(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220131BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20220131BHJP
C08F 287/00 20060101ALI20220131BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20220131BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220131BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220131BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20220131BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20220131BHJP
G03F 7/035 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
C08L101/12
C08F2/46
C08F287/00
C08G81/00
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/031
G03F7/032
G03F7/035
(21)【出願番号】P 2019562800
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2018040679
(87)【国際公開番号】W WO2019130807
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2017251262
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】深見 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】金子 祐士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】尾田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 宙夢
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052069(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/070382(WO,A1)
【文献】特開2013-043962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08F 2/46
C08F 287/00
C08G 81/00
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/031
G03F 7/032
G03F 7/035
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される重量平均分子量が3000~150000である化合物と、顔料とを含む組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、(m+n)価の連結基を表し、
前記(m+n)価の連結基は、
式(R-1)~式(R-19)のいずれかで表される基であり、
P
1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000~10000のポリマー鎖であって、式(P1-1)で表されるポリマー鎖であり、
P
2は、P
1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、式(P2-1-1)で表される繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
mは1~5の数を表し、nは1~5の数を表し、m+nは4~10を満たす;
mが2以上の場合、m個のP
1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP
2は同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化2】
(式(P1-1)中、A
1は単結合または2価の連結基を表し、
前記2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-
もしくは-CONH-
であるか、または、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-から選ばれる2以上を組み合わせてなる基であり、
L
1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位またはポリウレタン繰り返し単位を表し、
xは2~100の数を表し、
W
1はアルキル基またはアルコキシ基を表し、
波線は連結手を表す。)
【化3】
(式(P2-1-1)中、R
P1は、水素原子またはアルキル基を表し、
Y
P1は単結合、アリール基、-COO-または-CONH-を表し、
L
P1は、単結合または2価の連結基を表し、
前記2価の連結基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、オキシアルキレンカルボニル基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-
もしくは-S-
であるか、または、アルキレン基、アルキレンオキシ基、オキシアルキレンカルボニル基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-および-S-から選ばれる2以上を組み合わせてなる基であり、
X
P1は、水素原子
、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、複素環基、ヒドロキシル基、酸基、エチレン性不飽和結合基、アミノ基またはシアノ基を表す。)
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項2】
前記R
1が表す(m+n)価の連結基は、前記式(R-17)で表される基である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(P1-1)のL
1はポリエステル繰り返し単位である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル繰り返し単位はラクトン化合物由来の繰り返し単位を含む、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
前記P
1が表すポリマー鎖は、式(P1-11)、式(P1-12)または式(P1-13)で表される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【化7】
(式中、A
11~A
13はそれぞれ単結合または2価の連結基を表し、
前記2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-
もしくは-CONH-
であるか、または、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-から選ばれる2以上を組み合わせてなる基であり、
R
G11~R
G13はそれぞれアルキレン基を表し、
n1~n3はそれぞれ2~100の数を表し、
W
11~W
13はそれぞれアルキル基またはアルコキシ基を表し、
波線は連結手を表す;
n1個のR
G11は同一であってもよく、異なっていてもよい;
n2個のR
G12は同一であってもよく、異なっていてもよい;
n3個のR
G13は同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記P
2が表すポリマー鎖における前記式(P2-1-1)で表される繰り返し単位の分子量が1000以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記P
2が表すポリマー鎖は、酸基を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記P
2が表すポリマー鎖は、エチレン性不飽和結合基を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記式(1)で表される化合物の重量平均分子量が4000~30000である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(1)で表される化合物の分散度が1.0~3.0である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記式(1)で表される化合物の分散度が1.6~2.5である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記式(1)で表される化合物の酸価が25~200mgKOH/gである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記顔料は有機顔料である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記顔料は、波長400~2000nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記顔料は、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項1~
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
更に、重合性モノマーを含む、請求項1~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
更に、光重合開始剤を含む、請求項1~
16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれか1項に記載の組成物から得られる膜。
【請求項19】
請求項
18に記載の膜を含むカラーフィルタ。
【請求項20】
請求項
18に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項21】
請求項
18に記載の膜を有する画像表示装置。
【請求項22】
多官能チオール化合物と、式(MM-1)で表される重量平均分子量が1000以上のマクロモノマーとを反応させる工程と、
前記工程で得られた反応物の存在下でエチレン性不飽和結合基を有するモノマーを重合する工程と、を含む、式(1)で表される重量平均分子量が3000~150000である化合物の製造方法。
【化8】
(式(MM-1)中、B
M1は重合性基を表し、
A
M1は単結合または2価の連結基を表し、
前記2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-
もしくは-CONH-
であるか、または、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-から選ばれる2以上を組み合わせてなる基であり、
L
M1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位またはポリウレタン繰り返し単位を表し、
xは2~100の数を表し、
W
M1はアルキル基またはアルコキシ基を表す。)
【化9】
(式(1)中、R
1は、(m+n)価の連結基を表し、
前記(m+n)価の連結基は、
式(R-1)~式(R-19)のいずれかで表される基であり、
P
1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000~10000のポリマー鎖であって、式(P1-1)で表されるポリマー鎖であり、
P
2は、P
1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、式(P2-1-1)で表される繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
mは1~5の数を表し、nは1~5の数を表し、m+nは4~10を満たす;
mが2以上の場合、m個のP
1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP
2は同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【化10】
(式(P1-1)中、A
1は単結合または2価の連結基を表し、
前記2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-
もしくは-CONH-
であるか、または、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-および-CONH-から選ばれる2以上を組み合わせてなる基であり、
L
1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位またはポリウレタン繰り返し単位を表し、
xは2~100の数を表し、
W
1はアルキル基またはアルコキシ基を表し、
波線は連結手を表す。)
【化11】
(式(P2-1-1)中、R
P1は、水素原子またはアルキル基を表し、
Y
P1は単結合、アリール基、-COO-または-CONH-を表し、
L
P1は、単結合または2価の連結基を表し、
前記2価の連結基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、オキシアルキレンカルボニル基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-
もしくは-S-
であるか、または、アルキレン基、アルキレンオキシ基、オキシアルキレンカルボニル基、アリーレン基、-NH-、-SO-、-SO
2
-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-および-S-から選ばれる2以上を組み合わせてなる基であり、
X
P1は、水素原子
、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、複素環基、ヒドロキシル基、酸基、エチレン性不飽和結合基、アミノ基またはシアノ基を表す。)
【化12】
【化13】
【化14】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料を含む組成物に関する。また、本発明は、組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料と樹脂を含む組成物を用いてカラーフィルタなどの膜を製造することが行われている。また、一般的に顔料を含む組成物においては、分散剤などを用いて組成物中に顔料を分散させている。分散剤としては、例えば、グラフト樹脂や、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂(例えば星型ポリマーやデンドリマーなど)のような多分岐構造型の樹脂などが用いられている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-84036号公報
【文献】特開2013-43962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、顔料を含む膜についての薄膜化などの検討が進められている。目的の分光特性を維持しつつ薄膜化を図るため、全固形分中における顔料濃度の高い組成物を用いて膜中の顔料濃度を高めることが検討されている。しかしながら、組成物の全固形分中における顔料濃度を高めた場合、分散剤などの顔料以外の成分の配合量を減らす必要があるため、顔料の分散安定性が低下し易い傾向にある。このため、近年において、組成物中の顔料の分散安定性についてのさらなる向上が望まれている。
【0005】
よって、本発明の目的は、顔料の分散安定性に優れた組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討を行った結果、後述する式(1)で表される化合物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 下記式(1)で表される化合物と、顔料とを含む組成物;
【化1】
式(1)中、R
1は、(m+n)価の連結基を表し、
P
1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000以上のポリマー鎖を表し、
P
2は、P
1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
mは1~9の数を表し、nは1~9の数を表し、m+nは4~18を満たす;
mが2以上の場合、m個のP
1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP
2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
<2> R
1は、多官能チオールから誘導される連結基である、<1>に記載の組成物。
<3> 式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物である、<1>に記載の組成物;
【化2】
式(2)中、R
11は、(m+n)価の連結基を表し、
P
1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000以上のポリマー鎖を表し、
P
2は、P
1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
Sは硫黄原子を表し、
mは1~9の数を表し、nは1~9の数を表し、m+nは4~18を満たす;
mが2以上の場合、m個のP
1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP
2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
<4> P
1が表すポリマー鎖の重量平均分子量が1000~10000である<1>~<3>のいずれかに記載の組成物。
<5> P
1が表すポリマー鎖は、式(P1-1)で表される、<1>~<4>のいずれかに記載の組成物;
【化3】
式中、A
1は単結合または2価の連結基を表し、L
1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位またはポリウレタン繰り返し単位を表し、xは2以上の数を表し、W
1は水素原子または置換基を表し、波線は連結手を表す。
<6> P
1が表すポリマー鎖は、主鎖中にポリエステル繰り返し単位を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の組成物。
<7> ポリエステル繰り返し単位はラクトン化合物由来の繰り返し単位を含む、<6>に記載の組成物。
<8> P
1が表すポリマー鎖は、主鎖中に式(G-1)、式(G-2)または式(G-3)で表される繰り返し単位を有する、<1>~<7>のいずれかに記載の組成物;
【化4】
式中、R
G1~R
G3はそれぞれアルキレン基を表す。
<9> P
1が表すポリマー鎖は、式(P1-11)、式(P1-12)または式(P1-13)で表される、<1>~<8>のいずれかに記載の組成物;
【化5】
式中、A
11~A
13はそれぞれ単結合または2価の連結基を表し、R
G11~R
G13はそれぞれアルキレン基を表し、n1~n3はそれぞれ2以上の数を表し、W
11~W
13はそれぞれ水素原子または置換基を表し、波線は連結手を表す;
n1個のR
G11は同一であってもよく、異なっていてもよい;
n2個のR
G12は同一であってもよく、異なっていてもよい;
n3個のR
G13は同一であってもよく、異なっていてもよい。
<10> P
2が表すポリマー鎖におけるエチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位の分子量が1000以下である、<1>~<9>のいずれかに記載の組成物。
<11> P
2が表すポリマー鎖は、酸基を含む、<1>~<10>のいずれかに記載の組成物。
<12> P
2が表すポリマー鎖は、エチレン性不飽和結合基を含む、<1>~<11>のいずれかに記載の組成物。
<13> P
2が表すポリマー鎖におけるエチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位は、下記式(P2-1)で表される部分構造を含む繰り返し単位である、<1>~<12>のいずれかに記載の組成物;
【化6】
式中、R
P1は、水素原子またはアルキル基を表し、Y
P1は単結合、アリール基、-COO-または-CONH-を表し、波線は連結部を表す。
<14> 式(1)で表される化合物の重量平均分子量が4000~30000である、<1>~<13>のいずれかに記載の組成物。
<15> 式(1)で表される化合物の分散度が1.0~3.0である、<1>~<14>のいずれかに記載の組成物。
<16> 式(1)で表される化合物の酸価が25~200mgKOH/gである、<1>~<15>のいずれかに記載の組成物。
<17> 顔料は有機顔料である、<1>~<16>のいずれかに記載の組成物。
<18> 顔料は、波長400~2000nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>~<17>のいずれかに記載の組成物。
<19> 顔料は、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>~<18>のいずれかに記載の組成物。
<20> 更に、重合性モノマーを含む、<1>~<19>のいずれかに記載の組成物。
<21> 更に、光重合開始剤を含む、<1>~<20>のいずれかに記載の組成物。
<22> <1>~<21>のいずれかに記載の組成物から得られる膜。
<23> <22>に記載の膜を含むカラーフィルタ。
<24> <22>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<25> <22>に記載の膜を有する画像表示装置。
<26> 多官能チオール化合物と、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量が1000以上のマクロモノマーとを反応させる工程と
上記工程で得られた反応物の存在下でエチレン性不飽和結合基を有するモノマーを重合する工程と、を含む、式(1)で表される化合物の製造方法;
【化7】
式(1)中、R
1は、(m+n)価の連結基を表し、
P
1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000以上のポリマー鎖を表し、
P
2は、P
1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
mは1~9の数を表し、nは1~9の数を表し、m+nは4~18を満たす;
mが2以上の場合、m個のP
1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP
2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顔料の分散安定性に優れた組成物を提供することができる。また、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および化合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】アンダーカット幅の評価方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基を包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光を意味するのみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含まれる。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程を意味するだけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100gおよび23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度がいずれも0.1g以下であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
本明細書において、染料は、溶剤に対して溶解する化合物を意味する。例えば、染料は、23℃の水100gおよび23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gから選ばれる少なくとも1種に対する溶解度が、1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。
【0010】
<組成物>
本発明の組成物は、下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)ともいう)と、顔料とを含む。
【化8】
【0011】
式(1)中、R1は、(m+n)価の連結基を表し、
P1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000以上のポリマー鎖を表し、
P2は、P1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
mは1~9の数を表し、nは1~9の数を表し、m+nは4~18を満たす;
mが2以上の場合、m個のP1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0012】
本発明の組成物は、上述した化合物(1)と顔料とを併用したことにより、組成物中における顔料の分散安定性が良好であり、組成物の粘度の経時変化を抑制できる。この化合物(1)は、(m+n)価の連結基R1に対し、主鎖中に上述した所定の繰り返し単位を有するポリマー鎖P1と、主鎖中にエチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖P2とが合計で4~18個結合した構造を有している。化合物(1)がこのような構造を有していることにより、化合物(1)が顔料に吸着した後、立体斥力が発揮されやすく、組成物中における顔料の凝集をより効果的に抑制でき、その結果、優れた分散安定性が得られたと推測される。また、この化合物(1)は、多分岐構造型の樹脂の一種であるグラフト樹脂に比べて分散度が低く、化合物自体の粘度が低い傾向にある。このため、本発明の組成物は、粘度が低い傾向にある。このため、例えば、本発明の組成物を用いてフォトリソグラフィ法にてパターンを形成する場合においては、露光時の硬化反応が膜深部まで到達させやすくでき、優れた現像性が得られやすい。また、化合物(1)が酸基を有する場合、より好ましくは、ポリマー鎖P2が酸基を有する繰り返し単位を有する場合においては、未露光部分の現像液に対する溶解性が高まり、より優れた現像性が得られやすい。以下、本発明の組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
<<化合物(1)>>
本発明の組成物は、上述した式(1)で表される化合物(化合物(1))を含む。
【0014】
化合物(1)の重量平均分子量は、3000~150000であることが好ましい。下限は、4000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましい。上限は、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。化合物(1)の重量平均分子量が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性が良好である。特に、化合物(1)の重量平均分子量が4000~30000の範囲である場合においては、組成物中における顔料の分散安定性をより向上させることができる。
【0015】
化合物(1)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.0~3.0であることが好ましい。上限は、3.0未満であることが好ましく、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。化合物(1)の分散度が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性が特に良好である。更には、化合物(1)自体の粘度の低く、粘度の低い組成物が得られやすい。下限は、例えば、1.1以上とすることもでき、1.2以上とすることもでき、1.3以上とすることもでき、1.4以上とすることもでき、1.5以上とすることもでき、1.6以上とすることもできる。
【0016】
化合物(1)は、酸基を有することができる。化合物(1)が酸基を有する場合においては、組成物の現像性をより向上できる。このため、フォトリソグラフィ法でパターン形成した際において、現像残渣の発生を効果的に抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、モノ硫酸エステル基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基が挙げられ、カルボキシル基、スルホ基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基がより好ましく、カルボキシル基、スルホ基が更に好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。化合物(1)が酸基を有する場合、酸基は、式(1)における、R1、P1およびP2のいずれかに含まれていればよいが、組成物中における顔料の分散安定性、および、現像性を高いレベルで両立させやすいという理由から、P2に含まれていることが好ましい。また、化合物(1)が酸基を有する場合、化合物(1)の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましく、120mgKOH/g以下であることが更に好ましい。下限は、5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましく、25mgKOH/g以上であることが更に好ましい。化合物(1)の酸価が25~200mgKOH/gである場合においては、組成物中における顔料の分散安定性、および、現像性を高いレベルで両立させることができる。
【0017】
化合物(1)は、エチレン性不飽和結合基を有することができる。化合物(1)がエチレン性不飽和結合基を有する場合においては、組成物の硬化性を向上させることができる。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、スチレン基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。化合物(1)がエチレン性不飽和結合基を有する場合、エチレン性不飽和結合基は、式(1)における、R1、P1およびP2のいずれかに含まれていればよいが、組成物中における顔料の分散安定性、および、硬化性を高いレベルで両立させやすいという理由から、P1またはP2に含まれていることが好ましく、P2に含まれていることがより好ましく、P2の側鎖に含まれることがさらに好ましい。また、化合物(1)がエチレン性不飽和結合基を有する場合、化合物(1)のC=C価は、0.1~1.5mmol/gであることが好ましい。下限は、0.2mmol/g以上であることが好ましい。上限は、1.0mmol/g以下であることが好ましく、0.8mmol/g以下であることがより好ましい。化合物(1)のC=C価が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性および組成物の硬化性が良好である。なお、化合物(1)のC=C価とは、化合物(1)の固形分1gあたりのエチレン性不飽和結合基のモル量を表した数値である。化合物(1)のエチレン性不飽和結合基のモル量は、化合物(1)の合成に用いた原料から算出できるものについては仕込みの原料から算出した値を用いる。また、化合物(1)のC=C価について、化合物(1)のエチレン性不飽和結合基のモル量を化合物(1)の合成に用いた原料から算出ができないものについては、加水分解法を用いて測定した値を用いる。具体的には、アルカリ処理によって化合物(1)からエチレン性不飽和結合基部位の低分子成分(a)を取り出し、その含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、下記式から算出することができる。また、化合物(1)のC=C価について、化合物(1)のエチレン性不飽和結合基のモル量を化合物(1)の合成に用いた原料から算出ができず、かつ、加水分解法でもC=C価を測定できない場合においては、NMR法(核磁気共鳴)にて測定した値を用いる。
化合物(1)のC=C価[mmol/g]=(低分子成分(a)の含有量[ppm]/低分子成分(a)の分子量[g/mol])/(化合物(1)の秤量値[g]×(化合物(1)の固形分濃度[質量%]/100)×10)
【0018】
化合物(1)の下記測定方法で求められる還元粘度が、7.0~20.0ml/gであることが好ましく、8.0~19.0ml/gであることがより好ましく、7.0~18.0ml/gであることが更に好ましい。化合物(1)の還元粘度が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性が良好であり、更には、現像性や硬化性をより向上させることができる。
【0019】
(還元粘度の測定方法)
化合物(1)の30質量%N-メチルピロリドン溶液の3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N-メチルピロリドンでメスアップする。この溶液を30℃の恒温槽で30分間静置し、ウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れて30℃にて流れ落ちる時間を測定する。なお測定は同一サンプルで2回測定し、その平均値を算出する。同様にブランク(N-メチルピロリドンのみ)の場合も測定し、下記式から還元粘度(ml/g)を算出する。
還元粘度(ml/g)={(サンプル溶液の流出時間(秒)-ブランクの流出時間(秒))/ブランクの流出時間(秒)}/{(3.33×0.3)/20}
【0020】
化合物(1)の下記式(Aλ)で表される比吸光度は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1以下であることが更に好ましい。
E=A/(c×l) ・・・(Aλ)
式(Aλ)中、Eは、波長400~800nmでの最大吸収波長における比吸光度を表し、
Aは、波長400~800nmでの最大吸収波長における吸光度を表し、
lは、単位がcmで表されるセル長を表し、
cは、単位がmg/mlで表される、溶液中の化合物(1)の濃度を表す。
【0021】
以下、式(1)の詳細について説明する。
【0022】
式(1)において、R1は、(m+n)価の連結基を表す。(m+n)価の連結基としては、1~100個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1~200個の水素原子、および0~20個の硫黄原子から成り立つ基が挙げられる。(m+n)価の連結基としては、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)を挙げることができる。
【0023】
【0024】
(m+n)価の連結基は、1~60個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~40個の酸素原子、1~120個の水素原子、および0~10個の硫黄原子から成り立つ基が好ましく、1~50個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~30個の酸素原子、1~100個の水素原子、および0~7個の硫黄原子から成り立つ基がより好ましく、1~40個の炭素原子、0~8個の窒素原子、0~20個の酸素原子、1~80個の水素原子、および0~5個の硫黄原子から成り立つ基が特に好ましい。また、(m+n)価の連結基は、多官能チオールから誘導される連結基であることが好ましい。
【0025】
(m+n)価の連結基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、複素環基、ヒドロキシル基、酸基、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
【0026】
式(1)において、R1の化学式量としては、200~2000であることが好ましい。上限は、1800以下であることが好ましく、1600以下であることがより好ましい。下限は、300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。R1の化学式量が上記範囲であれば、組成物中での顔料の分散安定性を向上できる。なお、R1の化学式量は、構造式から計算した値である。
【0027】
(m+n)価の連結基の具体例としては、下記構造の連結基や、特開2013-43962号公報の段落番号0060~0061に記載された構造の連結基が挙げられる。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
式(1)において、P1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000以上のポリマー鎖を表す。
【0032】
P1が表すポリマー鎖の重量平均分子量は、1000以上であり、1000~10000であることが好ましい。上限は、9000以下であることが好ましく、6000以下であることがより好ましく、3000以下であることが更に好ましい。下限は、1200以上であることが好ましく、1400以上であることがより好ましい。P1が表すポリマー鎖の重量平均分子量が1000以上であることにより、組成物中における顔料の分散安定性を良好にすることができる。なお、P1の重量平均分子量は、同ポリマー鎖の導入に用いた原料の重量平均分子量から算出した値である。例えば、多官能チオール化合物などのm+n価の連結基を形成しうる化合物と、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有するマクロモノマーとを反応させることにより、m+n価の連結基にP1を導入することができる。ここで、マクロモノマーとは、ポリマー末端に重合性基が導入された高分子化合物を意味する。マクロモノマーを用いてP1を形成した場合においては、マクロモノマーの重量平均分子量がP1の重量平均分子量に該当する。
【0033】
P1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位およびポリイミド繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリマー鎖であることが好ましく、ポリエーテル繰り返し単位またはポリエステル繰り返し単位を有するポリマー鎖であることがより好ましく、顔料の分散安定性および現像性の観点から、ポリエステル繰り返し単位を有するポリマー鎖であることが更に好ましい。
【0034】
ポリエステル繰り返し単位は、式(G-1)、式(G-2)または式(G-3)で表される構造の繰り返し単位であることが好ましい。
【化13】
【0035】
式中、RG1~RG3はそれぞれアルキレン基を表す。RG1~RG3が表すアルキレン基の炭素数は、1~20であることが好ましい。炭素数の上限は、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、6以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。下限は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。RG1~RG3が表すアルキレン基は、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
【0036】
また、ポリエステル繰り返し単位は、ラクトン化合物由来の繰り返し単位を含むことが好ましく、ε-カプロラクトンおよびδ-バレロラクトンから選ばれる化合物由来の繰り返し単位を含むことが更に好ましく、ε-カプロラクトン由来の繰り返し単位を含むことが特に好ましい。ε-カプロラクトン由来の繰り返し単位としては、以下のε-CLで表される構造の繰り返し単位が挙げられる。δ-バレロラクトン由来の繰り返し単位としては、以下のδ-VLで表される構造の繰り返し単位が挙げられる。
【化14】
【0037】
P
1が表すポリマー鎖は、式(P1-1)で表されるポリマー鎖であることが好ましい。
【化15】
【0038】
式中、A1は単結合または2価の連結基を表し、L1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位またはポリウレタン繰り返し単位を表し、xは2以上の数を表し、W1は水素原子または置換基を表し、波線は連結手を表す。
【0039】
式(P1-1)において、A1が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-、-CONH-、およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
【0040】
式(P1-1)において、L1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位またはポリイミド繰り返し単位であることが好ましく、ポリエーテル繰り返し単位またはポリエステル繰り返し単位であることがより好ましく、ポリエステル繰り返し単位であることが更に好ましい。ポリエステル繰り返し単位の好ましい範囲については上述したものが挙げられる。
【0041】
式(P1-1)において、xは2以上の数を表し、2~100であることが好ましい。上限は、75以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、顔料の分散安定性の観点から30以下であることが更に好ましく、15以下であることが特に好ましい。下限は、顔料の分散安定性の観点から3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0042】
式(P1-1)において、W1は水素原子または置換基を表し、置換基であることが好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては上述の基が挙げられる。なかでも、顔料の分散安定性の観点から、W1は立体反発効果を有する基であることが好ましく、炭素数6以上のアルキル基又はアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数6~24のアルキル基又はアルコキシ基であることが更に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖または分岐が好ましく、分岐がより好ましい。
【0043】
P
1が表すポリマー鎖は、式(P1-11)、式(P1-12)または式(P1-13)で表されるポリマー鎖であることが特に好ましい。
【化16】
【0044】
式中、A11~A13はそれぞれ単結合または2価の連結基を表し、RG11~RG13はそれぞれアルキレン基を表し、n1~n3はそれぞれ2以上の数を表し、W11~W13はそれぞれ水素原子または置換基を表し、波線は連結手を表す。n1個のRG11は同一であってもよく、異なっていてもよい。n2個のRG12は同一であってもよく、異なっていてもよい。n3個のRG13は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
式(P1-11)における、A11、n1およびW11、式(P1-12)における、A12、n2およびW12、式(P1-13)における、A13、n3およびW13は、それぞれ、式(P1-1)における、A1、xおよびW1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記式において、RG11~RG13が表すアルキレン基の炭素数は、1~20であることが好ましい。炭素数の上限は、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、6以下であることが更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。下限は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。RG11~RG13が表すアルキレン基は、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
【0046】
式(1)において、P2は、P1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表す。エチレン性不飽和結合基を有するモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらの詳細については、特開2013-43962号公報の段落番号0088~0097の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0047】
P2が表すポリマー鎖におけるエチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位の分子量は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。この態様によれば、顔料の分散安定性を維持しつつ、化合物(1)の酸価を高めやすいという効果が期待できる。更には、化合物(1)の分散度をより低くし易い。
【0048】
P
2が表すポリマー鎖におけるエチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位は、下記式(P2-1)で表される部分構造を含む繰り返し単位であることが好ましく、下記式(P2-1-1)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化17】
【0049】
式(P2-1)中、RP1は、水素原子またはアルキル基を表し、YP1は単結合、アリール基、-COO-または-CONH-を表し、波線は連結部を表す。
式(P2-1-1)中、RP1は、水素原子またはアルキル基を表し、YP1は単結合、アリール基、-COO-または-CONH-を表し、LP1は、単結合または2価の連結基を表し、XP1は、水素原子または置換基を表す。
【0050】
YP1は単結合、-COO-または-CONH-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。
【0051】
XP1が表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、複素環基、ヒドロキシル基、酸基、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、モノ硫酸エステル基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基が挙げられ、カルボキシル基、スルホ基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基が好ましく、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基がより好ましく、カルボキシル基、スルホ基が更に好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、スチレン基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0052】
L
P1が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO
2-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。アルキレン基、アルキレンオキシ基およびオキシアルキレンカルボニル基は、直鎖、分岐、及び、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。また、アルキレン基、アルキレンオキシ基およびオキシアルキレンカルボニル基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基などが挙げられる。
X
P1が酸基またはエチレン性不飽和結合基である場合、現像性や硬化性の観点からL
P1は2価の連結基であることが好ましい。また、この場合において、L
P1が表す2価の連結基は、現像性や硬化性の観点からY
P1とX
P1とをつなぐ鎖を構成する原子の数が2個以上であることが好ましく、4個以上であることがより好ましく、6個以上であることが更に好ましく、8個以上であることがより一層好ましい。また、上限は、顔料の分散安定性の観点から40個以下であることが好ましく、30個以下であることがより好ましく、25個以下であることが特に好ましい。例えば以下の繰り返しの場合、Y
P1(-COO-)とX
P1(酸基(-COOH))とをつなぐ鎖を構成する原子の数は、12個である。なお、以下の構造式のL
P1の部位に付記した数値は、Y
P1(-COO-)とX
P1(-COOH)とをつなぐ鎖を構成する原子の数である。
【化18】
【0053】
また、P2が表すポリマー鎖において、顔料の分散安定性の観点から、繰り返し単位の側鎖が、P1が表すポリマー鎖よりも短いことが好ましい。例えば、上記の繰り返し単位の場合、-LP1-XP1の部位が側鎖に相当する。
【0054】
P2が表すポリマー鎖は、酸基を有する繰り返し単位およびエチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含むことが好ましく、酸基を有する繰り返し単位を含むことがより好ましい。P2が表すポリマー鎖が酸基を有する繰り返し単位を含む場合においては、より優れた現像性が得られやすい。また、P2が表すポリマー鎖がエチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位を含む場合においては、より優れた硬化性が得られやすい。
【0055】
P2が表すポリマー鎖が酸基を有する繰り返し単位を含む場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、P2が表すポリマー鎖の全繰り返し単位中、20モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましい。上限は100モル%とすることができ、90モル%以下とすることもでき、80モル%以下とすることもできる。また、P2が表すポリマー鎖がエチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位を含む場合、エチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位の含有量は、P2が表すポリマー鎖の全繰り返し単位中、3モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましい。上限は100モル%とすることができ、90モル%以下とすることもでき、80モル%以下とすることもできる。
【0056】
P2が表すポリマー鎖は、酸基を有する繰り返し単位および/またはエチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位のみで構成されていてもよく、酸基およびエチレン性不飽和結合基のいずれも有さない他の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。また、P2が表すポリマー鎖は、他の繰り返し単位のみで構成されていてもよい。他の繰り返し単位の含有量は、P2が表すポリマー鎖の全繰り返し単位中、50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることが更に好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。P2が表すポリマー鎖が他の繰り返し単位を実質的に含有しない場合とは、P2が表すポリマー鎖の全繰り返し単位中、他の繰り返し単位の含有量が0.5モル%以下であることを意味し、0.1モル%以下であることが好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0057】
式(1)において、mは1~9の数を表し、nは1~9の数を表し、m+nは4~18を満たす。
mの上限は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。mの下限は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましい。
nの上限は、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。nの下限は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましい。
また、分散安定性の観点からは、mはnよりも大きい数であることが好ましい。また、現像性の観点からは、mはnよりも小さい数であることが好ましい。
m+nは4~18を満たす。m+nの上限は、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましい。m+nの下限は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。
【0058】
本発明において、化合物(1)は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化19】
【0059】
式(2)中、R11は、(m+n)価の連結基を表し、
P1は、主鎖中に、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量1000以上のポリマー鎖を表し、
P2は、P1とは異なるポリマー鎖であって、主鎖中に、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー由来の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
Sは硫黄原子を表し、
mは1~9の数を表し、nは1~9の数を表し、m+nは4~18を満たす;
mが2以上の場合、m個のP1は同一であってもよく、異なっていてもよい;
nが2以上の場合、n個のP2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
式(2)におけるP1、P2、m、nおよびm+nについては、式(1)にて説明した範囲と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0061】
式(2)におけるR11が表す(m+n)価の連結基としては、1~100個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1~200個の水素原子、および0~20個の硫黄原子から成り立つ基が挙げられる。(m+n)価の連結基としては、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)を挙げることができる。
【0062】
【0063】
(m+n)価の連結基は、1~60個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~40個の酸素原子、1~120個の水素原子、および0~10個の硫黄原子から成り立つ基が好ましく、1~50個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~30個の酸素原子、1~100個の水素原子、および0~7個の硫黄原子から成り立つ基がより好ましく、1~40個の炭素原子、0~8個の窒素原子、0~20個の酸素原子、1~80個の水素原子、および0~5個の硫黄原子から成り立つ基が特に好ましい。
【0064】
(m+n)価の連結基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、複素環基、ヒドロキシル基、酸基、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
【0065】
式(2)において、R11の化学式量としては、400~2000であることが好ましい。上限は、1800以下であることが好ましく、1600以下であることがより好ましい。下限は、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましい。R11の化学式量が上記範囲であれば、組成物中での顔料の分散安定性を向上できる。なお、R11の化学式量は、構造式から計算した値である。
【0066】
化合物(1)の具体例としては、例えば以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造式中、lおよびmはそれぞれ1以上の数であり、xは2以上の数であり、nは2以上の数である。l+mはZの基の連結手の数を表す。
【0067】
【0068】
【0069】
上記の構造式において、R1は、上述した(m+n)価の連結基の具体例で示した(R-1)~(R-19)の基のいずれかである。
【0070】
本発明の組成物において、化合物(1)の含有量は、組成物の全固形分に対して5~50質量%であることが好ましい。上限は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。下限は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、顔料100質量部に対して、化合物(1)を10~70質量部含有することが好ましい。上限は、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。下限は、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。化合物(1)の含有量が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性が良好である。本発明の組成物において、化合物(1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(1)を2種以上併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0071】
<<化合物(1)の製造方法>>
次に、化合物(1)の製造方法について説明する。化合物(1)の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、多官能チオール化合物と、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重量平均分子量が1000以上のマクロモノマーとを反応させる工程と、上記工程で得られた反応物の存在下でエチレン性不飽和結合基を有するモノマーを重合する工程とを経て製造することができる。
【0072】
多官能チオール化合物とマクロモノマーとの反応方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、マイケル付加反応や、ラジカル反応などが挙げられる。ラジカル反応に用いるラジカル発生剤としては、公知のラジカル発生剤を用いることができる。例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物、および過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を用いることができる。
【0073】
マクロモノマーの重量平均分子量は、1000以上であり、1000~10000であることが好ましい。上限は、9000以下であることが好ましく、6000以下であることがより好ましく、3000以下であることが更に好ましい。下限は、1200以上であることが好ましく、1400以上であることがより好ましい。マクロモノマーは、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有し、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位およびポリイミド繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましく、ポリエーテル繰り返し単位またはポリエステル繰り返し単位を有することがより好ましく、ポリエステル繰り返し単位を有することが更に好ましい。ポリエステル繰り返し単位の好ましい範囲については、化合物(1)の項にて説明した範囲と同様である。マクロモノマーは、前述の繰り返し単位を2個以上含むことが好ましく、2~100個含むことがより好ましい。上限は、75以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、顔料の分散安定性の観点から30以下であることが更に好ましく、15以下であることが特に好ましい。下限は、顔料の分散安定性の観点から5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。
【0074】
マクロモノマーは、その少なくとも一方の末端に重合性基を有する。重合性基としては、ビニル基、スチレン基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0075】
マクロモノマーは、その他方の末端には素原子または重合性基以外の置換基を有していることが好ましく、置換基を有していることがより好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、さらに上述の基が挙げられる。なかでも、顔料の分散安定性の観点から、置換基は立体反発効果を有する基であることが好ましく、炭素数6以上のアルキル基又はアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数6~24のアルキル基又はアルコキシ基であることが更に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖または分岐が好ましく、分岐がより好ましい。
【0076】
マクロモノマーとしては、下記構造の化合物が好ましく用いられる。
【化23】
【0077】
式中、BM1は重合性基を表し、AM1は単結合または2価の連結基を表し、LM1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位またはポリウレタン繰り返し単位を表し、xは2以上の数を表し、WM1は水素原子または置換基を表す。
BM1が表す重合性基としては、ビニル基、スチレン基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
AM1が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-、-CONH-、およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
LM1はポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位またはポリイミド繰り返し単位であることが好ましく、ポリエーテル繰り返し単位またはポリエステル繰り返し単位であることがより好ましく、ポリエステル繰り返し単位であることが更に好ましい。
xは2以上の数を表し、2~100であることが好ましい。上限は、75以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、顔料の分散安定性の観点から30以下であることが更に好ましく、15以下であることが特に好ましい。下限は、顔料の分散安定性の観点から5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。
【0078】
WM1は置換基であることが好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、さらに上述の基が挙げられる。なかでも、顔料の分散安定性の観点から、W1は立体反発効果を有する基であることが好ましく、炭素数6以上のアルキル基又はアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数6~24のアルキル基又はアルコキシ基であることが更に好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖または分岐が好ましく、分岐がより好ましい。
【0079】
多官能チオール化合物としては、一分子中にチオール基を4~18個有する化合物が用いられる。一分子中にチオール基を4~18個有する化合物の具体例としては、特開2007-277514号公報の段落番号0122~0125に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0080】
多官能チオール化合物とマクロモノマーとの反応比は、多官能チオール化合物が有するチオール基の1モルに対して、マクロモノマーが2~10モルであることが好ましい。上限は、9モル以下であることが好ましく、8モル以下であることがより好ましい。下限は、2モル以上であることが好ましく、3モル以上であることがより好ましい。
【0081】
次に、多官能チオール化合物とマクロモノマーとの反応物の存在下でエチレン性不飽和結合基を有するモノマーを重合させる。上記反応物と、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーとの重合反応は、例えば、溶液重合法を用いて行うことができる。溶液重合法での重合としては、上記反応物と、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーを適当な溶剤中に溶解し、ここにラジカル重合開始剤を添加して、約50~220℃の温度で反応させて行うことができる。溶液重合法に用いられる溶剤としては、前述の化合物の溶解性に応じて任意に選択できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート、乳酸エチル、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トルエンが挙げられる。これらの溶剤は、二種以上を混合して使用してもよい。また、溶液重合法に用いられるラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物、および過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を用いることができる。
【0082】
上記反応物とエチレン性不飽和結合基を有するモノマーとの反応比は、上記反応物が有するチオール基の1モルに対して、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーが0.1~1.2モルであることが好ましい。上限は、1.1モル以下であることが好ましく、1.0モル以下であることがより好ましい。下限は、0.15モル以上であることが好ましく、0.2モル以上であることがより好ましい。
【0083】
<<顔料>>
本発明の組成物は、顔料を含有する。顔料としては、白色顔料、黒色顔料、有彩色顔料、近赤外線吸収顔料が挙げられる。なお、本発明において、白色顔料は純白色のみならず、白に近い明るい灰色(例えば灰白色、薄灰色など)の顔料などを含む。また、顔料は、無機顔料、有機顔料のいずれでもよく、分散安定性をより向上させやすいという理由から有機顔料であることが好ましい。また、顔料は、波長400~2000nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましく、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有するものがより好ましい。また、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料(好ましくは有彩色顔料)を用いた場合においては、本発明の組成物は、カラーフィルタにおける着色層形成用の組成物として好ましく用いることができる。着色層としては、例えば、赤色着色層、緑色着色層、青色着色層、マゼンタ色着色層、シアン色着色層、イエロー色着色層などが挙げられる。
【0084】
顔料の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましい。下限は5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。上限は、180nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。顔料の平均一次粒子径が上記範囲であれば、組成物中における顔料の分散安定性が良好である。なお、本発明において、顔料の一次粒子径は、顔料の一次粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から求めることができる。具体的には、顔料の一次粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を顔料の一次粒子径として算出する。また、本発明における平均一次粒子径は、400個の顔料の一次粒子についての一次粒子径の算術平均値とする。また、顔料の一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
【0085】
(有彩色顔料)
有彩色顔料としては、特に限定されず、公知の有彩色顔料を用いることができる。有彩色顔料としては、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料が挙げられる。例えば、黄色顔料、オレンジ色顔料、赤色顔料、緑色顔料、紫色顔料、青色顔料などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
【0086】
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)。
【0087】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子が平均8~12個であり、塩素原子が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/118720公報に記載の化合物が挙げられる。また、緑色顔料としてCN106909027Aに記載の化合物を用いることもできる。
【0088】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物が挙げられる。
【0089】
また、赤色顔料として、芳香族環に対して、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化24】
【0090】
上記式中、R11およびR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12およびR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、n11およびn13はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、X12およびX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表し、X12が酸素原子または硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子または硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11およびR13が表す置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基が挙げられ、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0091】
本発明において、有彩色顔料は、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、有彩色顔料は、2種以上組み合わせて用いる場合、2種以上の有彩色顔料の組み合わせで黒色を形成していてもよい。そのような組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(7)の態様が挙げられる。組成物中に有彩色顔料を2種以上含み、かつ、2種以上の有彩色顔料の組み合わせで黒色している場合においては、本発明の組成物は、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。
(1)赤色顔料と青色顔料とを含有する態様。
(2)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料とを含有する態様。
(3)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料とを含有する態様。
(4)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(5)赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(6)赤色顔料と青色顔料と緑色顔料とを含有する態様。
(7)黄色顔料と紫色顔料とを含有する態様。
【0092】
上記(1)の態様において、赤色顔料と青色顔料との質量比は、赤色顔料:青色顔料=20~80:20~80であることが好ましく、20~60:40~80であることがより好ましく、20~50:50~80であることが更に好ましい。
上記(2)の態様において、赤色顔料と青色顔料と黄色顔料の質量比は、赤色顔料:青色顔料:黄色顔料=10~80:20~80:10~40であることが好ましく、10~60:30~80:10~30であることがより好ましく、10~40:40~80:10~20であることが更に好ましい。
上記(3)の態様において、赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料との質量比は、赤色顔料:青色顔料:黄色顔料:紫色顔料=10~80:20~80:5~40:5~40であることが好ましく、10~60:30~80:5~30:5~30であることがより好ましく、10~40:40~80:5~20:5~20であることが更に好ましい。
上記(4)の態様において、赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と紫色顔料と緑色顔料の質量比は、赤色顔料:青色顔料:黄色顔料:紫色顔料:緑色顔料=10~80:20~80:5~40:5~40:5~40であることが好ましく、10~60:30~80:5~30:5~30:5~30であることがより好ましく、10~40:40~80:5~20:5~20:5~20であることが更に好ましい。
上記(5)の態様において、赤色顔料と青色顔料と黄色顔料と緑色顔料の質量比は、赤色顔料:青色顔料:黄色顔料:緑色顔料=10~80:20~80:5~40:5~40であることが好ましく、10~60:30~80:5~30:5~30であることがより好ましく、10~40:40~80:5~20:5~20であることが更に好ましい。
上記(6)の態様において、赤色顔料と青色顔料と緑色顔料の質量比は、赤色顔料:青色顔料:緑色顔料=10~80:20~80:10~40であることが好ましく、10~60:30~80:10~30であることがより好ましく、10~40:40~80:10~20であることが更に好ましい。
上記(7)の態様において、黄色顔料と紫色顔料の質量比は、黄色顔料:紫色顔料=10~50:40~80であることが好ましく、20~40:50~70であることがより好ましく、30~40:60~70であることが更に好ましい。
【0093】
(白色顔料)
白色顔料としては、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛などが挙げられる。白色顔料は、チタン原子を有する粒子が好ましく、酸化チタンがより好ましい。また、白色顔料は、波長589nmの光に対する屈折率が2.10以上の粒子であることが好ましい。前述の屈折率は、2.10~3.00であることが好ましく、2.50~2.75であることがより好ましい。
【0094】
酸化チタンは、二酸化チタン(TiO2)の含有量(純度)が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。酸化チタンは、TinO2n-1(nは2~4の数を表す。)で表される低次酸化チタン、酸窒化チタン等の含有量が30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
【0095】
酸化チタンの形状には特に制限はない。例えば、等方性形状(例えば、球状、多面体状等)、異方性形状(例えば、針状、棒状、板状等)、不定形状等の形状が挙げられる。酸化チタンの硬度(モース硬度)は、5~8であることが好ましく、7~7.5であることがより好ましい。酸化チタンの真比重(密度)は、1.0~6.0g/cm3であることが好ましく、3.9~4.5g/cm3であることがより好ましい。酸化チタンの嵩比重は0.1g/cm3~1.0g/cm3であることが好ましく、0.2g/cm3~0.4g/cm3であることがより好ましい。
【0096】
酸化チタンなどの白色顔料は、有機化合物などの表面処理剤により表面処理された材料であってもよい。白色顔料の表面処理に用いる表面処理剤としては、ポリオール、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ(酸化ケイ素)、含水シリカ、アルカノールアミン、ステアリン酸、オルガノシロキサン、酸化ジルコニウム、ハイドロゲンジメチコン、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などが挙げられる。中でもシランカップリング剤が好ましい。また、酸化チタンなどの白色顔料は、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)及び有機物の表面処理剤で処理された材料であることが好ましい。表面処理は、1種単独の表面処理剤を用いて実施してもよく、2種以上の表面処理剤を組み合わせて実施してもよい。また、酸化チタンなどの白色顔料の表面が、酸化アルミニウム、シリカ、酸化ジルコニウムなどの酸化物により覆われていることもまた好ましい。これにより、より耐光性および分散性が向上する。
【0097】
酸化チタンなどの白色顔料は、塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物により被覆されていることも好ましい。塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物として、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウム又はカルシウム等を含有する金属化合物が挙げられる。
【0098】
白色顔料は、市販されているものを好ましく用いることができる。市販品はそのまま使用してもよく、分級処理して用いてもよい。酸化チタンの市販品としては、例えば、石原産業(株)製の商品名タイペークR-550、R-580、R-630、R-670、R-680、R-780、R-780-2、R-820、R-830、R-850、R-855、R-930、R-980、CR-50、CR-50-2、CR-57、CR-58、CR-58-2、CR-60、CR-60-2、CR-63、CR-67、CR-Super70、CR-80、CR-85、CR-90、CR-90-2、CR-93、CR-95、CR-953、CR-97、PF-736、PF-737、PF-742、PF-690、PF-691、PF-711、PF-739、PF-740、PC-3、S-305、CR-EL、PT-301、PT-401M、PT-401L、PT-501A、PT-501R、UT771、TTO-51C、TTO-80A、TTO-S-2、A-220、MPT-136、MPT-140、MPT-141;
堺化学工業(株)製の商品名R-3L、R-5N、R-7E、R-11P、R-21、R-25、R-32、R-42、R-44、R-45M、R-62N、R-310、R-650、SR-1、D-918、GTR-100、FTR-700、TCR-52、A-110、A-190、SA-1、SA-1L、STR-100A-LP、STR-100C-LP、TCA-123E;
テイカ(株)製の商品名JR、JRNC、JR-301、JR-403、JR-405、JR-600A、JR-600E、JR-603、JR-605、JR-701、JR-800、JR-805、JR-806、JR-1000、MT-01、MT-05、MT-10EX、MT-100S、MT-100TV、MT-100Z、MT-100AQ、MT-100WP、MT-100SA、MT-100HD、MT-150EX、MT-150W、MT-300HD、MT-500B、MT-500SA、MT-500HD、MT-600B、MT-600SA、MT-700B、MT-700BS、MT-700HD、MT-700Z;
チタン工業(株)製の商品名KR-310、KR-380、KR-380N、ST-485SA15;
富士チタン工業(株)製の商品名TR-600、TR-700、TR-750、TR-840、TR-900;
白石カルシウム(株)製の商品名Brilliant1500等が挙げられる。また、特開2015-67794号公報の段落番号0025~0027に記載の酸化チタンを用いることもできる。
チタン酸ストロンチウムの市販品としては、SW-100(チタン工業(株)製)などが挙げられる。硫酸バリウムの市販品としては、BF-1L(堺化学工業(株)製)などが挙げられる。酸化亜鉛の市販品としては、Zincox Super F-1(ハクスイテック(株)製)などが挙げられる。酸化ジルコニウムの市販品としては、Z-NX(太陽鉱工(株)製)などが挙げられる。
【0099】
また、白色顔料は「酸化チタン 物性と応用技術 清野学著 13~45ページ 1991年6月25日発行、技報堂出版発行」に記載の酸化チタンを用いることもできる。
【0100】
白色顔料は、単一の無機物からなるものだけでなく、他の素材と複合させた粒子を用いてもよい。例えば、内部に空孔や他の素材を有する粒子、コア粒子に無機粒子を多数付着させた粒子、ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコアおよびシェル複合粒子を用いることが好ましい。上記ポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコアおよびシェル複合粒子としては、例えば、特開2015-47520号公報の段落番号0012~0042の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
白色顔料は、中空無機粒子を用いることもできる。中空無機粒子とは、内部に空洞を有する構造の無機粒子であり、外殻に包囲された空洞を有する無機粒子のことを言う。中空無機粒子としては、特開2011-75786号公報、国際公開WO2013-61621号、特開2015-164881号公報などに記載された中空無機粒子が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0102】
(黒色顔料)
黒色顔料としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。チタンブラックは、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は、酸化ジルコニウムでチタンブラックの表面を被覆することが可能である。また、特開2007-302836号公報に表されるような撥水性物質での処理も可能である。黒色顔料として、カラーインデックス(C.I.)Pigment Black 1,7等が挙げられる。
【0103】
チタンブラックは、個々の粒子の一次粒子径及び平均一次粒子径のいずれもが小さいことが好ましい。具体的には、平均一次粒子径が10~45nmであることが好ましい。
【0104】
チタンブラックは、分散物として用いることもできる。例えば、チタンブラック粒子とシリカ粒子とを含み、分散物中のSi原子とTi原子との含有比が0.20~0.50の範囲に調整した分散物などが挙げられる。上記分散物については、特開2012-169556号公報の段落0020~0105の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0105】
(近赤外線吸収顔料)
近赤外線吸収顔料は、有機顔料であることが好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、波長700nmを超え1400nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長は、1200nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、950nm以下であることが更に好ましい。
また、近赤外線吸収顔料は、波長550nmにおける吸光度A550と極大吸収波長における吸光度Amaxとの比であるA550/Amaxが0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることが更に好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。下限は、特に限定はないが、例えば、0.0001以上とすることができ、0.0005以上とすることもできる。上述の吸光度の比が上記範囲であれば、可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線吸収顔料とすることができる。
【0106】
なお、本発明において、近赤外線吸収顔料の極大吸収波長および各波長における吸光度の値は、近赤外線吸収顔料を含む組成物を用いて形成した膜の吸収スペクトルから求めた値である。
【0107】
近赤外線吸収顔料としては、特に限定はないが、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物およびピロメテン化合物が挙げられ、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、フタロシアニン化合物およびナフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ピロロピロール化合物またはスクアリリウム化合物であることが更に好ましく、ピロロピロール化合物であることが特に好ましい。
【0108】
本発明の組成物において、顔料の含有量は、組成物の全固形分に対して5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。上限としては特に制限はないが、組成物の全固形分に対して70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが最も好ましい。
【0109】
<<染料>>
本発明の組成物は、染料を含有することができる。染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。染料は、有彩色染料であってもよく、近赤外線吸収染料であってもよい。有彩色染料としては、ピラゾールアゾ化合物、アニリノアゾ化合物、トリアリールメタン化合物、アントラキノン化合物、アントラピリドン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物、キサンテン化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピラン化合物、インジゴ化合物、ピロメテン化合物が挙げられる。また、特開2012-158649号公報に記載のチアゾール化合物、特開2011-184493号公報に記載のアゾ化合物、特開2011-145540号公報に記載のアゾ化合物を用いることもできる。また、黄色染料として、特開2013-54339号公報の段落番号0011~0034に記載のキノフタロン化合物、特開2014-26228号公報の段落番号0013~0058に記載のキノフタロン化合物などを用いることもできる。近赤外線吸収染料としては、ピロロピロール化合物、リレン化合物、オキソノール化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、クロコニウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ピリリウム化合物、アズレニウム化合物、インジゴ化合物およびピロメテン化合物が挙げられる。
【0110】
本発明の組成物が染料を含有する場合、染料の含有量は、組成物の全固形分に対して5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。上限としては特に制限はないが、組成物の全固形分に対して70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが最も好ましい。
また、染料の含有量は、顔料の100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。上限は、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。下限は、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることが更に好ましい。
また、本発明の組成物は染料を実質的に含有しないこともできる。本発明の組成物が染料を実質的に含まない場合とは、本発明の組成物の全固形分中における染料の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0111】
<<重合性モノマー>>
本発明の組成物は、上述した化合物(1)の他に、重合性モノマーを含有することができる。重合性モノマーは、ラジカルの作用により重合可能な化合物であることが好ましい。すなわち、重合性モノマーは、ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合基を2個以上有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を3個以上有する化合物であることが更に好ましい。重合性モノマーにおけるエチレン性不飽和結合基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、スチレン基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。重合性モノマーは、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0112】
重合性モノマーの分子量は、200~3000であることが好ましい。分子量の上限は、2500以下が好ましく、2000以下が更に好ましい。分子量の下限は、250以上が好ましく、300以上が更に好ましい。
【0113】
重合性モノマーについては、特開2013-253224号公報の段落番号0033~0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。重合性モノマーとしては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM-35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基が、エチレングリコール残基および/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物が挙げられる。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、重合性モノマーは、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成(株)製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)を用いることもできる。
【0114】
重合性モノマーは、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を有する重合性モノマーの市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。酸基を有する重合性モノマーの酸価は、0.1~40mgKOH/gが好ましい。下限は5mgKOH/g以上が好ましい。上限は、30mgKOH/g以下が好ましい。
【0115】
重合性モノマーは、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい。カプロラクトン構造を有する重合性モノマーについては、特開2013-253224号公報の段落番号0042~0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。カプロラクトン構造を有する化合物の市販品としては、例えば、KAYARAD DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120(日本化薬(株))等が挙げられる。
【0116】
重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合基とアルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。エチレン性不飽和結合基とアルキレンオキシ基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合基と、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基とを有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基とエチレンオキシ基とを有する化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。エチレン性不飽和結合基とアルキレンオキシ基を有する化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0117】
重合性モノマーは、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類を用いることもできる。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載されている分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることができる。市販品としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学(株))製などが挙げられる。
また、重合性モノマーは、特開2017-48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
【0118】
重合性モノマーの含有量は、組成物の全固形分に対して0.1~50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。重合性モノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合性モノマーを2種以上併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0119】
<<光重合開始剤>>
本発明の組成物は、更に光重合開始剤を含むことができる。特に、本発明の組成物が重合性モノマーを含む場合においては、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0120】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。
【0121】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0122】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられるまた、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0123】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0124】
本発明において、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0125】
本発明において、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0126】
本発明において、光重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0127】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
【0129】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0130】
本発明は、光重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤を用いることにより、光重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、組成物の経時安定性を向上させることができる。そのような光重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016-532675号公報の段落番号0417~0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0131】
光重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1~30質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。本発明の組成物は、光重合開始剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0132】
<<他の樹脂>>
本発明の組成物は、上述した化合物(1)以外の樹脂(以下、他の樹脂ともいう)をさらに含有することができる。他の樹脂は、例えば、バインダーの用途や、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0133】
他の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0134】
他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0135】
他の樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0136】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシル基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0137】
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0138】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことができる。
【0139】
【0140】
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化28】
【0141】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)については、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0142】
エーテルダイマーについては、特開2013-29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0143】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化29】
式(X)において、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0144】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。
【0145】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0146】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。
【化30】
【0147】
本発明の組成物は、他の樹脂として、分散剤を含むこともできる。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0148】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、現像残渣の発生をより抑制できる。
【0149】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0150】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0151】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、ビックケミージャパン(株)製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-161など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
【0152】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製のDisperbykシリーズ(例えば、Disperbyk-111など)、日本ルーブリゾール(株)製のソルスパースシリーズ(例えば、ソルスパース76500など)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
【0153】
他の樹脂の含有量は、組成物の全固形分に対して0.5~15質量%であることが好ましい。上限は、13.5質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。下限は、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。
また、他の樹脂の含有量は、上述した化合物(1)の100質量部に対して0.5~15質量部であることが好ましい。上限は、13.5質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましい。下限は、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましい。
また、本発明の組成物は、他の樹脂を実質的に含まないこともできる。本発明の組成物が他の樹脂を実質的に含まない場合、本発明の組成物の全固形分中における他の樹脂の含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0154】
<<溶剤>>
本発明の組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤は有機溶剤が好ましい。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば特に制限はない。
【0155】
有機溶剤の例としては、例えば、以下の有機溶剤が挙げられる。エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
本発明においては、溶剤として金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましい。溶剤中の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて金属含有量が質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0157】
溶剤には、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0158】
本発明で用いられる有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0159】
溶剤の含有量は、組成物の固形分濃度(全固形分)が5~50質量%となる量であることが好ましい。上限は45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましい。
【0160】
また、本発明の組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0161】
<<エポキシ基を有する化合物>>
本発明の組成物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)を含有することができる。エポキシ化合物は、エポキシ基を1分子内に1~100個有する化合物であることが好ましい。エポキシ基の下限は、2個以上がより好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。
【0162】
エポキシ化合物は、エポキシ当量(=エポキシ化合物の分子量/エポキシ基の数)が500g/当量以下であることが好ましく、100~400g/当量であることがより好ましく、100~300g/当量であることが更に好ましい。
【0163】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)でもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下がさらに好ましく、5000以下が一層好ましく、3000以下がより一層好ましい。
【0164】
エポキシ化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)などが挙げられる。エポキシ化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0165】
本発明の組成物がエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して0.1~40質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。本発明の組成物は、エポキシ化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。エポキシ化合物を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0166】
<<硬化促進剤>>
本発明の組成物は、パターンの硬度を向上させる目的や、硬化温度を下げる目的で、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、一分子中にチオール(SH)基を2個以上有する多官能チオール化合物などが挙げられる。多官能チオール化合物は、安定性、臭気、解像性、現像性、密着性等の改良を目的として添加してもよい。多官能チオール化合物は、2級のアルカンチオール類であることが好ましい。また、硬化促進剤は、メチロール系化合物(例えば特開2015-34963号公報の段落番号0246において、架橋剤として例示されている化合物)、アミン類、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物(以上、例えば特開2013-41165号公報の段落番号0186に記載の硬化剤)、塩基発生剤(例えば、特開2014-55114号公報に記載のイオン性化合物)、イソシアネート化合物(例えば、特開2012-150180号公報の段落番号0071に記載の化合物)、アルコキシシラン化合物(例えば、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物)、オニウム塩化合物(例えば、特開2015-34963号公報の段落番号0216に酸発生剤として例示されている化合物、特開2009-180949号公報に記載の化合物)などを用いることもできる。本発明の組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。本発明の組成物は、硬化促進剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。硬化促進剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0167】
<<顔料誘導体>>
本発明の組成物は、顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、発色団の一部分を、酸基、塩基性基またはフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。
【0168】
顔料誘導体を構成する発色団としては、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、フタロシアニン系骨格、アントラキノン系骨格、キナクリドン系骨格、ジオキサジン系骨格、ペリノン系骨格、ペリレン系骨格、チオインジゴ系骨格、イソインドリン系骨格、イソインドリノン系骨格、キノフタロン系骨格、スレン系骨格、金属錯体系骨格等が挙げられ、キノリン系骨格、ベンゾイミダゾロン系骨格、ジケトピロロピロール系骨格、アゾ系骨格、キノフタロン系骨格、イソインドリン系骨格およびフタロシアニン系骨格が好ましく、アゾ系骨格およびベンゾイミダゾロン系骨格がより好ましい。顔料誘導体が有する酸基としては、スルホ基、カルボキシル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、三級アミノ基がより好ましい。顔料誘導体の具体例としては、例えば、特開2011-252065号公報の段落番号0162~0183の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0169】
本発明の組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の組成物は、顔料誘導体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。顔料誘導体を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0170】
<<界面活性剤>>
本発明の組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238~0245の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましい。本発明の組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)が向上し、省液性をより改善できる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0171】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、7~25質量%が更に好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的である。
【0172】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-41318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開WO2014/17669号公報の段落番号0060~0064)に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤などが挙げられる。また、フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0173】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造のアクリル系化合物であって、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(例えばメガファックDS-21)が挙げられる。
【0174】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との共重合体を用いることができる。このようなフッ素系界面活性剤については、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0175】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることができる。ブロックポリマーとしては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素共重合体を用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化31】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0176】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含む含フッ素共重合体を用いることができる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0177】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0178】
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.001~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。本発明の組成物は、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。界面活性剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0179】
<<シランカップリング剤>>
本発明の組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応および/または縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられる。
【0180】
シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、スチレン基、メタクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、および、イソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の基と、アルコキシ基とを有するシラン化合物が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-602)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-603)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-602)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-503)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-403)等が挙げられる。シランカップリング剤の詳細については、特開2013-254047号公報の段落番号0155~0158の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0181】
本発明の組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.001~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.1~5質量%が更に好ましい。本発明の組成物は、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。シランカップリング剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0182】
<<重合禁止剤>>
本発明の組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)等、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルなどが挙げられる。本発明の組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.0001~5質量%が好ましい。本発明の組成物は、重合禁止剤を1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。重合禁止剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0183】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、アゾメチン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などが挙げられる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-68814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。
【化32】
【0184】
本発明の組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%が特に好ましい。また、紫外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。紫外線吸収剤を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0185】
<<その他添加剤>>
本発明の組成物には、必要に応じて、各種添加剤、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤としては、特開2004-295116号公報の段落番号0155~0156に記載の添加剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-90147号公報の段落番号0042に記載の化合物)、チオエーテル化合物などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0186】
用いる原料等により組成物中に金属元素が含まれることがあるが、欠陥発生抑制等の観点で、組成物中の第2族元素(カルシウム、マグネシウム等)の含有量は50質量ppm以下であることが好ましく、0.01~10質量ppmがより好ましい。また、組成物中の無機金属塩の総量は100質量ppm以下であることが好ましく、0.5~50質量ppmがより好ましい。
【0187】
本発明の組成物の含水率は、3質量%以下であることが好ましく、0.01~1.5質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。含水率は、カールフィッシャー法にて測定することができる。
【0188】
本発明の組成物は、膜面状(平坦性など)の調整、膜厚の調整などを目的として粘度を調整して用いることができる。粘度の値は必要に応じて適宜選択することができるが、例えば、25℃において0.3~50mPa・sが好ましく、0.5~20mPa・sがより好ましい。組成物の粘度は、E型粘度計(R85形、東機産業(株)製)を用いて、JISK5101-6-2:2004に記載された試験方法に準拠し、25℃に温度調整を施した状態で測定することができる。
【0189】
本発明の組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0190】
本発明の組成物を液晶表示装置用途のカラーフィルタとして用いる場合、カラーフィルタを備えた液晶表示素子の電圧保持率は、70%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。高い電圧保持率を得るための公知の手段を適宜組み込むことができ、典型的な手段としては純度の高い素材の使用(例えばイオン性不純物の低減)や、組成物中の酸性官能基量の制御が挙げられる。電圧保持率は、例えば特開2011-008004号公報の段落0243、特開2012-224847号公報の段落0123~0129に記載の方法等で測定することができる。
【0191】
<組成物の調製方法>
本発明の組成物は、前述の成分を混合して調製できる。組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解および/または分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物を調製してもよい。
【0192】
また、組成物の調製に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0193】
組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
【0194】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)および株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0195】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。
【0196】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0197】
<膜>
本発明の膜は、上述した本発明の組成物から得られる膜である。本発明の膜は、カラーフィルタ、赤外線透過フィルタ、近赤外線カットフィルタ、ブラックマトリクス、遮光膜、屈折率調整膜などに用いることができる。例えば、カラーフィルタの着色層として好ましく用いることができる。
膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0198】
<膜の製造方法>
また、本発明の膜は、上述した本発明の組成物を支持体上に塗布する工程を経て製造できる。本発明の膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含むことが好ましい。パターンの形成方法としては、フォトリソグラフィ法、ドライエッチング法が挙げられ、フォトリソグラフィ法が好ましい。
【0199】
フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、本発明の組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。必要に応じて、組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。また、ドライエッチング法によるパターン形成は、組成物を用いて支持体上に組成物層を形成し、組成物層を硬化して硬化物層を形成する工程と、硬化物層上にレジスト層を形成する工程と、レジスト層をパターニングしてレジストパターンを得る工程と、レジストパターンをエッチングマスクとして硬化物層をドライエッチングしてパターンを形成する工程とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0200】
<<組成物層を形成する工程>>
組成物層を形成する工程では、本発明の組成物を用いて、支持体上に組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0201】
組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、組成物の塗布方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0202】
支持体上に形成した組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0203】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
<<露光工程>>
次に、組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、または、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0204】
<<現像工程>>
次に、組成物層の未露光部を現像除去してパターンを形成する。組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、下地の素子や回路などにダメージを起さない有機アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0205】
現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。界面活性剤の例としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0206】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。ポストベーク後の膜は0.5~20GPaのヤング率を有することが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0207】
膜は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、表面粗さRaが100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。表面粗さの測定は、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。
また、膜の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。
【0208】
各パターン(画素)の体積抵抗値は高いことが望まれる。具体的には、画素の体積抵抗値は109Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、例えば超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0209】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、本発明の組成物を支持体上に塗布して形成した組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。レジスト層は、硬化物層上にポジ型またはネガ型の感光性組成物を塗布し、これを乾燥させて形成することが好ましい。レジスト層の形成に用いる組成物としては、ポジ型の感光性組成物が好ましい。ポジ型の感光性組成物としては、紫外線(g線、h線、i線)、KrF線、ArF線等を含む遠紫外線、電子線、イオンビームおよびX線等の放射線に感応する感光性組成物が好ましい。上述のポジ型の感光性組成物は、KrF線、ArF線、i線、X線)に感応する感光性組成物が好ましく、微細加工性の観点からKrF線に感応する感光性組成物がより好ましい。ポジ型の感光性組成物としては、特開2009-237173号公報や特開2010-134283号公報に記載のポジ型レジスト組成物が好適に用いられる。
【0210】
<カラーフィルタ>
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した本発明の膜を有する。本発明の膜をカラーフィルタに用いる場合においては、顔料として、波長400~700nmの範囲に極大吸収波長を有する顔料を用いることが好ましい。本発明のカラーフィルタにおいて本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。本発明のカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0211】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0212】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
【0213】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【実施例】
【0214】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0215】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定>
測定サンプルの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、以下の条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
カラムの種類:TOSOH TSKgel Super HZM-Hと、TOSOH TSKgel Super HZ4000と、TOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラム
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):1.0μL(サンプル濃度0.1質量%)
装置名:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0216】
<酸価の測定方法>
測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(質量比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業製)を用いて、得られた溶液を、25℃にて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出した。
A=56.11×Vs×0.5×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプル質量(g)(固形分換算)
【0217】
<C=C価の測定>
化合物(1)のC=C価は、化合物(1)の合成に用いた原料から算出した。
【0218】
<粘度の測定>
測定サンプルの粘度は、E型粘度計(R85形、東機産業(株)製)を用い、JISK5101-6-2:2004に記載された試験方法に準拠し、測定サンプルの温度を25℃に調整を施した状態で測定した。
【0219】
<還元粘度の測定>
測定サンプルの30質量%N-メチルピロリドン溶液の3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N-メチルピロリドンでメスアップした。この溶液を30℃の恒温槽で30分間静置し、ウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れて30℃にて流れ落ちる時間を測定した。測定は同一サンプルで2回測定し、その平均値を算出した。同様にブランク(N-メチルピロリドンのみ)の場合も測定した。下記式から還元粘度(ml/g)を算出した。
還元粘度(ml/g)={(サンプル溶液の流出時間(秒)-ブランクの流出時間(秒))/ブランクの流出時間(秒)}/{(3.33×0.3)/20}
【0220】
<化合物(1)の合成>
(P-1の合成)
多官能チオール化合物(下記構造の化合物S-1)の9.05質量部、及びマクロモノマー(下記構造の化合物MM-1、Mw=3000)の90.95質量部の混合溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えて固形分濃度を63質量%に調整した後、窒素気流下、75℃に加熱した。次いで、この混合溶液に、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V-601、和光純薬工業(株)製)の0.4質量部を加えて2時間加熱後、再度2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルの0.4質量部を加えて、窒素気流下、90℃で2時間反応させた。その後、室温(25℃、以下同様)まで冷却した。
次いで、得られた反応物の76.93質量部と、エチレン性不飽和結合基を有するモノマー(下記構造の化合物m-1)の23.06質量部との混合溶液を、窒素気流下、75℃に加熱した。ついで、この混合溶液に、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルの0.4質量部を加えて2時間加熱後、再度2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルの0.4質量部を加えて、窒素気流下、90℃で2時間反応させた。その後、室温まで冷却させた後、混合溶液にPGMEAを加えて固形分濃度を30質量%に調整して、P-1のPGMEA30質量%溶液を得た。P-1の重量平均分子量(Mw)は11,000であり、分散度(Mw/Mn)は1.8であり、酸価は75mgKOH/gであり、還元粘度は11ml/gsであった。
【化33】
【0221】
(P-2~P-17の合成)
マクロモノマー、および、エチレン性不飽和結合基を有するモノマーの種類を変更した以外は、P-1と同様の方法でP-2~P-17を合成し、PGMEAを加えて固形分濃度を30質量%に調整して、P-2~P-17のPGMEA30質量%溶液を得た。
【0222】
【0223】
【0224】
上記の構造式において、Zは以下の基である。
【化36】
【0225】
【0226】
<分散液の調製>
(分散液1~17、21~31、R1~R4)
下記の表に記載の原料を混合したのち、直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。下記の表に記載の数値は質量部である。
【0227】
【0228】
【0229】
分散液1~17、21~31、R1~R4の製造に用いた原料は以下の通りである。
【0230】
(顔料)
PR254 :C.I.Pigment Red254
PR264 :C.I.Pigment Red264
PY139 :C.I.Pigment Yellow139
PY150 :C.I.Pigment Yellow150
PY185 :C.I.Pigment Yellow185
PG36 :C.I.Pigment Green36
PG58 :C.I.Pigment Green58
PB15:6 :C.I.Pigment Blue15:6
PV23 :C.I.Pigment Violet23
Pc1: 後述するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料
PP1: 下記構造の化合物
【化37】
チタンブラック:後述するチタンブラックA-1
【0231】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の作製
塩化スルフリル(45.5質量部)、無水塩化アルミニウム(54.5質量部)、塩化ナトリウム(7質量部)を40℃で混合し、亜鉛フタロシアニン顔料(15質量部)を加えた。これに臭素(35質量部)を滴下して加え、19.5時間かけて130℃まで昇温し1時間保持した。その後反応混合物を水に取り出し、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料を析出させた。この水性スラリーを濾過し、60℃の湯洗浄、1%硫酸水素ナトリウム水洗浄、60℃の湯洗浄を行い、90℃で乾燥させ、2.7質量部の精製されたハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料Aを得た。精製したハロゲン化亜鉛フタロシアニン粗顔料A(1質量部)、粉砕した塩化ナトリウム(10質量部)、ジエチレングリコール(1質量部)を双腕型ニーダーに仕込み、100℃で8時間混練した。混練後80℃の水(100質量部)に取り出し、1時間攪拌後、濾過、湯洗、乾燥、粉砕しハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得た。得られたハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、質量分析とフラスコ燃焼イオンクロマトグラフによるハロゲン含有量分析から、平均組成ZnPcBr9.8
Cl3.1H3.1であった。なお、Pcはフタロシアニンの略語である。
【0232】
チタンブラックA-1の作製
平均一次粒子径15nmの酸化チタンMT-150A(商品名:テイカ(株)製)を100g、BET(Brunauer,Emmett,Teller)比表面積300m2/gのシリカ粒子AEROSIL300(登録商標)300/30(エボニック社製)を25g、及び、Disperbyk190(商品名:ビックケミー社製)を100g秤量し、これらをイオン電気交換水71gに加えて、混合物を得た。その後、KURABO製MAZERSTAR KK-400Wを使用して、公転回転数1360rpm、自転回転数1047rpmにて混合物を30分間撹拌することにより均一な混合物水溶液を得た。この混合物水溶液を石英容器に充填し、小型ロータリーキルン(株式会社モトヤマ製)を用いて酸素雰囲気中で920℃に加熱した。その後、小型ロータリーキルン内の雰囲気を窒素で置換し、同温度でアンモニアガスを100mL/minで5時間流すことにより窒化還元処理を実施した。終了後回収した粉末を乳鉢で粉砕し、Si原子を含み、粉末状の比表面積73m2/gのチタンブラック(チタンブラックA-1)を得た。
【0233】
(顔料誘導体)
誘導体1:下記構造の化合物
【化38】
誘導体2:下記構造の化合物
【化39】
【0234】
(分散剤)
P-1~P-17:上述したP-1~P-17のPGMEA30質量%溶液
PR-1:下記構造の樹脂のPGMEA30質量%溶液(主鎖に付記された数値はモル比であり、側鎖に付記された数値は繰り返し単位の数である。Mw=17,000、分散度(Mw/Mn)=4.2、酸価=75mgKOH/g、還元粘度=12.5ml/g)。
【化40】
PR-2:ソルスパース24000(日本ルーブリゾール(株)製、塩基性高分子分散剤)のPGMEA30質量%溶液
【0235】
(有機溶剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0236】
(分散液2-1~2-4)
下記表に示す組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間混合、分散して分散液2-1~2-4を調製した。下記表10には、該当する成分の使用量(単位:質量部)を示す。なお、下記表の分散剤の質量部の数値は固形分換算の数値である。
【表4】
【0237】
分散液2-1~2-4の製造に用いた原料は以下の通りである。
【0238】
(顔料)
PR254 :C.I.Pigment Red254
PY139 :C.I.Pigment Yellow139
PB15:6 :C.I.Pigment Blue15:6
PV23 :C.I.Pigment Violet23
【0239】
(分散剤)
P-1:上述したP-1
PR-11:下記構造の樹脂(Mw:7950)
下記構造式中、ポリマー主鎖の構成単位を表す括弧の添え字は構成単位の含有量(モル%)を、ポリエステル単位を示す括弧の添え字は繰り返し数を、それぞれ表している。
【0240】
【化41】
PR-12:下記構造の樹脂(Mw:12000)
下記構造式中、ポリマー主鎖の構成単位を表す括弧の添え字は構成単位の含有量(モル%)を表している。
【化42】
PR-13:下記構造の樹脂(Mw:30000)
下記構造式中、ポリマー主鎖の構成単位を表す括弧の添え字は構成単位の含有量(モル%)を、ポリエステル単位を示す括弧の添え字は繰り返し数を、それぞれ表している。
【化43】
【0241】
(有機溶剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0242】
<組成物の製造>
下記表に記載の原料を混合して実施例および比較例の組成物をそれぞれ製造した。
【表5】
【0243】
組成物の製造に用いた原料は以下の通りである。
【0244】
(分散液)
分散液1~17、21~31、2-1、2-2、2-3、2-4、R1~R4:上述した分散液1~17、21~31、2-1、2-2、2-3、2-4、R1~R4
(樹脂)
D1:下記構造の樹脂の40質量%PGMEA溶液。主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=11,000。
【化44】
【0245】
(重合性モノマー)
E1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
【0246】
(光重合開始剤)
F3:下記構造の化合物
【化45】
C7:下記構造の化合物
【化46】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0247】
<分散安定性の評価>
各組成物の調製直後の粘度を測定した。次に、各組成物の10gをポリプロピレン製広口ビンに密閉し、75℃の恒温槽に3日間保存した後の粘度を測定した。上記の粘度の変化を計算することによって組成物の分散安定性を評価した。評価は以下の基準により行った。
なお、粘度の変化は、下記式により計算した増粘率(%)を用いた。
増粘率(%)=((75℃の恒温槽に3日間保存した後の粘度-調製直後の粘度)/調製直後の粘度)×100
-評価基準-
A:増粘率が3%以下であった。
B:増粘率が3%を超え、5%以下であった。
C:増粘率が5%を超え、10%以下であった。
D:増粘率が10%を超えた。または、組成物の調製時に、顔料を良好な分散状態とすることができず、粘度を測定することができなかった。
【0248】
<現像性の評価>
(現像残渣の評価)
現像後のパターン線幅が1.0μm以上となる最小の露光量で得られた硬化膜を、ガラス基板ごと220℃のオーブンで1時間加熱した。硬化膜を加熱した後、ガラス基板上の、露光工程において光が照射されなかった領域(未露光部)に存在する残渣の数をSEM(Scanning Electron Microscope、倍率:20000倍)にて観察し、現像残渣を評価した。評価は以下の基準により行った。
-評価基準-
A:未露光部には、残渣が全く観察されなかった。
B:未露光部に1.0μm四方に残渣が1~3個観察された。
C:未露光部に1.0μm四方に残渣が4~10個観察された。
D:未露光部に1.0μm四方に残渣が11個以上観察された。
【0249】
(アンダーカットの評価)
シリコンウエハ上に、乾燥後の膜厚が1.5μmになるように各組成物をスピンコートして塗布膜を形成した。得られた塗布膜を、シリコンウエハを下にしてホットプレート上に載置して乾燥した。ホットプレートの表面温度は100℃で、乾燥時間は120秒間とした。
次に、乾燥後の塗布膜を露光した。露光は、i線ステッパー(商品名「FPA-3000iS+」、キヤノン社製)を用いて行った。塗布膜に対して、線形20μm(幅20μm、長さ4mm)を有するマスクを介して400mJ/cm
2の露光量(照射時間0.5秒)で照射(露光)した。
次に、露光後の膜に対して、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)0.3質量%水溶液を用いて、23℃で、60秒間のパドル現像を5回繰り返して、パターン形成された膜を得た。その後、得られた膜(パターン形成された膜)を、スピンシャワーを用いてリンスし、更に純水で洗浄した。
次に、上記で得られた膜(パターン形成された膜)を、クリーンオーブンCLH-21CDH(光洋サーモ社製)を用いて220℃で300秒間加熱した。更に、加熱後の膜を、表面温度220℃のホットプレートに載置し、300秒間加熱した。
加熱後の膜を走査型電子顕微鏡で撮影し、アンダーカット幅(μm)を測定して、以下の基準でアンダーカットを評価した。
なお、アンダーカット幅は、
図1に示すように、シリコンウエハ4上に形成されたパターンのパターンエッジ部2の底部の切れ込みの長さTを測定した。なお、
図1において、L
1は露光領域、L
2は未露光領域に相当する。評価は以下の基準により行った。
-評価基準-
A:アンダーカット幅が0μm以上、0.25μm以下であった。
B:アンダーカット幅が0.25μmを超え、0.5μm以下であった。
C:アンダーカット幅が0.5μmを超え、1.0μm以下であった。
D:アンダーカット幅が1.0μmを超えていた。
【0250】
【0251】
上記表に示すように、実施例1~17は顔料の分散安定性に優れていた。また、実施例21~31においても、実施例1と同様の効果が得られた。
【0252】
実施例1の組成物において、分散液1のかわりに、分散液1にて分散剤として使用しているP-1の半分の質量を、DISPERBYK-161(ビックケミージャパン(株)製)に置き換えたものに変更しても実施例1と同様の効果が得られる。
実施例1の組成物において、光重合開始剤をIRGACURE-369(BASF社製))に変更しても実施例1と同様の効果が得られる。
実施例1の組成物において、光重合開始剤をIRGACURE-369(BASF社製)とIRGACURE-OXE02(BASF社製)との混合物(混合の質量比は1:1)に変更しても実施例1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0253】
2:パターンエッジ部、4:シリコンウエハ、L1:露光領域、L2:未露光領域、T:切れ込みの長さ(アンダーカット幅)