脳障害面積を求めた。脳全体面積は次のように算出した:脳全体面積=左側脳面積×2。
脳梗塞の体積は、錘台の体積の求め方から次の式により算出した:
[s+S+√(sS)]×h/3(式中、s:切片1の面積、S:切片2の面積、h:切片間の距離とする)。
隣り合う各切片間の3カ所の体積を求めて合計し、脳梗塞体積のパーセンテージを算出した:
脳梗塞体積(%)=脳梗塞体積/脳全体体積×100。
【0051】
統計処理:
測定値は平均値および標準誤差(mean±SEM)で表した。表計算ソフトを用いて測定値を一元配置の分散分析により統計的に解析し、p<0.05の場合に有意差ありとした。
【0052】
試験結果
マウスを脳虚血再灌流後に群分けし、それぞれ溶媒またはPPIBを投与してから2日後に脳を摘出するまでの期間で死亡したマウスはいなかった。この期間の各群のマウス体重の変化を図1に示した。手術に用いたマウスの体重は群間で差がなかった。手術後マウスの体重は減少し、両群ともに手術前に比較すると手術後1日で約3g、2日後で約5g減少した。
【0053】
一過性脳虚血の2日後に脳を摘出してTTC染色した脳の梗塞の体積を測定し、結果を図2に示した。脳全体の体積に対する梗塞体積は溶媒群で20.6%、PPIB群で10.9%であり、47.2%の有意な減少を示した。以上の結果より、PPIBは一過性脳虚血による脳梗塞に対して治療効果を発揮することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
脳梗塞の治療において有効性が示されている既存の医薬として、血栓溶解剤t-PAがある。しかし、t-PAは、脳梗塞発症後4.5時間を超える場合、非外傷性頭蓋内出血の既往がある場合、胸部大動脈解離が強く疑われる場合、およびCTやMRIでの広汎な早期虚血性変化が存在する場合には適応外となる等、その使用に制限がある。また、実際に日本の医療現場でt-PAが適用されている患者は、脳梗塞患者全体の5~6%であると推定されており、大部分の患者に対しては有効な治療方法が無い状況となっている。PPIBはt-PAとは異なる機序で脳梗塞の治療効果を発揮すると考えられるため、本願により提供されるPPIBを含む脳梗塞の治療薬は、t-PAが適応外となる患者に対する有効な治療方法を提供するだけでなく、PPIBの単独投与またはt-PAとの併用によって、t-PAだけでは十分な治療効果が得られない患者にも多大な恩恵をもたらすものと期待される。
図1
図2
【配列表】
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