IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧 ▶ ADEKAクリーンエイド株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】発泡性洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/04 20060101AFI20220201BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20220201BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20220201BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20220201BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C11D3/04
C11D1/14
C11D1/68
C11D3/33
C11D3/37
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018056782
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019167461
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 綾
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105309(JP,A)
【文献】米国特許第06455482(US,B1)
【文献】特開2015-017156(JP,A)
【文献】特開2006-335896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、(B)成分としてアニオン界面活性剤、(C)成分としてキレート剤、(D)成分としてアルキルポリグルコシド、(E)成分として水、を含有し、発泡性洗浄剤組成物中の(A)成分の割合が16質量%以上、40質量%以下であり、質量比で(B)成分/(D)成分の値が0.02以上、50以下であり、質量比で、(A)成分/(B)成分の値が10以上、60以下であることを特徴とする発泡性洗浄剤組成物。
【請求項2】
(B)成分が、2級アルカンスルホン酸又はその塩を含有する請求項1記載の発泡性洗浄剤組成物。
【請求項3】
(C)成分が、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン六酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、イミノジコハク酸又はその塩より選ばれた少なくとも一種を含有する請求項1又は2記載の発泡性洗浄剤組成物。
【請求項4】
(D)成分のアルキルポリグルコシドの平均重合度が、1.2以上、5以下である請求項1から3のいずれかに記載の発泡性洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に(F)成分としてカルボン酸型ポリマーを含有する請求項1から4のいずれかに記載の発泡性洗浄剤組成物。
【請求項6】
(F)成分が、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩、アクリル酸-スルホン酸共重合体又はその塩より選ばれた少なくとも一種を含有する請求項5記載の発泡性洗浄剤組成物。
【請求項7】
スモークハウスの洗浄用である請求項1から6のいずれかに記載の発泡性洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に飲料・食品製造工場や厨房等の汚れの洗浄効果が高く、かつ垂直面に対する付着効果に優れた発泡性洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や食品の製造加工工場や、ホテル、レストラン等の厨房の床、壁には、タンパク質や油脂等の汚れが付着し、熱によって変質した油汚れは容易に除去することができない。また燻製製品の製造を行うスモークハウスでは、油汚れとともに、変質したタール分が壁面に強固に付着して洗浄を困難としている。油汚れの除去のために強アルカリ性の液体洗浄剤が種々提案されており、25%以上の苛性ソーダおよび/または苛性カリと、陰イオン界面活性剤、ヒドロキシカルボン酸、アミノカルボン酸やその塩等の水溶性高分子キレート剤、アルキルエーテル硫酸塩等を含む強アルカリ液体洗浄剤組成物(特許文献1)、10~30質量%の水酸化アルカリ金属塩とともに、α‐オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルグルコシド、多価アルコールを含む液体洗浄剤組成物(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-108092号公報
【文献】特開2006-206818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の液体洗浄剤組成物は、泡の壁面等への付着性に劣るため、壁面に付着した汚れに対する洗浄性が低いとともに、すすぎ時の泡切れが悪いという問題があった。また特許文献2記載の液体洗浄剤組成物は泡立ちが悪く、壁面等への泡の付着性、保持性に問題があるため、壁面等に付着した汚れの洗浄性に問題があった。また、これらの液体洗浄剤組成物は油汚れに対する洗浄性はあるものの、変質したタール汚れに対する洗浄力が劣り、壁面等への付着性に劣ることとあいまってスモークハウスの洗浄用としては十分なものではなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、油汚れや変質した油汚れの洗浄性に優れるとともに、壁面等の垂直面への泡の付着性、保持性に優れ、タール汚れや変質したタール汚れに対する洗浄性にも優れ、しかもすすぎ性が良好な発泡性洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、アルカリ金属水酸化物、アニオン界面活性剤、キレート剤、アルキルポリグルコシドを含む組成物が優れた洗浄作用を有することを見出し、更に鋭意研究した結果本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は
(1)(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、(B)成分としてアニオン界面活性剤、(C)成分としてキレート剤、(D)成分としてアルキルポリグルコシド、(E)成分として水、を含有し、発泡性洗浄剤組成物中の(A)成分の割合が16質量%以上、40質量%以下であり、質量比で(B)成分/(D)成分の値が0.02以上、50以下であり、質量比で、(A)成分/(B)成分の値が10以上、60以下であることを特徴とする発泡性洗浄剤組成物、
(2)(B)成分が、2級アルカンスルホン酸又はその塩を含有する上記(1)の発泡性洗浄剤組成物、
(3)(C)成分が、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン六酢酸又はその塩、メチルグリシン二酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、イミノジコハク酸又はその塩より選ばれた少なくとも一種を含有する上記(1)又は(2)の発泡性洗浄剤組成物、
(4)(D)成分のアルキルポリグルコシドの平均重合度が、1.2以上、5以下である上記(1)から(3)のいずれかの発泡性洗浄剤組成物、
(5)更に(F)成分としてカルボン酸型ポリマーを含有する上記(1)から(4)のいずれかの発泡性洗浄剤組成物、
(6)(F)成分が、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩、アクリル酸-スルホン酸共重合体又はその塩より選ばれた少なくとも一種を含有する上記(5)の発泡性洗浄剤組成物、
(7)スモークハウスの洗浄用である上記(1)から(6)のいずれかの発泡性洗浄剤組成物、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、壁面等の垂直面への泡の付着性、保持性に優れ、変質した油汚れやタール汚れに対して優れた洗浄性を有し、すすぎ性にも優れ、飲料や食品の製造加工工場や、ホテルやレストラン等の厨房、スモークハウスの洗浄等に優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発泡性洗浄剤組成物における(A)成分のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は1種又は2種以上を併用することができる。本発明の発泡性洗浄剤組成物中における(A)成分の割合は、1質量%以上、50質量%以下が好ましい。(A)成分が1質量%未満では、洗浄性が低下し、50質量%を超えると貯蔵安定性が低下する虞がある。洗浄性及び貯蔵安定性の面から(A)成分の発泡性洗浄剤組成物中の割合は、10質量%以上、45質量%以下がより好ましく、特に16質量%以上、40質量%以下が好ましい。
【0010】
(B)成分のアニオン界面活性剤としては、平均分子量1000未満であり、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、2級アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α‐オレフィンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、これらの塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、経済的な面から通常はナトリウム塩が好ましい。これらのアニオン界面活性剤のなかでも、アルキル基の炭素数が8以上、18以下のアルキル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8以上、18以下のアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が14以上、18以下の2級アルカンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が10以上、18以下の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、中でも洗浄性、泡立ち、垂直面への泡の付着性の点でアルキル基の炭素数が14以上、18以下の2級アルカンスルホン酸塩がより好ましい。これらアニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を併用することができるが、2級アルカンスルホン酸又はその塩を含有するものが好ましい。発泡性洗浄剤組成物中における(B)成分の割合は、0.1質量%以上、5質量%以下が好ましい。(B)成分が0.1質量%未満であると洗浄性、泡立ち性、垂直面への泡の付着性が低下し、5質量%を超えると、すすぎ性が低下するとともに貯蔵安定性も低下する虞がある。垂直面への泡の付着性が不十分な場合、垂直面に付着した汚れへの接触時間が短くなるため洗浄性も低下する虞がある。このような観点から、(B)成分の割合は、0.3質量%以上、3質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上、2質量%以下が特に好ましい。
【0011】
(C)成分のキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸、イミノジコハク酸、ニトリロ三酢酸、トリポリリン酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等や、これらのナトリウム塩、カリウム塩等の塩が挙げられる。なかでもエチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸、イミノジコハク酸や、これらの塩が、スケール抑制性の点で好ましく、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、メチルグリシン二酢酸や、これらの塩がスケール抑制性、タール汚れの洗浄性の点でより好ましい。発泡性洗浄剤組成物中における(C)成分の割合は、0.1質量%以上、5質量%以下が好ましい。(C)成分が0.1質量%未満では、スケール抑制性、タール汚れの洗浄性が劣り、5質量%を超えると貯蔵安定性が低下する虞がある。このような観点から、発泡性洗浄剤組成物中の(C)成分の割合は、0.5質量%以上、4質量%以下がより好ましく、1質量%以上、3.5質量%以下が特に好ましい。
【0012】
(D)成分のアルキルポリグルコシドとしては、アルキル基の炭素数が6以上、14以下のものが好ましく、アルキル基の炭素数が8以上、10以下のものが垂直面への泡の付着性、貯蔵安定性の点でより好ましい。また、(D)成分のアルキルポリグルコシドの平均重合度は1.2以上、5以下のものが好ましく、1.2以上、1.7以下のものが貯蔵安定性の点でより好ましい。(D)成分のアルキルポリグルコシドは公知の材料であり、例えばBASF社から商標名Glucopon(商標)で入手可能である。(D)成分のアルキルポリグルコシドの代わりにモノアルキルグルコシドを用いた場合には、(B)成分のアニオン界面活性剤を可溶化することが困難であるが、(D)成分としてアルキルポリグルコシドを用いた場合でも、その平均重合度1.2未満であると、(B)成分の可溶化が不十分となる虞があるため、(D)成分のアルキルポリグルコシドは、平均重合度1.2以上のものを用いることが好ましい。発泡性洗浄剤組成物中における(D)成分の割合は、0.1質量%以上、5質量%以下が好ましい。(D)成分が0.1質量%未満であると垂直面への泡の付着性、貯蔵安定性が低下し、5質量%を超えると、すすぎ性が低下するとともに貯蔵安定性も低下する虞がある。このような観点から、(B)成分の割合は、0.5質量%以上、4質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上、3.5質量%以下が特に好ましい。
【0013】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、上記(B)成分と、(D)成分とを、質量比で(B)成分/(D)成分の値が0.02以上、50以下となるように含有する。(B)成分/(D)成分の値が0.02未満となる場合、洗浄性、泡立ち、垂直面への泡の付着性が低下する。また(B)成分/(D)成分の値が50を超える場合、垂直面への泡の付着性が低下するとともに、すすぎ性、貯蔵安定性も低下する。(B)成分と、(D)成分は、質量比(B)成分/(D)成分の値が、0.05以上、20以下となるように含有することが好ましく、特に0.08以上、5以下となるように含有することが好ましい。
【0014】
本発明の発泡性洗浄剤組成物における(E)成分の水としては、特に限定はなく、水道水、工業用水、再生水、イオン交換水、RO水、蒸留水、軟水等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせても良いが、経済性の点から水道水が好ましい。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。水は、発泡性洗浄剤組成物全体が100質量%となるように配合(必要に応じて後述する(F)成分を配合する場合、これらを含めて全体が100質量%となるように配合)されるものである。
【0015】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、(A)成分と(B)成分とを、質量比で(A)成分/(B)成分の値が0.2以上、500以下となるように含有することが好ましい。(A)成分/(B)成分の値が0.2未満の場合には、洗浄性、すすぎ性、貯蔵安定性が低下する虞があり、500を超える場合には、洗浄性、泡立ち性、垂直面への泡の付着性、貯蔵安定性も低下する虞がある。本発明の発泡性洗浄剤組成物は、(A)成分と(B)成分とを、(A)成分/(B)成分の値が5以上、200以下となるように含有することが好ましく、10以上、60以下となるように含有することが好ましい。
【0016】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、更に(F)成分としてカルボン酸型ポリマーを含有すると、貯蔵安定性を更に向上することができる。カルボン酸型ポリマーは、貯蔵安定性の点で、重量平均分子量1000以上、20000以下のものが好ましいが、1000以上、15000以下のものがより好ましく、2000以上、8000以下のものが特に好ましい。カルボン酸型ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体等や、これらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、通常はナトリウム塩が好ましい。これらの中でも(F)成分としては、貯蔵安定性の点で、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体が好ましい。(F)成分の割合は、0.01質量%以上、5質量%以下が好ましい。(F)成分が0.01質量%未満では、貯蔵安定性の向上効果が得られず、5質量%を超えてもそれ以上貯蔵安定性の向上は望めない。このような観点から、発泡性洗浄剤組成物中の(F)成分の割合は、0.1質量%以上、3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上、2質量%以下が特に好ましい。
【0017】
前記カルボン酸型ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)法によって定められた値である。
なお、前記方法に使用する機器及び条件は以下の通りである。
使用カラム:TSKgel G4000Hxl、G3000Hxl、G2000Hxl(いずれも東ソー社製)を直列に接続。
遊離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1mL/分
検出器:RI
サンプル濃度:0.1質量%(THF溶液)
サンプル量:200μL
カラム温度:40℃
【0018】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ当該技術分野で通常使用される他の成分を含有していてもよい。このような成分としては、金属腐食抑制剤、酸化剤、増粘剤、酵素、香料、色素等が挙げられる。
【0019】
金属腐食抑制剤としては、短鎖のジカルボン酸やトリカルボン酸などのポリカルボン酸、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びメルカプトベンゾチアゾール等のトリアゾールやチアゾール、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸塩等のようなホスホン酸塩、アジピン酸塩、グルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0020】
酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸塩、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸塩、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、塩素化イソシアヌル酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸カリウム等の塩素化イソシアヌル酸塩、二酸化塩素、過酸化水素等が挙げられる。酸化剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性の点から次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の高分子ポリカルボン酸のアルカリ中和塩が挙げられる。
【0022】
酵素としては、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ等が挙げられる。
【0023】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。また、香料としては、例えば、天然香料、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
【0024】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、原液もしくは水で1倍を超えて100倍以下の希釈倍率で予め希釈したものを被洗浄物に泡状に噴射する方法、希釈しながら被洗浄物に泡状に噴射する方法、あるいは、原液や予め希釈した液を噴射する方法と原液を希釈しながら噴射する方法とを組み合わせる等の方法により被洗浄物に供給して洗浄を行うことができる。洗浄時に(B)成分の濃度が0.002質量%以上、1質量%以下となるように調製することが好ましく、(B)成分の濃度は0.01質量%以上、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以上、0.3質量%以下であることが特に好ましい。希釈液中の(B)成分が0.002質量%未満であると十分な洗浄性、垂直面への泡の付着性、泡立ちが得られず、1質量%を超えるとすすぎ性が不十分となる虞がある。希釈液は発泡装置等を用いて発泡させ、比重0.05~0.9g/立方センチメートルの泡または泡と液の混合物、好ましくは0.08~0.3g/立方センチメートルの泡または泡と液の混合物として被洗浄物表面に吹き付ける。さらに、被洗浄物に吹き付けた後静置、好ましくは30秒~10分間静置してすすぎを行うか、又はブラシやスポンジ等を用いて擦り洗いした後すすぎを行うことが好ましい。
【0025】
発泡装置としてはエア駆動式ダイアフラムポンプにて送液し、圧縮空気と発泡性洗浄剤組成物の希釈液を混合して発泡並びに噴霧する装置を用いることができ、例えばDEMA社製910 PORTABLE FOAMERが使用できる。供給エア圧としては30~80PSIが好ましく、40~60PSIがより好ましい。
【0026】
ここで、発泡性洗浄剤組成物を希釈するために使用される水としては、硬度成分のない純水を用いることもできるが、一般的には水道水のような硬度成分を含有する水を使用することが想定され、水道水は、pH=5.8~8.6、総アルカリ度が、ドイツ硬度0~16.7°DH、塩化物イオン0~200mg/L、ナトリウム及びその化合物0~200mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素0~10mg/L、フッ素及びその化合物0~0.8mg/L、ホウ素及びその化合物0~1.0mg/L、総トリハロメタン0~0.1mg/L、残留塩素0~1mg/L、有機物量(全有機炭素量)0~3mg/Lであれば、本発明の発泡性洗浄剤組成物の希釈用として使用することができる。また総アルカリ度は特に制限はないが、工業用水道供給標準水質として記載されている0~75mg/L(炭酸カルシウム換算として)が好ましい。
【0027】
本発明の発泡性洗浄剤組成物は、飲料や食品の製造加工工場や、ホテルやレストラン等の厨房等における油汚れや変質した油汚れに対し、優れた洗浄効果を発揮するとともに、スモークハウスの壁面等に付着したタール汚れや変質したタール汚れに対しても優れた洗浄効果を発揮する。
【実施例
【0028】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた各成分を下記に示す。なお、括弧内のCに続く数はアルキルまたはアルケニル基の炭素数を表す。
【0029】
(A)成分
A-1:水酸化ナトリウム
A-2:水酸化カリウム
【0030】
(B)成分
B-1:ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(テイカ社製 テイカパワーL121)
B-2:ラウリル硫酸ナトリウム(新日本理化社製 シノリン100)
B-3:2級アルカン(C14~17)スルホン酸ナトリウム(クラリアントジャパン社製 HOSTAPUR SAS30)
B-4:ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王社製 ペレックスSS-H)
B-5:α‐オレフィン(C14~16)スルホン酸ナトリウム(ライオン社製 リポランLB-440)
【0031】
(C)成分
C-1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
C-2:メチルグリシン二酢酸ナトリウム
C-3:トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム
C-4:トリポリリン酸ナトリウム
【0032】
(D)成分
D-1:アルキル(C8~10)ポリグルコシド(BASF社製 Glucopon215UP)
D-2:アルキル(C8~14)ポリグルコシド(BASF社製 Glucopon425N)
D-3:アルキル(C12~14)ポリグルコシド(BASF社製 Glucopon600UP)
【0033】
(D)成分の比較成分
D′-1:ヘキシルグルコシド(ライオン社製 AG6206)
D′-2:2-エチルヘキシルグルコシド(ライオン社製 AG6202)
【0034】
(E)成分
E-1:イオン交換水
【0035】
(F)成分
F-1:ポリアクリル酸ナトリウム1(重量平均分子量が4,000)
F-2:アクリル酸-スルホン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量が5,000)
F-3:アクリル酸-マレイン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量が3,000)
F-4:ポリアクリル酸ナトリウム2(重量平均分子量が20,000)
【0036】
実施例1~70、比較例1~8
表1~8に示す配合に基づき発泡性洗浄剤組成物を調製した。各発泡性洗浄剤組成物を希釈して下記の試験を行った。表1~7に実施例1~70の結果を、表8に比較例1~8の結果をそれぞれ示す。なお、表中における実施例および比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
※1:油脂洗浄性試験
試験方法:
ステンレス片[ステンレス(SUS304)、縦110mm×横80mm×厚さ1mm]に人工汚垢液(牛脂10g、豚脂10g、クロロホルム20mLに溶解したもの)を0.5g滴下し、ガラス棒を用いて全体に塗り広げた後、温度25℃・湿度0%で1時間乾燥したものを試験片とし質量を測定した。炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各発泡性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した発泡洗浄液を、DEMA社製910 PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に起泡させた後、垂直面に立て掛けた試験片の範囲に10秒間噴射し、5分間放置した後、イオン交換水で15秒間すすぎ、自然乾燥させた後、重量を測定した。牛脂汚れの洗浄率を洗浄前後の試験片の重量変化により算出し、次の尺度で示した。
評価基準:
◎:洗浄率80%以上
○:洗浄率60%以上、80%未満
△:洗浄率40%以上、60%未満
×:洗浄率40%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0046】
※2:タンパク質洗浄性試験
試験方法:
ステンレス片[ステンレス(SUS304)、縦110mm×横80mm×厚さ1mm]に豆乳を0.1g滴下し、ガラス棒を用いて全体に塗り広げた後、温度100℃で5分間乾燥したものを試験片とし、質量を測定した。炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各発泡性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した発泡洗浄液を、DEMA社製910 PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に起泡させた後、垂直面に立て掛けた試験片の範囲に10秒間噴射し、5分間放置した後、イオン交換水で15秒間すすぎ、自然乾燥させた後、重量を測定した。タンパク質汚れの洗浄率を洗浄前後の試験片の重量変化により算出し、次の尺度で示した。
評価基準:
◎:洗浄率90%以上
○:洗浄率80%以上、90%未満
△:洗浄率70%以上、80%未満
×:洗浄率70%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0047】
※3:タール汚れ洗浄性試験
試験方法:
ステンレス片[ステンレス(SUS304)、縦110mm×横80mm×厚さ1mm]にタール汚れ(スモークハウス内から採取したタール汚れ:メタノール:酢酸エチル=1:1:1)を0.5g滴下し、ガラス棒を用いて全体に塗り広げた後、自然乾燥したものを試験片とし、質量を測定した。炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各発泡性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した発泡洗浄液を、DEMA社製910 PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に起泡させた後、垂直面に立て掛けた試験片の範囲に10秒間噴射し、5分間放置した後、イオン交換水で15秒間すすぎ、自然乾燥させた後、重量を測定した。タール汚れの洗浄率を洗浄前後の試験片の重量変化により算出し、次の尺度で示した。
評価基準:
◎:洗浄率80%以上
○:洗浄率60%以上、80%未満
△:洗浄率40%以上、60%未満
×:洗浄率40%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0048】
※4:垂直面の泡保持性試験
試験方法:
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各発泡性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した発泡洗浄液を、DEMA社製910 PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に発泡させた後、ステンレス片[ステンレス(SUS304)]垂直面の縦1m、横1mの範囲に対して、2cm以下の泡の厚みとなるように吹付け、3分後の垂直壁面への付着具合を目視により以下の基準で評価した。
評価基準:
◎:泡の保持が80%以上
○:泡の保持が65%以上、80%未満
△:泡の保持が50%以上、65%未満
×:泡の保持が50%未満
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0049】
※5:すすぎ性試験
試験方法:
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各発泡性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した洗浄液を、DEMA社製910 PORTABLE FOAMERを用いて、比重0.15g/立方センチメートルの泡状に発泡させた後、ステンレス製ボックス[ステンレス(SUS304)]の下部(縦500mm、横幅700mm)に10秒間噴霧し、一分経過後に炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水ですすぎ(シャワーノズル)を行い、ステンレス製ボックス下部中央の排水口(直径50mm、内部に40メッシュのポリエチレン網あり)周辺から泡が消えるまでのすすぎ時間について以下の基準で評価した。
評価基準:
◎:120秒未満
○:120秒以上、150秒未満
△:150秒以上、180秒未満
×:180秒以上
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0050】
※6:スケール抑制性試験
試験方法:
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水にリン酸カルシウムを0.4質量%含有するよう調製した希釈液を用いて、各発泡性洗浄剤組成物を20℃で5質量%に希釈して調製した洗浄液に、ステンレス片[ステンレス(SUS304)、縦110mm×横80mm×厚さ1mm]を20分間浸漬した。浸漬後、ステンレス片を取り出してイオン交換水ですすぎ、自然乾燥させた後、ステンレス片表面のスケール付着の有無を目視にて判断し、以下の基準でスケール付着抑制性を評価した。
【0051】
評価基準
〇:スケール付着なし
△:僅かにスケールが付着しているが、使用上問題ないレベル
×:スケールが付着している
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※5:貯蔵安定性試験
試験方法:
各発泡性洗浄剤組成物100gをポリプロピレン製容器に入れ、-5℃、25℃、40℃に設定された各インキュベーターで1ヶ月静置した後、外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
評価基準:
○:分離や濁りがみられず安定である
△:全体的な分離はないが、若干の濁りがみられる
×:分離もしくは濁りが見られる
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。