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特許7017200監視計測システム及び監視計測塔の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】監視計測システム及び監視計測塔の設置方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 22/00 20060101AFI20220201BHJP
   B63B 21/50 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
B63B22/00 Z
B63B21/50 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017072735
(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2018172089
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆博
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】天沼 成一
(72)【発明者】
【氏名】胡 長洪
(72)【発明者】
【氏名】末吉 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 正典
(72)【発明者】
【氏名】梁井 秀規
(72)【発明者】
【氏名】島内 勝則
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234980(JP,A)
【文献】特表2016-510875(JP,A)
【文献】特許第3063039(JP,B2)
【文献】米国特許第3728748(US,A)
【文献】特開昭57-167887(JP,A)
【文献】特開2000-103386(JP,A)
【文献】特開昭49-95685(JP,A)
【文献】黒田芳史,網谷泰孝,“トライトン:ENSO現象解明を目指す新しい海洋―気象観測ブイネットワーク”,海の研究,日本,日本海洋学会,2001年03月05日,第10巻,第2号,p.157-172,DOI:10.5928/kaiyou.10.157,ISSN 2186-3105(online),0916-8362(print)
【文献】谷川勇二,河内隆秀,口田登,養父恒夫,“現地波浪下における緊張係留方式ブイの挙動について”,海岸工学講演会論文集,日本,公益社団法人 土木学会,1985年10月30日,32巻,p.687-691,DOI:10.2208/proce1970.32.687,ISSN 1884-8214(online), 0285-7308(print)
【文献】長崎作治,“10章 テンションレグ・プラットホームの設計解析”,海洋浮遊構造物の係留設計,日本,山海堂,1981年06月20日,p.142-157,ISBN 978-4381005175
【文献】山口晶敬,“<波浪観測用ブイ> テンション・レグ・ブイ”,土木技術,日本,土木技術社,1980年10月01日,第35巻,第10号,p.31-38,ISSN 0285-5046
【文献】橋本宏,山口修,“海中ブイ式波浪計による波浪観測”,海岸工学講演会論文集,日本,公益社団法人 土木学会,1978年11月05日,25巻,p.60-64,DOI:10.2208/proce1970.25.60,ISSN 1884-8214(online), 0285-7308(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/50,22/00,35/00,35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域に設置され、監視装置又は計測装置を備える監視計測塔と、
前記監視計測塔と通信し、前記監視計測塔に備えられた前記監視装置又は前記計測装置を制御する制御室と、
を含む監視計測システムであって、
前記監視計測塔は、完全に水中に係留される浮力タンクと、前記浮力タンクに設けられた支持体と、前記浮力タンクにテンドンを介して接続された重力アンカーと、を有する緊張係留型の浮体構造物からなり、
前記重力アンカーは、前記支持体が設けられた前記浮力タンクを海底に係留するための重量を有するアンカーと、前記アンカーを水上に浮かべることが可能な浮沈用タンクとを有する
ことを特徴とする監視計測システム。
【請求項2】
複数基の前記監視計測塔を含む
ことを特徴とする請求項1記載の監視計測システム。
【請求項3】
前記支持体は、棒状部材によるトラス構造からなる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の監視計測システム。
【請求項4】
前記棒状部材は、繊維強化プラスチックにより構成されている
ことを特徴とする請求項記載の監視計測システム。
【請求項5】
水域に監視計測塔を設置する方法であって、
支持体が設けられた浮力タンクと、アンカーと浮沈用タンクとを備えた重力アンカーとを、水上に浮かべた状態で前記監視計測塔の設置場所まで曳航し、
前記浮沈用タンクに注水して前記重力アンカーを水底に沈め、テンドンを介して前記重力アンカーに接続された前記浮力タンクを完全に水中に係留することにより、緊張係留型の浮体構造物からなる監視計測塔を設置する
ことを特徴とする監視計測塔の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視計測システム及び監視計測塔の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋エリアに設置された係留式測定装置を用いて所定の水深の水質を測定する測定装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3063039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、異常気象への対応や、船舶の監視等を目的として、海洋エリアを監視計測する監視計測システムの精度の向上が望まれている。
【0005】
監視計測システムとして各種の監視装置や計測装置を搭載したブイを揺動可能な状態で繋ぎ止める方法があるが、この方法では、揺動によりブイが移動するため、定点、定方向の監視計測ができないという課題があった。
【0006】
また、海底に固定された監視計測のための塔を建設する場合は、建設自体が高コストであるのに加え、メンテナンスにかかる費用も高いという課題があった。そのため、より低コストで実現しうる監視計測システムが望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、設置コストを低廉化しうる監視計測システム及び監視計測塔の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、水域に設置され、監視装置又は計測装置を備える監視計測塔と、前記監視計測塔と通信し、前記監視計測塔に備えられた前記監視装置又は前記計測装置を制御する制御室と、を含む監視計測システムであって、前記監視計測塔は、完全に水中に係留される浮力タンクと、前記浮力タンクに設けられた支持体と、前記浮力タンクにテンドンを介して接続された重力アンカーと、を有する緊張係留型の浮体構造物からなり、前記重力アンカーは、前記支持体が設けられた前記浮力タンクを海底に係留するための重量を有するアンカーと、前記アンカーを水上に浮かべることが可能な浮沈用タンクとを有する監視計測システムが提供される。

【0009】
また、本発明の他の一観点によれば、水域に監視計測塔を設置する方法であって、支持体が設けられた浮力タンクと、アンカーと浮沈用タンクとを備えた重力アンカーとを、水上に浮かべた状態で前記監視計測塔の設置場所まで曳航し、前記浮沈用タンクに注水して前記重力アンカーを水底に沈め、テンドンを介して前記重力アンカーに接続された前記浮力タンクを完全に水中に係留することにより、緊張係留型の浮体構造物からなる監視計測塔を設置することを特徴とする監視計測塔の設置方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設置場所によらず揺動の少ない監視計測塔を低コストで水域に設置することができる。また、これにより水域を監視計測する監視システムを容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による監視計測システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による監視計測システムにおける監視計測塔の概略構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による監視計測システムにおける制御室及び監視計測部の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態による監視計測システムにおける監視計測塔の設置方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態による監視システムについて、図1乃至図4を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態による監視計測システムの概略構成を示す図である。図2は、本実施形態による監視計測システムにおける監視計測塔の概略構成を示す図である。図3は、本実施形態による監視計測システムにおける制御室及び監視計測部の概略構成を示すブロック図である。図4は、本実施形態による監視計測システムにおける監視計測塔の設置方法を示す概略図である。
【0014】
はじめに、本実施形態による監視計測システムの概略構成について、図1乃至図3を用いて説明する。本実施形態による監視計測システムは、水域に設置された監視計測塔を含み、水域における状況を監視及び計測する水域監視計測システムである。なお、本明細書において、水域とは、水で覆われた領域であり、例えば、海、河川、湖、沼、池、ダム湖等である。海には、例えば、内水、領海、接続水域、排他的経済水域、公海等の海域が含まれる。また、本実施形態による監視計測システムは、水域をモニタリングするシステムであればよく、水域における状況を監視するシステムであってもよいし、水域における状況を計測するシステムであってもよい。以下では、本実施形態による監視計測システムが海域における状況を監視及び計測する場合について説明する。
【0015】
本実施形態による監視計測システム10は、図1に示すように、例えば沿岸の陸地Gの陸上等に設置された制御室20と、制御室20と無線通信等による通信を行う複数基の監視計測塔30とを含む。監視計測塔30は、海域Sにおける監視計測対象領域に設置されている。なお、海域Sに設置される監視計測塔30の数は、特に限定されることなく、監視計測対象領域の面積等に応じて適宜設定することができ、1基であってもよいし、複数基であってもよい。
【0016】
監視計測塔30は、海域Sにおける監視計測対象領域に設置され、後述の監視装置44d及び計測装置44eを備えるものである。なお、監視計測塔30は、監視装置44d及び計測装置44eの両方を備えるものである必要は必ずしもなく、監視装置44d又は計測装置44eを備えるものであればよい。
【0017】
監視計測塔30は、例えば図2に示すように、支持体32と、浮力タンク34と、テンドン36と、浮沈式重力アンカー38とを有する。支持体32は、浮力タンク34に固定されており、頂部において後述の監視計測部44を支持する。浮力タンク34と浮沈式重力アンカー38とは、テンドン36によって接続されている。浮力タンク34による浮力と浮沈式重力アンカー38による重力とによってテンドン36が緊張し、浮力タンク34はテンドン36を介して浮沈式重力アンカー38により水中に係留される。すなわち、監視計測塔30は、緊張係留(TLP:Tension Leg Platform)型の浮体構造物である。
【0018】
支持体32は、監視計測塔30の塔本体を構成し、監視計測部44を頂部に支持するものである。支持体32は、軽量化や波力や風圧抵抗を低減する観点から、棒状部材からなる骨組構造、特にトラス構造を有する構造体であることが望ましい。棒状部材は、地上に設けられる監視計測塔のように金属でもよいが、耐腐食性や軽量化等の観点から繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等の複合材料が望ましい。棒状部材は、少なくとも、波力や風圧等によって座屈しない程度の最低限の直径とする。支持体32の概形は、例えば、海域Sにおける水面からの高さが20m~30m程度であり、喫水量が10m程度であり、排水量が60トン程度である。
【0019】
浮力タンク34は、支持体32を設置した状態で海域Sにおける水面に浮き上がるに十分な浮力を有する。浮力タンク34は、軽量化等の観点から、支持体32と同様、複合材料により構成されていることが望ましい。
【0020】
浮沈式重力アンカー38は、例えばコンクリート製のアンカー40と、浮沈用タンク42とを備えている。アンカー40は、支持体32が設けられた浮力タンク34を水底に係留するために十分な重量を有する。浮沈用タンク42は、空気で満たされることによってアンカー40を水上に浮かべることが可能である。これにより、浮沈式重力アンカー38は、浮沈用タンク42に注水すると水底に沈下して重力アンカーとして機能し、浮沈用タンク42が空気で満たされると水面50に浮上して曳航できる状態となる。
【0021】
浮力タンク34及び浮沈式重力アンカー38は、例えば図示するような三角形の中抜き構造とすることが望ましい。これにより、浮力タンク34及び浮沈式重力アンカー38を沈下する際のグラインディングを防止することができる。
【0022】
また、監視計測塔30には、海域Sにおける状況を監視計測するための監視計測部44が設けられている。監視計測部44は、支持体32の頂部に設けられて支持体32により支持されている。監視計測部44は、図3に示すように、通信装置44a、照明装置44b、警告装置44c、監視装置44d、計測装置44e、警報発信装置44f、電源装置44g等を備えている。
【0023】
通信装置44aは、制御室20及び他の監視計測塔30と通信するための装置である。通信装置44aは、例えば、無線通信装置である。なお、制御室20と監視計測塔30との間、及び複数基の監視計測塔30の間の通信方式は、特に限定されるものではなく、既知の通信方式を用いることができる。また、通信装置44aは、制御室20及び他の監視計測塔30との通信に通信ケーブルを利用する有線通信装置であってもよいが、監視計測塔30の設置場所の選択の自由度、設置コスト等の観点からは無線通信装置であることが好ましい。
【0024】
照明装置44bは、例えば常時又は任意のタイミングで海域Sにおける監視計測対象領域を照らすための装置である。照明装置44bは、例えば、投光器、サーチライト等である。
【0025】
警告装置44cは、監視装置44dによる監視結果に基づき、船舶等の警告対象に警告を発するための装置である。警告装置44cは、例えば、長距離音響発生装置(LRAD:Long Range Acoustic Device)等である。
【0026】
監視装置44dは、海域Sにおける監視計測対象領域の状況を監視するための装置である。監視装置44dは、例えば、赤外線カメラ、可視光カメラ等の光学監視装置、レーダー等の電波監視装置等である。監視装置44dにより取得された画像データ等の監視データは、通信装置44aにより制御室20に送信される。
【0027】
計測装置44eは、監視計測対象領域の状況を計測するための装置である。計測装置44eは、例えば、波高計、風速風向計、流速計、水温計等である。波高計としては、超音波式波高計、マイクロ波式波高計が例示される。風速風向計としては、超音波式風速風向計、レーザードップラー式風速風向計が例示される。流速計としては、電波式流速計が例示される。計測装置44eにより取得された計測データは、通信装置44aにより制御室20に送信される。
【0028】
警報発信装置44fは、監視装置44dによる監視結果や計測装置44eによる計測結果に基づき、海域Sにおける監視計測対象領域の異常を制御室20に通知する警報信号を発信するための装置である。警報発信装置44fにより発信された警報信号は、通信装置44aにより制御室20に送信される。
【0029】
電源装置44gは、上記通信装置44a、照明装置44b、警告装置44c、監視装置44d、計測装置44e及び警報発信装置44fに電源を供給するための装置である。電源装置44gは、例えば、太陽光発電装置、バッテリー等である。
【0030】
図2には、監視計測部44が、照明装置44bとしてサーチライト44b1を、監視装置44dとして赤外線カメラ44d1及びレーダー44d2を、計測装置44eとして波高計44e1及び風速風向計44e2を備えている場合を例示している。また、監視計測部44には、通信装置44aによる通信用のアンテナ44hが設けられている。
【0031】
なお、監視計測部44は、監視装置44d及び計測装置44eのうち、いずれか一方を備えていればよい。また、監視計測部44は、照明装置44b、警告装置44c及び警報発信装置44fの全部又は一部を備えていなくてもよい。また、通信装置44a、照明装置44b、警告装置44c、監視装置44d、計測装置44e、警報発信装置44f及び電源装置44gの全部又は一部は、監視計測塔30の頂部における監視計測部44ではなく、監視計測塔30の他の部分に設置されていてもよい。
【0032】
制御室20は、監視計測塔30と通信し、監視計測塔30の監視計測部44における監視装置44d、計測装置44eその他の装置を制御するものである。制御室20は、図3に示すように、通信装置20aと、制御装置20bとを有している。
【0033】
通信装置20aは、監視計測塔30と通信するための装置である。通信装置20aは、例えば、無線通信装置である。なお、制御室20と監視計測塔30との間の通信方式は、特に限定されるものではなく、既知の通信方式を用いることができる。また、通信装置20aは、監視計測塔30との通信に通信ケーブルを利用する有線通信装置であってもよいが、監視計測塔30の設置場所の選択の自由度、設置コスト等の観点からは無線通信装置であることが好ましい。
【0034】
制御装置20bは、監視計測塔30における監視計測部44を制御するための装置である。制御装置20bは、通信装置20aを介して制御信号を監視計測部44に送信して、監視計測部44における通信装置44a、照明装置44b、警告装置44c、監視装置44d、計測装置44e、警報発信装置44f及び電源装置44gを制御する。
【0035】
また、制御装置20bは、通信装置20aを介して、監視計測塔30から送信される各種信号を受信して、受信した信号に対して、表示、記録、加工、解析等の各種の処理を実行する。具体的には、制御装置20bは、通信装置20aを介して、監視装置44dにより取得された監視データ、計測装置44eにより取得された計測データ、警報発信装置44fにより発信された警報信号を受信する。制御装置20bは、受信した監視データ及び計測データに対して表示、記録、加工、解析等の処理を実行したり、受信した警報信号に基づき警報を発報したりする。
【0036】
制御室20は、上記通信装置20a及び制御装置20bにより、監視計測塔30における監視計測部44に設置された通信装置44aと信号の送受信等を行う。これにより、制御室20は、通信装置44a、照明装置44b、警告装置44c、監視装置44d、計測装置44e、電源装置44g等の監視計測塔30に設置された装置の制御を行う。
【0037】
また、制御室20は、監視装置44dにより取得された画像データ等の監視データを取得し、計測装置44eにより取得された計測データを取得し、取得した各種データに対して表示、記録、加工、解析等の処理を実行する。また、制御室20は、警報発信装置44fにより発信された警報信号に基づき、警報を発報する。
【0038】
なお、制御室20は、図示するような陸地Gの陸上に設置されたものに限定されず、洋上に浮体するものであってもよい。また、制御室20は、海底に基礎が固定された着床式の構造物であってもよい。
【0039】
本実施形態による監視計測システム10は、特に限定されるものではなく、種々の監視システム又は計測システムとして構成することができる。本実施形態による監視計測システム10としては、例えば、船舶監視システム、風力発電監視システム、波浪監視システム、潮流監視システム、沖合養殖監視システム、養殖用自動給餌監視システム、洋上の携帯電話基地局等が挙げられる。また、例えば、水温計測システム、風速計測システム等が挙げられる。
【0040】
次に、本実施形態による監視計測システムに用いられる監視計測塔30を海域Sに設置する監視計測塔の設置方法について、図4を用いて説明する。
【0041】
監視計測塔30は設置場所から離れた工場で製造されるため、監視計測塔30は曳航船60により海域Sにおける所定のルートを通って海域Sにおける設置現場まで運搬する必要がある。
【0042】
工場から現場への運搬時、浮沈式重力アンカー38の浮沈用タンク42は空気で満たした状態とする。これにより、浮沈式重力アンカー38は海域Sにおける水面50に浮上し、復原性を持った状態で曳航できるようになる。浮沈式重力アンカー38が水面50に浮上していることで、支持体32が設けられた浮力タンク34も余剰浮力で浮き上がり、復原性を持った状態で曳航できるようになる(図4(a))。
【0043】
このように浮沈式重力アンカー38及び浮力タンク34を水上に浮かべた状態で、支持体32が設けられた浮力タンク34と浮沈式重力アンカー38とを、監視計測塔30を設置する設置場所である現場まで曳航する。本実施形態の監視計測塔30では、浮力タンク34及び浮沈式重力アンカー38は、上述のようにそれ自体が浮体構造物として扱うことができるため、これらを運搬する際に運搬用バージやクレーン船は不要である。
【0044】
図4(a)には、浮力タンク34と浮沈式重力アンカー38とをテンドン36で接続した状態で曳航する例を示している。ただし、浮力タンク34と浮沈式重力アンカー38とは、テンドン36で接続された状態で曳航してもよいし、現場まで搬送した後にテンドン36で接続するようにしてもよい。
【0045】
支持体32が設けられた浮力タンク34と浮沈式重力アンカー38とを現場まで運搬した後、浮沈式重力アンカー38の浮沈用タンク42に注水し、浮沈式重力アンカー38を水底(海底)に沈下させる。浮力タンク34は、テンドン36を介して浮沈式重力アンカー38によって水中に引き込まれ、浮力タンク34の浮力と浮沈式重力アンカー38の重力とによってテンドン36が緊張した状態で、テンドン36の長さに応じた所定の深さの水中に係留される(図4(b))。
【0046】
浮力タンク34を係留する深さはテンドン36の長さによって調整することができ、水深によらずに監視計測塔30を設置することが可能となる。したがって、本方法によれば、監視計測塔30の設置場所の選択の自由度を広げることができる。
【0047】
このようにして海域Sにおける所望の場所に、緊張係留型の浮体構造物からなる監視計測塔30を設置する。
【0048】
本実施形態による監視計測塔の設置方法は、支持体32が設けられた浮力タンク34と浮沈式重力アンカー38とを運搬する際に、前述のように、運搬用バージやクレーン船を必要としない。つまり、監視計測塔30の設置にあたり大型作業船は不要であり、監視計測塔30の運搬費用を大幅に削減することができる。また、監視計測塔30は浮体構造物であるため、水深によらずに設置が可能であるとともに工事費用も安価ですむ。
【0049】
したがって、本実施形態による監視計測塔の設置方法によれば、海底に固定された監視計測塔を建設する監視計測システムと比較して、設置コストを大幅に削減することができる。また、本実施形態による監視計測塔の設置方法によれば、高い自由度で監視計測塔30の設置場所を選択することができる。したがって、本実施形態によれば、監視装置や計測装置を搭載したブイを用いる監視計測システムや、海底に固定された監視計測塔を用いる監視計測システムと比較して、海域における監視対象領域を高い自由度で設定することができる。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、海域Sに監視計測塔30を設置する監視計測システムを例にして説明したが、監視計測塔30の設置場所は必ずしも海域である必要はない。例えば、湖沼や河川等の水域に監視計測塔30を設置する監視計測システムにおいても同様に適用可能である。
【0051】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…監視計測システム
20…制御室
30…監視計測塔
32…支持体
34…浮力タンク
36…テンドン
38…浮沈式重力アンカー
40…アンカー
42…浮沈用タンク
44…監視計測部
図1
図2
図3
図4