(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】搬送装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/00 20060101AFI20220201BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
B65H9/00 J
B65H7/14
B65H9/00 A
(21)【出願番号】P 2018082822
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2017117546
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕道
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 勝明
(72)【発明者】
【氏名】山根 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 英之
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175776(JP,A)
【文献】特開2014-133634(JP,A)
【文献】特開2014-112141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路においてシートを搬送する搬送装置であって、
前記搬送経路において搬送されるシートの幅方向端面の位置を検知する検知手段と、
第1駆動手段によって回転駆動されて、シートをニップ部に挟持した状態で搬送して、第2駆動手段によってシート搬送面内に平行な方向に回動可能に構成された第1ローラ対と、
前記第1ローラ対に対して搬送方向下流側又は搬送方向上流側に配置されて、前記第1ローラ対とともにシートをニップ部に挟持した状態で搬送する第2ローラ対と、
前記第2駆動手段によって前記第1ローラ対を前記シート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートを前記第1ローラ対と前記第2ローラ対とによって搬送しながら当該シートの幅方向端面の位置の時間変化を前記検知手段によって検知して、当該シートが前記第1ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、当該シートが前記第2ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、が略一致する回動位置を基準位置として設定する制御部と、
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
搬送経路においてシートを搬送する搬送装置であって、
前記搬送経路において搬送されるシートの幅方向端面の位置を検知する検知手段と、
第1駆動手段によって回転駆動されて、シートをニップ部に挟持した状態で搬送して、第2駆動手段によってシート搬送面内に平行な方向に回動可能に構成された第1ローラ対と、
前記第1ローラ対に対して搬送方向下流側又は搬送方向上流側に配置されて、前記第1ローラ対とともにシートをニップ部に挟持した状態で搬送する第2ローラ対と、
前記第2駆動手段によって前記第1ローラ対を前記シート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートを前記第1ローラ対と前記第2ローラ対とによって搬送しながら当該シートの幅方向端面の位置の時間変化を前記検知手段によって検知して、当該シートが前記第1ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、当該シートが前記第2ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、の差が最小となる回動位置を基準位置として設定する制御部と、
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
前記第2ローラ対は、前記第1ローラ対に対して搬送方向下流側の位置に配設された下流側搬送ローラ対であって、
前記第1ローラ対に対して搬送方向上流側の位置に配設されて、前記第1ローラ対の位置に向けてシートを搬送する上流側搬送ローラ対を備え、
前記制御部は、前記第2駆動手段によって前記第1ローラ対を前記シート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートを前記上流側搬送ローラ対と前記第1ローラ対と前記下流側搬送ローラ対とのうち少なくとも前記第1ローラ対と前記下流側搬送ローラ対とによって搬送しながら、当該シートの幅方向端面の位置の前記時間変化を、当該シートが前記第1ローラ対の位置に達する前から前記下流側搬送ローラ対によって搬送されるまで前記検知手段によって検知して、当該シートが前記第1ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、当該シートが前記第2ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、から前記基準位置を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送経路において搬送されるシートの前記シート搬送面内に平行な方向のスキュー量を検知する第2検知手段を備え、
前記制御部は、前記第1ローラ対の位置にシートが搬送される前に前記第2検知手段の検知結果に基づいて当該シートのスキュー量に対応して当該シートに正対するように前記第2駆動手段によって前記第1ローラ対を前記基準位置から回動して、その後に当該シートを挟持した状態の前記第1ローラ対をスキュー量が補正されるように前記第2駆動手段によって前記基準位置に回動することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第2検知手段は、前記検知手段であることを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記検知手段の検知結果に基づいて前記第1ローラ対を幅方向に移動可能に構成された第3駆動手段を備え、
前記制御部は、前記第1ローラ対の位置にシートが搬送される前に前記検知手段の検知結果に基づいて当該シートの幅方向の位置ズレに対応して前記第3駆動手段によって前記第1ローラ対を第2基準位置から幅方向に移動して、その後に当該シートを挟持した状態の前記第1ローラ対を前記位置ズレが補正されるように前記第3駆動手段によって前記第2基準位置に移動することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記第1ローラ対に対して搬送方向上流側の位置において搬送方向の離れた位置に並設された2つのCISであって、
前記制御部は、前記第2駆動手段によって前記第1ローラ対を前記シート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートを前記第1ローラ対と前記第2ローラ対とによって搬送しながら当該シートの幅方向端面の位置の前記時間変化を前記2つのCISによってそれぞれ検知して、前記2つのCISのそれぞれの検知結果に基づいてそれぞれの、当該シートが前記第1ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、当該シートが前記第2ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、から前記基準位置を設定することを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基準位置の決定をおこなうために前記各段階ごとにシートを前記第1ローラ対によって挟持・搬送する制御を、通常の搬送工程がおこなわれていないタイミングでおこなうことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートを搬送する搬送装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機やオフセット印刷機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置では、所定の搬送方向に搬送されるシートの傾き方向(シート搬送面内において、搬送方向に対して傾いた方向である。)のスキュー量を検知して、その検知結果に基づいてシートのスキュー(傾き)を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1における搬送装置には、傾き方向に回動可能に構成された挟持ローラ対が設置されている。また、搬送装置には、所定方向に搬送されるシートの幅方向の位置を検知する複数のCIS(コンタクト・イメージ・センサ)が、搬送方向の離れた位置に並設されている。そして、CISの位置をシートが通過するときに、CISによってシートのスキュー量が検知されて、そのスキュー量に対応してシートに正対するように挟持ローラ対が基準位置から回動される。そして、そのシートが挟持ローラ対の位置に達して、挟持ローラ対によって挟持・搬送されているときに、挟持ローラ対を基準位置に戻すように回動して、シートのスキューを補正している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の搬送装置は、挟持ローラ対などの種々の構成部品の組付け誤差や部品誤差などによって、挟持ローラ対の基準位置が狙いの位置からズレてしまって、挟持ローラ対によるシートのスキュー補正が高精度におこなわれない可能性があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、所定の搬送方向に搬送されるシートのスキュー補正を高精度におこなうことができる、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における搬送装置は、搬送経路においてシートを搬送する搬送装置であって、前記搬送経路において搬送されるシートの幅方向端面の位置を検知する検知手段と、第1駆動手段によって回転駆動されて、シートをニップ部に挟持した状態で搬送して、第2駆動手段によってシート搬送面内に平行な方向に回動可能に構成された第1ローラ対と、前記第1ローラ対に対して搬送方向下流側又は搬送方向上流側に配置されて、前記第1ローラ対とともにシートをニップ部に挟持した状態で搬送する第2ローラ対と、前記第2駆動手段によって前記第1ローラ対を前記シート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートを前記第1ローラ対と前記第2ローラ対とによって搬送しながら当該シートの幅方向端面の位置の時間変化を前記検知手段によって検知して、当該シートが前記第1ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、当該シートが前記第2ローラ対のニップ部に達してからの前記時間変化の割合と、が略一致する回動位置を基準位置として設定する制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定の搬送方向に搬送されるシートのスキュー補正を高精度におこなうことができる、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図6】搬送装置において保持部材が中継支持部材によってフレーム上に支持された状態を示す図である。
【
図7】2段スプラインカップリングを示す構成図である。
【
図8】保持部材が、(A)幅方向に動作する図と、(B)傾き方向に動作する図と、(C)幅方向と傾き方向とに同時に動作する図と、である。
【
図10】
図9に続く搬送装置の動作を示す概略図である。
【
図11】挟持ローラ対の傾き方向の基準位置がズレてしまっている状態を示す図である。
【
図12】挟持ローラ対の傾き方向(斜め方向)を5段階で変更したときの、各段階ごとの2つのCISの検知結果を示すグラフである。
【
図13】
図11の検知結果から、挟持ローラ対の傾斜角と、シート端面位置の変化の直線性と、の関係を集計したグラフである。
【
図14】基準位置調整モード時の制御を示すフローチャートである。
【
図15】スキュー補正及び横レジスト補正を示す制御フローである。
【
図17】基準位置調整モード時の挟持ローラ対の動作を示す図である。
【
図18】この発明の実施の形態2における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図19】この発明の実施の形態3における画像形成装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
<実施の形態1>
まず、
図1にて、画像形成装置における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、を示す。
また、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像をシートPに転写する転写ローラ、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、12~14は転写紙等のシートPが収納された給紙部(給紙カセット)、20はシートP上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着ローラ、22は定着装置20に設置された加圧ローラ、を示す。
また、30はシートPを搬送経路に沿って搬送する搬送装置、31は転写ローラ7(転写ニップ部)に向けてシートPを搬送するレジストローラ(タイミングローラ)として機能する第1ローラ対としての挟持ローラ対(横レジスト・スキュー補正ローラ)、を示す。
【0011】
図1を参照して、画像形成装置における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいた露光光L(レーザ光)が、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0012】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図中の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、転写ローラ7の位置で、レジストローラとして機能する挟持ローラ対31(第1ローラ対)により搬送されたシートP上に転写される。
【0013】
一方、
図1及び
図2を参照して、転写ローラ7(画像形成部)に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部12~14のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、装置本体1に内設された給紙部12が選択されたものとする。)。
そして、給紙部12に収納されたシートPの最上方の1枚が、給紙ローラ41によって、第1搬送ローラ対42、第2搬送ローラ対43が設置された湾曲搬送経路に向けて給送される。
【0014】
その後、シートPは、湾曲搬送経路から合流部X(装置本体1の外部に設置された2つの給紙部13、14からの搬送経路が合流する部分である。)の位置を通過した後に、第3搬送ローラ対44(上流側搬送ローラ対)、整合部51が設置された直線搬送経路を通過して、整合部51を構成する挟持ローラ対31の位置に達する。そして、整合部51を構成する挟持ローラ対31によって、スキュー補正(斜行補正)と横レジスト補正とがおこなわれて、さらに感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて転写ニップ部(転写ローラ7と感光体ドラム5とが当接する部分である。)に向けて搬送される。転写ローラ7と感光体ドラム5とは、それぞれ、矢印で示す搬送方向に沿うように回転する。そして、転写ローラ7と感光体ドラム5とは、挟持ローラ対31に対して搬送方向下流側に配置されて、挟持ローラ対30(第1ローラ対)とともにシートPをニップ部(転写ニップ部)に挟持した状態で搬送する第2ローラ対(下流側搬送ローラ対)としても機能することになる。
【0015】
そして、転写工程後のシートPは、転写ローラ7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達したシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着されたシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(定着ニップ部である。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0016】
ここで、
図2を参照して、本実施の形態1における画像形成装置1は、3つの給紙部12~14からシートPを転写ローラ7(転写ニップ部)に向けて給送できるように構成されている。
また、搬送装置30に設置された搬送ローラ対42~44(符号を付していない搬送ローラ対も含む。)は、いずれも、駆動ローラ(駆動機構によって回転駆動されるローラである。)と従動ローラ(駆動ローラとの摩擦抵抗によって従動回転するローラである。)とからなるローラ対であって、シートPを2つのローラで挟持しながら搬送できるように構成されている。
【0017】
ここで、第1の給紙部12からの搬送経路と、第2、第3の給紙部13、14からの搬送経路と、が合流する合流部Xから、転写ローラ7(転写ニップ部)までの搬送経路として、シートPの搬送方向に沿って略直線状に形成された直線搬送経路が設けられている。この直線搬送経路は、直線搬送ガイド板(搬送されるシートPの表裏面を挟むように設置されている。)によって形成されていて、搬送方向に沿って、上流側搬送ローラ対としての第3搬送ローラ対44、検知手段としての2つのCIS(第1CIS35と第2CIS36とである。)、挟持ローラ対31(整合部51)、が設置されている。第3搬送ローラ対44と挟持ローラ対31とは、いずれも、駆動ローラと従動ローラとからなるローラ対であって、シートPを2つのローラで挟持しながら搬送することになる。そして、挟持ローラ対31は、スキュー補正(搬送方向に対して傾き方向の位置ズレに対する補正である。)と横レジスト補正(幅方向の位置ズレに対する補正である。)との整合動作をおこなうための整合部51としても機能することになるが、これについては後で詳しく説明する。
【0018】
次に、
図2~
図10を用いて、本実施の形態1における搬送装置30について、さらに詳しく説明する。
以下、主として、合流部Xから転写ローラ7(画像形成部)に至る搬送経路における構成やそこでおこなわれる動作について説明する。
図2及び
図3を参照して、搬送装置30には、シートPの直線搬送経路(合流部Xから転写ローラ7に至る搬送経路である。)に沿って、第3搬送ローラ対44(上流側搬送ローラ対)、CIS35、36(コンタクト・イメージ・センサ)、整合部51として機能するとともにレジストローラとしても機能する挟持ローラ対31(横レジスト・スキュー補正ローラ)、が設置されている。
【0019】
ここで、第1ローラ対としての挟持ローラ対31は、第1駆動手段としての第1モータ61によって回転駆動されて、シートPをニップ部に挟持した状態で搬送して、第2駆動手段63、81~84、98によってシート搬送面内に平行な方向(以下、適宜に「傾き方向」という。)に回動可能に構成されている。
【0020】
詳しくは、挟持ローラ対31は、幅方向に複数分割されたローラ部を有するローラ対であって、第1駆動手段としての第1モータ61(
図4を参照できる。)によって回転駆動される駆動ローラ31bと、駆動ローラ31bの回転に従動して回転する従動ローラ31aと、で構成されている。挟持ローラ対31は、シートPを挟持した状態で回転することによってシートPを搬送可能に形成されている。
なお、本実施の形態1では、挟持ローラ対31として、幅方向に複数分割されたローラ部を有するローラ対を用いたが、幅方向に分割されずに幅方向にわたって延在するローラ部を有するローラ対を用いることもできる。
【0021】
また、挟持ローラ対31は、保持部材としての保持フレーム72とともに、支軸73を中心に傾き方向(
図3の破線両矢印W方向である。)に回動できるように形成されるとともに、幅方向(
図3の破線矢印S方向である。)に移動できるように形成されている。
そして、挟持ローラ対31は、検知手段(第1検知手段)として機能する第1CIS35(又は、第2CIS36)の検知結果に基づいて保持フレーム72とともにガイド部71aに沿って移動してシートPの横レジスト補正をおこなったり、第2検知手段としても機能するCIS35、36の検知結果に基づいて保持フレーム72とともに支軸73を中心に回動してシートPのスキュー補正をおこなったりすることになる。
【0022】
さらに詳しくは、
図4~
図6を参照して、挟持ローラ対31(従動ローラ31a及び駆動ローラ31b)は、保持部としての保持フレーム72に、回転可能に支持されている。保持フレーム72(保持部)は、板金を略箱状に形成したものであって、その幅方向(
図2の紙面垂直方向であって、
図4~
図6の左右方向である。)の両端部に形成した穴部に、軸受を介して挟持ローラ対31(従動ローラ31a及び駆動ローラ31b)の軸部が挿入されている。保持フレーム72は、挟持ローラ対31とともに、幅方向に移動したり、支軸73を中心に回動したりする。
駆動ローラ31bの幅方向一端側には、搬送装置30のフレーム(本体フレーム70、ベースフレーム71、ブラケット69などがネジ締結により固定されて構成されている。)におけるブラケット69に固定して設置された第1駆動手段(第1モータ61、ギア列66、67などで構成されている。)が2段スプラインカップリング65を介して接続されている。これにより、搬送装置30のフレーム69~71に固定された第1モータ61の回転駆動力がギア列66、67、2段スプラインカップリング65を介して駆動ローラ31bに伝達されて、挟持ローラ対31が回転駆動されることになる。
また、駆動ローラ31bの幅方向他端側には、挟持ローラ対31(駆動ローラ31b)の回転速度や回転タイミングなどを制御するためのエンコーダ96が設置されている。
【0023】
ここで、2段スプラインカップリング65は、
図7に示すように、第1スプラインギア65a、第2スプラインギア65b、中間スプラインギア65c、ガイドリング65d、等で構成されている。
第1スプラインギア65aは、外歯車であって、第1駆動手段のギア列66、67のうち一方のギア67とともに回転する回転軸68(ブラケット69に軸受を介して回転可能に保持されている。)に設置されている。
第2スプラインギア65bは、外歯車であって、挟持ローラ対31の駆動ローラ31bの軸部に設置されている。
中間スプラインギア65cは、内歯車であって、挟持ローラ対31(保持フレーム72)が幅方向に移動(スライド移動)しても2つのスプラインギア65a、65bに噛合するように、幅方向に延設されている。また、2つのスプラインギア65a、65bは、挟持ローラ対31(保持フレーム72)が傾き方向(斜め方向)に回動しても中間スプラインギア65cに噛合するように、クラウン状に形成されている。
このような2段スプラインカップリング65を用いることで、挟持ローラ対31が支軸73を中心にして略水平面方向に回動したり幅方向にスライド移動したりしても、本体のフレーム69~71に固定して設置された第1モータ61(第1駆動手段)の駆動力が、挟持ローラ対31(駆動ローラ31b)に精度よく確実に伝達されて、挟持ローラ対31が良好に回転駆動されることになる。
なお、ガイドリング65dは、略環状のストッパ部材であって、2つのスプラインギア65a、65bが幅方向に相対的に移動して2段スプラインカップリング65から脱落するのを防止するために、中間スプラインギア65cの幅方向両端部にそれぞれ設置されたものである。
【0024】
ここで、
図5、
図6を参照して、保持フレーム72(保持部材)は、装置のフレーム69~71(ベースフレーム71)に設置された中継支持部材としてのフリーベアリング95(ボールトランスファー)を介して、フレーム69~71(ベースフレーム71)に対して幅方向と傾き方向とのいずれの方向にも移動可能に支持されている(
図6の紙面に直交する平面を自在に移動できるように支持されている)。なお、
図4では、他の構成部材を視認しやすくするため、フリーベアリング95の図示を省略している。
ここで、フリーベアリング95(ボールトランスファー)は、台座95bの凹部に鋼球95a(球体)が挿設された公知のものであって、鋼球95aの頂部が保持フレーム72の底面に点接触することになる。そして、中継支持部材としてのフリーベアリング95は、フレーム69~71(ベースフレーム71)に対して保持フレーム72を3箇所以上で支持するように、3つ以上配設されている(本実施の形態1では4つのフリーベアリング95が設置されている。)。本実施の形態1では、
図5に示すように、保持フレーム72の底面における四隅に対応する位置(保持フレーム72が最大にスライド移動や回動しても接触可能な位置である。)に、それぞれ、フリーベアリング95がベースフレーム71に固定して設置されている。
このように、ベースフレーム71に対してフリーベアリング95を介して保持フレーム72を支持することで、ベースフレーム71に対して保持フレーム72が相対的に面方向に移動しても、それによって生じる摩擦負荷を極めて小さくすることができるため、後述する横レジスト補正やスキュー補正(斜行補正)が応答性よく高精度におこなわれることになる。
【0025】
ここで、
図4、
図5等を参照して、保持フレーム72(保持部材)には、ベースフレーム71(本体のフレーム)において幅方向に延在するように形成されたガイド部71aに嵌合する支軸73(スタッド)が設けられている。
詳しくは、保持フレーム72の底面には、駆動側(
図4、
図5の右方である。)の端部に比較的近い位置に、下方に向けて起立するように支軸73(スタッド)がカシメ加工などにより固定して設置されている。一方、ベースフレーム71の天井面には、駆動側(
図4、
図5の右方である。)の端部に比較的近い位置に、ガイド部71a(略矩形状の穴部である。)が形成されている。そして、保持フレーム72の支軸73が、ガイドコロ76(支軸73に回転可能に設置されたコロ状部材である。)を介して、ベースフレーム71のガイド部71a(穴部)に嵌合するように形成されている。そして、保持フレーム72は、挟持ローラ対31とともに、ガイド部71aに沿った支軸73の移動に連動して幅方向にスライド移動したり、支軸73を中心に回動したりすることになる。
なお、本実施の形態1では、保持フレーム72の支軸73が嵌合するガイド部71aを略形状の穴部としたが、ガイド部71aは上述した保持フレーム72の動作を可能にするものであればこれに限定されることなく、例えば、ガイド部71aを略長穴形状に形成することもできるし、ガイド部71aを溝部とすることもできる。
【0026】
このような構成により、ベースフレーム71(本体のフレーム)に設置された第2駆動手段63、81~84、98によって、2つのCIS35、36(第2検知手段)の検知結果に基づいて保持フレーム72を支軸73を中心にして回転させることで、保持フレーム72とともに挟持ローラ対31が傾き方向に回動されることになる。
また、ベースフレーム71(本体のフレーム)に設置された第3駆動手段62、74、97によって、検知手段としての第1CIS35(又は、第2CIS36)の検知結果に基づいて支軸73をガイド部71aに沿って移動させることで、保持フレーム72とともに挟持ローラ対31が幅方向に移動されることになる。
【0027】
詳しくは、第2駆動手段は、保持フレーム72(挟持ローラ対31)を支軸73を中心に回動させるためのものであって、第2モータ63、タイミングベルト98、第1カム84、第1付勢部材としての第1引張スプリング92、レバー部材81(回転レバー)、等で構成されている。
第1付勢部材としての第1引張スプリング92は、保持フレーム72を傾き方向の正方向(
図5において支軸73を中心にした時計方向である。)に付勢するように、保持フレーム72とベースフレーム71とに接続されている。
第1カム84は、回転支軸84aを中心に回転可能にベースフレーム71に保持されていて、第1引張スプリング92によって傾き方向の正方向に付勢された保持フレーム72を傾き方向の逆方向(
図5において支軸73を中心にした反時計方向である。)にレバー部材81を介して間接的に押動するものである。すなわち、第2駆動手段は、レバー部材81を介して保持フレーム72を押動するように構成されている。
レバー部材81は、回転支軸81aを中心に回転可能にベースフレーム71に保持されていて、その一端側には第1カム84に当接するカムフォロワ82(第1コロ状部材)が回転可能に設置(軸支)され、その他端側には保持フレーム72の突起部72aに当接する作用コロ83(第2コロ状部材)が回転可能に設置(軸支)されている。
第2モータ63は、ベースフレーム71に固定して設置されている。第2モータ63のモータ軸に設置された駆動プーリと、第1カム84の回転支軸84aに設置された従動プーリと、にはタイミングベルト98が巻装されている。
【0028】
このような構成により、
図8(B)を参照して、第2モータ63が駆動されると、その回転駆動力がタイミングベルト98を介して第1カム84に伝達されて、レバー部材81が第1カム84に押動されて回転支軸81aを中心に回動することで、保持フレーム72が突起部72aの位置でレバー部材81に押動されて、第1引張スプリング92のスプリング力に抗するように保持フレーム72が回動することになる。
【0029】
なお、第1引張スプリング92のスプリング力によって、第1カム84とレバー部材81(カムフォロワ82)とは常に当接した状態になっており、また保持フレーム72(突起部72a)とレバー部材81(作用コロ83)とは常に当接した状態になっており、第1カム84の回転角度(回転方向の姿勢)によって、支軸73を中心にした保持フレーム72の回転角度(回転方向の姿勢)が定められることになる。
このように、第1カム84とレバー部材81との当接位置に第1コロ状部材としてのカムフォロワ82を設置して、保持フレーム72(突起部72a)とレバー部材81との当接位置に第2コロ状部材としての作用コロ83を設置することで、それぞれの当接位置において生じる摩擦負荷を極めて小さくすることができるため、スキュー補正(斜行補正)が応答性よく高精度におこなわれることになる。
【0030】
本実施の形態1では、
図4に示すように、第1カム84の回転支軸84aにエンコーダホイール86が設置され、それに対応するベースフレーム71の位置にエンコーダセンサ87が固設されている。そして、エンコーダセンサ87によるエンコーダホイール86の検知による第2モータ63の制御によって、第1カム84(保持フレーム72)の回転角度(回転方向の姿勢)が調整制御されて、シートPのスキュー補正がおこなわれることになる。
ここで、第1カム84は、そのカム曲線が等速度カム曲線となるように形成されている。これにより、第1カム84の回転角度の変化量と、それにともなう保持フレーム72の回転角度の変化量と、を比例関係にすることができるため、シートPのスキュー補正制御を精度よくおこなうことができる。
【0031】
ここで、本実施の形態1では、
図5、
図8に示すように、挟持ローラ対31の傾き方向(回転方向)の基準位置(回転方向の基準となるホームポジションである。)を把握するために、第1カム84にフィラー84b(第1カム84とレバー部材81との当接を阻害しないように配置されている。)が形成されていて、そのフィラー84bの有無を光学的に検知するフォトセンサ15がベースフレーム71に固設されている。
具体的に、
図5、
図8(A)に示すように、フォトセンサ15によって第1カム84のフィラー84bが検知される状態であるときに、制御部90(
図16参照)によって挟持ローラ対31が傾き方向の基準位置(第1基準位置)にあるものと判断される。これに対して、
図8(B)、(C)に示すように、フォトセンサ15によって第1カム84のフィラー84bが検知されない状態であるときに、制御部90によって挟持ローラ対31が傾き方向の基準位置(第1基準位置)にないものと判断される。したがって、挟持ローラ対31を基準位置から回動させた後に再び基準位置に戻すような場合には、フォトセンサ15によって第1カム84のフィラー84bが検知される状態になるまで、第2モータ63が駆動されることになる。
なお、挟持ローラ対31の基準位置(第1基準位置)の調整については、後でさらに詳しく説明する。
【0032】
一方、第3駆動手段は、保持フレーム72(挟持ローラ対31)をガイド部71aに沿って移動する支軸73とともに幅方向にスライド移動させるためのものであって、第3モータ62、タイミングベルト97、第2カム74、第2付勢部材としての第2引張スプリング91、等で構成されている。
第2付勢部材としての第2引張スプリング91は、保持フレーム72を幅方向の正方向(
図5において左方向である。)に付勢するように、保持フレーム72とベースフレーム71とに接続されている。
第2カム74は、回転支軸74aを中心に回転可能にベースフレーム71に保持されていて、第2引張スプリング91によって幅方向の正方向に付勢された保持フレーム72を幅方向の逆方向(
図5において右方向である。)に押動するものである。保持フレーム72の支軸73には、第2カム74に当接する位置にカムフォロワ75が設置(軸支)されていて、ガイド部71a(ベースフレーム71)に当接する位置にはガイドコロ76(コロ状部材)が設置(軸支)されている。
第3モータ62は、ベースフレーム71に固定して設置されている。第3モータ62のモータ軸に設置された駆動プーリと、第2カム74の回転支軸74aに設置された従動プーリと、にはタイミングベルト97が巻装されている。
【0033】
このような構成により、
図8(A)を参照して、第3モータ62が駆動されると、その回転駆動力がタイミングベルト97を介して第2カム74に伝達されて、第2カム74によって第2引張スプリング91のスプリング力に抗するように保持フレーム72がスライド移動することになる。
【0034】
なお、第2引張スプリング91のスプリング力によって、第2カム74と支軸73(カムフォロワ75)とは常に当接した状態になっており、第2カム74の回転角度(回転方向の姿勢)によって、保持フレーム72(支軸73)の移動距離(幅方向の位置)が定められることになる。
このように、第2カム74と支軸73とがコロ状部材としてのカムフォロワ75を介して当接するようにすることで、その当接位置において生じる摩擦負荷を極めて小さくすることができるため、横レジスト補正が応答性よく高精度におこなわれることになる。
【0035】
本実施の形態1では、
図4に示すように、第2カム74の回転支軸74aにエンコーダホイール77が設置され、それに対応するベースフレーム71の位置にエンコーダセンサ78が固設されている。そして、エンコーダセンサ78によるエンコーダホイール77の検知による第3モータ62の制御によって、第2カム74の回転角度(回転方向の姿勢)が調整制御されて、保持フレーム72のスライド移動によるシートPの横レジスト補正がおこなわれることになる。
ここで、第2カム74は、そのカム曲線が等速度カム曲線となるように形成されている。これにより、第2カム74の回転角度の変化量と、それにともなう保持フレーム72の移動距離の変化量と、を比例関係にすることができるため、シートPの横レジスト補正制御を精度よくおこなうことができる。
【0036】
図8(C)は、上述したシートPのスキュー補正と横レジスト補正とを同時におこなうときの、保持フレーム72の動作の一例を示す図である。
図8(C)に示すように、第2モータ63が駆動されて第1カム84が回転されると、レバー部材81が第1カム84に押動されて回転支軸81aを中心に回動することで、保持フレーム72が突起部72aの位置でレバー部材81に押動されて、第1引張スプリング92のスプリング力に抗するように保持フレーム72が回動する。また、これと同時に、第3モータ62が駆動されて第2カム74が回転されると、第2カム74によって第2引張スプリング91のスプリング力に抗するように保持フレーム72がスライド移動する。このとき、レバー部材81の作用コロ83が突起部72aの面上を移動しながら突起部72a(保持フレーム72)を押動することになる。
【0037】
このように、本実施の形態1では、挟持ローラ対31を回転可能に保持する保持フレーム72に固定した回動支点となる支軸73をスライド移動するので、1つの保持フレーム72に対して回動動作とシフト動作(スライド移動)とが可能となる。そのため、挟持ローラ対31の回動動作をおこなう第2駆動手段と、挟持ローラ対31のシフト動作をおこなう第3駆動手段と、のいずれをも、保持フレーム72に設置する必要がなくなり、本体に固定されたフレーム(ベースフレーム71)に設置することができる。したがって、回動したりスライド移動したりする構造体が軽量になり、これらの動作の応答性を向上させることができるとともに、第2駆動手段や第3駆動手段の駆動源(第2モータ63、第3モータ62)のパワーを小さくすることができて装置の小型化・低コスト化が可能となる。また、本実施の形態1では、挟持ローラ対31を回転駆動する第1駆動手段も、保持フレーム72ではなく、装置のフレーム(ブラケット69)に設置されているため、上述したような効果がさらに確実に発揮されることになる。
また、第2カム74によって支軸73をシフト移動する構成としたので、第2カム74と移動対象である保持フレーム72との接点が1点となり、支軸73が回動していても第2カム74の表面の1点を滑りながらガイド部71aに沿って支軸73をスムーズに移動させることができる。また、第1カム84が回動対象であるレバー部材81と1点で接しているので、保持フレーム72がシフト移動しても第1カム84の表面の1点を滑りながらレバー部材81(保持フレーム72)をスムーズにシフト移動させつつ回動させることができる。
【0038】
そして、挟持ローラ対31は、シートPを挟持した状態で搬送しながら、2つのCIS35、36の検知結果に基づいてシートの傾き方向の位置ズレ量を補正することになる。すなわち、挟持ローラ対31は、搬送経路において搬送されるシートPを傾き方向に変位させてシートPのスキュー補正(斜行補正)をおこなう手段として機能するものである。
さらに、挟持ローラ対31は、シートPを挟持した状態で搬送しながら、2つのCIS35、36のうち少なくとも一方の検知結果に基づいてシートPの幅方向の位置ズレ量を補正することになる。すなわち、挟持ローラ対31は、搬送経路において搬送されるシートPを幅方向に変位させてシートPの横レジスト補正をおこなう手段としても機能するものである。
【0039】
ここで、第3搬送ローラ対44は、挟持ローラ対31に対して上流側(搬送方向上流側)の位置に設置された上流側搬送ローラ対である。第3搬送ローラ対44は、シートPを挟持した状態で回転することによってシートPを搬送可能に形成されるとともに、シートPを挟持した状態と挟持しない状態とを切り替えられるように離間可能に形成された搬送ローラ対である。そして、第3搬送ローラ対44は、シートPが挟持ローラ対31の位置に達して挟持ローラ対31によって挟持・搬送される状態になると、シートPを挟持した状態から挟持しない状態に切り替えられることになる。
【0040】
また、本実施の形態1において、挟持ローラ対31は、転写ローラ7(転写ニップ部を形成する下流側搬送ローラ対)に対して搬送経路の上流側の位置に配設されていてレジストローラとしても機能する搬送ローラ対であって、シートPを挟持した状態で回転することによってシートP(挟持ローラ対31自身によってスキュー補正・横レジスト補正がされた後のシートPである。)を転写ローラ7の位置(転写ニップ部を形成する下流側搬送ローラ対)に向けて搬送する。
ここで、挟持ローラ対31(駆動ローラ31b)を回転駆動する第1モータ61は、回転数可変型の駆動モータであって、シートPの搬送速度を変更できるように形成されている。そして、紙検知センサ(フォトセンサ)によって挟持ローラ対31の位置にシートPが搬送されたタイミングが検知されると(挟持ローラ対31の位置にシートPが搬送されて、挟持ローラ対31によってシートPが挟持された状態が検知されると)、挟持ローラ対31によって所望の横レジスト補正とスキュー補正とがされて、さらに紙検知センサの検知結果(検知タイミング)に基づいて挟持ローラ対31による搬送速度が変更される。すなわち、挟持ローラ対31によって転写ローラ7にシートPが搬送されるタイミングと、感光体ドラム5上に形成された画像が転写ローラ7に達するタイミングと、を合わせるように、挟持ローラ対31による搬送速度が変更される(画像形成部に向けて搬送されるシートPの搬送タイミングが調整される。)。これにより、挟持ローラ対31によってシートPの搬送を停止することなく、シートPの横レジスト補正とスキュー補正とをおこないながら、シートPの所望の位置に画像を転写することができる。
なお、挟持ローラ対31は、転写ニップ部にシートPの先端が達した直後に、感光体ドラム5との間に線速差が生じてシートP上に転写される画像に歪みが生じないように搬送速度が変更されることになる(感光体ドラム5との線速比が1になるように搬送速度が変更される)。
【0041】
図3等を参照して、検知手段としての2つのCIS35、36(コンタクト・イメージ・センサ)は、挟持ローラ対31に対して搬送経路(搬送方向)の上流側であって、第3搬送ローラ対44に対して搬送経路の下流側に設置されている。検知手段としてのCIS35、36は、いずれも、幅方向に複数のフォトセンサ(LED等の発光素子とフォトダイオード等の受光素子とからなる。)が並設されたものであって、シートPの幅方向端面Pa(一端側のエッジ部である。)の位置を検知するものである。そして、本実施の形態1では、2つのCIS35、36のうち少なくとも1つを用いて、横レジストのズレ量を検知している。すなわち、CIS35、36によって、搬送装置30の搬送経路において搬送されるシートPの幅方向の位置ズレ量を検知している。そして、CIS35、36の検知結果に基づいて、挟持ローラ対31による横レジスト補正がおこなわれる。
なお、本実施の形態1では、
図3に示すように、CIS36を幅方向一端側のみに設置してシートPの幅方向一端側の端面Paの位置を検知したが、CIS36を幅方向全域にわたって設置してシートPの幅方向両端のそれぞれの端面の位置(又は、シートPの幅方向全域)を検知することもできる。
【0042】
そして、CIS35、36の検知結果に基づいて、挟持ローラ対31によってシートPを挟持・搬送した状態で挟持ローラ対31(保持フレーム72)を幅方向に移動させて、搬送経路において搬送されるシートPの幅方向の位置ズレ(横レジスト)を補正している。
【0043】
具体例として、
図3を参照して、一点鎖線で示す幅方向の基準位置(幅方向の位置ズレのない正規の位置であって、第2基準位置である。)に対して、シートPが幅方向一端側(
図3の下方である。)に距離αだけ位置ズレしている状態が、CIS35、36によって検知されると、制御部90によってその位置ズレ量αを補正量として、挟持ローラ対31でシートPを挟持・搬送する前に挟持ローラ対31(保持フレーム72)を第2基準位置から幅方向他端側(
図3の上方である。)に距離αだけ移動させる。そして、挟持ローラ対31でシートPを挟持・搬送するときに、挟持ローラ対31を第2基準位置に移動させることになる。
すなわち、挟持ローラ対31の位置にシートPが搬送される前にCIS35、36(検知手段)の検知結果に基づいてシートPの幅方向の位置ズレに対応して第3駆動手段によって挟持ローラ対31を第2基準位置から幅方向に移動して、その後にシートPを挟持した状態の挟持ローラ対31を幅方向の位置ズレが補正されるように第3駆動手段によって第2基準位置に移動することになる。
【0044】
また、2つのCIS35、36は、搬送経路において搬送されるシートPの傾き方向のスキュー量(位置ズレ量)を検知する第2検知手段としても機能するものである。
詳しくは、2つのCIS35、36は、先に説明したように、挟持ローラ対31に対して搬送方向上流側の位置において搬送方向の離れた位置に並設されている。そして、2つのCIS35、36によってそれぞれ検知されるシートPの端面Paの位置のズレと、2つのCIS35、36の離間距離と、からシートPのスキュー量β(斜行量)を求める。そして、本実施の形態1では、2つのCIS35、36の検知結果に基づいて、挟持ローラ対31によってシートPを挟持・搬送しながらスキュー補正がおこなわれる。
【0045】
具体例として、
図3を参照して、一点鎖線で示す幅方向の基準位置(斜行のない正規の位置である。)に対して、シートPが正方向(回転方向の正方向)に角度βだけ斜行している状態が、2つのCIS35、36によって検知されると、制御部90(
図16参照)によってそのスキュー量βを補正量として、挟持ローラ対31によってシートPを挟持・搬送する前に、挟持ローラ対31(保持フレーム72)を基準位置(第1基準位置)から逆方向(回転方向の逆方向であって、
図3の時計方向である。)に角度βだけ回動させる。そして、挟持ローラ対31でシートPを挟持・搬送するときに、挟持ローラ対31を第1基準位置に回動させることになる。
すなわち、挟持ローラ対31の位置にシートPが搬送される前にCIS35、36(第2検知手段)の検知結果に基づいてシートPのスキュー量に対応してシートPに正対するように第2駆動手段によって挟持ローラ対31を基準位置(第1基準位置)から回動して、その後にシートPを挟持した状態の挟持ローラ対31をスキュー量が補正されるように第2駆動手段によって基準位置(第1基準位置)に回動することになる。
【0046】
このように、本実施の形態1において、挟持ローラ対31は、シートPを搬送停止することなく、シートPを挟持・搬送した状態で、CIS35、36の検知結果に基づいて傾き方向に回動することでシートPの傾き方向のスキュー量を補正するとともに、CIS35、36の検知結果に基づいて幅方向に移動することでシートPの幅方向の位置ズレ量を補正するものである。
これにより、シートPの搬送を停止してスキュー補正や横レジスト補正を別々におこなう場合に比べて、装置の生産性を格段に向上させることができる。また、スキュー補正や横レジスト補正をおこなうときに、挟持ローラ対31において幅方向に複数設置されたローラ部同士に線速差が生じることはないため、薄紙や表面の摩擦係数が低いシートPが通紙される場合などであっても、シートPに撓みが生じたりスリップが生じたりすることはない。
【0047】
以下、
図9及び
図10にて、上述のように構成された搬送装置30の動作の一例について詳述する。
なお、
図9(A1)~(C1)、
図10(A1)~(B1)は、搬送装置30の動作をその順番にそって示す上面図であって、
図9(A2)~(C2)、
図10(A2)~(B2)は、
図9(A1)~(C1)、
図10(A1)~(B1)の動作にそれぞれ対応した搬送装置30の側面図である。
まず、
図9(A1)及び(A2)に示すように、給紙部12から給送されたシートPは、第3搬送ローラ対44によって挟持ローラ対31の位置に向けて挟持・搬送される(白矢印方向の搬送である。)。このとき、挟持ローラ対31は、回動方向の位置が第1基準位置(スキューのないシートPに対応した正規の位置である。)にあり、幅方向の位置が第2基準位置(横レジストの位置ズレのないシートPに対応した正規の位置である。)にある。
そして、シートPがCIS35、36の位置に達すると、CIS35、36によってシートPの横レジストの位置ズレ量αが検知される。具体的に、本実施の形態1では、2つのCIS35、36によってそれぞれ検知した位置ズレ量を平均化した値を位置ズレ量αとして求めている。さらに、2つのCIS35、36によってシートPのスキュー量βが検知される。なお、CIS35、36によって直接的に検知される幅方向の位置ズレ量は、シートPが斜行した状態でのものであるため、検知されたスキュー量の検知結果などに基づいて、斜行がなかった場合における横レジストの位置ズレ量αが制御部90(演算部)で求められる。
【0048】
その後、
図9(B1)及び(B2)に示すように、挟持ローラ対31は、保持フレーム72とともに、CIS35、36で検知されたスキュー量βに合わせて同じ傾斜方向に支軸73を中心に角度βだけ第1基準位置から回動するとともに、CIS35、36で検知された位置ズレ量αに合わせて同じ幅方向に距離αだけ第2基準位置からシフト移動する。
そして、
図9(C1)及び(C2)に示すように、シートPの先端部が挟持ローラ対31に達する直前に挟持ローラ対31の回転駆動(図の矢印方向の回転駆動である。)が開始され、シートPが挟持ローラ対31に挟持・搬送されると、第3搬送ローラ対44が搬送経路を開放してシートPを挟持しない方向(実線矢印方向である。)に離間移動する。なお、シートPの先端部が挟持ローラ対31に達するタイミングは、CIS35、36によってシートPの先端部を検知するタイミングと、シートPの搬送速度と、CIS35、36の位置から挟持ローラ対31の位置までの距離、などに基づいて演算部(制御部90)で求めることもできる。
【0049】
そして、
図10(A1)及び(A2)に示すように、挟持ローラ対31は、シートPを挟持・搬送しながら、CIS35、36で検知されたスキュー量βを相殺するように支軸73を中心に第1基準位置に戻るように回動するとともに、CIS35、36で検知された位置ズレ量αを相殺するように第2基準位置に戻るように幅方向に移動する。
【0050】
そして、
図10(B1)及び(B2)に示すように、スキュー補正と横レジスト補正とがおこなわれたシートPは、転写ローラ7(転写ニップ部)に向けて搬送されることになる。このとき、感光体ドラム5上の画像にタイミングを合わせるように、挟持ローラ対31の回転数(転写ローラ7に達するまでのシートPの搬送速度)が変更される。そして、シートP上の所望の位置に画像が転写されることになる。
その後、離間状態にあった第3搬送ローラ対44が当接状態(
図9(A2)の状態である。)に戻されて、次に搬送されるシートPの搬送動作に備えることになる。
【0051】
以下、
図11~
図17等を用いて、本実施の形態1における搬送装置30において、特徴的な構成・動作について詳述する。
先に説明したように、本実施の形態1における搬送装置30は、挟持ローラ対31を搬送方向に対して傾き方向(シート搬送面内に平行な方向)に回動可能に構成された第2駆動手段63、81~84、98が設けられている。そして、通常の搬送工程(画像形成プロセス)において、挟持ローラ対31の位置にシートPが搬送される前にCIS35、36(第2検知手段)の検知結果に基づいてシートPのスキュー量に対応してシートPに正対するように第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31を基準位置(第1基準位置)から回動して、その後にシートPを挟持した状態の挟持ローラ対31をスキュー量が補正されるように第2駆動手段63、81~84、98によって基準位置(第1基準位置)に回動している。
【0052】
しかし、挟持ローラ対31などの種々の構成部品の組付け誤差や部品誤差などによって、
図11に示すように、挟持ローラ対31の第1基準位置が狙いの位置(破線で示す位置である。)からズレてしまうことがあった。
詳しくは、挟持ローラ対31、保持フレーム72、ベースフレーム71などの回動機構の組付け誤差・部品誤差や、挟持ローラ対31を傾き方向に駆動する第2駆動手段63、81~84、98の組付け誤差・部品誤差などに加えて、挟持ローラ対31の第1基準位置を検知するフォトセンサ15やフィラー84b(第1カム84)の組付け誤差・部品誤差などにより、挟持ローラ対31の第1基準位置が狙いの位置からズレてしまうことがあった。特に、挟持ローラ対31は、その上流側の第3搬送ローラ対44や、その下流側の転写ローラ7(及び、感光体ドラム5)のように、装置本体1(又は、搬送装置30)の筐体に軸受を介して保持されているのではなくて、多くの部品を介して搬送装置30に傾き方向に回動可能に保持されているため、上述した種々の組付け誤差・部品誤差が積み上がると、第1基準位置のズレは無視できないものになってしまう。
そして、
図11に示すように、第1ローラ対としての挟持ローラ対31の第1基準位置が狙いの位置からズレてしまうと、挟持ローラ対31によるシートPのスキュー補正が高精度におこなわれなくなってしまう。また、第1ローラ対としての挟持ローラ対31の第1基準位置が狙いの位置からズレてしまうと、第2ローラ対(下流側搬送ローラ対)としての転写ローラ7(及び、感光体ドラム5)との平行度が充分でない状態で、挟持ローラ対31と転写ローラ7(及び、感光体ドラム5)とによってシートPを挟持・搬送してしまうことになり、双方のローラ間でシートPを幅方向に伸縮させるような力が作用して、シートPにシワが生じてしまうことになる。
【0053】
このような課題に対して、本実施の形態1では、所定のタイミングで挟持ローラ対31の傾き方向の基準位置(第1基準位置)を調整する制御(以下、適宜に「基準位置調整モード」と呼ぶ。)をおこなっているため、挟持ローラ対31によるシートPのスキュー補正の精度を高めることができるとともに、挟持ローラ対31によって挟持・搬送されるシートPにシワが生じる不具合も軽減することができる。
【0054】
ここで、本実施の形態1において、制御部90(
図16参照)によっておこなわれる「基準位置調整モード」は、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対5、7(第2ローラ対)とによって搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化をCIS35、36(検知手段)によって検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対5、7のニップ部に達してからの時間変化の割合と、が略一致する回動位置を基準位置として設定している。詳しくは、上述した双方の時間変化の割合の差が略一致する回動位置を演算で求めて、その回動位置を基準位置として設定している。
すなわち、「基準位置調整モード」は、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対5、7(第2ローラ対)とによって搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化を2つのCIS35、36によってそれぞれ検知して、2つのCIS35、36のそれぞれの検知結果に基づいてそれぞれの、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対5、7のニップ部に達してからの時間変化の割合と、が略一致する回動位置を演算で求めて、その回動位置を基準位置として設定している(それらの割合から基準位置を設定している)。
なお、上述した「時間変化の割合」とは、後で説明する
図12のグラフにおける横軸成分(時間)に対する縦軸成分(位置)の変化率であって、そのグラフが直線であると仮定すると「傾き」に相当するものである。
【0055】
さらに別の見方をすると、「基準位置調整モード」は、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31の傾き方向を複数段階変更して、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と転写ローラ7(及び、感光体ドラム5)とによって挟持・搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の変化をCIS35、36(検知手段)によって検知して、それらの検知結果に基づいて上述した変化(時間変化)が直線的な変化になるように、挟持ローラ対31の傾き方向の基準位置(第1基準位置)を決定するものである。すなわち、「基準位置調整モード」は、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31の傾き方向を複数段階変更して、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31によって挟持・搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の変化を2つのCIS35、36によってそれぞれ検知して、2つのCIS35、36のそれぞれの検知結果に基づいて上述した変化が直線的な変化になるように、挟持ローラ対31の傾き方向の基準位置(第1基準位置)を決定するものである。
【0056】
詳しくは、本実施の形態1における「基準位置調整モード」は、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31の傾き方向を複数段階変更して、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31によって挟持・搬送しながら、そのシートPの幅方向端面Paの位置の変化を、そのシートPが転写ローラ7及び感光体ドラム5(下流側搬送ローラ対)によって挟持・搬送される前後にわたってCIS35、36によって検知して、それらの検知結果に基づいて上述した変化が直線的な変化になるように、挟持ローラ対31の傾き方向の基準位置(第1基準位置)を決定している。
【0057】
なお、「基準位置調整モード」は、第1基準位置の決定をおこなうために各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31によって挟持・搬送する制御であって、通常の搬送工程(画像形成プロセス)がおこなわれていないタイミングでおこなわれる。制御部90は、第1基準位置の決定をおこなうために各段階ごとにシートPを挟持ローラ対(第1ローラ対)によって挟持・搬送する制御を、通常の搬送工程がおこなわれていないタイミングでおこなうことになる。すなわち、「基準位置調整モード」が実行されるときは、テスト用のシートPを通常の画像形成時と同じように給紙部12~14から搬送経路を経由して搬送するものの、そのシートPの表面には画像を形成しない。なお、基準位置調整モード時に搬送されるシートPは、幅方向端面Paの直線性の高いものであることが好ましい。
【0058】
さらに補足的に説明する。
「基準位置調整モード」は、挟持ローラ対31の傾斜角θをθ1~θ5(
図17参照)まで複数水準振って、シートPの搬送を繰返しおこない、CIS35、36の検知データの推移が直線に最も近くなる傾斜角θ(時間変化の割合が略一致する傾斜角θである。)を制御部90による演算により求めて、その傾斜角θを第1基準位置に決定するものである。挟持ローラ対31を傾き方向に傾斜させた状態でシートPを挟持・搬送すると、そのシートPが傾斜角θに応じたスキュー量で斜行することになる。そのため、2つのCIS35、36の検知データの時間推移(時間変化の割合)は、シートPのスキュー量とその搬送とにともない、一定の増加減傾向で推移する。しかし、挟持ローラ対31とその上下流側の搬送ローラ対(特に、下流側搬送ローラ対である。)の平行度が充分でないと、その増加減傾向に変化が生じてしまい、スキュー補正不良やシワが生じてしまう。そのため、この増加減傾向の変化が最も少なくなる挟持ローラ対31の回動位置(傾斜角θ)を導出する。
なお、基準位置調整モード時においては、挟持ローラ対31や第3搬送ローラ対44の離間動作はおこなっていない。
【0059】
具体的に、本実施の形態1では、挟持ローラ対31の傾斜角θをθ1~θ5(
図17参照)まで5段階(5水準)設定して、それらの各設定で挟持ローラ対31の回動位置を固定した状態でテスト搬送を実施して、2つのCIS35、36のシート端面位置の検知結果を計測している。
図12は、5つの設定(θ1~θ5)の計測結果の一例を示すものであって、横軸は時刻(ミリ秒)を示し、縦軸は端面Paの位置(マイクロメートル)を示すものである。すなわち、
図12は、シート端面位置の時間変化を示すことになる。また、
図12において、「CIS1」は第1CIS35による検知結果を示し、「CIS2」は第2CIS36による検知結果を示す。また、
図12において、時刻が100ミリ秒のときは、挟持ローラ対31のニップ部にシートPが達したときであって、時刻が350ミリ秒のときは下流側の転写ニップ部にシートPが達したときである。
図12に示すように、挟持ローラ対31の傾斜角θによって、増加減傾向であるグラフの傾斜量は異なるが、挟持ローラ対31のニップ部や転写ニップ部にシートPが達する前後でニップ間の平行度によりその直線に変化が生じている。特に、
図12において破線で区切られた3つの区間A、B、Cでそれぞれ、グラフの傾斜量(時間変化の割合)に変化が生じる。つまり、3つの区間A~Cで直線近似した際の傾き(時間変化の割合)が変化している。この傾きの変化は、挟持ローラ対31が上下流側の搬送ローラ対と搬送方向が異なることによって生じるシートPの幅方向位置の変化である。例えば、回動HP調整値が-200の条件では、区間Aと区画Bとでグラフの傾きが異なり曲線のようになっている。
【0060】
図13は、
図12の結果から、傾斜角θと区間B~Cでのグラフの傾きの変化量をプロットしたものであって、横軸は挟持ローラ対31の傾斜角(回動HP調整値)を示し、縦軸はシート端面位置の変化の直線性を示す。
図13の例では、グラフの傾きの変化量(シート端面位置の変化の直線性であって、区間Bと区間Cとの時間変化の割合の一致性である。)がもっとも少ない回動HP調整値は約50の位置であることが分かる。すなわち、挟持ローラ対31の傾斜角θが、回動HP調整値50に相当するように、挟持ローラ対31の第1基準位置が設定されたときに、CIS35、36によって検知されるシートPの幅方向端面Paの位置の変化が直線的になることになる。そして、このように第1基準位置を調整設定して通常の搬送工程をおこなうことにより、挟持ローラ対31と転写ローラ7(及び、感光体ドラム5)との平行度が高められて、高精度なスキュー補正がおこなわれるとともに、シワの発生も軽減されることになる。
【0061】
ここで、本実施の形態1において、制御部90によっておこなわれる「基準位置調整モード」を、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを第3搬送ローラ対44(上流側搬送ローラ対)と挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対5、7とのうち少なくとも挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対5、7とによって搬送しながら、そのシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化を、そのシートPが挟持ローラ対31の位置に達する前から下流側搬送ローラ対5、7によって搬送されるまでCIS35、36(検知手段)によって検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対5、7のニップ部(転写ニップ部)に達してからの時間変化の割合と、から前記基準位置を設定するものとすることもできる。
【0062】
さらに別の見方をすると、「基準位置調整モード」を、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31の傾き方向を複数段階変更して、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31又は/及び第3搬送ローラ対44(上流側搬送ローラ対)によって挟持・搬送しながら、そのシートPの幅方向端面Paの位置の変化を、そのシートPが挟持ローラ対31の位置に達する前から転写ローラ7(下流側搬送ローラ対)によって挟持・搬送されるまでCIS35、36(検知手段)によって検知して、それらの検知結果に基づいて上述した変化が直線的な変化になるように、挟持ローラ対31の傾き方向の第1基準位置を決定するものとすることもできる。
すなわち、
図13において、
図12の区間Aと区間Bとでのグラフの傾きの変化量をもプロットして、その変化量がゼロになる挟持ローラ対31の傾斜角θを第1基準位置として決定することもできる。
通常の搬送工程(画像形成プロセス)において透明色や黒色のシートPが搬送される場合には、CIS35、36によるシートPの端面Paの光学的な検知が難しくなるため、スキュー補正制御や横レジスト補正制御をおこなわないことがある。そして、そのような場合には、第3搬送ローラ対44の離間動作をおこなう必要がないため、第3搬送ローラ対44が常に当接した状態になるように制御される。そのような場合には、第3搬送ローラ対44と挟持ローラ対31との平行度が充分でないと、第3搬送ローラ対44と挟持ローラ対31とによって挟持・搬送されるシートPにシワが生じることになるため、上述したような基準位置調整モードが有用になる。
【0063】
また、本実施の形態1では、「基準位置調整モード」において検知手段として2つのCIS35、36を用いたが、「基準位置調整モード」において検知手段として2つのCIS35、36のうち一方のCISのみを用いることもできる。ただし、本実施の形態1のように、搬送方向の離れた位置に配置された2つのCIS35、36を用いる場合には、シートPの端面Paが凹凸であって直線性が低いようなときでも、2つの検知結果を合わせてシートPの端面Paが判断されることになるため、比較的精度良く挟持ローラ対31の第1基準位置を決定することができる。
また、本実施の形態1では、「基準位置調整モード」において挟持ローラ対31の傾斜角θを5段階で設定したが、挟持ローラ対31の傾斜角θを2段階以上のそれ以外の数で設定することもできる。
【0064】
なお、本実施の形態1において、「基準位置調整モード」は、搬送装置30(画像形成装置1)の使用が開始される前に1回のみ実行しているわけではなくて、ある程度間隔をあけて、累積通紙枚数が所定値に達するごとに実行している。
これは、先に説明した種々の構成部品の組付け誤差や部品誤差など(特に、部品誤差である。)は、経時における摩耗や劣化などによって変化して、一度調整した第1基準位置が変化してしまうためである。
経時においても適宜に「基準位置調整モード」を実行することで、経時においても、高精度なスキュー補正をおこなうことができるとともに、シートPにシワが生じる不具合を軽減することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、制御部90によっておこなわれる「基準位置調整モード」において、シートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからCIS35、36で検知される時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対5、7のニップ部に達してからCIS35、36で検知される時間変化の割合と、が略一致する回動位置を演算で求めて、その回動位置を第1基準位置として設定した。
これに対して、制御部90によっておこなわれる「基準位置調整モード」において、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対5、7(第2ローラ対)とによって搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化をCIS35、36(検知手段)によって検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対5、7のニップ部に達してからの時間変化の割合と、の差が最小となる回動位置を基準位置として設定することもできる。詳しくは、上述した双方の時間変化の割合の差が最小となる回動位置を複数段階の回動位置から1つ求めて、その回動位置を基準位置として設定することもできる。
すなわち、
図12、
図13の例で説明すると、挟持ローラ対31の傾斜角θを5段階で振ったもののうち、グラフの傾きの変化量(シート端面位置の変化の直線性であって、区間Bと区間Cとの時間変化の割合の一致性である。)がもっとも少なくなる傾斜角θ(回動HP調整値が100である。)が第1基準位置として設定されることになる。
そして、このように制御した場合であっても、挟持ローラ対31と転写ローラ7(及び、感光体ドラム5)との平行度が高められて、高精度なスキュー補正がおこなわれるとともに、シワの発生も軽減されることになる。
【0066】
以下、
図14を用いて、まとめとして、基準位置調整モード時の制御について説明する。
図14に示すように、まず、基準位置調整モードを実行するタイミングであるかが判別されて(ステップS1)、実行するタイミングであるものと判別された場合に基準位置調整モードが開始される。
まず、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31の傾斜角がθ1に設定される(ステップS2)。そして、挟持ローラ対31を傾斜角θ1に維持した状態で、テスト用のシートPの搬送をおこない、CIS35、36によってシートPの端面Paの検知結果R1を取得する(ステップS3)。以下、定められた段階数n(本実施の形態1では、5段階である)に応じて、段階数mを1から1段階ずつあげながら、挟持ローラ対31の傾斜角θm(m=1~n)の設定と、その設定条件でのシートPの搬送とCIS35、36の検知結果Rm(m=1~n)の取得と、を繰り返す(ステップS2~S5)。すなわち、挟持ローラ対1の傾斜角θがθ1~θ5(
図17参照)に順次変更されて、それぞれの傾斜角θ1~θ5に対応したCIS35、36の検知結果R1~R5が取得される。
そして、すべての検知結果R1~Rnを集計して(ステップS6)、検知結果の変化が直線的になるように、挟持ローラ対31の基準位置(第1基準位置)を決定して(ステップS7)、本フローを終了する。
そして、次に基準位置調整モードがおこなわれて挟持ローラ対31の基準位置が変更されるまで、その基準位置の値(傾斜角)に基づいてスキュー補正制御がおこなわれることになる。
【0067】
最後に、本実施の形態1における説明の補足として、
図15、
図16を用いて、先に
図9、
図10等を用いて説明したスキュー補正及び横レジスト補正について説明する。
図15は、「スキュー補正及び横レジスト補正」をおこなうまでの制御フローを示すフローチャートであって、
図16はそれらの補正に関する制御部90を示すブロック図である。
図15に示すように、まず、2つCIS(第1の補正では、第1CIS35と、第2CIS36と、である。)がシートPを検知して(ステップS21)、シートPの幅方向の位置ズレ量αとスキュー量βとが検知される(ステップS22)。 そして、これらの検知結果に基いて、幅方向の補正量α´やスキュー補正量β´が算出され(ステップS23)、補正量が決定される。
そして、この補正量に基づいて、それぞれのエンコーダ(
図16に示す第2、第3モータエンコーダである。)によりエンコーダカウント数が算出される(ステップS24)。そして、算出されたエンコーダカウント数に応じて、それぞれのモータドライバ(
図16に示す第2、第3モータドライバである。)によって第2モータ63や第3モータ62が駆動されて、挟持ローラ対31が回動するとともにスライド移動することにより、迎え動作がおこなわれる(ステップS25)。そして、挟持ローラ対31がシートPを挟持した後、第2、第3モータ62、63の駆動により、挟持ローラ対31が基準位置に戻るように回動するとともにスライド移動して、スキュー補正及び横レジスト補正がおこなわれる(ステップS26)。 なお、ステップS25の迎え動作や、ステップS26の補正がおこなわれるときは、第2、第3モータエンコーダによって、挟持ローラ対31の位置情報が時々刻々とフィードバックされて、挟持ローラ対31が決められた移動量だけ移動するように制御される。
【0068】
図16において、制御部90は、画像形成装置における種々の動作を制御する。制御部90における位置認識部は、第1、第2CIS35、36から受けた情報からシートPの幅方向の位置ズレ量とスキュー量とをそれぞれカウントするものである。また、第2モータ制御部は、位置認識部から得たスキュー量に基づいて、第2モータ63の駆動量(回転角度及び回転方向)を決定する。また、第3モータ制御部は、位置認識部から得た幅方向の位置ズレ量に基づいて、第3モータ62の駆動量(回転角度及び回転方向)を決定する。第2、第3モータドライバは、第2、第3モータ制御部からそれぞれ信号を受け取り、第2、第3モータをそれぞれ駆動する。第2、第3モータエンコーダは、第2、第3モータのそれぞれの回転量を検出する。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態1における搬送装置30は、第2駆動手段63、81~84、98によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対5、7(第2ローラ対)とによって搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化をCIS35、36(検知手段)によって検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対5、7のニップ部に達してからの時間変化の割合と、が略一致する回動位置を基準位置として設定する制御部90が設けられている。
これにより、所定の搬送方向に搬送されるシートPのスキュー補正を高精度におこなうことができる。
【0070】
なお、本実施の形態1では、横レジスト・スキュー補正ローラとして機能する挟持ローラ対31をレジストローラとしても機能させる搬送装置30に対して本発明を適用したが、本発明を適用することができる搬送装置はこれに限定されることはなく、その他の構成の搬送装置であっても、スキュー補正をおこなう搬送装置であれば、それらのすべての搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。例えば、横レジスト・スキュー補正ローラとして機能する挟持ローラ対31の下流側にレジストローラが設置された搬送装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態1では、画像が形成されるシートPとしての転写紙のスキュー補正や横レジスト補正をおこなう搬送装置30に対して本発明を適用したが、シートPとしての原稿のスキュー補正や横レジスト補正をおこなう搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態1では、モノクロの画像形成装置1に設置される搬送装置30に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施の形態1では、第1ローラ対としての挟持ローラ対31と、その下流側に配置された第2ローラ対5、7(下流側搬送ローラ対)と、によってシートPを搬送しながら、そのシートPの幅方向端面の時間変化をCIS35、36(検知手段)で検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが第2ローラ対5、7のニップ部に達してからの時間変化の割合と、から基準位置(第1基準位置)を設定した。これに対して、第1ローラ対と、その上流側に配置された第2ローラ対と、によってシートを搬送しながら、そのシートの幅方向端面の時間変化を検知手段で検知して、そのシートが第2ローラ対のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートが第1ローラ対のニップ部に達してからの時間変化の割合と、から基準位置(第1基準位置)を設定するように構成することもできる。
そして、そのような場合であっても、本実施の形態1のものと同様の効果を得ることができる。
【0072】
<実施の形態2>
図18にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図18は、実施の形態2における画像形成装置100を示す全体構成図である。本実施の形態2における画像形成装置100は、インクジェット方式のものである点が、電子写真方式のものである前記実施の形態1のものとは相違する。
図18において、100は画像形成装置としてのインクジェットプリンタ、102はシートPを搬送する搬送ドラム、103はシートPを挟持ローラ対31とともに搬送する第2ローラ対としての下流側搬送ローラ対、104はシートPを搬送ドラム102に向けて搬送する搬送ローラ、105は搬送ドラム102上でシートPを把持するクリッパ、を示す。
また、106は搬送ドラム102からシートPを分離する分離部材、107は搬送ドラム102から分離されたシートPを搬送する搬送ベルト、108はプリント後のシートPが排紙・積載される排紙トレイ、を示す。
また、110Y、110M、110C、110Kはインクジェット方式により印字・印画するための画像形成部がユニット化された記録ヘッド(印字モジュール)、を示す。
そして、本実施の形態2におけるインクジェット方式の画像形成装置100にも、前記実施の形態1のものと同様に、特徴的な搬送装置30が設置されている。
【0073】
ここで、本実施の形態2における画像形成装置100は、カラー画像を形成するためのものであって、
図18に示すように、黒色用の記録ヘッド110Kと、カラー用の3色(イエロー、マゼンタ、シアン)の記録ヘッド110Y、110M、110Cと、が設置されている。これらの4つの記録ヘッド110Y、110M、110C、110Kは、搬送ドラム102に対向して、搬送ドラム102の回転方向に沿うように並設されている。
なお、4つの記録ヘッド110Y、110M、110C、110Kは、プリントに用いられるインクの色(種類)が異なる以外はほぼ同一構造である。記録ヘッド110Y、110M、110C、110Kは、その主部が圧電アクチュエータやサーマルアクチュエータなどで構成されていて、液滴としてのインクを吐出するノズルや、インクが充填されたインクタンクや、制御基板(制御部)などが設けられている。
【0074】
図18を参照して、画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
まず、パソコンなどから画像形成装置100の制御部に画像情報とともにプリント指令が入力されると、給紙ローラ40によって給紙カセット12からシートPが給送される。給紙カセット12から給送されたシートPは、搬送装置30によって、搬送ドラム102に向けて搬送される。このとき、搬送装置30において、前記実施の形態1のものと同様に、2つのCIS35、36の検知結果に基づいて、挟持ローラ対対31(第1ローラ対)によるシートPの幅方向や回動方向の位置ズレ補正がおこなわれる。
他方、各色の記録ヘッド110Y、110M、110C、110Kでは、入力された画像情報に基づいて各色の書込み情報に変換される。
そして、搬送ドラム102に搬送されたシートPは、クリッパ105に把持された状態で搬送ドラム102上に位置決めされて、搬送ドラム102の反時計方向に回転に沿うように搬送される。
そして、搬送ドラム102の回転によって
図18の矢印方向に搬送されるシートP上に、各色の記録ヘッド110Y、110M、110C、110Kから書込み情報に基づいて液滴としてのインクが順次吹き付けられて、シートP上に所望のカラー画像が形成される。
その後、所望の画像が形成されたシートPは、分離部材106によって搬送ドラム102から分離される。そして、搬送ドラム102から分離されたシートPは、搬送ベルト107によって搬送されて、排紙トレイ108上に排出されることになる。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態2における搬送装置30(画像形成装置100)は、前記実施の形態1のものと同様に、第2駆動手段によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対103(第2ローラ対)とによって搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化をCIS35、36(検知手段)によって検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対103のニップ部に達してからの時間変化の割合と、が略一致する回動位置を基準位置として設定する制御部90が設けられている。
これにより、所定の搬送方向に搬送されるシートPのスキュー補正を高精度におこなうことができる。
なお、本実施の形態2においても、前記実施の形態1において説明した変形例のすべてを、当然に適用することができる。
【0076】
<実施の形態3>
図19にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図19は、実施の形態3における画像形成装置1を示す全体構成図である。本実施の形態3における画像形成装置1は、画像形成後のシートPに対して穿孔処理や綴じ処理や折り処理などの後処理を施す後処理装置150が設置されている点が、前記各実施の形態のものとは相違する。
図19において、150は画像形成装置本体に対して着脱可能に設置される後処理装置、151は画像形成後のシートPに対して穿孔処理を施する穿孔装置、152は画像形成後のシートPに対して綴じ処理をおこなう綴じ装置、153は画像形成後のシートPに対して折り処理をおこなう折り装置、を示す。また、155は第1排紙トレイ、156は第2排紙トレイ、157は第3排紙トレイ、を示す。また、158はシートPを挟持ローラ対31とともに搬送する第2ローラ対としての下流側搬送ローラ対を示す。
そして、本実施の形態3における後処理装置150にも、前記各実施の形態のものと同様に、特徴的な搬送装置30が設置されている。
【0077】
なお、第1搬送経路K1は、穿孔装置151によって穿孔処理が施されたシートP、又は、後処理が施されないシートPを、第1排紙トレイ155に排出するための経路である。
また、第2搬送経路K2は、シートPを綴じ装置152に向けて搬送して、綴じ処理後のシート束を第2排紙トレイ156に排出するための経路である。
また、第3搬送経路K3は、シートPを折り装置153に向けて搬送して、中折り処理後のシートPを第3排紙トレイ157に排出するための経路である。
【0078】
図19を参照して、後処理装置150の動作について簡単に説明する。
まず、画像形成装置本体1から排出されたシートPは、後処理装置150内に搬送される。そして、搬送装置30において、前記各実施の形態のものと同様に、2つのCIS35、36の検知結果に基づいて、挟持ローラ対対31によるシートPの幅方向や回動方向の位置ズレ補正がおこなわれる。その後、位置補正されたシートPは、ユーザーが指定した後処理にしたがって、3つの搬送経路K1~K3のいずれかに搬送されて、指定された後処理が施されて、いずれかの排紙トレイ155~157に排出されることになる。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態3における搬送装置30(後処理装置150)は、前記各実施の形態のものと同様に、第2駆動手段によって挟持ローラ対31(第1ローラ対)をシート搬送面内に平行な方向に複数段階の回動位置に回動させて、各段階ごとにシートPを挟持ローラ対31と下流側搬送ローラ対158(第2ローラ対)とによって搬送しながらシートPの幅方向端面Paの位置の時間変化をCIS35、36(検知手段)によって検知して、そのシートPが挟持ローラ対31のニップ部に達してからの時間変化の割合と、そのシートPが下流側搬送ローラ対158のニップ部に達してからの時間変化の割合と、が略一致する回動位置を基準位置として設定する制御部90が設けられている。
これにより、所定の搬送方向に搬送されるシートPのスキュー補正を高精度におこなうことができる。
特に、本実施の形態3では、後処理装置150において、シートPの位置ズレの少ない、精度の高い後処理を施すことができる。
なお、本実施の形態3においても、前記実施の形態1において説明した変形例のすべてを、当然に適用することができる。
【0080】
なお、前記各実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置される搬送装置30や、インクジェット方式の画像形成装置100に設置される搬送装置30に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、オフセット印刷機などである。)に設置される搬送装置であっても、スキュー補正をおこなう搬送装置であれば、それらのすべての搬送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、そのような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
また、前記各実施の形態では、第1カム84によってレバー部材81を介して間接的に保持フレーム72(突起部72a)を押動するように第1駆動手段を構成したが、第1カムによって直接的に保持フレームを押動するように第1駆動手段を構成することもできる。
また、前記各実施の形態では、第2カム74によって直接的に保持フレーム72(支軸73)を押動するように第2駆動手段を構成したが、第2カムによって間接的に保持フレームを押動するように第2駆動手段を構成することもできる。
また、前記各実施の形態では、第2、第3駆動手段としてそれぞれカム機構を用いたが、第2、第3駆動手段はこれらに限定されることなく、例えば、第2、第3駆動手段としてソレノイド機構やピニオン・ラック機構などを用いることもできる。
そして、それらの場合であっても、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0083】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、通常の紙(用紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルム、金属シート、プリプレグ等のシート状部材のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0084】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
5 感光体ドラム(第2ローラ対、下流側搬送ローラ対)、
7 転写ローラ(第2ローラ対、下流側搬送ローラ対)、
15 フォトセンサ、
30 搬送装置、
31 挟持ローラ対(第1ローラ対、レジストローラ)、
31a 従動ローラ、
31b 駆動ローラ、
35 第1CIS(検知手段、第2検知手段)、
36 第2CIS(検知手段、第2検知手段)、
44 第3搬送ローラ対(上流側搬送ローラ対)、
51 整合部、
61 第1モータ(第1駆動手段)、
62 第3モータ(第3駆動手段)、
63 第2モータ(第2駆動手段)、
74 第2カム(第3駆動手段)、
84 第1カム(第2駆動手段)、
84b フィラー、
90 制御部、
P シート(記録媒体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】