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特許7016478ノズル板、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ノズル板、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220131BHJP
【FI】
B41J2/14 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017242398
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019107821
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】大岡 龍
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-022181(JP,A)
【文献】特開2012-254531(JP,A)
【文献】特開2004-255696(JP,A)
【文献】特開2010-162885(JP,A)
【文献】特開2017-209821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出物を吐出する複数のノズルが配列され、
前記ノズルの壁面は、吐出面側からストレート部と、前記ストレート部に続くテーパ部と、前記テーパ部から前記吐出面と反対側の面に続くダレ部と、を含み、
前記テーパ部のノズル配列方向の幅をbx、
前記テーパ部のノズル配列方向と直交する方向の幅をby、
前記ダレ部のノズル配列方向の幅をdx、
前記ダレ部のノズル配列方向と直交する方向の幅をdy、とするとき、
ノズル列配列方向と直交する方向において、0<by+dy<bx+dx、の関係を満たす
ことを特徴とするノズル板。
【請求項2】
前記複数のノズルがそれぞれ通じる流路間の隔壁のノズル配列方向の幅をa、
前記ノズル間のピッチをc、
前記ノズルの半径をr、とするとき、
ノズル列配列方向において、2(bx+dx+r)≦c-a、の関係を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載のノズル板。
【請求項3】
3μm≦dy<19μm、かつ、19μm<dx≦27μm、である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のノズル板。
【請求項4】
3μm≦dy≦5μm、かつ、26μm≦dx≦27μm、である
ことを特徴とする請求項3に記載のノズル板。
【請求項5】
dy=5μm、かつ、dx=26μmである
ことを特徴とする請求項4に記載のノズル板。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のノズル板を含む
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出ヘッドを含む
ことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出ユニット。
【請求項9】
請求項に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項若しくはに記載の液体吐出ユニットを備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノズル板、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドとして、プレス工法でノズルとなるノズル穴を形成したノズル板を備えるものがある。
【0003】
従来、プレス加工でノズル穴を形成するとき、ノズル列両端部の更に外側にダミー打点部を形成することで、ノズル板の変形を抑制し、着弾ばらつきを低減するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-076574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようにノズル列両端部の更に外側にダミー打点を有するノズル板にあっても、ノズル列と直交する方向における変形によって吐出特性にばらつきが生じるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、吐出特性のばらつきを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るノズル板によれば、
吐出物を吐出する複数のノズルが配列され、
前記ノズルの壁面は、吐出面側からストレート部と、前記ストレート部に続くテーパ部と、前記テーパ部から前記吐出面と反対側の面に続くダレ部と、を含み、
前記テーパ部のノズル配列方向の幅をbx、
前記テーパ部のノズル配列方向と直交する方向の幅をby、
前記ダレ部のノズル配列方向の幅をdx、
前記ダレ部のノズル配列方向と直交する方向の幅をdy、とするとき、
ノズル列配列方向と直交する方向において、0<by+dy<bx+dx、の関係を満たす
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出特性のばらつきを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るノズル板のノズル部分のノズル配列方向に沿う断面説明図である。
図2】同じくノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
図3】同じく平面説明図である。
図4】吐出面と反対側の面のダレ量とノズル板の変形量との関係の一例を示す説明図である。
図5】同実施形態のノズル板の製造方法の一例を説明する断面説明図である。
図6】ノズルのダレ量、ノズル板の変形量、パンチの耐久性との関係の一例を説明する説明図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
図8】同じく図7のX1-X1線に相当するノズル配列方向の断面説明図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
図10】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図である。
図11】同装置の要部側面説明図である。
図12】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
図13】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
図14】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例の概略説明図である。
図15】同装置のヘッドユニットの平面説明図である。
図16】同装置における液体循環システムの一例の説明に供するブロック説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態に係るノズル板について図1及び図2を参照して説明する。図1は同ノズル板のノズル部分のノズル配列方向に沿う断面説明図、図2は同じく図1のX1-X1に相当するノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【0011】
ノズル板1は、吐出物、例えば液体を吐出する複数のノズル4を有している。なお、吐出物は液体に限らず、気体、粉体などでも良い。
【0012】
このノズル板1には、複数のノズル4がそれぞれ通じる流路となる個別流路60を形成する流路板2が接合され、個別流路60は隔壁61で隔てられる。
【0013】
ここで、ノズル4の壁面は、吐出面1a側からストレート部4A、ストレート部4Aに続くテーパ部4Bと、テーパ部4Bから吐出面1aと反対側の面1bに続くダレ部4Cとを含む。
【0014】
このノズル4において、テーパ部4Bのノズル配列方向の幅をbx、テーパ部4Bのノズル配列方向と直交する方向の幅をby、ダレ部4Cのノズル配列方向の幅(以下、「ダレ量」ともいう。)をdx、ダレ部4Cのノズル配列方向と直交する方向の幅(以下、「ダレ量」ともいう。)をdyとする。
【0015】
また、複数のノズル4がそれぞれ通じる流路60間の隔壁61のノズル配列方向の幅をa、ノズル4,4間のピッチをc、ノズル4の半径をrとする。
【0016】
このとき、ノズル4は、ノズル列配列方向と直交する方向において、「0<by+dy<bx+dx」の関係を満たしている穴形状としている。
【0017】
この関係により、ノズル4をプレス加工で形成するとき、ダレ部4Cのダレ量dx、dyを、ノズル配列方向及びノズル配列方向と直交する方向においてノズル板1の変形量が少なくなる条件とすることができる。
【0018】
これにより、ノズル板1のノズル配列方向及びノズル配列方向と直交する方向の変形をいずれも低減することができる。
【0019】
この点について、吐出面と反対側の面のダレ量とノズル板の変形量との関係の一例を示す図4の説明図を参照して説明する。
【0020】
ノズル配列方向におけるダレ量dxを大きくすると、ノズル配列方向におけるノズル板の変形量は小さくなるが、ノズル配列方向と直交する方向の変形量は大きくなる。一方、ノズル配列方向のダレ量dxを小さくすると、ノズル配列方向と直交する方向のノズル板の変形量は小さくなるが、ノズル配列方向の変形量が大きくなる。これは、一方向の変形の影響が、一方向と直交する方向の変形に影響を与えていることに起因している。
【0021】
そこで、本実施形態では、ノズル配列方向のダレ量dx、ノズル配列方向と直交する方向のダレ量dyを規定することで、ノズル配列方向及びノズル配列方向と直交する方向の両方のノズル板の変形量を小さくする。
【0022】
つまり、プレス加工でノズルを形成するとき、ノズル配列方向のダレ量dx、ノズル配列方向と直交する方向のダレ量dyを同じにした場合、図4に示すように、ノズル配列方向の変形量(条件a)又はノズル配列方向と直交する方向の変形量(条件b)が大きくなり、若しくは、両方の変形量が大きくなる(条件c)。
【0023】
そこで、「0<by+dy<bx+dx」とすることで、ダレ量dx、dyがノズル配列方向、及び、ノズル配列方向と直交する方向で、それぞれノズルプ板の変形量が小さくなる条件で作製することができる。これによって、ノズル配列方向、及びノズル配列方向と直交する方向の変形をともに抑制することができるようになる。
【0024】
また、本実施形態においては、複数のノズル4がそれぞれ通じる流路(個別流路60)間の隔壁61のノズル配列方向の幅をa、ノズル4、4間のピッチをc、ノズル4の半径をr、とするとき、ノズル列配列方向において、2(bx+dx+r)≦c-a、ノズル列配列方向と直交する方向において、0<by+dy<bx+dxの関係をそれぞれ満たしている。
【0025】
「2(bx+dx+r)≦c-a」の関係を満たすことで、ノズル板1と個別流路60との接合領域を十分に確保することができ、安定した吐出が可能になる。
【0026】
また、テーパ部4Bを有することで、Bx>0,By>0、となり、「0<by+dy」となる。
【0027】
次に、ノズル板のプレス加工による製造方法の一例について図5を参照して説明する。図5は同説明に供する断面説明図である。
【0028】
図5(a)に示すように、ノズル板1となるSUS(金属板)などのノズル基材201を準備する。
【0029】
そして、図5(b)に示すように、ノズル基材201をプレス加工装置上のダイ202にセットし、所望の寸法に作製したパンチ203をノズル基材201の吐出面となる面と反対側の面から吐出面側に向かって垂直に押し出し、パンチ203の先端がノズル基材201の吐出面側に突き出るまでプレスを行う。これにより、ノズル基材201には凸部201aが形成される。
【0030】
次いで、図5(c)に示すように、パンチ203を引き上げてノズル基材201をプレス加工装置から取り外した後、テープ研磨装置204を用いて、ノズル基材201の吐出面側に突出した凸部201aを研磨して除去する。
【0031】
これにより、図5(d)に示すように、ノズル4が開口し、ノズル4の壁面には、吐出面1a側からストレート部4A、ストレート部4Aに続くテーパ部4Bと、テーパ部4Bから吐出面1aと反対側の面1bに続くダレ部4Cとを含むノズル板1が得られる。
【0032】
次に、ノズル4のダレ量dx、dyの具体例について図6も参照して説明する。図6はダレ量、ノズル板の変形量、パンチの耐久性との関係の一例を説明する説明図である。
【0033】
プレス加工でノズル4を形成するとき、パンチ203の寿命が短いほど部品単価が高くなる。プレス工法において、パンチの寿命は材料のスプリングバック、すなわちパンチとダイのクリアランスにより影響されるため、適正なクリアランスを設定する必要がある。
【0034】
また、クリアランスとダレ量には正の相関があることが知られている。すなわち、ダレ量を制御するためには、クリアランスを管理すればよい。
【0035】
ここで、図6によれば、ノズル配列方向と直交する方向のダレ量dy<3μmであるときにはパンチの耐久性が著しく悪くなり、ノズル配列方向のダレ量dx≧19μmであるときには、変形量を低減する効率が悪くなる。
【0036】
したがって、3μm≦dy<19μm、かつ、19μm<dx≦27μm、とすることで、パンチの寿命の長くし、しかも、ダレ量を低減してノズル板の変形量を低減することができる。
【0037】
また、図6より、より好ましくは、3μm≦dy≦5μm、かつ、26μm≦dx≦27μmの範囲であり、この範囲とすることで、ノズル板の変形量を更に低減することができる。
【0038】
更により好ましくは、dy=5μm、かつ、dx=26μm、とすることで、一層、パンチの寿命を長くし、ダレ量低減を低減してノズル板の変形量を低減することができる。
【0039】
次に、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図7及び図8を参照して説明する。図7は同液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図7のX1-X1線に相当するノズル配列方向の断面説明図である。
【0040】
この液体吐出ヘッドは、本発明に係るノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通液室部材20とを備えている。
【0041】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0042】
流路板2は、ノズル4にノズル連通路5を介して通じる個別液室6、個別液室6に連通する流体抵抗部7、各流体抵抗部7に通じる液導入部8を形成している。ここでは、流路板2は、3枚の板状部材2A~2Cを積層して構成している。
【0043】
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する変形可能な振動領域30を有する。ここでは、振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層3Aと、厚肉部を形成する第2層3Bで形成され、第1層3Aで個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0044】
そして、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0045】
この圧電アクチュエータ11は、例えば、ベース部材13に接合した圧電部材に対してハーフカットダイシングによって溝加工して形成した所要数の柱状の圧電素子12A、12Bを所定の間隔で有している。圧電素子12Aは振動板部材3の振動領域(振動板)30の凸部30aに接合し、支柱部となる圧電素子12Bは振動板部材3の凸部30bに接合している。また、圧電素子12にはフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0046】
共通液室部材20は、共通液室10を形成する。共通液室10は、外部から液体を供給する供給口である供給ポート21に通じている。
【0047】
共通液室10は、フィルタ9を介して液導入部8に通じている。フィルタ9は、振動板部材3の第1層にて形成している。
【0048】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子12Aに与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
【0049】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0050】
なお、ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図9を参照して説明する。図9は同液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【0052】
この液体吐出ヘッドは、個別液室循環型ヘッドであり、本発明に係るノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通液室部材20とを備えている。
【0053】
そして、流路板2は、ノズル4がノズル連通路5を介して連通する個別液室6と、前記第1実施形態の液体吐出ヘッドと同様に、供給側の流体抵抗部7と、液導入部8とを形成している。また、本実施形態では、流路板2は、ノズル連通路5を介して個別液室6に通じる排出側の個別流路56と、液導出部58とを形成している。ここでは、流路板2は4枚の板状部材2A~2Cを積層して構成している。
【0054】
また、共通液室部材20は、供給側の共通液室10と、排出側の共通液室50を形成している。供給側の共通液室10には供給口(供給ポート)21を通じて外部から液体が供給され、排出側の共通液室50は排出口(排出ポート)22を通じて外部に液体が排出される。
【0055】
さらに、供給側の共通液室10と液導入部8との間に供給側のフィルタ9を配置し、排出側の共通液室50と液導出部58との間に排出側のフィルタ59を配置している。
【0056】
この液体吐出ヘッドにおいては、液体吐出を行っているとき、ノズル4から吐出されない液体は、ノズル4を通過して排出側の個別流路56から液導出部58を経て排出側の共通液室50に排出され、排出側の共通液室50から外部の循環経路を通じて供給側の共通液室10に再度供給される。
【0057】
また、液体吐出を行っていないときも、供給側の共通液室10から、個別液室6、個別流路56などを経て排出側の共通液室50に液体が流れ、更に外部の循環経路を通じて供給側の共通液室10に再度供給される。
【0058】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図10及び図11を参照して説明する。図10は同装置の要部平面説明図、図11は同装置の要部側面説明図である。
【0059】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0060】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした本発明に係る液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0061】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0062】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0063】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0064】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0065】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0066】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0067】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0068】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0069】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0070】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0071】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0072】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図12を参照して説明する。図12は同ユニットの要部平面説明図である。
【0073】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0074】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0075】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図13を参照して説明する。図13は同ユニットの正面説明図である。
【0076】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0077】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0078】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の例について図14及び図15を参照して説明する。図14は同装置の概略説明図、図15は同装置のヘッドユニットの平面説明図である。
【0079】
この装置は、連続媒体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続媒体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続媒体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続媒体510を乾燥する乾燥手段507と、連続媒体510を排出する排出手段509などを備えている。
【0080】
連続媒体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、排出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、排出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0081】
この連続媒体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット55から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0082】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、媒体搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551K、551C、551M、551Y(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0083】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続媒体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0084】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る複数の液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)1000をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0085】
次に、この装置における液体循環システムの一例について図16を参照して説明する。図16は同システムの説明に供するブロック説明図である。
【0086】
液体循環システム630は、メインタンク602、ヘッド1000、供給タンク631、循環タンク632、コンプレッサ633、真空ポンプ634、第1送液ポンプ635、第2送液ポンプ636、供給側圧力センサ637、循環側圧力センサ638、レギュレータ(R)639a,639bなどで構成されている。
【0087】
供給側圧力センサ637は、供給タンク631とヘッド1000との間であって、ヘッド1000の供給ポートに繋がった供給側流路に接続されている。循環側圧力センサ638は、ヘッド1000と循環タンク632との間であって、ヘッド1000の排出ポートに繋がった排出側流路に接続されている。
【0088】
循環タンク632の一方は、第1送液ポンプ635を介して供給タンク631と接続されており、循環タンク632の他方は第2送液ポンプ636を介してメインタンク602と接続されている。
【0089】
これにより、供給タンク631から供給ポート21を通ってヘッド1000内に液体が流入し、排出ポート22から排出されて循環タンク632へ排出される。そして、さらに第1送液ポンプ635によって循環タンク632から供給タンク631へ液体が送られることによって液体が循環する。
【0090】
また、供給タンク631にはコンプレッサ633がつなげられており、供給側圧力センサ637で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、循環タンク632には真空ポンプ634がつなげられており、循環側圧力センサ638で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0091】
これにより、ヘッド1000内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0092】
また、ヘッド1000のノズル4から液体を吐出すると、供給タンク631及び循環タンク632内の液体量が減少していく。そのため、適宜、第2送液ポンプ636を用いて、メインタンク602から循環タンク632に液体を補充する。メインタンク602から循環タンク632への液体補充のタイミングは、循環タンク632内の液体の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、循環タンク632内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0093】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0094】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0095】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0096】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0097】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0098】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0099】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0100】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0101】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0102】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0103】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0104】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0105】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0107】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0108】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0109】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0110】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0111】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0112】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板部材
4 ノズル
5 ノズル連通路
6 個別液室
7 流体抵抗部
8 液導入部
9 フィルタ
10 共通液室(供給側の共通液室)
11 圧電アクチュエータ
20 共通液室部材
50 共通液室(排出側の共通液室)
58 液導出部
59 フィルタ
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
440 液体吐出ユニット
630 液体循環システム
1000 液体吐出ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16