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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20220201BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20220201BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G1/14
H02G15/04 060
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018096382
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019201524
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直也
(72)【発明者】
【氏名】前上 一
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-050830(JP,A)
【文献】特開2016-091731(JP,A)
【文献】特開2013-237428(JP,A)
【文献】特開2009-016150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/04
H02G 1/14
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と前記電線の外周を覆うシースとを有し、前記電線が前記シースの端部から露出したケーブルと、
前記シースの端部から露出している前記電線を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記電線と前記ハウジング間をシールする電線用シール部材と、
前記シースの外周面に接触する内周面を有する筒状のシース側筒部と、前記ハウジングの外周面に接触する筒状のハウジング側筒部と、を一体に有する弾性体からなるホルダと、
前記ハウジング側筒部を前記ハウジング側に押し付けることで、前記ハウジング側筒部を前記ハウジングに固定する第1押圧部材と、を備え、
前記シースには、複数の前記電線が収容され、
前記ハウジングは、これら複数の前記電線のうち一部の前記電線を導出させる第1の導出孔及び他の一部の前記電線を導出させる第2の導出孔が設けられており、かつ前記第1の導出孔の電線導出方向と第2の導出孔の電線導出方向とが異なり、
前記電線用シール部材が前記第1の導出孔及び前記第2の導出孔にそれぞれ配置されている、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1押圧部材は、前記ハウジング側筒部の外周を覆う環状に形成されており、前記ハウジング側筒部を前記ハウジング側に押し付けることで、前記ハウジング側筒部と前記ハウジングとの間から前記ハウジングの内部への液体の侵入を抑止するように構成されている、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記シース側筒部を前記シース側に押し付けることで、前記シース側筒部を前記シースに固定する第2押圧部材をさらに備えた、
請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記シース側筒部に加締め付けられた加締め部を有し、前記ケーブルを固定対象に固定するための固定部材をさらに備え、
前記第2押圧部材は、前記固定部材の前記加締め部である、
請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記ホルダの硬度は、前記シースの硬度よりも低い、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記ホルダは、エチレンプロピレンジエンゴムからなり、
前記シースは、熱可塑性ウレタンからなる、
請求項5に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記ホルダの前記ハウジング側筒部と前記ハウジングとは、これら両部材のうち一方の部材に設けられた被係合部に他方の部材に設けられた係合部が係合し、当該係合によって前記ハウジングの前記ケーブルの長手方向への移動が規制されており、
前記第1押圧部材は、前記ホルダに設けられた前記係合部または前記被係合部よりも開口側の前記ハウジング側筒部を、前記ハウジング側に押圧するように設けられている、
請求項1乃至の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両において水沫等の液体が付着し得る部位に配策されるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の電動パーキングブレーキへの電流供給や信号伝送のために用いられるワイヤハーネスとして、特許文献1に記載のワイヤハーネスが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、シースの端末部から複数の電線が分岐して導出された構造を有し、このシースの端末部の周辺に合成樹脂製のハウジングが装着されている。ハウジング内には、円筒状のシース用ゴム栓及び電線用ゴム栓が配置され、これらのゴム栓によってシースと電線との隙間に水分が浸入することが抑止されている。また、ハウジングには、合成樹脂製のキャップが取り付けられ、このキャップによって電線用ゴム栓が抜け止めされている。
【0004】
シース用ゴム栓は、ハウジングにおけるキャップとは反対側の端部に配置され、シースの外周面に弾性的に接触(弾接)する複数の内周リップと、ハウジングの内面に弾接する複数の外周リップと、ハウジングの端面に対向する環状のフランジとを有している。フランジは、シース用ゴム栓をハウジング内に押し込む際のストッパとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-162584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両用のワイヤハーネスは、車両走行に伴って電線やシースが上下に振動する場合がある。特許文献1に記載のワイヤハーネスは、例えばハウジングが強い振動を受けると、ハウジングがシースから離脱したり、ハウジングがシースに対してずれたりして、防水性が低下する等のおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、振動を受けても防水性の低下が抑制されるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電線と前記電線の外周を覆うシースとを有し、前記電線が前記シースの端部から露出したケーブルと、前記シースの端部から露出している前記電線を収容するハウジングと、前記ハウジング内に配置され、前記電線と前記ハウジング間をシールする電線用シール部材と、前記シースの外周面に接触する内周面を有する筒状のシース側筒部と、前記ハウジングの外周面に接触する筒状のハウジング側筒部と、を一体に有する弾性体からなるホルダと、前記大径筒部を前記ハウジング側に押し付けることで、前記大径筒部を前記ハウジングに固定する第1押圧部材と、を備えた、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスによれば、振動を受けても防水性の低下が抑制され、例えばシースから浸入した水分によって悪影響が発生することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2】固定部材の一部を破断して示すワイヤハーネスの側面図である。
図3】(a)は、ワイヤハーネスの断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大図である。
図4】ワイヤハーネスのホルダを示す斜視図である。
図5】ホルダの断面図である。
図6】ハウジングの斜視図である。
図7】一部を破断した断面で示すハウジングの側面図である。
図8】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。図2は、固定部材の一部を破断して示すワイヤハーネスの側面図である。図3(a)は、ワイヤハーネスの断面図であり、図3(b)は、図3(a)の要部拡大図である。図4は、ワイヤハーネスのホルダを示す斜視図である。図5は、ホルダの断面図である。図6は、ハウジングの斜視図である。図7は、一部を破断した断面で示すハウジングの側面図である。
【0013】
このワイヤハーネス1は、自動車の電動パーキングブレーキ装置や電動ブレーキ装置に用いられるものであり、より詳細には、自動車の各車輪に対応して設けられた電動パーキングブレーキ装置にその動作のための作動電流を供給すると共に、車輪の回転速度を計測するための回転速センサの信号(例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)に用いられる信号)を伝送するものである。
【0014】
ワイヤハーネス1は、複数の電線2と、複数の電線2の外周を一括して覆うシース3とを有するケーブル10を備えている。本実施の形態では、複数の電線2は、電動パーキングブレーキ装置に作動電流を供給する一対の電源線21,21と、回転速センサの信号を伝送する一対の信号線22,22と、からなる。
【0015】
また、ワイヤハーネス1は、シース3の端部を、同端部から露出している電線2(一対の電源線21,21及び一対の信号線22,22)と共に収容するハウジング4と、ハウジング4内に配置され、電線2とハウジング4間をシールする電線用シール部材5と、筒状の弾性体からなるホルダ6と、ケーブル10を固定対象(例えば、自動車の車体)に固定するための固定部材7と、を備えている。すなわち、本実施の形態に係るワイヤハーネス1は、固定部材付きのワイヤハーネスである。
【0016】
一対の電源線21,21は、それぞれが複数の金属素線が撚り合わされてなる金属導体線211を絶縁体212で被覆してなる絶縁電線である。一対の電源線21,21は、図略のコントローラから出力される電流を電動パーキングブレーキ装置に供給する。また、一対の信号線22,22は、それぞれが複数の金属素線が撚り合わされてなる金属導体線221を絶縁体222で被覆してなる絶縁電線である。一対の信号線22,22は、回転速センサから出力される信号を図略のコントローラに伝送する。電源線21の金属導体線211の太さは、信号線22の金属導体線221の太さよりも太い。
【0017】
シース3は、ケーブル10の長手方向の一部において、一対の電源線21,21及び一対の信号線22,22を一括して覆っており、シース3の端部から一対の電源線21,21及び一対の信号線22,22が露出している。シース3は、車体への配策時に柔軟に湾曲する屈曲性(可撓性)を有しており、本実施の形態では、シース3が熱可塑性ウレタンからなる。ケーブル10の長手方向と直交する断面におけるシース3の外形は、略円形状である。
【0018】
ハウジング4は、例えば合成樹脂からなるが、例えばアルミニウム合金等の金属によってハウジング4を形成してもよい。ハウジング4には、一対の電源線21,21及び一対の信号線22,22を収容したシース3が導入される導入孔40と、一対の電源線21,21が導出される第1の導出孔41と、一対の信号線22,22が導出される第2の導出孔42とが設けられている。
【0019】
ハウジング4において、第1の導出孔41の電線導出方向と第2の導出孔42の電線導出方向とは異なっている。本実施の形態では、一対の電源線21,21のハウジング4からの電線導出方向が、シース3のハウジング4内への導入方向と平行であり、一対の信号線22,22のハウジング4からの電線導出方向は、一対の電源線21,21のハウジング4からの電線導出方向に対して傾斜(交差)している。一対の信号線22,22は、この傾斜の角度に応じてハウジング4内で屈曲されている。そして、この電線導出方向の傾斜により、自動車のタイヤハウス内での一対の電源線21,21及び一対の信号線22,22の配索が容易化されている。
【0020】
電線用シール部材5は、ゴムからなり、電線2とハウジング4間をシールすることにより、電線2を伝ってハウジング4の内部へと水等の液体が浸入することを抑止している。電線用シール部材5は、第1の導出孔41に配置されてハウジング4と一対の電源線21,21との間に介在し、ハウジング4の内面及び一対の電源線21,21の外周面に弾性的に接触(弾接)する第1電線用シール部材51と、第2の導出孔42に配置されてハウジング4と一対の信号線22,22との間に介在し、ハウジング4の内面及び一対の信号線22,22の外周面に弾接する第2電線用シール部材52と、を有している。これら第1及び第2電線用シール部材51,52によって、ハウジング4と一対の電源線21,21との隙間、及びハウジング4と一対の信号線22,22との隙間を介して、ハウジング4内に水等が浸入してしまうことが抑止されている。
【0021】
ハウジング4には、第1電線用シール部材51を係止するための複数の係止突起43が設けられている。係止突起43は、軸状の軸部431と、軸部431よりも大径の係止部432とを有し、軸部431が第1の導出孔41の開口端面41aに立設されている。第1電線用シール部材51は、第1の導出孔41内に配置される本体部511と、第1の導出孔41の開口端面41aに対向するフランジ部512とを有し、フランジ部512に形成された貫通孔510に軸部431が挿通されて係止部432に係止されている。
【0022】
また、ハウジング4には、第2電線用シール部材52を係止するための複数の係止突起44が設けられている。係止突起44は、軸状の軸部441と、軸部441よりも大径の係止部442とを有し、軸部441が第2の導出孔42の開口端面42aに立設されている。第2電線用シール部材52は、第2の導出孔42内に配置される本体部521と、第2の導出孔42の開口端面42aに対向するフランジ部522とを有し、フランジ部522に形成された貫通孔520に軸部441が挿通されて係止部442に係止されている。
【0023】
ホルダ6は、シース3よりも柔らかい筒状のゴム等の弾性体からなる。ホルダ6は、シース3の外周面に弾接する内周面を有する小径筒部61と、ハウジング4を収容しハウジング4の外周面に弾接する内周面を有する大径筒部62と、小径筒部61と大径筒部62との間の壁部63とを一体に有している。小径筒部61は、本発明のシース側筒部の一形態であり、大径筒部62は、本発明のハウジング側筒部の一形態である。
【0024】
大径筒部62は、その内径及び外径が小径筒部61よりも大径であり、ハウジング4における導入孔40側の端部の外周に配置される。また、小径筒部61は、隙間を介して壁部63と軸方向に向かい合う環状の突壁611を有しており、突壁611よりも先端側(壁部63とは反対側)の外周面は先細りのテーパ面として形成されている。突壁611と壁部63との間における小径筒部61の外径は軸方向の全体にわたって均一である。ケーブルの長手方向に直交する断面において、大径筒部62の内周面が形成する断面積は、小径筒部61の内周面が形成する断面積よりも大きい。
【0025】
小径筒部61の内周面の形状は、シース3の外形と合致させるべく、円形状となっている。ただし、シース3の外形が四角形や楕円形等であれば、その形状に合致させるべく、小径筒部61の内周面の形状を四角形や楕円形等にすることも可能である。また、本実施の形態において、大径筒部62は、断面略円形状のハウジング4の外形に合致させるべく、その内周面の形状が円形状となっている。ただし、ハウジング4の外形が四角形や楕円形等であれば、大径筒部62の内周面の形状を四角形や楕円形等にすることも可能である。
【0026】
小径筒部61の内周面の径は、シース3に装着される前の自然状態において、シース3の外径よりも小径である。小径筒部61は、空気等により拡径されながら、シース3の外周に挿通される。挿通後には、小径筒部61は、拡径された状態から縮径されてシース3の外周面に弾接する。これにより、シース3には、小径筒部61からの締付け力(緊縛力という)が働く。このような緊縛力が働くことにより、ホルダ6のケーブル10の長手方向への移動が規制される。
【0027】
固定部材7は、ホルダ6におけるシース3の外周側にあたる部位に加締め付けられている。より具体的には、固定部材7は、突壁611と壁部63との間の小径筒部61の外周に加締め付けられた加締め部71を有している。本実施の形態では、固定部材7が矩形状の金属板を屈曲して形成されており、その一端部には車体等の取付対象への固定のためのボルトを挿通させるボルト挿通孔70が形成されている。なお、図3(a)及び(b)では、固定部材7の図示を省略している。加締め部71は、固定部材7のボルト挿通孔70が形成された側の端部とは反対側の端部をホルダ6の小径筒部61に巻き付くように湾曲させて形成されており、小径筒部61をシース3側に締め付けている。
【0028】
(第1押圧部材8及び第2押圧部材9の説明)
ワイヤハーネス1は、大径筒部62をハウジング4側に押し付けることで、大径筒部62をハウジング4に固定する第1押圧部材8を備えている。小径筒部61がシース3の外周に弾性的に接触(弾接)することで、小径筒部61とシース3との間に緊縛力が働き、ホルダ6のケーブル長手方向の移動が規制される。その上で、第1押圧部材8により大径筒部62をハウジング4に固定することで、ホルダ6を介してハウジング4のケーブル長手方向の移動も規制されることになる。これにより。電線2やケーブル10に引張力や振動が加わったとしても、ハウジング4がケーブル10に対してずれてしまったり、あるいはハウジング4がケーブル10から外れてしまったりするおそれを低減でき、シース3内へ侵入してくる水に対する止水性の低下を抑制することが可能になる。
【0029】
本実施の形態では、第1押圧部材8は、大径筒部62の外周を覆う環状に形成されており、大径筒部62の周方向における全体をハウジング4側に押し付けることで、大径筒部62とハウジング4との間からハウジング4の内部への液体の侵入を抑止するように構成されている。これにより、小径筒部61の緊縛力によりシース3とホルダ6間の止水性が確保され、かつ、第1押圧部材8によりハウジング4とホルダ6間の止水性が確保されることになり、ハウジング4内への液体の浸入をより抑制し、ワイヤハーネス1としての止水性の向上が可能となる。本実施の形態では、第1押圧部材8は、帯状の金属板を環状に形成し、その一部をクランプすることで加締めを行うイヤークランプからなる。
【0030】
なお、大径筒部62のハウジング4に対する緊縛力のみで止水性を確保することも考えられるが、この場合、緊縛力を大きくしようとするとハウジング4の外周に大径筒部62を被せる作業が非常にやり難くなるおそれがある。本実施の形態では、第1押圧部材8で大径筒部62をハウジング4側に押さえつける構成となっているため、大径筒部62をハウジング4の外周に被せる作業が容易となる程度に緊縛力を小さくしたとしても、十分な止水性を確保することが可能であり、組み立て作業の作業性向上にも寄与する。
【0031】
また、本実施の形態に係るワイヤハーネス1では、小径筒部61をシース3側に押し付けることで、小径筒部61をシース3に固定する第2押圧部材9をさらに備えている。第2押圧部材9は、小径筒部61とシース3間をシールし、小径筒部61とシース3との間からハウジング4の内部への液体の侵入を抑止する役割も果たしている。本実施の形態では、第2押圧部材9は、固定部材7の加締め部71である。つまり、本実施の形態では、固定部材7が第2押圧部材9としての機能を兼ねている。これにより、固定部材7と別体に第2押圧部材9を設けた場合と比較して、部品点数を削減でき、ワイヤハーネス1の低コスト化に寄与する。
【0032】
第2押圧部材9(ここでは加締め部71)を備えることで、小径筒部61のシース3に対する緊縛力が比較的低い場合であっても、ホルダ6のケーブル10に対する軸方向移動を十分に規制可能となる。また、第2押圧部材9を備えることで、小径筒部61の内周面とシース3の外周面との密着性をより高めることができ、ハウジング4内への水分の侵入をより抑制することが可能になる。その結果、ハウジング4とシース3間に、ハウジング4とシース3間をシールするシール部材(ゴム栓等)を別途設ける必要がなくなり、ワイヤハーネス1を小型化できると共に、部品点数の削減により低コスト化を図ることが可能となる。
【0033】
本実施の形態では、ホルダ6は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる。エチレンプロピレンジエンゴムは、シース3に用いられている熱可塑性ウレタンよりも圧縮永久歪みが生じにくいため、シース3に対して小径筒部61を第2押圧部材9によりしっかりと押圧することができる。このように、ホルダ6は、シース3よりも圧縮永久歪みが生じにくい材質からなることが望ましい。
【0034】
また、ホルダ6の硬度はシース3の硬度よりも低いとよい。ホルダ6のショアA硬度は例えば60であり、シース3の硬度は例えば80である。ホルダ6の硬度をシース3の硬度よりも低くすることにより、例えばケーブル10が振動したり屈曲されたりした際においても、ホルダ6との摩擦等によってシース3に亀裂等の損傷が発生することを抑止可能になり、ケーブル10の損傷を抑制することが可能となる。
【0035】
(変形例)
図8に示すワイヤハーネス1aは、上述のワイヤハーネス1において、ハウジング4とホルダ6とを係止する機構を追加したものである。ワイヤハーネス1aでは、ハウジング4とホルダ6とは、これらの一方に設けられた被係合部と他方に設けられた係合部が係合し、ハウジング4のケーブル10の長手方向への移動が規制されている。図8では、ハウジング4における導入孔40側の端部の外周に係合部としての環状の係合突起45が設けられており、ホルダ6の大径筒部62の内周には、係合突起45が係合する被係合部としての環状の係合溝620が形成されている。
【0036】
ハウジング4の係合突起45を係合溝620に係合させる際には、ホルダ6の大径筒部62を弾性変形により拡径させ、ハウジング4の端部を大径筒部62内に軸方向に押し込む。大径筒部62の開口側の端部における内周面は、係合溝620から軸方向に離間するほど内径が大きくなる内周テーパ面62aとして形成されている。一方、ハウジング4の係合突起45の外周面は、ホルダ6の内周テーパ面62aに当接する外周テーパ面45aが形成されている。そして、ハウジング4の係合突起45を係合溝620に係合する際には、外周テーパ面45aが内周テーパ面62aに当接することにより大径筒部62が拡径する。
【0037】
大径筒部62とハウジング4とが係合されることにより、ハウジング4とホルダ6とがより強固に固定され、ハウジング4のケーブル10の長手方向への移動がより規制される。これにより、ハウジング4がホルダ6から離脱することをより抑制可能となり、ハウジング4の離脱により発生する隙間からハウジング4内に水分が浸入してしまうことがより抑止される。
【0038】
ワイヤハーネス1aでは、第1押圧部材8は、ホルダ6に設けられた係合部または被係合部(ここでは係合溝620)よりも開口側、すなわち小径筒部61と反対側の大径筒部62を、ハウジング4側に押圧するように設けられている。第1押圧部材8を係合溝620よりも開口側に設けることで、第1押圧部材8の押圧により係合溝620と係合突起45との係合が外れにくくなり、ハウジング4とホルダ6とがより強固に固定されることになる。
【0039】
図8の例では、導入孔40に配置されてハウジング4とシース3間をシールするシース側シール部材53をさらに備えた場合を示している。シース側シール部材53は、ハウジング4とシース3との間に介在し、ハウジング4の内面及びシース3の外周面に弾接している。シース側シール部材53は、ハウジング4の導入孔40内に配置される本体部531と、本体部531から外方に突出し、ホルダ6の壁部63とハウジング4の導入孔40側の端部との間に挟まれるフランジ部532とを有している。なお、第1押圧部材8と第2押圧部材9の両方を備える場合、両押圧部材8,9により止水性は確保されるため、シース側シール部材53は省略可能である。図8では、固定部材7(第2押圧部材9)を省略している。
【0040】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るワイヤハーネス1aでは、シース3の外周面に接触する内周面を有する筒状の小径筒部61、及びハウジング4の外周面に接触する大径筒部62を一体に有する弾性体からなるホルダ6と、大径筒部62をハウジング4側に押し付けることで、大径筒部62をハウジング4に固定する第1押圧部材8と、を備えている。
【0041】
このように構成することで、ハウジング4がホルダ6を介してケーブル10に固定されるため、振動を受けてもハウジング4がケーブル10から外れてしまうおそれを低減でき、ハウジング4の位置ずれによる防水性の低下が抑制される。その結果、例えばシース3と電線2との隙間に浸入した水分によって悪影響が発生することを抑制することが可能となる。
【0042】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0043】
[1]電線(2)と前記電線(2)の外周を覆うシース(3)とを有し、前記電線(2)が前記シース(3)の端部から露出したケーブル(10)と、前記シース(3)の端部から露出している前記電線(2)を収容するハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に配置され、前記電線(2)と前記ハウジング(4)間をシールする電線用シール部材(5)と、前記シース(3)の外周面に接触する内周面を有する筒状のシース側筒部(61)と、前記ハウジング(4)の外周面に接触する筒状のハウジング側筒部(62)と、を一体に有する弾性体からなるホルダ(6)と、前記大径筒部(62)を前記ハウジング(4)側に押し付けることで、前記大径筒部(62)を前記ハウジング(4)に固定する第1押圧部材(8)と、を備えた、ワイヤハーネス(1)。
【0044】
[2]前記第1押圧部材(8)は、前記ハウジング側筒部(62)の外周を覆う環状に形成されており、前記ハウジング側筒部(62)を前記ハウジング(4)側に押し付けることで、前記ハウジング側筒部(62)と前記ハウジング(4)との間から前記ハウジング(4)の内部への液体の侵入を抑止するように構成されている、[1]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0045】
[3]前記シース側筒部(61)を前記シース(3)側に押し付けることで、前記シース側筒部(61)を前記シース(3)に固定する第2押圧部材(9)をさらに備えた、[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0046】
[4]前記シース側筒部(61)に加締め付けられた加締め部(71)を有し、前記ケーブル(10)を固定対象に固定するための固定部材(7)をさらに備え、前記第2押圧部材(9)は、前記固定部材(7)の前記加締め部(71)である、[3]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0047】
[5]前記ホルダ(6)の硬度は、前記シース(3)の硬度よりも低い、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0048】
[6]前記ホルダ(6)は、エチレンプロピレンジエンゴムからなり、前記シース(3)は、熱可塑性ウレタンからなる、[5]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0049】
[7]前記シース(3)には、複数の前記電線(2)が収容され、前記ハウジング(4)は、これら複数の前記電線(2)のうち一部の前記電線(2)を導出させる第1の導出孔(41)及び他の一部の前記電線(2)を導出させる第2の導出孔(42)が設けられており、かつ前記第1の導出孔(41)の電線導出方向と第2の導出孔(42)の電線導出方向とが異なり、前記電線用シール部材(5)が前記第1の導出孔(41)及び前記第2の導出孔(42)にそれぞれ配置されている、[1]乃至[6]の何れか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0050】
[8]前記ハウジング(4)の前記ハウジング側筒部(62)と前記ホルダ(4)とは、これら両部材のうち一方の部材に設けられた被係合部(620)に他方の部材に設けられた係合部(45)が係合し、当該係合によって前記ハウジング(4)の前記ケーブル(2)の長手方向への移動が規制されており、前記第1押圧部材(8)は、前記ホルダ(4)に設けられた前記係合部(45)または前記被係合部(620)よりも開口側の前記ハウジング側筒部(62)を、前記ハウジング(4)側に押圧するように設けられている、[1]乃至[7]の何れか1項に記載のワイヤハーネス(1a)。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0052】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1押圧部材8と第2押圧部材9の2つの押圧部材を用いる場合を説明したが、第1押圧部材8と第2押圧部材9を一体に構成してもよい。例えば、ホルダ6よりも硬い樹脂や金属からなる筒状の押圧部材を設け、当該押圧部材によって、大径筒部62の押圧と、小径筒部61の押圧の両方を行えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ワイヤハーネス
10…ケーブル
2…電線
3…シース
4…ハウジング
40…導入孔
41…第1の導出孔
42…第2の導出孔
45…係合突起(係合部)
5…電線用シール部材
51…第1電線用シール部材
52…第2電線用シール部材
6…ホルダ
61…小径筒部(シース側筒部)
62…大径筒部(ハウジング側筒部)
620…係合溝(被係合部)
7…固定部材
71…加締め部
8…第1押圧部材
9…第2押圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8