(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20220201BHJP
H01R 4/18 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01R43/00 B
H01R4/18 A
(21)【出願番号】P 2018056630
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-338330(JP,A)
【文献】特開平07-263061(JP,A)
【文献】特開2010-244895(JP,A)
【文献】特開昭56-160779(JP,A)
【文献】特開2016-35858(JP,A)
【文献】特表2017-514286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材料からなる導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを含
む電線、及び挿入穴を有する端子を準備する工程と、
前記電線の端部において前記導体
を露出
させる工程と、
前記端子の前記挿入穴に前記電線の端部で露出する前記導体
を挿入した状態で圧縮して圧着
部を形成することによって、前記導体を前記端子に接続する工程とを有する端子付き電線の製造方法であって、
前記端子がアルミニウム材料からなり、前記圧着部が
50MPa以上80MPa以下の引張強度
と10%以上45%以下の伸びを有
し、
前記圧着部の前記導体の圧縮率が5%~50%であり、
前記端子は、前記挿入穴が切削により形成された後、300℃~400℃で2時間~24時間加熱されて、前記端子における加工歪が低減されてなる、
端子付き電線
の製造方法。
【請求項2】
前記端子の前記アルミニウム材料は、FeおよびZrのうちの1種以上が含有されており、残部がアルミニウムおよび随意成分からなる化学組成を有するものからなる請求項1に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記端子の前記アルミニウム材料は、Feが0.05~1.0質量%で含有されている請求項2に記載の端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
電線は、例えば車両などにおいて電装品間を接続するために使用される。一般に、電線と電装品との接続は、電線の端末に端子を取り付け、電線と電装品の端子同士を電気的に接続することで行われる。
【0003】
電線の端末への端子の取り付けは、例えば、電線の端末から絶縁層を除去して導体を所定長さで露出させ、この露出させた導体部分に対して端子を当該端子の外側から加締めて、導体と端子とを圧着によって接続することで行われる。
【0004】
近年、電線においては軽量化を目的に、導体をアルミニウム材料で形成することが検討されている。例えば、特許文献1には、アルミニウムまたはアルミニウム合金から形成される導体に、銅または銅合金から形成される端子を接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電線の導体に接続される端子は、電線と同様に軽量化のため、アルミニウム材料で形成することが望まれる。しかし、アルミニウム材料で形成される端子は、アルミニウム材料からなる導体と接続してから時間が経過することにより、導体との接続抵抗が増加してしまうことがあった。
【0007】
本発明者の検討によれば、この接続抵抗の増加は、電線に電流が流れるときのジュール熱によって導体の温度が高温度となったり、端子の置かれる環境が高温度であったりすることで、端子が加熱され、端子と電線の導体との接触圧が低下するためと考えられた。
【0008】
したがって、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、端子が高温環境下に曝された場合であってもアルミニウム材料からなる端子と導体との接続抵抗を低く維持する技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、
電線の導体へ圧着によって接続される圧着部を有する端子であって、
アルミニウム材料からなり、前記圧着部が80MPa以下の引張強度を有する、
端子が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、
導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを含み、端部において前記導体が露出する電線と、
前記電線の端部で露出する前記導体へ圧着によって接続される圧着部を有する端子と、を備え、
前記端子がアルミニウム材料からなり、前記圧着部が80MPa以下の引張強度を有する、
端子付き電線が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、端子が高温環境下に曝された場合であってもアルミニウム材料からなる端子と導体との接続抵抗を低く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる端子の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる端子の製造方法の工程図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施形態にかかる端子の製造方法の工程図である。
【
図4】
図4は、端子と電線との圧着接続を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
端子は、詳細を後述するように鋳造材を塑性変形させることにより形成されており、加工にともなう加工歪を内部に有している。端子を電線の導体に圧着によって接続させることで、端子と導体との間で所定の接触圧が得られる。しかし、接続してから時間が経過すると、接触圧が低下し、接続抵抗が増加することになる。接触圧の低下について本発明者が検討したところ、端子が高温環境下に曝されると、時間の経過とともに端子の加工歪が徐々に開放されて、端子と導体との間、および導体が複数の素線で構成される場合であれば複数の素線同士の間で応力緩和が生じてしまうためであることが見出された。また、端子における加工歪が大きいほど、高温環境下での応力緩和が大きくなり、接続抵抗の増加がより大きくなることが見出された。
【0014】
このことから、本発明者は、端子について高温環境下での応力緩和を減らすべく、端子を形成するアルミニウム材料の組成や製造条件などを適宜変更し、検討を行った。その結果、端子をアルミニウム材料で形成したときに、電線の導体と圧着によって接続される部分(圧着部)の引張強度を80MPa以下とすることで、端子における加工歪を低減し、高温環境下での接続抵抗の増加を抑制できることを見出した。本発明は、上記知見に基づいて成されたものである。
【0015】
<一実施形態>
以下、本発明の一実施形態にかかる端子および端子付き電線について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる端子の概略構成図である。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
[端子]
端子1は、
図1に示すように、圧着部11と外部接続部12とを備え、これらが一体的に形成されて構成される。
【0017】
圧着部11は、電線の端末から露出する導体に接続される部分として構成されている。本実施形態では、圧着部11は、一端が開口して他端が閉じた筒状に形成されており、一端側に向かって開口する挿入穴13を有している。挿入穴13の開口部の形状は、円形に限定されず、導体の断面に対応した形状とするとよい。挿入穴13に電線の端末から露出する導体が挿入されて、圧着部11の表面が圧縮されることで、端子1と導体とが圧着される。
【0018】
外部接続部12は、外部の接続相手側の端子やボルト等に接続される部分として構成されている。本実施形態では、外部接続部12は、例えば、板状に形成され、外部の端子やボルト等が挿入される接続用孔14が設けられている。なお、
図1では、外部接続部12の先端が矩形状を有する場合を示すが、外部接続部12の先端形状は、接続相手側の形態に応じて適宜変更することができる。例えば、先端を円弧状としてもよい。
【0019】
本実施形態の端子1は、アルミニウム材料から形成されており、圧着部11が80MPa以下の引張強度を有する。当該引張強度は、好ましくは、50MPa以上80MPa以下である。また、端子1は、圧着部11が10%以上45%以下の伸びを有する。当該伸びは、好ましくは25%以上45%以下である。
【0020】
端子1を構成するアルミニウム材料としては、圧着部11の引張強度が80PMa以下となるように形成する観点から、例えば、FeおよびZrのうちの1種以上が含有されており、残部がアルミニウム(Al)および随意成分からなる化学組成を有するものであることが好ましい。より具体的には、例えば、FeおよびZrのうちの一種以上がFe:0.05~1.0質量%、Zr:0.01~0.10質量%の含有量で含有されており、残部がAlおよびSi、Cu、Mn、Mg、Zn、Ti、Vなどの随意成分からなる化学組成を有するアルミニウム材料で端子が形成されることが好ましい。なお、随意成分の含有量としては、Si:0.1質量%以下、Cu:0.01質量%以下、Mn:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Zn:0.01質量%以下、Ti:0.01質量%以下、V:0.01質量%以下である。
【0021】
Feは、Al合金の金属組織中に析出することでAl合金の強度(例えば引張強度など)の向上に寄与する。Feの含有量は0.05質量%~1.0質量%である。Feの含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下であれば、端子1の高温環境下における接続抵抗の増加の抑制に寄与する。また、Feの含有量が上記範囲内であることにより、Al合金において強度および伸びのバランスを高い水準で得ることができる。これらの効果をより高める観点からは、Feの含有量は0.08質量%~0.65質量%であることがより好ましい。
【0022】
Zrは、Al合金の金属組織中に析出することでAl合金の耐熱性の向上に寄与する。Zrの含有量は0.01質量%~0.10質量%である。Zrの含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下であれば、端子1の高温環境下における接続抵抗の増加の抑制に寄与する。また、Zrの含有量が上記範囲内であることにより、Al合金において耐熱性および伸びのバランスを高い水準で得ることができる。これらの効果をより高める観点からは、Zrの含有量は0.01質量%~0.03質量%であることが好ましく、0.015質量%~0.025質量%であることがより好ましい。
【0023】
随意成分であるSi、Cu、Mn、Mg、Zn、TiおよびVは、アルミニウム原料に由来する不可避不純物として取り込まれたり、必要に応じて適宜添加したりする金属元素である。ここで、随意成分とは、含有してもよいし含有しなくてもよい成分を示す。各金属元素は、端子1の高温環境下における接続抵抗の増加の抑制、さらにはAl合金においてAl相の結晶粒の粗大化を抑制し、その強度の向上に寄与する。これらの効果を高い水準で得る観点からは、Si:0質量%~0.1質量%、Cu:0質量%~0.01質量%、Mn:0質量%~0.01質量%、Mg:0質量%~0.01質量%、Zn:0質量%~0.01質量%、Ti:0質量%~0.01質量%、V:0質量%~0.01質量%とすることが好ましい。
【0024】
端子1を形成するAl合金は、端子1の高温環境下における接続抵抗の増加を抑制する観点からは、加工歪が少なく、大きな結晶粒を含む金属組織を有することが好ましい。
【0025】
端子1は、200℃で150時間加熱したときの抵抗増加率が15%以下であることが好ましい。ここで、抵抗増加率は、詳細を実施例で示すように、導体の端末を端子1の挿入穴13に挿入し、導体の圧縮率[(圧縮前の導体の断面積-圧縮後の導体の断面積)/(圧縮前の導体の断面積)×100]が5~50%となるように端子1の圧着部11を導体に圧着させて接続して端子付き電線に加工し、この端子付き電線を200℃の環境下で150時間加熱して、初期状態での接続抵抗と加熱後での接続抵抗とから算出されるものである。なお、抵抗増加率の下限値は、特に限定されず、0でもよい。
【0026】
[端子の製造方法]
続いて、上述した端子1の製造方法について説明する。本実施形態の端子は、鋳造工程、プレス工程、切削工程、および加熱工程の各工程を順次行うことにより製造することができる。以下、各工程について
図2を用いて詳述する。
図2は、本発明の一実施形態にかかる端子の製造方法の工程図を示す。
図2では、端子を側面から見たときの図を左側に、端子を正面から見たときの図を右側にそれぞれ示す。
【0027】
(鋳造工程)
まず、
図2(a)に示すように、例えば、上述した化学組成を有するアルミニウム材料からなる円柱形状の鋳造材20を準備する。鋳造材20は、例えば、所定の化学組成となるようにAl原料、必要に応じて他の金属原料(例えばFe原料やZr原料など)を混合して溶融し、得られた溶湯を鋳造することで得られる。原料の混合方法や溶融方法は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0028】
(押出工程)
続いて、横断面が円柱形状の鋳造材20から、
図2(b)に示すように、押出機を用いた押出成形加工により、横断面が円柱形状の丸棒部材21を得る。丸棒部材21は、後述するプレス工程の前に伸線加工によって縮径し、所望の外径としてもよい。
【0029】
(プレス工程)
続いて、
図2(c)に示すように、丸棒部材21の一方の端部側を、金型を用いてプレス圧延することにより、一定の厚さを有する板状部分を形成する。そして、板状部分を、金型を用いて打ち抜き加工することにより、接続用孔14を設け、外部接続部12を形成する。
【0030】
(切削工程)
続いて、
図2(d)に示すように、丸棒部材21のもう一方の端部側に対して、例えばドリルを用いて切削加工を行うことにより、鋳造材20に挿入穴13を設け、圧着部11を形成する。これにより、圧着部11および外部接続部12が一体的に形成された端子1が得られる。なお、圧着部11の挿入穴13の内周面は、切削により形成される切削面となる。
【0031】
(加熱工程)
加工された端子1は、そのまま使用することもできるが、加熱処理することが好ましい。加熱処理によれば、各工程で蓄積された加工歪を取り除くことができ、端子1の高温環境下における接続抵抗の増加をより抑制することができる。また、加熱処理によれば、端子1の引張強度および伸びを所望の範囲に調整することができる。加熱処理は、端子1を高温度で加熱することが好ましく、例えば300℃~400℃の温度で2時間~24時間、加熱することが好ましい。
【0032】
以上により、本実施形態の端子1が得られる。
【0033】
[端子付き電線]
続いて、上述した端子を電線と接続した端子付き電線について
図4を用いて説明する。
図4は、端子と電線との圧着接続を説明するための図である。
【0034】
端子付き電線は、電線30と、電線30の端末から露出する導体31に電気的に接続される端子1とを備えて構成される。
【0035】
電線30は、いわゆる絶縁電線として構成されており、例えば、導体31と導体31の周囲を被覆する絶縁層32とを備えている。
【0036】
導体31は、電線30の芯線を構成している。導体31としては、金属線、もしくは複数の金属素線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。電線30の可とう性を高める観点からは撚り線を用いることが好ましい。導体31を形成する金属材料としては、アルミニウム材料を用いることができる。本実施形態では、端子1との間で所望の電気特性を得る観点からは、導体31がアルミニウム材料から形成されることが好ましい。導体31の外径は、特に限定されない。
【0037】
絶縁層32は、絶縁材料から形成され、導体31を被覆するように設けられている。絶縁層32は、電線30の長さ方向の全長にわたって設けられるが、本実施形態では、電線30の端末から所定の長さだけ除去され、導体31の端末の一部が露出している。
【0038】
電線30への端子1の取り付けは、例えば以下のように行うとよい。
具体的には、まず、絶縁層32を電線30の長さ方向の端末から所定の長さだけ取り除き、導体31の一部を露出させる。続いて、
図4に示すように、端子1における圧着部11の挿入穴13に電線30における導体31の露出した一部を挿入し、その状態で圧着部11を圧縮する。この圧縮は、例えば圧縮工具を用いて、圧着部11の複数箇所に所定の圧力を加えて、圧着部11を圧縮変形(塑性変形)させることにより行う。圧縮変形させる箇所は、圧着部11の軸方向(挿入穴13に挿入されている導体31の長さ方向)に対して位置をずらして(各々箇所を離間させて)複数箇所(例えば2箇所~4箇所)を設定するとよい。また、導体31の圧縮率は、特に限定されないが、例えば5%~50%とするとよい。以上により端子1を電線30の端末に圧着接続して、端子付き電線を得ることができる。
【0039】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0040】
(a)本実施形態では、端子1をアルミニウム材料で形成するとともに、端子1の圧着部11を引張強度が80MPa以下となるように構成している。このような圧着部11を備える端子1によれば、端子1に加工したときの加工歪を少なく維持し、端子1が高温環境下に曝されたときの接続抵抗の増加を抑制することができる。
【0041】
(b)本実施形態の端子1は、その製造過程のプレス工程にて丸棒部材21を加熱しながらプレス圧延されることで形成されている。また、最終的に熱処理が施されている。そのため、2つの熱処理により端子1における加工歪をさらに低減することができ、端子1の抵抗増加率を10%以下に抑制することができる。
【0042】
(c)また、端子1は、挿入穴13が切削により形成され、その内周面が切削面であることが好ましい。切削によれば、寸法精度に優れた挿入穴13を形成できるので、端子1を電線30に圧着させて接続したときに所望の高い電気特性を得られるだけでなく、高温環境下に曝されたときの抵抗増加率を低く抑制することができる。
【0043】
<変形例>
本実施形態における製造過程での熱処理は、以下のように変更することができる。
本実施形態では、プレス工程と、切削工程の後工程とで熱処理を施しているが、いずれか一方の熱処理を行うようにしてもよい。この場合、端子1の抵抗増加率を15%以下に抑制することができる。
【0044】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
上述の実施形態では、鋳造で得られる鋳造材から丸棒部材を形成し、丸棒部材を鍛造により端子に加工する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばアルミニウム材料からなる鋳造材をパイプ材に加工し、これを圧縮させて端子に加工してもよい。以下、
図3を用いて具体的に説明する。
図3は、本発明の他の実施形態にかかる端子の製造方法の工程図である。
【0046】
(鋳造工程)
まず、
図3(a)に示すように、アルミニウム材料からなる円柱形状の鋳造材20を準備する。この鋳造材20は、上述の実施形態と同様に作製することができる。
【0047】
(押出工程)
続いて、円柱形状の鋳造材20から、
図3(b)に示すように、押出機を用いた押出成形加工により、鋳造材20よりも外径が小さい円筒状のパイプ部材22を得る。
【0048】
(パイプ圧縮工程)
続いて、
図3(c)に示すように、パイプ部材22の一方の端部側を、金型を用いてプレス圧延することにより圧縮して、一定の厚さを有する板状部分を形成する。パイプ部材22のもう一方の端部側は開口しており、挿入穴13が形成される。これにより、電線30の露出する導体31を挿入する圧着部11が形成される。なお、外部接続部12となる圧縮により閉じた箇所は、その先端を例えば溶接などで適宜封止するとよい。
【0049】
(孔形成工程)
続いて、
図3(d)に示すように、一端側が圧縮されて形成された板状部分を、金型を用いて打ち抜き加工することにより、接続用孔14を設け、外部接続部12を形成する。以上により、圧着部11および外部接続部12が一体的に形成された端子1が得られる。
【0050】
(加熱工程)
加工された端子1は、そのまま使用することもできるが、上述した実施形態と同様に加熱処理することが好ましい。加熱処理は、端子1を高温度で長時間加熱することが好ましく、例えば300℃~400℃で2時間~24時間、加熱することが好ましい。
【0051】
他の実施形態によれば、上述した実施形態と同様の効果(a)~(b)が得られる。また、最終的に熱処理を施すことにより、端子1における加工歪を低減し、端子1の抵抗増加率を15%以下とより低く抑制することができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0053】
(実施例1)
実施例1では、上述した鍛造による製造方法にて製造したアルミニウム材料からなる端子にアルミニウム材料からなる導体を圧縮することにより、実施例1の端子付き電線を得た。なお、下記表1に示すように、端子は、端子の形状に成形した後、当該端子に対して400℃、24時間の条件で熱処理を行った。
【0054】
(実施例2)
実施例2では、上述した鍛造による製造方法にて、下記表1に示す化学組成のアルミニウム材料からなる端子を製造し、実施例1と同様に、アルミニウム材料からなる導体に圧縮することにより、実施例2の端子付き電線を作製した。なお、端子の熱処理条件は、温度を400℃、熱処理時間を24時間とした。
【0055】
(実施例3)
実施例3は、下記表1に示すように、端子の熱処理条件として、温度を330℃、熱処理時間を3時間に変更した以外は、実施例2と同様に端子を製造し、端子付き電線を作製した。
【0056】
(比較例1)
比較例1は、端子に熱処理を施さなかった以外は、実施例2,3と同様に端子を製造し、端子付き電線を作製した。
【0057】
(比較例2)
比較例2は、端子に熱処理を施さなかった以外は、実施例1と同様に端子を製造し、端子付き電線を作製した。
【0058】
各端子について、組成と熱処理条件を下記表1にまとめた。
【0059】
【表1】
(引張強度、伸びの測定)
実施例1~3、比較例1~2で得られた端子の圧着部から2mm×2mm角の棒状の試験片を切り出した。この試験片に対して、JISZ2241に準拠する方法によって引張試験を行い、引張強度および伸びを測定した。なお、引張試験は、試験速度が2mm/min、標点距離が20mmで行った。
【0060】
(接続抵抗の測定)
接続抵抗の測定は、実施例1~3、比較例1~2で得られた端子付き電線に対して、以下の方法によって試験を行い、評価した。
抵抗増加率は、初期抵抗に対する高温試験後の抵抗の値の変化率((高温験後の抵抗の値/初期抵抗の値)×100)である。
ここで初期抵抗の値は、製造した端子付き電線において、端子と導体の他端との間で抵抗の測定を行った。
また、高温試験は、初期抵抗の値を測定した後の端子付き電線を200℃の温度に設定した恒温槽に配置し、大気中で150時間まで保持することによって行った。なお、高温試験後の抵抗の値の測定は、試料を室温まで冷却した後に、初期抵抗の値を測定するときと同様の方法で行った。
抵抗増加率が、15%以下であるものを合格とした。
【0061】
以上の結果から、実施例1~3では、アルミニウム材料から形成される端子を、圧着部の引張強度が80MPa以下となるように構成することで、抵抗増加率を15%以下に抑制できることが確認された。すなわち、本発明によれば、端子が高温環境下に曝された場合であっても端子と導体との接続抵抗を低く維持することができることが確認された。
【0062】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0063】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
電線の導体へ圧着によって接続される圧着部を有する端子であって、
アルミニウム材料からなり、前記圧着部が80MPa以下の引張強度を有する、
端子が提供される。
【0064】
[付記2]
付記1の端子において、好ましくは、
200℃で150時間加熱したときの抵抗増加率が15%以下である。
【0065】
[付記3]
付記1又は2の端子において、好ましくは、
前記圧着部が10%以上45%以下の伸びを有する。
【0066】
[付記4]
付記1~3のいずれかの端子において、好ましくは、
前記アルミニウム材料は、FeおよびZrのうちの1種以上が含有されており、残部がアルミニウムおよび随意成分からなる化学組成を有するものからなる。
【0067】
[付記5]
付記4の端子において、好ましくは、
前記アルミニウム材料は、Feが0.05~1.0質量%で含有されている。
【0068】
[付記6]
付記4の端子において、好ましくは、
前記アルミニウム材料は、Feが0.05~1.0質量%、Zrが0.01~0.10質量%で含有されている。
【0069】
[付記7]
付記1~6のいずれかの端子において、好ましくは、
前記圧着部は、一端が開口して他端が閉じた筒状であり、前記圧着部の内周面が切削面である。
【0070】
[付記8]
本発明の他の態様によれば、
導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを含み、端部において前記導体が露出する電線と、
前記電線の端部で露出する前記導体へ圧着によって接続される圧着部を有する端子と、を備え、
前記端子がアルミニウム材料からなり、前記圧着部が80MPa以下の引張強度を有する、
端子付き電線が提供される。
【符号の説明】
【0071】
1 端子
11 圧着部
12 外部接続部
13 挿入穴
14 接続用孔
20 鋳造材
21 丸棒部材
22 パイプ部材
30 電線
31 導体
32 絶縁層