(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-27
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220128BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220128BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20220128BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220128BHJP
B32B 38/10 20060101ALI20220128BHJP
H01L 27/32 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
C08F299/00
B32B7/023
B32B38/10
H01L27/32
(21)【出願番号】P 2020519857
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019136
(87)【国際公開番号】W WO2019221123
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2018093264
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】西村 直弥
(72)【発明者】
【氏名】三戸部 史岳
(72)【発明者】
【氏名】武田 淳
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027431(JP,A)
【文献】特開2012-237928(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170036(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154695(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/195833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/023
B32B 38/10
C08F 299/00
G02F 1/1337
G02F 1/137
G09F 9/00
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剥離性支持体と、第1配向膜と、光吸収異方性層とをこの順に有する第1光学積層体の前記光吸収異方性層側の表面と、第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層Aとをこの順に有する第2光学積層体の前記光学異方性層A側の表面とが対向するように、前記第1光学積層体と前記第2光学積層体とを積層し
て、前記第1剥離性支持体、前記第1配向膜、前記光吸収異方性層、前記光学異方性層A、前記第2配向膜、および、前記第2剥離性支持体をこの順に有する積層体X1を得た後、
前記積層体X1から前記第1剥離性支持体を剥離して積層体Xを得る工程と、
前記積層体Xの前記第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、前記第2剥離性支持体を剥離して、前記表面フィルム、前記光吸収異方性層、および、前記光学異方性層Aを有する光学積層体を得る工程と、を有し、
前記光吸収異方性層が、2色性物質および液晶性化合物を含む液晶性組成物を用いて形成され、
前記第1剥離性支持体の剥離力が、前記第2剥離性支持体の剥離力よりも小さい、光学積層体の製造方法。
【請求項2】
前記光学積層体を得る工程が、前記積層体Xの前記第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層して、前記表面フィルム、前記第1配向膜、前記光吸収異方性層、前記光学異方性層A、前記第2配向膜、および、前記第2剥離性支持体をこの順に有する積層体X2を得た後、前記積層体X2から前記第2剥離性支持体を剥離して、前記表面フィルム、前記光吸収異方性層、および、前記光学異方性層Aを有する光学積層体を得る工程である、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記光学積層体が、前記表面フィルム、前記第1配向膜、前記光吸収異方性層、前記光学異方性層A、および、前記第2配向膜をこの順に有する、請求項1または2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層Aとをこの順に有する第2光学積層体の前記光学異方性層A側の表面と、第3剥離性支持体と、光学異方性層Bとをこの順に有する第3光学積層体の前記光学異方性層B側の表面とが対向するように、前記第2光学積層体と前記第3光学積層体とを積層し
て、前記第2剥離性支持体、前記第2配向膜、前記光学異方性層A、前記光学異方性層B、および、前記第3剥離性支持体をこの順に有する積層体Y1を得た後、
前記積層体Y1から前記第2剥離性支持体を剥離して積層体Yを得る工程と、
前記積層体Yの前記第2配向膜側の表面と、第1剥離性支持体と、第1配向膜と、光吸収異方性層とをこの順に有する第1光学積層体の前記光吸収異方性層側の表面とが対向するように、前記積層体Yと前記第1光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Zを得る工程と、
前記積層体Zの前記第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、前記第3剥離性支持体を剥離して、前記表面フィルム、前記光吸収異方性層、前記光学異方性層Aおよび前記光学異方性層Bを有する光学積層体を得る工程と、を有し、
前記光吸収異方性層が、2色性物質および液晶性化合物を含む組成物を用いて形成され、
前記第1剥離性支持体の剥離力が前記第3剥離性支持体の剥離力よりも小さく、かつ、前記第2剥離性支持体の剥離力が
前記第3剥離性支持体の剥離力よりも小さい、光学積層体の製造方法。
【請求項5】
前記光学積層体を得る工程が、前記積層体Zの前記第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層して、前記表面フィルム、前記第1配向膜、前記光吸収異方性層、前記第2配向膜、前記光学異方性層A、前記光学異方性層B、および、前記第3剥離性支持体をこの順に有する積層体Z2を得た後、
前記積層体Z2から前記第3剥離性支持体を剥離して、前記表面フィルム、前記第1配向膜、前記光吸収異方性層、前記第2配向膜、前記光学異方性層A、および、前記光学異方性層Bを有する光学積層体を得る工程である、請求項4に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記2色性物質が、式(1)で表される化合物を含む、請求項1
~5のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【化1】
式(1)中、A
1、A
2およびA
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、置換基を表す。
mは、1~4の整数を表し、mが2~4の整数の場合、複数のA
2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項7】
前記2色性物質が、式(2)で表される化合物を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【化2】
式(2)中、C
1およびC
2は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。ただし、C
1およびC
2の少なくとも一方は、架橋性基を表す。
M
1およびM
2は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。ただし、M
1およびM
2の少なくとも一方は、主鎖の原子の数が4個以上である。
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基および置換基を有していてもよいビフェニレン基のいずれかの基を表す。
Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
R
1は、水素原子または置換基を表す。
R
2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【請求項8】
前記2色性物質が、式(3)で表される化合物を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【化3】
式(3)中、AおよびBは、それぞれ独立に、架橋性基を表す。
aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a+b≧1である。
a=0の場合にはL
1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL
1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL
2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL
2は単結合または2価の連結基を表す。
Ar
1は(n1+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar
2は(n2+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar
3は(n3+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。
R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。n1≧2である場合には複数のR
1は互いに同一でも異なっていてもよく、n2≧2である場合には複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、n3≧2である場合には複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
kは、1~4の整数を表す。k≧2の場合には、複数のAr
2は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。
n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。ただし、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0であり、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である。
【請求項9】
前記液晶性化合物が、式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶性化合物を含み、式(4)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が、4以上である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【化4】
式(4)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表す。L1は、単結合または2価の連結基を表す。SP1は、スペーサー基を表す。M1は、メソゲン基を表す。T1は、末端基を表す。
【請求項10】
前記第1配向膜の波長550nmにおける平均屈折率が1.55~1.80である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項11】
前記光学異方性層Aがλ/4板である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項12】
前記表面フィルムが、基材とハードコート層とを有する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項13】
前記基材が、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、および、ポリエステル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
12に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された光学積層体の前記表面フィルム側とは反対側の表面と、表示素子とが対向するように、前記光学積層体と前記表示素子とを積層して、表示装置を製造する工程を有する、表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記光学積層体と前記表示素子との間に、密着層が配置される、請求項
14に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法、および、表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2色性物質を用いて形成される光吸収異方性層について種々の検討が行われている。
例えば、特許文献1では、光吸収異方性層である2色性物質を用いて形成される偏光膜を含むシートと、光学異方性層である位相差膜を含むシートとを用いて、円偏光板を製造する態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、光吸収異方性層および光学異方性層を含む光学積層体においては、種々の使用環境に応じて、その表面に別途表面フィルムを配置する場合が多い。
そのため、表面フィルム、光吸収異方性層および光学異方性層を含む光学積層体を簡便に製造できる方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、表面フィルム、光吸収異方性層および光学異方性層を含む光学積層体を簡便に製造できる、光学積層体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、表示装置の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点について鋭意検討した結果、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
【0007】
(1) 第1剥離性支持体と、第1配向膜と、光吸収異方性層とをこの順に有する第1光学積層体の光吸収異方性層側の表面と、第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層Aとをこの順に有する第2光学積層体の光学異方性層A側の表面とが対向するように、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Xを得る工程と、
積層体Xの第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、第2剥離性支持体を剥離して、表面フィルム、光吸収異方性層、および、光学異方性層Aを有する光学積層体を得る工程と、を有し、
光吸収異方性層が、2色性物質および液晶性化合物を含む液晶性組成物を用いて形成され、
第1剥離性支持体の剥離力が、第2剥離性支持体の剥離力よりも小さい、光学積層体の製造方法。
(2) 第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層Aとをこの順に有する第2光学積層体の光学異方性層A側の表面と、第3剥離性支持体と、光学異方性層Bとをこの順に有する第3光学積層体の光学異方性層B側の表面とが対向するように、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層し、第2剥離性支持体を剥離して積層体Yを得る工程と、
積層体Yの第2配向膜側の表面と、第1剥離性支持体と、第1配向膜と、光吸収異方性層とをこの順に有する第1光学積層体の光吸収異方性層側の表面とが対向するように、積層体Yと第1光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Zを得る工程と、
積層体Zの第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、第3剥離性支持体を剥離して、表面フィルム、光吸収異方性層、光学異方性層Aおよび光学異方性層Bを有する光学積層体を得る工程と、を有し、
光吸収異方性層が、2色性物質および液晶性化合物を含む組成物を用いて形成され、
第1剥離性支持体の剥離力が第3剥離性支持体の剥離力よりも小さく、かつ、第2剥離性支持体の剥離力が第3剥離性支持体の剥離力よりも小さい、光学積層体の製造方法。
(3) 2色性物質が、後述する式(1)で表される化合物を含む、(1)または(2)に記載の光学積層体の製造方法。
(4) 2色性物質が、後述する式(2)で表される化合物を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
(5) 2色性物質が、後述する式(3)で表される化合物を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
(6) 液晶性化合物が、後述する式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶性化合物を含み、式(4)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が、4以上である、(1)~(5)のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
(7) 第1配向膜の波長550nmにおける平均屈折率が1.55~1.80である、(1)~(6)のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
(8) 光学異方性層Aがλ/4板である、(1)~(7)のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
(9) 表面フィルムが、基材とハードコート層とを有する、(1)~(8)のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
(10) 基材が、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、および、ポリエステル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、(9)に記載の光学積層体の製造方法。
(11) (1)~(10)のいずれかに記載の製造方法によって製造された光学積層体の表面フィルム側とは反対側の表面と、表示素子とが対向するように、光学積層体と表示素子とを積層して、表示装置を製造する工程を有する、表示装置の製造方法。
(12) 光学積層体と表示素子との間に、密着層が配置される、(11)に記載の表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面フィルム、光吸収異方性層および光学異方性層を含む光学積層体を簡便に製造できる、光学積層体の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、表示装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】光学積層体の製造方法の第1実施形態の工程を説明するための図である。
【
図2】光学積層体の製造方法の第1実施形態で得られる積層体Xの断面図である。
【
図3】光学積層体の製造方法の第1実施形態の工程を説明するための図である。
【
図4】光学積層体の製造方法の第1実施形態で得られる光学積層体の断面図である。
【
図6】光学積層体の製造方法の第2実施形態の工程を説明するための図である。
【
図7】光学積層体の製造方法の第2実施形態で得られる積層体Yの断面図である。
【
図8】光学積層体の製造方法の第2実施形態の工程を説明するための図である。
【
図9】光学積層体の製造方法の第2実施形態で得られる積層体Zの断面図である。
【
図10】光学積層体の製造方法の第2実施形態の工程を説明するための図である。
【
図11】光学積層体の製造方法の第2実施形態で得られる光学積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0011】
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のレタデーションおよび厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)およびRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0012】
AxoScanにて用いられる平均屈折率は、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
【0013】
本明細書において、角度(例えば「90°」などの角度)、および、その関係(例えば「直交」、「平行」、および「45°で交差」など)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0014】
本明細書において、光吸収異方性層の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。「透過軸」は、「吸収軸」と90°の角度をなす方向を意味する。
【0015】
本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂の両方を含む概念であり、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体も含まれる。
また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタクリロイル基の両方を含む概念である。
【0016】
<<第1実施態様>>
以下、本発明の光学積層体の製造方法の第1実施形態について図面を用いて説明する。
本発明の光学積層体の製造方法の第1実施形態は、後述する工程1-1および工程1-2を有する。
以下、各工程について詳述する。
【0017】
<工程1-1>
工程1-1は、第1剥離性支持体と、第1配向膜と、光吸収異方性層とをこの順に有する第1光学積層体の光吸収異方性層側の表面と、第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層Aとをこの順に有する第2光学積層体の光学異方性層A側の表面とが対向するように、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Xを得る工程である。
より具体的には、本工程においては、
図1に示すように、第1剥離性支持体12と、第1配向膜14と、光吸収異方性層16とをこの順に有する第1光学積層体10、および、第2剥離性支持体26と、第2配向膜24と、光学異方性層A22とをこの順に有する第2光学積層体20を用意する。次に、
図2に示すように、第1光学積層体10の光吸収異方性層16側の表面と、第2光学積層体20の光学異方性層A22側の表面とが対向するように、第1光学積層体10と第2光学積層体20とを積層し、第1剥離性支持体12を剥離して積層体X30を得る。
以下では、まず、本工程で用いられる各部材について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0018】
(第1剥離性支持体)
第1剥離性支持体は、その表面上に後述する第1配向膜および光吸収異方性層を支持する部材であり、第1配向膜表面と剥離可能に密着する。後述するように、第1剥離性支持体を剥離する際には、第1剥離性支持体と第1配向膜との間で剥離が生じる。
【0019】
第1剥離性支持体を構成する材料としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、グルタルイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂およびこれらから選ばれた複数種の樹脂の混合樹脂が挙げられ、セルロース系樹脂またはポリエステル系樹脂が好ましい。
なお、後述する光吸収異方性層を形成する際の液晶性化合物の相転移には120~150℃の加温が必要となる場合があり、製造中の第1剥離性支持体の加温による変形を避ける目的で、第1剥離性支持体を構成する材料としては、セルロースアシレート樹脂またはポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
さらに、第1剥離性支持体の剥離力を調整する際には、第1剥離性支持体の表面に親水化処理を施す場合がある。そこで、第1剥離性支持体の表面を親水化処理することで剥離力の調整が容易であることから、第1剥離性支持体を構成する材料としては、セルロースアシレートがさらに好ましい。
【0020】
第1剥離性支持体は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
例えば、第1剥離性支持体が多層構造である場合は、支持体と、支持体上に配置された被覆層とを含む態様が挙げられる。
支持体を構成する材料としては、上述した第1剥離性支持体を構成する材料が例示される。また、支持体の厚みも特に限定されず、後述する第1剥離性支持体の厚みと同様の範囲が挙げられる。
支持体としては、透明支持体が好ましい。
また、被覆層としては、第1配向膜に剥離可能に密着し、後述する第2剥離性支持体の剥離力との関係を満たす層であれば特に限定されないが、樹脂層が挙げられる。
被覆層の厚みとしては、0.1~10μmが好ましい。
【0021】
第1剥離性支持体の厚みは特に限定されず、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。
【0022】
(第1配向膜)
第1配向膜は、第1剥離性支持体上に配置される層であり、光吸収異方性層中の液晶性化合物の配向方向を制御する層である。第1配向膜は、光吸収異方性層と共に、第1剥離性支持体から分離される。
第1配向膜は、2色性物質および液晶性化合物を含む組成物に含まれる液晶性化合物を所望の配向状態とすることができれば、どのような層でもよい。
第1配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、または、ラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与または光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、ラビング処理により形成する配向膜、または、光照射により形成される光配向膜が好ましい。
【0023】
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手できる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、および、その誘導体(変性体)が好ましい。なかでも、ポリマー材料としては、重合性基を有するポリマー材料が好ましく、重合性基を有するポリビニルアルコールがより好ましい。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、および、ビニル基などが挙げられる。
配向膜については国際公開WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照できる。
配向膜の厚さは、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましい。
【0024】
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献に記載がある。例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-076839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-094071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが挙げられる。なかでも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、ポリエステルが好ましい。
【0025】
上記材料から形成した塗膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されない。光照射に用いる光のピーク波長は、200~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0026】
光照射に用いる光源は、例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム-アルミニウム-ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管が挙げられる。
【0027】
直線偏光を得る手段としては、偏光板を用いる方法、プリズム系素子もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が挙げられる。また、フィルタまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0028】
照射する光は、直線偏光の場合には、塗膜に対して上面または裏面から塗膜表面に対して垂直または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°がより好ましい。
非偏光の場合には、塗膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1~60分間が好ましく、1~10分間がより好ましい。
【0029】
なお、第1配向膜の波長550nmにおける平均屈折率は特に限定されず、1.40~2.00の場合が多く、なかでも、表示素子に光学積層体を配置した際の表示性能がより優れる点で、1.55~1.80が好ましい。
また、第1配向膜の波長550nmにおける屈折率異方性は特に限定されず、表示素子に光学積層体を配置した際の表示性能がより優れる点で、0.1~0.3が好ましい。
光吸収異方性層が高い屈折率異方性を有する場合が多いため、第1配向膜と光吸収異方性層との間での界面反射を低減する上で、第1配向膜の平均屈折率および屈折率異方性が高いことが好ましい。
なお、平均屈折率は、Woollam社製分光エリプソメトリM-2000Uを用いて測定される。面内における屈折率最大となる方向をx軸、それに対し直交する方向をy軸、面内に対し法線方向をz軸とし、それぞれの方向での第1配向膜の屈折率をnx、ny、nzと定義する。本発明における平均屈折率(nave)および面内における屈折率異方性(Δn)は、それぞれ下記式(1)、(2)で表される。
式(1) nave =(nx+ny+nz)/3
式(2) Δn= nx-ny
【0030】
(光吸収異方性層)
光吸収異方性層は、2色性物質および液晶性化合物を含む組成物を用いて形成される層である。光吸収異方性層は、方向によって光吸収の程度が異なる層であって、通常、吸収軸と偏光軸(透過軸)とを有する。
【0031】
2色性物質は特に限定されず、可視光吸収物質(2色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば量子ロッド)などが挙げられ、従来公知の2色性物質(2色性色素)を使用できる。
具体的には、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-014883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-037353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-063387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特願2015-001425号公報の[0022]~[0080]段落、特願2016-006502号公報の[0005]~[0051段落]、WO2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、WO2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、特願2016-044909号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-044910号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-095907号公報の[0013]~[0037]段落、および、特願2017-045296号公報の[0014]~[0034]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0032】
本発明においては、2種以上の2色性物質を併用してもよく、例えば、光吸収異方性層を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物とを併用してもよい。
【0033】
2色性物質は、架橋性基を有していてもよい。
架橋性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基が挙げられ、なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0034】
2色性物質としては、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【0036】
式(1)中、A1、A2およびA3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。L1およびL2は、それぞれ独立に、置換基を表す。mは、1~4の整数を表し、mが2~4の整数の場合、複数のA2は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、mは、1または2が好ましい。
【0037】
上記式(1)中、A1、A2およびA3が表す「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」について説明する。
上記置換基としては、例えば、特開2011-237513号公報の[0237]~[0240]段落に記載された置換基群Gが挙げられ、なかでも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、または、アリールオキシカルボニル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基がさらに好ましい。
2価の芳香族基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基および2価の芳香族複素環基が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~12のアリーレン基が挙げられ、具体的には、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、および、キシリレン基が挙げられる。なかでも、フェニレン基が好ましい。
また、上記2価の芳香族複素環基としては、単環または2環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素原子以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素原子以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基としては、具体的には、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、および、チエノチアゾール-ジイル基(以下、「チエノチアゾール基」と略す。)が挙げられる。
上記2価の芳香族基のなかでも、2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0038】
ここで、A1、A2およびA3のうちいずれか1つが、置換基を有していてもよい2価のチエノチアゾール基であることが好ましい。なお、2価のチエノチアゾール基の置換基の具体例は、上述した「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」における置換基と同じであり、好ましい態様も同じである。
また、A1、A2およびA3のうち、A2が2価のチエノチアゾール基であることがより好ましい。この場合には、A1およびA3は、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
A2が2価のチエノチアゾール基である場合には、A1およびA3の少なくとも一方が置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、A1およびA3の両方が置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0039】
上記式(1)中、L1およびL2が表す「置換基」について説明する。
上記置換基としては、溶解性もしくはネマティック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性もしくは電子吸引性を有する基、または、配向を固定化するために導入される架橋性基(重合性基)を有する基が好ましい。
例えば、置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、オキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、アゾ基、ヘテロ環基、および、シリル基が挙げられる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0040】
L1およびL2が表す置換基として好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子、または、ヘテロ環基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、イミノ基、または、アゾ基である。
【0041】
L1およびL2の少なくとも一方は、架橋性基(重合性基)を含むことが好ましく、L1およびL2の両方に架橋性基を含むことがより好ましい。
架橋性基としては、具体的には、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられ、反応性および合成適性の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、または、スチリル基が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がより好ましい。
【0042】
L1およびL2の好適な態様としては、上記架橋性基で置換されたアルキル基、上記架橋性基で置換されたジアルキルアミノ基、および、上記架橋性基で置換されたアルコキシ基が挙げられる。
【0043】
2色性物質としては、式(2)で表される化合物も好ましい。
【0044】
【0045】
上記式(2)中、C1およびC2は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。ただし、C1およびC2の少なくとも一方は、架橋性基を表す。
M1およびM2は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。ただし、M1およびM2の少なくとも一方は、主鎖の原子の数が4個以上である。
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基および置換基を有していてもよいビフェニレン基のいずれかの基を表す。
Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
R1は、水素原子または置換基を表す。
R2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【0046】
式(2)において、C1およびC2が表す1価の置換基について説明する。
C1およびC2が表す1価の置換基としては、アゾ化合物の溶解性またはネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、または、配向を固定化するために導入される架橋性基(重合性基)が好ましい。
例えば、置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、オキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、アゾ基、ヘテロ環基、および、シリル基が挙げられる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0047】
式(2)において、C1およびC2の少なくとも一方は、架橋性基を表し、光吸収異方性層の耐久性がより優れるという点から、C1およびC2の両方が架橋性基であることが好ましい。
架橋性基としては、具体的には、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられ、反応性および合成適性の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、または、スチリル基が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。
【0048】
式(2)において、M1およびM2が表す2価の連結基について説明する。
2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-CO-NRN-、-O-CO-NRN-、-SO2-、-SO-、アルキレン基、シクロアルキレン基、および、アルケニレン基、ならびに、これらの基を2つ以上組み合わせた基などが挙げられる。
なかでも、アルキレン基と、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-CO-NRN-、-O-CO-NRN-、-SO2-および-SO-からなる群より選択される1種以上の基と、を組み合わせた基が好ましい。なお、RNは、水素原子またはアルキル基を表す。
【0049】
また、M1およびM2の少なくとも一方は、主鎖の原子の数が4個以上であり、7個以上であることが好ましく、10個以上であることがより好ましい。また、主鎖の原子の数の上限値は、20個以下であることが好ましく、15個以下であることがより好ましい。
ここで、M1における「主鎖」とは、式(2)における「C1」と「Ar1」とを直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の個数のことを指す。同様に、M2における「主鎖」とは、式(2)における「C2」と「E」とを直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の数のことを指す。なお、「主鎖の原子の数」には、後述する分岐鎖の原子の数は含まない。
具体的には、下記式(D7)においては、M1の主鎖の原子の数は6個(下記式(D7)の左側の点線枠内の原子の数)であり、M2の主鎖の原子の数は7個(下記式(D7)の右側の点線枠内の原子の数)である。
【0050】
【0051】
M1およびM2の少なくとも一方が、主鎖の原子の数が4個以上の基であればよく、M1およびM2の一方の主鎖の原子の数が4個以上であれば、他方の主鎖の原子数は3個以下であってもよい。
M1およびM2の主鎖の原子の数の合計は、5~30個が好ましく、7~27個がより好ましい。主鎖の原子の数の合計が5個以上であることで、2色性物質がより重合しやすくなり、主鎖の原子の数の合計が30個以下であることで、配向度に優れた光吸収異方性層が得られたり、2色性物質の融点が上がり耐熱性に優れた光吸収異方性層が得られたりする。
【0052】
M1およびM2は、分岐鎖を有していてもよい。ここで、M1における「分岐鎖」とは、式(2)におけるC1とAr1とを直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。同様に、M2における「分岐鎖」とは、式(2)におけるC2とEとを直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。
分岐鎖の原子の数は、3個以下であることが好ましい。分岐鎖の原子の数が3個以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより向上するなどの利点がある。なお、分岐鎖の原子の数には、水素原子の数は含まれない。
【0053】
式(2)におけるAr1およびAr2が表す、「置換基を有していてもよいフェニレン基」、「置換基を有していてもよいナフチレン基」、および、「置換基を有していてもよいビフェニレン基」について説明する。
置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、オキシカルボニル基、チオアルキル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルフィニル基、および、ウレイド基などが挙げられる。これらの置換基はさらにこれらの置換基で置換されていてもよい。なかでも、アルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、原材料の入手が容易であることおよび配向度の観点から、メチル基およびエチル基がさらに好ましい。
Ar1およびAr2は、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基、または、置換基を有していてもよいビフェニレン基であるが、置換基を有していてもよい原材料の入手が容易であることおよび配向度の観点から、フェニレン基であることが好ましい。
式(2)において、Ar1と連結する「M1」および「N」は、Ar1におけるパラ位に位置することが好ましい。また、Ar2と連結する「E」および「N」は、Ar1におけるパラ位に位置することが好ましい。
【0054】
上記式(2)中、Eは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表し、合成適性の観点からは窒素原子であることが好ましい。
また、2色性物質を短波長側に吸収を持つもの(例えば、500~530nm付近に極大吸収波長を持つもの)にすることが容易になるという観点からは、上記式(2)におけるEは、酸素原子であることが好ましい。
一方、2色性物質を長波長側に吸収を持つもの(例えば、600nm付近に極大吸収波長を持つもの)にすることが容易になるという観点からは、上記式(2)におけるEは、窒素原子であることが好ましい。
【0055】
上記式(2)中、R1は、水素原子または置換基を表す。
R1が表す「置換基」の具体例および好適態様は、上述したAr1およびAr2における置換基と同じであり、好ましい態様も同じであるので、その説明を省略する。
【0056】
上記式(2)中、R2は、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、エステル基、エーテル基、および、チオエーテル基などが挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1~8の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。なかでも、炭素数1~6の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。
なお、R2は、Eが窒素原子である場合に式(2)中で存在する基となる(すなわち、n=1の場合を意味する)。一方で、R2は、Eが酸素原子または硫黄原子である場合、式(2)中で存在しない基となる(すなわち、n=0の場合を意味する)。
【0057】
上記式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが窒素原子である場合には、nは1であり、Eが酸素原子または硫黄原子である場合には、nは0である。
【0058】
2色性物質としては、式(3)で表される化合物も好ましい。
【0059】
【0060】
式(3)中、AおよびBは、それぞれ独立に、架橋性基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a+b≧1である。a=0の場合にはL1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL2は単結合または2価の連結基を表す。Ar1は(n1+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar2は(n2+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar3は(n3+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。n1≧2である場合には複数のR1は互いに同一でも異なっていてもよく、n2≧2である場合には複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよく、n3≧2である場合には複数のR3は互いに同一でも異なっていてもよい。kは、1~4の整数を表す。k≧2の場合には、複数のAr2は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。ただし、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0であり、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である。
【0061】
式(3)において、AおよびBが表す架橋性基としては、例えば、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられる。なかでも、反応性および合成適性の向上の観点から、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、または、スチリル基が好ましく、溶解性をより向上できるという観点から、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0062】
式(3)において、aおよびbはそれぞれ独立に、0または1を表すが、a+b≧1である。すなわち、式(3)で表される化合物は、末端に少なくとも1つの架橋性基を有する。
ここで、aおよびbは両方が1であること、すなわち架橋性基が式(3)で表される化合物の両末端に導入されていることが好ましい。
【0063】
式(3)において、a=0の場合にはL1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL2は単結合または2価の連結基を表す。
L1およびL2は、両方が単結合または2価の連結基であることが好ましく、両方が2価の連結基であることがより好ましい。
【0064】
L1およびL2が表す1価の置換基としては、2色性物質の溶解性を高めるために導入される基、または、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性または電子吸引性を有する基が好ましい。
例えば、置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、オキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヘテロ環基、シリル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、および、アゾ基などが挙げられる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
上記置換基がさらに上記置換基によって置換された基としては、例えば、アルコキシ基がアルキル基で置換された基である、RB-(O-RA)na-基が挙げられる。ここで、式中、RAは炭素数1~5のアルキレン基を表し、RBは炭素数1~5のアルキル基を表し、naは1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数を表す。
なかでも、L1およびL2が表す1価の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、および、これらの基がさらにこれらの基によって置換された基(例えば、上述したRB-(O-RA)na-基)が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、および、これらの基がさらにこれらの基によって置換された基(例えば、上述したRB-(O-RA)na-基)がより好ましい。
【0065】
L1およびL2が表す2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-CO-NRN-、-O-CO-NRN-、-NRN-CO-NRN-、-SO2-、-SO-、アルキレン基、シクロアルキレン基、および、アルケニレン基、ならびに、これらの基を2つ以上組み合わせた基などが挙げられる。
なかでも、アルキレン基と、-O-、-COO-、-OCO-および-O-CO-O-からなる群より選択される1種以上の基と、を組み合わせた基が好ましい。
ここで、RNは、水素原子またはアルキル基を表す。RNが複数存在する場合には、複数のRNは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0066】
式(3)で表される化合物の溶解性がより向上するという観点からは、L1およびL2の少なくとも一方の主鎖の原子の数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、7個以上であることがさらに好ましく、10個以上であることが特に好ましい。また、主鎖の原子の数の上限値は、20個以下であることが好ましく、12個以下であることがより好ましい。
一方で、光吸収異方性層の配向度がより向上するという観点からは、L1およびL2の少なくとも一方の主鎖の原子の数は、1~5個であることが好ましい。
ここで、式(3)におけるAが存在する場合には、L1における「主鎖」とは、L1と連結する「O」原子と、「A」と、を直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の個数のことを指す。同様に、式(3)におけるBが存在する場合には、L2における「主鎖」とは、L2と連結する「O」原子と、「B」と、を直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の数のことを指す。なお、「主鎖の原子の数」には、後述する分岐鎖の原子の数は含まない。
また、Aが存在しない場合には、L1における「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないL1の原子の個数のことをいう。Bが存在しない場合には、L2における「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないL2の原子の個数のことをいう。
具体的には、下記式(D1)においては、L1の主鎖の原子の数は5個(下記式(D1)の左側の点線枠内の原子の数)であり、L2の主鎖の原子の数は5個(下記式(D1)の右側の点線枠内の原子の数)である。また、下記式(D10)においては、L1の主鎖の原子の数は7個(下記式(D10)の左側の点線枠内の原子の数)であり、L2の主鎖の原子の数は5個(下記式(D10)の右側の点線枠内の原子の数)である。
【0067】
【0068】
L1およびL2は、分岐鎖を有していてもよい。
ここで、式(3)においてAが存在する場合には、L1における「分岐鎖」とは、式(3)におけるL1と連結する「O」原子と、「A」と、を直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。同様に、式(3)においてBが存在する場合には、L2における「分岐鎖」とは、式(3)におけるL2と連結する「O」原子と、「B」と、を直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。
また、式(3)においてAが存在しない場合には、L1における「分岐鎖」とは、式(3)におけるL1と連結する「O」原子を起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。同様に、式(3)においてBが存在しない場合には、L2における「分岐鎖」とは、式(3)におけるL2と連結する「O」原子を起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。
分岐鎖の原子の数は、3以下であることが好ましい。分岐鎖の原子の数が3以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより向上するなどの利点がある。なお、分岐鎖の原子の数には、水素原子の数は含まれない。
【0069】
式(3)において、Ar1は(n1+2)価(例えば、n1が1である時は3価)、Ar2は(n2+2)価(例えば、n2が1である時は3価)、Ar3は(n3+2)価(例えば、n3が1である時は3価)、の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。ここで、Ar1~Ar3はそれぞれ、n1~n3個の置換基(後述するR1~R3)で置換された2価の芳香族炭化水素基または2価の複素環基と換言できる。
Ar1~Ar3が表す2価の芳香族炭化水素基としては、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよい。2価の芳香族炭化水素基の環数は、溶解性がより向上するという観点から、1~4が好ましく、1~2がより好ましく、1(すなわちフェニレン基であること)がさらに好ましい。
2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、アズレン-ジイル基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、溶解性がより向上するという観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基が好ましい。
2価の芳香族複素環基は、単環であってもよいし、2環以上の縮環構造を有していてもよい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、チアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
上記のなかでも、2価の芳香族複素環基としては、単環または下記構造式で表される2環の縮環構造を有する基が好ましい。なお、下記構造式において、「*」は、一般式(1)におけるアゾ基または酸素原子との結合位置を示す。
【0070】
【0071】
式(3)において、Ar1~Ar3は、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニレン基が好ましい。
ここで、Ar1がフェニレン基である場合には、Ar1に結合する酸素原子とアゾ基とが、メタ位またはパラ位に位置することが好ましく、パラ位に位置することがより好ましい。これにより、光吸収異方性層の配向度がより向上する。同様の観点から、Ar2がフェニレン基である場合には、Ar2に結合する2つのアゾ基が、メタ位またはパラ位に位置することが好ましく、パラ位に位置することがより好ましい。同様に、Ar3がフェニレン基である場合には、Ar3に結合する酸素原子とアゾ基とが、メタ位またはパラ位に位置することが好ましく、パラ位に位置することがより好ましい。
【0072】
式(3)において、Ar1、Ar2およびAr3が縮環構造である場合には、縮環構造を構成する複数の環がいずれも、式(3)で表される構造の長手方向に沿って連結していることが好ましい。これにより、2色性物質の分子が長手方向と交差する方向(短手方向)に嵩高くなることを抑制できるので、分子の配向性が良好となり、光吸収異方性層の配向度がより向上する。
ここで、式(3)で表される構造の長手方向とは、式(3)で表される構造の延びる方向のことをいい、具体的には、Ar1、Ar2およびAr3に結合するアゾ基の結合手およびエーテル結合(酸素原子)の結合手が延びる方向のことをいう。
縮環構造を構成する複数の環の全てが式(3)で表される構造の長手方向に沿って連結している態様の具体例として、式(Ar-1)で表される縮環構造を以下に示す。すなわち、Ar1、Ar2およびAr3が縮環構造である場合には、以下の式(A-1)で表される縮環構造を有していることが好ましい。
【0073】
【0074】
上記式(Ar-1)において、ArX、ArYおよびArZは、それぞれ独立に、ベンゼン環または単環の複素環を表す。nは、0以上の整数を表す。*は、式(3)におけるアゾ基または酸素原子との結合位置を表す。
上記式(Ar-1)における単環の複素環としては、単環の芳香族複素環が好ましい。単環の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。単環の芳香族複素環としては、具体的には、ピリジン環、チオフェン環、チアゾール環およびオキサゾール環などが挙げられる。
また、ArX、ArYおよびArZは、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、後述するR1~R3における1価の置換基が挙げられる。
nは、0以上の整数を表すが、0~2が好ましく、0~1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0075】
式(3)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。
R1、R2およびR3が表す1価の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、フッ化アルキル基、-O-(C2H4O)m-R’、-O-(C3H6O)m-R’、アルキルチオ基、オキシカルボニル基、チオアルキル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルフィニル基、または、ウレイド基が好ましい。ここで、R’は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、mは1~6の整数を表す。これらの置換基は、さらにこれらの置換基で置換されていてもよい。
なかでも、R1、R2およびR3が表す1価の置換基は、2色性物質の溶解性がより向上するという観点から、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、-O-(C2H4O)m-R’、または、-O-(C3H6O)m-R’が好ましく、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、-O-(C2H4O)m-R’、または、-O-(C3H6O)m-R’がより好ましい。
R1、R2およびR3が表す1価の置換基において、主鎖の原子の数は、2色性物質の溶解性および光吸収異方性層の配向性のバランスの観点から、1~15が好ましく、1~12がより好ましい。ここで、R1、R2およびR3が表す1価の置換基において、「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないR1、R2またはR3の原子の個数のことをいう。また、「分岐鎖」とは、式(1)におけるAr1~Ar3のいずれかを起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。
【0076】
上記式(3)がR1、R2およびR3から選択される少なくとも1つ以上の置換基を有する場合において、下記条件(R1)~条件(R3)から選択される少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。これにより、式(3)で表される化合物の溶解性がより向上する。
条件(R1):Ar1において、少なくとも1つのR1と、アゾ基と、が隣り合う位置にあること
条件(R2):Ar2において、少なくとも1つのR2と、少なくとも1つのアゾ基と、が隣り合う位置にあること
条件(R3):Ar3において、少なくとも1つのR3と、アゾ基と、が隣り合う位置にあること
条件(R1)の具体例としては、Ar1がフェニレン基である場合に、Ar1に結合するアゾ基に対するオルト位にR1が位置する態様が挙げられる。条件(R2)の具体例としては、Ar2がフェニレン基である場合に、少なくとも1つのアゾ基に対するオルト位にR2が位置する態様が挙げられる。条件(R3)の具体例としては、Ar3がフェニレン基である場合において、Ar3に結合するアゾ基に対するオルト位にR3が位置する態様が挙げられる。
【0077】
式(3)において、kは1~4の整数を表す。ここで、優れた溶解性を担保しつつ、耐光性にも優れるという観点からはkが2以上であることが好ましい。一方で、2色性物質の溶解性により優れるという観点からは、kが1であることが好ましい。
【0078】
式(3)において、n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表すが、0~3が好ましい。
ここで、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0である。すなわち、式(3)がビスアゾ構造を有する場合には、置換基(式(3)のR1~R3)の有無に関わらず、十分な溶解性が得られるが、溶解性をより向上する観点からは置換基を有していることが好ましい。
k=1の場合には、n1+n2+n3は、0~9が好ましく、1~9がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
一方で、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である。すなわち、式(3)がトリスアゾ構造、テトラキスアゾ構造、またはペンタキスアゾ構造を有する場合には、置換基(式(3)のR1~R3)を少なくとも1つ有する。
k≧2の場合には、n1+n2+n3は、1~9が好ましく、1~5がより好ましい。
【0079】
(液晶性化合物)
液晶性組成物が液晶性化合物を含むことで、2色性物質の析出を抑止しながら、2色性物質を高い配向度で配向させることができる。
液晶性化合物は、2色性を示さない液晶性化合物である。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
液晶性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶性化合物の含有量は、液晶性組成物中の2色性物質の含有量100質量部に対して、25~2000質量部が好ましく、33~1000質量部がより好ましく、50~500質量部がさらに好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、光吸収異方性層の配向度がより向上する。
【0080】
液晶性化合物としては、式(4)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(4)」ともいう。)を含む高分子液晶性化合物が好ましい。また、繰り返し単位(4)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が4以上である。
【0081】
【0082】
式(4)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0083】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0084】
【0085】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)において、R1は水素原子またはメチル基を表す。式(P1-D)において、R2はアルキル基を表す。
式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、エチレングリコールを重合して得られるポリエチレングリコールにおけるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、プロピレングリコールを重合して得られるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、シラノールの縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、シラノールは、式Si(R2)3(OH)で表される化合物である。式中、複数のR2はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。ただし、複数のR2の少なくとも1つはアルキル基を表す。
【0086】
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR3-、-NR3C(O)-、-S(O)2-、および、-NR3R4-などが挙げられる。式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。上記2価の連結基の具体例において、左側の結合手がP1と結合し、右側の結合手がSP1と結合する。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、L1は単結合が好ましい。
【0087】
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいこと、および、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH2-CH2O)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。n1は、本発明の効果がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、*-(CH(CH3)-CH2O)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、*-(Si(CH3)2-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、*-(CF2-CF2)n4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0088】
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に限定されず、例えば、「FlussigeKristalle in Tabellen II」(VEB DeutscheVerlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する基が好ましい。
メソゲン基は、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのがさらに好ましい。
【0089】
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、ならびに、本発明の効果がより優れるから、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0090】
【0091】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基またはアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0092】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0093】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、2色性物質の配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基が好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0094】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0095】
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0096】
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、本発明の効果がより優れる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0097】
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0098】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、炭素数1~10のウレイド基、および、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合または連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1およびSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0099】
繰り返し単位(4)の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましく、30~99.9質量%がより好ましく、40~99.0質量%がさらに好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(4)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶性化合物が繰り返し単位(4)を2種以上含むと、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(4)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0100】
繰り返し単位(4)を2種以上含む場合には、T1に重合性基を含まない繰り返し単位(4)と、T1に重合性基を含む繰り返し単位(4)と、を併用してもよい。これにより、光吸収異方性層の硬化性がより向上する。
この場合、高分子液晶性化合物中における、T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1)に対する、T1に重合性基を含む繰り返し単位(4)の割合(T1に重合性基を含む繰り返し単位(4)/T1に重合性基を含まない繰り返し単位(4))が、質量比で0.005~4が好ましく、0.01~2.4がより好ましい。質量比が4以下であると、配向度に優れるという利点がある。質量比が0.05以上であると、光吸収異方性層の硬化性がより向上する。
【0101】
(logP値)
式(4)において、P1、L1およびSP1のlogP値(以下、「logP1」ともいう。)と、M1のlogP値(以下、「logP2」ともいう。)との差(|logP1-logP2|)が4以上であり、光吸収異方性層の配向度がより向上する観点から、4.25以上が好ましく、4.5以上がより好ましい。
また、上記差の上限値は、液晶相転移温度の調整および合成適性という観点から、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
【0102】
上記logP1は、上述したように、P1、L1およびSP1のlogP値を意味する。「P1、L1およびSP1のlogP値」とは、P1、L1およびSP1を一体とした構造のlogP値を意味しており、P1、L1およびSP1のそれぞれのlogP値を合計したものではない。具体的には、logP1は、式(4)におけるP1~SP1までの一連の構造式を上記ソフトウェアに入力することで算出される。
ただし、logP1の算出にあたって、P1~SP1までの一連の構造式のうち、P1で表される基の部分に関しては、P1で表される基そのものの構造(例えば、上述した式(P1-A)~式(P1-D)など)を用いてもよいし、式(4)で表される繰り返し単位を得るために使用する単量体を重合した後にP1になりうる基の構造を用いてもよい。
ここで、後者(P1になりうる基)の具体例は、次の通りである。P1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られる場合には、CH2=C(R1)-で表される基(R1は、水素原子またはメチル基を表す。)である。また、P1がエチレングリコールの重合によって得られる場合にはエチレングリコールであり、P1がプロピレングリコールの重合により得られる場合にはプロピレングリコールである。また、P1がシラノールの重縮合により得られる場合にはシラノール(式Si(R2)3(OH)で表される化合物。複数のR2はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。ただし、複数のR2の少なくとも1つはアルキル基を表す。)である。
【0103】
logP1は、上述したlogP2との差が4以上であれば、logP2よりも低くてもよいし、logP2よりも高くてもよい。
ここで、一般的なメソゲン基のlogP値(上述したlogP2)は、4~6の範囲内になる傾向がある。このとき、logP1がlogP2よりも低い場合には、logP1の値は、1以下が好ましく、0以下がより好ましい。一方で、logP1がlogP2よりも高い場合には、logP1の値は、8以上が好ましく、9以上がより好ましい。
上記式(1)におけるP1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られ、かつ、logP1がlogP2よりも低い場合には、上記式(1)におけるSP1のlogP値は、0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。一方、上記式(4)におけるP1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られ、かつ、logP1がlogP2よりも高い場合には、上記式(4)におけるSP1のlogP値は、3.7以上が好ましく、4.2以上がより好ましい。
なお、logP値が1以下の構造としては、例えば、オキシエチレン構造およびオキシプロピレン構造などが挙げられる。logP値が6以上の構造としては、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造などが挙げられる。
【0104】
繰り返し単位(4)を含む高分子液晶性化合物は、さらに、下記式(5)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(5)」ともいう。)を含んでいてもよい。これにより、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。
式(5)において、P2、L2およびSP2のlogP値と、M2のlogP値との差が、4未満である。すなわち、繰り返し単位(2)は、少なくとも構造中のlogP値の差の点において、上記繰り返し単位(1)と異なる。
なお、「P2、L2およびSP2のlogP値」の定義は、上述したlogP1と同様であるので、その説明を省略する。
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(5)を含む場合には、高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(4)と繰り返し単位(5)との共重合体であり、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0105】
【0106】
式(5)中、P2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、SP2はスペーサー基を表し、M2はメソゲン基を表し、T2は末端基を表す。
式(5)におけるP2、L2、SP2、M2およびT2の具体例はそれぞれ、上記式(1)におけるP1、L1、SP1、M1およびT1と同様である。
ここで、式(5)におけるT2は、光吸収異方性層の強度が向上する観点から、重合性基を有することが好ましい。
【0107】
繰り返し単位(5)を含む場合の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。
繰り返し単位(5)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(5)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
特に、繰り返し単位(5)におけるT2が重合性基を有する場合、T2が重合性基を有する繰り返し単位(5)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~60質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。T2が重合性基を有する繰り返し単位(5)の含有量が0.5質量%以上であると、光吸収異方性層の強度がより向上する。T2が重合性基を有する繰り返し単位(5)の含有量が60質量%以下であると、配向度により優れるという利点がある。
【0108】
繰り返し単位(4)を含む高分子液晶性化合物は、さらに、下記式(6)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(6)」ともいう。)を含んでいてもよい。これにより、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。
繰り返し単位(6)は、少なくともメソゲン基を有しないという点で、上記繰り返し単位(4)および上記繰り返し単位(5)と異なる。
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(6)を含む場合には、高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(4)と繰り返し単位(5)との共重合体であり(さらに、繰り返し単位(5)を含む共重合体であってもよい)、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0109】
【0110】
式(6)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
式(6)におけるP3、L3、SP3およびT3の具体例はそれぞれ、上記式(4)におけるP1、L1、SP1およびT1と同様である。
ここで、式(6)におけるT3は、光吸収異方性層の強度が向上する観点から、重合性基を有することが好ましい。
【0111】
繰り返し単位(6)を含む場合の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
繰り返し単位(6)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(6)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
特に、繰り返し単位(6)におけるT3が重合性基を有する場合、T3が重合性基を有する繰り返し単位(6)の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~60質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。T3が重合性基を有する繰り返し単位(6)の含有量が0.5質量%以上であると、光吸収異方性層の強度がより向上する。T3が重合性基を有する繰り返し単位(6)の含有量が60質量%以下であると、配向度に優れるという利点がある。
【0112】
液晶性組成物は、上述した成分以外に、溶媒、界面改良剤、および、重合開始剤などを含んでいてもよい。
【0113】
光吸収異方性層の膜厚は特に限定されず、0.1~5.0μmが好ましく、0.3~1.5μmがより好ましい。液晶性組成物中の2色性物質の濃度によるが、膜厚が0.1μm以上であると、優れた吸光度の光吸収異方性層が得られ、膜厚が5.0μm以下であると、優れた透過率の光吸収異方性層が得られる。
【0114】
光吸収異方性層の製造方法の一例としては、上記液晶性組成物を第1配向膜上に塗布して塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)と、塗膜に含まれる2色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
【0115】
塗膜形成工程は、上記液晶性組成物を第1配向膜上に塗布して塗膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含む液晶性組成物を用いたり、液晶性組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、第1配向膜上に液晶性組成物を塗布することが容易になる。
液晶性組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0116】
配向工程は、塗膜に含まれる2色性物質を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性層が得られる。以下の例では、2色性物質が液晶性を有する場合を例にして説明する。なお、液晶性化合物は、2色性物質と同様に配向する。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗膜から除去できる。乾燥処理は、塗膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、液晶性組成物に含まれる2色性物質および液晶性化合物は、上述した塗膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、液晶性組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥して、塗膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗膜(すなわち、光吸収異方性層)が得られる。
乾燥処理が塗膜に含まれる2色性物質の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0117】
塗膜に含まれる2色性物質の液晶相への転移温度は、製造適性の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。
【0118】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗膜に含まれる2色性物質を配向させることができるため、加熱処理後の塗膜を光吸収異方性層として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0119】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗膜に含まれる2色性物質の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性層を得ることができる。
なお、本態様では、塗膜に含まれる2色性物質を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0120】
光吸収異方性層の製造方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。これにより、耐久性により優れた光吸収異方性層が得られる。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、光吸収異方性層に含まれる2色性物質の液晶相への転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性層の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0121】
(第2剥離性支持体)
第2剥離性支持体は、その表面上に後述する第2配向膜および光学異方性層Aを支持する部材であり、第2配向膜表面と剥離可能に密着する。
第2剥離性支持体としては、第1剥離性支持体で例示した構成が挙げられ、その好適範囲は同じである。
【0122】
(第2配向膜)
第2配向膜は、第2剥離性支持体上に配置される層であり、光学異方性層中の液晶性化合物の配向方向を制御する層である。第2配向膜は、光学異方性層と共に、第2剥離性支持体から分離される。
第2配向膜としては、第1配向膜で例示した態様が挙げられ、その好適範囲は同じである。
【0123】
(光学異方性層A)
光学異方性層Aは、第2配向膜上に配置される層である。
光学異方性層Aは、この層を通過した光に位相差を生じさせる層である。
【0124】
光学異方性層Aの面内レタデーションの値は特に限定されず、光学異方性層Aはいわゆるλ/4板であることが好ましい。
λ/4板(λ/4機能を有する板)とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する光学異方性層である。より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レタデーションがλ/4(または、この奇数倍)を示す層である。
なかでも、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)は、100~200nmが好ましく、120~160nmがより好ましい。
【0125】
光学異方性層Aは、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
光学異方性層Aが多層構造である場合、例えば、λ/4板とλ/2板とを含む複層型の光学異方性層が挙げられる。
【0126】
光学異方性層Aは、順波長分散性(面内レタデーションが、測定波長が大きくなるにつれて小さくなる特性。)および逆波長分散性(面内レタデーションが、測定波長が大きくなるにつれて大きくなる特性。)のいずれかの性質を示し、逆波長分散性を示すことが好ましい。
【0127】
光学異方性層Aは、重合性液晶性化合物を含む光学異方性層形成用組成物を用いて形成される層であることが好ましい。より具体的には、光学異方性層形成用組成物を塗布して形成される塗膜中の重合性液晶性化合物を配向させて、その状態を固定することにより形成された層であることが好ましく、この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
【0128】
重合性液晶性化合物とは、重合性基を有する液晶性化合物である。
重合性基の種類は特に限定されず、ラジカル重合またはカチオン重合が可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などが挙げられる。
【0129】
液晶性化合物の種類は特に限定されず、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶性化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶性化合物。ディスコティック液晶性化合物)とに分類できる。さらにそれぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。なお、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、または、棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。
【0130】
光学異方性層形成用組成物における重合性液晶性化合物の含有量は特に限定されず、光学異方性層形成用組成物中の全固形分に対して、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。上限値は特に限定されず、100質量%が挙げられる。
なお、上記全固形分とは、光学異方性層を形成する成分を意図し、溶媒は含まれない。
【0131】
光学異方性層形成用組成物には、上記重合性液晶性化合物以外の他の成分が含まれていてもよい。
光学異方性層形成用組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、および、光重合開始剤が挙げられる。
【0132】
光学異方性層形成用組成物には、重合性モノマーが含まれていてもよい。重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられる。
光学異方性層形成用組成物には、塗工の均一性の点から、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、フッ素系化合物が好ましい。
光学異方性層形成用組成物には溶媒が含まれていてもよく、溶媒としては有機溶媒が好ましい。
【0133】
さらに、光学異方性層形成用組成物には、上記成分以外に、密着改良剤、可塑剤、および、ポリマーなどが含まれていてもよい。
【0134】
光学異方性層Aを形成する具体的な手順の一態様としては、第2配向膜上に光学異方性層形成用組成物を塗布して、第2配向膜上に塗膜を形成して、塗膜中の重合性液晶性化合物を配向させた後、塗膜に対して硬化処理を施して光学異方性層Aを形成する方法が挙げられる。
第2配向膜上に光学異方性層形成用組成物を塗布する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、および、ダイコーティング法などが挙げられる。
光学異方性層形成用組成物を第2配向膜上に塗布後、必要に応じて、光学異方性層形成用組成物が塗布された支持体に対して乾燥処理を施して、溶媒の除去を実施してもよい。
【0135】
塗膜中の重合性液晶性化合物を配向させる方法(配向処理)は特に限定されず、例えば、塗膜を加熱する方法、および、室温により塗膜を乾燥させる方法が挙げられる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶性化合物の場合、一般に温度の変化により転移させることができる。リオトロピック性液晶性化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
なお、塗膜を加熱する場合の条件は特に限定されず、加熱温度としては50~150℃が好ましく、加熱時間としては10秒間~5分間が好ましい。
【0136】
次に、重合性液晶性化合物が配向している塗膜に対して硬化処理を施して、光学異方性層を形成する。
硬化処理の方法は特に限定されず、光照射処理および加熱処理が挙げられ、光照射よりが好ましい。露光の際の光の種類は特に限定されず、紫外光が好ましい。
【0137】
第1光学積層体には、上述した、第1剥離性支持体、第1配向膜、および、光吸収異方性層以外の他の層が含まれていてもよい。
例えば、光吸収異方性層の第1配向膜とは反対側の表面側には、保護層がさらに配置されていてもよい。
また、第1剥離性支持体と第1配向膜との間には、中間層が配置されていてもよい。中間層が配置される場合は、第1剥離性支持体と中間層との間で剥離が生じる。
【0138】
中間層の材料は、例えば、特開平8-338913号公報明細書中の[0022]段落記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、および、ポリカーボネートなどが挙げられる。なお、シランカップリング剤も用いることができる。
なかでも、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N-メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールがより好ましく、変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70~100%が好ましく、80~100%がより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100~5000が好ましい。
【0139】
中間層は、架橋剤を用いて架橋されていてもよい。
架橋剤としては、アルデヒド、N-メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール、および、ジアルデヒド澱粉が挙げられる。
架橋剤の具体例としては、例えば、特開2002-062426号公報明細書中の[0023]段落~[0024]段落記載の化合物が挙げられる。
架橋剤としては、反応活性の高い点から、アルデヒドが好ましく、グルタルアルデヒドがより好ましい。
架橋剤は、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましい。中間層に残存する未反応の架橋剤の含有量は、中間層全質量に対して、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0140】
中間層の形成方法としては、形成材料である上記ポリマー、架橋剤、および、必要に応じて添加される添加剤を含む溶液を基材(例えば、第1剥離性支持体)上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)する方法が挙げられる。
架橋反応は、溶液を塗布した後、任意の時期に行なってよい。
ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを用いる場合、溶媒としては消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水との混合溶媒が好ましい。水とメタノールとの混合質量比率(水:メタノール)は、0:100~99:1が好ましく、0:100~91:9がより好ましい。上記混合質量比率であれば、泡の発生がより抑えられ、中間層、さらには、光吸収異方性層および光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0141】
上記溶液の塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法、または、ロールコーティング法が好ましく、ロッドコーティング法がより好ましい。
加熱乾燥の温度は、20~110℃が好ましく。充分な架橋を形成する点で、60~100℃がより好ましく、80~100℃がさらに好ましい。
加熱乾燥の時間は、1分間~36時間が好ましく、1~30分間がより好ましい。
溶液のpHは、使用する架橋剤に応じて最適な値が選択され、例えば、グルタルアルデヒドを使用した場合は、4.5~5.5が好ましい。
【0142】
第2光学積層体には、上述した、第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層A以外の他の層が含まれていてもよい。
例えば、光学異方性層Aの第2配向膜とは反対側の表面側には、保護層がさらに配置されていてもよい。
また、第2剥離性支持体と第2配向膜との間には、中間層が配置されていてもよい。中間層が配置される場合は、第2剥離性支持体と中間層との間で剥離が生じる。
【0143】
(工程の手順)
本工程では、第1光学積層体の光吸収異方性層側の表面と、第2光学積層体の光学異方性層A側の表面とが対向するように、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Xを得る。
本工程においては、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層させた直後に、第1剥離性支持体を剥離してもよいし、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層させた後、所定時間経過後、積層体から第1剥離性支持体を剥離してもよい。なお、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層させた直後に、第1剥離性支持体を剥離する方法としては、例えば、第1光学積層体と第2光学積層体とをローラー間に通して両者を積層した後、ローラーから積層体が出た直後に第1剥離性支持体を剥離する方法が挙げられる。
【0144】
第1光学積層体と第2光学積層体とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、加熱および/または加圧したローラーまたは平板で圧着または加熱圧着して、両者を貼り付ける方法が挙げられる。
また、第1光学積層体と第2光学積層体とを積層する(貼り合せる)際には、必要に応じて、密着層(貼合層)を介して積層してもよい。
密着層を形成する成分としては、粘着剤であっても、接着剤であってもよい。つまり、密着層は、粘着剤を用いて形成される層(粘着剤層)でも、接着剤を用いて形成される層(接着剤層)でもよい。
【0145】
第1光学積層体と第2光学積層体とを積層する際、第1光学積層体中の光吸収異方性層の偏光軸(吸収軸と直交する軸)と光学異方性層中の遅相軸とのなす角度が、45°±10°であることが好ましい。
【0146】
また、第1剥離性支持体を剥離する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、第1剥離性支持体と第1配向膜との間につめを差し込んで剥離のきっかけを与え、第1剥離性支持体を第1配向膜から遠ざかるように移動させながら、両者を分離する方法が挙げられる。
【0147】
なお、第1実施形態においては、第1剥離性支持体の剥離力が、後述する第2剥離性支持体の剥離力よりも小さい。第1剥離性支持体の剥離力が、第2剥離性支持体の剥離力よりも大きい場合、第1剥離性支持体の剥離の際に、第2剥離性支持体の剥離が生じるおそれがあり、所定の光学積層体が得られない。
なお、第1剥離性支持体の剥離力とは、第1剥離性支持体と、第1剥離性支持体が隣接する層との間の剥離力(剥離強度)であり、その大きさが小さいほど第1剥離性支持体が剥離しやすいことを表す。なお、第1剥離性支持体が隣接する層としては、例えば、
図1に示す形態においては、第1配向膜が該当する。
第1剥離性支持体の剥離力の測定方法としては、第1光学積層体を150mm×25mmに裁断し、得られた試料の光吸収異方性層側をガラス基板に80mm×25mm部分のみ貼合し、25℃環境下にて、速度300mm/分で第1剥離性支持体を90°方向に剥離したときの剥離力をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製)にて測定する。
【0148】
第1剥離性支持体の剥離力は特に制限されないが、0.05~0.50N/25mmの場合が多く、なかでも、0.10~0.50N/25mmが好ましく、0.20~0.50N/25mmがより好ましい。
第1剥離性支持体の剥離力が0.50N/25mm以下であると、ロールツーロール方式によって第1剥離性支持体を剥離する際に、試料の破断が生じにくく、かつ、装置への負荷がかかりにくく、ラインが停止するなどの製造故障が発生しづらい。また、第1剥離性支持体の剥離力が0.10N/25mm以上であると、長尺状の試料の搬送途中で第1剥離性支持体の剥離が生じにくく、取り扱い性に優れる。
【0149】
なお、第1実施形態においては、第1剥離性支持体の剥離力は、第1光学積層体と第2光学積層体との積層体における第1剥離性支持体と第1配向膜との間以外の各層間の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0150】
上記手順によって、第1配向膜、光吸収異方性層、光学異方性層、第2配向膜、および、第2剥離性支持体をこの順に有する積層体Xが得られる。
【0151】
<工程1-2>
工程1-2は、積層体Xの第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、第2剥離性支持体を剥離して、表面フィルム、光吸収異方性層、および、光学異方性層Aを有する光学積層体を得る工程である。
より具体的には、本工程においては、
図3に示すように、第1配向膜14、光吸収異方性層16、光学異方性層A22、第2配向膜24、および、第2剥離性支持体26をこの順に有する積層体X30と、ハードコート層42および基材44をこの順に有する表面フィルム40とを用意する。次に、
図4に示すように、積層体X30の第1配向膜14側の表面と、表面フィルム40の基材44側の表面とが対向するように、積層体X30と表面フィルム40とを積層し、第2剥離性支持体26を剥離して、ハードコート層42、基材44、第1配向膜14、光吸収異方性層16、光学異方性層A22、および、第2配向膜24をこの順に有する光学積層体50を得る。
なお、
図3および
図4においては、表面フィルム40がハードコート層42および基材44を有する形態について述べるが、後述するように表面フィルム40はこの形態に限定されない。
以下では、まず、本工程で用いられる各部材について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0152】
(表面フィルム)
表面フィルムは、第1配向膜上に配置される層であり、通常、得られる光学積層体中の最も外側に配置される。
上述したように、
図3および4においては、表面フィルムがハードコート層および基材を有する態様について述べる。
【0153】
基材を構成する材料としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、グルタルイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂およびこれらから選ばれた複数種の樹脂の混合樹脂が挙げられ、なかでも、環状ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、または、ポリエステル系樹脂が好ましい。
基材は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
【0154】
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂の他に、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体も含み、ラクトン環を有する重合体、無水コハク酸環を有する無水マレイン酸系重合体、無水グルタル酸環を有する重合体、グルタルイミド環含有重合体を含む。
【0155】
ハードコート層は、光学積層体に硬度または耐傷性を付与するための層である。ハードコート層は、例えば、ハードコート層形成用組成物を基材上に塗布し、硬化させることによって形成できる。
また、他の機能を付加することを目的として、ハードコート層上に、他の機能層を積層してもよい。また、ハードコート層にフィラーまたは添加剤を加えることで、機械的、電気的、または、光学的な物理的な性能、および、撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与できる。
ハードコート層は、耐擦傷性に優れるのが好ましい。具体的には、耐擦傷性の指標となる鉛筆硬度試験を実施した場合に、3H以上を達成するのが好ましい。
ハードコート層の厚みは、0.1~6μmが好ましく、3~6μmがより好ましい。
【0156】
ハードコート層は、硬化性組成物を硬化することで形成するのが好ましい。硬化性組成物は、液状の塗布組成物として調製されるのが好ましい。硬化性組成物の一例は、マトリックス形成バインダー用モノマー、オリゴマー、または、ポリマーと、有機溶媒とを含む。
【0157】
得られる光学積層体のKnoop硬度は、235N/mm2以上が好ましく、270N/mm2以上がより好ましく、270~330N/mm2がさらに好ましい。
【0158】
上述したように、本発明において表面フィルムは基材とハードコート層とを有する態様に限定されず、例えば、基材のみであってもよい、ハードコート層のみであってもよい。
【0159】
(工程の手順)
本工程では、積層体Xの第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、第2剥離性支持体を剥離して、表面フィルム、光吸収異方性層、および、光学異方性層Aを有する光学積層体を得る。
本工程においては、積層体Xと表面フィルムとを積層させた直後に、第2剥離性支持体を剥離してもよいし、積層体Xと表面フィルムとを積層させた後、所定時間経過後、得られた積層体から第2剥離性支持体を剥離してもよい。なお、積層体Xと表面フィルムとを積層させた直後に、第2剥離性支持体を剥離する方法としては、例えば、積層体Xと表面フィルムとをローラー間に通して両者を積層した後、ローラーから積層体が出た直後に第2剥離性支持体を剥離する方法が挙げられる。
【0160】
積層体Xと表面フィルムとを積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、加熱および/または加圧したローラーまたは平板で圧着または加熱圧着して、両者を貼り付ける方法が挙げられる。
また、積層体Xと表面フィルムとを積層する(貼り合せる)際には、必要に応じて、密着層(貼合層)を介して積層してもよい。
密着層を形成する成分としては、粘着剤であっても、接着剤であってもよい。つまり、密着層は、粘着剤を用いて形成される層(粘着剤層)でも、接着剤を用いて形成される層(接着剤層)でもよい。
【0161】
また、第2剥離性支持体を剥離する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、第2剥離性支持体と第2配向膜との間につめを差し込んで剥離のきっかけを与え、第2剥離性支持体を第2配向膜から遠ざかるように移動させながら、両者を分離する方法が挙げられる。
第2剥離性支持体の剥離力の測定方法としては、第2光学積層体を150mm×25mmに裁断し、得られた試料の光学異方性層A側をガラス基板に80mm×25mm部分のみ貼合し、25℃環境下にて、速度300mm/分で第2剥離性支持体を90°方向に剥離したときの剥離力をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製)にて測定する。
【0162】
第2剥離性支持体の剥離力は特に制限されないが、0.10~4.00N/25mmの場合が多く、なかでも、0.10~0.50N/25mmが好ましく、0.20~0.50N/25mmがより好ましい。
第2剥離性支持体の剥離力が0.50N/25mm以下であると、ロールツーロール方式によって第2剥離性支持体を剥離する際に、試料の破断が生じにくく、かつ、装置への負荷がかかりにくく、ラインが停止するなどの製造故障が発生しづらい。また、第2剥離性支持体の剥離力が0.10N/25mm以上であると、長尺状の試料の搬送途中で第2剥離性支持体の剥離が生じにくく、取り扱い性に優れる。
【0163】
なお、第1実施形態においては、第2剥離性支持体の剥離力は、積層体Xと表面フィルムとの積層体における第2剥離性支持体と第2配向膜との間以外の各層間の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0164】
なお、工程1-1および工程1-2は、いわゆるロールツーロール方式にて、各種光学積層体の積層、および、剥離性支持体の剥離を実施してもよい。
【0165】
上記手順によって、表面フィルム、光吸収異方性層、および、光学異方性層Aをこの順に有する光学積層体が得られる。
光学異方性層Aがλ/4板である場合、得られる光学積層体はいわゆる円偏光板として機能し得る。
なお、光学積層体は、表面フィルム、光吸収異方性層、および、光学異方性層A以外の層を有していてもよい。例えば、光学積層体は、光学異方性層Aの光吸収異方性層側とは反対側の表面側に密着層を有していてもよい。後述するように、この密着層を介して、光学積層体を表示素子上に固定できる。
【0166】
上述した光学積層体は、表示素子上に配置されて、外光反射の防止機能を表示素子に付与できる。特に、上述したように、光学異方性層Aがλ/4板である場合、その効果に優れる。
具体的には、
図5に示すように、表示装置60は、光学積層体50と、表示素子62とを含む。表示装置60は、ハードコート層42側から観察者が視認する。
以下では、主に、表示素子62について詳述する。
【0167】
表示素子の種類は特に限定されず、例えば、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示素子、および、液晶表示素子などの画像表示素子が挙げられ、有機EL表示素子が好適に用いられる。
有機EL表示素子の構成は特に限定されず、通常、有機発光層と、有機発光層を挟持する一対の電極とを少なくとも含む。
【0168】
表示装置の製造方法は特に限定されず、密着層を介して、光学積層体および表示素子を積層する方法が挙げられる。
【0169】
<<第2実施形態>>
以下、本発明の光学積層体の製造方法の第2実施形態について図面を用いて説明する。
本発明の光学積層体の製造方法の第2実施形態は、後述する工程2-1~工程2-3を有する。
以下、各工程について詳述する。
【0170】
<工程2-1>
工程2-1は、第2剥離性支持体と、第2配向膜と、光学異方性層Aとをこの順に有する第2光学積層体の光学異方性層A側の表面と、第3剥離性支持体と、光学異方性層Bとをこの順に有する第3光学積層体の光学異方性層B側の表面とが対向するように、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層し、第2剥離性支持体を剥離して積層体Yを得る工程である。
より具体的には、本工程においては、
図6に示すように、第2剥離性支持体26と、第2配向膜24と、光学異方性層A22とをこの順に有する第2光学積層体20、および、光学異方性層B72と第3剥離性支持体74とをこの順に有する第3光学積層体70を用意する。次に、
図7に示すように、第2光学積層体20の光学異方性層A22側の表面と、第3光学積層体70の光学異方性層B72側の表面とが対向するように、第2光学積層体20と第3光学積層体70とを積層し、第2剥離性支持体26を剥離して積層体Y80を得る。
以下では、まず、本工程で用いられる各部材について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
なお、第2光学積層体を構成する各部材に関しては、第1実施形態で説明した通りであり、その説明を省略する。
【0171】
(第3剥離性支持体)
第3剥離性支持体は、その表面上に後述する光学異方性層Bを支持する部材であり、第2配向膜表面と剥離可能に密着する。
第3剥離性支持体としては、第1剥離性支持体で例示した構成が挙げられ、その好適範囲は同じである。
【0172】
(光学異方性層B)
光学異方性層Bは、第3剥離性支持体上に配置される層である。
光学異方性層Bは、この層を通過した光に位相差を生じさせる層である。
【0173】
光学異方性層Bの面内レタデーションの値は特に限定されず、光学異方性層Bはλ/4板またはλ/2板であってもよい。
なかでも、光学異方性層Bとしては、ポジティブCプレートであることが好ましい。
なお、光学異方性層BがポジティブCプレートである場合、波長550nmにおける面内レタデーションは、0~5nmが好ましい。
また、光学異方性層Bの厚み方向のレタデーションの値は特に限定されず、光学異方性層BがCプレートである場合、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションは、-300~0nmが好ましく、-200~-60nmがより好ましい。
【0174】
Cプレートは、ポジティブCプレート(正のCプレート)とネガティブCプレート(負のCプレート)との2種があり、ポジティブCプレートは式(C1)の関係を満たすものであり、ネガティブCプレートは式(C2)の関係を満たすものである。なお、ポジティブCプレートはRthが負の値を示し、ネガティブCプレートはRthが正の値を示す。
式(C1) nz>nx≒ny
式(C2) nz<nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0~10nm、好ましくは0~5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0175】
光学異方性層Bは、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
【0176】
光学異方性層Bは、重合性液晶性化合物を含む光学異方性層形成用組成物を用いて形成される層であることが好ましい。より具体的には、光学異方性層形成用組成物を塗布して形成される塗膜中の重合性液晶性化合物を配向させて、その状態を固定することにより形成された層であることが好ましく、この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
光学異方性層形成用組成物に含まれ得る各成分(重合性液晶性化合物、重合開始剤など)としては、光学異方性層Aの形成に使用される光学異方性層形成用組成物に含まれ得る成分と同じであり、その好適態様も同じである。
また、光学異方性層Bの製造方法は、光学異方性層Aの製造方法と同様の手順が挙げられる。
【0177】
第3光学積層体には、上述した、第3剥離性支持体、および、光学異方性層B以外の他の層が含まれていてもよい。
例えば、第3剥離性支持体と光学異方性層Bとの間には、第3配向膜が含まれていてもよい。第3配向膜としては、第1配向膜で例示した態様が挙げられ、その好適範囲は同じである。
また、例えば、光学異方性層Bの第3剥離性支持体とは反対側の表面側には、保護層がさらに配置されていてもよい。
【0178】
(工程の手順)
本工程では、第2光学積層体の光学異方性層A側の表面と、第3光学積層体の光学異方性層B側の表面とが対向するように、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層し、第2剥離性支持体を剥離して積層体Yを得る。
本工程においては、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層させた直後に、第2剥離性支持体を剥離してもよいし、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層させた後、所定時間経過後に、得られた積層体から第2剥離性支持体を剥離してもよい。なお、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層させた直後に、第2剥離性支持体を剥離する方法としては、例えば、第2光学積層体と第3光学積層体とをローラー間に通して両者を積層した後、ローラーから積層体が出た直後に第2剥離性支持体を剥離する方法が挙げられる。
【0179】
第2光学積層体と第3光学積層体とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、加熱および/または加圧したローラーまたは平板で圧着または加熱圧着して、両者を貼り付ける方法が挙げられる。
また、第2光学積層体と第3光学積層体とを積層する(貼り合せる)際には、必要に応じて、密着層(貼合層)を介して積層してもよい。
密着層を形成する成分としては、粘着剤であっても、接着剤であってもよい。つまり、密着層は、粘着剤を用いて形成される層(粘着剤層)でも、接着剤を用いて形成される層(接着剤層)でもよい。
【0180】
また、第2剥離性支持体を剥離する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、第2剥離性支持体と第2配向膜との間につめを差し込んで剥離のきっかけを与え、第2剥離性支持体を第2配向膜から遠ざかるように移動させながら、両者を分離する方法が挙げられる。
【0181】
なお、本第2実施形態において、第2剥離性支持体の剥離力が、後述する第3剥離性支持体の剥離力よりも小さい。第2剥離性支持体の剥離力が、第3剥離性支持体の剥離力よりも大きい場合、第2剥離性支持体の剥離の際に、第3剥離性支持体の剥離が生じるおそれがあり、所定の光学積層体が得られない。
なお、第2剥離性支持体の剥離力とは、第2剥離性支持体と、第2剥離性支持体が隣接する層との間の剥離力(剥離強度)であり、その大きさが小さいほど第2剥離性支持体が剥離しやすいことを表す。なお、第2剥離性支持体が隣接する層としては、例えば、
図6に示す形態においては、第2配向膜が該当する。
第2剥離性支持体の剥離力の測定方法は、上述した通りである。
また、第2剥離性支持体の剥離力の範囲は、第1実施形態で述べた範囲が好ましい。
【0182】
なお、第2実施形態においては、第2剥離性支持体の剥離力は、第2光学積層体と第3光学積層体との積層体中における第2剥離性支持体と第2配向膜との間以外の各層間の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0183】
上記手順によって、第2配向膜、光学異方性層A、光学積層体B、および、第3剥離性支持体をこの順に有する積層体Yが得られる。
【0184】
<工程2-2>
工程2-2は、積層体Yの第2配向膜側の表面と、第1剥離性支持体と、第1配向膜と、光吸収異方性層とをこの順に有する第1光学積層体の光吸収異方性層側の表面とが対向するように、積層体Yと第1光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Zを得る工程である。
より具体的には、本工程においては、
図8に示すように、第1剥離性支持体12と、第1配向膜14と、光吸収異方性層16とをこの順に有する第1光学積層体10、および、第2配向膜24と、光学異方性層A22と、光学異方性層B72と、第3剥離性支持体74とをこの順に有する積層体Y80を用意する。次に、
図9に示すように、第1光学積層体10の光吸収異方性層16側の表面と、積層体Y80の第2配向膜24側の表面とが対向するように、第1光学積層体10と積層体Y80とを積層し、第1剥離性支持体12を剥離して積層体Y90を得る。
本工程で用いられる第1光学積層体を構成する各部材に関しては、第1実施形態で説明した通りであり、その説明を省略する。
【0185】
(工程の手順)
本工程では、積層体Yの第2配向膜側の表面と、第1光学積層体の光吸収異方性層側の表面とが対向するように、積層体Yと第1光学積層体とを積層し、第1剥離性支持体を剥離して積層体Zを得る。
本工程においては、積層体Yと第1光学積層体とを積層させた直後に、第1剥離性支持体を剥離してもよいし、積層体Yと第1光学積層体とを積層させた後、所定時間経過後に、得られた積層体から第1剥離性支持体を剥離してもよい。なお、積層体Yと第1光学積層体とを積層させた直後に、第1剥離性支持体を剥離する方法としては、例えば、積層体Yと第1光学積層体とをローラー間に通して両者を積層した後、ローラーから積層体が出た直後に第1剥離性支持体を剥離する方法が挙げられる。
【0186】
積層体Yと第1光学積層体とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、加熱および/または加圧したローラーまたは平板で圧着または加熱圧着して、両者を貼り付ける方法が挙げられる。
また、積層体Yと第1光学積層体とを積層する(貼り合せる)際には、必要に応じて、密着層(貼合層)を介して積層してもよい。
密着層を形成する成分としては、粘着剤であっても、接着剤であってもよい。つまり、密着層は、粘着剤を用いて形成される層(粘着剤層)でも、接着剤を用いて形成される層(接着剤層)でもよい。
【0187】
また、第1剥離性支持体を剥離する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、第1剥離性支持体と第1配向膜との間につめを差し込んで剥離のきっかけを与え、第1剥離性支持体を第1配向膜から遠ざかるように移動させながら、両者を分離する方法が挙げられる。
なお、本第2実施形態において、第1剥離性支持体の剥離力が、後述する第3剥離性支持体の剥離力よりも小さい。第1剥離性支持体の剥離力が、第3剥離性支持体の剥離力よりも大きい場合、第1剥離性支持体の剥離の際に、第3剥離性支持体の剥離が生じるおそれがあり、所定の光学積層体が得られない。
なお、第1剥離性支持体の剥離力とは、第1剥離性支持体と、第1剥離性支持体が隣接する層との間の剥離力(剥離強度)であり、その大きさが小さいほど第1剥離性支持体が剥離しやすいことを表す。なお、第2剥離性支持体が隣接する層としては、例えば、
図8に示す形態においては、第1配向膜が該当する。
第1剥離性支持体の剥離力の測定方法は、上述した通りである。
また、第1剥離性支持体の剥離力の範囲は、第1実施形態で述べた範囲が好ましい。
【0188】
なお、第2実施形態においては、第1剥離性支持体の剥離力は、積層体Yと第1光学積層体との積層体中における第1剥離性支持体と第1配向膜との間以外の各層間の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0189】
上記手順によって、第1配向膜、光吸収異方性層、第2配向膜、光学異方性層A、光学積層体B、および、第3剥離性支持体をこの順に有する積層体Zが得られる。
【0190】
<工程2-3>
工程2-3は、積層体Zの第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、第3剥離性支持体を剥離して、表面フィルム、光吸収異方性層、光学異方性層Aおよび光学異方性層Bを有する光学積層体を得る工程である。
より具体的には、本工程においては、
図10に示すように、第1配向膜14、光吸収異方性層16、第2配向膜24,光学異方性層A22、光学異方性層B72、および、第3剥離性支持体74をこの順に有する積層体Z90と、ハードコート層42および基材44をこの順に有する表面フィルム40とを用意する。次に、
図11に示すように、積層体Y90の第1配向膜14側の表面と、表面フィルム40の基材44側の表面とが対向するように、積層体Y90と表面フィルム40とを積層し、第3剥離性支持体74を剥離して、ハードコート層42、基材44、第1配向膜14、光吸収異方性層16、第2配向膜24、光学異方性層A22、および、光学異方性層B72をこの順に有する光学積層体100を得る。
なお、
図10および
図11においては、表面フィルム40がハードコート層42および基材44を有する形態について述べたが、上述したように、表面フィルム40はこの形態に限定されない。
本工程で用いられる表面フィルムを構成する各部材に関しては、第1実施形態で説明した通りであり、その説明を省略する。
【0191】
(工程の手順)
本工程では、積層体Zの第1配向膜側の表面に表面フィルムを積層し、第3剥離性支持体を剥離して、表面フィルム、光吸収異方性層、光学異方性層A、および、光学異方性層Bを有する光学積層体を得る。
本工程においては、積層体Zと表面フィルムとを積層させた直後に、第3剥離性支持体を剥離してもよいし、積層体Zと表面フィルムとを積層させた後、所定時間経過後、得られた積層体から第3剥離性支持体を剥離してもよい。なお、積層体Zと表面フィルムとを積層させた直後に、第3剥離性支持体を剥離する方法としては、例えば、積層体Zと表面フィルムとをローラー間に通して両者を積層した後、ローラーから積層体が出た直後に第3剥離性支持体を剥離する方法が挙げられる。
【0192】
積層体Zと表面フィルムとを積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、加熱および/または加圧したローラーまたは平板で圧着または加熱圧着して、両者を貼り付ける方法が挙げられる。
また、積層体Zと表面フィルムとを積層する(貼り合せる)際には、必要に応じて、密着層(貼合層)を介して積層してもよい。
密着層を形成する成分としては、粘着剤であっても、接着剤であってもよい。つまり、密着層は、粘着剤を用いて形成される層(粘着剤層)でも、接着剤を用いて形成される層(接着剤層)でもよい。
【0193】
また、第3剥離性支持体を剥離する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、第3剥離性支持体と光学異方性層Bとの間につめを差し込んで剥離のきっかけを与え、第3剥離性支持体を光学異方性層Bから遠ざかるように移動させながら、両者を分離する方法が挙げられる。
【0194】
第3剥離性支持体の剥離力の測定方法としては、第3光学積層体を150mm×25mmに裁断し、得られた試料の光学異方性層B側をガラス基板に80mm×25mm部分のみ貼合し、25℃環境下にて、速度300mm/分で第3剥離性支持体を90°方向に剥離したときの剥離力をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製)にて測定する。
第3剥離性支持体の剥離力は特に制限されないが、0.10~4.00N/25mmの場合が多く、なかでも、0.10~0.50N/25mmが好ましく、0.20~0.50N/25mmがより好ましい。
第3剥離性支持体の剥離力が0.50N/25mm以下であると、ロールツーロール方式によって第3剥離性支持体を剥離する際に、試料の破断が生じにくく、かつ、装置への負荷がかかりにくく、ラインが停止するなどの製造故障が発生しづらい。また、第3剥離性支持体の剥離力が0.10N/25mm以上であると、長尺状の試料の搬送途中で第3剥離性支持体の剥離が生じにくく、取り扱い性に優れる。
【0195】
なお、第2実施形態においては、第3剥離性支持体の剥離力は、積層体Zと表面フィルムとの積層体における第3剥離性支持体と光学異方性層Bとの間以外の各層間の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0196】
なお、工程2-1~工程2-3は、いわゆるロールツーロール方式にて、各種光学積層体の積層、および、剥離性支持体の剥離を実施してもよい。
【0197】
上記手順によって、表面フィルム、光吸収異方性層、光学異方性層A、および、光学異方性層Bをこの順に有する光学積層体が得られる。
光学異方性層Aがλ/4板であり、光学異方性層BがポジティブCプレートである場合、得られる光学積層体はいわゆる円偏光板としてより効果的に機能する。
なお、光学積層体は、表面フィルム、光吸収異方性層、光学積層体A、および、光学異方性層B以外の層を有していてもよい。例えば、光学積層体は、光学異方性層Bの光学異方性層A側とは反対側の表面側に密着層を有していてもよい。後述するように、この密着層を介して、光学積層体を表示素子上に固定できる。
【0198】
上述した光学積層体は、表示素子上に配置されて、外光反射の防止機能を表示素子に付与できる。特に、上述したように、光学異方性層Aがλ/4板であり、光学異方性層BがポジティブCプレートである場合、その効果に優れる。
具体的には、
図12に示すように、表示装置110は、光学積層体100と、表示素子62とを含む。表示装置110は、ハードコート層42側から観察者が視認する。
表示素子の構成は、第1実施態様で説明した通りである。
【実施例】
【0199】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0200】
<剥離力の評価>
後段で示す、各光学積層体中の剥離性支持体の剥離力は、以下の手順に従って測定した。
光学積層体を150mm×25mmに裁断し、得られた試料の光吸収異方性層側または光学異方性層をガラス基板に80mm×25mm部分のみを貼合した。次に、25℃環境下にて、速度300mm/分で試料中の剥離性支持体を90°方向に剥離したときの剥離力を、テンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製)にて測定した。
【0201】
<試料101~107の作製>
(試料101の作製)
透明支持体として厚み40μmのセルロースアシレートフィルム11(フィルム11)(TG40、富士フイルム社製)を用い、透明支持体上に中間層形成用組成物1を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。その後、中間層形成用組成物1が塗布された透明支持体を100℃の温風で2分間乾燥することにより、透明支持体上に中間層(厚み:0.8μm)を形成した。
なお、中間層形成用組成物1での変性ポリビニルアルコールの固形分濃度は4質量%であった。
また、フィルム11が、剥離性支持体に該当する。
―――――――――――――――――――――――――
中間層形成用組成物1
―――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール
水 70質量部
メタノール 30質量部
―――――――――――――――――――――――――
【0202】
変性ポリビニルアルコール
【0203】
【0204】
下記構造の光配向材料E-1(1質量部)に、ブトキシエタノール(41.6質量部)、ジプロピレングリコールモノメチル(41.6質量部)、および、純水(15.8質量部)を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過して、光配向膜形成用組成物1を調製した。
次いで、得られた光配向膜形成用組成物1を上記中間層1上に塗布し、60℃で1分間乾燥した。その後、得られた塗膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量400mJ/cm2)を照射し、配向膜11を得た。
【0205】
【0206】
得られた配向膜11上に、下記の液晶性組成物(光吸収異方性層形成用組成物)11を#4のワイヤーバーで連続的に塗布し、塗膜を得た。次に、塗膜を140℃で90秒間加熱し、室温(23℃)になるまで冷却した。次に、得られた塗膜を80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。その後、得られた塗膜に対して、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射して、配向膜11上に光吸収異方性層11を作製し、試料101を得た。
――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物11
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記イエローアゾ色素Y-1 7.1質量部
・下記シアンアゾ色素D-1 9.1質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 101.1質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 1.0質量部
・下記界面改良剤F-1 0.3質量部
・シクロペンタノン 617.0質量部
・テトラヒドロフラン 264.4質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0207】
【0208】
(試料102の作製)
液晶性組成物11の高分子液晶性化合物P-1の代わりに、等質量の下記高分子液晶性化合物P-2が含まれる液晶性組成物12を、液晶性組成物11の代わりに用いた以外は、(試料101の作製)と同様の手順に従って、光吸収異方性層12を有する試料102を得た。
【0209】
高分子液晶性化合物P-2
【0210】
【0211】
(試料103の作製)
液晶性組成物12中のイエローアゾ色素Y-1の代わりに、等質量の下記イエローアゾ色素Y-2を含む液晶性組成物13を、液晶性組成物11の代わりに用いた以外は、(試料101の作製)と同様の手順に従って、光吸収異方性層13を有する試料103を得た。
【0212】
イエローアゾ色素Y-2
【0213】
【0214】
(試料104の作製)
液晶性組成物13中のシアンアゾ色素D-1の代わりに、等質量の下記シアンアゾ色素D-2を含む液晶性組成物14を、液晶性組成物11の代わりに用いた以外は、(試料101の作製)と同様の手順に従って、光吸収異方性層14を有する試料104を得た。
【0215】
シアンアゾ色素D-2
【0216】
【0217】
(試料105の作製)
液晶性組成物14中の高分子液晶性化合物P-1の代わりに、等質量の下記高分子液晶性化合物P-3を含む液晶性組成物15を、液晶性組成物11の代わりに用いた以外は、(試料101の作製)と同様の手順に従って、光吸収異方性層15を有する試料105を得た。
【0218】
高分子液晶性化合物P-3
【0219】
【0220】
(試料106の作製)
下記光配向ポリマーE-2(2質量部)およびo-キシレン(98質量部)を混合し、80℃で1時間撹拌して、配向膜形成用組成物12を得た。
【0221】
光配向ポリマーE-2
【0222】
【0223】
(試料101の作製)の際の得た中間層1上に、上記配向膜形成用組成物12を塗布した。配向膜形成用組成物12が塗布された透明支持体を100℃で2分間乾燥した後、得られた塗膜に偏光紫外線照射(20mJ/cm2、波長313nm基準)を1回施して、配向膜12を作製した。
得られた配向膜12上に、(試料104の作製)の際に用いた液晶性組成物14を用いて、試料104の作製の手順と同じ方法にて、試料106を得た。
【0224】
(試料107の作製)
Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)記載の方法で、下記式で表される液晶性化合物M-1を合成した。
【0225】
【0226】
次いで、上記式で表される液晶性化合物M-1の合成方法を参考に、下記式で表される液晶性化合物M-2を合成した。
【0227】
【0228】
下記の成分を混合し、80℃で1時間撹拌することで、液晶性組成物17を調製した。
【0229】
―――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物17
―――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物M-1 50部質量部
液晶性化合物M-2 50部質量部
下記アゾ色素D-3 2.5質量部
下記アゾ色素D-4 2.5質量部
下記アゾ色素D-5 2.5質量部
重合開始剤イルガキュア369(BASF社製) 6質量部
ポリアクリレート化合物
(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2質量部
O-キシレン 250質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0230】
【0231】
(試料106の作製)の際に作製した配向膜12上に、液晶性組成物17を膜厚が1.8μmになるように塗布して、塗膜を形成した。その後、塗膜が配置された積層体を110℃で2分間加熱乾燥した後、紫外線照射装置を用いて、露光量1000mJ/cm2(波長365nm基準)を照射し、光吸収異方性層17を有する試料107を得た。
【0232】
<配向度の評価>
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、光吸収異方性層を含む試料101~107をそれぞれサンプル台にセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、400~700nmの波長域における光吸収異方性層の吸光度を測定し、以下の式により配向度を算出した。結果を下記表1に示す。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:光吸収異方性層の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:光吸収異方性層の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0233】
【0234】
表1の結果から、式(4)に示す高分子液晶性化合物のlogP値の差が4以上である高分子液晶性化合物P-1およびP-2(いずれも4.4)は、logP値の差が1未満である高分子液晶性化合物P-3(0.89)より配向性に優れていた。
【0235】
<第1光学積層体の作製>
第1光学積層体として、光学積層体111~112を以下の手順に従って作製した。
【0236】
(光学積層体111の作製)
試料104中の光吸収異方性層14上に、下記保護層組成物1を#2のワイヤーバーで連続的に塗布し、60℃で5分間乾燥を行った。
その後、塗膜が配置された試料104に対して、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射し、塗膜を硬化させ、光吸収異方性層14上に保護層1が形成された光学積層体111を作製した。
【0237】
――――――――――――――――――――――――――――――――
保護層組成物1
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記親水性モノマーHM-1 29質量部
重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
エタノール 70質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0238】
親水性モノマーHM-1
【0239】
【0240】
(光学積層体112の作製)
光学積層体111において、セルロースアシレートフィルム11の代わりに、膜厚50μmのPETフィルム(フィルム12)を用いた以外は、(光学積層体111の作製)と同様の手順に従って、フィルム12、中間層1、配向膜11、光吸収異方性層14、および保護層1を含む光学積層体112を得た。
なお、フィルム12は、剥離性支持体に該当する。
【0241】
<第2光学積層体の作製>
第2光学積層体として、光学積層体201~204を以下の手順に従って作製した。
【0242】
(光学積層体201の作製)
下記組成の光学異方性層形成用組成物21を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用組成物21
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物L-3 42.00質量部
・下記液晶性化合物L-4 42.00質量部
・下記重合性化合物A-1 16.00質量部
・下記低分子化合物B2 6.00質量部
・下記重合開始剤S-1(オキシム型) 0.50質量部
・下記レベリング剤G-1 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0243】
なお、下記液晶性化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶性化合物L-3およびL-4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
───────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
───────────────────────────────
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 11質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶媒) 64質量部
───────────────────────────────
【0250】
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
────────────────────────────────
マット剤溶液
────────────────────────────────
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶媒) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
────────────────────────────────
【0251】
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープとを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルタでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口からバンド流延機を用いて流延した。
次いで、溶媒含有率略20質量%の状態でフィルムを剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間を搬送して、さらに乾燥し、厚み20μmの光学フィルムを作製し、これをセルロースアシレートフィルム21(以後、フィルム21とも記す。)とした。得られたセルロースアシレートフィルム21の波長550nmにおける面内レタデーションは0nmであった。
なお、フィルム21は、剥離性支持体に該当する。
【0252】
作製したセルロースアシレートフィルム21の片側の面に、下記の配向膜形成用組成物21をバーコーターで塗布し、得られた塗膜を110℃で2分間乾燥した。その後、塗膜に対して、ラビング処理を施して、配向膜21を形成した。
【0253】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物21
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記式(PVA-1)参照) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0254】
【0255】
次いで、配向膜21上に、先に調製した光学異方性層形成用組成物21をバーコーターで塗布し、塗膜を形成した。得られた塗膜を110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。
その後、得られた塗膜を60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2.3μmの光学異方性層を形成し、光学積層体201を作製した。得られた光学積層体201中の光学異方性層の波長550nmにおける面内レタデーションは140nmであった。得られた光学異方性層の遅相軸方向はラビング方向に対して平行に配向していた。
【0256】
(光学積層体202~204の作製)
セルロースアシレートフィルム21の代わりに後述する手順にて作製されるセルロースアシレートフィルム22~24(以後、フィルム22~24とも記す。)を用いた以外は、(光学積層体201の作製)と同様の手順に従って、光学積層体202~204を作製した。
なお、フィルム22~24は、剥離性支持体に該当する。
【0257】
(セルロースアシレートフィルム22の作製)
セルロースアシレートフィルム21の長尺フィルムを温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液1を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布した。その後、得られたフィルムを110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、得られたフィルムに純水を3ml/m2塗布した。次いで、得られたフィルムに対して、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、得られたフィルムを70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム22を作製した。
────────────────────────────────
アルカリ溶液1
────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
含フッ素界面活性剤SF-1
(C14H29O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────
【0258】
(セルロースアシレートフィルム23~24の作製)
セルロースアシレートフィルム22において、アルカリ溶液1の水酸化カリウム濃度を調整し、セルロースアシレートフィルム23~24を得た。
【0259】
<表面フィルム41の作製>
特開2014―206725号公報に記載のポリエチレンテレフタレート(以後、PET1とも記す。)(90質量部)、および、乾燥させた紫外線吸収剤(2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン))(10質量部)を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤を含むポリエチレンテレフタレート(以後、PET2とも記す)を得た。
PET1(90質量部)と、PET2(10質量部)とを、含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径50mmの1軸混練押出機1のホッパー1に投入し、押出機1で300℃に溶融した。ダイから押出した溶融樹脂は、温度25℃に設定された冷却キャストドラム上に押出し、剥ぎ取りロールを用いて剥離し、未延伸ポリエステルフィルムを得た。
未延伸ポリエステルフィルムをテンター(横延伸機)に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、95℃で幅方向に4.7倍に横延伸した。次に、得られたフィルムの膜面温度を180℃に制御しながら、熱固定処理を行った。さらに得られたフィルムを170℃、幅方向に2%で緩和し、冷却して、厚さ40μmのポリエステル系の透明基材41を得た。
【0260】
ハードコート層形成用の塗布液として、下記ハードコート層形成用組成物1を調製した。
【0261】
【0262】
【0263】
上記にて作製した透明基材41の一方の表面を予めコロナ処理した後、上記ハードコート層形成用組成物1を塗布した。次に、得られた塗膜を100℃で60秒乾燥し、窒素0.1%以下の条件で紫外線を1.5kW、300mJにて照射し、塗膜を硬化させ、厚み5μmのハードコート層を形成し、透明基材41とハードコート層とからなる表面フィルム41を得た。
【0264】
<実施例3:円偏光板214の作製>
光学積層体111、光学積層体204および表面フィルム41の長尺試料をそれぞれ準備し、以下のロールツーロールの積層を実施した。
光学積層体204の光学異方性層側の表面と光学積層体111の保護層の表面とを粘着剤を介して貼り合わせながら、貼り合わせた直後に、光学積層体111中のフィルム11を剥離して積層体Xを得た。
次に、積層体X中の配向膜11の表面と、表面フィルム41中の透明基材41の表面とを粘着剤を介して貼り合わせながら、貼り合わせた直後に、光学積層体204中のフィルム24を剥離して、円偏光板214を得た。
【0265】
<実施例1、2、4:円偏光板212、213、215の作製>
表3に示す第1光学積層体および第2光学積層体をそれぞれ用い、それぞれの光学積層体に含まれる剥離性支持体の剥離を実施した以外は、(円偏光板214の作製)と同様の手順に従って、円偏光板212~213、円偏光板215を得た。
【0266】
<比較例1:円偏光板211の作製>
光学積層体204の代わりに、光学積層体201を用いた以外は、(円偏光板214の作製)と同様の手順に従って、円偏光板の作製を試みたところ、フィルム11の剥離の際にフィルム21にも剥離がみられ、所定の円偏光板が作製できなかった。
【0267】
【0268】
なお、有機ELパネル(有機EL表示素子)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S5を分解し、有機EL表示装置から、円偏光板付きタッチパネルを剥離し、さらにタッチパネルから円偏光板を剥がし、有機EL表示素子、タッチパネルおよび円偏光板をそれぞれ単離した。次いで、単離したタッチパネルを有機EL表示素子と再度貼合し、さらに上記作製した円偏光板212~215を光学異方性層側がパネル側になるようにタッチパネル上に粘着剤を介して貼合し、有機EL表示装置を作製した。
作製した有機EL表示装置について、光学異方性層(λ/4板)として、ピュアエースWR(帝人株式会社製)を用いた場合と同様の評価を行ったところ、外光の反射防止に対し同様の効果が発揮されることを確認した。
【0269】
なお、円偏光板212および213の作製の際、フィルム11を剥離する際にはフィルム22およびフィルム23の剥離は生じないものの、フィルム22およびフィルム23の剥離力が0.50N/25mmを超えているため、やや剥離がしづらい。
また、光学積層体112におけるフィルム12の剥離力は0.10N/25mmより小さいため、フィルム12がやや剥離しやすく、光学積層体112の取り扱いがややしづらい。
よって、第1光学積層体における第1剥離性支持体の剥離力と、第2光学積層体における第2剥離性支持体の剥離力とは、共に、0.10~0.50N/25mmであれば、ロールツーロールでの積層時の故障をより低減できる。
【0270】
<第3光学積層体の作製>
第3光学積層体として、光学積層体301~303を以下の手順に従って作製した。
【0271】
(光学積層体301の作製)
透明支持体として、市販されているトリアセチルセルロースフィルム(以後、フィルム31とも記す。)「Z-TAC」(富士フイルム社製)を用いた。フィルム31上に、下記の配向膜形成用組成物31を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。得られた塗膜を60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向膜31を形成した。
なお、フィルム31は、剥離性支持体に該当する。
───────────────────────────────
配向膜形成用組成物31
───────────────────────────────
ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA103) 2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
───────────────────────────────
【0272】
上記で作製した配向膜31上に、下記光学異方性層形成用組成物31を塗布した。得られた塗膜を60℃で熟成させた後に、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、重合性棒状液晶性化合物を垂直配向させ、光学異方性層(ポジティブCプレートフィルム301)を含む光学積層体301を得た。なお、ポジティブCプレートフィルム301のRth(550)は、-60nmであった。
【0273】
──────────────────────────────────
光学異方性層形成用組成物31
──────────────────────────────────
液晶性化合物L-1 80質量部
液晶性化合物L-2 20質量部
垂直配液晶性化合物向剤(S01) 1質量部
垂直配向剤(S02) 0.5質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
イルガキュア907(BASF製) 3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
化合物B03 0.4質量部
メチルエチルケトン 170質量部
シクロヘキサノン 30質量部
──────────────────────────────────
【0274】
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
(光学積層体302および303の作製)
フィルム31に対して、上述した(セルロースアシレートフィルム23~24の作製)と同様にアルカリ溶液1の水酸化カリウム濃度を調整してアルカリ鹸化処理を行い、セルロースアシレートフィルム32~33(以後、フィルム32~33とも記す。)を得た。
次に、フィルム31の代わりにフィルム32~33をそれぞれ用いた以外は、(光学積層体301の作製)と同様の手順に従って、光学積層体302~303を得た。
なお、フィルム32~33は、剥離性支持体に該当する。
【0279】
<第2光学積層体の作製>
(光学積層体205の作製)
セルロースアシレートフィルム22において、アルカリ溶液1の水酸化カリウム濃度を調整し、セルロースアシレートフィルム25(以後、フィルム25とも記す。)を得た。
セルロースアシレートフィルム21の代わりにセルロースアシレートフィルム25を用いた以外は、(光学積層体201の作製)と同様の手順に従って、光学積層体205を得た。
なお、フィルム25は、剥離性支持体に該当する。
【0280】
<第1光学積層体の作製>
(光学積層体113の作製)
セルロースアシレートフィルム11において、アルカリ溶液1の水酸化カリウム濃度を調整し、セルロースアシレートフィルム13(以後、フィルム13とも記す。)を得た。
セルロースアシレートフィルム11の代わりにセルロースアシレートフィルム13を用いた以外は、(光学積層体111の製造)と同様の手順に従って、光学積層体113を得た。
なお、フィルム13は、剥離性支持体に該当する。
【0281】
<実施例5:円偏光板312の作製>
光学積層体111、光学積層体201、光学積層体302および表面フィルム41の長尺試料を準備し、以下のロールツーロールの積層を実施した。
光学積層体201中の光学異方性層と光学積層体302中の光学異方性層とを粘着剤を介して貼り合わせ、貼り合わせた直後に、光学積層体201のフィルム21を剥離して、積層体Bを得た。
次に、積層体B中の光学積層体201由来の光学異方性層側の表面と、光学積層体111中の保護層の表面とを粘着剤を介して貼り合わせ、貼り合わせた直後に、光学積層体111のフィルム11を剥離した。
さらに、光学積層体111の中間層側の表面と、表面フィルム41中の透明基材41の表面とを粘着剤を介して貼り合わせ、貼り合わせた直後に、フィルム32を剥離して、円偏光板312を得た。
【0282】
<実施例6:円偏光板313の作製>
光学積層体201の代わりに光学積層体205を用いた以外は、(円偏光板312の作製)と同様の手順に従って、円偏光板313を得た。
【0283】
<比較例2:円偏光板311の作製>
光学積層体302の代わりに光学積層体301を用いた以外は、(円偏光板312の作製)と同様の手順に従って、円偏光板の作製を試みたところ、フィルム21の剥離の際にフィルム31にも剥離がみられ、所定の円偏光板が作製できなかった。
【0284】
<比較例3:円偏光板314の作製>
光学積層体111の代わりに光学積層体113を用い、光学積層体302の代わりに光学積層体303を用いた以外は、(円偏光板312の作製)と同様の手順に従って、円偏光板の作製を試みたところ、フィルム13の剥離の際にフィルム33にも剥離がみられ、所定の円偏光板が作製できなかった。
【0285】
上記結果を表4にまとめて示す。
【0286】
【0287】
第3剥離性支持体の剥離力と、第1剥離性支持体および第2剥離性支持体の剥離力とが所定の関係である場合、所望の効果が得られることが確認された。
【0288】
(配向膜形成用組成物13の調製)
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0質量部、メチルイソブチルケトン500質量部、および、トリエチルアミン10.0質量部を仕込み、室温で混合物を撹拌した。次に、脱イオン水100質量部を滴下漏斗より30分かけて得られた混合物に滴下した後、還流下で混合物を混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機相を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで有機相を洗浄した。その後、得られた有機相から減圧下で溶媒および水を留去し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
次に、100mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン10.1質量部、アクリル基含有カルボン酸(東亞合成株式会社、商品名「アロニックスM-5300」、アクリル酸ω-カルボキシポリカプロラクトン(重合度n≒2))0.5質量部、酢酸ブチル20質量部、特開2015-26050号公報の合成例1の方法で得られた桂皮酸誘導体1.5質量部、および、テトラブチルアンモニウムブロミド0.3質量部を仕込み、得られた混合物を90℃で12時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物と等量(質量)の酢酸ブチルで混合物を希釈し、さらに希釈された混合物を3回水洗した。得られた混合物を濃縮し、酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返し、最終的に、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(下記重合体C-2)を含む溶液を得た。この重合体C-2の重量平均分子量Mwは9,000であった。また、1H-NMR分析の結果、重合体C-2中のシンナメート基を有する成分は23.7質量%であった。
【0289】
【0290】
以下の成分を混合して、光配向膜形成用組成物13を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――───
光配向膜形成用組成物13
―――――――――――――――――――――――――――――――───
・重合体C-2 10.67質量部
・低分子化合物R-1 5.17質量部
・添加剤(B-1) 0.53質量部
・酢酸ブチル 8287.37質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2071.85質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――───
【0291】
<実施例7:円偏光板401の作製>
光配向膜形成用組成物11の代わりに、光配向膜形成用組成物13を用いた以外は、(試料104の作製)、(光学積層体111の作製)および(円偏光板312の作製)と同様の手順に従って、円偏光板401を得た。
【0292】
<表示性能評価>
有機ELパネル(有機EL表示素子)搭載のSAMSUNG社製GALAXYS5を分解し、有機EL表示装置から、円偏光板付きタッチパネルを剥離し、さらにタッチパネルから円偏光板を剥がし、有機EL表示素子、タッチパネルおよび円偏光板をそれぞれ単離した。続いて、単離したタッチパネルを有機EL表示素子と再度貼合し、さらに上記作製した円偏光板312および401を空気が入らないようにしてタッチパネル上に粘着剤を介して貼合し、有機EL表示装置を作製した。
作製した有機EL表示装置について、明光下にて視認性および表示品位を評価した。表示装置を白表示にして、正面および極角45度から蛍光灯を映しこんだときの反射光を観察した。表示品位を下記の基準で評価した。評価結果を表5にまとめて示す。
A:黒色で色づきが全く視認されない。
B:着色が視認され、かつ反射率が高い。
【0293】
表5に示す「平均屈折率」欄は、光配向膜形成用組成物11を用いて形成される配向膜、および、光配向膜形成用組成物13を用いて形成される配向膜の平均屈折率を表す。
表5に示す「屈折率異方性」欄は、光配向膜形成用組成物11を用いて形成される配向膜、および、光配向膜形成用組成物13を用いて形成される配向膜の屈折率異方性を表す。
なお、平均屈折率および屈折率異方性の測定方法は、上述した通りである。
【0294】
【0295】
(表面フィルム42および43の作製)
下記式(A)で表されるアクリル系樹脂90質量部と、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂(トーヨーAS AS20、東洋スチレン社製)10質量部との混合物のペレットを2軸押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを得た。この未延伸シートを、160℃の温度条件下、縦および横に延伸して膜厚40μmの透明支持体42を得た。
【0296】
式(A)
【0297】
【0298】
上記一般式(6)中、R1は水素原子、R2およびR3はメチル基であるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(共重合モノマー質量比=メタクリル酸メチル/2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=8/2、ラクトン環化率約100%、ラクトン環構造の含有割合19.4%、質量平均分子量133000、メルトフローレート6.5g/10分(240℃、10kgf)、Tg131℃)。
【0299】
2軸押出機にて、シクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン社製、ガラス転移温度123℃)を、特開2015―160324号公報に記載の条件で、シクロオレフィン系樹脂100部に対してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(LA-31、ADEKA社製)7.5部を混練した。混練した樹脂を用いて、押し出し成形により、膜厚40μmの透明支持体43を得た。
【0300】
上記にて作製した透明支持体42および43の一方の表面を予めコロナ処理した後、ハードコート層形成用組成物1を塗布し、表面フィルム41と同様の条件で、厚み5μmを有するハードコート層を形成し、表面フィルム42および43を得た。
【0301】
<実施例8~9:円偏光板の作製>
実施例5の円偏光板312において、表面フィルム41の代わりに、表面フィルム42および表面フィルム43をそれぞれ使用した以外は、(円偏光板312の作製)と同様の手順に従って、円偏光板502および503を作製した。
得られた円偏光板502および503を用いて、上述した<表示性能評価>を実施したところ、反射光観察で良好な結果を得た。
【0302】
なお、上述した実施例においては、試料104を用いた態様について述べたが、他の試料101~103、105~107を用いた場合も、同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0303】
10 第1光学積層体
12 第1剥離性支持体
14 第1配向膜
16 光吸収異方性層
20 第2光学積層体
22 第2剥離性支持体
24 第2配向膜
26 光学異方性層A
30 積層体X
40 表面フィルム
42 ハードコート層
44 基材
50,100 光学積層体
60,110 表示装置
62 表示素子
70 第3光学積層体
72 光学異方性層B
74 第3剥離性支持体
80 積層体Y
90 積層体Z