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特許7016920基板処理装置、基板支持具、半導体装置の製造方法および基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板支持具、半導体装置の製造方法および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220131BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220131BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/458
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020125259
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021027342
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2019140606
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寿崎 健一
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00143479(EP,A1)
【文献】国際公開第2013/077321(WO,A1)
【文献】特開平08-017753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属により構成された支柱と、前記支柱に設けられて複数の基板のそれぞれの外周を部分的に支持することにより前記複数の基板を多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を有する基板支持具と、
前記基板支持具に支持された前記複数の基板を収容する処理室と、
前記処理室に収容された前記複数の基板を加熱する加熱部と、
を備え、
前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が、非金属物により形成され、前記支柱から所定の距離の位置から前記複数の支持部の先端までの範囲に亘って設けられたピース状部材により構成されている基板処理装置。
【請求項2】
前記複数の支持部は、前記支柱に固定された複数の支持ピンにより構成される、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記複数の支持部は、少なくとも一部が前記金属で構成されている、請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記複数の支持部は、前記支柱に設けられた複数の溝により構成される、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記非金属物は酸化シリコン、窒化シリコン、又は炭化シリコンの少なくとも何れかである、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記複数の支持部のうち、前記金属で構成されている部分の少なくとも一部は、金属酸化物の膜又は非金属物の膜の少なくとも何れかにより被覆されている、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記複数の支持部のうち、前記金属で構成されている部分の少なくとも一部の表面には、前記金属が露出している、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記支柱は、金属酸化物の膜又は非金属物の膜の少なくとも何れかにより被覆されている、請求項1~7の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記支柱の少なくとも一部の表面には前記金属が露出している、請求項1~7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記複数の基板は、前記複数の支持部上の前記支柱から8mm以上離れた位置に載置される、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記金属酸化物の膜は、酸化クロム膜又は酸化アルミニウム膜の少なくとも何れかである、請求項6又は8に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記非金属物の膜は、シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、又は炭化シリコン膜の少なくとも何れかである、請求項6又は8に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記支柱の径は5mm以上10mm以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
金属により構成された支柱と、
前記支柱に設けられて複数の基板のそれぞれの外周を部分的に支持することにより前記複数の基板を多段に支持するよう構成された複数の支持部と、
を備え、
前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が、非金属物により形成され、前記支柱から所定の距離の位置から前記複数の支持部の先端までの範囲に亘って設けられたピース状部材により構成されている基板支持具。
【請求項15】
金属により構成された支柱と、前記支柱に設けられ、複数の基板のそれぞれの外周を部分的に支持することにより前記複数の基板を多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を有する基板支持具を、前記複数の支持部に前記複数の基板が支持された状態で、基板処理装置の処理室内に搬入する工程と、
前記処理室に搬入された前記複数の基板を加熱する工程と、
処理後の前記複数の基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有し、前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が、非金属物により形成され、前記支柱から所定の距離の位置から前記複数の支持部の先端までの範囲に亘って設けられたピース状部材により構成されている半導体装置の製造方法。
【請求項16】
金属により構成された支柱と、前記支柱に設けられ、複数の基板のそれぞれの外周を部分的に支持することにより前記複数の基板を多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を有する基板支持具を、前記複数の支持部に前記複数の基板が支持された状態で、基板処理装置の処理室内に搬入する工程と、
前記処理室に搬入された前記複数の基板を加熱する工程と、
処理後の前記複数の基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有し、前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が、非金属物により形成され、前記支柱から所定の距離の位置から前記複数の支持部の先端までの範囲に亘って設けられたピース状部材により構成されている基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板支持具および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、複数の基板を基板支持具により多段に支持された状態で処理室内に収容し、収容された複数の基板上に膜を形成する成膜処理が行われることがある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-170502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイスの製造工程の一工程では、基板上に形成される膜の厚さの均一性を向上させるとともに、基板及び基板上に形成される膜に対する金属汚染を抑制することが求められている。
【0005】
本開示は、基板上に形成される膜の厚さの均一性を向上させるとともに、基板及び基板上に形成される膜に対する金属汚染を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
金属により構成された支柱と、前記支柱に設けられて複数の基板を多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を有する基板支持具と、
前記基板支持具に支持された前記複数の基板を収容する処理室と、
前記処理室に収容された前記複数の基板を加熱する加熱部と、
を備え、
前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が金属酸化物又は非金属物の少なくとも何れかにより構成される技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板上に形成される膜の厚さの均一性を向上させるとともに、基板及び基板上に形成される膜に対する金属汚染を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3図1の基板処理装置のガス供給系統の概略図である。
図4図1の基板処理装置に収納されるボートを示す側面図である。
図5図4におけるB-B線概略横断面図である。
図6図4のボートのウエハ支持状態を示す説明図である。
図7】第一変形例におけるボートの支柱の側面図である。
図8】第二変形例におけるボートの支柱および支持ピンの側面図である。
図9】第三変形例におけるボートの支柱および支持ピンの側面図である。
図10】第四変形例におけるボートの斜視図である。
図11図10のボートの横断面図である。
図12図1の基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系を示す概略ブロック図である。
図13図1の基板処理装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図1図13を参照しながら説明する。基板処理装置10は半導体装置の製造工程において使用される装置の一例として構成されている。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱部(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
[アウターチューブ(外筒、外管)203]
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウターチューブ(外筒、外管とも呼ぶ)203が配設されている。アウターチューブ203は、例えば石英(SiO)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウターチューブ203の下方には、アウターチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウターチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウターチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
[インナーチューブ(内筒,内管)204]
アウターチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナーチューブ(内筒、内管とも呼ぶ)204が配設されている。インナーチューブ204は、例えば石英、SiCなどの耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウターチューブ203と、インナーチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナーチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。処理室201内には、ノズル410(第1のノズル),420(第2のノズル)がマニホールド209の側壁およびインナーチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。このように、基板処理装置10には2本のノズル410,420と、2本のガス供給管310,320とが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0014】
[ガス供給部]
ガス供給管310,320には、図3に示す様に、上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522および開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0015】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁およびインナーチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナーチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナーチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。また、ノズル410,420は、予備室201aの開口201bよりも外側に配置される。なお、図3の破線で示す様に、クリーニングガス又は不活性ガスを供給可能なガス供給管330,340に接続される第3のノズル(不図示)、第4のノズル(不図示)が設けられても良い。
【0016】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔(開口部)410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。
【0017】
ガス供給孔410aは、インナーチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410aは上述の形態に限定されない。例えば、インナーチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ガス供給孔420aは、インナーチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔420aは上述の形態に限定されない。例えば、インナーチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0019】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200、すなわちボート217に収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域か上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在
するように設けられていることが好ましい。
【0020】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、第1の金属元素を含む原料ガス(第1の金属含有ガス、第1の原料ガス)が、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。原料としては、例えば金属元素であるアルミニウム(Al)を含む金属含有原料ガス(金属含有ガス)であるアルミニウム含有原料(Al含有原料ガス、Al含有ガス)としてのトリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)が用いられる。TMAは有機系原料であり、アルミニウムにアルキル基が結合したアルキルアルミニウムである。他に原料としては、金属含有ガスであり、有機系原料であって、例えばジルコニウム(Zr)を含むテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ、Zr[N(CH)C)を用いることができる。TEMAZは、常温常圧で液体であり、図示しない気化器で気化して気化ガスであるTEMAZガスとして
用いられる。
【0021】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、反応ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。反応ガスとしては、酸素(O)を含み、Alと反応する反応ガス(リアクタント)としての酸素含有ガス(酸化ガス、酸化剤)を用いることができる。酸素含有ガスとしては、例えば、オゾン(O)ガスを用いることができる。なお、ガス供給管320に、図3の点線で示す、フラッシュタンク321を設けても良い。フラッシュタンク321を設けることにより、ウエハ200に対して、Oガスを大量に供給させることが可能となる。
【0022】
本実施形態において、金属含有ガスである原料ガスがノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、酸素含有ガスである反応ガスがノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給されることで、ウエハ200の表面に原料ガス(金属含有ガス)および反応ガス(酸素含有ガス)が供給され、ウエハ200の表面上に金属酸化膜が形成される。
【0023】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。なお、以下、不活性ガスとしてNガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、Nガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0024】
主に、ノズル410,420でガス供給系(ガス供給部)が構成される。なお、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324、ノズル410,420により処理ガス供給系(ガス供給部)が構成しても良い。また、ガス供給管310とガス供給管320の少なくともいずれかをガス供給部として考えても良い。処理ガス供給系を、単に、ガス供給系と称することもできる。ガス供給管310から原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により原料ガス供給系が構成されるが、ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。原料ガスとして金属含有原料ガスを用いる場合、原料ガス供給系を金属含有原料ガス供給系と称することもできる。ガス供給管320から反応ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により反応ガス供給系が構成されるが、ノズル420を反応ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管320から反応ガスとして酸素含有ガスを供給する場合、反応ガス供給系を酸素含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522,バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0025】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナーチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナーチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向、すなわち水平方向に向かって原料ガス等を噴出させている。
【0026】
[排気部]
排気孔(排気口)204aは、インナーチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置、すなわち予備室201aとは180度反対側の位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、残留するガス(残ガス)は、排気孔204aを介してインナーチューブ204とアウターチューブ203との間に形成された隙間により構成される排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。なお、排気部は、少なくとも排気管231で構成される。
【0027】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置(好ましくはボート217の上部から下部と対向する位置)に設けられており、ガス供給孔410a、420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。すなわち、処理室201に残留するガスは、排気孔204aを介してウエハ200の主面に対して平行に排気される。なお、排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0028】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243および圧力センサ245により、排気系すなわち排気ラインが構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0029】
図1に示す様に、マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられていても良い。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウターチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217およびボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0030】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217の詳細については後述する。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱部218が設けられている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。
【0031】
図2に示すように、インナーチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410および420と同様にL字型に構成されており、インナーチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0032】
この様に構成することにより、ボート217の少なくともウエハ200を支持する領域の温度が均一に保つ様に構成される。この均熱な温度領域(均熱領域T1)の温度とT1よりも下側の領域の温度には差がある。なお、T1は、基板処理領域とも呼ぶ。基板処理領域の縦方向の長さは、均熱領域の縦方向の長さ以下に構成される。なお、基板処理領域とは、ボート217の縦方向の位置の内、ウエハ200が支持(載置)される位置を意味する。ここで、ウエハ200とは、製品ウエハやダミーウエハ、フィルダミーウエハの少なくともいずれかを意味する。また、基板処理領域とは、ボート217において、ウエハ200を保持する領域を意味する。即ち、基板処理領域は、基板保持領域とも呼ぶ。
【0033】
[ボート(基板支持具)217]
ボート217は、図4に示すように、二枚の平行な板としての底板12及び天板11と、底板12と天板11との間に略垂直に設けられた複数本、例えば3本の支柱15と、を有する。支柱15は円柱状をしている。ウエハ200を安定かつシンプルに支持するためには、支柱15の数は3本であることが好ましいが、3本超であっても良い。ボート217の少なくとも支柱15は、例えば金属部材であるステンレスに、金属酸化物の膜(金属酸化膜)であるクロム酸化膜(CrO膜)をコーティング(被覆)したもので構成される。ステンレスとしては、例えば、SUS316L、SUS836L、SUS310Sが好ましい。ステンレスには、ウエハ200やウエハ200上に形成される膜の特性を低下させることがある金属元素(例えば、Fe,Ni,Cr,Cu等)が含まれている。これらの金属元素が不純物として、ウエハ200やウエハ200上に形成される膜中に入り込むことを金属汚染と呼ぶ。なお、本開示における金属とは、金属を主成分とする材料や、金属合金を含む。
【0034】
3本の支柱15は、底板12に略半円状に配列され固定されている。天板11は、3本の支柱15の上端部に固定されている。図5に示すように、ボート217は、複数の支柱15を有し、支持されるウエハ200の外周に沿って基準となる支柱15が設けられ、基準となる支柱15は一点鎖線で示された基準線D上に位置し、この基準線Dに対して左右対称となる位置に設けられるよう構成されている。
【0035】
図4、6に示すように、各支柱15には、複数のウエハ200を垂直方向に所定の間隔(P)で配列させて略水平姿勢で支持(載置)することが可能な複数の支持部(載置部)としての支持ピン16が多段に設けられる。支持ピン16は、支柱15と同じくステンレスにより構成され、ボート217の内側に向かって突設される。図5に示すように、各支持ピン16は円柱状をしており、ボート217の中心、すなわちウエハ200の中心に向けて突設されている。この場合、支柱15には、それぞれ1つずつ支持ピン16を設ける。すなわち、1段に3つの支持ピン16が突設されている。この突設された3つの支持ピン16上に、ウエハ200の外周を支持させることにより、ウエハ200を支持するようになっている。この支持ピン16は水平度が保たれているのが好ましい。水平を保つことにより、ウエハ200を搬送中にウエハ200が支持ピン16に接触する等の干渉を回避でき、またボート217にウエハ200が支持された状態でのウエハ上に均一なガスの流れを確保できる。
【0036】
本実施形態のボート217の支柱15は金属部材で構成されているため、従来の石英やSiCで構成されたボートの支柱よりも細く構成され得る。例えば、従来のボートの支柱の径φは19mmであり、図6に示す本実施形態のボート217の支柱15の径φは5~10mmである。支柱15の径は、支持ピン16にウエハ200を支持可能な強度を有するように予め設定されている。よって、本実施形態における支柱15の径φ(5~10mm)は一例であり、支柱15の本数によりウエハ200を支持可能な強度を有する径が5mm未満になるような場合も、本実施形態に含まれる。
【0037】
例えば、支柱15の径が小さくなれば、成膜ガスの流れを妨げにくいので滞留が起きにくい。更に、支柱15の表面積が小さくなるため、成膜ガスの消費が減少する。よって、各支柱15付近の膜厚の低下による膜厚均一性の低下を軽減することができる。また、支柱15の径を小さくするのに伴い、支持ピン16の径も小さくする必要がある。しかし本実施形態によれば、支持ピン16を支柱15と同じく金属部材であるステンレスで構成することにより、ウエハ200を支持可能な強度を確保することができる。
【0038】
支持ピン16は支柱15に設けられた凹部としての穴15cに差し込まれて、溶接等により所定の間隔(P)(例えば8mmピッチ)で固定されている。また、図6に示すように、円柱状とした支持ピン16の先端16aは、丸めるか、もしくは面取りを行うとよい。
【0039】
また、支持ピン16の少なくともウエハ200との接触箇所(接触部)16fは、金属酸化膜であるCrO膜でコーティングされている。支持ピン16の少なくともウエハ200との接触箇所16fを、CrO膜ではなく、金属元素を含まない非金属物の膜(非金属膜)であるシリコン酸化膜(SiO膜)でコーティングしてもよい。
【0040】
また、支持ピン16の一部又は全体をCrO膜でコーティングし、支持ピン16における少なくともウエハ200との接触箇所16fを、さらにSiO膜でコーティングしてもよい。SiO膜でコーティングされる部分としては、少なくともウエハ200との接触箇所16fに施せばよく、更に好ましくは、支柱15から突出した部分全体に施される。これにより、CrO膜によるコーティングでは、金属汚染を十分に抑制できない場合であっても、ウエハ200に接触する箇所をSiO膜でコーティングすることで金属汚染をより確実に抑制することが可能である。
【0041】
支持ピン16(支持部)は円柱状の他に、ウエハ200との接触面側に平面を有する半円柱状や四角柱状、三角柱状、等の他の柱状であってもよく、また、板形状であってもよい。また、ウエハ200との接触面側に曲面を有する半円柱状であってもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、支柱15や支持ピン16をコーティングする金属酸化膜の好適な例の一つとしてCrO膜を適用したが、これに限らず、他の好適な金属酸化物の膜の例の一つとして酸化アルミニウム(AlO)の膜を適用してもよい。また、更に他の金属酸化物の膜として、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)等の膜を適用することもできる。また、本実施形態では、支柱15や支持ピン16を金属酸化膜であるCrO膜でコーティングする例を説明したが、金属酸化膜に替えて、シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、SiC等の金属元素を含まない非金属物の膜によりコーティングしてもよい。また、Siでコーティングする手法として、接触個所(接触部)に対する部分的なコーティングが容易なSi溶射を用いてもよい。
【0043】
また、ボート217をウエハ200上に金属含有膜を形成する処理において用いる場合、当該金属含有膜に含まれる金属によりコーティングを行ってもよい。例えば、金属含有膜としてAlO膜を形成する処理においてボート217を用いる場合、AlO膜に含まれる金属であるアルミニウム(Al)を溶射することにより、Alで上述のコーティングを行ってもよい。
【0044】
本実施形態では、金属であるステンレスで支柱15を形成する。これにより、石英等のボートの支柱と同等の強度を確保しながら、ボートの支柱の直径を細くすることが可能となり、ボートの支柱の近傍で発生する膜厚低下を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ボート217を構成する支柱15と支持ピン16の少なくとも一部を金属酸化膜又は非金属膜の少なくとも一方でコーティングする。これにより、ボート217を構成する金属部材に起因するウエハ200における金属汚染を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、支持ピン16の少なくともウエハ200との接触箇所(接触部)16fを、金属酸化膜又は非金属膜の少なくとも一方でコーティングする。これにより、特にウエハ200に接触する支持ピン16に起因するウエハ200における金属汚染を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、支柱15を金属酸化膜又は非金属膜の少なくとも一方でコーティングする。これにより、支柱15を構成する金属に起因する金属汚染を抑制し、金属汚染のレベルを更に低く維持することができる。
【0048】
また、本実施形態のように、支柱15や支持ピン16のウエハ200との接触箇所16f以外の部分を金属酸化膜又は非金属膜の少なくとも一方でコーティングすることにより、支柱15等の表面に堆積物の膜が形成された際に、温度変化により支柱15等の表面と堆積物の膜との間に生じる応力を緩和し、堆積物の膜におけるクラックや膜剥がれ、それに起因するパーティクルの発生を抑制することもできる。すなわち、ウエハ200に対して成膜処理を行う場合、成膜処理において支柱15等の表面に形成される堆積物の膜と同じ方向の応力を有する金属酸化膜、又は非金属膜を応力緩衝膜として支柱15等の表面にコーティングする。この場合、コーティングに用いる金属酸化膜や非金属膜は、成膜処理において形成される膜種に応じて選択される。
【0049】
また、本実施形態では、ステンレスにより構成された支柱15と支持ピン16の両方に対して金属酸化膜又は非金属膜の少なくとも一方でコーティングする。これにより、ボート217に対して一度の処理でコーティングを施すことができる。ステンレスの表面へのCrO膜の形成は、例えば、ステンレスに対する不働態化処理により行うことができる。また、CrO膜に替えて、ウエハ200に対する成膜処理において形成される膜と同じ膜種(例えばAlO膜、等)でコーティングを行う場合、ウエハ200が搭載されていない状態のボート217を処理室201内に搬入して、ウエハ200に対する成膜処理と同様の処理を行うことにより、コーティングを行ってもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、支柱15の表面がCrO膜等によってコーティングされている。しかし、支柱15の表面を金属酸化膜や非金属膜によりコーティングせず、その金属母材が表面に露出したままとしてもよい。
【0051】
開示者による検証によれば、250℃以上、400℃以下の条件下において、少なくとも8mm以上、望ましくは12mm以上、ステンレスで構成される部材とSiウエハとの間隔を確保することにより、ステンレスに起因するSiウエハの金属汚染を抑制できることが確認された。したがって、支柱15の表面から所定距離だけ離れるようにウエハ200を支持ピン16上に載置することで、支柱15の表面を金属酸化膜や非金属膜でコーティングすることなく、支持ピン16の表面を金属酸化膜と非金属膜の少なくとも一方で構成することにより、支柱15や支持ピン16を構成する金属に起因するウエハ200等への金属汚染を抑制することができる。なお、当該所定距離は、例えば400℃以下の条件下でボート217が用いられる場合、8mm以上、より好ましくは12mm以上とすることが望ましい。このように、支柱15の表面に対してコーティング処理を行わないことにより、コーティング処理を行う場合に比べて、ボート217の製作を容易とすることができる。
【0052】
(第一変形例)
図7に示すように、支持ピン16に代えて支柱15に刻設された複数の溝15aを支持部(載置部)とし、溝15aの底面15bの上にウエハ200を支持(載置)してもよい。本実施形態の第一変形例における支柱15は、実施形態と同様に、金属酸化膜であるCrO膜でコーティングされている。特に、溝15aの半円状の底面15bのうち少なくともウエハ200が支持される部分(すなわち接触箇所(接触部))は、CrO膜でコーティングするように構成されている。また、溝15aの半円状の底面15bのうち少なくともウエハ200との接触箇所)をCrO膜に替えて、非金属膜であるSiO膜でコーティングするように構成してもよい。また、溝15aにCrO膜がコーティングされ、溝15aの半円状の底面15bのうち少なくともウエハ200との接触箇所を、SiO膜で更にコーティングしてもよい。
【0053】
(第二変形例)
図8に示すように、本実施形態の第二変形例における支持ピン16は、金属部材で構成される金属部16bと金属元素を含まない非金属部材で構成される石英部16cのハイブリッド構成である。金属部16bは実施形態における支持ピン16と同様な構造であり、支柱15に設けられた凹部としての穴15cに差し込んで溶接で固定されている。石英部(石英部位)16cにはウエハ200が搭載される。石英部16cは、石英のピースにより構成され、上述の実施形態における円柱状の支持ピン16のうち、支持ピン16に載置されるウエハ200に対向する上半分であって、支柱15から溶接の影響がない所定距離(L2)の位置(P2)から支持ピン16の先端までの範囲を、石英(SiO)で構成するものである。すなわち、第二変形例では、少なくともウエハ200と支持ピン16との接触個所が非金属である石英部16cにより構成されている。石英部16cは、石英に替えて、他の非金属であるSiCやSiN等で構成されていてもよい。なお、この例では、支柱15から所定距離(L2)までの部分は、金属で構成されている。
【0054】
金属部16bは、支柱15の穴に埋設される部分および支柱15の表面から位置P2までの部分は断面が円状であり、位置P2から支柱15の先端までの断面は半円状である。石英部16cは断面が半円状である半円柱形状である。ただし、石英部16cは半円柱形状に限られず、他の柱形状であってもよく、ウエハ200との接触面が平らである板状形状やチップ状形状であってもよく、さらに他の形状であってもよい。本開示では、これらの形状を有する部材をピース状部材と総称する。石英部16cの鉛直方向の厚さT2は、例えば0.5mm以上10mm未満、より好ましくは1mm以上5mm未満である。厚さT2が0.5mm未満の場合、ウエハ200を載置することで石英部16cが破損する可能性がある。厚さT2を1mm以上とすることにより、ウエハ200を載置した際に石英部16cが破損することをより確実に防止することができる。
【0055】
金属部16bは、石英部16cの下方部分および支柱15の表面から位置P2までの部分がCrO膜およびSiO膜の少なくとも何れかによってコーティングされている。
【0056】
支柱15を構成する金属部材と支持ピン16の金属部16bを構成する金属部材は溶接により接合される。溶接後、CrO膜をコーティング、又は不働態化する処理を行うことにより、溶接個所の溶接跡が消され、表面状態は未溶接個所と同一のCrO膜の表面となり、クロム(Cr)、酸素(O)以外の不純物濃度も、未溶接個所と同等とすることができる。また、ウエハ200との接触面は非金属部材である石英部16cで構成されているので、ウエハ200との接触によってCrO膜やSiO膜等の表面コート膜が剥がれることがない。
【0057】
なお、第二変形例では、支柱15および金属部16bの表面がCrO膜等によってコーティングされている形態を説明した。しかし、第二変形例の更なる変形例として、支柱15および金属部16bの少なくとも何れかの表面を、金属酸化膜や非金属膜のいずれでもコーティングせず、これらの金属母材が表面に露出したままとしてもよい。少なくともウエハ200と支持ピン16との接触個所を非金属である石英部16cで構成することにより、支柱15や金属部16bを構成する金属に起因するウエハ200等への金属汚染を抑制することができる。このように、支柱15および金属部16bの少なくとも何れかの表面に対してコーティング処理を行わないことにより、当該コーティング処理を行う場合に比べて、ボート217の製作を容易とすることができる。
【0058】
また、第二変形例の他の更なる変形例として、支持ピン16をCrO膜等の金属酸化膜や非金属膜でコーティングするとともに、支持ピン16におけるウエハ200との接触箇所の一部を、石英コートや石英チップ等の石英で構成してもよい。すなわち、支持ピン16におけるウエハ200との接触箇所はCrO膜と石英で構成されるようにしてもよい。
【0059】
(第三変形例)
本実施形態の第三変形例における支持ピン16は、全体が石英、SiC、SiN、AlO等の非金属物又は金属酸化物で構成されている。図9に示すように、支持ピン16は、支持ピン16に刻設された凹部としてのネジ穴16eに、支柱15に設けられた孔を通した柱状部材としてのネジ16dを差し込み、螺合することで支柱15に固定される。ボート217を構成する他の部材は、ステンレスに金属酸化膜であるCrO膜や非金属膜であるSiO膜等がコーティングされている。支持ピン16に刻設された凹部をネジ溝のない穴で形成し、ネジ16dに替えてネジ溝のないピン形状の固定部材を凹部に差し込むことで支持ピン16を支柱15に固定してもよい。なお、ワイヤ加工技術を使いネジ16dを隠してフラット面を形成し、SiO膜の被覆率を向上させている。
【0060】
なお、支持ピン16の支柱15側に凸部を設け、支柱15に設けられた凹部または貫通孔に差し込む構造(嵌合させる構造)に構成しても良い。支持ピン16と支柱15の接合は、溶接であっても良いし、支持ピン16の凸部をネジ形状に構成し、支柱15の凹部または貫通孔をネジ穴形状に構成して、嵌合させても良い。
【0061】
また、第三変形例では、第二変形例の更なる変形例と同様に、支柱15の表面を金属酸化膜や非金属膜によりコーティングせず、その金属母材が表面に露出したままとしてもよい。本実施形態のように、ウエハ200と接触する支持ピン16を非金属物又は金属酸化物で構成することにより、支柱15を構成する金属に起因するウエハ200等への金属汚染を抑制することができる。このように、支柱15の表面に対してコーティング処理を行わないことにより、当該コーティング処理を行う場合に比べて、ボート217の製作を容易とすることができる。
【0062】
(第四変形例)
図10に示すように、本実施形態の第四変形例におけるボート217は、天板11と底板12のそれぞれの外周に設けられ、ウエハ200を保持する支柱15と、天板11と底板12のそれぞれの外周に設けられ、支柱15よりも径が小さい補助支柱18と、を備えた構成である。また、支柱15には、実施形態または第二変形例または第三変形例と同様に、ウエハ200を支持(載置)する支持部(載置部)としての支持ピン16が設けられている。
【0063】
また、図11に示すように、補助支柱18は、支柱15間を均等に分ける位置に設けられる。具体的には、ボート217は、支柱15と補助支柱18の間、又は、補助支柱18の間を周方向に等間隔になるよう構成されている。また、図11に示すように、ボート217は、複数の支柱15を有し、ウエハ200の支持される方向に基準となる支柱15が設けられ、基準となる支柱15は一点破線の基準線D上に位置し、支柱15及び補助支柱18は、この基準線Dに対して左右対称となる位置に設けられる。
【0064】
また、補助支柱18の径は、支柱15の径より小さく、支持ピン16を有しないよう構成されている。これは、補助支柱18は、補助的な支柱であるためである。その本数も4本でなくてもよい。本実施形態では、3本の支柱15と4本の補助支柱18が、支柱15と補助支柱18との間、または、補助支柱18間でウエハ200の円周方向に均等に設けられるが、この形態に限定されるものではない。
【0065】
本変形例のボート217の支柱15が実施形態のボート217の支柱15よりも細く構成され、強度確保の目的で補助支柱18が4本取り付けられている。例えば、図5に示す実施形態のボート217の支柱15の径φは8mmであり、図11に示す本変形例のボート217の支柱15の径はφ5mm、補助支柱18の径はφ4mmである。
【0066】
続いて、上述の基板処理装置10の動作を制御する制御部(制御手段)であるコントローラ121の構成について、図12を用いて説明する。
【0067】
図12に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0068】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ,各手順,各処理)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本開示においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピおよび制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0069】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,342,352,512,522,バルブ314,324,334,344,354,514,524、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0070】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,342,352,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,344,354,514,524の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作およびAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0071】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本開示において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0072】
(2)基板処理工程(半導体デバイスの製造工程)
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ上200に膜を形成する工程の一例について、図13を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0073】
以下の第一例では、基板としてのウエハ200が積載された状態で収容された処理室201を所定温度で加熱しつつ、処理室201に、ノズル410に開口する複数のガス供給孔410aから原料ガスとしてTMAガスを供給する工程と、ノズル420に開口する複数のガス供給孔420aから反応ガスとしてOガスを供給する工程と、それぞれ所定回数行い、ウエハ200上に、金属酸化膜としてのAlO膜を形成する。
【0074】
本開示において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本開示において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本開示において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本開示において「基板」をいう言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0075】
以下に、成膜工程S300を含む基板処理工程について、図1図13を用いて説明する。
【0076】
(基板搬入工程S301)
複数枚のウエハ200がボート217の支持ピン16上にそれぞれ装填(ウエハチャージ)されると、図1に示すように、複数枚のウエハ200が収容されたボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0077】
(雰囲気調整工程S302)
続いて、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。なお、ボート217を回転させる場合には、回転機構267によりボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。また、断熱部218の下部に不活性ガスとしてN2ガスをガス供給管350から供給を開始しても良い。具体的には、バルブ354を開き、MFC352で、Nガス流量を0.1~2slmの範囲の流量に調整する。MFC352の流量は、好ましくは、0.3slm~0.5slmとする。
【0078】
[成膜工程S300]
続いて、第1の工程(原料ガス供給工程)、パージ工程(残留ガス除去工程)、第2の工程(反応ガス供給工程)、パージ工程(残留ガス除去工程)と、をこの順で所定回数N(N≧1)行い、AlO膜を形成する。
【0079】
(第1の工程S303(第1ガス供給))
バルブ314を開き、ガス供給管310内に第1ガス(原料ガス)であるTMAガスを流す。TMAガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTMAガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にNガス等の不活性ガスを流してもよい。ガス供給管510内を流れたNガスは、MFC512により流量調整され、TMAガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。Nガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0080】
このとき、APCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~1000Pa、好ましくは1~100Pa、より好ましくは10~50Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力を1000Pa以下とすることで、後述する残留ガス除去を好適に行うことができると共に、ノズル410内でTMAガスが自己分解してノズル410の内壁に堆積してしまうことを抑制することができる。処理室201内の圧力を1Pa以上とすることで、ウエハ200表面でのTMAガスの反応速度を高めることができ、実用的な成膜速度を得ることが可能となる。なお、本開示では、数値の範囲として、例えば1~1000Paと記載した場合は、1Pa以上1000Pa以下を意味する。すなわち、数値の範囲内には1Paおよび1000Paが含まれる。圧力のみならず、流量、時間、温度等、本開示に記載される全ての数値について同様である。
【0081】
MFC312で制御するTMAガスの供給流量は、例えば、10~2000sccm、好ましくは50~1000sccm、より好ましくは100~500sccmの範囲内の流量とする。流量を2000sccm以下とすることで、後述する残留ガス除去を好適に行うことができると共に、ノズル410内でTMAガスが自己分解してノズル410の内壁に堆積してしまうことを抑制することができる。流量を10sccm以上とすることで、ウエハ200表面でのTMAガスの反応速度を高めることができる、実用的な成膜速度を得ることが可能となる。
【0082】
MFC512で制御するNガスの供給流量は、例えば、1~30slm、好ましくは1~20slm、より好ましくは1~10slmの範囲内の流量とする。
【0083】
TMAガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば、1~60秒、好ましく1~20秒、より好ましくは2~15秒の範囲内とする。
【0084】
ヒータ207は、ウエハ200の温度が、例えば、室温~400℃、好ましくは90~400℃、より好ましくは150~400℃の範囲内となるように加熱する。温度を400℃以下とする。温度の下限は、反応ガスとして用いられる酸化剤の特性によって変化させることが可能となる。また、温度の上限を400℃とすることにより、上述の実施形態やその変形例で開示したボート217を用いて当該基板処理工程を行った際に、ウエハ200に対する金属汚染の発生をより確実に防止することが可能となる。
【0085】
上述の条件下で処理室201内へTMAガスを供給することにより、ウエハ200の最表面に、Al含有層が形成される。Al含有層は、Al層の他、CおよびHを含み得るAl含有層は、ウエハ200の最表面に、TMAが物理吸着したり、TMAの一部が分解した物質が化学吸着したり、TMAが熱分解することでAlが堆積したりすること等により形成される。すなわち、Al含有層は、TMAやTMAの一部が分解した物質の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Alの堆積層(Al層)であってもよい。
【0086】
(パージ工程S304(残留ガス除去工程))
Al含有層が形成された後、バルブ314を閉じ、TMAガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応またはAl含有層形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する。バルブ514,524は開いた状態でNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応またはAl含有層形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0087】
次に、第2の工程(反応ガスを供給する工程)を行う。
【0088】
(第2の工程S305(反応ガス供給工程))
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に反応ガスであるOガスを流す。Oガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内のウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。すなわちウエハ200はOガスに暴露される。このとき、バルブ524を開き、ガス供給管520内にNガスを流してもよい。Nガスは、MFC522により流量調整され、Oガスと共に処理室201内に供給されて、排気管231から排気される。Nガスは、ガス供給管510、ノズル410を介して処理室201に供給され、排気管231から排気される。なお、ガス供給管320のバルブ324の上流側にフラッシュタンク321が設けられている場合は、バルブ324を開いた際に、フラッシュタンク321内に貯留されたOガスが、処理室201内に供給されることとなる。
【0089】
ガスは、第1の工程S303でウエハ200上に形成されたAl含有層の少なくとも一部と反応する。Al含有層は酸化され、金属酸化層としてAlとOとを含むアルミニウム酸化層(AlO層)が形成される。すなわちAl含有層はAlO層へと改質される。
【0090】
(パージ工程S306(残留ガス除去工程))
AlO層が形成された後、バルブ324を閉じて、Oガスの供給を停止する。そして、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはAlO層の形成に寄与した後のOガスや反応副生成を
処理室201内から排除する。
【0091】
〔所定回数実施〕
上述の第1の工程S303、パージ工程S304、第2の工程S305およびパージ工程S306を順に行うサイクルを所定回数N行うことにより、ウエハ200上にAlO膜が形成される。このサイクルの回数は、最終的に形成するAlO膜において必要とされる膜厚に応じて適宜選択される。判定工程S307では、この所定回数が実行されたか否かを判定する。所定回数行われていれば、YES(Y)判定とし、成膜工程S300を終了する。所定回数行われなければ、No(N)判定とし、成膜工程S300を繰り返す。なお、このサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。AlO膜の厚さ(膜厚)は、例えば、10~150nm、好ましくは40~100nm、より好ましくは60~80nmとする。150nm以下とすることで表面粗さを小さくすることができ、10nm以上とすることで下地膜との応力差に起因する膜剥がれの発生を抑制することができる。
【0092】
(雰囲気調整工程S308(アフターパージ・大気圧復帰))
成膜工程S300が終了したら、バルブ514,524を開き、ガス供給管310,320のそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気がNガスに置換され(Nガス置換)、処理室201内の圧力は常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0093】
(基板搬出工程S309(ボートアンロード・ウエハディスチャージ))
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端からアウターチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200は、アウターチューブ203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0094】
この様な基板処理工程を行うことで、ウエハ200に、所望の膜が堆積される。即ち、ボート217に支持されたウエハ200毎の処理均一性や、ウエハ200の面内の処理均一性を向上させることが可能となる。
【0095】
本実施形態の第二例では、基板として複数のウエハ200が積載された状態で収容された処理室201を所定温度で加熱しつつ、処理室201に、ノズル410に開口する複数のガス供給孔410aから原料ガスとしてTEMAZガスを供給する工程と、ノズル420に開口するガス供給孔420aから反応ガスを供給する工程と、を所定回数N´(N≧1回)行うことで、ウエハ200上に、ZrおよびOを含むジルコニウム酸化膜(ZrO膜)を形成する。
【0096】
(基板搬入工程S301)
第二例の基板搬入工程S301は第一例と同様である。
【0097】
(雰囲気調整工程S302)
第二例の雰囲気調整工程S302は第一例と同様である。
【0098】
[成膜工程S300]
ウエハ200上に、金属酸化膜として高誘電率酸化膜であるZrO膜を形成するステップを実行する。
【0099】
(第1の工程S303(第1ガス供給))
バルブ314を開き、ガス供給管310内に、処理ガスとして原料ガスであるTEMAZガスを流す。TEMAZガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、TEMAZガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にNガスを流す。ガス供給管510内を流れたNガスは、MFC512により流量調整される。NガスはTEMAZガスと一緒にノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0100】
また、ノズル420内へのTEMAZガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管320、ノズル42
0を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0101】
このとき、APCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば20~500Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御するTEMAZガスの供給流量は、例えば0.1~5.0g/分の範囲内の流量とする。ウエハ200をTEMAZに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば10~300秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば150~400℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。TEMAZガスの供給により、ウエハ200上にZr含有層が形成される。Zr含有層には、TEMAZガスに由来する有機物(炭素(C)、水素(H)、窒素(N)等)が残留元素としてわずかに残留する。
【0102】
(パージ工程S304(残留除ガス去工程))
TEMAZガスを所定時間供給した後、バルブ314を閉じて、TEMAZガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは反応に寄与した後のTEMAZガスを処理室201内から排除する。このときバルブ524は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用する。
【0103】
(第2の工程S305(反応ガス供給工程))
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に酸素含有ガスであるOガスを流す。Oガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してOガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にNガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管520内を流れたNガスは、MFC522により流量調整され、Oガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0104】
ガスを流すときは、APCバルブ243を適正に調整して処理室201内の圧力は、例えば110Paとする。MFC322で制御するノズル420から供給するOガスの合計の供給流量は、例えば70slmとする。MFC322およびAPCバルブ243で制御するOガスの流速は、例えば7.0m/s~8.5m/sの範囲内の流速とする。Oガスの分圧は、例えば9.0Pa(処理室201内の圧力の約8.0%)~12.0Pa(処理室201内の圧力の約11.0%)、より好ましくは11.0Pa(処理室201内の圧力の10.0%)の圧力とする。処理室201内に供給されるOガスの濃度は、250g/Nmとする。Oガスにウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば30~120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップS101と同様の温度とする。Oガスの供給により、ウエハ200上に形成されたZr含有層が酸化され、ZrO層が形成される。このとき、ZrO層には、TEMAZガスに由来する有機物(炭素(C)、水素(H)、窒素(N)等)がわずかに残留する。
【0105】
なお、本実施形態では、ノズル420の1本を用いてOガスを供給しているが、ノズルの本数は限定されず、例えば、3本のノズルでOガスを供給するようにしても構わない。
【0106】
(パージ工程S306(残留ガス除去工程))
ZrO層が形成された後、バルブ324を閉じ、Oガスの供給を停止する。そして、Oガス供給ステップ前の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはZrO層形成に寄与した後のOガスを処理室201内から排除する。
【0107】
[所定回数実施]
上述の第1の工程S303、パージ工程S304、第2の工程S305およびパージ工程S306を順に行うサイクルを1回以上(所定回数N´)行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さのZrO膜が形成される。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。このように、ZrO膜を形成する場合は、TEMAZガスとOガスを互いに混合しないよう(時分割して)交互にウエハ200に対して供給する。
【0108】
(雰囲気調整工程S308(アフターパージ・大気圧復帰))
第二例の雰囲気調整工程S308は第一例と同様である。
【0109】
(基板搬出工程S309(ボートアンロード・ウエハディスチャージ))
第二例の基板搬出工程S309は第一例と同様である。
【0110】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態を説明したが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。また、これに限るものでは無い。
【0111】
例えば、上述の実施形態では、反応容器(処理容器)を、アウターチューブ(外筒、外管)203とインナーチューブ(内筒、内管)204とで構成した例を示したが、アウターチューブ203だけで反応容器を構成しても良い。
【0112】
また、上述の実施形態の第一例では、Al含有ガスとしてTMAガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、塩化アルミニウム(AlCl)等を用いてもよい。O含有ガスとしては、Oガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、酸素(O)、水(HO)、過酸化水素(H)、Oプラズマと水素(H)プラズマの組合せ等も適用可能である。不活性ガスとしては、Nガスを用いる例について説明したが、これに限らず、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0113】
また、第1ガスとして、Al含有ガスを用いる例を示したが、これに限らず、以下のガスを用いることができる。例えば、シリコン(Si)元素を含有するガス、チタニウム(Ti)元素を含有するガス、タンタル(Ta)元素を含有するガス、ジルコニウム(Zr)元素を含有するガス、ハフニウム(Hf)元素を含有するガス、タングステン(W)元素を含有するガス、ニオブ(Nb)元素を含有するガス、モリブデン(Mo)元素を含有するガス、タングステン(W)元素を含有するガス、イットリウム(Y)元素を含有するガス、La(ランタン)元素を含有するガス、ストロンチウム(Sr)元素を含有するガス、等である。また、また、本開示に記した複数の元素を含有するガスを用いても良い。また、本開示に記した元素のいずれかを含むガスを複数用いても良い。
【0114】
また、第2ガスとして、酸素含有ガスを用いる例を示したがこれに限らず、以下のガスを用いることができる。例えば、窒素(N)元素を含有するガス、水素(H)元素を含有するガス、炭素(C)元素を含有するガス、ホウ素(B)元素を含有するガス、リン(P)元素を含有するガス、等である。また、本開示に記した複数の元素を含有するガスを用いても良い。また、本開示に記した元素のいずれかを含むガスを複数用いても良い。
【0115】
なお、上述では、第1ガスと第2ガスとを順に供給する例を示したが、本開示の基板処理装置10は、第1ガスと第2ガスとを並行して供給するタイミングを有する様に構成しても良い。第1ガスと第2ガスとを並行して供給する処理では、成膜レートを大幅に上昇させることが可能となるため、成膜工程S300の時間を短縮させることができ、基板処理装置10の製造スループットを向上させることが可能となる。
【0116】
また、上述では、基板上にAlO膜を形成する例について説明した。しかし、本開示はこの態様に限定されない。他の膜種に対しても用いられる。上述のガスを適宜組み合わせることで、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、La(ランタン)、ストロンチウム(Sr)、シリコン(Si)を含む膜であって、これらの元素の少なくとも1つを含む窒化膜、炭窒化膜、酸化膜、酸炭化膜、酸窒化膜、酸炭窒化膜、硼窒化膜、硼炭窒化膜、金属元素単体膜等にも適用可能である。
【0117】
また、上述では、基板上に膜を堆積させる処理について説明した。しかし、本開示はこの態様に限定されない。他の処理に対しても適用できる。例えば、第2ガス(反応ガス)だけをウエハ200に供給して処理させる様に構成しても良い。第2ガスだけをウエハ200に供給することで、ウエハ200表面に酸化等の処理を行うことが可能となる。この場合、低温領域に配置された部材の劣化(酸化)を抑制することが可能となる。
【0118】
また、上述の実施形態の第二例では、有機系原料としてTEMAZを例示しているが、これに限らず、その他の原料も適用可能である。例えば、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(CH)CHCH、TEMAH)等の有機系Hf原料、トリメチルアルミニウム((CHAl、TMA)等の有機系Al原料、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH、TDMAS)等の有機系Si原料、テトラキスジメチルアミノチタン(Ti[N(CH、TDMAT)等の有機系Ti原料、ペンタキスジメチルアミノタンタル(Ta(N(CH、PDMAT)等の有機系Ta原料等も適用可能である。
【0119】
また、上述の実施形態の第二例では、成膜工程で、Oガスを使用する例を示しているが、これに限らず、酸素含有ガスであれば、その他の原料も適用可能である。例えば、O、Oプラズマ、HO、H、NO等も適用可能である。
【0120】
また、上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例等の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0121】
また、上述では、一度に複数枚の基板を処理する縦型の基板処理装置について説明した
が、一度に1枚の基板を処理する枚葉装置においても、本開示の技術を適用することが可
能である。
【0122】
また、上述では、基板処理装置10で実行する基板処理として、半導体装置の製造工程の一工程として成膜処理を行う例を示したが、これに限るものでは無い。他の基板処理も実行可能である。また、半導体装置の製造工程以外にも、ディスプレイ装置(表示装置)の製造工程の一工程、セラミック基板製造工程の一工程、等で行われる基板処理を実行可能である。
【0123】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0124】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
金属により構成された支柱と、前記支柱に設けられ、複数の基板を(略水平姿勢で、垂直方向に所定の間隔で)多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を有する基板支持具と、
前記基板支持具に支持された前記複数の基板を収容する処理室と、
前記処理室に収容された前記複数の基板を加熱する加熱部と、
を備え、
前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が金属酸化物又は非金属物の少なくとも何れかにより構成されている基板処理装置が提供される。
【0125】
(付記2)
前記複数の支持部は、前記支柱に固定された複数の支持ピンにより構成される、付記1の基板処理装置。
【0126】
(付記3)
前記複数の支持部は、少なくとも一部が前記金属で構成されている、付記1又は2の基板処理装置。
【0127】
(付記4)
前記複数の支持部は、前記支柱に設けられた複数の溝により構成される、付記1の基板処理装置。
【0128】
(付記5)
前記接触部は、前記複数の支持部(前記複数の支持ピン、又は前記複数の溝)を被覆する前記金属酸化物の膜又は前記非金属物の膜の少なくとも何れかにより構成される、付記2~4の基板処理装置。
【0129】
(付記6)
前記接触部は、前記金属酸化物又は前記非金属物の少なくとも何れかにより形成されたピース状部材により構成される、付記3又は4の基板処理装置。
【0130】
(付記7)
前記複数の支持部のうち、前記金属で構成されている部分の少なくとも一部は、前記金属酸化物の膜又は前記非金属物の膜の少なくとも何れかにより被覆されている、付記6の基板処理装置。
【0131】
(付記8)
前記複数の支持部は、前記金属酸化物又は前記非金属物の少なくとも何れかにより形成されている、付記1又は2の基板処理装置。
【0132】
(付記9)
前記支柱は、前記金属酸化物の膜又は前記非金属物の膜の少なくとも何れかにより被覆されている、付記1~8の基板処理装置。
【0133】
(付記10)
前記支柱は、少なくとも一部が前記非金属物の膜又は前記金属酸化物の膜により被覆されず、前記金属の表面が露出している、付記1~8の基板処理装置。
【0134】
(付記11)
前記非金属物はシリコン(Si)、酸化シリコン(SiO、石英)、窒化シリコン(SiN)、又は炭化シリコン(SiC)の少なくとも何れかである、付記1~10の基板処理装置。
【0135】
(付記12)
前記金属酸化物は、酸化クロム(CrO)又は酸化アルミニウム(AlO)の少なくとも何れかである、付記1~10の基板処理装置。
【0136】
(付記13)
前記複数の支持ピンは、それぞれ凹部を有し、前記凹部に差し込まれた柱状部材によって前記支柱に固定されている、付記8の基板処理装置。
【0137】
(付記14)
前記支柱は、複数の凹部又は貫通孔を有し、
前記複数の支持ピンは、それぞれ前記複数の凹部又は貫通孔と嵌合する凸部を有する、付記8の基板処理装置。
【0138】
(付記15)
本開示の他の態様によれば、
金属により構成された支柱と、
前記支柱に設けられ、複数の基板を(略水平姿勢で、垂直方向に所定の間隔で)多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を備え、
前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が金属酸化物又は非金属物の少なくとも何れかにより構成されている基板支持具が提供される。
【0139】
(付記16)
本開示の他の態様によれば、
金属により構成された支柱と、前記支柱に設けられ、複数の基板を(略水平姿勢で、垂直方向に所定の間隔で)多段に支持するよう構成された複数の支持部と、を有する基板支持具を、前記複数の支持部に前記複数の基板が支持された状態で、基板処理装置の処理室内に搬入する工程と、
前記処理室に搬入された前記複数の基板を加熱する工程と、
処理後の前記複数の基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有し、前記複数の支持部は、少なくとも前記複数の基板に接触する接触部が金属酸化物又は非金属物の少なくとも何れかにより構成されている半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0140】
10:基板処理装置
200:ウエハ(基板)
201:処理室
207:ヒータ(加熱部)
217:ボート(基板支持具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13