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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/24 20060101AFI20220131BHJP
   G01L 11/02 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
G01L1/24 A
G01L11/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019044462
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020148525
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 弘行
(72)【発明者】
【氏名】八木 健
(72)【発明者】
【氏名】荒井 慎一
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4915473(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102998039(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101261117(CN,A)
【文献】特開2006-258463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-27/02
G01B 9/00-11/30
G01D 5/26- 5/38
G01H 9/00
G02B 6/00- 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験光を出力する光源と、
前記試験光が入力され、該試験光を0.3dB/m以上の損失で伝搬するセンサ光ファイバと、
前記センサ光ファイバを伝搬した前記試験光を受光する受光器と、
を備え、
前記センサ光ファイバは、コア部と該コア部の外周に形成されたクラッド部とを有し、前記コア部と前記クラッド部のとの界面付近に、複数のナノ構造が存在しており、前記ナノ構造は、前記センサ光ファイバの長手方向に垂直な断面における断面直径が100nm以下であり、かつ前記ナノ構造は、前記長手方向において1m未満の長さ領域で分布しており、
前記受光器により受光された前記試験光の強度に基づいて、前記センサ光ファイバに掛かっている圧力を検出することを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記センサ光ファイバと、前記センサ光ファイバに接続された、前記センサ光ファイバよりも伝搬損失が小さい伝送光ファイバと、を含む光伝送体を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記試験光の波長において、前記センサ光ファイバはシングルモード光ファイバであり、前記センサ光ファイバよりも前記光源側に位置する前記伝送光ファイバはマルチモード光ファイバであることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記マルチモード光ファイバは、前記センサ光ファイバと接続箇所にて融着接続されており、前記マルチモード光ファイバにおける前記接続箇所から所定の長さの部分に掛かっている圧力を検出することを特徴とする請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
並列配置された複数の前記光伝送体を備え、前記複数の光伝送体のそれぞれに含まれる前記センサ光ファイバの位置が、長手方向において互いに異なることを特徴とする請求項2~4のいずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記受光器が、前記センサ光ファイバまたは前記伝送光ファイバの光ファイバ端面において反射した前記試験光を受光するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記受光器が、前記センサ光ファイバの一端側から入力された前記試験光を前記センサ光ファイバの他端側において受光するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記試験光はパルス光であり、
前記センサ光ファイバまたは前記伝送光ファイバは、長手方向における途中に反射部を有しており、
前記受光器が、前記反射部で反射された前記試験光を受光するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記反射部は、前記センサ光ファイバまたは前記伝送光ファイバのコア部に形成された高屈折率部であることを特徴とする請求項8に記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記ナノ構造は、微粒子、円柱状のチューブ、または空隙であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項11】
前記微粒子は、融点が1500℃以上の材料からなることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項12】
前記試験光の強度に基づいて前記センサ光ファイバに掛かっている圧力を求める処理装置を備えることを特徴とする請求項1~1のいずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項13】
前記処理装置は、前記圧力に基づいて音響波の強度を求めるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサとして、OCT(光干渉断層撮影)システムの用途に使用される圧力センサが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示される圧力センサは、ダイアフラムを圧力検知体として光ファイバの端部に設け、光の干渉作用を利用して圧力を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-511372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光の干渉作用を利用して圧力を検出する装置は、構成が複雑かつ大型になりやすく、装置コストも高くなりやすいという問題がある。一方、圧力センサは、その用途に応じては小型かつ簡易な構成であるものが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型かつ簡易な構成の圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る圧力センサは、試験光を出力する光源と、前記試験光が入力され、該試験光を0.3dB/m以上の損失で伝搬するセンサ光ファイバと、前記センサ光ファイバを伝搬した前記試験光を受光する受光器と、を備え、前記受光器により受光された前記試験光の強度に基づいて、前記センサ光ファイバに掛かっている圧力を検出することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記センサ光ファイバと、前記センサ光ファイバに接続された、前記センサ光ファイバよりも伝搬損失が小さい伝送光ファイバと、を含む光伝送体を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記試験光の波長において、前記センサ光ファイバはシングルモード光ファイバであり、前記センサ光ファイバよりも前記光源側に位置する前記伝送光ファイバはマルチモード光ファイバであることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記マルチモード光ファイバは、前記センサ光ファイバと接続箇所にて融着接続されており、前記マルチモード光ファイバにおける前記接続箇所から所定の長さの部分に掛かっている圧力を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る圧力センサは、並列配置された複数の前記光伝送体を備え、前記複数の光伝送体のそれぞれに含まれる前記センサ光ファイバの位置が、長手方向において互いに異なることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記受光器が、前記センサ光ファイバまたは前記伝送光ファイバの光ファイバ端面において反射した前記試験光を受光するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記受光器が、前記センサ光ファイバの一端側から入力された前記試験光を前記センサ光ファイバの他端側において受光するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記試験光はパルス光であり、前記センサ光ファイバまたは前記伝送光ファイバは、長手方向における途中に反射部を有しており、前記受光器が、前記反射部で反射された前記試験光を受光するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記反射部は、前記センサ光ファイバまたは前記伝送光ファイバのコア部に形成された高屈折率部であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記センサ光ファイバは、コア部と該コア部の外周に形成されたクラッド部とを有し、前記コア部と前記クラッド部のとの界面付近に、複数のナノ構造が存在しており、前記ナノ構造は、前記センサ光ファイバの長手方向に垂直な断面における断面直径が100nm以下であり、かつ前記ナノ構造は、前記長手方向において1m未満の長さ領域で分布していることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記ナノ構造は、微粒子、円柱状のチューブ、または空隙であることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記微粒子は、融点が1500℃以上の材料からなることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記試験光の強度に基づいて前記センサ光ファイバに掛かっている圧力を求める処理装置を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る圧力センサは、前記処理装置は、前記圧力に基づいて音響波の強度を求めるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型かつ簡易な構成の圧力センサを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態1に係る圧力センサの模式的な構成図である。
図2図2は、センサ光ファイバの模式的な断面図である。
図3図3は、センサ光ファイバに掛かる圧力と、圧力による損失の増加量との関係の一例を示す図である。
図4図4は、断面直径の説明図である。
図5図5は、実施形態2に係る圧力センサの模式的な構成図である。
図6図6は、実施形態3に係る圧力センサの模式的な構成図および波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る圧力センサの模式的な構成図である。圧力センサ100は、光源1と、光分岐部2と、複数(本実施形態では3本)の光伝送体31、32、33と、受光器であるPD(Photo Diode)アレイ4と、処理装置5と、を備える。
【0024】
光源1は、本実施形態ではレーザダイオード(LD)であり、たとえば波長1550nmの試験光を光分岐部2に出力する。試験光の波長は1100nmでもよい。光分岐部2は、試験光を3分岐して光伝送体31、32、33のそれぞれに出力する。
【0025】
光伝送体31は、2本の伝送光ファイバ31aと1本のセンサ光ファイバ31bとを含む。光伝送体31において、2本の伝送光ファイバ31aはそれぞれセンサ光ファイバ31bの両端のそれぞれに融着接続などにより接続されている。
【0026】
同様に、光伝送体32は、2本の伝送光ファイバ31aと1本のセンサ光ファイバ31bとを含む。光伝送体32において、2本の伝送光ファイバ31aはそれぞれセンサ光ファイバ31bの両端のそれぞれに融着接続などにより接続されている。
【0027】
同様に、光伝送体33は、2本の伝送光ファイバ31aと1本のセンサ光ファイバ31bとを含む。光伝送体33において、2本の伝送光ファイバ31aはそれぞれセンサ光ファイバ31bの両端のそれぞれに融着接続などにより接続されている。
【0028】
光伝送体31、32、33は、並列配置されており、結束具によって束ねられていてもよい。また、光伝送体31、32、33のそれぞれに含まれるセンサ光ファイバ31bの位置は、長手方向において互いに異なる。各センサ光ファイバ31bの長さはたとえば数cm~数m程度である。
【0029】
センサ光ファイバ31bは、試験光を0.3dB/m以上という、大きい伝搬損失で伝搬するように構成されている。
【0030】
本実施形態におけるセンサ光ファイバ31bの構成を、図2を参照して説明する。図2(a)はセンサ光ファイバ31bの長手方向に沿った断面図であり、図2(b)はセンサ光ファイバ31bの長手方向に垂直な面に沿った断面図である。
【0031】
センサ光ファイバ31bは、本実施形態では石英系材料からなり、コア部31baと、コア部31baの外周に形成された、コア部31baよりも屈折率が低いクラッド部31bbとを有している。コア部31baのコア径や、クラッド部31bbに対する比屈折率差は、センサ光ファイバ31bが試験光をシングルモードで伝搬することができるように設定されている。また、クラッド部31bbの外周には被覆が形成されていてもよい。
【0032】
センサ光ファイバ31bは、コア部31baとクラッド部31bbのとの界面付近に、複数のナノ構造31bcが存在している。ナノ構造31bcはクラッド部31bbの半径方向の全体にわたって存在してもよい。各ナノ構造31bcは、たとえば微粒子、円柱状のチューブ、または空隙(チューブ、微粒子以外の空気の隙間)であり、微粒子、円柱状のチューブ、および空隙のうち少なくとも2種を含んでいてもよい。
【0033】
このような構成のセンサ光ファイバ31bは、試験光がナノ構造31bcによって散乱などを受けるため、コア部31baにおける試験光の光閉じ込めが比較的弱い状態であり、試験光が漏洩しやすくなっている。そのため、試験光に対する伝搬損失が0.3dB/m以上と大きい。本発明者らが精査したところ、このようにコア部31baにおける試験光の光閉じ込めが比較的弱いセンサ光ファイバ31bは、圧力が掛かるとその圧力に応じて伝搬損失が比較的敏感に変化する。特に、ナノ構造31bcを有するセンサ光ファイバ31bは、圧力が掛かるとナノ構造31bcの相対位置や形状が変化するので、圧力に応じて伝搬損失が比較的敏感に変化する。
【0034】
図3は、センサ光ファイバ31bに掛かる圧力(相対値)と、圧力による損失の増加量との関係の一例を示す図である。図3では、センサ光ファイバ31bをガラス板で挟んで荷重を掛けることで圧力を掛けている。通常の光ファイバ伝送用の光ファイバ、たとえばITU-T(国際電気通信連合) G.652に準拠するシングルモード光ファイバであれば、図3に示す圧力範囲では、圧力による損失の増加量は殆どない。これに対して、センサ光ファイバ31bでは、圧力の増加にしたがって損失が増加する。すなわち、センサ光ファイバ31bは圧力に対する感受性が高い。
【0035】
センサ光ファイバ31bが感じる圧力は、たとえばセンサ光ファイバ31bの周囲の流体(液体や気体)の圧力や、センサ光ファイバ31bに掛かる荷重による圧力である。
【0036】
伝送光ファイバ31aは、センサ光ファイバ31bよりも伝搬損失が小さい光ファイバである。たとえば、伝送光ファイバ31aはITU-T G.652に準拠するシングルモード光ファイバである。伝送光ファイバ31aは試験光をシングルモードで伝搬し、伝搬損失はたとえば0.3dB/kmである。
【0037】
図1に戻って、光伝送体31、32、33はPDアレイ4に光学的に接続している。光伝送体31、32、33は入力された試験光を伝搬してPDアレイ4に出力する。PDアレイ4は、3つのPDを備えており、各PDにて光伝送体31、32、33のそれぞれから出力された試験光を受光し、その受光強度に応じた電流値の電流信号を処理装置5に出力する。すなわち、本実施形態では、圧力センサ100は、PDアレイ4が、各センサ光ファイバ31bまたは光伝送体31、32、33の一端側から入力された試験光を、各センサ光ファイバ31bまたは光伝送体31、32、33の他端側において受光する。
【0038】
処理装置5は、演算部と、記憶部とを備えている。演算部は、処理装置5が実行する処理や処理装置5の機能の実現のための各種演算処理を行うものであり、たとえばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(field-programmable gate array)、またはCPUとFPGAの両方で構成される。記憶部は、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどが格納される、たとえばROM(Read Only Memory)で構成される部分を備えている。また、記憶部は、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果などを記憶するなどのために使用される、たとえばRAM(Random Access Memory)で構成される部分を備えている。また、処理装置5は、PDアレイ4からの電流信号の入力を受け付け、AD変換する入力部や、各種情報を報知するための文字や記号などの表示を行う表示部を備えている。
【0039】
処理装置5は、PDアレイ4から入力された電流信号から、各PDで受光された試験光の強度の情報を取得する。そして、当該強度の情報に基づいて、各センサ光ファイバ31bに掛かっている圧力を検出する。
【0040】
具体的には、図3に示すように、各センサ光ファイバ31bの伝搬損失は掛かっている圧力に応じて変化するので、圧力に応じて各PDで受光される試験光の強度も変化する。処理装置5は、各PDで受光される試験光の強度と、各センサ光ファイバ31bに掛かっている圧力との関係を、たとえばテーブルデータとして記憶部に記憶している。処理装置5は、テーブルデータと各PDで受光される試験光の強度とに基づいて各センサ光ファイバ31bに掛かっている圧力を求める。求めた圧力の値はたとえば処理装置5が表示部に表示させてもよい。
【0041】
また、上述したように、光伝送体31、32、33のそれぞれに含まれるセンサ光ファイバ31bの位置が長手方向において互いに異なるので、各センサ光ファイバ31bは長手方向において異なる位置の圧力を検出に利用できる。これにより、圧力センサ100は分布型の圧力センサとして機能する。
【0042】
なお、ナノ構造31bcは、センサ光ファイバ31bの長手方向に垂直な断面における断面直径が100nm以下であることが好ましい。ナノ構造31bcの断面直径が100nm以上になると断面内での空気の占める面積が大きくなるので、石英系材料からなるコア部31baとの実効的な屈折率差が高くなり、光の漏洩、もしくは光拡散が生じにくくなる。よって断面直径を100nm以下に設定することにより、圧力に対する感度を高くできるとともに、過剰な損失を抑制できる。断面直径は、石英分子サイズよりも大きく、光に影響を与える下限1nm以上であることが望ましい。また、ナノ構造31bcは、長手方向において1m未満の長さ領域で分布していることが好ましい。ここで、1m未満の長さ領域で分布しているとは、ナノ構造31bcが連続的に存在する領域の長さが1m未満であることを意味する。たとえば、図2(a)では、ナノ構造31bcが連続的に存在している領域が2つあるが、いずれも長手方向において1m未満の長さである。これにより、ナノ構造31bcによる過剰な損失や、伝搬特性に与える影響を抑制できる。
【0043】
なお、ナノ構造31bcは、断面が円形ではない場合もあり得る。円形ではない場合は、図4に示すように、ナノ構造31bcの断面形状に外接する楕円Eの長径Dを断面直径と定義してもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る圧力センサ100は、センサ光ファイバ31bに試験光を伝搬させ、伝搬した試験光を受光し、その強度に基づいて圧力を検出できるので、干渉計などの構成を使用せず、小型かつ簡易な構成となる。たとえば、圧力センサ100は、簡易に数mオーダーの多点の圧力センサをより低コストに実現できる。また、圧力を検出するセンサ光ファイバ31bは細径のため、狭い場所の圧力検出にも適する。
【0045】
なお、センサ光ファイバ31bは、たとえば特表2013-511749号公報に開示される光ファイバの製造方法を適用して製造することができる。ナノ構造31bcが微粒子の場合、たとえばコア母材をクラッド部材としてのガラスキャピラリに挿入して光ファイバ母材を構成する方法を採用できる。この場合、コア母材とガラスキャピラリとの隙間に微粒子を混入させた後に光ファイバ母材を線引きし、センサ光ファイバ31bを製造できる。なお、微粒子は、融点が1500℃以上の材料からなるものであれば、石英系光ファイバ母材の線引きの際の加熱温度である1400℃程度の高温下であっても、微粒子の溶解や変形が防止できる。このような融点の高い材料としては、カーボン、タンタル、モリブデン、タングステン、酸化クロム、酸化ジルコニウムなどを適宜選択できる。
【0046】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る圧力センサの模式的な構成図である。圧力センサ100Aは、図1に示す圧力センサ100の構成において、光伝送体31、32、33をそれぞれ光伝送体31A、32A、33Aに置き換え、PDアレイ4をPD4a、4b、4cに置き換え、誘電体や金属などからなる反射膜61、62、63を追加した構成を有する。
【0047】
光伝送体31Aは、伝送光ファイバ31Aaと、伝送光ファイバ31aと、センサ光ファイバ31bとを含む。光伝送体31Aにおいて、伝送光ファイバ31Aa、伝送光ファイバ31aはそれぞれセンサ光ファイバ31bの両端のそれぞれに融着接続などにより接続されている。伝送光ファイバ31Aaは光分岐部2にも接続されている。伝送光ファイバ31aの両端のうちセンサ光ファイバ31bに接続されていない側の端面には反射膜61が設けられている。伝送光ファイバ31Aaは途中に分岐部を有しており、分岐部には伝送光ファイバ31Abが接続されている。
【0048】
同様に、光伝送体32Aは、伝送光ファイバ32Aaと、伝送光ファイバ31aと、センサ光ファイバ31bとを含む。光伝送体32Aにおいて、伝送光ファイバ32Aa、伝送光ファイバ31aはそれぞれセンサ光ファイバ31bの両端のそれぞれに融着接続などにより接続されている。伝送光ファイバ32Aaは光分岐部2にも接続されている。伝送光ファイバ31aの両端のうちセンサ光ファイバ31bに接続されていない側の端面には反射膜62が設けられている。また、伝送光ファイバ32Aaは途中に分岐部を有しており、分岐部には伝送光ファイバ32Abが接続されている。
【0049】
同様に、光伝送体33Aは、伝送光ファイバ33Aaと、伝送光ファイバ31aと、センサ光ファイバ31bとを含む。光伝送体33Aにおいて、伝送光ファイバ33Aa、伝送光ファイバ31aはそれぞれセンサ光ファイバ31bの両端のそれぞれに融着接続などにより接続されている。伝送光ファイバ33Aaは光分岐部2にも接続されている。伝送光ファイバ31aの両端のうちセンサ光ファイバ31bに接続されていない側の端面には反射膜62が設けられている。また、伝送光ファイバ33Aaは途中に分岐部を有しており、分岐部には伝送光ファイバ32Abが接続されている。伝送光ファイバ31Aa、32Aa、33Aaの分岐部は光カプラや光サーキュレータなどで構成されている。
【0050】
伝送光ファイバ31Aa、32Aa、33Aa、31Ab、32Ab、33Abは、センサ光ファイバ31bよりも伝搬損失が小さい光ファイバであり、たとえば、伝送光ファイバ31aと同様のものである。
【0051】
光伝送体31A、32A、33Aは、並列配置されている。また、光伝送体31A、32A、33Aのそれぞれに含まれるセンサ光ファイバ31bの位置は、長手方向において互いに異なる。
【0052】
伝送光ファイバ31Ab、32Ab、33Abは、それぞれ、PD4a、4b、4cに光学的に接続している。
【0053】
この圧力センサ100Aでは、光分岐部2は、光源1から出力された試験光を3分岐して光伝送体31A、32A、33Aのそれぞれに出力する。光伝送体31A、32A、33Aは入力された試験光を伝搬する。この際に各試験光は光伝送体31A、32A、33Aの各センサ光ファイバ31bを伝搬する。
【0054】
反射膜61は、光伝送体31Aが伝搬した試験光を、光伝送体31Aの端面において反射する。光伝送体31Aは、反射された試験光を光源1側に伝搬する。反射された試験光の少なくとも一部は分岐部で伝送光ファイバ31Abに導入される。伝送光ファイバ31Abは導入された試験光をPD4aに出力する。
【0055】
反射膜62は、光伝送体32Aが伝搬した試験光を、光伝送体32Aの端面において反射する。光伝送体32Aは、反射された試験光を光源1側に伝搬する。反射された試験光の少なくとも一部は分岐部で伝送光ファイバ32Abに導入される。伝送光ファイバ32Abは導入された試験光をPD4bに出力する。
【0056】
反射膜63は、光伝送体33Aが伝搬した試験光を、光伝送体33Aの端面において反射する。光伝送体33Aは、反射された試験光を光源1側に伝搬する。反射された試験光の少なくとも一部は分岐部で伝送光ファイバ33Abに導入される。伝送光ファイバ33Abは導入された試験光をPD4cに出力する。
【0057】
すなわち、圧力センサ100Aでは、PD4a、4b、4cのそれぞれが、光伝送体31A、32A、33Aのそれぞれの光ファイバ端面において反射した試験光を受光する。
【0058】
PD4a、4b、4cは、それぞれの受光強度に応じた電流値の電流信号を処理装置5に出力する。
【0059】
処理装置5は、PD4a、4b、4cのそれぞれから入力された電流信号から、PD4a、4b、4cのそれぞれで受光された試験光の強度の情報を取得する。そして、当該強度の情報に基づいて、各センサ光ファイバ31bに掛かっている圧力を検出する。
【0060】
本実施形態に係る圧力センサ100Aは、実施形態1と同様に、小型かつ簡易な構成となる。また、各センサ光ファイバ31bを往復した後の試験光の強度に基づいて圧力を検出するので、センサ光ファイバ31bの単位長さ辺りの圧力に対する感度を高くすることができる。
【0061】
なお、圧力センサ100Aでは反射膜61、62、63により試験光を反射しているが、反射膜61、62、63を設けず、各伝送光ファイバ31aの光ファイバ端面のフレネル反射を利用して、試験光を反射させてもよい。また、光伝送体においてセンサ光ファイバの光源と反対側に伝送光ファイバが接続されていない場合、センサ光ファイバの光ファイバ端面に反射膜を設けたり、センサ光ファイバの光ファイバ端面のフレネル反射を利用して、試験光を反射させたりしてもよい。
【0062】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る圧力センサの模式的な構成図および波形図である。図6(a)に示すように、圧力センサ100Bは、光源1と、DC電源7と、信号発生器であるシンセサイザ8と、バイアスティ9と、分岐部10と、センサ光ファイバ31Bと、PD4Bと、オシロスコープ11と、処理装置5とを備えている。
【0063】
光源1は、LDであり、DC電源7からDC電流を供給されるとともに、シンセサイザ8から周期的な電気パルス信号を供給される。これによって光源1は直接変調されて周期的なパルス光としての試験光PLを分岐部10に出力する。バイアスティ9は、電気パルス信号に対して影響を与えずにDC電流を光源1に供給するために設けられている。
【0064】
試験光PLのパルス幅はたとえば10ps~100psである。繰り返し周期は前記パルス幅を実現しつつできるだけ低い繰り返し周期が好ましいが、たとえば周波数として1GHzである。
【0065】
分岐部10は入力された試験光PLをセンサ光ファイバ31Bに出力する。分岐部10は光カプラや光サーキュレータなどで構成されている。
【0066】
センサ光ファイバ31Bは、長手方向における途中に反射部としてのファイバブラッググレーティング(FBG)部31B1が複数箇所(本実施形態では2箇所)形成されている以外はセンサ光ファイバ31bと同様の構造を有する。FBG部31B1は、コア部に複数の高屈折率部が長手方向に所定の間隔で形成された構成を有する。高屈折率部は、センサ光ファイバ31BにおいてFBG部31B1が形成されていない箇所のコア部の屈折率よりも高い屈折率を有する。FBG部31B1は試験光PLの波長の光を所定の反射率で選択的に反射するように構成されている。
【0067】
センサ光ファイバ31Bは試験光PLを図面右方向に伝搬する。このとき、試験光PLの一部はレイリー散乱光として分岐部10側に戻る。また、試験光PLの一部はFBG部31B1によって反射され、反射光として分岐部10側に戻る。
【0068】
分岐部10は、レイリー散乱光や反射光を含む戻り光RLをPD4Bに入力させる。PD4Bは、受光強度に応じた電流値の電流信号をオシロスコープ11に出力する。
【0069】
図6(b)はオシロスコープ11で観測される波形図である。横軸は時間であり、縦軸はPD4Bが出力する電流信号の電流値(PD出力)である。PD出力は周期的な波形を有する。波形は受光強度を示している。横軸の時間は受光した光の発生した位置、具体的にはセンサ光ファイバ31Bの分岐部10側の端部からの距離に相当する。
【0070】
受光強度は、センサ光ファイバ31Bにおいて分岐部10から近い位置で発生したレイリー散乱光については強度が高くなる。レイリー散乱光が発生した位置が分岐部10から遠ざかるにつれてセンサ光ファイバ31Bの損失を受けて強度が低くなる。ピークは2つのFBG部31B1による反射光に相当する。この反射光はレイリー散乱光よりも強度が高い。オシロスコープ11で観測される波形の情報信号は処理装置5に出力される。
【0071】
処理装置5は、波形の情報信号から、試験光から発生した戻り光RL(すなわちレイリー散乱光および反射光)の強度の時間的すなわち位置的情報を取得する。そして、当該強度の位置的情報に基づいて、センサ光ファイバ31Bに掛かっている圧力の位置的な分布を検出する。特に、比較的高強度である2つのFBG部31B1による反射光の強度から圧力を検出することによって、より高精度かつ時間的に安定的な圧力検出ができる。
【0072】
本実施形態に係る圧力センサ100Bは、実施形態1と同様に、小型かつ簡易な構成となる。また、1本のセンサ光ファイバ31Bにて圧力の位置的な分布を検出することができる。
【0073】
なお、本実施形態では反射部はFBG部であるが、反射部はたとえば1つの高屈折率部で構成されていてもよい。また、本実施形態では反射部がセンサ光ファイバに形成されているが、センサ光ファイバの光源とは反対側の一端に伝送光ファイバが接続されており、この伝送光ファイバのコア部に反射部が形成されていてもよい。
【0074】
なお、上記した各実施形態において、センサ光ファイバよりも光源側に位置する伝送光ファイバはマルチモード光ファイバであってもよい。マルチモード光ファイバは、たとえばコア径が105μm、開口数(NA)が0.15~0.22のものであるが、特には限定されない。伝送光ファイバはマルチモード光ファイバであれば、センサ光ファイバとの接続箇所においてモード変換が発生する。このモード変換は圧力に依存し、モードミスマッチの状態も圧力に依存する。その結果、センサ光ファイバにおける試験光の漏洩の程度も圧力に敏感となるので、センサ光ファイバの圧力に対する感度が高くなる。また、センサ光ファイバよりも光源側に位置する伝送光ファイバはマルチモード光ファイバであって、当該マルチモード光ファイバが、センサ光ファイバと接続箇所にて融着接続されている場合、当該マルチモード光ファイバにおける接続箇所から所定の長さの部分に掛かっている圧力を検出してもよい。当該マルチモード光ファイバにおける接続箇所から所定の長さの部分も圧力に対する感度が比較的高い。その理由は、たとえば以下のように考えることもできる。すなわち、接続箇所に圧力が掛かると、マルチモード光ファイバ側にてモード変換が生じ、センサ光ファイバにおける試験光の漏洩の程度がその圧力に応じて変化する。ただし、圧力に対する感度が比較的高い理由は上記に限定はされない。なお、所定の長さはたとえば5cm~10cm程度である。処理装置は、受光素子から入力された電流信号から、受光素子で受光された試験光の強度の情報を取得する。そして、当該強度の情報に基づいて、マルチモード光ファイバにおける所定の長さの部分に掛かっている圧力も検出する。
【0075】
また、実施形態2の場合は、センサ光ファイバの両端に接続されている伝送光ファイバのいずれもマルチモード光ファイバであってよい。これにより試験光は2箇所の接続箇所を通過後に受光されるので、センサ光ファイバの圧力に対する感度がより高くなる。また、センサ光ファイバの両端にマルチモード光ファイバが融着接続されている場合、センサ光ファイバの両端側にてマルチモード光ファイバにおける所定の長さの部分に掛かっている圧力を検出してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では処理装置は圧力を求めているが、さらに圧力に基づいて音響波の強度を求めるように構成されていてもよい。これにより、上記実施形態の圧力センサは実質的に音響センサとして機能する。
【0077】
また、上記実施形態において、センサ光ファイバはナノ構造を有するものであるが、センサ光ファイバとしてはこれに限られず、試験光の伝搬損失が0.3dB/m以上であり、コア部における光閉じ込めが比較的弱く、圧力に敏感な状態の光ファイバを適用できる。
【0078】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 光源
2 光分岐部
4 PDアレイ
4a、4b、4c PD
5 処理装置
7 DC電源
8 シンセサイザ
9 バイアスティ
10 分岐部
11 オシロスコープ
31、32、33、31A、32A、33A 光伝送体
31a、31Aa、31Ab、32Aa、32Ab、33Aa、33Ab 伝送光ファイバ
31b、31B センサ光ファイバ
31B1 FBG部
31ba コア部
31bb クラッド部
31bc ナノ構造
61、62、63 反射膜
100、100A、100B 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6