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特許7016879着色組成物、膜の製造方法、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子の製造方法および画像表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】着色組成物、膜の製造方法、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子の製造方法および画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20220131BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20220131BHJP
   C09B 45/14 20060101ALI20220131BHJP
   C09B 45/18 20060101ALI20220131BHJP
   C09B 45/22 20060101ALI20220131BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220131BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
C09B67/20 K
C09B67/22 A
C09B45/14 B
C09B45/18
C09B45/22
G02B5/20
G02F1/1335 505
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019549151
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2018033602
(87)【国際公開番号】W WO2019077912
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2017203733
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】瀧下 大貴
(72)【発明者】
【氏名】尾田 和也
(72)【発明者】
【氏名】室 祐継
(72)【発明者】
【氏名】稲部 陽樹
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0275465(US,A1)
【文献】特開2016-180100(JP,A)
【文献】特開2017-171913(JP,A)
【文献】特開2017-171912(JP,A)
【文献】特開2013-237816(JP,A)
【文献】特開2015-031800(JP,A)
【文献】特開2009-029952(JP,A)
【文献】特開2017-058612(JP,A)
【文献】特開2015-30783(JP,A)
【文献】特開2017-16132(JP,A)
【文献】特開2015-30782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00- 69/10
G02B 5/20- 5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種類以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料と、
重合性化合物と、
溶剤と、を含む着色組成物であり、
前記溶剤は、トルエンと、トルエン以外の溶剤とを含み、
着色組成物中におけるトルエンの含有量が0.1~10質量ppmである、着色組成物;
【化1】
式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、OHまたはNR56であり、
3およびR4はそれぞれ独立して、=Oまたは=NR7であり、
5~R7はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。
【請求項2】
前記金属アゾ顔料は、前記アニオンと、Zn2+およびCu2+を少なくとも含む金属イオンと、前記メラミン化合物とを含む、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
前記金属アゾ顔料中の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびCu2+を合計で95~100モル%含有する、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記金属アゾ顔料中のZn2+とCu2+とのモル比が、Zn2+:Cu2+=199:1~1:15である、請求項2または3に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記金属アゾ顔料における前記メラミン化合物が、下記式(II)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の着色組成物;
【化2】
式中R11~R13は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。
【請求項6】
更に、顔料誘導体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項7】
前記顔料誘導体が、塩基性顔料誘導体である、請求項6に記載の着色組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物は、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーと、エチレン性不飽和結合基を有するポリマーとを含み、
前記エチレン性不飽和結合基を有するモノマーは、分子量が3000未満で、C=C当量が50~1000であり、
前記エチレン性不飽和結合基を有するポリマーは、分子量が3000以上で、C=C当量が100~5000であり、
前記エチレン性不飽和結合基を有するポリマーの含有量が、前記エチレン性不飽和結合基を有するモノマーの100質量部に対して5~500質量部である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項9】
前記重合性化合物は、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーと、エチレン性不飽和結合基を有するポリマーとを含み、
前記エチレン性不飽和結合基を有するモノマーは、分子量が3000未満で、C=C当量が50~1000であり、
前記エチレン性不飽和結合基を有するポリマーは、分子量が3000以上で、C=C当量が100~5000であり、
前記着色組成物は、塩基性顔料誘導体を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和結合基を有するモノマーが式(MO-1)で表される化合物および式(MO-3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項8または9に記載の着色組成物;
【化3】
式中、nは0~14であり、mは1~8であり、一分子内に複数存在するR、Tは、各々同一であっても、異なっていてもよい;
ただし、式(MO-1)および(MO-3)において、複数のRの内の少なくとも1つは、-OC(=O)CH=CH 2 、-OC(=O)C(CH 3 )=CH 2 、-NHC(=O)CH=CH 2 または-NHC(=O)C(CH 3 )=CH 2 である。
【請求項11】
前記トルエン以外の溶剤は、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、および、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項12】
更に、前記金属アゾ顔料以外の着色剤を含み、
前記金属アゾ顔料以外の着色剤は、赤色着色剤およびオレンジ色着色剤から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項13】
前記金属アゾ顔料以外の着色剤は、C.I.Pigment Red177、C.I.Pigment Red264およびC.I.Pigment Orange71から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12に記載の着色組成物。
【請求項14】
固体撮像素子用である、請求項1~13のいずれか1項に着色組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の着色組成物を支持体上に塗布する工程を含む、膜の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の膜の製造方法を含む、カラーフィルタの製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の膜の製造方法を含む、固体撮像素子の製造方法。
【請求項18】
請求項15に記載の膜の製造方法を含む、画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物に関する。更に詳しくは、金属アゾ顔料を含む着色組成物に関する。また、着色組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子および画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。ディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されている。カラーフィルタは、通常、赤、緑、及び青の3原色の画素(着色パターン)を備えており、透過光を3原色へ分解する役割を果たしている。
【0003】
一方、特許文献1~4には、アゾバルビツール酸と、2種類以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料に関する発明が記載されている。特許文献1~4に記載された金属アゾ顔料は、従来のニッケルとアゾバルビツール酸との金属錯体をベースとする金属アゾ顔料に対して、改良された着色性能を有しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-171912号公報
【文献】特開2017-171913号公報
【文献】特開2017-171914号公報
【文献】特開2017-171915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
着色組成物は、長期間保管したのち使用される場合がある。また、着色組成物は、0℃以下の低温環境下で保管されることもある。
【0006】
本発明者らが、アゾバルビツール酸と、2種類以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料について鋭意検討を進めたところ、この金属アゾ顔料を含む着色組成物を低温環境下にて保管した場合、膜に欠陥が生じやすいことが分かった。
【0007】
一方、特許文献1~4には、長期間保管後の着色組成物を用いた場合における欠陥についての検討はなされていない。
【0008】
よって、本発明の目的は、低温環境下で着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥の発生が抑制された膜を製造可能な着色組成物を提供することにある。また、着色組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子および画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らの検討によれば、後述する着色組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種類以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料と、
重合性化合物と、
溶剤と、を含む着色組成物;
【化1】

式中、RおよびRはそれぞれ独立して、OHまたはNRであり、
およびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。
<2> 金属アゾ顔料は、上記アニオンと、Zn2+およびCu2+を少なくとも含む金属イオンと、上記メラミン化合物とを含む、<1>に記載の着色組成物。
<3> 金属アゾ顔料中の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびCu2+を合計で95~100モル%含有する、<2>に記載の着色組成物。
<4> 金属アゾ顔料中のZn2+とCu2+とのモル比が、Zn2+:Cu2+=199:1~1:15である、<2>または<3>に記載の着色組成物。
<5> 金属アゾ顔料におけるメラミン化合物が、式(II)で表される化合物である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の着色組成物;
【化2】

式中R11~R13は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。
<6> 溶剤は、トルエンと、トルエン以外の溶剤とを含み、
着色組成物中におけるトルエンの含有量が0.1~10質量ppmである、<1>~<5>のいずれか1つに記載の着色組成物。
<7> 更に、顔料誘導体を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の着色組成物。
<8> 顔料誘導体が、塩基性顔料誘導体である、<7>に記載の着色組成物。
<9> 固体撮像素子用である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の着色組成物。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の着色組成物を支持体上に塗布する工程を含む、膜の製造方法。
<11> <10>に記載の膜の製造方法を含む、カラーフィルタの製造方法。
<12> <10>に記載の膜の製造方法を含む、固体撮像素子の製造方法。
<13> <10>に記載の膜の製造方法を含む、画像表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温環境下で着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥の発生が抑制された膜を製造可能な着色組成物を提供することができる。また、着色組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子および画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基を包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光を意味するのみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含まれる。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程を意味するだけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。
【0012】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、
式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種類以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料と、
重合性化合物と、
溶剤と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、低温環境下(例えば、-0℃以下、好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、更に好ましくは-15℃以下、より一層好ましくは-20℃以下の低温環境下)にて着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥の発生が抑制された膜を製造することができる。このような効果が得られるメカニズムは、次によるものであると推測する。
上記の金属アゾ顔料は、硬度が低い傾向にあり、例えば分散液を調製する際において、金属アゾ顔料の一部が過剰に微細化されると推測される。その結果、着色組成物の保管時に過剰に微細化された金属アゾ顔料が再凝集すると推測される。また、金属アゾ顔料におけるニッケルイオン(Ni2+)の含有量が少ないか、あるいは金属アゾ顔料がニッケルイオンを含まない場合においては、エネルギー的に不安定な状態であると推測され、金属アゾ顔料がより再凝集し易い傾向にある。また、この金属アゾ顔料は、着色組成物の保管時の温度が低い場合において、再凝集が促進されやすい傾向にある。この理由としては、顔料分散に寄与する成分(例えば分散剤や、表面処理剤等)の運動度が低温により低下して顔料同士の立体反発機能が小さくなり、その結果顔料が再凝集し易くなっていると推測される。特に、0℃以下の低温環境下においては金属アゾ顔料の再凝集が促進されやすい傾向にある。着色組成物中にこのような凝集物が生成されると、着色組成物の保管時において、この凝集物が核となって金属アゾ顔料などの着色組成物に含まれる成分の凝集を促進して凝集物のサイズが成長して粗大化すると推測される。このような粗大化した凝集物などを含む着色組成物を用いて膜を製造すると、乾燥時に溶剤が除去されて無くなるため、これらの凝集物が金属アゾ顔料などの結晶化を促進して欠陥が膜に生じると考えられる。本発明の着色組成物は、金属アゾ顔料の他に更に重合性化合物を含むので、重合性化合物が金属アゾ顔料の顔料活性面(特にアゾ部位)と相互作用して、重合性化合物が金属アゾ顔料の表面に吸着され、着色組成物中にて金属アゾ顔料を安定化させることができる。その結果、着色組成物を低温環境下で長期間保管しても、金属アゾ顔料の再凝集などを抑制できると推測される。このため、本発明の着色組成物によれば、低温環境下で長期間保管した場合であっても、欠陥の発生が抑制された膜を製造することが可能となったと推定される。
【0014】
また、本発明の着色組成物は、溶剤としてトルエンと、トルエン以外の溶剤とを含み、かつ、着色組成物中におけるトルエンの含有量が0.1~10質量ppmであることが好ましい。この態様によれば、着色組成物を用いて得られた膜を高温高湿環境下に曝した場合であっても、異物欠陥の発生を効果的に抑制することができる。このような効果が得られる理由としては以下によるものと推測される。上述のように、上述の金属アゾ顔料は、着色組成物中で再凝集しやすい傾向にある。特に、金属アゾ顔料におけるニッケルイオン(Ni2+)の含有量が少ないか、あるいは金属アゾ顔料がニッケルイオンを含まない場合においては、エネルギー的に不安定な状態であると推測され、金属アゾ顔料がより再凝集し易い傾向にある。重合性化合物を配合することで、保管時における金属アゾ顔料の再凝集などを抑制して、比較的粗大な凝集物の発生を抑制できるものの、ごく微小な凝集物などが生成することがある。このようなごく微小な凝集物は、製膜直後は異物欠陥を生じさせるものではないが、このようなごく微小な凝集物が生成された着色組成物を用いて膜を形成し、得られた膜を高温高湿環境下に曝した場合、膜中に含まれる前述の凝集物が核となって異物欠陥を生じることがある。トルエンはこのエネルギー的に不安定な金属アゾ顔料への親和性が高いと推定され、着色組成物中にトルエンが所定量存在する場合には金属アゾ顔料の凝集を適度にほぐして(解凝集)、膜中で異物発生の原因となりうる凝集物の生成を抑制しているものと考えられる。そして、トルエンの含有量が0.1質量ppm以上であれば、上記の解凝集の効果が十分に得られる。また、金属アゾ顔料が解凝集しすぎると、着色組成物中に不安定な微細粒子が多く存在することとなり、この微細粒子が製膜等のきっかけで凝集が生じて凝集物が多く発生すると推測されるが、トルエンの含有量が10質量ppm以下であれば、上記の解凝集の効果が適度に発現され、金属アゾ顔料の凝集を適度にほぐすことができると推測される。このため、溶剤としてトルエンと、トルエン以外の溶剤とを含み、かつ、着色組成物中におけるトルエンの含有量が0.1~10質量ppmである着色組成物を用いて得られた膜については、高温高湿環境下に曝しても異物欠陥の発生を効果的に抑制することができたと推測される。
【0015】
また、本発明の着色組成物は、顔料誘導体を含むことが好ましい。この態様によれば、温度変化に対して分光の変動が抑制された膜を形成できる。
【0016】
以下、本発明の着色組成物に用いられる各成分について説明する。
【0017】
<<金属アゾ顔料>>
本発明の着色組成物は、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種類以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を含む。
【化3】

式中、RおよびRはそれぞれ独立して、OHまたはNRであり、RおよびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R~Rが表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
【0018】
式(I)において、RおよびRはOHであることが好ましい。また、RおよびRは=Oであることが好ましい。
【0019】
金属アゾ顔料におけるメラミン化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】

式中R11~R13は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tが挙げられ、ヒドロキシ基が好ましい。R11~R13の少なくとも一つは水素原子であることが好ましく、R11~R13の全てが水素原子であることがより好ましい。
【0020】
本発明で用いられる金属アゾ顔料は、式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンの1モル当たり、メラミン化合物(好ましくは式(II)で表される化合物)を0.05~4モル含有することが好ましく、0.5~2.5モル含有することがより好ましく、1.0~2.0モル含有することが更に好ましい。
【0021】
本発明で用いられる金属アゾ顔料の比表面積は20~200m/gであることが好ましい。下限は60m/g以上であることが好ましく、90m/g以上であることがより好ましい。上限は、160m/g以下であることが好ましく、150m/g以下であることがより好ましい。本明細書における金属アゾ顔料の比表面積の値は、BET(Brunauer、EmmettおよびTeller)法に準じてDIN 66131:determination of the specific surface area of solids by gas adsorption(ガス吸着による固体の比表面積の測定)に従って測定した値である。
【0022】
(置換基T)
上述の置換基Tとして、次の基が挙げられる。アルキル基(好ましくは炭素数1~30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0~30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1~30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニル基)、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~30)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1~30)。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0023】
金属アゾ顔料においては、式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと金属イオンとで金属錯体が形成されていることが好ましい。例えば、2価の金属イオンMeの場合は、上記のアニオンと金属イオンとで下記式(Ia)で表される構造の金属錯体を形成することができる。また、金属イオンMeは、式(Ia)の互変異性表記における窒素原子を介して結合していてもよい。
【化5】
【0024】
本発明で用いられる金属アゾ顔料の好ましい態様としては、以下の(1)~(4)の態様の金属アゾ顔料が挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすく、更には、硬度が低く、分散工程における微細化が可能であり、例えば微細なカラーフィルタに求められる色ムラ性能を向上できるという理由から(1)の態様の金属アゾ顔料であることが好ましい。
【0025】
(1) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、Zn2+およびCu2+を少なくとも含む金属イオンと、メラミン化合物とを含む態様の金属アゾ顔料。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびCu2+を合計で95~100モル%含有することが好ましく、98~100モル%含有することがより好ましく、99.9~100モル%含有することが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。また、金属アゾ顔料中のZn2+とCu2+とのモル比は、Zn2+:Cu2+=199:1~1:15であることが好ましく、19:1~1:1であることがより好ましく、9:1~2:1であることが更に好ましい。また、この態様において、金属アゾ顔料は、更にZn2+およびCu2+以外の二価もしくは三価の金属イオン(以下、金属イオンMe1ともいう)を含んでいてもよい。金属イオンMe1としては、Ni2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb2+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、Y3+、Sc3+、Ti2+、Ti3+、Nb3+、Mo2+、Mo3+、V2+、V3+、Zr2+、Zr3+、Cd2+、Cr3+、Pb2+、Ba2+が挙げられ、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+およびY3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましく、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+およびCo3+から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。金属イオンMe1の含有量は、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましい。
【0026】
(2) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、金属イオンと、メラミン化合物とを含み、金属イオンは、Ni2+、Zn2+および少なくとも1種のさらなる金属イオンMe2を含み、金属イオンMe2は、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb2+、Yb3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti2+、Ti3+、Zr2+、Zr3+、V2+、V3+、Nb3+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、Mn2+、Cd2+、およびPb2+から選ばれる少なくとも1種である態様の金属アゾ顔料。金属イオンMe2は、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Y3+、およびMn2+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+、およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびNi2+を合計で75~99.5モル%含有し、かつ、金属イオンMe2を0.5~25モル%含有することが好ましく、Zn2+およびNi2+を合計で78~95モル%含有し、かつ、金属イオンMe2を5~22モル%含有することがより好ましく、Zn2+およびNi2+を合計で82~90モル%含有し、かつ、金属イオンMe2を10~18モル%含有することが更に好ましい。また、金属アゾ顔料中のZn2+とNi2+とのモル比は、Zn2+:Ni2+=90:3~3:90であることが好ましく、80:5~5:80であることがより好ましく、60:33~33:60であることが更に好ましい。
【0027】
(3) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、金属イオンと、メラミン化合物とを含み、金属イオンは、Ni2+、Cu2+および少なくとも1種のさらなる金属イオンMe3を含み、金属イオンMe3がLa3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb2+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、Y3+、Sc3+、Ti2+、Ti3+、Nb3+、Mo2+、Mo3+、V2+、V3+、Zr2+、Zr3+、Cd2+、Cr3+、Pb2+およびBa2+から選ばれる少なくとも1種である態様の金属アゾ顔料。金属イオンMe3は、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、およびY3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+、およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Cu2+およびNi2+を合計で70~99.5モル%含有し、かつ、金属イオンMe3を0.5~30モル%含有することが好ましく、Cu2+およびNi2+を合計で75~95モル%含有し、かつ、金属イオンMe3を5~25モル%含有することがより好ましく、Cu2+およびNi2+を合計で80~90モル%含有し、かつ、金属イオンMe3を10~20モル%含有することが更に好ましい。また、金属アゾ顔料中のCu2+とNi2+とのモル比は、Cu2+:Ni2+=42:1~1:42であることが好ましく、10:1~1:10であることがより好ましく、3:1~1:3であることが更に好ましい。
【0028】
(4) 上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、金属イオンと、メラミン化合物とを含み、金属イオンは、Ni2+と金属イオンMe4aを含み、金属イオンMe4aがLa3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+、Yb2+およびYb3+から選ばれる少なくとも1種である態様の金属アゾ顔料。金属イオンMe4aは、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+およびYb3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+およびHo3+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Ni2+および金属イオンMe4aを合計で95~100モル%含有することが好ましく、98~100モル%含有することがより好ましく、99.9~100モル%含有することが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。また、金属アゾ顔料中のNi2+と金属イオンMe4aとのモル比は、Ni2+:金属イオンMe4a=1:1~19:1であることが好ましく、2:1~4:1であることがより好ましく、2.3:1~3:1であることが更に好ましい。また、この態様において、金属アゾ顔料は、更にNi2+および金属イオンMe4a以外の金属イオン(以下、金属イオンMe4bともいう)を含んでいてもよい。金属イオンMe4bとしては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti2+、Ti3+、Zr2+、Zr3+、V2+、V3+、Nb3+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Al3+およびPb2+が挙げられ、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Y3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Cu2+、Zn2+およびAl3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Sr2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Cu2+、Zn2+およびAl3+から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。また、金属イオンMe4bの含有量は、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましい。
【0029】
本発明で用いられる金属アゾ顔料は、上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物(好ましくは上記式(II)で表される化合物)とで付加体が形成されていることが好ましい。付加体とは、分子集合体を意味すると理解される。これらの分子間の結合は、例えば、分子間相互作用によるものであってもよく、ルイス酸-塩基相互作用によるものであってもよく、配位結合または鎖結合によるものであってもよい。また、付加体は、ゲスト分子がホスト分子を構成する格子に組み込まれている包接化合物(クラスレート)のような構造であっても良い。また、付加体は、複合層間結晶(格子間化合物を含む)のような構造であってもよい。複合層間結晶とは、少なくとも2つの要素からなる化学的な非化学量論的結晶化合物のことである。また、付加体は、2つの物質が共同結晶を形成し、第一の成分の規則的な格子の位置に第二の成分の原子が位置しているような混合置換結晶であってもよい。
【0030】
本発明で用いられる金属アゾ顔料は、物理的混合物であってもよく、化学的複合化合物であってもよい。好ましくは、物理的混合物である。
【0031】
上記の(1)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(1-1)、(1-2)が挙げられる。また、(1)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Zn2+、Cu2+ならびに任意のさらなる金属イオンMe1は、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(1-1)上記アニオンとZn2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体1aと、上記アニオンとCu2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体1bの物理的混合物。
(1-2) (1-1)の物理的混合物において、更に、上記アニオンと、金属イオンMe1とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体1cを含む物理的混合物。
【0032】
上記の(2)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(2-1)が挙げられる。また、(2)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Ni2+、Zn2+および金属イオンMe2は、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(2-1)上記アニオンとNi2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体2aと、上記アニオンとZn2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体2bと、上記アニオンと金属イオンMe2とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体2cを含む物理的混合物。
【0033】
上記の(3)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(3-1)が挙げられる。また、(3)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Ni2+、Cu2+および金属イオンMe3は、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(3-1)上記アニオンとNi2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体3aと、上記アニオンとCu2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体3bと、上記アニオンと金属イオンMe3とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体3cを含む物理的混合物。
【0034】
上記の(4)の態様の金属アゾ顔料の場合における物理的混合物の好ましい例としては、以下の(4-1)、(4-2)が挙げられる。また、(4)の態様の金属アゾ顔料が化学的複合化合物である場合、Ni2+、金属イオンMe4aならびに任意のさらなる金属イオンMe4bは、共通の結晶格子に組み込まれていることが好ましい。
(4-1)上記アニオンとNi2+とで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体4aと、上記アニオンと金属イオンMe4aとで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体4bの物理的混合物。
(4-2) (4-1)の物理的混合物において、更に、上記アニオンと、金属イオンMe4bとで構成される金属アゾ化合物と、メラミン化合物との付加体4cを含む物理的混合物。
【0035】
上記の(1)の態様の金属アゾ顔料は、式(III)またはその互変異性体の化合物を、メラミン化合物(好ましくは式(II)で表される化合物)の存在下で、亜鉛塩および銅塩、ならびに任意で更に、上述した金属イオンMe1の塩と反応させることによって製造することができる。
【0036】
【化6】

式中、XおよびXはそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属イオンであり、XおよびXの少なくとも一方がアルカリ金属イオンである。RおよびRはそれぞれ独立して、OHまたはNRである。RおよびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R~Rについては、式(I)のR~Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。XおよびXが表すアルカリ金属イオンとしては、NaおよびKが好ましい。
【0037】
亜鉛塩の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.05~0.995モルであることが好ましく、0.05~0.5モルであることがより好ましく、0.1~0.3モルであることが更に好ましい。また、銅塩の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.005~0.95モルであることが好ましく、0.49~0.95モルであることがより好ましく、0.7~0.9モルであることが更に好ましい。また、金属イオンMe1の塩の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.05モル以下であることが好ましく、0.01モル以下であることがより好ましい。また、式(III)の化合物1モルに対して、亜鉛塩と銅塩と金属イオンMe1の塩との合計量は1モルであることが好ましい。また、メラミン化合物の使用量は、式(III)またはその互変異性体の化合物の1モルに対して、0.05~4モルであることが好ましく、0.5~2.5モルであることがより好ましく、1.0~2.0モルであることが更に好ましい。
【0038】
また、上記の(1)の態様の金属アゾ顔料は、上述した付加体1aと、付加体1bと、付加体1cとを混合することによって製造することもできる。
【0039】
上記の(2)の態様の金属アゾ顔料、(3)の態様の金属アゾ顔料、および(4)の態様の金属アゾ顔料についても上述した方法等と同様の方法で製造することができる。
【0040】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
本発明の着色組成物において、金属アゾ顔料の含有量は、着色組成物の全固形分に対して1~80質量%であることが好ましい。下限は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上限は、77質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
<<他の着色剤>>
本発明の着色組成物は、上述した金属アゾ顔料以外の着色剤(以下、他の着色剤ともいう)を含有することができる。他の着色剤としては、有彩色着色剤、黒色着色剤などが挙げられる。
【0043】
(有彩色着色剤)
有彩色着色剤としては、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤などが挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。有彩色着色剤は顔料を含むものであることが好ましい。本発明の着色組成物が上述した金属アゾ顔料の他に、更に異種顔料を含むことで、金属アゾ顔料の高温高湿環境下での異物成長を抑制することができる。
【0044】
顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、有機顔料が好ましい。有機顔料としては以下のものが挙げられる。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独で若しくは種々組合せて用いることができる。
【0045】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015-028144号公報、特開2015-34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0046】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子が平均8~12個であり、塩素原子が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/118720公報に記載の化合物が挙げられる。
【0047】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物などが挙げられる。
【0048】
また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化7】
【0049】
上記式中、R11およびR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12およびR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、n11およびn13はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、X12およびX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表し、X12が酸素原子または硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子または硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11およびR13が表す置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられ、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0050】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物も好ましく用いることができる。また、黄色染料として、特開2013-54339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-26228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。
【0051】
また、他の着色剤として色素多量体を用いることもできる。色素多量体は、溶剤に溶解して用いられる染料であることが好ましいが、色素多量体は、粒子を形成していてもよく、色素多量体が粒子である場合は通常溶剤に分散した状態で用いられる。粒子状態の色素多量体は、例えば乳化重合によって得ることができ、特開2015-214682号公報に記載されている化合物および製造方法が具体例として挙げられる。色素多量体は、一分子中に、色素構造を2以上有するものであり、色素構造を3以上有することが好ましい。上限は、特に限定はないが、100以下とすることもできる。一分子中に有する複数の色素構造は、同一の色素構造であってもよく、異なる色素構造であってもよい。色素多量体の重量平均分子量(Mw)は、2000~50000が好ましい。下限は、3000以上がより好ましく、6000以上がさらに好ましい。上限は、30000以下がより好ましく、20000以下がさらに好ましい。色素多量体としては、特開2011-213925号公報、特開2013-041097号公報、特開2015-028144号公報、特開2015-030742号公報等に記載されている化合物を用いることもできる。
【0052】
(黒色着色剤)
黒色着色剤としては、カーボンブラック、金属酸窒化物(チタンブラック等)、金属窒化物(チタンナイトライド等)などの無機黒色着色剤や、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などの有機黒色着色剤が挙げられる。有機黒色着色剤としては、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1-170601号公報、特開平2-34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。ビスベンゾフラノン化合物は、下記式で表される化合物およびこれらの混合物であることが好ましい。
【化8】

式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を表し、aおよびbはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、aが2以上の場合、複数のRは、同一であってもよく、異なってもよく、複数のRは結合して環を形成していてもよく、bが2以上の場合、複数のRは、同一であってもよく、異なってもよく、複数のRは結合して環を形成していてもよい。
【0053】
~Rが表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OR301、-COR302、-COOR303、-OCOR304、-NR305306、-NHCOR307、-CONR308309、-NHCONR310311、-NHCOOR312、-SR313、-SO314、-SOOR315、-NHSO316または-SONR317318を表し、R301~R318は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0054】
ビスベンゾフラノン化合物の詳細については、特表2010-534726号公報の段落番号0014~0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0055】
本発明の着色組成物が他の着色剤を含む場合、上述した金属アゾ顔料と他の着色剤との組み合わせで黒色が形成されていてもよい。
【0056】
本発明の着色組成物が他の着色剤を含有する場合、他の着色剤の含有量は、着色組成物の全固形分中5~75質量%であることが好ましい。下限は、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限は、72質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。また、他の着色剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して5~2000質量部であることが好ましい。下限は、8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、1700質量部以下であることが好ましく、1500質量部以下であることがより好ましい。また、上述した金属アゾ顔料と他の着色剤との合計の含有量は着色組成物の全固形分中10~80質量%であることが好ましい。下限は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。上限は、77質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
他の着色剤として黄色着色剤を含むものを用いた場合は、他の着色剤としての黄色着色剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して5~95質量部であることが好ましい。下限は、8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、92質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。この態様によれば、黄色画素用の着色組成物として好ましく用いることができる。更には、異種顔料をさらに含むことで、金属アゾ顔料の高温高湿環境下での異物成長を抑制することもできる。黄色着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow62、83、74、100、129、138、139、150、168、169、183、185、213などが好ましく用いられる。
【0058】
他の着色剤として緑色着色剤を含むものを用いた場合は、他の着色剤としての緑色着色剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して5~95質量部であることが好ましい。下限は、8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、92質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。この態様によれば、緑色画素用の着色組成物として好ましく用いることができる。更には、異種顔料をさらに含むことで、金属アゾ顔料の高温高湿環境下での異物成長を抑制することもできる。緑色着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Green7、36、58、59などが好ましく用いられる。
【0059】
他の着色剤として赤色着色剤を含むものを用いた場合は、他の着色剤としての赤色着色剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して5~95質量部であることが好ましい。下限は、8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、92質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。この態様によれば、赤色画素用の着色組成物として好ましく用いることができる。更には、異種顔料をさらに含むことで、金属アゾ顔料の高温高湿環境下での異物成長を抑制することもできる。赤色着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red122、177、202、209、254、264、269などが好ましく用いられる。
【0060】
他の着色剤としてオレンジ色着色剤を含むものを用いた場合は、他の着色剤としてのオレンジ色着色剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して5~95質量部であることが好ましい。下限は、8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、92質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。この態様によれば、赤色画素用の着色組成物として好ましく用いることができる。更には、異種顔料をさらに含むことで、金属アゾ顔料の高温高湿環境下での異物成長を抑制することもできる。オレンジ色着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Orange38、71などが好ましく用いられる。
【0061】
<<重合性化合物>>
本発明の着色組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。例えば、エチレン性不飽和結合基を有する化合物や、環状エーテル基を有する化合物等が挙げられ、エチレン性不飽和結合基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0062】
重合性化合物は、モノマーであってもよく、ポリマーなどの樹脂であってもよい。モノマータイプの重合性化合物と、樹脂タイプの重合性化合物とを併用することもできる。
【0063】
(エチレン性不飽和結合基を有する化合物)
本発明において、重合性化合物として用いられるエチレン性不飽和結合基を有する化合物としては、モノマーであってもよく、ポリマーであってもよい。以下、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーを重合性モノマーともいう。また、エチレン性不飽和結合基を有するポリマーを重合性ポリマーともいう。
【0064】
重合性モノマーの分子量は、3000未満であることが好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、重合性モノマーは、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-29760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0065】
重合性モノマーのC=C当量(重合性モノマーの分子量[g/mol]/重合性モノマーに含まれるエチレン性不飽和結合基の数)は、50~1000であることが好ましい。下限は、60以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。上限は、700以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、200以下であることが更に好ましく、150以下であることがより一層好ましく、140以下であることが特に好ましい。重合性モノマーのC=C当量が上記範囲であれば、顔料活性面に効果的に吸着でき、金属アゾ顔料の凝集をより顕著に抑制できる。
【0066】
重合性モノマーとして、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)、NKエステルA-TMMT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD RP-1040、DPCA-20(日本化薬(株)製)などが挙げられる。また、重合性化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシ変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることも好ましい。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0067】
重合性モノマーとして、酸基を有する重合性モノマーを用いることも好ましい。酸基を有する重合性モノマーを用いることで、現像時に未露光部の着色組成物層が除去されやすく、現像残渣の発生を効果的に抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性モノマーの市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性モノマーの酸価は、0.1~40mgKOH/gであることが好ましく、5~30mgKOH/gがより好ましい。重合性モノマーの酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、より優れた現像性が得られる。重合性モノマーの酸価が40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0068】
重合性モノマーとして、下記式(MO-1)~(MO-6)で表される化合物を用いることも好ましい。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0069】
【化9】
【0070】
上記の式において、nは0~14であり、mは1~8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記式(MO-1)~(MO-6)で表される化合物の各々において、複数のRの内の少なくとも1つは、-OC(=O)CH=CH、-OC(=O)C(CH)=CH、-NHC(=O)CH=CHまたは-NHC(=O)C(CH)=CHを表す。上記式(MO-1)~(MO-6)で表される重合性化合物の具体例としては、特開2007-269779号公報の段落0248~0251に記載されている化合物が挙げられる。
【0071】
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する化合物を用いることも好ましい。カプロラクトン構造を有する化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されず、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸及びε-カプロラクトンとをエステル化することにより得られる、ε-カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。カプロラクトン構造を有する化合物は、下記式(Z-1)で表される化合物が好ましい。
【0072】
【化10】
【0073】
式(Z-1)中、6個のRは全てが式(Z-2)で表される基であるか、又は6個のRのうち1~5個が式(Z-2)で表される基であり、残余が式(Z-3)で表される基、酸基またはヒドロキシ基である。
【0074】
【化11】

式(Z-2)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。
【0075】
【化12】

式(Z-3)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。
【0076】
重合性モノマーとして、式(Z-4)又は(Z-5)で表される化合物を用いることもできる。
【0077】
【化13】
【0078】
式(Z-4)及び(Z-5)中、Eは、各々独立に、-((CHCHO)-、又は-((CHCH(CH)O)-を表し、yは、各々独立に0~10の整数を表し、Xは、各々独立に、(メタ)アクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。式(Z-4)中、(メタ)アクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0~10の整数を表し、各mの合計は0~40の整数である。式(Z-5)中、(メタ)アクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0~10の整数を表し、各nの合計は0~60の整数である。
【0079】
式(Z-4)中、mは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。また、各mの合計は、2~40の整数が好ましく、2~16の整数がより好ましく、4~8の整数が特に好ましい。
式(Z-5)中、nは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。また、各nの合計は、3~60の整数が好ましく、3~24の整数がより好ましく、6~12の整数が特に好ましい。
また、式(Z-4)又は式(Z-5)中の-((CHCHO)-又は-((CHCH(CH)O)-は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0080】
重合性モノマーとして、アルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーは、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、エチレンオキシ基を有する化合物であることがより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性モノマーの市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0081】
重合性モノマーとして、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物を用いることも好ましい。市販品としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
また、重合性モノマーとしては、8UH-1006、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
また、重合性モノマーとしては、特開2017-48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
【0082】
重合性ポリマーの重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、7000以上であることが更に好ましく、10000以上であることが特に好ましい。また、重合性ポリマーの重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。
【0083】
重合性ポリマーのC=C当量(重合性ポリマーの分子量/重合性ポリマーに含まれるエチレン性不飽和結合基の数)は、100~5000であることが好ましい。下限は、150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。上限は、4500以下であることが好ましく、4000以下であることがより好ましい。重合性ポリマーのC=C当量が上記範囲であれば、顔料活性面に効果的に吸着でき、金属アゾ顔料の凝集をより顕著に抑制できる。
【0084】
重合性ポリマーは、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、下記式(A-1-1)で表される繰り返し単位を含むことがより好ましい。また、重合性ポリマーは、エチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位を重合性ポリマーの全繰り返し単位中10モル%以上含有することが好ましく、10~80モル%含有することがより好ましく、20~70モル%含有することが更に好ましい。
【化14】

式(A-1-1)において、Xは繰り返し単位の主鎖を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Yはエチレン性不飽和結合基を表す。
【0085】
式(A-1-1)において、Xが表す繰り返し単位の主鎖としては、特に限定はない。公知の重合可能なモノマーから形成される連結基であれば特に制限ない。例えば、ポリ(メタ)アクリル系連結基、ポリアルキレンイミン系連結基、ポリエステル系連結基、ポリウレタン系連結基、ポリウレア系連結基、ポリアミド系連結基、ポリエーテル系連結基、ポリスチレン系連結基などが挙げられ、原料素材の入手性や製造適性の観点からポリ(メタ)アクリル系連結基、ポリアルキレンイミン系連結基が好ましく、ポリ(メタ)アクリル系連結基がより好ましい。
【0086】
式(A-1-1)において、Lが表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
【0087】
式(A-1-1)において、Yが表すエチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
【0088】
重合性ポリマーは、更にグラフト鎖を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。重合性ポリマーがグラフト鎖を有する繰り返し単位を含むことにより、グラフト鎖による立体障害によって金属アゾ顔料などの凝集などをより効果的に抑制できる。重合性ポリマーは、グラフト鎖を有する繰り返し単位を、重合性ポリマーの全繰り返し単位中1.0~60モル%含有することが好ましく、1.5~50モル%含有することがより好ましい。グラフト鎖を有する繰り返し単位を含む重合性ポリマーは分散剤として好ましく用いられる。
【0089】
本発明において、グラフト鎖とは、繰り返し単位の主鎖から枝分かれして伸びるポリマー鎖のことを意味する。グラフト鎖の長さについては特に制限されないが、グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり、金属アゾ顔料などの分散性を高めることができる。グラフト鎖としては、水素原子を除いた原子数が40~10000であることが好ましく、水素原子を除いた原子数が50~2000であることがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60~500であることが更に好ましい。
【0090】
重合性ポリマーが有するグラフト鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、ポリ(メタ)アクリル構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造およびポリアミド構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、ポリエステル構造、ポリエーテル構造およびポリ(メタ)アクリル構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことがより好ましく、ポリエステル構造を含むことが更に好ましい。ポリエステル構造としては、下記の式(G-1)、式(G-4)または式(G-5)で表される構造が挙げられる。また、ポリエーテル構造としては、下記の式(G-2)で表される構造が挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル構造としては、下記の式(G-3)で表される構造が挙げられる。
【化15】

上記式において、RG1およびRG2は、それぞれアルキレン基を表す。RG1およびRG2で表されるアルキレン基としては特に制限されないが、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素数2~16の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、炭素数3~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が更に好ましい。
上記式において、RG3は、水素原子またはメチル基を表す。
上記式において、QG1は、-O-または-NH-を表し、LG1は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
G4は、水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。
【0091】
例えば、グラフト鎖がポリエステル構造を含む場合、1種類のポリエステル構造のみを含んでいてもよく、RG1が互いに異なるポリエステル構造を2種類以上含んでいてもよい。また、グラフト鎖がポリエーテル構造を含む場合、1種類のポリエーテル構造のみを含んでいてもよく、RG2が互いに異なるポリエーテル構造を2種類以上含んでいてもよい。また、グラフト鎖がポリ(メタ)アクリル構造を含む場合、1種類のポリ(メタ)アクリル構造のみを含んでいてもよく、RG3、QG1、LG1およびRG4から選ばれる少なくとも1種が互いに異なるポリ(メタ)アクリル構造を2種類以上含んでいてもよい。
【0092】
グラフト鎖の末端構造としては、特に限定されない。水素原子であってもよく、置換基であってもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、色材などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
【0093】
本発明において、グラフト鎖としては、下記式(G-1a)、式(G-2a)、式(G-3a)、式(G-4a)または式(G-5a)で表される構造であることが好ましい。
【化16】
【0094】
上記式において、RG1およびRG2は、それぞれアルキレン基を表し、RG3は、水素原子またはメチル基を表し、QG1は、-O-または-NH-を表し、LG1は、単結合または2価の連結基を表し、RG4は、水素原子または置換基を表し、W100は水素原子または置換基を表す。n1~n5は、それぞれ独立して2以上の整数を表す。RG1~RG4、QG1、LG1については、式(G-1)~(G-5)で説明したRG1~RG4、QG1、LG1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0095】
式(G-1a)~(G-5a)において、W100は、置換基であることが好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、色材などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
【0096】
式(G-1a)~(G-5a)において、n1~n5は、それぞれ独立して2以上の整数を表し、3以上であることがより好ましく、5以上であることが更に好ましい。上限は例えば、100以下が好ましく、80以下がより好ましく、60以下が更に好ましい。
【0097】
なお、式(G-1a)において、各繰り返し単位中のRG1同士は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、RG1が異なる繰り返し単位を2種以上含む場合においては、各繰り返し単位の配列は特に限定は無く、ランダム、交互、及び、ブロックのいずれであってもよい。式(G-2a)~式(G-5a)においても同様である。
【0098】
グラフト鎖を有する繰り返し単位としては、下記式(A-1-2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化17】

式(A-1-2)において、Xは繰り返し単位の主鎖を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Wはグラフト鎖を表す。
【0099】
式(A-1-2)におけるXが表す繰り返し単位の主鎖としては、式(A-1-1)のXで説明した構造が挙げられ、好ましい範囲も同様である。式(A-1-2)におけるLが表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。式(A-1-2)におけるWが表すグラフト鎖としては、上述したグラフト鎖が挙げられる。
【0100】
重合性ポリマーがグラフト鎖を有する繰り返し単位を含む場合、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量(Mw)は、1000以上であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましく、1000~7500であることが更に好ましい。なお、本発明において、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量は、同繰り返し単位の重合に用いた原料モノマーの重量平均分子量から算出した値である。例えば、グラフト鎖を有する繰り返し単位は、マクロモノマーを重合することで形成できる。ここで、マクロモノマーとは、ポリマー末端に重合性基が導入された高分子化合物を意味する。マクロモノマーを用いてグラフト鎖を有する繰り返し単位を形成した場合においては、マクロモノマーの重量平均分子量がグラフト鎖を有する繰り返し単位に該当する。
【0101】
重合性ポリマーは、更に酸基を有する繰り返し単位を含むことも好ましい。重合性ポリマーが更に酸基を有する繰り返し単位を含むことで、金属アゾ顔料などの分散性をより向上できる。更には、現像性を向上させることもできる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。
【0102】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記式(A-1-3)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化18】

式(A-1-3)において、Xは繰り返し単位の主鎖を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Aは酸基を表す。
【0103】
式(A-1-3)におけるXが表す繰り返し単位の主鎖としては、式(A-1-1)のXで説明した構造が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
式(A-1-3)におけるLが表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~12のアルケニレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。また、アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。
式(A-1-3)におけるAが表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。
【0104】
重合性ポリマーの酸価は、20~150mgKOH/gであることが好ましい。上限は、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。下限は、30mgKOH/g以上であることが好ましく、35mgKOH/g以上であることがより好ましい。重合性ポリマーの酸価が上記範囲であれば、特に優れた分散性が得られやすい。さらには、優れた現像性が得られやすい。
【0105】
また、重合性ポリマーは、他の繰り返し単位として、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことができる。
【0106】
【化19】
【0107】
式(ED1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化20】

式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0108】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0109】
重合性ポリマーの具体例としては以下が挙げられる。
【化21】
【0110】
(環状エーテル基を有する化合物)
本発明において、重合性化合物として用いられる環状エーテル基を有する化合物としては、1分子内に環状エーテル基を2個以上有する化合物が好ましく用いられる。環状エーテル基を有する化合物に含まれる環状エーテル基は、100個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、5個以下であることが更に好ましい。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられ、エポキシ基であることが好ましい。すなわち、環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)であることが好ましい。
【0111】
エポキシ化合物のエポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)は、500以下であることが好ましく、100~400であることがより好ましく、100~300であることがさらに好ましい。
【0112】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)であってもよい。エポキシ化合物の分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)の上限は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。
【0113】
エポキシ化合物は、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1007、jER1009、jER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等であり、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、jER806、jER807、jER4004、jER4005、jER4007、jER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE-21、RE-602S(以上、日本化薬(株)製)等であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、jER152、jER154、jER157S70、jER157S65(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N-740、EPICLON N-770、EPICLON N-775(以上、DIC(株)製)等であり、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020(日本化薬(株)製)等であり、脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP-4080S、同EP-4085S、同EP-4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等である。その他にも、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、jER1031S(三菱化学(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0114】
本発明の着色組成物において、重合性化合物の含有量は、着色組成物の全固形分中5~50質量%であることが好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、重合性化合物としてエチレン性不飽和結合基を有する化合物を用いる場合、エチレン性不飽和結合基を有する化合物の含有量は、着色組成物の全固形分中5~50質量%であることが好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0115】
また、重合性化合物の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、12質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることが更に好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。上限は、500質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましく、200質量部以下であることが更に好ましく、100質量部以下であることが特に好ましい。金属アゾ顔料と重合性化合物の割合が上記範囲であれば、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0116】
また、本発明の着色組成物に含まれる重合性化合物は、上述した重合性モノマーおよび重合性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有するものであることが好ましく、フォトリソグラフィ法によるパターン形成性の観点から上述した重合性モノマーを少なくとも含むものであることがより好ましく、上述した重合性モノマーと重合性ポリマーとを含むものであることが更に好ましい。また、重合性モノマーと重合性ポリマーとを併用する場合、重合性ポリマーの含有量は、重合性モノマーの100質量部に対して5~500質量部であることが好ましい。下限は8質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。上限は、450質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましい。
【0117】
<<他の樹脂>>
本発明の着色組成物は、重合性基を含まない樹脂(以下、他の樹脂ともいう)をさらに含有することができる。他の樹脂は、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0118】
他の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0119】
他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0120】
他の樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0121】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミドモノマーを用いることもできる。これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0122】
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0123】
酸基を有する樹脂は、上述したエーテルダイマーを含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
【0124】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化22】

式(X)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0125】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0126】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0127】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。
【化23】
【0128】
本発明の着色組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0129】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0130】
分散剤として用いる樹脂は、側鎖にグラフト鎖を有する繰り返し単位を含む樹脂(以下、グラフト樹脂ともいう)であることが好ましい。この態様によれば、金属アゾ顔料などの分散性をより向上させることができる。ここで、グラフト鎖とは、繰り返し単位の主鎖から枝分かれして伸びるポリマー鎖のことを意味する。グラフト鎖の長さについては特に制限されないが、グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり、顔料などの分散性を高めることができる。グラフト鎖においては、水素原子を除いた原子数が40~10000であることが好ましく、水素原子を除いた原子数が50~2000であることがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60~500であることが更に好ましい。
【0131】
グラフト鎖は、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリ(メタ)アクリル鎖、ポリウレタン鎖、ポリウレア鎖およびポリアミド鎖から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖およびポリ(メタ)アクリル鎖から選ばれる少なくとも1種の構造を含むことがより好ましく、ポリエステル鎖を含むことが更に好ましい。
【0132】
グラフト鎖の末端構造としては、特に限定されない。水素原子であってもよく、置換基であってもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、金属アゾ顔料などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
【0133】
グラフト樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。また、グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化24】
【0134】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系樹脂であることも好ましい。オリゴイミン系樹脂としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子としては、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系樹脂については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、本明細書には上記内容が組み込まれる。オリゴイミン系樹脂の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。また、特開2012-255128号公報の段落番号0168~0174に記載の樹脂を用いることができる。
【化25】
【0135】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDisperbykシリーズ(例えば、Disperbyk-111など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂や重合性ポリマーなどを分散剤として用いることもできる。なお、上記分散剤として説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0136】
本発明の着色組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、本発明の着色組成物の全固形分中1~50質量%であることが好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。下限は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
また、本発明の着色組成物は、他の樹脂を実質的に含まないこともできる。本発明の着色組成物が他の樹脂を実質的に含まない場合とは、本発明の着色組成物の全固形分中における他の樹脂の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
また、上述したエチレン性不飽和結合基を有する化合物と他の樹脂との合計の含有量は、本発明の着色組成物の全固形分中5~50質量%であることが好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0137】
<<溶剤>>
本発明の着色組成物は、溶剤を含有する。溶剤は有機溶剤が好ましい。溶剤は、各成分の溶解性や着色組成物の塗布性を満足すれば特に制限はない。
【0138】
有機溶剤の例としては、例えば、以下の有機溶剤が挙げられる。エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
本発明においては、溶剤として金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましい。溶剤中の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて金属含有量が質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0140】
溶剤には、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0141】
本発明で用いられる有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0142】
溶剤の含有量は、着色組成物の全固形分が5~40質量%となる量であることが好ましい。上限は35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましい。
【0143】
また、本発明の着色組成物は、トルエンとトルエン以外の溶剤とを含み、かつ、トルエンの含有量が0.1~10質量ppmであることが好ましい。トルエンの含有量の上限は、9質量ppm以下であることが好ましく、8質量ppm以下であることがより好ましく、7質量ppm以下であることが更に好ましい。下限は、0.2質量ppm以上であることが好ましく、0.3質量ppm以上であることがより好ましく、0.4質量ppm以上であることが更に好ましい。
トルエン以外の溶剤としては、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドおよび3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0144】
<<光重合開始剤>>
本発明の着色組成物は、更に光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0145】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光重合開始剤としてオキシム化合物を用いることで優れた硬化性が得られる。更には、低温環境下で着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥がより抑制された膜を製造することができる。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測される。本発明の着色組成物に含まれる金属アゾ顔料は、2種類以上の金属イオンを含むが、金属イオンの種類により、上述したアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物(金属錯体)の配座が異なる。例えば、Cu2+の場合は平面配座の金属錯体を形成し、Zn2+の場合は正八面体配座の金属錯体を形成する。このため、溶剤などを含む着色組成物中において、上述した金属アゾ顔料は、会合し難く不安定な状態で存在していると推測され、着色組成物の保管時に金属アゾ顔料が凝集し易い傾向にあると推測される。また、特に、金属アゾ顔料におけるニッケルイオン(Ni2+)の含有量が少ないか、あるいは金属アゾ顔料がニッケルイオンを含まない場合においては、エネルギー的に不安定であると推測され、着色組成物の保管時に金属アゾ顔料がより凝集し易い傾向にあると推測される。
しかしながら、オキシム化合物を配合することでオキシム化合物が金属アゾ顔料に対して配位してキレート剤として作用すると推測され、その結果、金属アゾ顔料を安定化させることができ、金属アゾ顔料の凝集などをより効果的に抑制できると推測される。そのため、低温環境下で着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥がより抑制された膜を製造することができると推測される。
光重合開始剤については、特開2014-130173号公報の段落番号0065~0111、特開2013-29760号公報の段落番号0274~0306の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0146】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0147】
オキシム化合物としては、例えば、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、例えば、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、および2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)も好適に用いられる。また、TRONLY TR-PBG-304、TRONLY TR-PBG-309、TRONLY TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司(CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD)製)、アデカアークルズNCI-930、アデカオプトマーN-1919(特開2012-14052号公報の光重合開始剤2)(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0148】
また上記以外のオキシム化合物として、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報および米国特許公開2009-292039号に記載の化合物、国際公開WO2009/131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに極大吸収を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物などを用いてもよい。
【0149】
本発明は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0150】
本発明は、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載の化合物OE-01~OE-75が挙げられる。
【0151】
本発明は、光重合開始剤として、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開WO2013/083505号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0152】
本発明は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0153】
本発明は、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載の化合物、特許第4223071号公報の段落番号0007~0025に記載の化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0154】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0155】
【化26】

【化27】
【0156】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物は、365nmおよび405nmの吸光度が高い化合物が好ましい。
【0157】
オキシム化合物の365nmまたは405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であることが好ましく、2,000~300,000であることがより好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0158】
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光重合開始剤を用いてもよい。そのような光重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016-532675号公報の段落番号0417~0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1~7などが挙げられる。
【0159】
本発明の着色組成物が光重合開始剤を含有する場合、光重合開始剤の含有量は、着色組成物の全固形分中0.1~30質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して1~200質量部であることが好ましい。下限は、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。上限は、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
また、光重合開始剤としてオキシム化合物を用いた場合、オキシム化合物の含有量は、上述した金属アゾ顔料の100質量部に対して1~200質量部であることが好ましい。下限は、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。上限は、100質量部以上であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。この態様によれば、上述した本発明の効果がより顕著に得られる傾向にある。
本発明の着色組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0160】
<<顔料誘導体>>
本発明の着色組成物は、更に顔料誘導体を含有することが好ましい。この態様によれば、温度変化に対して分光の変動が抑制された膜を形成できる。顔料誘導体としては、顔料の一部が、酸基、塩基性基又はフタルイミド基などで置換された構造を有する化合物が挙げられる。例えば、顔料誘導体としては、酸性顔料誘導体、塩基性顔料誘導体および中性顔料誘導体などが挙げられ、塩基性顔料誘導体が好ましい。
【0161】
本発明において、顔料誘導体は下記式(syn1)で表される化合物であることが好ましい。
【化28】

式(syn1)中、Pは色素構造を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基、塩基性基またはフタルイミド基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なってもよい。
【0162】
式(syn1)におけるPが表す色素構造としては、キノリン系色素構造、ベンゾイミダゾロン系色素構造、イソインドリン系色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、アゾ系色素構造、フタロシアニン系色素構造、アントラキノン系色素構造、キナクリドン系色素構造、ジオキサジン系色素構造、ペリレン系色素構造、ペリノン系色素構造、チオジンインジゴ系色素構造、イソインドリノン系色素構造およびキノフタロン系色素構造などが挙げられ、アゾ系色素構造およびキノリン系色素構造が好ましい。
【0163】
式(syn1)において、Lは単結合または連結基を表し、連結基を表すことが好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、含窒素複素環基、-O-、-S-、-NR’-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO-もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられ、アルキレン基またはアルキレン基を含む基であることが好ましい。R’は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Lが3価以上の連結基の場合は、前述の2価の連結基から水素原子を1個以上除いた基が挙げられる。
アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。
アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
含窒素複素環基は、5員環または6員環が好ましい。また、含窒素複素環基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がより好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環がさらに好ましい。含窒素複素環基に含まれる窒素原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。含窒素複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。窒素原子以外のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子が例示される。窒素原子以外のヘテロ原子の数は0~3が好ましく、0~1がより好ましい。含窒素複素環基としては、ピペラジン環基、ピロリジン環基、ピロール環基、ピペリジン環基、ピリジン環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ピラジン環基、モルホリン環基、チアジン環基、インドール環基、イソインドール環基、ベンズイミダゾール環基、プリン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、キノキサリン環基、シンノリン環基、カルバゾール環基および下記式(L-1)~(L-7)で表される基が挙げられる。
【化29】

式中の*は連結手を表す。Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した置換基Tが挙げられる。
【0164】
式(syn1)中、Xは、酸基、塩基性基またはフタルイミド基を表す。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基等が挙げられる。塩基性基としては、下記の式(X-3)~(X-9)で表される基が挙げられる。フタルイミド基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した酸基、塩基性基等が挙げられる。また、上述した置換基Tであってもよい。置換基Tは、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【化30】

式(X-3)~(X-9)中、*は連結手を表し、R100~R106は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R100とR101は互いに連結して環を形成していてもよい。
【0165】
100~R106が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれであってもよい。直鎖のアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8がさらに好ましい。分岐のアルキル基の炭素数は、3~20が好ましく、3~12がより好ましく、3~8がさらに好ましい。環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。環状のアルキル基の炭素数は、3~20が好ましく、4~10がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
100~R106が表すアルケニル基の炭素数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
100~R106が表すアリール基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
100とR101は互いに連結して環を形成していてもよい。環は、脂環であってもよく、芳香族環であってもよい。環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。R100とR101が結合して環を形成する場合の連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、2価の脂肪族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基が挙げられる。R100とR101は環を形成していないことが好ましい。
100およびR101は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。
【0166】
式(syn1)において、mは1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
式(syn1)において、nは1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0167】
顔料誘導体は、式(syn2)で表される化合物が好ましい。
【化31】

式中、Rpは、アルキル基またはアリール基を表し、
Rpは、単結合、-NR-、-CO-、-CO-、-SO-、-O-、-S-またはこれらの組み合わせからなる基を表し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
は単結合、または、(t+1)価の連結基を表し、
は、単結合、-NR-、-CO-、-CO-、-SO-、-O-、-S-またはこれらの組み合わせからなる基を表し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、
は、単結合、アルキレン基、または、アリーレン基を表し、
は、酸基、塩基性基またはフタルイミド基を表す。
tは1~5の整数を表す;
【0168】
Rpは、メチル基またはフェニル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
Rpは、単結合、-NR-、-CO-、-CO-、-SO-、-O-、-S-またはこれらの組み合わせからなる基を表し、Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rが表すアルキル基は、直鎖、分岐、環状が挙げられ、直鎖または分岐が好ましい。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~5がより好ましい。Rが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。Rは水素原子が好ましい。Rpは、-NRCO-、-CONR-、-SONR-または-NRSO-が好ましく、-NRCO-または-CONR-がより好ましい。
【0169】
が表す(t+1)価の連結基としては、式(syn1)のLで説明した連結基が挙げられ、下記式(PA-4)~(PA-9)で表される連結基が好ましい。*はRpおよびCとの連結部を表す。
【0170】
【化32】
【0171】
は、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-SONR-、または、-NRSO-が好ましく、-NR-、-NRCO-または-CONR-がより好ましい。Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rが表すアルキル基およびアリール基の好ましい範囲は、上述した範囲と同義である。Rは水素原子が好ましい。
【0172】
は、単結合、アルキレン基、または、アリーレン基を表し、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。
【0173】
は、酸基、塩基性基またはフタルイミド基を表す。酸基、塩基性基については、式(syn1)のXで説明したものが挙げられる。Eは、塩基性基であることが好ましく、式(X-3)で表される基であることがより好ましい。
【0174】
tは、1または2が好ましく、2がより好ましい。
【0175】
顔料誘導体の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。また、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平1-217077号公報、特開平3-9961号公報、特開平3-26767号公報、特開平3-153780号公報、特開平3-45662号公報、特開平4-285669号公報、特開平6-145546号公報、特開平6-212088号公報、特開平6-240158号公報、特開平10-30063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086~0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063~0094、国際公開WO2016/035695号公報の段落番号0053に記載の化合物、特開2011-38061号公報の段落番号0027~0031に記載された化合物、特開2010-181812号公報の段落番号0036に記載された化合物、特開2004-258134号公報の段落番号0027~0035に記載された化合物、国際公開WO2015/019936号公報の段落番号0134~0138、0160に記載された化合物、国際公開WO2015/019819号公報の段落番号0045~0056、0078に記載された化合物、国際公開WO2015/045790号公報の段落番号0123~0145に記載された化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0176】
【化33】
【0177】
本発明の着色組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、着色組成物に含まれる顔料の100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、顔料誘導体の含有量は、金属アゾ顔料100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0178】
<<硬化促進剤>>
本発明の着色組成物は、パターンの硬度を向上させる目的や、硬化温度を下げる目的で、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、チオール化合物などが挙げられる。
【0179】
チオール化合物としては、分子内に2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物などが挙げられる。多官能チオール化合物は、安定性、臭気、解像性、現像性、密着性等の改良を目的として添加してもよい。多官能チオール化合物は、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、下記式(T1)で表される構造を有する化合物であることがより好ましい。
式(T1)
【化34】

式(T1)中、nは2~4の整数を表し、Lは2~4価の連結基を表す。
【0180】
上記式(T1)において、Lは炭素数2~12の脂肪族基であることが好ましい。上記式(T1)において、nが2であり、Lが炭素数2~12のアルキレン基であることがより好ましい。多官能チオール化合物の具体例としては、下記の構造式(T2)~(T4)で表される化合物が挙げられ、式(T2)で表される化合物が好ましい。チオール化合物は1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
【化35】
【0182】
また、硬化促進剤は、メチロール系化合物(例えば特開2015-34963号公報の段落番号0246において、架橋剤として例示されている化合物)、アミン類、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物(以上、例えば特開2013-41165号公報の段落番号0186に記載の硬化剤)、塩基発生剤(例えば、特開2014-55114号公報に記載のイオン性化合物)、イソシアネート化合物(例えば、特開2012-150180号公報の段落番号0071に記載の化合物)、アルコキシシラン化合物(例えば、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物)、オニウム塩化合物(例えば、特開2015-34963号公報の段落番号0216に酸発生剤として例示されている化合物、特開2009-180949号公報に記載の化合物)などを用いることもできる。
【0183】
本発明の着色組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、着色組成物の全固形分中0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。
【0184】
<<界面活性剤>>
本発明の着色組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用でき、塗布性をより向上できるという理由からフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0185】
本発明の着色組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性が向上し、塗布厚の均一性をより改善することができる。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する着色組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、塗布膜表面の界面張力が低下して、乾燥の均一性が向上する。このため、塗布ムラの少ない膜形成をより好適に行うことができる。
【0186】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましく、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率が上記範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、着色組成物中における溶解性も良好である。
【0187】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の化合物を用いることもできる。
【0188】
フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0189】
フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0190】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【化36】

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。
【0191】
フッ素系界面活性剤として、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718-K、RS-72-K等が挙げられる。
【0192】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレートおよびプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0193】
カチオン系界面活性剤としては、KP-341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0194】
アニオン系界面活性剤としては、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0195】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0196】
界面活性剤の含有量は着色組成物の全固形分中、0.001~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。下限は、0.05質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。2種類以上含む場合は合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0197】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の着色組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-68814号公報の段落番号0317~0334の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。
【化37】
【0198】
本発明の着色組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、着色組成物の全固形分中、0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。また、紫外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。紫外線吸収剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0199】
<<シランカップリング剤>>
本発明の着色組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応および/または縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、スチレン基、メタクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、および、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の基と、アルコキシ基とを有するシラン化合物が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-602)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-603)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-602)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-503)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-403)等が挙げられる。シランカップリング剤の詳細については、特開2013-254047号公報の段落番号0155~0158の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0200】
本発明の着色組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、着色組成物の全固形分中、0.001~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。本発明の着色組成物は、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。シランカップリング剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0201】
<<重合禁止剤>>
本発明の着色組成物は、重合禁止剤を含有することが好ましい。本発明の着色組成物が重合禁止剤を含有することにより、低温環境下で着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥がより抑制された膜を製造することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、以下によるものであると推測される。すなわち、本発明の着色組成物に含まれる金属アゾ顔料は、2種類以上の金属イオンを含むので、着色組成物の保管時において、上述したアニオンと金属イオンとで構成される金属アゾ化合物同士で金属交換が生じて析出物が生じると推測される。しかし、重合禁止剤を含有させることにより、金属アゾ化合物の活性化度を低下させて金属アゾ化合物同士で金属交換が生じにくくなると推測され、その結果、上述した効果が得られたと推測される。
【0202】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルなどが挙げられる。
本発明の着色組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、着色組成物中、0.0001~1質量%が好ましい。下限は、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましい。上限は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。本発明の着色組成物は重合禁止剤を1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。重合禁止剤を2種類以上含む場合はそれらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0203】
<<その他添加剤>>
本発明の着色組成物には、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、熱重合開始剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2004-295116号公報の段落番号0155~0156に記載の添加剤を挙げることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-90147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。熱重合開始剤としては、ピナコール化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられ、ピナコール化合物が好ましい。ピナコール化合物としては、ベンゾピナコール、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジエトキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジフェノキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラ(4-メチルフェニル)エタン、1,2-ジフェノキシ-1,1,2,2-テトラ(4-メトキシフェニル)エタン、1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(トリエチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(t-ブチルジメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリエチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-t-ブチルジメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタンなどが挙げられる。また、ピナコール化合物については、特表2014-521772号公報、特表2014-523939号公報、および、特表2014-521772号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0204】
本発明の着色組成物の含水率は、3質量%以下であることが好ましく、0.01~1.5質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。着色組成物の含水率は、カールフィッシャー法にて測定することができる。
【0205】
本発明の着色組成物の固形分濃度は、5~40質量%であることが好ましい。上限は35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましい。
【0206】
本発明の着色組成物は、膜面状(平坦性など)の調整、膜厚の調整などを目的として粘度を調整して用いることができる。粘度の値は必要に応じて適宜選択することができるが、例えば、25℃において0.3~50mPa・sが好ましく、0.5~20mPa・sがより好ましい。粘度の測定方法としては、例えば、東機産業製 粘度計 RE85L(ローター:1°34’×R24、測定範囲0.6~1200mPa・s)を使用し、25℃に温度調整を施した状態で測定することができる。
【0207】
本発明の着色組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0208】
本発明の着色組成物は、固体撮像素子用の着色組成物として好ましく用いることができる。より具体的には、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの画素形成用の着色組成物として好ましく用いることができる。
【0209】
<着色組成物の調製方法>
本発明の着色組成物は、前述の成分を混合して調製できる。着色組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解および/または分散して着色組成物を調製してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して着色組成物を調製してもよい。
【0210】
また、着色組成物の調製に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0211】
着色組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度および/または超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0212】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01~3.0μm程度、より好ましくは0.05~0.5μm程度である。
【0213】
また、フィルタとしては、ファイバ状のろ材を用いたフィルタを用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。ファイバ状のろ材を用いたフィルタとしては、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
【0214】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
例えば、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)または株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみで行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。第2のフィルタとしては、第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。
【0215】
<膜および膜の製造方法>
本発明における膜は、上述した本発明の着色組成物から得られる膜である。膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0216】
また、本発明の膜の製造方法は、上述した本発明の着色組成物を支持体上に塗布する工程を含む。本発明の膜の製造方法は、更にパターンを形成する工程を含むことが好ましい。パターンの形成方法としては、フォトリソグラフィ法、ドライエッチング法が挙げられる。
【0217】
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、着色組成物を用いて支持体上に着色組成物層を形成する工程と、着色組成物層をパターン状に露光する工程と、着色組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、着色組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。また、ドライエッチング法によるパターン形成は、着色組成物を用いて支持体上に着色組成物層を形成し、着色組成物層を硬化して硬化物層を形成する工程と、硬化物層上にレジスト層を形成する工程と、レジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、レジストパターンをエッチングマスクとして硬化物層をドライエッチングしてパターンを形成する工程とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0218】
<<着色組成物層を形成する工程>>
着色組成物層を形成する工程では、着色組成物を用いて、支持体上に着色組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0219】
着色組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、着色組成物の塗布方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0220】
支持体上に形成した着色組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0221】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
<<露光工程>>
次に、着色組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、着色組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cmが好ましく、0.05~1.0J/cmがより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m~100000W/m(例えば、5000W/m、15000W/m、または、35000W/m)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m、酸素濃度35体積%で照度20000W/mなどとすることができる。
【0222】
<<現像工程>>
次に、着色組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する。着色組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の着色組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、下地の素子や回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0223】
現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。界面活性剤の例としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後、純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0224】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。ポストベーク後の膜のヤング率は0.5~20GPaが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0225】
膜は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、表面粗さRaが100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。表面粗さの測定は、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。
また、膜の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。
【0226】
各パターン(画素)の体積抵抗値は高いことが望まれる。具体的には、画素の体積抵抗値は10Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、例えば超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0227】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、着色組成物を支持体上に塗布して形成した着色組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。レジスト層は、硬化物層上にポジ型またはネガ型の感光性組成物を塗布し、これを乾燥させて形成することが好ましい。レジスト層の形成に用いる組成物としては、ポジ型の感光性組成物が好ましい。ポジ型の感光性組成物としては、紫外線(g線、h線、i線)、KrF線、ArF線等を含む遠紫外線、電子線、イオンビームおよびX線等の放射線に感応する感光性組成物が好ましい。上述のポジ型の感光性組成物は、KrF線、ArF線、i線、X線)に感応する感光性組成物が好ましく、微細加工性の観点からKrF線に感応する感光性組成物がより好ましい。ポジ型の感光性組成物としては、特開2009-237173号公報や特開2010-134283号公報に記載のポジ型レジスト組成物が好適に用いられる。
【0228】
<カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法>
本発明におけるカラーフィルタは、上述した本発明の着色組成物を用いた膜を有する。また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述した本発明の膜の製造方法を含む。
本発明におけるカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0229】
<固体撮像素子、固体撮像素子の製造方法>
本発明における固体撮像素子は、上述した本発明の着色組成物を用いた膜を有する。また、本発明の固体撮像素子の製造方法は、上述した本発明の膜の製造方法を含む。固体撮像素子の構成としては、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0230】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素を形成する硬化膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。この固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
【0231】
<画像表示装置、画像表示装置の製造方法>
本発明における画像表示装置は、上述した本発明の着色組成物を用いた膜を有する。また、本発明の画像表示装置の製造方法は、上述した本発明の膜の製造方法を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【実施例
【0232】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0233】
<重量平均分子量の測定>
樹脂の重量平均分子量は、以下の条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
カラムの種類:TOSOH TSKgel Super HZM-Hと、TOSOH TSKgel Super HZ4000と、TOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラム
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):1.0μL(サンプル濃度0.1質量%)
装置名:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0234】
<金属アゾ顔料の製造>
(金属アゾ顔料1の製造)
46.2gのジアゾバルビツール酸および38.4gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の1100g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の1500gを添加した。次いで、10gの30%塩酸を滴下により添加した。次いで、79.4gのメラミンを添加した。次いで、0.282モルの約25%塩化亜鉛溶液と、0.0015モルの約30%塩化銅(II)溶液との混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃の温度で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、100gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に21gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料1を製造した。
【0235】
(金属アゾ顔料2の製造)
154.1gのジアゾバルビツール酸および128.1gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の3600g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の5000gを添加した。次いで、252.2gのメラミンを添加した。次いで、0.68モルの約30%塩化ニッケル(II)溶液、0.02モルの約30%塩化銅(II)溶液、および0.200モルの約20%塩化ランタン(III)溶液の混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、1000gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に113gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料2を製造した。
【0236】
(金属アゾ顔料3の製造)
154.1gのジアゾバルビツール酸および128.1gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の3600g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の5000gを添加した。次いで、252.2gのメラミンを添加した。次いで、0.70モルの約30%塩化ニッケル(II)溶液、0.05モルの約30%塩化亜鉛(II)溶液、および0.167モルの約20%塩化ランタン(III)溶液の混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、1000gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に113gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料3を製造した。
【0237】
(金属アゾ顔料4の製造)
46.2gのジアゾバルビツール酸および38.4gのバルビツール酸を、85℃の蒸留水の1100g中に添加した。次いで、この溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした後、90分間攪拌してアゾバルビツール酸前駆体を製造した。
次いで、上記の方法に従って製造されたアゾバルビツール酸前駆体に、82℃の蒸留水の5000gを添加した。次いで、252.2gのメラミンを添加した。次いで、0.285モルの約25%塩化ニッケル溶液と0.010モルの約10%塩化ガドリニウム(III)溶液との混合物を滴下により添加した。次いで、これらを添加した溶液を82℃で3時間保持した後、KOHを添加してpHを約5.5とした。次いで、この溶液の温度を90℃に昇温し、90℃の温度を維持しつつ、1000gの蒸留水を添加して希釈した。次いで、この溶液に113gの30%塩酸を滴下により添加した後、90℃の温度で12時間加熱処理した。次いで、加熱処理後の溶液に水酸化カリウム水溶液を添加してpHを約5とした。次いで、この溶液から顔料を吸引フィルタ上で単離し、洗浄し、80℃での真空乾燥キャビネット中で乾燥させた後、標準実験室ミルで約2分間すり潰して金属アゾ顔料4を製造した。
【0238】
<分散液の製造>
以下の原料を混合したのち、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散した後、さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、分散液を得た。
(分散液の処方)
下記表に記載の顔料・・・13.3質量部
下記表に記載の顔料誘導体・・・1.5質量部
下記表に記載の分散剤・・・5.2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)・・・80質量部
【0239】
【表1】
【0240】
分散液に用いた原料は以下の通りである。
【0241】
(顔料)
金属アゾ顔料1~4:上述した金属アゾ顔料1~4
PG36:C.I.Pigment Green 36
PG58:C.I.Pigment Green 58
PR254:C.I.Pigment Red 254
PR264:C.I.Pigment Red 264
PR177:C.I.Pigment Red 177
PO71:C.I.Pigment Orange 71
【0242】
(分散剤)
分散剤1:下記構造の樹脂(Mw=24,000、主鎖に付記した数値はモル数であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。)
【化38】

分散剤2:下記構造の樹脂(Mw=23,000、主鎖に付記した数値はモル数であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。)
【化39】

分散剤3:下記構造の樹脂(Mw=16,000、x=66モル、y=14モル、z=20モル、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。C=C当量=2500)
【化40】
【0243】
(顔料誘導体)
顔料誘導体A:下記構造の化合物(塩基性顔料誘導体)
【化41】

顔料誘導体B:下記構造の化合物(酸性顔料誘導体)
【化42】
【0244】
<着色組成物の製造>
(実施例1)
以下の原料とトルエンとを混合して実施例1の着色組成物を製造した。実施例1の着色組成物のトルエン濃度は5質量ppmであった。なお、着色組成物のトルエン濃度は、公知の方法に従い、ガスクロマトグラフィーにて0質量ppmから20質量ppmまでの検量線を作成のうえ、着色組成物のガスクロマトグラフィー測定を行って測定した。
分散液Y-1・・・75.0質量部
樹脂P-1・・・10.0質量部
重合性モノマーM-1・・・2.0質量部
光重合開始剤In-1・・・1.0質量部
界面活性剤(下記化合物、Mw=14000)・・・0.01質量部
【化43】

重合禁止剤(p-メトキシフェノール)・・・0.002質量部
溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA))・・・12.0質量部
【0245】
(実施例2~38、比較例1~4)
分散液、重合性モノマー、樹脂、光重合開始剤および溶剤の種類と含有量、並びに、着色組成物のトルエン濃度をそれぞれ下記表に記載にした通りに変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2~38、比較例1~4の着色組成物を製造した。
【表2】
【0246】
着色組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
【0247】
(分散液)
上述した分散液
【0248】
(重合性モノマー)
M-1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、C=C当量=96)
M-2:NKエステルA-TMMT(新中村化学工業(株)製、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、C=C当量=88)
【0249】
(樹脂)
P-1:下記構造の樹脂(Mw=11,000、主鎖に付記した数値はモル数である。固形分40質量%のPGMEA溶液。式中、Meはメチル基を表す。C=C当量=705)
P-2:下記構造の樹脂(Mw=14,000、主鎖に付記した数値はモル数である。固形分40質量%のPGMEA溶液。C=C当量=0)
【化44】
【0250】
(光重合開始剤)
In-1:IRGACURE-OXE01(BASF社製、オキシム化合物)
In-2:IRGACURE-OXE02(BASF社製、オキシム化合物)
【0251】
(溶剤)
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S-2:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
【0252】
<評価1>
各着色組成物を-20℃で180日保管した。保管後の着色組成物を下塗り層付ガラス基板上にプリベーク後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークを行って膜を形成した。
得られた膜について、1cm四方の部分を光学顕微鏡で観察し、0.5μm以上のサイズの結晶状の欠陥の数をカウントして評価した。
5:欠陥の数が0個
4:欠陥の数が1~3個
3:欠陥の数が4~6個
2:欠陥の数が7~9個
1:欠陥の数が10個以上
【0253】
<評価2>
製造後1時間以内の各着色組成物を、下塗り層付ガラス基板上にプリベーク後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークを行って膜を形成した。この膜を、温度135℃、湿度85%の条件下で300時間保管して高温高湿試験を行った。高温高湿試験後の膜について、1cm四方の部分を光学顕微鏡で観察し、0.5μm以上のサイズの結晶状の欠陥の数をカウントして評価した。
5:欠陥の数が0個
4:欠陥の数が1~4個
3:欠陥の数が5~9個
2:欠陥の数が10~15個
1:欠陥の数が16個以上
【0254】
<評価3>
製造後1時間以内の各着色組成物を、下塗り層付ガラス基板上にプリベーク後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークを行って膜を形成した。
得られた膜を、150℃で1時間保持した後、-15℃で1時間保持するサイクルを500サイクル繰り返して温度サイクル試験を行った。
温度サイクル試験前後の膜のそれぞれについて光りの透過率を測定して温度サイクル試験前後の透過率の変化量(ΔT%)を求め、以下の基準で評価した。
なお、比較した透過率の変化量(ΔT%)は、波長が400~700nmの範囲において、最も透過率の変化量が大きい波長についての変化量(|温度サイクル試験前の透過率(%)-温度サイクル試験後の透過率(%)|)である。
5: ΔT%≦1
4: 1<ΔT%≦2
3: 2<ΔT%≦3
2: 3<ΔT%≦4
1: 4<ΔT%
【0255】
【表3】
【0256】
上記表に示す通り、実施例の着色組成物は、低温環境下で着色組成物を長期間保管した場合であっても、欠陥の発生が抑制された膜を製造することができた(評価1)。
また、本発明における金属アゾ顔料と、他の顔料とを併用した実施例6~17、20~25、33~38の着色組成物においては、他の顔料を併用しなかった場合よりも、金属アゾ顔料の高温高湿環境下での異物成長をより抑制することができた。
また、各実施例において、光重合開始剤を下記構造の化合物に変更しても同様の効果が得られる。
【化45】
【0257】
<カラーフィルタの製造>
実施例6の着色組成物を、6インチ(15.24cm)の下塗り層付シリコン基板上にプリベーク後の膜厚が0.5μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間プリベークを行って着色組成物層を形成した。この着色組成物層に対して、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用し、1.2μm四方のベイヤーパターンマスクを介して365nmの波長の光を照射し、露光量500mJ/cmにて露光を行った。次いで、露光後の着色組成物層が形成されているシリコン基板を、スピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、現像液(CD-2000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行なったのち、水を用いてリンスを行い、パターンを形成してカラーフィルタを製造した。
得られたカラーフィルタを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。この固体撮像素子は高解像度で色分離性に優れることが確認された。