(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】電子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220131BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220131BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220131BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01L21/30 541L
G03F7/20 504
H01L21/30 541Z
H01J37/20 D
H01J37/28 B
H01J37/28 Z
(21)【出願番号】P 2020556769
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019060340
(87)【国際公開番号】W WO2019211123
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-12-08
(32)【優先日】2018-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンペニウス,ピーター,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホル,スヴェン,アントワン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】クレマーズ,マールテン,フランス,ヤヌス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ グローズ,ヘンリカス,マルティヌス,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,ニールズ,ヨハネス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】バッゲン,マーセル,コエンラード,マリエ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209521(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167339(WO,A1)
【文献】特開2008-103367(JP,A)
【文献】特開平11-194824(JP,A)
【文献】特開2013-021044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム装置であって、
電子ビームをオブジェクト上に投影するように構成された電子光学系システムと、
前記オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルと、
前記オブジェクトテーブルを前記電子光学系システムに関して移動させるように構成された位置決めデバイスと、
を備え、
前記位置決めデバイスは、前記電子光学系システムに関して前記オブジェクトテーブルを移動させるように構成されたショートストロークステージ、及び、前記電子光学系システムに関して前記ショートストロークステージを移動させるように構成されたロングストロークステージを備え、
前記電子ビーム装置は、前記位置決めデバイスによって生成される磁気外乱から前記電子光学系システムを遮蔽するための磁気シールドを更に備え、
前記磁気シールドは、前記位置決めデバイスによって移動されるべき部分に接続される可動磁気シールドを備
え、
前記オブジェクトテーブルは、可動磁気シールド内のスルーホールを介して延在する接続構造によって位置決めデバイスに取り付けられる、
電子ビーム装置。
【請求項2】
前記位置決めデバイスは磁気アクチュエータを更に備える、請求項
1に記載の電子ビーム装置。
【請求項3】
前記磁気アクチュエータは前記オブジェクトテーブルを移動させるように構成される、請求項
2に記載の電子ビーム装置。
【請求項4】
前記磁気シールドは、磁気的なシールディング材料によって前記磁気アクチュエータを実質的に覆うように構成された局所磁気シールドを備える、請求項
2又は3に記載の電子ビーム装置。
【請求項5】
前記可動磁気シールドは、前記ロングストロークステージ及び/又は前記ロングストロークステージによって移動されるべき部分に接続される、請求項1から
4のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項6】
前記磁気アクチュエータを備え、前記可動磁気シールドは、前記磁気アクチュエータによって生成される磁気外乱を少なくとも部分的に遮蔽するように構成される、請求項1から
5のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項7】
前記可動磁気シールドの長さは、少なくとも前記電子光学系システムの視野及び前記位置決めデバイスの動きの領域に沿って延在する、請求項1から
6のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項8】
前記磁気シールドは、前記電子光学系システムに関して静的である静的磁気シールドを備える、請求項1から
7のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項9】
前記静的磁気シールドの長さは、少なくとも前記電子光学系システムの視野に沿って延在する、請求項
8に記載の電子ビーム装置。
【請求項10】
前記ロングストロークステージはデュアルロングストロークステージアクチュエータを備え、前記デュアルロングストロークステージアクチュエータは、前記位置決めデバイスの動きの主平面に対して平行な方向に見える、前記ショートストロークステージのいずれかの側に間隔を置いて配置され、前記位置決めデバイスは、前記
ロングストロークステージをそれぞれの前記ロングストロークステージアクチュエータに接続する接続構造を更に備え、前記接続構造は前記位置決めデバイスの動きの主平面に対して平行な方向に延在する、請求項1から
9のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項11】
前記電子ビーム装置は高電圧プレートを備え、前記磁気シールドは前記高電圧プレートと組み合わされる、請求項1から
10のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項12】
前記オブジェクトテーブル及び前記位置決めデバイスの一部のうちの少なくとも1つの上の重力を、少なくとも部分的に補償するための重力補償器を更に備え、前記重力補償器は非磁気重力補償器又は磁気シールドによって遮蔽された磁気重力補償器である、請求項1から
11のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項13】
前記ショートストロークステージと前記ロングストロークステージとの間、又は前記ショートストロークステージと前記オブジェクトテーブルとの間の相対距離を測定するための、位置センサを更に備え、前記位置センサは、非磁気位置センサ又は磁気シールドによって遮蔽された磁気位置センサである、請求項1から
12のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【請求項14】
前記電子ビーム装置は、電子走査顕微鏡、電子ビームダイレクトライタ、電子ビーム投影リソグラフィ装置、電子ビーム検査装置、電子ビーム欠陥検証装置、又は電子ビームメトロロジ装置である、請求項1から
13のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2018年5月2日出願の欧州出願第18170351.3号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は電子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 本発明は、半導体デバイスを検査するために適用可能であるような電子ビーム装置に関する。
【0004】
[0004] 電子ビーム装置は、電子ビーム電子ビームを基板の表面上に投影する。磁力によって電子ビームを合焦又は偏向するためのデバイスである磁気レンズは、磁界を用いて基板のターゲット部分上に電子ビームを合焦させる。電子ビームは荷電粒子(例えば、電子)を含むため、また磁界は磁気ローレンツ力によって荷電粒子と相互作用するため、電子ビームは磁気外乱の影響を受けやすい可能性がある。
【0005】
[0005] 電子ビーム装置の位置決めデバイスのアクチュエータは磁気アクチュエータとすることができる。こうした磁気アクチュエータは、作動時に、電子ビームに影響を与える可能性のある浮遊磁界を生成する。一方で、浮遊磁界はそれぞれ磁気レンズ動作で電子ビームと相互作用し、したがって電子ビームは不正確になる。他方で、位置決めデバイスが作動し、その後、検査が再開するとき、すなわち、浮遊磁界の影響を低減させるために、位置決めデバイスのアクチュエータが少ない力を及ぼすか又は力を及ぼさないときに検査が再開するときに、電子ビーム検査ツールが中断する場合、スループットにおける損失が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本発明の目的は、高スループットにおける高い確度を可能にする電子ビーム検査ツールを提供することである。
【0007】
[0007] 本発明の一態様によれば、
電子ビームをオブジェクト上に投影するように構成された電子光学系システムと、
オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルと、
電子光学系システムに関してオブジェクトテーブルを移動させるように構成された位置決めデバイスであって、位置決めデバイスは、電子光学系システムに関してオブジェクトテーブルを移動させるように構成されたショートストロークステージ、及び電子光学系システムに関してショートストロークステージを移動させるように構成されたロングストロークステージを備える、位置決めデバイスと、
を備える、電子ビーム装置が提供され、
電子ビーム装置は、位置決めデバイスによって生成される磁気外乱から電子光学系システムを遮蔽するための磁気シールドを更に備える。
【0008】
[0008] 本発明の一態様によれば、上記態様のいずれかに従った電子ビーム装置が提供され、
電子ビーム装置は、電子走査顕微鏡、電子ビームダイレクトライタ、電子ビーム投影リソグラフィ装置、電子ビーム検査装置、電子ビーム欠陥検証装置、又は電子ビームメトロロジ装置である。
【0009】
[0009] 本発明は、添付の図面と共に下記の詳細な説明によって容易に理解され、添付の図面では、同じ参照番号は同じ構造要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】[0010]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム検査ツールなどの電子ビーム装置を示す概略図である。
【
図1B】[0010]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム検査ツールなどの電子ビーム装置を示す概略図である。
【
図2】[0011]本発明の一実施形態において適用可能な、電子光学システムを示す概略図である。
【
図3】[0011]本発明の一実施形態において適用可能な、電子光学システムを示す概略図である。
【
図4】[0012]本発明に従った、EBIシステムの可能な制御アーキテクチャを概略的に示す図である。
【
図5】[0013]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム装置を概略的に示す図である。
【
図6】[0014]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム装置を概略的に示す図である。
【
図7A】[0015]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム装置のアクチュエータを概略的に示す図である。
【
図7B】[0015]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム装置のアクチュエータを概略的に示す図である。
【
図8】[0016]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム装置の電子光学系システムの視野を概略的に示す図である。
【
図9】[0017]本発明の一実施形態に従った、電子ビーム装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018] 本発明は様々な修正及び代替形の影響を受けやすいが、それらのうちの特定の実施形態が例として図面内に示されており、本明細書で詳細に説明されている。図面は一定の縮尺ではない可能性がある。しかしながら、図面及び図面に対する詳細な説明は、本発明を開示される特定の形に限定することは意図しておらず、むしろ本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に入る、すべての修正形態、等価形態、及び代替形態をカバーするものであることを理解されたい。
【0012】
[0019] 次に、本発明の様々な例示の実施形態を、本発明のいくつかの例示の実施形態が示された添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。図面では、明確にするために、層の厚み及び領域が誇張されている場合がある。
【0013】
[0020] 本明細書では、本発明の詳細な例示的実施形態を開示する。しかしながら、本明細書で開示される特定の構造上及び機能上の詳細は、本発明の例示の実施形態を説明するための単なる代表である。しかしながら、本発明は多くの代替の形で具体化可能であり、本明細書に示される実施形態のみに限定されるものと解釈すべきではない。
【0014】
[0021] したがって、本発明の例示の実施形態は様々な修正及び代替の形が可能であり、それらの実施形態は図面内に例として示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本発明の例示の実施形態を開示された特定の形に限定することは意図されておらず、むしろ、本発明の例示の実施形態は、本発明の範囲内に入るすべての修正形態、等価形態、及び代替形態をカバーするものであることを理解されたい。図面の説明全体を通じて同じ番号は同じ要素を指す。
【0015】
[0022] 本明細書で使用される場合、「試料」という用語は一般に、検出したい欠陥(DOI)が見つかる可能性のあるウェーハ又は任意の他の試料を指す。「試料」及び「サンプル」という用語は本明細書では交換可能に使用されるが、ウェーハに関して本明細書に記載される実施形態は、任意の他の試料(例えば、レチクル、マスク、又はフォトマスク)のために構成及び/又は使用可能であることを理解されよう。
【0016】
[0023] 本明細書で使用される場合、「ウェーハ」という用語は一般に、半導体又は非半導体材料で形成される基板を指す。こうした半導体又は非半導体材料などの例は、限定されないが、単結晶シリコン、ガリウムヒ素、及びリン化インジウムを含む。こうした基板は、半導体製造施設において一般的に見ること及び/又は処理することができる。
【0017】
[0024] 本発明において、「軸上の」は「レンズなどの装置、コラム、又はデバイスの光軸方向において」を意味し、「放射状の」は「光軸に対して直角な」を意味する。通常、光軸はカソードから始まり試料で終わる。光軸はすべての図において常にz軸を指す。
【0018】
[0025] クロスオーバーという用語は、電子ビームが合焦するポイントを指す。
【0019】
[0026] 仮想光源という用語は、カソードから放出される電子ビームは「仮想」光源へと遡ることができることを意味する。
【0020】
[0027] 本発明に従った装置(例えば、検査ツール)は、荷電粒子源、特にSEM、電子ビーム検査ツール、又はEBDWに適用可能な電子ビーム源に関する。本分野において、電子ビーム源はe銃(電子銃)と呼ぶこともできる。
【0021】
[0028] 図面に関して、図面は一定の縮尺で描画されていないことに留意されたい。特に、図面の要素のうちのいくつかの尺度は、要素の特徴を強調するように大幅に誇張されている場合がある。図面は同じ尺度で描画されていないことにも留意されたい。同様に構成可能な複数の図面に示される要素は、同じ参照番号を使用して示されている。
【0022】
[0029] 図面において、各構成要素及びあらゆる構成要素間の相対的な寸法は誇張されている場合がある。図面の下記の説明において、同一又は同様の参照番号は同一又は同様の構成要素又はエンティティを指し、個々の実施形態に関する相違点のみを説明する。
【0023】
[0030] したがって、本発明の例示の実施形態は様々な修正及び代替の形が可能であり、それらの実施形態は図面内に例として示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本発明の例示の実施形態を開示された特定の形に限定することは意図されておらず、むしろ、本発明の例示の実施形態は、本発明の範囲内に入るすべての修正形態、等価形態、及び代替形態をカバーするものであることを理解されたい。
【0024】
[0031]
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態に従った、電子ビーム検査(EBI)システム100の上面図及び断面図を概略的に示す。図示された実施形態は、エンクロージャ110、検査すべきオブジェクトを受け取るため及び検査されたオブジェクトを出力するためのインターフェースとして働く1対のロードポート120を備える。図示された実施形態は、オブジェクトを取り扱うように、及び/又はオブジェクトをロードポートとの間で搬送するように構成された、EFEM、機器フロントエンドモジュール130と呼ばれる、オブジェクト移送システムを更に備える。図に示される実施形態において、EFEM130は、EBIシステム100のロードポートとロードロック150との間でオブジェクトを搬送するように構成された、ハンドラロボット140を備える。ロードロック150は、エンクロージャ110の外側で発生する大気状態と、EBIシステム100の真空チャンバ160内で発生する真空状態との間の、インターフェースである。図に示される実施形態において、真空チャンバ160は、検査すべきオブジェクト、例えば半導体基板又はウェーハ上に電子ビームを投影するように構成された、電子光学系システム170を備える。EBIシステム100は、電子光学系システム170によって生成される電子ビームに関してオブジェクト190を変位させるように構成された、位置決めデバイス180を更に備える。
【0025】
[0032] 一実施形態において、位置決めデバイスは、実質的に水平な面においてオブジェクトを位置決めするためのXYステージ、及び垂直方向にオブジェクトを位置決めするためのZステージなどの、複数のポジショナのカスケード配置を備えることができる。
【0026】
[0033] 一実施形態において、位置決めデバイスは、比較的大きな距離にわたるオブジェクトの粗動位置決めを提供するように構成された粗動ポジショナと、比較的小さな距離にわたるオブジェクトの微動位置決めを提供するように構成された微動ポジショナとの組み合わせを、含むことができる。本明細書ではポジショナという用語が適用されるが、これは例えばステージと理解することができる。
【0027】
[0034] 一実施形態において、位置決めデバイス180は、EBIシステム100によって検査プロセスが実行される間、オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルを更に備える。こうした実施形態において、オブジェクト190は、静電クランプなどによってオブジェクトテーブル上にクランプすることができる。こうしたクランプは、オブジェクトテーブルに一体化することができる。
【0028】
[0035] 本発明によれば、位置決めデバイス180は、オブジェクトテーブルを位置決めするための第1のポジショナ、及び、第1のポジショナ及びオブジェクトテーブルを位置決めするための第2のポジショナを備える。加えて、本発明に従って電子ビーム検査ツール100内に適用されるような位置決めデバイス180は、オブジェクトテーブル内に熱負荷を発生させるように構成される加熱デバイスを備える。
【0029】
[0036] 本発明において適用されるような位置決めデバイス180及び加熱デバイスを、下記でより詳細に考察する。
【0030】
[0037]
図2は、本発明に従って電子ビーム検査ツール又はシステムにおいて適用できるような電子光学系システム200の一実施形態を概略的に示す。電子光学系システム200は、電子銃210及び結像システム240と呼ばれる、電子ビーム源を備える。
【0031】
[0038] 電子銃210は、電子源212、サプレッサ214、アノード216、アパーチャのセット218、及びコンデンサ220を備える。電子源212は、ショットキー放出器とすることができる。より具体的には、電子源212は、セラミック基板、2つの電極、タングステンフィラメント、及びタングステンピンを含む。2つの電極はセラミック基板に対して平行に固定され、2つの電極の他の側面はそれぞれタングステンフィラメントの2つの端部に接続される。タングステンは、タングステンピンを配置するための先端を形成するためにわずかに曲げられる。次に、タングステンピンの表面でZrO2がコーティングされ、溶融するように1300℃まで加熱され、タングステンピンをカバーするがタングステンピンのピン先はカバーしない。溶融したZrO2は、タングステンの仕事関数を低下させ、放出される電子のエネルギーバリアを減少させることができるため、電子ビーム202は効率的に放出される。次いで、負の電気をサプレッサ214に印加することによって、電子ビーム202は抑制される。したがって、大きな広がり角を有する電子ビームは1次電子ビーム202へと抑制され、したがって電子ビーム202の輝度は強化される。アノード216の正電荷によって電子ビーム202が抽出可能であり、その後、アパーチャの外側の不要な電子ビームを消去するために異なるアパーチャサイズを有する調整可能アパーチャ218を使用することによって、電子ビーム202のクーロンの強迫力を制御することができる。電子ビーム202を凝縮するために、電子ビーム202にコンデンサ220が印加され、倍率も提供する。
図2に示されるコンデンサ220は、例えば、電子ビーム202を凝縮できる静電レンズとすることができる。他方で、コンデンサ220は磁気レンズとすることもできる。
【0032】
[0039]
図3に示されるような結像システム240は、ブランカ248、アパーチャのセット242、検出器244、4つの偏向器のセット250、252、254、及び256、1対のコイル262、ヨーク260、フィルタ246、及び電極270を備える。電極270は、電子ビーム202を遅らせるため及び偏向させるために使用され、上極部片及びサンプル300の組み合わせに起因する静電レンズ機能を更に有する。その上、コイル262及びヨーク260は、磁気対物レンズに構成される。
【0033】
[0040] 前述の電子ビーム202は、電子ピンを加熱すること及び電界をアノード216に印加することによって生成されるため、電子ビーム202を安定させるために、電子ピンを長時間加熱しなければならないことになる。ユーザ側から見ると、これは間違いなく時間がかかり不便である。したがって、電子ビーム202を止めるのではなく一時的にサンプルから遠くへ偏向させるために、凝縮された電子ビーム202にブランカ248が印加される。
【0034】
[0041] 偏向器250及び256は広視野への電子ビーム202をスキャンするために適用され、偏向器252及び254は狭視野への電子ビーム202をスキャンするために使用される。偏向器250、252、254、及び256はすべて、電子ビーム202のスキャン方向を制御することができる。偏向器250、252、254、及び256は、静電偏向器又は磁気偏向器とすることができる。ヨーク260の開口部はサンプル300を向いており、磁界をサンプル300内に浸す。他方で、電極270はヨーク260の開口部の下に配置され、したがってサンプル300は損傷を受けることがない。電子ビーム202の色収差を訂正するために、リターダ270、サンプル300、及び上極部片は、電子ビーム202の色収差を消去するためのレンズを形成する。
【0035】
[0042] その上、電子ビーム202がサンプル300内に衝突するとき、2次電子がサンプル300の表面から発せられることになる。次に、2次電子はフィルタ246によって検出器244に向けて誘導される。
【0036】
[0043]
図4は、本発明に従ったEBIシステムの可能な制御アーキテクチャを概略的に示す。
図1に示されるように、EBIシステムは、ロードロック、ウェーハ移送システム、ロード/ロック、電子光学系システム、及び、例えばzステージ及びx-yステージを含む位置決めデバイスを備える。図に示されるように、EBIシステムのこれらの様々な構成要素は、それぞれのコントローラ、すなわちウェーハ移送システムに接続されたウェーハトランスポータシステムコントローラ、ロード/ロックコントローラ、電子光学系コントローラ、検出器コントローラ、ステージコントローラを装備することができる。これらのコントローラは、例えば通信バスを介して、例えばシステムコントローラコンピュータ及びイメージ処理コンピュータに通信可能に接続することができる。図に示される実施形態において、システムコントローラコンピュータ及びイメージ処理コンピュータは、ワークステーションに接続可能である。
【0037】
[0044] ロードポートは、ウェーハをEREM130などのウェーハ移送システムにロードし、ウェーハ移送システムコントローラは、ウェーハをロードロック150などのロード/ロックに移送するためのウェーハ移送を制御する。ロード/ロックコントローラは、検査されるべきオブジェクト、例えばウェーハが、eチャックとも呼ばれるクランプ、例えば静電クランプ上に固定できるように、チャンバへのロード/ロックを制御する。位置決めデバイス、例えばzステージ及びxyステージは、ステージコントローラによってウェーハを移動させることができる。一実施形態において、zステージの高さは、例えばピエゾアクチュエータなどのピエゾ構成要素を使用して調整することができる。電子光学系コントローラは、電子光学系システムのすべての条件を制御することができ、検出器コントローラは電子光学系システムから電気信号を受信し、イメージ信号に変換することができる。システムコントローラコンピュータは、コマンドを対応するコントローラに送信するためのものである。イメージ信号を受信した後、イメージ処理コンピュータはイメージ信号を処理して欠陥を識別することができる。
【0038】
[0045]
図5は、電子ビーム装置を概略的に示す。電子ビーム装置は、荷電粒子など、電子又は他の粒子などの、粒子のビームをオブジェクト上に投影する。電子ビーム装置は、電子ビーム検査ツールとすることができる。本例における電子ビーム装置は、電子光学系システム500、位置決めデバイス510、及びオブジェクトテーブル520を備える。位置決めデバイス510及びオブジェクトテーブル520は、真空チャンバ530内に配置される。電子光学系システム500は、真空チャンバ内に提供するか、又は真空チャンバに接続することができる。より具体的には、電子光学系システム500の電子ビームは真空チャンバ530内を伝搬し、より具体的には、電子ビームは伝搬パスに沿って検出すべきターゲット表面上へと伝搬する。位置決めデバイス510は、電子光学系システム500に関してオブジェクトテーブル520を移動させる。例えば位置決めデバイス510は、オブジェクトテーブル520を移動させることができる。代替として位置決めデバイス510は、電子光学系システム500を移動させることができる。
【0039】
[0046] 位置決めデバイス510は、ロングストロークステージ511及びショートストロークステージ512を備える。ショートストロークステージ512は、オブジェクトテーブル520を移動させるためにオブジェクトテーブル520に接続される。ロングストロークステージ511は、ショートストロークステージ512及びオブジェクトテーブル520を移動させるように、ショートストロークステージ512に接続される。ロングストロークステージ511はオブジェクトテーブル520の粗動位置決めを提供し、ショートストロークステージ512はオブジェクトテーブル520の微動位置決めを提供する。ロング及びショートストロークステージ511、512は各々が、コイル、及び、永久磁石又は電磁石などの磁石を備えるモータを備えることができる。電流がロングストロークステージ511及び/又はショートストロークステージ512のコイルを介して流れているとき、電子ビームの伝搬パスは浮遊磁界にさらされる。
【0040】
[0047] 上記で説明したように、浮遊磁界は、結果として電子ビーム検出ツールの確度の損失及び/又はスループットの損失を生じさせる可能性がある。この問題に対する従来技術の解決策は、位置決めデバイスのアクチュエータの磁石及びコイルの磁気シールディングを含む。このシールディングは、伝搬パスに向かう、及び磁気レンズに向かう、浮遊磁界を低減させる。しかしながらこの解決策は、不十分であることがわかっている。浮遊磁界は低減されるが、磁石部分を移動させる結果として、電子光学系システムは依然として外乱にさらされる。
【0041】
[0048] 本発明の一態様によれば、位置決めデバイス510と電子光学系システム500との間に磁気シールド540が配置される。磁気シールド540は、位置決めデバイス510による磁気外乱から電子光学系システム500を、例えば、ロングストロークステージ511及び/又はショートストロークステージ512についての磁気アクチュエータから浮遊磁界を遮蔽する。浮遊磁界は、オブジェクトテーブル520の近くで、及びしたがって、電子が照射されるべきオブジェクトテーブル520によって保持されるオブジェクトの近くで発生するため、磁気アクチュエータから浮遊磁界を遮蔽することは有益である。磁気シールド540は、ミューメタルなどの磁気的なシールディング材料によって形成可能であり、例えばホイル、シート、プレートなどの形とすることができる。
【0042】
[0049] 一方で、磁気シールド540の結果として、浮遊磁界は電子ビームから遮蔽可能である。他方で、位置決めデバイスの磁石を移動させること及び/又は局所シールドを移動させることなどの、磁気材料の一部を移動させることは、電子ビームに影響を与えるために遮蔽及び抑制することができる。
【0043】
[0050]
図5に示されるように、磁気シールド540は、位置決めデバイス510と電子光学系システム500との間に配置され、したがって位置決めデバイス510からの浮遊磁界を遮蔽することができる。
図5に示されるように、磁気シールド540は、位置決めデバイス510によって移動されるべき部分に接続される。したがって、磁気シールド540は、可動磁気シールド又はグローバル可動磁気シールドとしても識別可能である。したがって磁気シールド540は、位置決めデバイス510が作動されたときに移動可能である。例えば、位置決めデバイス510によって移動されるべき部分はオブジェクトテーブル520であり、磁気シールド540はオブジェクトテーブル520と共に移動可能である。したがって、たとえ位置決めデバイス510がオブジェクトテーブル520を異なる位置へ移動させる場合であっても、位置決めデバイス510のアクチュエータの遮蔽を維持することが可能である。
【0044】
[0051] 磁気シールド540は、オブジェクトテーブル520の下方で延在可能であり、すなわち、電子光学系システム500から見て外を向いたオブジェクトテーブル520の側面で延在可能である。したがって磁気シールド540は、電子ビームがシールドを通過するためのシールド内のいずれのスルーホールも必要とせず、高水準の遮蔽を提供することができる。
【0045】
[0052] 前述のようにロングストロークステージ511及びショートストロークステージ512を使用することで、ロングストロークステージ511によって移動されるように、磁気シールド540をロングストロークステージ511に接続することが可能である。ロングストローク/ショートストローク構成において、ロングストロークステージ511は粗動位置決めを提供し、ショートストロークステージ512は微動位置決め、すなわち高精度位置決めを提供する。ロングストロークステージ(すなわち、ロングストロークアクチュエータ513)は、一方で位置決めデバイスのフレーム又はバランスマスと、他方でショートストロークステージ512との間で働く。ショートストロークステージ512を移動させるために、ロングストロークステージ511の可動部分がショートストロークステージ512に接続される。磁気シールド540は、例えばロングストロークステージ511の可動部分に接続可能である。ロングストロークステージ511によって磁気シールド540を移動させることで、ロングストロークステージの動きを追うことによって、磁気シールド540はオブジェクトテーブル520の大きな動きを追うことができるが、ショートストロークステージ512によるより小さくより正確な動きは追わないため、ショートストローク位置決め、すなわちオブジェクトテーブル520の微動位置決めの確度及び/又は速さに悪影響を及ぼさないようにするために、ショートストロークアクチュエータ上の磁気シールド540による追加の負荷は防止されるものとなる。
【0046】
[0053] オブジェクトテーブル520を位置決めデバイス510に接続するために、オブジェクトテーブル520は、磁気シールド540内のスルーホール541を介して延在する接続構造521を用いて位置決めデバイス510に取り付けられる。磁気シールド540がロングストロークステージ511の可動部分に接続される上記の例では、接続構造521は、オブジェクトテーブル520とショートストロークステージ512との間に延在可能である。可動磁気シールドは、一方でロングストロークステージ511とショートストロークステージ512との間に、また他方でオブジェクトテーブル520と電子光学系システム500との間に配置可能であり、したがって、電子ビームの伝搬パスをロングストロークアクチュエータ513及びショートストロークアクチュエータの浮遊磁界から遮蔽する。したがって、ショートストロークステージアクチュエータによって移動されるショートストロークステージ512の一部並びにオブジェクトテーブル520は、電子光学系システム500の一方の側に配置することができる。
【0047】
[0054]
図8に示されるように、磁気シールドは、電子光学系システム500の磁気レンズ810の視野800に沿って延在することができる。電子光学系システム500の視野は、電子光学系システム500の視野角によってカバーされるエリアとして理解可能であり、電子光学系システム500の視野角は、その下で電子光学系システム500が浮遊磁界に対する感受性を示す空間角として理解可能である。視野は平面内に常駐するエリアとして理解可能であり、平面は検査すべきオブジェクトの表面に対してほぼ平行である。上記の定義に鑑みて、電子光学系システム500の視野は、「視野の磁気外乱」、すなわち、電子光学系システム500及び/又は電子ビームが浮遊磁界外乱の影響を受けやすい視野と呼ぶことも可能である。非動態にある磁気シールドの最小長さが820によって示され、視野800をカバーしている。最左端位置830と右端位置831との間の変位は832によって示され、したがって、オブジェクトテーブル520の動きの最大移動長を形成する。磁気シールドが位置決めデバイスと共に移動する実施形態において、磁気シールドの長さは、少なくとも、記号820によって示されるような電子光学系システム500の視野800、及び記号832によって示されるような位置決めデバイスの動きの(最大)領域に沿って延在する。シールド840のシールド長さは、820及び832の追加の長さを形成し、したがって、オブジェクトテーブル520及びシールドは移動長さ832を有する動きを伴って移動するため、視野をカバーすることが可能なシールドを提供する。
【0048】
[0055] したがって磁気シールドは、電子光学系システム500の視野、すなわち浮遊磁界からの外乱についての視野に沿って延在する。更に、磁気シールドは位置決めデバイス510と共に動くため、位置決めデバイス510の最大移動長さが考慮の対象となる。したがって、(最大)移動長さ内のオブジェクトテーブル520の各位置において、電子光学系システム500の視野は磁気シールドと向かい合う。長さという用語は、x方向並びにy方向に適用可能であることを理解されよう。したがって、長さはx方向及び/又はy方向において理解可能である。完全を期すために、x及びy方向は、検査すべきオブジェクトの表面に対して実質的に平行な平面に広がる方向として理解可能であり、z方向は、x及びy方向に広がる平面に対して垂直な方向として理解可能であることに留意されたい。
【0049】
[0056]
図6は別の実施形態を示し、
図5に示される実施形態と同様に、電子光学系システム600、位置決めデバイス610、及びオブジェクトテーブル620を備える、電子ビーム検査ツールなどの電子ビーム装置を概略的に示す。位置決めデバイス610及びオブジェクトテーブル620は真空チャンバ630内に配置される。
図6に示すような実施形態において、磁気シールド640は電子光学系システム600に関して静的である。したがって磁気シールド640は、静的磁気シールド又はグローバル静的磁気シールドとして識別可能である。静的磁気シールドは、例えば真空チャンバ630に、真空チャンバ630内の高電圧プレート650に、又は電子光学系システム600に、取り付けることができる。磁気シールド640は定常であるため、位置決めデバイス610上のいかなる追加の負荷も防止することができる。更に、静的磁気シールド640は位置決めデバイス610によって移動する必要がないため、それに応じて低重量の磁気シールド640は必要ない可能性がある。したがって、静的磁気シールドは相対的に高い厚み(又は多層)を有することができ、したがって高レベルの遮蔽を提供することができる。電子ビームの伝搬パスを渡すために、静的磁気シールド640にスルーホール641が提供され、それによって電子ビームの伝搬パスはスルーホールを介して渡される。
【0050】
[0057]
図6は、可動磁気シールド660を更に示す。可動磁気シールド660は静的磁気シールド640内のスルーホールに面しており、したがって可動磁気シールド660は、他の方法で静的磁気シールド640内のスルーホールを通過することができる任意の残りの浮遊磁界から、電子光学系システム600及び伝搬パスに沿った電子ビームを遮蔽することになる。可動磁気シールド660は、このようにして電子光学系システム600を位置決めデバイス610(の1つ以上のアクチュエータ)から少なくとも部分的に遮蔽するために、位置決めデバイス610とオブジェクトテーブル620との間に配置される。更に、可動磁気シールド660は、このようにして可動磁気シールド660が電子ビームの伝搬パスを妨害するのを防ぐために、電子光学系システム600から見て外を向いたオブジェクトテーブル620の側面で延在する。
【0051】
[0058] 可動磁気シールド660は、可動磁気シールド660を静的磁気シールド640の近くに、特に、静的磁気シールド640のスルーホールの近くに保持することができるものとするために、位置決めデバイス610によって移動される位置決めデバイス610に接続される。オブジェクトテーブル620は、可動磁気シールド660内のスルーホール661を介して延在する接続構造621を用いて、位置決めデバイス610に取り付けられ、したがって位置決めデバイスのアクチュエータは可動磁気シールド660の下方に配置され、オブジェクトテーブル620は可動磁気シールド660の上方に配置されるため、可動磁気シールド660は位置決めデバイスのアクチュエータを遮蔽することになる。同様に、
図5のロングストロークステージ611~ショートストロークステージ612の配置を参照しながら説明するように、可動磁気シールド660は、
図6のロングストロークステージ611~ショートストロークステージ612の配置によって移動されるべきロングストロークステージ611に接続可能であり、したがって、場合によってはより正確であり、より高速なショートストロークステージ612上にシールドによって負荷を与えることなく、オブジェクトテーブル620の粗な動きを追うように、可動磁気シールド660を位置決めする。可動磁気シールド660は、一方でロングストロークアクチュエータ613とショートストロークアクチュエータとの間に、また他方でオブジェクトテーブル620と電子光学系システム600との間に配置可能であり、したがってロングストローク及びショートストロークのアクチュエータの浮遊磁界から電子ビームの伝搬パスを遮蔽する。
【0052】
[0059] 再度
図8に戻ると、静的磁気シールド640長さは、少なくとも電子光学系システム600の視野800に沿って延在し、したがって、
図8のシールド820の長さを有する。したがって磁気シールドは、電子光学系システム600の視野、すなわち、浮遊磁界からの外乱についての視野に沿って、延在する。長さという用語は、x方向並びにy方向に適用可能であることを理解されよう。したがって、長さはx方向及び/又はy方向であると理解できる。
【0053】
[0060]
図5の実施形態並びに
図6の実施形態において、ステージのうちの少なくとも1つの局所磁気シールドが提供される。
図7Aに示されるように、位置決めデバイス510、610のステージのアクチュエータは、コイル部分700(モータコイルなど)、磁石部分710(永久磁石又は電磁石など)、及び裏鉄部分720を備えることができる。
図7Bに示されるように、ステージのうちの少なくとも1つのコイル部分及び磁石部分は、磁気的なシールディング材料730によって実質的に覆われている。電気ケーブル、冷却チャネルなどの、局所磁気シールドの外側への接続を提供するように、開口部731、例えば
図7Bに示されるようなショートストロークアクチュエータのシールド内のスリットが提供可能である。開口部は、ステージの一部と局所磁気シールドの外側のオブジェクトとの間で、接続が渡る、及び/又は移動する、ホールとすることもできる。覆うことによって、ステージからの浮遊磁界は局所的にかなりの程度遮蔽され、したがって浮遊磁界の更なる減少となる。こうした遮蔽は、例えば
図5及び
図6に示されており、ロングストロークステージアクチュエータ513、613は、状況に応じて部分的に覆われる。
【0054】
[0061] 更に、
図5の実施形態並びに
図6の実施形態の両方において、ロングストロークステージ511、611~ショートストロークステージ512、612の配置が適用される。位置決めデバイス510、610は、オブジェクトテーブル520、620を位置決めするためのショートストロークステージ512、612と、ショートストロークステージ512、612及びオブジェクトテーブル520、620を位置決めするためのロングストロークステージ511、611とを備える。ロングストロークステージ511、611は、一般に、ショートストロークステージ512、612と比べて、より高いパワーステージである。したがって、ロングストロークステージ511、611による浮遊磁界の大きさは、ショートストロークステージ512、612による浮遊磁界の大きさを超える場合がある。浮遊磁界のn効果を更に減少させるために、ロングストロークステージ511、611は、オブジェクトテーブル520、620から相対的に長い距離に配置される。したがって、ロングストロークステージ511、611は、デュアルロングストロークステージアクチュエータ513、613を備え、デュアルロングストロークステージアクチュエータ513、613は、ショートストロークステージ512、612のいずれかの側に間隔を置いて配置される。ロングストロークステージアクチュエータ513、613は、検査されるべきオブジェクトの表面に対して平行な方向に、すなわち位置決めデバイス510、610の動きの主平面に対して平行な方向、すなわち本例では水平方向に、間隔が置かれているように見える。位置決めデバイス510、610は、ロングストロークステージアクチュエータ513、613を、ショートストローク512、612を保持するロングストロークキャリア511、611に接続する、接続構造514、614を更に備える。接続構造514、614は、位置決めデバイス510、610の動きの主平面に対して平行な方向に延在する。
【0055】
[0062] 上記で説明したように、静的又は可動の磁気シールドには、例えば、電子ビームの伝搬パスが通れるようにするため、又はオブジェクトテーブルをステージに接続する接続構造が通れるようにするために、少なくとも1つのスルーホール541、661、641を提供することが可能である。スルーホールを介した浮遊磁界の影響を低く維持するために、電子光学系システム500、600の光軸に沿った電子光学系システム500、600の磁気レンズまでの磁気シールドの距離は、スルーホールの直径の少なくとも5倍以上とすることができる。電子光学系システム500、600の磁気レンズまでの磁気シールドの距離の10分の1又はそれ未満のスルーホールの直径は、スルーホールを介する浮遊磁界の影響を更に減少させることができる。
【0056】
[0063] 磁気シールディングの更なる効果は、熱シールディングを提供することであり得る。したがって、磁気シールド及び局所磁気シールドのうちの少なくとも1つは、更に熱シールドとして作用することができる。
【0057】
[0064] 磁気シールディングの更なる効果は、粒子のバリアを提供すること、それによって、例えば汚染物に対するバリアを形成することであり得る。したがって、磁気シールド及び局所磁気シールドのうちの少なくとも1つは、更に粒子バリアとして作用する。
【0058】
[0065] 電子ビーム検査ツールは、
図6のプレート650などの真空チャンバに接続された定常高電圧プレートなどの高電圧プレート、又は、位置決めデバイス610内に提供される高電圧プレートを備えることができる。磁気シールドに必要となる追加の容積を減らすために、磁気シールドは電子ビーム検査ツールの高電圧プレートと組み合わせることができる。高電圧プレート及び磁気シールドは互いに接続された別々の層を形成し、それによって各層はその所期の機能を提供することができる。代替として、高電圧プレート及び磁気シールディングは、例えばミューメタル又は同様のタイプの材料を使用して高電圧プレートを提供することによって、統合することができる。
【0059】
[0066] 上記で説明したような磁気シールディングに加えて、又は、浮遊磁界の影響を減少させるための代替として、電子ビーム検査ツールは、機械式重力補償器又は空気圧式重力補償器などの非磁気重力補償器、あるいは磁気シールドを伴う磁気重力補償器を、備えることができる。電子ビーム検査ツールは、重力を補償するために、重力補償器を使用して、例えばオブジェクトテーブル及び/又は位置決めデバイスの一部に垂直力を及ぼすことができる。例えば、本書の他の場所で説明するようなショートストロークステージ及びロングストロークステージを使用するとき、高速で正確な位置決めを実行可能にするため、及び/又は、より低いアクチュエータパワーが必要な際にアクチュエータ電力損失を減少させるために、ショートストロークステージ上の重力を、少なくとも部分的に補償することができる。それによって、重力補償器は、例えばショートストロークアクチュエータの可動部分に作用することができる。重力補償器は、例えばショートストロークステージ(場合によっては、オブジェクトテーブル及びオブジェクトを含む)の質量にかかる重力を少なくとも部分的に補償し、それによってショートストロークステージによって作動される静的力を減少させ、したがって、ショートストロークステージのアクチュエータ電力損失を減少させることができる。例えば磁気重力補償の代わりに機械式重力補償器を適用することによって、浮遊磁界を低減させることができる。
【0060】
[0067]
図9は、電子光学系システム900、電子光学系システム900に関してオブジェクトテーブル920によって保持されるオブジェクトを位置決めするための位置決めデバイス910、オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブル920を示す。位置決めデバイス910は、オブジェクトテーブル920を位置決めするためのショートストロークステージ912と、ショートストロークステージ912及びオブジェクトテーブル920を位置決めするためのロングストロークステージ911とを備える。機械式重力補償器930が提供される。機械式重力補償器930は、1つ以上のコイルばねなどのばねを備えることができる。
ばねの抑制の下でばねのねじれを少なくとも減少させるため、したがって、位置決めデバイス910の位置決め確度に影響を与える可能性のある、位置決めデバイス910上へのねじれによる外乱力を回避するために、コイルばねには、反対方向、すなわち時計回り及び反時計回りに、等しい数の巻線を提供することができる。代替として、空気圧式重力補償器又は遮蔽された磁気重力補償器などの、他の非磁気重力補償器が提供可能である。
【0061】
[0068] 位置決めデバイス910が、オブジェクトテーブルを位置決めするためのショートストロークステージ912と、ショートストロークステージ912及びオブジェクトテーブル920を位置決めするためのロングストロークステージ911とを備える場合、コンパクトな構成を提供するために、重力補償器930をショートストロークステージ912に含めること、例えば統合することが可能であり、それによって重力補償器930はショートフォースパスで補償すべき質量に作用する。
【0062】
[0069] 上記で説明したような磁気シールディングに加えて、又は、浮遊磁界の影響を減少させるための代替として、電子ビーム検査ツールは位置センサ940を備えることができ、位置センサ940は、ショートストロークステージ912とオブジェクトテーブル920との間、又はショートストロークステージ912とロングストロークステージ911との間の、相対距離を測定するための、光学位置センサ又はひずみゲージ位置センサなどの、非磁気位置センサである。したがって、磁気位置センサの結果としての浮遊磁界を防止することができる。一実施形態において、位置センサ940は、磁気シールドによって遮蔽される磁気位置センサによって形成可能である。
【0063】
[0070] 更なる実施形態を、下記の条項において説明する。
1.電子ビーム装置であって、
電子ビームをオブジェクト上に投影するように構成された電子光学系システムと、
オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルと、
オブジェクトテーブルを電子光学系システムに関して移動させるように構成された位置決めデバイスと、
を備え、
電子ビーム装置は、位置決めデバイスによって生成される磁気外乱から電子光学系システムを遮蔽するための磁気シールドを更に備える。
2.位置決めデバイスは、電子光学系システムに関してオブジェクトテーブルを移動させるように構成されたショートストロークステージ、及び、電子光学系システムに関してショートストロークステージを移動させるように構成されたロングストロークステージを備える、条項1に記載の電子ビーム装置。
3.位置決めデバイスは磁気アクチュエータを更に備える、条項1又は2に記載の電子ビーム装置。
4.磁気アクチュエータはオブジェクトテーブルを移動させるように構成される、条項3に記載の電子ビーム装置。
5.磁気シールドは位置決めデバイスと電子光学系システムとの間に配置される、条項1から4のいずれかに記載の電子ビーム装置。
6.磁気シールドは、位置決めデバイスによって移動されるべき部分に接続される可動磁気シールドを備える、条項1から5のいずれかに記載の電子ビーム装置。
7.可動磁気シールドは、電子光学系システムから見て外を向いたオブジェクトテーブルの側面に配置される、条項1から6のいずれかに記載の電子ビーム装置。
8.可動磁気シールドは、ロングストロークステージ及び/又はロングストロークステージによって移動されるべき部分に接続される、条項6又は7に記載の電子ビーム装置。
9.磁気アクチュエータを備え、可動磁気シールドは、磁気アクチュエータによって生成される磁気外乱を少なくとも部分的に遮蔽するように構成される、条項6から8のいずれかに記載の電子ビーム装置。
10.オブジェクトテーブルは、可動磁気シールド内のスルーホールを介して延在する接続構造によって位置決めデバイスに取り付けられる、条項6から9のいずれかに記載の電子ビーム装置。
11.可動磁気シールドの長さは、少なくとも電子光学系システムの視野及び位置決めデバイスの動きの領域に沿って延在する、条項6から10のいずれかに記載の電子ビーム装置。
12.磁気シールドは、電子光学系システムに関して静的である静的磁気シールドを備える、条項1に記載の電子ビーム装置。
13.静的磁気シールドの長さは、少なくとも電子光学系システムの視野に沿って延在する、条項12に記載の電子ビーム装置。
14.静的磁気シールドにスルーホールが提供され、電子ビームの伝搬パスはスルーホールを通過する、条項12又は13に記載の電子ビーム装置。
15.磁気シールドは更なる磁気シールドを備える、条項12から14のいずれかに記載の電子ビーム装置。
16.更なる磁気シールドは静的磁気シールド内のスルーホールに面する、条項15に記載の電子ビーム装置。
17.更なる磁気シールドは条項5から11のいずれかに記載の可動磁気シールドである、条項15又は16に記載の電子ビーム装置。
18.磁気シールドは、磁気的なシールディング材料によって磁気アクチュエータを実質的に覆うように構成された局所磁気シールドを備える、条項1から17のいずれかに記載の電子ビーム装置。
19.開口部が局所磁気シールド内に提供される、条項18に記載の電子ビーム装置。
20.磁気シールドにスルーホールが提供され、電子光学系システムの磁気レンズまでのスルーホールの距離がスルーホールの直径の少なくとも5倍以上である、条項1から19のいずれかに記載の電子ビーム装置。
21.磁気シールドは熱シールドとして更に作用する、条項1から20のいずれかに記載の電子ビーム装置。
22.磁気シールドは粒子バリアとして更に作用する、条項1から21のいずれかに記載の電子ビーム装置。
23.電子ビーム装置は高電圧プレートを備え、磁気シールドは高電圧プレートと組み合わされる、条項1から22のいずれかに記載の電子ビーム装置。
24.高電圧プレート及び磁気シールドは互いに接続された別々の層を形成することができる、条項23に記載の電子ビーム装置。
25.高電圧プレートは、磁気シールディング機能を高電圧プレートに統合するための磁気シールディング材料を備える、条項1から23のいずれかに記載の電子ビーム装置。
26.電子ビームをオブジェクト上に投影するように構成された電子光学系システムと、
オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルと、
オブジェクトテーブルを電子光学系システムに関して移動させるように構成された位置決めデバイスと、
を備え、
位置決めデバイスは、電子光学系システムに関してオブジェクトテーブルを移動させるためのショートストロークステージ、及び、電子光学系システムに関してショートストロークステージを移動させるためのロングストロークステージを備え、ロングストロークステージはデュアルロングストロークステージアクチュエータを備え、デュアルロングストロークステージアクチュエータは、位置決めデバイスの動きの主平面に対して平行な方向に見える、ショートストロークステージのいずれかの側に間隔を置いて配置され、位置決めデバイスは、ショートストロークステージをそれぞれのロングストロークステージアクチュエータに接続する接続構造を更に備え、接続構造は位置決めデバイスの動きの主平面に対して平行な方向に延在する、
条項6から9のいずれかに記載の電子ビーム装置。
27.オブジェクトテーブル及び位置決めデバイスの一部のうちの少なくとも1つの上の重力を、少なくとも部分的に補償するための重力補償器を更に備え、重力補償器は非磁気重力補償器又は磁気シールドによって遮蔽された磁気重力補償器である、条項1から26のいずれかに記載の電子ビーム装置。
28.電子ビーム装置であって、
電子ビームをオブジェクト上に投影するように構成された電子光学系システムと、
オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルと、
オブジェクトテーブルを電子光学系システムに関して移動させるように構成された位置決めデバイスと、
を備え、
電子ビーム装置は、オブジェクトテーブル及び位置決めデバイスの一部のうちの少なくとも1つの上の重力を、少なくとも部分的に補償するための重力補償器を更に備え、重力補償器は非磁気重力補償器又は磁気シールドによって遮蔽された磁気重力補償器である。
29.非磁気重力補償器はばねを備える機械式重力補償器である、条項27又は28に記載の電子ビーム装置。
30.ばねは反対方向に等しい数の巻線を有するコイルばねを備える、条項29に記載の電子ビーム装置。
31.位置決めデバイスは、オブジェクトテーブルを位置決めするためのショートストロークステージと、ショートストロークステージ及びオブジェクトテーブルを位置決めするためのロングストロークステージとを備え、重力補償器はショートストロークステージに含まれる、条項27から30のいずれかに記載の電子ビーム装置。
32.位置決めデバイスは、オブジェクトテーブルを位置決めするためのショートストロークステージと、ショートストロークステージ及びオブジェクトテーブルを位置決めするためのロングストロークステージとを備え、
電子ビーム装置は、ショートストロークステージとロングストロークステージとの間、又はショートストロークステージとオブジェクトテーブルとの間の相対距離を測定するための、位置センサを更に備え、位置センサは、非磁気位置センサ又は磁気シールドによって遮蔽された磁気位置センサである、条項1から31のいずれかに記載の電子ビーム装置。
33.電子ビーム装置であって、
電子ビームをオブジェクト上に投影するように構成された電子光学系システムと、
オブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブルと、
オブジェクトテーブルを電子光学系システムに関して移動させるように構成された位置決めデバイスと、
を備え、
位置決めデバイスは、オブジェクトテーブルを位置決めするためのショートストロークステージと、ショートストロークステージ及びオブジェクトテーブルを位置決めするためのロングストロークステージとを備え、
電子ビーム装置は、ショートストロークステージとロングストロークステージとの間、又はショートストロークステージとオブジェクトテーブルとの間の相対距離を測定するための、位置センサを更に備え、位置センサは、非磁気位置センサ又は磁気シールドによって遮蔽された磁気位置センサである。
34.電子ビーム装置は、電子走査顕微鏡、電子ビームダイレクトライタ、電子ビーム投影リソグラフィ装置、電子ビーム検査装置、電子ビーム欠陥検証装置、又は電子ビームメトロロジ装置である、条項1から33のいずれかに記載の電子ビーム装置。
【0064】
[0071] 本明細書では、特に検査装置との関連において本発明の実施形態に言及しているが、オブジェクトテーブルは、電子ビーム装置、電子走査顕微鏡、電子ビームダイレクトライタ、電子ビーム投影リソグラフィ装置、電子ビーム検査装置、電子ビーム欠陥検証装置、又は電子ビームメトロロジ装置において使用するのに好適であり得る。
【0065】
[0072] 本発明をその好ましい実施形態に関して説明してきたが、下記で請求する本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、他の修正及び変形が実行可能であることを理解されよう。