(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】液体吐出装置、吐出判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220201BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220201BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/165 501
B41J2/21
(21)【出願番号】P 2017192002
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳実
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】安部 公人
(72)【発明者】
【氏名】田代 亮
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 大樹
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-286140(JP,A)
【文献】特開2009-241565(JP,A)
【文献】特開2004-223846(JP,A)
【文献】特開2006-297919(JP,A)
【文献】特開2004-223847(JP,A)
【文献】特開2015-189108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0368571(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0636242(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体を吐出するための第1のノズル、及び第2の液体を吐出するための第2のノズルを有しており、
記録媒体の所定位置に前記第1のノズルから前記第1の液体を吐出させた後、該所定位置に前記第2のノズルから前記第2の液体を吐出させる吐出制御手段と、
前記吐出させた前記第2の液体によって形成される画像の
サイズと記録媒体の種類に基づいて、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたか判断する判断手段と、
を有し、
前記判断手段は、浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第1の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたと判断し、非浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第2の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されなかったと判断する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
第1の液体を吐出するための第1のノズル、及び第2の液体を吐出するための第2のノズルを有する液体吐出装置に、
記録媒体の所定位置に前記第1のノズルから前記第1の液体を吐出させた後、該所定位置に前記第2のノズルから前記第2の液体を吐出させる吐出制御処理と、
前記吐出させた前記第2の液体によって形成される画像のサイズと記録媒体の種類に基づいて、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたか判断する判断処理と、を実行させる吐出判定方法であって、
前記判断処理は、浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第1の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたと判断し、非浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第2の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されなかったと判断する
ことを特徴とする吐出判定方法。
【請求項3】
第1の液体を吐出するための第1のノズル、及び第2の液体を吐出するための第2のノズルを有する液体吐出装置に、
記録媒体の所定位置に前記第1のノズルから前記第1の液体を吐出させた後、該所定位置に前記第2のノズルから前記第2の液体を吐出させる吐出制御処理と、
前記吐出させた前記第2の液体によって形成される画像のサイズと記録媒体の種類に基づいて、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたか判断する判断処理と、を実行させるプログラムであって、
前記判断処理は、浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第1の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたと判断し、非浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第2の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されなかったと判断する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、吐出判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルからインクなどの液体を吐出して画像を形成するインクジェット方式の液体吐出装置が知られている。液体吐出装置において、ノズル内の液体が増粘したり、固着したりして、目詰まりが発生すると、定められた位置に液体を吐出できなくなり、白スジなどの画像の不良が発生することがある。目詰まりした欠損ノズルは、液体吐出装置により印刷されたテストパターンを目視で確認することにより、検出されていた。
【0003】
近年、高速印刷などの目的で、液体吐出装置において、ヘッドがライン化され、あるいは大型化されている。このような液体吐出装置において、多数のノズルの中から効率的に欠損ノズルを検出するため、印刷されたテストパターンをスキャナやセンサで読み取り、解析することで、自動的に欠損ノズルを検出する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、用紙の一部分に、吐出ノズルを一定間隔でずらして印刷したテストパターンをスキャナ部で読み取り、複数ページ又は1ページ毎に、全ノズルの不吐出チェックを行うラインインクジェットプリンタが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体吐出装置により吐出される液体として、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどのインクのほかに、ブルー、レッド、グリーン、オレンジ、バイオレットなどの特色カラーインク、あるいはホワイト、クリア、シルバーなどの特殊インクがある。しかし、記録媒体との色差が小さい液体によりテストパターンを形成しても、記録媒体とテストパターンとの境界をスキャナなどで検知できず、ノズルから液体が吐出されているか判断できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の液体吐出装置は、第1の液体を吐出するための第1のノズル、及び第2の液体を吐出するための第2のノズルを有しており、記録媒体の所定位置に前記第1のノズルから前記第1の液体を吐出させた後、該所定位置に前記第2のノズルから前記第2の液体を吐出させる吐出制御手段と、前記吐出させた前記第2の液体によって形成される画像のサイズと記録媒体の種類に基づいて、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたか判断する判断手段と、を有し、前記判断手段は、浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第1の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されたと判断し、非浸透性基材に形成される前記画像のサイズが、第2の閾値よりも大きい場合に、前記第1のノズルから前記第1の液体が吐出されなかったと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
記録媒体との色差が小さい液体を用いてテストパターンを形成した場合でも、ノズルから液体が吐出されているか判断可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略図である。
【
図2】正面側から見た画像読取部の一例を示す概略正面図である。
【
図3】上面側から見た画像読取部の一例を示す概略上面図である。
【
図4】本発明の他の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略図である。
【
図5】液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
【
図6】液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
【
図7】一実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成図である。
【
図8】一実施形態に係るCPUの機能ブロック図である。
【
図9】欠損ノズルの有無を判断する処理の一例を示すフロー図である。
【
図10】インクにより形成される画像の一例を示す図である。
【
図11】テストパターンの一例を示す模式図である。
【
図12】テストパターンの一例を示す模式図である。
【
図14】実施形態の変形例Aにおいて、欠損ノズルの有無を判断する処理の一例を示すフロー図である。
【
図15】実施形態の変形例Bにおいて、欠損ノズルの有無を判断する処理の一例を示すフロー図である。
【
図16】テストパターンの一例を示す模式図である。
【
図17】実施形態の変形例Cにおいて、欠損ノズルを検知する処理の一例を示すフロー図である。
【
図18】実施形態の変形例Dにおいて、欠損ノズルを検知する処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、以下の説明において、好適な手段、処理等が記載されているが、本発明は、以下の説明によって限定されるものではない。また、実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須の構成ではない。
【0010】
<<液体吐出装置>>
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0011】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0012】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0013】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0014】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0015】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0016】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0017】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0018】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0019】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0020】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0021】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0022】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0023】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0024】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略図である。
図1に示す液体吐出装置1Aは、フルライン型のインクジェット記録装置である。液体吐出装置1Aは、搬送ローラ2と、搬送ガイド部材4と、拍車5と、液体吐出ヘッド6w,6m,6c,6k,6yと、画像読取部8と、排紙ローラ10と、を有する。以下、液体吐出ヘッド6w,6m,6c,6k,6yのうち任意のものを、液体吐出ヘッド6と表す。
【0026】
搬送ローラ2は、回転駆動することにより、液体吐出装置1Aに給紙された記録媒体Pを、液体吐出装置1A内の搬送経路に沿って搬送する。
図1に示す例では、記録媒体Pとして連続紙が用いられている。連続紙とは、印刷の単位(1ページ)の長さよりも長く、搬送方向(
図1中の矢印B方向)に連続している記録媒体である。連続紙としては、ロール紙、所定間隔毎に折り曲げられた連帳紙、および所定間隔毎に切断可能なミシン目が形成された連続帳票などが例示される。
【0027】
搬送ガイド部材4は、記録媒体Pを、搬送経路に沿って搬送されるようにガイドする。搬送ガイド部材4の表面は、記録メディアPの搬送時の摩擦低下を防止するため、撥水処理が施されている。拍車5は、記録媒体Pの波打ち(コックリング)を防ぐため、搬送される記録媒体Pと接触可能に、搬送ガイド部材4に対向する位置に配置される。
【0028】
液体吐出ヘッド6は、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有しており、ノズルからの液体の吐出方向が、記録媒体Pの搬送経路に向くように設けられている。これにより、液体吐出ヘッド6w,6m,6c,6k,6yは、記録媒体Pに、ホワイト(W)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、及びイエロー(Y)の各色の液体を順に吐出する。
【0029】
液体吐出ヘッド6は、圧力発生手段によって発生させた圧力により液体を吐出してもよい。液体吐出ヘッド6において液体を吐出させる手段としては、特に限定されないが、例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどが例示される。
【0030】
液体吐出ヘッド6による液体吐出量としては、例えば、3pL以上40pL以下であり、その吐出噴射の速さは、例えば、5m/s以上20m/s以下であり、その駆動周波数は、例えば、1kHz以上であり、その解像度は、例えば、150dpi以上である。
【0031】
画像読取部8は、記録媒体Pに形成された画像を読み取る。
図2は、液体吐出装置の正面側から見た画像読取部の一例を示す概略正面図である。画像読取部8は、プリント基板31と、光源32と、受光素子部33と、を備える。プリント基板31は、記録媒体の搬送経路に対向して設けられる。光源32は、例えば、LED(Light Emitting Diode)であり、被写体を読み取るための読取光を記録媒体Pに照射する。被写体は、例えば、各色の液体により記録媒体Pに形成されたノズル欠損検知用のテストパターンCPである。
【0032】
図3は、上面側から見た画像読取部の一例を示す概略上面図である。
図3の(A)は、液体吐出装置1Aの画像読取部8の一例である。光源32は、
図3の(A)に示すように、用紙幅にわたって形成されたテストパターンCPを取り囲むように、2つ配置されている。これにより、光源32は、テストパターンCPに均一な読取光を照射する。
【0033】
被写体において反射した読取光の反射光L(乱反射光または正反射光)は、受光素子部33に入射する。受光素子部33は、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の2次元イメージセンサ34とレンズ35とを備えている。反射光Lは、受光素子部33において、レンズ35を通して2次元イメージセンサ34に入射する。2次元イメージセンサ34は、入射光を光電変換し、クロックに同期させて、VDATA及び制御信号(HREE、VSYNC)として画像データを出力する。
【0034】
排紙ローラ10は、画像形成後の記録媒体Pを、液体吐出装置1Aから排紙する。
【0035】
図4は、本発明の他の一実施形態に係る液体吐出装置を示す概略図である。
図4に示す液体吐出装置1Bは、シリアル型のインクジェット記録装置である。
【0036】
液体吐出装置1Bは、エンコーダセンサ51と、キャリッジ52と、タイミングベルト53と、駆動プーリ54と、従動プーリ55と、主走査モータ56と、プラテン57と、エンコーダシート58と、主ガイドロッド59と、液体吐出ヘッド60と、画像読取部61と、を有する。
【0037】
主ガイドロッド59は、キャリッジ52を、主走査方向(
図4中の矢印A方向)に往復移動可能に支持する。駆動プーリ54と従動プーリ55は、主走査方向に所定の間隔で液体吐出装置1Bに設けられている。タイミングベルト53は、無端ベルト状であり、駆動プーリ54と従動プーリ55との間に張り渡されている。
【0038】
キャリッジ52の移動範囲において、タイミングベルト53に対して平行にエンコーダシート58が配設されている。キャリッジ52には、エンコーダシート58を読み取るエンコーダセンサ51が設けられている。主走査モータ56は、エンコーダセンサ51によるエンコーダシート58の読み取り結果に基づいて、駆動プーリ54の回転駆動を制御する。これにより、タイミングベルト53は回転移動する。キャリッジ52は、タイミングベルト53に連結しており、タイミングベルト53が回転移動することで、主走査方向に往復移動する。
【0039】
記録メディアPは、プラテン57上を主走査方向と直交する副走査方向(
図4中の矢印B方向)に間欠的に搬送される。液体吐出ヘッド60は、液体を吐出するための複数のノズルを有しており、その吐出面(ノズル面)が、記録メディアP側を向くようにキャリッジに搭載されている。液体吐出ヘッド60は、主走査方向に移動しながら、副走査方向(矢印B方向)に間欠的に搬送される記録媒体Pにインクを吐出することで、記録媒体Pの所定位置にインクを吐出して画像を形成する。
【0040】
図5は、液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
図6は、液体吐出装置における液体吐出ヘッドの配置例を示す概略構成図である。
図5及び
図6の(A)乃至(H)に示すように、液体吐出装置1Bには、それぞれ、3つ以上の液体吐出ヘッド60が配置されている。1つの液体吐出ヘッド60は、それぞれ、副走査方向に複数のノズルが並んだ4つのノズル列を有している。
【0041】
液体吐出ヘッド60において、1つのノズル列の各ノズルから吐出される液体は同色である。例えば、ノズル列60k,60c,60m,60y,60w、60clのノズル列は、それぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ホワイト(W)、クリア(CL)のインクを吐出する。なお、液体吐出ヘッド60の配置は、(A)乃至(H)の例に限られない。液体吐出ヘッド60は、例えば、主走査方向に並んでいてもよい。また、液体吐出装置1Bは、例えば、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレットなどの特色インクを吐出する他の液体吐出ヘッド60を有してもよい。キャリッジ52には、さらに、液体吐出装置1Aの画像読取部8と同様の画像読取部61が設けられている。ただし、液体吐出装置1Bの画像読取部61は、キャリッジ52とともに主走査方向に移動する。このため、画像読取部61のサイズは用紙幅よりも小さくてもよい。
図3の(B)は、液体吐出装置1Bの画像読取部61の一例である。画像読み取り部61において、光源32は、
図3の(B)に示すように、用紙幅の一部に形成されたテストパターンCPを取り囲むように、4つ配置されている。これにより、光源32は、テストパターンCPに均一な読取光を照射する。
【0042】
<<ハードウェア構成>>
図7は、一実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成図である。
図7の(A)は、液体吐出装置1Aのハードウェア構成を示し、
図7の(B)は、液体吐出装置1Bのハードウェア構成を示す。以下、液体吐出装置1A,1Bのうち任意のものを液体吐出装置1と表す。
【0043】
液体吐出装置1Aは、CPU101(Central Processing Unit)、ROM102(Read Only Memory)、RAM103(Random Access Memory)、不揮発性メモリ104、液体吐出ヘッドドライバ106、副走査ドライバ107、外部接続I/F108(Interface)、紙搬送部109、及び出力装置110を備えている。液体吐出装置1Bは、さらにキャリッジ52の主走査方向への移動を制御する主走査ドライバ105を備えている。
【0044】
CPU101は、液体吐出装置1の全体を制御するための処理装置である。例えば、CPUは、画像読取部8,61による読取画像に基づいて、画像処理を行う。ROM102は、液体吐出装置1のプログラム及びノズル欠損検知に必要なシステムデータ等を記憶する。RAM103は、揮発性のメモリであって、ROM102に記憶されたプログラムが展開されて、CPU101のワークエリアとして用いられる。不揮発性メモリ104は、例えば、HD(Hard Disk)、SSD(Solid State Drive)であって、電源遮断後もデータを保持する。液体吐出ヘッドドライバ106は、液体吐出ヘッド6,60の駆動を制御するためのドライバである。外部接続I/F108は、外部の情報処理装置との間で情報を送受信するためのI/Fである。紙搬送部109は、例えば、ローラ、及びローラを駆動するモータであって、液体吐出装置1内の搬送経路に沿って記録媒体Pを搬送する。副走査ドライバ107は、記録媒体Pの搬送を制御するためのドライバである。出力装置110は、例えば、ディスプレイ、アラームランプ、スピーカであって、欠損ノズルの判定結果を出力する。液体吐出装置1Bの主走査ドライバ105は、キャリッジ52の主走査方向への移動を制御するためのドライバである。なお、主走査ドライバ105、液体吐出ヘッドドライバ106、及び副走査ドライバ107は、それぞれプログラムに従ったCPU101の命令によって実現する機能であってもよい。
【0045】
<<機能構成>>
図8は、一実施形態に係るCPUの機能ブロック図である。CPU101は、計測部511、判断部512、および出力部513を有している。これら各部は
図7に示されている各構成要素のいずれかがROM102に記憶されているプログラムに従って動作することで実現される機能である。
【0046】
また、
図7のように、液体吐出装置1は、ROM102、RAM103、または不揮発性メモリ104によって構築される記憶部を有している。記憶部には、欠損ノズルを判定する処理で用いられる閾値を示す閾値情報が記憶されている。本実施形態において、閾値は、ドットのサイズを示す値である。
【0047】
計測部511は、記憶部にあるプログラムより実現され、テストパターンCPにおけるドットサイズを計測する。判断部512は、記憶部にあるプログラムより実現され、ドットサイズの計測結果および閾値を用いてノズル欠損の有無を判断する。出力部513は、記憶部にあるプログラムにより実現され、欠損ノズルの有無の判断結果を出力する。また、出力部513は、欠損ノズルの有無の判断結果を記憶部に出力し記憶させるようにしてもよい。その場合、欠損ノズルの有無の判断結果の情報に基づいて不吐出補正(欠損ノズルが形成する位置に形成するはずだったドットを補う処理)を実行することができる。
【0048】
<<インク>>
続いて、液体吐出装置1により吐出される液体として、インク、前処理液、および後処理液について説明する。インクは、例えば、有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤などを含有する。
【0049】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0050】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0051】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0052】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0054】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩等が挙げられる。
【0055】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0056】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。
【0057】
一方、上記の水吸収量が10mL/m2より大きい基材を浸透性基材という。
【0058】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0059】
<<処理>>
図9は、欠損ノズルの有無を判断する処理の一例を示すフロー図である。以下、液体吐出装置1Bにおいて欠損ノズルの有無を判断する処理(吐出判定方法の一例)について説明するが、液体吐出装置1Aにおいても同様の処理により、欠損ノズルを検知することができる。以下、無彩色インクとしてホワイト(w)インク(第1の液体の一例)、カラーインクとしてマゼンタインク(第2の液体の一例)を用いて欠損ノズルの有無を判断する処理について説明する。なお、本実施形態の方法によると、上記のインクの組み合わせに限らず、画像読取部61により光学的に区別可能な異なる2種のインクを用いて、欠損ノズルの有無を判断することができる。例えば、無彩色インクとしてクリア(cl)インク、カラーインクとしてシアン(c)インク、又はイエロー(y)インクを用いて、欠損ノズルを検出してもよい。また、ホワイト(w)インク、クリア(cl)インク、ブラック(k)インク等から選ばれる複数の無彩色インクを用いて、欠損ノズルを検出してもよい。本実施形態によると、画像読取部61により記録媒体Pの色と判別できない色のインク(例えば、ホワイトインク)を吐出するためのノズルが目詰まりしているか判断することができる。以下、記録媒体Pとして非浸透性基材を用いる場合について説明する。
【0060】
液体吐出ヘッドドライバ106(吐出制御手段の一例)は、ノズル列60wの各ノズル(第1のノズルの一例)から所定位置にホワイトインクを吐出させた後、ノズル列60mの各ノズル(第2のノズルの一例)から上記の所定位置にカラーインク(マゼンタインク)を吐出させる(吐出制御処理の一例)。これにより、ホワイトインクのドット上にカラーインクのドットが重ねられた、ノズル欠損検知用のテストパターンCPが印刷される(ステップS101,S102)。
【0061】
発明者らは、ホワイトインクのドットにカラーインクを重ねて吐出すると、ホワイトインクの中にカラーインクが埋没する埋没現象が生じ、カラーインクのドットサイズが小さくなることを発見した。
図10は、インクにより形成される画像の一例を示す図である。このうち、
図10の(A)は、無彩色のインクの吐出位置にカラーインクを吐出して形成された埋没現象が生じている画像を示し、
図10の(B)は、カラーインクを用いて形成された埋没現象が生じていない画像を示す。
【0062】
ステップS101,102において。ホワイトインクを吐出してから、カラーインクを吐出するまでの時間、すなわち乾燥時間に比例して、埋没現象は生じにくくなり、形成されるカラーインクのドットサイズは大きくなる。このため、ホワイトインクの着弾後、カラーインクを重ね合わせるまでの時間は、例えば、15秒以下の短い時間であることが好ましい。
【0063】
図11は、テストパターンの一例を示す模式図である。
図11の(A)は、ステップS101において、ホワイトインクのドットを形成した後、カラーインクのドットを形成する前のテストパターンCPの一例である。図中の矢印Aは、液体吐出ヘッド60の走査方向(主走査方向)である。なお、液体吐出装置1Aを用いて処理を実行する場合、液体吐出ヘッド6が固定されているので、記録メディアP側を搬送しながら液体を吐出することでテストパターンを形成することができる。
【0064】
図11の(B)は、ステップS102において、更に、カラーインクのドットを形成した後のテストパターンCPの一例を示す。ホワイトインクのドットに、カラーインクのドットを重ね合わせると、埋没現象が生じるため、
図11の(B)に示されているように、相対的に小さいサイズのカラーインクのドットが形成される。
【0065】
図11の(C)は、ホワイトインクを吐出するノズル列に欠損ノズルが含まれる場合のテストパターンの一例を示す。
図11の(C)は、ホワイトインクのノズル列60wを構成する3つのノズルのうち、中央のノズル60wdが欠損ノズルである例を示している。この例では、ステップS101で、液体吐出ヘッドドライバ106がノズル列60wの各ノズルから所定位置にホワイトインクを吐出させても、ノズル60wdからインクは吐出されない。このため、ノズル60wdの位置に対応する記録媒体Pの所定位置には、ホワイトインクのドットは形成されない。その結果、続いて、所定位置に、カラーインクを吐出しても埋没現象が生じず、相対的に大きいサイズのカラーインクのドットが形成される。このように、ホワイトインクのノズル列60wに、欠損ノズルがあるか否かで、カラーインクのドットのサイズが異なる。
【0066】
画像読取部61は、印刷されたテストパターンCPを読み取り、テストパターンCPの画像データを出力する(ステップS103)。液体吐出装置1Bの計測部511は、テストパターンCPにおける各カラーインクのドットのサイズ(画像の特性の一例)を計測する(ステップS104)。
【0067】
図12は、テストパターンの一例を示す模式図である。
図12の(A)は、ホワイトインクのドットDW上にカラーインクのドットDMが形成されたテストパターンCPの読取画像の一例である。
図12の(A)における枠線、及び数値は、それぞれ、説明のため、読取画像に追加されたものである。枠線は画素の境界であり、枠線内に記載されている数値はその画素における2次元イメージセンサの出力値である。イメージセンサの出力値は、画素ごとの反射光Lの強度もしくはカラーフィルタを通した後の濃淡値を示す。
図12の(A)のテストパターンCPにおいて、ホワイトインクのドットDWの画素の出力値と、記録媒体Pにおけるインクの付着していない画素の出力値は、色差が小さいため同等となっている。すなわち、本実施形態では、読取画像からは、ホワイトインクのドットサイズを算出することができない。
【0068】
図12の(B)は、読取画像における副走査方向の列bを構成する各画素の出力値を結んだグラフである。計測部511は、グラフがスレッシュ値t(例えば、「180」)と交差する画素の位置b1,b2を特定し、位置b1,b2間の距離dbを算出する。計測部511は、ドットDMが形成されている領域において列bを平行に変位させて、グラフがスレッシュ値tと交差する画素間の距離を算出する処理を繰り返す。そして、算出処理により得られた2点間の距離の中で最大距離db
maxを、副走査方向のドットの大きさとする。
【0069】
図12の(C)は、読み取り画像における主走査方向の列aを構成する各画素の出力値を結んだグラフである。計測部511は、グラフがスレッシュ値t(例えば、「180」)と交差する画素の位置a1,a2を特定し、位置a1,a2間の距離daを算出する。計測部511は、ドットDMが形成されている領域において列aを平行に変位させて、グラフがスレッシュ値tと交差する画素間の距離を算出する処理を繰り返す。そして、算出処理により得られた2点間の距離の中で最大距離da
maxを、主走査方向のドットの大きさとする。
【0070】
なお、本実施形態では、スレッシュ値tを「180」としたが、スレッシュ値は、これに限定されない。但し、ドットの大きさを正確に特定するためには、ドットのエッジ部分を精度良く抽出することができる適切なスレッシュ値を用いることが好ましい。
【0071】
計測部511は、主走査方向における最大距離damax、及び副走査方向における最大距離dbmaxを用いてドットサイズを算出する。算出方法としては、特に限定されないが、最大距離damaxおよび最大距離dbmaxのうち大きい方をドットサイズとする方法、最大距離damaxおよび最大距離dbmaxのうち大きい方を長径、小さい方を短径としたときの楕円の面積を求める方法、最大距離damaxおよび最大距離dbmaxの平均値を用いる方法などが例示される。ドットサイズの単位は画素数であってもよいし、画素数から変換した実際の長さであってもよい。
【0072】
判断部512は、記憶部に記憶されている閾値情報を読み出す。本実施形態において。閾値情報によって示される閾値は、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなくカラーインクのドットを形成した場合のカラーインクのドットサイズの最下限値である。判断部512は、算出されたドットサイズが、閾値情報によって示される閾値より大きいか判断する(ステップS105)。なお、判断部512は、算出されたドットサイズが閾値以上であるか判断してもよい。
【0073】
ステップS105で、ドットサイズが閾値より大きい(YES)と判断された場合、判断部512(判断手段の一例)は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルは、欠損ノズル(ノズル詰まりの状態)であると判断する(ステップS106、判断処理の一例)。
【0074】
ステップS105で、ドットサイズが閾値より大きくない(NO)と判断された場合、判断部512(判断手段の一例)は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルは、欠損ノズルではない(ノズル詰まりではない状態)と判断する(ステップS107、判断処理の一例)。出力部513は、ステップS106,S107における判定結果を、例えば、アラームとして出力してもよい。
【0075】
続いて、液体吐出装置1Bは、すべてのノズルに対して欠損ノズルの判断処理を実行したか判断する(ステップS108)。
【0076】
処理を実行していない(NO)と判断された場合、液体吐出装置1Bは、ステップS103に戻って処理を実行していないノズルに対応するドットを用いて、欠損ノズルの検出処理を繰り返す。処理が完了した(YES)と判断された場合、液体吐出装置1Bは、処理を終了する。上記実施形態によると、画像読取部61によって記録媒体Pとの境界を区別できない色のインクを吐出するノズルの欠損を検出できる。
【0077】
<<変形例A>>
続いて、実施形態の変形例Aについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。変形例Aにおいて液体吐出装置1Bの記憶部には、印刷に用いる記録媒体の種類を示す媒体情報が記憶されている。媒体情報は、外部の情報処理装置から外部接続I/F108を介して液体吐出装置1Bへ送信され、記憶部に記憶された情報であってもよい。あるいは、液体吐出装置1Bに公知の紙種判別装置が設けられている場合、媒体情報は、紙種判別装置によって判別され、記憶部に記憶された情報であってもよい。
【0078】
表1は、変形例Aにおいて、記憶部に記憶されている閾値情報を示す。変形例Aにおいて、閾値情報は、記録媒体の種類を示す媒体情報に関連付けられている。表1において、非浸透性基材に関連付けられた閾値(第2の閾値の一例)は、非浸透性基材上で、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなくカラーインクのドットを形成したときのカラーインクのドットサイズの最下限値を示す。また、表1において、浸透性基材に関連付けられた閾値(第1の閾値の一例)は、浸透性基材上で、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなくカラーインクのドットを形成した場合のカラーインクのドットサイズの最上限値を示す。
【0079】
【0080】
図13は、埋没現象を説明するための写真である。
図13の(A)は、非浸透性基材として透明なPVC(Polyvinyl Chloride)フィルム(銘柄:Avery DennisonMPI3000)上にインクを吐出して形成されたテストパターンを示す。
図13の(B)は、浸透性基材としてコート紙(銘柄:sihl3257)上にインクを吐出して形成されたテストパターンを示す。
【0081】
図13の各図において、上部の4行は、ホワイトインク下地の上に形成されたカラーインクのドットWCであり、下部の4行は、記録媒体上に直接形成されたカラーインクのドットCである。ドットWC,Cは同じ量のインクにより形成されている。発明者らは、非浸透性基材上にテストパターンを形成する場合、ドットWCのドットサイズよりもドットCのドットサイズが大きくなり、浸透性基材上にテストパターンを形成する場合、ドットCのドットサイズよりもドットWCのドットサイズが大きくなることを明らかにした。この原因として、非浸透性基材上にテストパターンを形成する場合、ホワイトインク上でカラーインクの埋没現象が生じ、カラーインクの塗れ広がりが抑制されるのに対し、浸透性基材上にテストパターンを形成する場合、ホワイトインク上のカラーインクは、ホワイトインクにより浸透が妨げられて、塗れ広がりやすくなることが考えられる。また、発明者らは、ドットサイズが小さいほど顔料成分が密集することで、濃いドット形成されることを明らかにした。
【0082】
図14は、実施形態の変形例Aにおいて、欠損ノズルの有無を判断する処理の一例を示すフロー図である。
【0083】
ステップS104においてドットサイズが算出された後、液体吐出装置1Bの判断部512は、記憶部に記憶されている媒体情報を読み出す。さらに、判断部512は、記憶部に記憶されている閾値情報のうち、上記の読み出された媒体情報に関連付けられた閾値を読み出す。判断部512は、読み出された媒体情報が非浸透性基材であるか判断する(ステップS105A1)。
【0084】
ステップS105A1において読み出された媒体情報が非浸透性基材である(YES)と判断された場合、ステップS104において算出されたドットサイズが、読み出された閾値より大きいか判断する(ステップS105A2)。
【0085】
ステップS105A1において読み出された媒体情報が非浸透性基材ではない(NO)と判断された場合、ステップS104において算出されたドットサイズが、読み出された閾値より大きいか判断する(ステップS105A3)。
【0086】
ステップS105A2で、ドットサイズが閾値より大きい(YES)と判断された場合、またはステップS105A3で、ドットサイズが閾値より大きくない(NO)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルは、欠損ノズルであると判断する。
【0087】
ステップS105A2で、ドットサイズが閾値より大きくない(NO)と判断された場合、またはステップS105A3で、ドットサイズが閾値より大きい(YES)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズル(ステップS101参照)は、欠損ノズルではないと判断する(ステップS107)。
【0088】
以後の処理は、上記実施形態と同様である。実施例の変形例Aによると、液体吐出装置1Aは、用いる記録媒体Pに応じて、正確に欠損ノズルを検知することができる。
【0089】
<<変形例B>>
続いて、実施形態の変形例Bについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。
図15は、実施形態の変形例Bにおいて、欠損ノズルの有無を判断する処理の一例を示すフロー図である。
【0090】
変形例Bでは、液体吐出装置1Aのキャリッジ52が移動している間、液体吐出ヘッドドライバ106は、ノズル列60wの各ノズルから所定位置にホワイトインクを連続的に吐出させ、ノズル列60mの各ノズルから上記の所定位置にカラーインクを連続的に吐出させる。これにより、ホワイトインクのライン(連続するドット)上にカラーインクのライン(連続するドット)が形成された、ノズル欠損検知用のテストパターンCPが印刷される(ステップS101B、S102B)。
【0091】
図16は、テストパターンの一例を示す模式図である。
図16の(A)は、ステップS101Bにおいて、ホワイトインクのラインを形成した後、カラーインクのラインを形成する前のテストパターンの一例である。
図16の(B)は、ステップS102Bにおいて、更に、カラーインクのラインを形成した後のテストパターンの一例である。ホワイトインクのラインに、カラーインクのラインを重ね合わせると、上述の埋没現象が生じるため、
図16の(B)に示されているように、相対的に線幅の狭いカラーインクのラインが形成される。
【0092】
図16の(C)は、ホワイトインクを吐出するノズル列に欠損ノズルが含まれる場合のテストパターンの一例である。
図16の(C)は、ホワイトインクのノズル列60wを構成する3つのノズルのうち、中央のノズル60wdが欠損ノズルである場合のテストパターンCPを示している。この例では、ステップS101Bで、液体吐出ヘッドドライバ106がノズル列60wの各ノズルから所定位置にホワイトインクを吐出させても、ノズル60wdからインクは吐出されない。このため、ノズル60wdの位置に対応する記録媒体Pの所定位置には、ホワイトインクのラインは形成されない。その結果、続いて、所定位置に、カラーインクを吐出しても埋没現象が生じず、相対的に線幅の広いカラーインクのラインが形成される。このように、ホワイトインクのノズル列60wに、欠損ノズルがあるか否かで、カラーインクのラインの線幅は異なる。
【0093】
画像読取部61は、印刷されたテストパターンCPを読み取り、テストパターンCPの画像データを出力する(ステップS103)。液体吐出装置1Bの計測部511は、テストパターンCPの画像データからカラーインクのラインの線幅を算出する(ステップS104B)。ラインの線幅を算出する方法は、上記の実施形態において、副走査方向のドットのサイズを算出する方法と同様である。
【0094】
判断部512は、算出された線幅が所定の閾値より大きいか判断する(ステップS105B)。所定の閾値は、例えば、ホワイトインクのラインと重ね合わせることなくカラーインクのラインを形成した場合の線幅の最下限値である。
【0095】
ステップS105Bで、線幅が所定の閾値より大きい(YES)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルは、欠損ノズルであると判断する(ステップS106)。
【0096】
ステップS105Bで、線幅が所定の閾値以下である(NO)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルは、欠損ノズルではないと判断する(ステップS107)。
【0097】
実施形態の変形例Bでは、ライン状のテストパターンCPを形成し、ラインの線幅に基づいて欠損ノズルの有無を判断する。実施形態の変形例Bによると、1ドット単体では埋没現象によるドット径の小径化が生じにくい場合においても、複数ドットを重ね印字することで、ホワイトインクドットが形成されている場合と、されていない場合との線幅の差が明確になる。これにより、欠損ノズルの検知の精度が向上する。
【0098】
<<変形例C>>
続いて、実施形態の変形例Cについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。変形例Cにおいて、記憶部には閾値情報として、粒状度の閾値が記憶されている。
【0099】
変形例Cにおいて、液体吐出装置1Bの計測部511は、画像読取部61によって読み取られたテストパターンCPの粒状度を計測する。粒状度の計測方法としては、例えば、RMS粒状度の計測方法などの任意の公知の方法が用いられる。
【0100】
図17は、実施形態の変形例Cにおいて、欠損ノズルを検知する処理の一例を示すフロー図である。
【0101】
液体吐出装置1Bの計測部511は、画像読取部61によって読み取られたテストパターンCPの粒状度を計測する(ステップS104C)。
【0102】
判断部512は、記憶部に記憶されている閾値情報を読み出す。閾値情報によって示される閾値は、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなくカラーインクのドットを形成したテストパターンCPの粒状度の最下限値を示す。すなわち、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなく形成したカラーインクのドットは、ホワイトインクのドットと重ね合わせて形成したカラーインクのドットと比較して、ドットサイズが大きくなる。ドットサイズが大きくなると、テストパターンCPの粒状度も大きくなる。したがって、判断部512は、テストパターンCPの粒状度が所定の閾値よりも大きい場合に、欠損ノズルを有すると判断することができる。
【0103】
判断部512は、計測された粒状度が、閾値情報によって示される所定の閾値より大きいか判断する(ステップS105C)。
【0104】
ステップS105Cで、粒状度が所定の閾値より大きい(YES)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルに、欠損ノズルが含まれると判断する(ステップS106C)。
【0105】
ステップS105Cで、粒状度が所定の閾値以下である(NO)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルに、欠損ノズルは含まれないと判断する(ステップS107C)。出力部513は、ステップS106C,S107Cにおける判断結果を、例えば、アラームとして出力する。
【0106】
<<変形例D>>
続いて、実施形態の変形例Dについて、上記の実施形態と異なる点を説明する。変形例Dにおいて、記憶部には閾値情報として、ドット濃度の閾値が記憶されている。
【0107】
液体吐出装置1Bの計測部511は、画像読取部61によって読み取られたテストパターンCPのドット濃度を計測する。ドット濃度の計測方法としては、任意の公知の方法が用いられる。
【0108】
図18は、実施形態の変形例Dにおいて、欠損ノズルを検知する処理の一例を示すフロー図である。
【0109】
液体吐出装置1Aの計測部511は、ステップS103において読み取られたテストパターンCPのドット濃度を計測する(ステップS104D)。
【0110】
判断部512は、記憶部に記憶されている閾値情報を読み出す。閾値情報は、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなくカラーインクのドットを形成したテストパターンCPのドット濃度の最上限値を示す。すなわち、ホワイトインクのドットと重ね合わせることなく形成したカラーインクのドットは、ホワイトインクのドットと重ね合わせて形成したカラーインクのドットと比較して、ドットサイズが大きくなる。テストパターンCPにおいてドットサイズが大きくなるとドット濃度は小さくなる。
【0111】
判断部512は、計測されたドット濃度が、閾値情報によって示される閾値より大きいか判断する(ステップS105D)。
【0112】
ステップS105Dで、ドット濃度が閾値より大きくない(NO)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルに、欠損ノズルが含まれると判断する(ステップS106D)。
【0113】
ステップS105Dで、ドット濃度が所定の閾値より大きい(NO)と判断された場合、判断部512は、テストパターンCPの形成に用いられるホワイトインクを吐出するためのノズルに、欠損ノズルは含まれないと判断する(ステップS107D)。出力部513は、ステップS106D,S107Dにおける判断結果を、例えば、アラームとして出力する。
【0114】
<<実施形態の補足>>
上記実施形態では、液体吐出装置1Bの判断部512は、テストパターンにおけるカラーインクのドットサイズ、線幅、粒状度、画像濃度、画像彩度に基づいて、欠損ノズルの有無を判断したが、判断方法はこれに限られない。判断部512は、下地のホワイトインクの有無によって変化する円形度などのカラーインクの任意の画像特性に基づいて、欠損ノズルの有無を判断してもよい。また、判断部512は、複数の画像特性に基づいて、欠損ノズルの有無を判断してもよい。
【0115】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路を含むプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0116】
1A,1B 液体吐出装置
6,60 液体吐出ヘッド
8,61 画像読取部
10 排紙ローラ
60 液体吐出ヘッド
511 計測部
512 判断部
513 出力部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】