(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】二次電池および電源システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20220201BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220201BHJP
H01M 10/12 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
H01M10/12 M
(21)【出願番号】P 2017174699
(22)【出願日】2017-09-12
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 康平
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118090(JP,A)
【文献】特開2014-135133(JP,A)
【文献】特開2010-073558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0250478(US,A1)
【文献】国際公開第2012/077160(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/016152(WO,A1)
【文献】特開2016-031894(JP,A)
【文献】特開2013-247003(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 50/543
H01M 10/04
H01M 10/12
H01M 50/50
H01M 50/528
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセル室を有する電槽と、
各々の前記セル室内に
それぞれ配設され水系電解液に浸潤された電極群と、
各々の前記セル室内にそれぞれ配設され、前記電解液の電位を参照するための参照極と、
前記電極群間を接続する導電部材と、
を備え、
各々の前記参照極に
それぞれ接続された参照端子と、
前記導電部材に接続され、前記電極群を構成する正極および負極の電位を検出するための検出端子と、
を前記電槽外に有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記電槽の開口が電池蓋で覆われており、前記電池蓋上に前記参照端子および前記検出端子が露出したことを特徴とする請求項
1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電池蓋には、各々の前記セル室で水の電気分解によって発生した酸素及び水素の少なくとも一方を排出するベント栓が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記検出端子は前記導電部材のうち少なくとも二つの導電部材からそれぞれ前記電槽外に導出されたことを特徴とする請求項
1ないし請求項3
のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記参照極の一側端が、前記電極群を構成するセパレータの上方、かつ、最低液面線の下方に位置付けられたことを特徴とする請求項
1ないし請求項4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記参照端子および前記検出端子の電位を集結するためのコネクタを前記電池蓋上に設けたことを特徴とする
請求項2を引用する請求項4または
請求項2を引用する請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
請求項
1ないし請求項6のいずれか一項に記載の二次電池と、
前記参照端子および前記検出端子に接続され、前記電池の電池状態を検知する状態検知装置と、
を備え、
前記状態検知装置は、前記参照端子の電位と前記検出端子の電位とから前記正極および負極の電位を検出することを特徴とする電源システム。
【請求項8】
前記状態検知装置は、前記電池の放電時に、前記正極および負極の電位を検出することを特徴とする請求項7に記載の電源システム。
【請求項9】
前記状態検知装置は、前記検出した正極および負極の電位に基づいて前記電池の劣化判定を行うことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電源システム。
【請求項10】
前記状態検知装置は、前記正極の電位の絶対値と前記負極の電位の絶対値とを加算することで得られるセル電圧と、前記正極および負極の電位のうち少なくとも正極の電位とに基づいて前記電池が劣化したか否かを判定することを特徴とする請求項9に記載の電源システム。
【請求項11】
前記状態検知装置は、前記正極の電位の絶対値と前記負極の電位の絶対値とを加算することで得られるセル電圧と、前記正極の電位の絶対値を前記負極の電位の絶対値で割ることで表される電位比とから前記電池を構成する少なくとも一つのセルが劣化したか否かを判断し、この判断結果に応じて前記電池が劣化したか否かを判定することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池および電源システムに係り、特に、電池容器と電解液に浸潤された電極群とを備えた二次電池、並びに、該二次電池と該二次電池の電池状態を検知する状態検知装置とを備えた電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は移動体(例えば、自動車)用電源や据え置き用電源として現在広く用いられている。二次電池は、一般に、電池容器と、電解液に浸潤された電極群と、正負極出力部を備えている。このような二次電池には水系のものや非水系のものが含まれ、水系の鉛(蓄)電池はその代表的電池である。
【0003】
ところで、近年、エンジン自動車による排ガスに対処するため、普通ガソリン車等においてアイドリングストップの励行が推奨されており、アイドリングストップ・システム機能を有する自動車(以下、ISS車という。)も徐々に増加している。ISS車は、車両停止時にエンジンを停止し、その間の電装機器等の補機への電力供給はすべて二次電池で賄い、アイドリングストップ後のスタート時にも二次電池に蓄電された電力でスタータ(セルモータ)を駆動してエンジンを再始動させる。
【0004】
アイドリングストップの際には、いわゆるエンストを防止するために、二次電池の電力でスタータを駆動させエンジンを再始動できるかを高精度に判断する。状態検知装置(コントローラ)はそのような判断を行う際の基礎となる二次電池の状態を検知する。エンジン再始動の可否判断は車両側の制御部(ECU)で行われるため、状態検知装置は検知ないし算出した電池の状態情報をECUに報知する。
【0005】
従来、車載用電池は、電池全体の電圧や内部抵抗によって得られたパラメータに基づいて劣化判定がなされている。例えば、特許文献1~3に開示されているように、状態検知装置により、充放電休止時のOCVからSOCが算出され、エンジン始動時の電圧と電流から内部抵抗やSOHが算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-264371号公報
【文献】特許第5162971号
【文献】特許第3188100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の劣化判定技術では二次電池全体の電圧や内部抵抗(SOH)に基づいて判定していたため、精度面での誤差から安全幅を比較的広くとる必要があった。例えば、上述した鉛電池では、電池が劣化した際、その度合いが電池全体の内部抵抗(SOH)に反映されるモード(例えば、エンジン始動時の大電流放電による劣化や、これとは逆に微小電流放電によるサルフェーション等の劣化モード)と、反映されにくいモード(例えば、極板の泥状化等による劣化モード)とがあり、電池全体の電圧や内部抵抗(SOH)だけでは電池の劣化状態を正確に判断しにくい。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、劣化判定を正確に行うことができる二次電池、並びに、該二次と該二次電池の電池状態を検知する状態検知装置とを備えた電源システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、二次電池であって、電池容器と、電解液に浸潤された電極群と、前記電解液の電位を参照するための参照極と、を備え、前記参照極に接続された参照端子を前記容器外に有することを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、二次電池であって、複数のセル室を有する電槽と、前記セル室内に配設され水系電解液に浸潤された電極群と、前記電解液の電位を参照するための参照極と、前記電極群間を接続する導電部材と、を備え、前記参照極に接続された参照端子と、前記導電部材に接続され、前記電極群を構成する正極および負極の電位を検出するための検出端子と、を前記電槽外に有することを特徴とする。
【0011】
第2の態様において、電槽の開口が電池蓋で覆われており、電池蓋上に参照端子および検出端子が露出していてもよい。さらに、参照端子はセル室のうち少なくとも一つのセル室内に配された参照極から電槽外に導出され、検出端子は導電部材のうち少なくとも二つの導電部材からそれぞれ電槽外に導出されていてもよい。
【0012】
また、参照極の一側端が、電極群を構成するセパレータの上方、かつ、最低液面線の下方に位置付けられていてもよい。さらに、参照端子および検出端子の電位を集結するためのコネクタを電池蓋上に設けられていてもよい。
【0013】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様は、電源システムであって、第2の態様の二次電池と、前記参照端子および前記検出端子に接続され、前記電池の電池状態を検知する状態検知装置と、を備え、前記状態検知装置は、前記参照端子の電位と前記検出端子の電位とから前記正極および負極の電位を検出することを特徴とする。
【0014】
第3の態様において、状態検知装置は、電池の放電時に、正極および負極の電位を検出するようにしてもよい。また、状態検知装置は、検出した正極および負極の電位に基づいて電池の劣化判定を行うようにしてもよい。このとき、状態検知装置は、正極の電位の絶対値と負極の電位の絶対値とを加算することで得られるセル電圧と、正極および負極の電位のうち少なくとも正極の電位とに基づいて電池が劣化したか否かを判定するようにしてもよい。また、状態検知装置は、正極の電位の絶対値と負極の電位の絶対値とを加算することで得られるセル電圧と、正極の電位の絶対値を負極の電位の絶対値で割ることで表される電位比とから電池を構成する少なくとも一つのセルが劣化したか否かを判断し、この判断結果に応じて電池が劣化したか否かを判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、参照端子の電位を基準にセルレベルでの正極および負極の電位を検出して劣化判定を行うことができるので、総電圧や内部抵抗(SOH)に反映されづらいモードでセルに劣化が進行していても、二次電池の劣化判定を正確に行うことができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明が適用可能な実施形態の電源システムを構成する鉛電池の斜視図である。
【
図2】実施形態の電源システムを構成する状態検知装置の斜視図である。
【
図3】実施形態の電源システムの上部斜視図である。
【
図4】セル1に設けられた参照極を模式的に示す斜視図である。
【
図6】検出端子の導出位置およびコネクタの接続系統を示す回路図である。
【
図8】状態検知装置を構成する電圧検出回路の詳細を示すブロック回路図である。
【
図9】状態検知装置を構成する制御部のMPUのCPUが実行する劣化判定処理ルーチンのフローチャートである。
【
図10】劣化判定処理の全体像を示す説明図である。
【
図11】縦軸に電圧、横軸に時間をとったときの泥状化等によるセルレベルでの劣化を模式的に示す説明図であり、(A)はセルの正極が劣化した場合、(B)はセルの負極が劣化した場合、(C)はセルの正負極がともに劣化した場合を示す。
【
図12】劣化判断マップを模式的に示す説明図である。
【
図13】他の実施形態の状態検知装置を構成する電圧検出回路の詳細を示すブロック回路図である。
【
図14】別の実施形態の状態検知装置を構成する制御部のMPUのCPUが実行する劣化判定処理ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明をISS車に搭載可能な14V系電源システムに適用した実施の形態について説明する。
【0018】
I.構成
図1~
図3に示すように、本実施形態の電源システム30は、鉛電池1と状態検知装置20とを有して構成されている。なお、電源システム30は、状態検知装置20が鉛電池1の電池蓋3上に配され鉛電池1と一体化しており、例えば、ISS車のエンジンルームに搭載されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
1.鉛電池1
(1)基本的構成
図1に示すように、鉛電池1は、内部を仕切る隔壁によって6個のセル室が画定された角型モノブロック電槽2を有している。モノブロック電槽2の材質には、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)等の高分子樹脂やエボナイト等のゴムを選択することができる。モノブロック電槽2の側面には鉛電池1の温度を検出するサーミスタ等の温度センサ38(
図7参照)が固着している。
【0020】
モノブロック電槽2の上部開口は厚板状の電池蓋3に接着ないし融着されることで、モノブロック電槽2は電池蓋3で一体に覆われ、各セル室は密閉化されている。電池蓋3にはPE等の高分子樹脂を選択することができる。
【0021】
電池蓋3の中央部には、各セル室で水の電気分解によって発生した酸素や水素を排出するベント栓8が設けられている。ベント栓8の通気孔には電解液の飛散や引火を防止するためのフィルタが配されている。ベント栓8は、発生した酸素を逃がし触媒で水素のみを吸着して放電時に空気中の酸素を利用し水素を元の水に戻すいわゆる触媒栓であってもよい。
【0022】
各セル室には複数の正極板(本例では7枚)と負極板(本例では8枚)とをセパレータ(本例では14枚)を介して積層した電極群10(
図4参照)が1組ずつ収容されており、電極群10は水系電解液の希硫酸(不図示)に浸潤されている。つまり、各セルは各セル室内において電極群10が電解液に浸潤されることで構成されている。以下、便宜上、鉛電池1を構成する各セルを、最高電位のセルから最低電位のセルまでそれぞれセル1、セル2、・・・、セル6という(
図6も参照)。
【0023】
図4に示すように、電極群10を構成する負極板は矩形状を呈しており、一側から上方に延設された耳部を有する負極格子体(負極集電体)とこの負極格子体に塗着された負極活物質とで構成されている。また、正極板も同様に矩形状を呈しており、一側から上方に延設された耳部を有する正極格子体(正極集電体)とこの正極格子体に塗着された正極活物質とで構成されている。正極活物質には二酸化鉛、負極活物質には海綿状鉛を用いることができる。セパレータには正負極板より若干大きめのサイズの微多孔膜が用いられている。なお、例示した平面状セパレータに代えて、負極を、例えば両側および底が閉じた袋状セパレータで覆うようにしてもよい。
【0024】
各正極板の耳部は正極ストラップ9Aに溶接されており、各正極板および各セパレータは正極ストラップ9Aに支持されている。同様に、各負極板の耳部も負極ストラップ9Bに溶接されており、各負極板および各セパレータは負極ストラップ9Bに支持されている。
【0025】
セル1の正極ストラップ9Aには極柱7が立設されており、正極外部端子4(
図1参照)に機械的、電気的に接続されることで、正極ストラップ9Aは上部側から(電池蓋3により)支持されている。
【0026】
一方、セル1の負極ストラップ9Bには、セル2の電極群10を構成する異極(正極)と接続するための導電部材11が立設されている。導電部材11は水平方向に屈曲しており、この水平部がモノブロック電槽2の隔壁を貫通するとともに隔壁に支持されることで負極ストラップ9Bも上方から支持されている。導電部材11はさらに垂直方向(下方)に屈曲することでセル2の正極ストラップ9Aに接続されている(
図6も参照)。
【0027】
セル2~セル6も同様に構成されている。
図6に示すように、セル2の負極およびセル3の正極、セル3の負極およびセル4の正極、セル4の負極およびセル5の正極、セル5の負極およびセル6の正極も導電部材11で接続されている。最低電位のセル6の負極ストラップ9Bにも、最高電位のセル1と同様に、極柱が立設されており、負極外部端子5(
図1参照)に機械的、電気的に接続されることで、セル6の負極ストラップ9Bも上部側から支持されている。
【0028】
なお、正極外部端子4および負極外部端子5が電池蓋3を貫通する部分には、電解液の液漏れを防止するために、図示を省略したブッシュおよびシール材が配されている。また、各セル室の内底面からは複数のライン状突起(くら)が電極群10に向けて突設されており、これらのライン状突起間が正負極板から剥離・離脱した活物質が沈殿するスペースとされている。
【0029】
鉛電池1の公称電圧は12[V](各セルの公称電圧:2[V])であり、鉛電池1の容量は、例えば、30~70Ahとすることができるが(本実施形態では48Ah)、本発明はこれに制限されるものではない。
【0030】
(2)特色的構成
a)参照端子RT
鉛電池1の特色の一つは、
図1に示すように、電池蓋3上に電解液の電位を検出するための参照端子RTを有することである。参照端子RTは各セルに対応して設けられており、以下では便宜上、セル1~セル6に対応して設けられた参照端子RTを、それぞれ参照端子RT1、RT2、・・・、RT6という(
図8も参照)。
【0031】
図4は、セル1に設けられ電解液の電位を参照するための参照極6を模式的に示す斜視図である。参照極6はベント栓8との位置抵触を避けてセル室の略中央部に配置されている。参照極6の下端は、電極群10を構成するセパレータの上方、かつ、最低液面線(lower level)の下方に位置付けられている。このため、参照極6の下端部は電極群10と接触することなく電解液に浸漬されている。
【0032】
図5に示すように、参照極6はカロメル電極(calomel electrode)として構成されている。すなわち、参照極6は耐薬品性のポリオレフィン系樹脂で形成された支持管6A内で内部溶液6C(例えばHg
2SO
4)に浸漬された内部電極6Bを有しており、内部電極6Bは真鍮製のリード部材6Fに接続されている。参照極6は支持管6Aの最下端中央部に液絡部6Eを有しており、液絡部6Eの材質には多孔性セラミックが用いられている。リード部材6Fは、その基部が支持管6Aの上部を密閉する電極キャップ6D内に埋設されており、フェラルを有し電極キャップ6Dの上端面側から上方に突出した突出部を有している。
【0033】
一方、
図4に示すように、参照端子RTはフランジ部を有しており、さらにその上部の端子部が縮径されネジが螺設されている。また、フランジ部の下部の接続部も端子部と同様に縮径されており(不図示)、接続部には底側からフランジ部を介して端子部に向けて参照極6のリード部材6Fの突出部と嵌合する嵌合孔が形成されている。参照端子RT1~RT6の材質には真鍮(Cu-Zn合金)が用いられている。
図4は参照端子RT1と参照極6とが嵌合した状態を示している。従って、
図1に示すように、参照端子RTのフランジ部の下面が電池蓋3の上面に当接することで(参照端子RT1が電池蓋3上に露出することで)、参照極6は電池蓋3に支持されている。なお、参照端子RTが電池蓋3を貫通する部分には、上述した正負極外部端子と同様に、ブッシュおよびシール材が配されている。また、セル2~セル6でも同様の構成が採られている。
【0034】
b)検出端子DT
鉛電池1の他の特色は、
図1に示すように、電池蓋3上に上述した参照端子RTの電位を基準として電極群10を構成する正極および負極の電位を検出するための検出端子DTを有することである。
【0035】
図4に破線で示すように、導電部材11の水平部からは検出端子DTに接続するための接続部材18が上方に導出されている。接続部材18の材質には、上述した格子体、ストラップ9A、9B、導電部材11等と同様に、鉛(Pb)と錫(Sn)やアンチモン(Sb)との合金等が用いられる。接続部材18の上端部には断面矩形状の溝孔が形成されている。なお、接続部材18は、モノブロック電槽2の隔壁の位置を避けるため、セル1およびセル2内の導電部材11のいずれかから導出されている(本実施形態ではセル2内の導電部材11の水平部から導出されている。)。接続部材18には導電部材11と同じ材質が用いられている。
【0036】
同様に、セル2の負極およびセル3の正極間、セル3の負極およびセル4の正極間、セル4の負極およびセル5の正極間、セル5の負極およびセル6の正極間を接続する導電部材11の水平部からも接続部材18が上方に導出されている(
図6も参照)。
【0037】
図1および
図6に示すように、電池蓋3には、正極外部端子4および負極外部端子5が立設された側の電池蓋3の長辺に沿って配置された2つの検出端子DT2、DT4、およびこの長辺とは反対側の長辺に沿って配置された3つの検出端子DT1、DT3、DT5が立設されている。検出端子DT1~DT5は、参照端子RT1~RT6と同様に、フランジ部と端子部とを有しており、電池蓋3上に露出している。
【0038】
検出端子DT1~DT5が電池蓋3を貫通する部分には、上述した正負極外部端子と同様に、ブッシュおよびシール材が配されている。また、検出端子DT1~DT5のフランジ部の下部側には断面矩形状の突起が設けられており、これらの突起がそれぞれ各接続部材18の上端部に形成された溝孔に圧入されることで検出端子DT1~DT5と各接続部材18とは機械的、電気的に接続されている。
【0039】
c)コネクタ15~17
また、鉛電池1の別の特色は、電池蓋3上に、参照端子RT1~RT6、検出端子DT1~DT5の電位を集結するためのコネクタを有することである。
【0040】
図1に示すように、コネクタ15はフレキシブル基板12上に実装されており、6Pオスコネクタが用いられている。フレキシブル基板12からは、リード線を介して板バネ機能を有する6つのリング状部材が導出されている。リング状部材はそれぞれ参照端子RT1~RT6に挿通されており、ワッシャを介してナットによるネジ締結で参照端子RT1~RT6に固定されている。フレキシブル基板12の電池蓋3に面する側には配線がプリントされており、この配線がコネクタ15に集結されている。
【0041】
同様に、コネクタ16、17もフレキシブル基板13、14上に実装されており、
図1および
図6に示すように、それぞれ3Pオスコネクタ、2Pオスコネクタが用いられている。フレキシブル基板16からはリード線を介して板バネ機能を有する3つのリング状部材が導出されており、フレキシブル基板17からもリード線を介して板バネ機能を有する2つのリング状部材が導出されている。
【0042】
フレキシブル基板16に接続された3つのリング状部材はそれぞれ検出端子DT1、DT3、DT5に挿通されており、フレキシブル基板17に接続された2つのリング状部材もそれぞれ検出端子DT2、DT4に挿通されている。各リング状部材はワッシャを介してナットによるネジ締結で検出端子DT1~DT5にそれぞれ固定されている。フレキシブル基板13、14の電池蓋3に面する側には配線がプリントされており、この配線がそれぞれコネクタ16、17に集結されている。
【0043】
フレキシブル基板12~14にはそれぞれ複数箇所に位置決め穴が形成されており、電池蓋3から上方に突出形成された複数の突起にこれらの位置決め穴が挿通された後突起が溶融されることで、フレキシブル基板12~14は電池蓋3に固定されている。
【0044】
以上を纏めると、
図1に示すように、鉛電池1の電池蓋3上には、正極外部端子4および負極外部端子5が立設された側の電池蓋3の長辺から反対側の長辺に向かって、検出端子DTの一部(検出端子DT2、DT4)、コネクタ17が実装されたフレキシブル基板14、ベント栓8、参照端子RT(RT1~RT6)、コネクタ15が実装されたフレキシブル基板12、コネクタ16が実装されたフレキシブル基板13、検出端子DTの一部(検出端子DT1、DT3、DT5)の順で配設されている。
【0045】
2.状態検知装置20
(1)外部構成
図2に示すように、状態検知装置20は細長矩形状の樹脂製ケーシング21を有している。状態検知装置20はフレキシブル基板14とベント栓8との間に配置されており、下側に形成された3つの矩形状脚部の裏面に接着剤が塗着されることで電池蓋3に固定されている。
【0046】
ケーシング21からは、薄板状のリード部材と板バネ機能を有するリング状部材とが一体となった正極接続部22、負極接続部23が、ケーシング21の長手方向に沿ってそれぞれ反対側に導出されている。正極接続部22のリング状部材は鉛電池1の正極外部端子4に挿通されており、負極接続部23のリング状部材は負極外部端子4に挿通されている。
【0047】
また、ケーシング21の長手方向の略中央部からは、接続線を介してコネクタ27が導出されている。さらに、ケーシング21のコネクタ27が導出された反対側からは、それぞれ接続線を介してコネクタ25、26が導出されている。コネクタ25~27には、それぞれ6Pメスコネクタ、3Pメスコネクタ、2Pメスコネクタが用いられている。(メス)コネクタ25~27は電池蓋3上に配された(オス)コネクタ15~17にそれぞれ接続されている。
【0048】
(2)内部構成
図7に示すように、状態検知装置20は、ケーシング21内に、電流検出回路35、温度検出回路36、電圧検出回路34および制御部33を有している。
【0049】
a)電流検出回路35
電流検出回路35はホール素子やシャント抵抗等の電流センサ37に接続されており、差動増幅回路およびA/Dコンバータを有して構成されている。電流検出回路35は、所定時間(例えば、2[ms])ごとに鉛電池1に流れる充放電電流をサンプリングして制御部33に出力する。なお、電流検出回路35には公知の回路を用いることができる。
【0050】
b)温度検出回路36
温度検出回路36は上述した温度センサ38に接続されており、差動増幅回路およびA/Dコンバータを有して構成されている。温度検出回路36は、所定時間(例えば、10[ms])ごとに鉛電池1の温度をサンプリングして制御部33に出力する。温度検出回路36にも公知の回路を用いることができる。
【0051】
c)電圧検出回路34
図7および
図8に示すように、電圧検出回路34は、正極接続部22を介して正極外部端子4、負極接続部23を介して負極外部端子5に接続されている。また、コネクタ25を介して参照端子RT1~RT6に、コネクタ26、27を介して検出端子DT1~DT5にそれぞれ接続されている。さらに、電圧検出回路34は制御部33(の入出力ポート)に接続されている。
【0052】
図8に示すように、電圧検出回路34は、差動増幅回路41、A/Dコンバータ42、マルチプレクサ43、ロジック回路44、差動増幅回路45およびA/Dコンバータ46を有して構成されている。
【0053】
A/Dコンバータ42は図示を省略した高精度の基準電圧回路を有しており、OPアンプを有して構成された差動増幅回路41から出力される鉛電池1の総電圧を、所定時間(例えば、2[ms])ごとにサンプリングして制御部33に出力する。
【0054】
マルチプレクサ43は、検出対象の参照端子RTに接続された複数(本実施形態では6つ)の端子、並びに、検出端子DT、正極外部端子4および負極外部端子5に接続された複数(本実施形態では7つ)の端子からそれぞれ1つの端子を選択する。例えば、セル1正極の電位を検出するときは参照端子DT1に接続された端子および正極外部端子4に接続された端子を選択し、セル4負極の電位を検出するときは参照端子RT4に接続された端子および検出端子DT4に接続された端子を選択する(
図6も参照)。
【0055】
差動増幅回路45は、参照端子RTの電位を基準として検出対象の正極電位(の大きさ)を拡大するためのOPアンプと、参照端子RTの電位を基準として検出対象の負極電位(の大きさ)を拡大するためのOPアンプとの2つのOPアンプを有して構成されている。A/Dコンバータ46は図示を省略した高精度の基準電圧回路(本実施形態では3.3V)を有しており、差動増幅回路45から出力される検出対象の電位をサンプリングして制御部33に出力する。
【0056】
ロジック回路44は、制御部33の指示により、予め定められた所定順序に従ってマルチプレクサ43に検出対象の端子を選択させる。制御部33は、鉛電池1の放電時に(本実施形態ではISS車のアイドリングストップ時に)、ロジック回路44に各セルの正極および負極電位の検出指示を発出する。ロジック回路44は、この検出指示を受けると、マルチプレクサ43に検出対象の端子を上記所定順序に従って選択させる。これにより、参照端子RTの電位を基準として鉛電池1を構成する全セルの正極および負極電位が差動増幅回路45に順次入力される。
【0057】
また、ロジック回路44は、制御部33から検出指示を受けると、上記所定順序に従って、差動増幅回路45の2つのOPアンプのうちいずれのOPアンプに入力させるか(正極電位を検出するのか負極電位を検出するのか)を差動増幅回路45に指示する。
【0058】
さらに、ロジック回路44はA/Dコンバータ42のサンプリングタイミングを監視しており、マルチプレクサ43に正極外部端子4、負極外部端子5を選択させる(セル1正極電位、セル6負極電位を検出する)際に、差動増幅回路45の内部回路が差動増幅回路41内の内部回路に干渉することによって生じるA/Dコンバータ42からの誤ったデジタル値の出力を防止するために、マルチプレクサ43に対し、A/Dコンバータ42のサンプリング中は正極外部端子4、負極外部端子5に接続された端子を選択しないように、すなわち、A/Dコンバータ42のサンプリングタイミングを外して(サンプリング後に)正極外部端子4、負極外部端子5に接続された端子を選択させる。
【0059】
d)制御部33
制御部33は、マイクロプロセッシングユニット(以下、MPUという。)、通信IC、I/O、入出力ポートを有して構成されている。
【0060】
MPUは、鉛電池1の電池状態を把握するとともに鉛電池1の劣化判定を行うCPU(以下、単にCPUという。)、基本制御プログラムおよびプログラムデータを記憶したROM(以下、単にROMという。)、CPUのワークエリアとして働くとともに種々のデータを一時的に記憶するRAM(以下、単にRAMという。)およびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0061】
内部バスは外部バスに接続されており、外部バスには入出力ポートを介して上述した電流検出回路35、温度検出回路36および電圧検出回路34が接続されている。また、外部バスにはISS車の制御部(以下、ECUという。)と通信するための通信ICが接続されている。通信ICはI/O介して通信線50(
図7参照)に接続されている。
【0062】
通信線50はECUによるCAN(Controller Area Network)管理下にある。CANはISO11898、ISO11519等で標準化されており、2本の線で構成され、一方が断線した場合でも他方で制御部33との通信が可能である。なお、本実施形態では状態検知装置20の作動電力は鉛電池1から供給される。
【0063】
3.電源システム30
図3に示すように、電源システム30(鉛電池1)の上部は樹脂製の化粧カバー31で覆われており、正負極外部端子およびベント栓8が上方に突出する箇所には開口が形成されている。電池蓋3上には化粧カバー31と係合する爪部材、化粧カバー31には受部材がそれぞれ設けられており、両者が嵌合することで化粧カバー31が鉛電池1上部に着脱可能に固定される構成が採られている。
【0064】
II.動作
次に、本実施形態の電源システム30の動作について、状態検知装置20の制御部33の動作を中心に説明する。以下では、制御部33の動作把握を容易にするために、車載された状態での電源システム30について説明するとともに、適宜、ISS車(以下、車両ともいう。)側の構成、機能等についても言及する。なお、
図7に示すように、鉛電池1の正極外部端子4はISS車のイグニッションスイッチ(以下、IGNという。)の中央端子に接続されており、負極外部端子5はISS車のシャーシと同電位のグランド(GND)に接続されている。
【0065】
1.充放電休止時(車両駐車時)
充放電休止時(車両駐車時)における制御部33の主要動作は基準SOCを算出することであるが、詳しくは以下のとおりである。
【0066】
車両走行後の車両駐車開始時には、ドライバによりIGNがON/ACC位置からOFF位置に位置付けられ、イグニッションキーがIGNから引き抜かれる。ECUはIGNを監視しており、IGNがOFF位置に位置付けられると、通信線50を介して制御部33にスリープ指令(省エネモードとする指令)を発出する。
【0067】
ECUからスリープ指令を受けた制御部33(状態検知装置20)は、鉛電池1の電池状態(詳細後述)の検知を停止するとともに、所定時間ごとにECUに出力していた鉛電池1の状態情報(詳細後述)の出力を停止して、スリープ指令を受けたときから一定時間が経過したか否かを判断する計時処理のみ行う。この一定時間は、例えば、鉛電池1の負極の分極状態が解消したとみなされる6時間に設定することができる。
【0068】
制御部33は、スリープ指令を受けたときから一定時間が経過したと判断すると、作動モードに移行(アウェーク)し鉛電池1の開回路電圧(以下、OCVという。)およびそのときの温度を検出する。次に、検出した鉛電池1のOCVを基準温度(例えば、室温)におけるOCVに温度補正し、プログラムデータとして予めROMに格納されRAMに展開されたOCVと充電状態(以下、SOCという。)との関係を表すテーブルまたは数式を参照して鉛電池1のSOC(基準温度におけるSOC)を算出(演算)する。
【0069】
続いて、SOCと健康状態(以下、SOHという。)との関係を予め定めたテーブルや数式等を参照して、鉛電池1のSOCを直近のSOH(下記2(1)b)、2(2)c)参照)に応じて補正した基準SOCを算出する。なお、上述した一定時間が経過しない場合には、鉛電池1の分極状態が解消されず基準SOCが不正確となるため、そのような状態でのOCVの検出や基準SOCの算出は行わず、直近に算出していた基準SOCを基準SOCとして取り扱う。
【0070】
そして、制御部33は、基準温度におけるOCVおよび基準SOCをECUに報知して省エネモードとなる。つまり、制御部33は、OCVおよび温度の検出時、基準SOCの算出時およびECUへの報知時のみ作動状態(作動モード)となる。このような動作は、充放電休止時に上述した一定時間ごとに繰り返される。なお、車両走行後にIGNがOFF位置に位置付けられたときはECUも所定の処理(データ保存等)を行ってスリープ状態となり、制御部33からの報知を受ける際のみ作動状態となる。
【0071】
2.充放電時(車両走行前および車両走行時)
充放電時(車両走行前および走行時)における制御部33の主要動作は、鉛電池1の電池状態の検知、現在の鉛電池1のSOCの把握、鉛電池1のSOHの把握および更新、鉛電池1の劣化判定、並びに、鉛電池1の状態情報および劣化判定結果のECUへの報知である。以下、詳述する。
【0072】
(1)車両走行前
車両駐車後の車両走行前には、ドライバによりIGNにイグニッションキーが挿入され、IGNはOFF位置からON/ACC位置に位置付けられ、さらにON/ACC位置からSTART位置に位置付けられた後、再度ON/ACC位置に位置付けられる。ECUはイグニッションキーが挿入されたときに、その旨を制御部33に報知する。この報知を受けると、状態検知装置20は省エネモータから作動モードへ移行する。
【0073】
a)エンジン始動前
充放電時に、制御部33は、所定時間ごとに(上述したように、電圧および電流については2[ms]ごとに、温度については10[ms]ごとに)、鉛電池1の電池状態を検知する。すなわち、電圧検出回路34で検出した鉛電池1の(総)電圧、電流検出回路35で検出した鉛電池1に流れる電流および温度検出回路36で検出した鉛電池1の温度の値をRAMに格納する。
【0074】
次に、RAMに格納した温度値に応じて、鉛電池1の電圧および鉛電池1に流れる電流の値を上述した基準温度における値に温度補正する。次いで、温度補正後の鉛電池1に流れる電流値を所定時間(例えば、2[ms])ごとに積算することで鉛電池1に流れた充放電電流量の総和を把握し、充放電休止時に予め算出しておいた基準SOCおよび鉛電池1の容量(既知)から鉛電池1の直近のSOCを算出する。
【0075】
そして、制御部33は、充放電時に、鉛電池1の状態情報として、上記算出した直近の温度補正後の電圧値およびSOCを所定時間(例えば、2[ms])ごとにECUに報知する。これに代えて、温度補正後の電圧値および鉛電池1に流れる電流値を所定時間ごとにECUに報知し、ECUが鉛電池1の直近のSOCを算出するようにしてもよい。
【0076】
なお、制御部33による上記鉛電池1の電池状態の検知、現在の鉛電池1のSOCの把握(算出)および鉛電池1の状態情報のECUへの報知は、充放電時を通じて(後述するエンジン始動時、通常走行時、アイドリングストップ時、アイドリングストップ・スタート時を含め)一貫して行われる。
【0077】
鉛電池1の状態情報の報知を受けたECUは、トライバの参考となるように、インストールメントパネルに電源システム30(鉛電池1)の状態を表示するようにしてもよい。例えば、直近のSOCに対応する鉛電池1の残存容量をレベルメータ等で表示するようにしてもよい。
【0078】
b)エンジン始動時
エンジン始動時における制御部33の主要動作はSOHを算出することである。エンジン始動時には、鉛電池1に蓄電された電力がIGNのSTART端子を介してスタータ(セルモータ)に供給されエンジンが始動する。その際、鉛電池1には例えば200[A]以上の大電流が流れる(高率放電がなされる)が、それに伴い鉛電池1の外部端子間電圧は大きく降下する。このときの電流および電圧変化は、スタータに電流が流れ始めた直後に、鋭いピーク状の大電流が流れ、同時に鉛電池1は鋭い谷状の電圧降下を示す。
【0079】
制御部33は、温度補正後の電圧値を順次参照して、例えば、15[ms]以内に1.5[V]以上の電圧降下があるか否かを判断し、肯定判断のときにはエンジン始動があったものとみなし、鉛電池1に流れる電流値および温度補正後の電圧値から最大電流値および最低電圧値を見出する。一方、否定判断のときにはエンジンは始動していないとみなす。
【0080】
エンジン始動時には、最大電流値をとるときに最低電圧値をとり、オームの法則が成立する。このオームの法則が成立するのは、最低電圧値および最大電流値をとるときの一瞬であり、それ以外のときには成立しない。最大電流値をIst、最低電圧値をVstとすると、鉛電池1の内部抵抗Riは、Ri=(Vst/Ist)で求めることができる。鉛電池1の内部抵抗RiとSOHとの間には密接な関係がある。ROMには内部抵抗RiとSOHとの関係を表すテーブルまたは数式が格納されておりRAMに展開されている。制御部33は、この関係を参照してエンジン始動時に鉛電池1の直近のSOHを算出しRAMに格納する。
【0081】
(2)車両走行時
a)通常走行時
上述したように、通常走行時に制御部33は、鉛電池1の電池状態の検知、現在の鉛電池1のSOCの把握および鉛電池1の状態情報のECUへの報知を行う。車両がインストールメントパネルに鉛電池1の状態を表示可能なタイプのものであれば、ドライバは表示された鉛電池1の状態を参照して、例えば、車両走行後、鉛電池1を所望のレベルとなるまで充電するようにしてもよい。
【0082】
b)アイドリングストップ時
ECUは、ブレーキ、速度、加速度等の車両状態並びに鉛電池1の状態情報を参照してアイドリングストップするか否かを判断する。アイドリングストップをすると判断したときは、通信線50を介してその旨を制御部33に報知するとともに、車両走行時にIGNがON/ACC位置に位置付けられていても(ドライバがIGNをOFF位置等への位置付けなくても)、車両が停止するとエンジンを停止させる。
【0083】
アイドリングストップ時には、鉛電池1から車両側の、例えば、ランプ、ライト、パワーウインド、エアコン、ファン、ラジオ、テレビ、CDプレーヤ、カーナビゲーション等の補機に放電される。制御部33は、このアイドリングストップ時に鉛電池1の劣化判定を行う。
【0084】
図10は、制御部33(CPU)が行う劣化判定処理の全体像を示したものである。制御部33はRAMに格納された鉛電池1の直近のSOHを参照して、SOHが第1の閾値T1(例えば、85%)を越えるときは鉛電池1が健康と判定し、SOHが第2の閾値T2(例えば、70%)未満のときは鉛電池1が劣化したと判定する。SOHが、第1の閾値T1と第2の閾値T2との範囲内にあるときは鉛電池1を構成する各セルの正極および負極電位を参照して鉛電池1が劣化したか否かを判定する。
【0085】
ここで、
図11を参照して、鉛電池1を構成するセル(電極群10)の正極および負極の劣化について説明する。鉛電池1全体の電圧やSOHにはセルレベルで進行する泥状化やデンドライト析出に起因する正負極板間の微小短絡等による劣化が反映されづらいため、本実施形態では、電解液の電位を基準とするセルの正負極電位を参照することで(鉛電池1全体よりもさらに細かなレベルで劣化状態を把握することで)そのようなSOHに反映されづらい劣化モードに対しても鉛電池1の状態を正確に把握する。なお、泥状化とは、充放電を繰り返すことで正負極の格子体(集電体)から活物質が剥離・離脱する現象をいう。
【0086】
図11(A)は正極劣化によりセル電圧が低下した場合を模式的に示したものである。セルに泥状化等が発生すると、放電時に正極電位は急速に卑方向に進む。正極電位の絶対値と負極電位の絶対値とを加えたものがセル電圧であり、セル内の電解液の電位を基準とするセルの正極電位を参照すれば、泥状化等による劣化が進行しているかを判断することができる。
【0087】
泥状化等によるセルの劣化は負極でも発生する。
図11(B)は負極劣化によりセル電圧が低下した場合を模式的に示したものである。この場合は、セル内の電解液の電位を基準とするセルの負極電位を参照すれば、泥状化等による劣化が進行しているかを判断することができる。さらに、泥状化等によるセルの劣化は正負両極でも同時に発生する。
図11(C)は両極劣化によりセル電圧が低下した場合を模式的に示したものである。従って、セル内の電解液の電位を基準とするセルの両極電位を参照すれば、泥状化等によるセルレベルでの劣化が進行しているかを正確に把握することができる。
【0088】
以上を踏まえ、フローチャートを参照し、CPUを主体として状態検知装置20で行われる劣化判定処理について説明する。
【0089】
図9に示すように、劣化判定処理ルーチンでは、CPUは、まず、ステップ(以下、「S」と略称する。)1において、ECUからアイドリングストップの報知を受けるまで待機する。報知を受けると(S1で肯定判断のときは)、RAMに格納された直近の鉛電池1のSOHを読み出す(S2)。
【0090】
次に、CPUはSOHが第2の閾値未満T2(
図10参照)か否かを判断し(S3)、肯定判断のときは鉛電池1が劣化した(要交換)と判定して(S4)、S14に進み、否定判断のときはSOHが第1の閾値T1(
図10参照)を越えるか否かを判断する(S5)。S5での判断が肯定のときは鉛電池1が健康と判定して(S10)、S14に進む。
【0091】
一方、S5での判断が否定のときは、鉛電池1を構成するセル1~セル6のそれぞれの電解液の電位を基準としてセル1~セル6の正極電位および負極電位を検出する(S6)。すなわち、ロジック回路44に全セルの正極および負極電位の検出指示を発出する。ロジック回路44は、上述したように、所定順序に従ってマルチプレクサ43に検出対象の端子を選択させるともに、差動増幅回路45にOPアンプの選択指示を行う。CPUは、所定順序に従ってA/Dコンバータ46から出力されたデジタル値を順次取り込む(RAMに格納する)ことによって、セル1~セル6の正極および負極電位を検出する。検出されたセル1~セル6の正極および負極電位は上述した基準温度での電位に温度補正される。
【0092】
次に、セル1~セル6のセル電圧Vを算出する(S7)。セル1~セル6のセル電圧Vは、温度補正されたこれらの各セルの正極電位の絶対値と負極電位の絶対値とをそれぞれ加算することで得られる。次いで、CPUは、S7で得られた各セルの電圧Vが予め定められた設定電圧V1(例えば、1.45[V])を越えるか否かを判断する(S8)。
【0093】
S8で肯定判断のときは、鉛電池1のSOHが第3の閾値T3(例えば、73%、
図10参照)を越えるか否かを判断し(S9)、その判断が肯定のときは鉛電池10が健康と判定して(S10)、S14に進み、その判断が否定のときは鉛電池10が近く交換を要すると判定して(S11)、S14に進む。なお、上述した第1~第3の閾値T1~T3は、例えば、SOH90%≧第1の閾値T1>第3の閾値T3>第2の閾値T2≧SOH60%の範囲で任意に設定することができる。
【0094】
一方、S8で否定判断のときは、各セルの電位比PRを算出する(S12)。すなわち、CPUは、(電位比PR)={(各セルの正極電位の絶対値)÷(各セルの負極電位の絶対値)}により、セル1~セル6に対応して電位比PR1~PR6を算出する。
【0095】
次のS13では、各セルについて、S7で算出したセル電圧Vと、S12で算出した電位比PRとを劣化判断マップに当てはめて、セルが健康か、劣化に近い状態(近く劣化)か、劣化したかを判断する。
【0096】
図12は、劣化判断マップを模式的に示したものである。劣化判断マップでは、上述した第1の閾値電圧V1、予め定められた第2の閾値電圧V2(例えば、1.35[V])、第3の閾値電圧V3(例えば、1.20[V])と、予め定められた第1の閾値電位比PR1(例えば、0.7)、第2の閾値電位比PR2(例えば、1.3)とで画定される領域ごとに、セルに対する判断内容が定められている。セル電圧が1.35[V]以上の領域では第1の閾値電位比PR1が0.7を切るか、または、第2の閾値電位比PR2が1.3を超えることがないため(正負極とも健康でないとセル電圧が1.35[V]以上にならない)、
図12ではこれらの領域に対する判断内容が記載されていない。実際の劣化判断マップは、予め多数の鉛電池1を構成するセルの正負極の劣化電圧を調査して作成されており、閾値電位比PR1、PR2は直線ではなく傾斜部を有する曲線となる。なお、劣化判断マップはテーブルや数式で構成されており、ROMに格納されRAMに展開されている。
【0097】
CPUは、上述したように各セルについて劣化判断マップに当てはめてセルが健康か、劣化に近い状態か、劣化したかを判断するが、セルごとに異なった判断結果となる場合がある。例えば、セル1~セル3、セル6は健康、セル4は劣化に近い状態、セル5は劣化したと判断したときには、S13において、劣化がより進行しているセル5の状態に従って、鉛電池1は劣化した(要交換)と判定し、セル3、セル4を除く他のセルは健康、セルセル3、セル4は劣化に近い状態と判断したときは、S13において、劣化が進行しているセル3、セル4の状態に従って、鉛電池1は近く交換を要すると判定する。
【0098】
そして、CPUは(S4、S10、S11、S13のいずれかでの)劣化判定結果(S13で鉛電池1が近く交換を要する、または、劣化したと判定した場合には併せて当該セルの電位比PR)をECUに報知して(S14)、劣化判定処理ルーチンを終了する。
【0099】
鉛電池1の劣化判定結果の報知を受けたECUは、電位比PRを知ることで、正負極の劣化状態が分かり鉛電池1の状態を正確に把握することができ、把握した状態に応じて電池制御を詳細に行うことができる。一般に正極の劣化度は負極に対して低いため、把握した状態に応じて例えば正極を酷使する制御に切り替えるようにしてもよい。また、ECUはインストールメントパネルに表示するようにしてもよい。例えば、鉛電池1のアイコンを、青(鉛電池1が健康と判定されたとき)、黄(鉛電池1が近く交換を要すると判定されたとき)、赤(鉛電池1が劣化したと判定されたとき)等で色分けして点灯させるようにしてもよい。
【0100】
c)アイドリングストップ・スタート時
ECUは、アイドリングストップ後アクセルが踏まれると、直ちにエンジンを再始動するように制御する。制御部33は、エンジン再始動時にも、上述したエンジン始動時と同様に、鉛電池1の内部抵抗Riの算出契機を得るため、鉛電池1の直近のSOHを更新することができる。
【0101】
III.作用効果等
1.作用効果
次に、本実施形態の電源システム30の作用効果等について説明する。
【0102】
(1)鉛電池1
本実施形態の電源システム30を構成する鉛電池1は、参照端子RT1~RT6、検出端子DT1~DT5および正極外部端子4、負極外部端子5が電池蓋3上に露出している。このため、参照端子RT1~RT6の電位を基準として検出端子DT1~DT5および正極外部端子4、負極外部端子5の電位、すなわち、鉛電池1を構成するセル1~セル6の正極および負極電位を検出することで(鉛電池1全体よりもさらに細かなレベルで電池状態を把握することで)、鉛電池1の総電圧や内部抵抗(SOH)に反映されづらい泥状化や正負極板間の微小短絡等によるセルレベルでの劣化に対しても鉛電池1の状態を正確に把握することができる。
【0103】
さらに、鉛電池1は、参照極6の一側端(下端)が、電極群10を構成するセパレータの上方、かつ、最低液面線の下方に位置付けられている。このため、参照極6を設けたことによるセル室延いては鉛電池1全体の大型化を防止することできる。
【0104】
また、鉛電池1は、参照端子RT1~RT6および検出端子DT1~DT5の電位を集結するためのコネクタ15~17を電池蓋3上に有している。このため、電源システム30の組立時に、鉛電池1と状態検知装置20(のコネクタ25~27)との接続を簡単に行うことができる。
【0105】
(2)状態検知装置20
本実施形態の電源システム30を構成する状態検知装置20は、コネクタ25~27を介して参照端子RT1~RT6および検出端子DT1~DT5に接続されている。このため、状態検知装置20は、参照端子RT1~RT6の電位と、検出端子DT1~DT5および正極外部端子4、負極外部端子5の電位とから各セル(電極群10)を構成する正極および負極電位を検出することができる(S6)。
【0106】
また、状態検知装置20は、検出した正負極の電位に基づいて各セルが劣化したか否かを判断し、その判断結果に従って鉛電池1が劣化したか否かを判定する(S13)。このため、鉛電池1の総電圧や内部抵抗(SOH)に反映されづらい泥状化や正負極板間の微小短絡等によるセルレベルでの劣化に対しても鉛電池1の状態を正確に判定することができる。
【0107】
特に、状態検知装置20は、各セルの電圧に加え電位比PRも算出するので、各セルの電圧のみで劣化を判定する場合に比べ、各セルの正負極の劣化状態が分かり鉛電池1の状態を正確に把握できる。このため、ECUは、鉛電池1の(劣化)状態に応じて、例えば上述した正極を酷使する等の詳細な電池制御を行うことができる。正極を酷使することで(例えば、深い放電深度(DOD)まで(低SOCまで)鉛電池1を使用することで)、アイドリングストップ時間を延ばすことができるというメリットがある。
【0108】
さらに、状態検知装置20は、鉛電池1から補機へ放電が確実に行われるアイドリングストップ時に各セルの正極および負極電位を検出し(S1、S6)、鉛電池1の劣化判定を行う(S13)。すなわち、セルの正負極の電位が確実に卑方向に進む状態を利用して鉛電池1の劣化状態を判定する。このため、鉛電池1に充電電流が流れることで劣化判定が不正確となることを防止することができる。
【0109】
(3)電源システム30
また、本実施形態の電源システム30では、鉛電池1の上方に化粧カバー31が配置されている。このため、電源システム30の安全性が確保されるとともに、電源システム30の上部が外圧で損傷することを防止することができる。
【0110】
2.変形例
本実施形態では、ベント型(液式)の鉛電池1について例示したが、本発明はこれに制約されることなく、シール型(ドライ式)の鉛電池にも適用可能である。この場合には、電極群10の位置を避けて参照極6の一側(下側)を延出させ電解液を保持するリテーナに浸漬されるようにすればよい。また、本実施形態では、ペーストタイプの正負極板を例示したが、本発明はこれに限らず、クラッドタイプの鉛電池にも適用可能である。
【0111】
また、本実施形態では、鉛電池1を例示したが、本発明はこれに制限されず、例えば、ニッケル水素電池やニッケル亜鉛電池等の水系二次電池に適用するようにしてもよく、リチウムイオン電池等の非水系二次電池に適用するようにしてもよい。さらに、本実施形態では、複数のセル室を有するモノブロック電槽2を備えた鉛電池1を例示したが、本発明は単セル二次電池にも適用可能である。すなわち、単セル二次電池において電池容器内の参照極に接続された参照端子を電池容器外に設けることで、本実施形態で例示したセルと同様に、電池劣化を単セル二次電池の電圧やSOHのレベルより細かなレベルで把握することができる。
【0112】
また、本実施形態では、状態検知装置20が鉛電池1の劣化判定を行いその判定結果をECUに報知する例を示したが、そのような劣化判定はECU側で行うようにしてもよい。状態検知装置20は温度補正された各セルの正負極電位をECUに報知する。同様に、鉛電池1のSOHの算出も上述した鉛電池1の状態情報に従ってECU側で行うようにしてもよい。
【0113】
また、本実施形態では、鉛電池1を構成する全セルの正負極電位を検出する例を示したが(S6)、本発明はこれに限るものではない。鉛電池1を構成するセル1~セル6のうちセル1およびセル6はモノブロック電槽2の両側に位置しており、セル2~セル5より外気との熱交換(放熱)面積が広いことから、セル1およびセル6は上述した泥状化等による劣化が内側に位置するセル2~セル5より起こりづらい。このため、セル1およびセル2の正負極電位を検出することなくセル2~セル5の正負極電位を検出してセルの劣化を判断するようにしてもよい。このような態様では、マルチプレクサ43に正極外部端子4および負極外部端子5を接続する必要がなく、また、ロジック回路44によるA/Dコンバータ43のサンプリングタイミングの監視等も不要となる。
【0114】
さらに、全セルの代表として、例えば、中央部に配され熱が最もこもり易いと考えられるセル3およびセル4の正負極電位を検出して泥状化等の劣化が進行しているかを判断するようにしてもよい。このような態様では、参照端子RT3、RT4および検出端子DT2~DT4のみを電池蓋3上に立設すればよいため、参照端子RT、検出端子DT、参照極6および接続部材18の数を減らすことができるとともに、マルチプレクサ43の選択端子数が少なくなるため、コストを削減することができる。なお、このような態様では、鉛電池1のSOHによる劣化判定と組み合わせる意義が大きい。
【0115】
そして究極的には、例えば、セル2~セル5のうち1つのセルの正負極電位を検出して泥状化等の劣化が進行しているかを判断するようにしてもよい。例えば、セル3の正負極電位のみを検出する場合には、電池蓋3上に参照端子RT3および検出端子DT2、DT3を設ければよく、状態検知装置20側では、
図13に示すように、A/Dコンバータが1つ多く必要となるものの(符号46A、46B参照)、マルチプレクサ43やロジック回路44をなくすことができるので、大幅にコストを削減することができる。なお、差動増幅回路45A、45Bは差動増幅回路45(
図8参照)内の2つのOPアンプを別々に分けて構成したものである。
【0116】
また、本実施形態では、セル電圧Vと電位比PRとを劣化判断マップに当てはめて各セルの劣化を判断する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図9のS12に代えて、セル電圧Vが上述した第1の閾値電圧V1以下となったときに、各セルの正極電位の変化量ΔV(以下、電位変化量ΔVという。)を算出する。電位変化量ΔVは、{(サンプリング時の正極電位)-(放電後所定時間(例えば、0.1[s])後の正極電位)}の絶対値で表される。
【0117】
正極劣化であれば電位変化量ΔVは大きく、負極劣化であれば電位変化量ΔVは小さく、両極劣化であれば電位変化量ΔVは中程度の大きさとなることから、
図9のS13に代えて、各セルの電圧Vと電位変化量ΔVとを、
図12に示した劣化判断マップと同様に、セル電圧と電位変化量ΔVとの関係を予め定めた(閾値電圧V1~V3や閾値電位変化量ΔV1、ΔV2によって健康、劣化に近い状態、劣化の領域を定めた)劣化判断マップに当てはめて各セルの劣化を判断するようにしてもよい。
【0118】
さらに、S12、S13に代えて、新品の鉛電池1の単極電位の放電I-Vマップを予めROMに格納しRAMに展開しておき、鉛電池1の放電時に各セルの正極および負極電位を検出して放電I-Vマップとのズレの大きさによって(ズレの大きさに対し閾値を設けることによって)健康、劣化に近い状態、劣化を判断するようにしてもよい。なお、このような放電I-Vマップには、どの程度の電流値で何秒放電したら、正極および負極電位がどうなるのかがマッピングされている。
【0119】
また、本実施形態では、鉛電池1の劣化判定を、鉛電池1のSOHによる劣化判定と、各セルの正負極電位による劣化判定とを組み合わせた例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。
図14に示すように、鉛電池1のSOHに拘わらず、各セルの正負極電位による劣化判断のみで鉛電池1の劣化判定を行うようにしてもよい。なお、この場合には、
図12に示した劣化判断マップにおいて、各セルの電圧Vが第1の閾値電圧V1を越える領域では、閾値電位比PR1、PR2に拘わらず、一律に鉛電池1が健康と判定するようにしてもよい。
【0120】
さらにまた、本実施形態では、アイドリングストップ時に鉛電池1の劣化判定を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、鉛電池1から確実に放電されているときに劣化判定をするようにしてもよい。
【0121】
さらに、本実施形態では、移動体(ISS車)用の鉛電池1を例示したが、本発明はこれに制約されず、据え置き型の鉛電池に適用するようにしてもよい。また、本実施形態では、鉛電池1と状態検知装置20とで構成された電源システム30を例示したが、本発明は状態検知装置20を有しない鉛電池1のみにも適用可能である。その場合には、バッテリテスタ等の外部検知装置を用いて鉛電池1の劣化判定を行えばよく、必要に応じて鉛電池1に負荷を接続するようにしてもよい。そのような態様では、参照端子RT1~RT6および検出端子DT1~DT5はワッシャを介してナットでネジ締結されることなくフランジ部と端子部とが露出した状態となり、コネクタ15~17を実装したフレキシブル基板12~14は不要となる。また、端子部にネジを螺設する必要もない。
【0122】
またさらに、本実施形態では、参照端子RT1~RT6および検出端子DT1~DT5を、ワッシャを介してナットでネジ締結した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、参照端子RT1~RT6と銅製のワッシャとをフラックスを用いて半田付けするようにしてもよく、同様に、検出端子DT1~DT5と銅製のワッシャとを半田付けするようにしてもよい。この場合にはネジ締結が不要となるので、参照端子RT1~RT6および検出端子DT1~DT5の径を小さくすることができる。
【0123】
さらにまた、本実施形態では、参照極6にカロメル電極を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、パラジウム・水素電極(Pd/H2電極)等の他の電極を用いるようにしてもよい。
【0124】
また、本実施形態では、状態検知装置20が鉛電池1の劣化判定を行いその判定結果をECUに報知する例を示したが、そのような劣化判定はECU側で行うようにしてもよい。状態検知装置20は検出した各セルの正負極電位をECUに報知する。同様に、鉛電池1のSOHの算出も上述した鉛電池1の状態情報に従ってECU側で行うようにしてもよい。
【0125】
さらに、本実施形態では、閾値等について具体的数値を例示したが、本発明はこれに制限されるものではない。そして、本実施形態では14V系電源システム30を例示したが、本発明はこれに制約されることなく、例えば、42V系電源システム等の14V系電源システム以外の電源システムにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は劣化判定を正確に行うことができる二次電池、並びに、該二次電池と該二次電池の電池状態を検知する状態検知装置とを備えた電源システムを提供するものであるため、二次電池や電源システムの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0127】
1 鉛電池(二次電池)
2 モノブロック電槽(電池容器の一部、電槽)
3 電池蓋(電池容器の一部)
6 参照極
10 電極群
11 導電部材
15、16、17 コネクタ
18 接続部材
20 状態検知装置
30 電源システム
RT、RT1、RT2、RT3、RT4、RT5、RT6 参照端子
DT、DT1、DT2、DT3、DT4、DT5 検出端子