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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】熱機械分析装置への試料のセット方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 9/02 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
B25B9/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102718
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019022927
(43)【公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017141743
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 和也
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3113810(JP,U)
【文献】実開昭57-145670(JP,U)
【文献】実開昭53-032081(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部から二股状に延伸するとともに、前記基端部と反対側の先端部を互いに接離するように開閉操作される一対の脚部と、
前記一対の脚部の先端部に設けられ、前記一対の脚部を閉じることにより物品を把持する一対の把持部と、
を備え、
前記一対の把持部は、前記一対の脚部を閉じたときに筒形をなす半割構造体によって構成されているピンセットにより、試料台、融着防止板、試料および融着防止板を下から順に積み上げたものをつまみ上げ、熱機械分析装置の試料セット部にて前記ピンセットを開き、試料台、融着防止板、試料および融着防止板を、外周面の位置を面一に揃えて一直線上に配列して前記試料セット部にセットする、熱機械分析装置への試料のセット方法
【請求項2】
前記一対の把持部は、前記一対の脚部を閉じたときに円筒形をなす、平面視半円形の半割構造体によって構成されている、
請求項1に記載の熱機械分析装置への試料のセット方法
【請求項3】
前記一対の把持部は、前記一対の脚部を閉じたときに角筒形をなす、平面視L字形の半割構造体によって構成されている、
請求項1に記載の熱機械分析装置への試料のセット方法
【請求項4】
前記一対の把持部は、前記一対の脚部の先端部に着脱可能に構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱機械分析装置への試料のセット方法
【請求項5】
前記ピンセットにおいては、力が加えられることにより一対の脚部が互いに離れる逆作動方式が採用された、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱機械分析装置への試料のセット方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンセットおよびその付属部品に関し、特に、熱機械分析(TMA)の対象となる試料を把持する際に用いて好適なピンセットおよびその付属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱機械分析装置は、熱膨張、熱収縮、軟化点等の測定を行う熱分析装置の一つである。熱膨張や熱収縮を測定するモードでは、熱機械分析装置にセットされた試料に対し、装置上部から荷重をかけた状態で熱を加え、熱膨張量及び熱収縮量の計測を行う。
【0003】
熱機械分析用の試料は、熱機械分析装置の試料セット部にセットされる。試料のセットには、多くの場合、一般的な汎用型のピンセット(以下、「汎用型ピンセット」という。)が使用されている。
【0004】
なお、ピンセットに関する先行技術としては、たとえば、特許文献1~3に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-136982号公報
【文献】特開2009-220256号公報
【文献】特開2010-214542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱機械分析装置の試料セット部に試料をセットする場合は、試料に均一な荷重が加わるように、試料と治具を一直線上に配列してセットする必要がある。仮に、試料と治具がずれてセットされると、測定中に試料が破砕したり、局所的に変形したりして、正しい測定結果が得られないおそれがある。そのため、試料をセットするときの配列は、熱機械分析の測定において極めて重要である。
【0007】
また、熱機械分析に用いられる試料の形状は円柱形が望ましいとされている。このため、試料は円柱形に成型されて治具と一緒にセットされる。治具には、試料と同じ平面視形状を有する円柱形の試料台などが用いられる。試料は、試料台の上に積み上げられて試料セット部にセットされる。
【0008】
しかしながら、汎用型ピンセットを用いて試料をセットする場合は、たとえば、試料台と試料の位置ずれを修正するなど、非常に細かい調整が必要になる。このため、試料の位置を微調整しようとして試料を倒してしまうおそれがあった。また、試料と治具を一直線上に合わせるのに多くの時間を要していた。したがって、試料のセットには多大な労力が必要とされていた。
【0009】
本発明の主な目的は、熱機械分析装置で試料のセットを簡単かつ確実に行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
基端部から二股状に延伸するとともに、前記基端部と反対側の先端部を互いに接離するように開閉操作される一対の脚部と、
前記一対の脚部の先端部に設けられ、前記一対の脚部を閉じることにより物品を把持する一対の把持部と、
を備え、
前記一対の把持部は、前記一対の脚部を閉じたときに筒形をなす半割構造体によって構成されている、ピンセットである。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記一対の把持部は、前記一対の脚部を閉じたときに円筒形をなす、平面視半円形の半割構造体によって構成されている、
上記第1の形態に記載のピンセットである。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記一対の把持部は、前記一対の脚部を閉じたときに角筒形をなす、平面視L字形の半割構造体によって構成されている、
上記第1の態様に記載のピンセットである。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記一対の把持部は、前記一対の脚部の先端部に着脱可能に構成されている、
上記第1~第3の態様のいずれか1つに記載のピンセットである。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記ピンセットにおいては、力が加えられることにより一対の脚部が互いに離れる逆作動方式が採用された、
上記第1~第4の態様のいずれか1つに記載のピンセットである。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
基端部から二股状に延伸するとともに、前記基端部と反対側の先端部を互いに接離するように開閉操作されるピンセットの一対の脚部の各々の先端部に着脱可能なピンセット用付属部品であって、
前記ピンセット用付属部品を前記一対の脚部の各々の先端部に取り付けた状態で前記一対の脚部を閉じたときに筒形をなす半割構造体によって構成されている、ピンセット用付属部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱機械分析装置で試料のセットを簡単かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】熱機械分析装置の試料セット部を説明するための側断面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係るピンセットの構成を示す平面図であり、(B)は正面図である。
図3】(A),(B)は本発明の実施形態に係るピンセットの使用方法を説明する図である。
図4】(A)~(C)は本発明の実施形態に係るピンセットを用いて熱機械分析装置の試料セット部に試料をセットする場合の手順を説明する図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るピンセットの構成を示す平面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るピンセットの使用方法を説明する図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るピンセットの構成を示す平面図である。
図8】(A)は本発明の更に他の実施形態に係るピンセットカバーの構成を示す平面図であり、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.熱機械分析装置の試料セット部
2.熱機械分析の手順
3.ピンセットの構成
4.ピンセットの使用方法
5.熱機械分析におけるピンセットの使用
6.実施形態の効果
7.他の実施形態
8.変形例等
【0014】
<1.熱機械分析装置の試料セット部>
まず、熱機械分析装置の試料セット部について図1を用いて説明する。
試料セット部100には、試料台101と2つの融着防止板102,103を用いて、試料105がセットされる。試料台101と2つの融着防止板102,103は、試料セット部100に試料105をセットする際に用いられる治具である。
【0015】
試料台101は、たとえばアルミナによって構成されている。試料台101は、円柱形に形成されている。試料台101は、試料セット部100で試料105を所定の高さに配置するために使用される。試料台101の高さは、たとえば20mmである。試料台101の直径は、たとえば4~5mmである。
【0016】
2つの融着防止板102,103は、熱機械分析の測定で試料105に所定の荷重をかけつつ加熱した場合に、試料105が試料台101や検出棒106に融着することを防止するために使用される。一方の融着防止板102は、試料台101と試料105の間に配置され、他方の融着防止板103は、試料105と検出棒106の間に配置される。融着防止板102,103は、試料台101と同一の材料(本実施形態ではアルミナ)によって構成されている。また、融着防止板102,103は、試料台101と同様に円柱形に形成されている。融着防止板102,103の直径は、それぞれ試料台101の直径と同一である。各々の融着防止板102,103の高さは、たとえば2mmである。
【0017】
試料105は、円柱形に形成されている。試料105は、試料台101や融着防止板102,103と同一の平面形状を有する。試料105の直径は、試料台101や融着防止板102,103と直径と同一である。試料105の高さは、たとえば1~2mmである。
【0018】
検出棒106は、図中矢印で示すように上下方向に移動可能に設けられている。検出棒106は、試料105に荷重を加えるときに下降し、荷重を加えない場合は上昇して待避する。検出棒106の直径は、試料台101や融着防止板102,103の直径と同一である。検出棒106は、試料105の熱膨張または熱収縮に従って上下方向に変位する。このため、熱機械分析装置では、検出棒106の変位量を変位検出部(不図示)で計測することにより、試料105の熱膨張量または熱収縮量を測定することができる。
【0019】
<2.熱機械分析の手順>
次に、上記構成の熱機械分析装置を用いて試料105の熱膨張や熱収縮を測定する場合の手順について説明する。
【0020】
まず、熱機械分析の試料を準備する。この段階の試料は粉末状である。
次に、粉末状の試料を加圧成型などによって円柱状に成型することにより、上記の試料105を得る。
【0021】
次に、試料セット部100に試料台101や融着防止板102,103と一緒に試料105をセットする。このとき、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103を一直線上に配列する。
次に、検出棒106によって試料105に所定の荷重をかけながら熱を加えることにより、試料105の熱膨張または熱収縮の測定を開始する。
【0022】
上記の手順において、たとえば、汎用型ピンセットを用いて試料セット部100に試料105をセットする場合は、まず、汎用型ピンセットで試料台101を摘まんで試料セット部100に試料台101を置く。次に、汎用型ピンセットで融着防止板102を摘まんで試料台101の上に積み上げる。
【0023】
次に、汎用型ピンセットで試料105を摘まんで融着防止板102の上に積み上げる。次に、ピンセットで融着防止板103を摘まんで試料105の上に積み上げる。
【0024】
このように、汎用型ピンセットを使って試料105をセットする場合は、試料セット部100に置いた試料台101の上に、融着防止板102、試料105および融着防止板103を順に1つずつ積み上げる。その際、試料台101から融着防止板103まで一直線上に配列されるよう、試料105や融着防止板102,103の位置を微調整する。微調整は汎用型ピンセットを用いて行う。
【0025】
ここで、試料台101の上に融着防止板102,103や試料105が一直線上に配列される状態とは、試料セット部100に積み上げられた各部の中心軸の位置が一致する状態を意味する。本実施形態のように、各部の直径が実質的に同じであれば、各部の外周面の位置を面一に揃えることで一直線上に配列することができる。ただし、微調整には多大な労力が必要となる。たとえば、試料台101の上に融着防止板102を載せて融着防止板102の位置を微調整し、その後、融着防止板102の上に試料105を載せて試料105の位置を微調整する場合に、融着防止板102の位置がずれてしまうことがある。そこで本発明者は、新規なピンセットを考え出した。
【0026】
<3.ピンセットの構成>
以下、本発明の実施形態に係るピンセットの構成について説明する。
図2(A)は本発明の実施形態に係るピンセットの構成を示す平面図であり、(B)は正面図である。
【0027】
図示したピンセット1は、使用者によって開閉操作される一対の脚部2a,2bと、物品を把持するための一対の把持部3a,3bと、を備える。ピンセット1の材料は、たとえば、ステンレス鋼などの金属でも、あるいはポリアセタールなどのプラスチックでもよいが、好ましくは金属である。
【0028】
(一対の脚部)
一対の脚部2a,2bは、基端部5から二股状に延伸している。各々の脚部2a,2bは、所定の長さを有する板状体によって構成されている。一対の脚部2a,2bは長さ方向の一端部を基端部5とし、この基端部5で一対の脚部2a,2bが互いに連結されている。一対の脚部2a,2bは、それぞれ長さ方向の他端部、すなわち基端部5と反対側の端部を先端部6a,6bとしている。各々の脚部2a,2bの幅Wは、それぞれ長さ方向の途中から先端部6a,6bに向かって徐々に狭くなっている。また、一対の脚部2a,2bは、基端部5を支点に開閉操作可能に構成されている。ここで記述する「開閉操作」とは、一対の脚部2a,2bの先端部6a,6bを互いに接離する方向に変位させる操作をいう。
【0029】
一対の脚部2a,2bは、外力が加えられていない状態では一対の脚部2a,2b自身の弾性により先端部6a,6bが所定の距離を隔てて離間した状態に保持される。そして、一対の脚部2a,2bに対し、上記弾性に対抗する外力を加えると、先端部6a,6bが互いに接近する方向に変位し、その状態で外力を解放すると、先端部6a,6bが互いに離間する方向に変位するようになっている。なお、上記弾性に対抗する外力は、使用者がピンセット1を閉じ操作するときに一対の脚部2a,2bに加えられる押圧力となる。
【0030】
(一対の把持部)
一対の把持部3a,3bは、一対の脚部2a,2bの先端部6a,6bに設けられている。具体的には、一方の把持部3aは脚部2aの先端部6aに設けられ、他方の把持部3bは脚部2bの先端部6bに設けられている。一対の把持部3a,3bは、一対の脚部2a,2bを閉じ操作したときに筒形をなす半割構造体によって構成されている。半割構造体とは、筒形の構造物をその中心軸に沿って半分に分割した場合に得られる構造体である。
【0031】
図2(A),(B)においては筒形が円筒形である場合を例示している。円筒形の構造物を上記のように半分に分割すると、それぞれ半円形をなす2つの半割構造体が得られる。一対の把持部3a,3bは、この半円形の半割構造体によって構成されている。脚部2aの先端部6aは把持部3aの外周面に固定され、脚部2bの先端部6bは把持部3bの外周面に固定されている。また、脚部2aの先端部6aは把持部3aの高さ方向の中間部に固定され、脚部2bの先端部6bも把持部3bの高さ方向の中間部に固定されている。このため、把持部3aは、脚部2aの先端部6aから上下方向に突出し、把持部3bは、脚部2bの先端部6bから上下方向に突出している。
【0032】
なお、一対の把持部3a,3bは、それぞれ平面視半円形に形成されるが、一対の脚部2a,2bを閉じ操作したときに、完全に閉じた円筒形を形成する必要はなく、たとえば、円筒形の円周方向の一部が欠落した半割構造になっていてもよい。
【0033】
一対の把持部3a,3bの内周面は、それぞれ物品を把持するための把持面4a,4bとなっている。各々の把持面4a,4bは、ピンセット1で把持しようとする物品の形状に沿うように形成されている。たとえば、物品の形状が円柱形(または円筒形)であるとすると、一対の把持部3a,3bの把持面4a,4bは、円柱形の物品の外周面に沿うように形成されている。また、円筒形をなす半割構造体によって一対の把持部3a,3bを構成する場合は、その円筒形の内径が円柱形の物品の外径と同一に設定される。これにより、各々の把持面4a,4bの曲率半径と物品の外周面の曲率半径が同一になる。
【0034】
一対の把持部3a,3bの高さ寸法は、ピンセット1で把持しようとする物品の高さ寸法に応じて設定される。具体的には、一対の把持部3a,3bの高さ寸法は、物品の高さ寸法と同じか、それよりも少し(たとえば、1mmほど)小さく設定することが好ましい。このように把持部3a,3bの高さ寸法を設定すれば、ピンセット1で把持した物品を外部から視認しやすくなる。
【0035】
<4.ピンセットの使用方法>
次に、本発明の実施形態に係るピンセットの使用方法について説明する。ここでは円柱形の物品をピンセットで把持する場合を例に挙げて説明する。
まず、ピンセット1を手に持って、図3(A)に示すように、一対の脚部2a,2bを開いたまま、一対の把持部3a,3bの間に物品7を配置する。
【0036】
次に、図3(B)に示すように、一対の脚部2a,2bを閉じ操作する。閉じ操作では、一対の脚部2a,2bに対し、破線の矢印方向に押圧力を加える。そうすると、一対の把持部3a,3bが互いに接近し、その接近途中で物品7を両側から挟むように把持する。このとき、一対の把持部3a,3bの把持面4a,4bは、円筒形の物品7の外周面に面接触で接触する。これにより、物品7をピンセット1でつまみ上げることができる。
【0037】
また、上述のように一対の把持部3a,3bで物品7を把持すると、物品7の中心軸は、一対の把持部3a,3bが形成する円筒形の中心軸に位置合わせされる。このため、たとえば上下に積み重ねられた複数の物品を一対の把持部3a,3bで一緒に把持すると、複数の物品の中心軸が互いに一致する状態、すなわち複数の物品が一直線上に配列された状態となる。
【0038】
その後、一対の脚部2a,2bを開き操作すると、一対の把持部3a,3bが互いに離間する方向に変位する。開き操作では、閉じ操作による押圧力を解放する。そうすると、一対の脚部2a,2bが自身の弾性によって外側に開く。このため、一対の把持部3a,3bが物品7から離れる。これにより、物品7を元の場所から別の場所に移すことができる。
【0039】
<5.熱機械分析におけるピンセットの使用>
次に、本発明の実施形態に係るピンセットを熱機械分析で使用する場合について説明する。
【0040】
熱機械分析でピンセット1を使用する場合は、まず、図4(A)に示すように、平らな台108の上(たとえば、机上など)で、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103を順に積み上げる。この作業は、汎用型ピンセットを使用して行ってもよいし、ピンセット等を使用せずに手作業で行ってもよい。また、この段階では、試料台101の上に融着防止板102,103や試料105が一直線上に配列されていなくてもよい。つまり、試料台101に対して融着防止板102,103や試料105の位置が水平方向にずれていてもよい。よって、汎用型ピンセット等を用いた位置の微調整は不要である。
【0041】
次に、図4(B)に示すように、上述のように積み上げた試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103をピンセット1でつまむ。具体的には、一対の把持部3a,3bの底面を台108の上に載せるとともに、一対の把持部3a,3bの間に試料台101等を配置し、その状態で一対の脚部2a,2bを閉じ操作する。これにより、試料台101とその上に積み上げられた融着防止板102、試料105および融着防止板103が、一対の把持部3a,3bによって同時に把持される。このとき、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103の各中心軸が互いに一致するように、一対の把持部3a,3bがそれらの物品を一直線上に配列させる。
【0042】
次に、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103をピンセット1でつまみ上げて、図4(C)に示すように、熱機械分析装置の試料セット部100に移し、そこでゆっくりと開き操作する。これにより、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103が一直線上に配列されて試料セット部100にセットされる。
【0043】
<6.実施形態の効果>
本発明の実施形態に係るピンセット1によれば、円柱状または円筒状の物品を一対の把持部3a,3bで把持すべく、一対の脚部2a,2bを閉じ操作した場合に、一対の把持部3a,3bの中心軸に上記物品の中心軸を位置合わせすることができる。このため、たとえば、熱機械分析装置で試料セット部100に試料105をセットする場合は、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103を、一対の把持部3a,3bで一緒に把持するだけで、それらの物品を一直線上に配列させることができる。したがって、熱機械分析装置で試料105のセットを簡単かつ確実に行うことができる。その結果、熱機械分析にかかる時間と労力を節約し、試料105の熱膨張や熱収縮の測定を効率良く行うことが可能となる。
【0044】
また、本発明の実施形態では、一対の脚部2a,2bを閉じたときに円筒形をなす半割構造体によって一対の把持部3a,3bを構成している。このため、熱機械分析の試料105のように円柱形(または円筒形)の物品を把持する場合に、物品の外周面に一対の把持部3a,3bの内周面を面接触で接触させることができる。したがって、物品を安定的に把持することができる。
【0045】
<7.他の実施形態>
図5は本発明の他の実施形態に係るピンセットの構成を示す平面図である。
図示したピンセット1は、一対の把持部3a,3bの構造が上記実施形態と異なる。具体的には、上記実施形態においては、一対の脚部2a,2bを閉じたときに円筒形をなす半割構造体によって一対の把持部3a,3bを構成しているが、他の実施形態においては、円筒形ではなく角筒形の半割構造体によって一対の把持部3a,3bを構成している。
【0046】
一対の把持部3a,3bは、それぞれ平面視L字形に形成されており、一対の脚部2a,2bを閉じ操作したときに平面視四角形の角筒形をなすように構成されている。一対の把持部3a,3bのうち、一方の把持部3aの内側には、平面視で直角をなす2つの把持面4aが形成され、他方の把持部3bの内側にも、平面視で直角をなす2つの把持面4bが形成されている。なお、2つの把持面4aがなす角度や、2つの把持面4bがなす角度は、対象となる物品を把持できるようであれば、90°よりも大きくても小さくしてもかまわない。
【0047】
これに対し、脚部2aの先端部6aは把持部3aの外側の角部に固定され、脚部2bの先端部6bは把持部3bの外側の角部に固定されている。これにより、一対の支持部2a,2bを開閉操作すると、これに従って一対の把持部3a,3bが互いに接離する方向に変位する。
【0048】
上記構成からなるピンセット1においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
具体的には、円筒形または円柱形の物品を把持する場合は、一対の把持部3a,3bの間に物品7を配置した後、一対の脚部2a,2bを閉じ操作する(図6)。そうすると、一対の把持部3a,3bが互いに接近し、その接近途中で4つの把持面4a,4bが物品7の外周面に線接触で接触する。これにより、一対の把持部3a,3bは、4つの把持面4a,4bで物品7を4方向から挟むように把持する。したがって、物品7をピンセット1でつまみ上げることができる。
【0049】
また、上述のように一対の把持部3a,3bで物品7を把持すると、物品7の中心軸は、一対の把持部3a,3bが形成する角筒形の中心軸に位置合わせされる。このため、たとえば上下に積み重ねられた複数の物品を一対の把持部3a,3bで一緒に把持すると、複数の物品の中心軸が互いに一致する状態、すなわち複数の物品が一直線上に配列された状態となる。
【0050】
その後、一対の脚部2a,2bを開き操作すると、一対の把持部3a,3bが互いに離間する方向に変位する。開き操作では、閉じ操作による押圧力を解放する。そうすると、一対の脚部2a,2bが自身の弾性によって外側に開く。このため、一対の把持部3a,3bが物品7から離れる。これにより、物品7を元の場所から別の場所に移すことができる。
【0051】
一方、上記構成からなるピンセット1を熱機械分析で使用する場合は、上記実施形態と同様に、平らな台の上に試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103を積み上げた後、これらの物品を一対の把持部3a,3bで把持するようにピンセット1でつまむ。これにより、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103を一直線上に配列させ、その状態のまま試料セット部100にセットすることができる。
【0052】
図7は、本発明の他の実施形態に係るピンセットの構成を示す平面図である。
図示したピンセット1は、一対の把持部3a,3b以外の構造が上記実施形態と異なる。具体的には、上記実施形態においては、ピンセット1の一対の基端側脚部21a,21bを近接させるように力を加えることにより、一対の末端側脚部22a,22bが外側に開くという逆作動方式を採用している。
【0053】
上記の逆作動方式のピンセット1を採用することにより、力を加えていない通常状態だと一対の末端側脚部22a,22bは互いに接触状態すなわち閉じた状態である。これは、開いた状態に比べ、嵩張らない状態であることを意味する。
【0054】
熱機械分析装置で試料セット部100に試料105をセットする際に、試料台101、融着防止板102、試料105および融着防止板103を配置するための作業スペースが非常に狭い場合がままある。その場合、逆作動方式のピンセット1を採用することにより、予めピンセット1の一対の把持部3a,3bに試料105を把持させておいたうえで、ピンセット1を移動させて試料105をセットする直前まで力を抜いて作業が行える。そして試料105のセットの際にのみピンセット1に力を加えればよい。また、試料105のセット後、作業スペースからのピンセット1を引き抜く際にも力を抜いて行える。そのため、術者にとっては作業の確実性が向上する。その結果、上記の逆作動方式のピンセット1を採用するのが好ましい。
【0055】
<8.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0056】
たとえば、上記実施形態においては、一対の脚部2a,2bと一対の把持部3a,3bを相互に固定したが、これに限らず、一対の脚部2a,2bの先端部6a,6bに対して、一対の把持部3a,3bを着脱可能な構成を採用してもよい。
【0057】
着脱のための具体的な構造としては、たとえば、ネジ止めによって一対の把持部3a,3bを一対の脚部2a,2bに取り付ける構造を採用することが可能である。
【0058】
図8(A)は本発明の更に他の実施形態に係るピンセットカバーの構成を示す平面図であり、(B)は側面図である。
着脱のための別の具体的な構造としては、たとえば、従来のピンセットの一対の脚部2a,2bの先端部6a,6bに対し、上記の一対の把持部3a,3bの形状を有するピンセットカバーを採用することが可能である。このピンセットカバーとしては樹脂製でも金属製でもよい。この構造を採用することにより、従来のピンセットをピンセットカバーの孔Hに嵌め入れるだけで本発明の技術が使用可能となり、汎用性に富む。
【0059】
上記の構成を採用した場合は、一対の脚部2a,2bをピンセット本体として共用する一方、一対の把持部3a,3bをアタッチメントすなわちピンセット1の付属部品として使用することができる。また、アタッチメントとなる一対の把持部3a,3bを、サイズを変えて複数用意しておけば、物品のサイズに合わせて一対の把持部3a,3bを使い分けることができる。これにより、たとえば、熱機械分析に用いられる試料台101の高さが変更になる場合に、変更後の試料台101の高さに適合するサイズの把持部3a,3bを選んで使用することができる。このため、ピンセットの利便性を向上させることができる。
なお、従来のピンセットを用いる場合であっても上記アタッチメントを利用することにより本発明の効果を奏する。そのため、上記アタッチメントはそれ自体で発明足りうる。この発明の構成は以下の通りである。
「基端部から二股状に延伸するとともに、前記基端部と反対側の先端部を互いに接離するように開閉操作されるピンセットの一対の脚部の各々の先端部に着脱可能なピンセット用付属部品であって、
前記ピンセット用付属部品を前記一対の脚部の各々の先端部に取り付けた状態で前記一対の脚部を閉じたときに筒形をなす半割構造体によって構成されている、ピンセット用付属部品。」
アタッチメントであるピンセット用付属部品は、一つの形状のものを2個準備し、一対の脚部の各々の先端部に装着すればよい。そのため、1個のピンセット用付属部品としても本発明の効果を奏するといえるし、2個一組である一対のピンセット用付属部品としても本発明の効果を奏するといえる。
また、上記実施形態の各例を上記構成に対して適宜採用しても構わない。
【0060】
また、上記実施形態においては、上記図2(B)に示すように脚部2bと把持部3bが略T字形をなすよう、一対の脚部2a,2bと一対の把持部3a,3bが互いに直角をなす向きに配置されているが、これに限らず、一対の把持部3a,3bに対して一対の脚部2a,2bが斜めに傾いた構成になっていてもよいし、各々の脚部2a,2bが長さ方向の途中でクランク形状に曲がった構成になっていてもよい。
【0061】
また、一対の把持部3a,3bの平面視形状は、半円形どうしの組み合わせや、L字形どうしの組み合わせに限らず、たとえば、一方の把持部が半円形で、他方の把持部がL字形の組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…ピンセット
2a,2b…脚部
21a,21b…基端側脚部
22a,22b…末端側脚部
3a,3b…把持部
5…基端部
6a,6b…先端部
7…物品
H…孔
100…試料セット部
101…試料台
102,103…融着防止板
105…試料
106…検出棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8