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特許7018111アライメント装置、アライメント方法、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-01
(45)【発行日】2022-02-09
(54)【発明の名称】アライメント装置、アライメント方法、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20220202BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20220202BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220202BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220202BHJP
   H01L 21/68 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C23C14/50 F
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
H01L21/68 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020188762
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2021080563
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019206306
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中須 祥浩
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊介
【審査官】山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-005402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00
H01L 27/32
H05B 33/00
H01L 21/30
H01L 21/68
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ステージとマスクを保持するマスクステージとを、相対的に移動させて前記基板と前記マスクとのアライメントを行うアライメント装置であって、
前記基板に形成された基板側マークと前記マスクに形成されたマスク側マークとを撮影するマーク撮影手段と、
前記マーク撮影手段で得られる画像情報から求められた位置ずれ情報を、前記マーク撮影手段の光軸傾き情報と、前記基板の面と前記マスクの面との間の隙間情報と、を用いて補正し、補正された位置ずれ情報に基づいて前記基板ステージと前記マスクステージとを相対移動させる制御手段と、
を備えることを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記画像情報から前記基板と前記マスクとの間の位置ずれ情報を求める位置ずれ情報演算手段と、
前記光軸傾き情報と前記隙間情報を用いて、前記位置ずれ情報を補正する情報補正手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記情報補正手段によって補正された位置ずれ情報を基準とし、前記補正された位置ずれ情報が減少する方向に前記基板ステージと前記マスクステージとを相対移動させる移動量を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記隙間情報は、前記基板が異なる度に測定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記光軸傾き情報は、アライメントを行なう前に予め求められるものであることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記光軸傾き情報を検出する光軸傾き検出手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記光軸傾き検出手段は、前記基板ステージまたは前記マスクステージを、前記マスクと平行な面に直角な方向へ移動させたときの距離と、
前記基板ステージまたは前記マスクステージの移動時に、前記マーク撮影手段で得られる前記基板側マークまたは前記マスク側マークの、前記マスクと平行な面内での移動量を検出し、検出した前記距離と前記移動量から前記光軸傾き情報を求める請求項に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記隙間情報を検出するマーク隙間検出手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記マーク隙間検出手段は、前記マーク撮影手段を、前記マスクに平行な面と直交する方向へ移動しながら、前記マーク撮影手段からコントラスト情報を得て、当該コントラスト情報の2つの極大値を得た時の前記マーク撮影手段の光軸方向における位置情報から前記隙間情報を検出する手段である請求項に記載のアライメント装置。
【請求項9】
前記アライメントは、第1アライメント工程と第2アライメント工程とを有し、前記マーク撮影手段は、第2アライメント工程用のマーク撮影手段である請求項1からのいずれか1項に記載のアライメント装置。
【請求項10】
基板とマスクを相対移動可能に配置し、
前記基板に形成された基板側マークと前記マスクに形成されたマスク側マークをマーク撮影手段によって撮影し、
前記マーク撮影手段によって撮影されたマークの画像情報から前記基板と前記マスクとの間の位置ずれ情報を求め、
前記マーク撮影手段の光軸傾き情報と、前記基板の面と前記マスクの面との間の隙間情報と、を用いて、前記位置ずれ情報を補正し、
前記基板と前記マスクとを補正された位置ずれ情報に基づいて相対移動させてアライメントを行うことを特徴とするアライメント方法。
【請求項11】
前記基板と前記マスクを、前記補正された位置ずれ情報が減少する方向に相対移動させてアライメントを行うことを特徴とする請求項10に記載のアライメント方法。
【請求項12】
前記隙間情報は、前記基板が異なる度に測定されることを特徴とする請求項10または11に記載のアライメント方法。
【請求項13】
前記光軸傾き情報は、アライメント工程の前に予め求められている請求項10から12のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項14】
前記光軸傾き情報は、前記マスクまたは前記基板を、前記マスクと平行な面と直交する方向へ移動させたときの距離と、前記基板または前記マスクの移動時に、前記マーク撮影手段で得られる前記基板側マークまたは前記マスク側マークの前記基板または前記マスクの面内での移動量と、から求める請求項10から13のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項15】
前記隙間情報は、前記マーク撮影手段を、前記マスクまたは前記基板に平行な面と直交する方向へ移動しながら、前記マーク撮影手段からコントラスト情報を得て、当該コントラスト情報の2つの極大値を得たときの、前記マーク撮影手段の光軸方向の位置情報から検出する請求項10から14のいずれか1項に記載のアライメント方法。
【請求項16】
真空容器内で、基板にマスクを重ねて又は近接させて保持し、前記マスクに覆われていない前記基板表面に成膜材料を堆積させて成膜する成膜装置であって、
請求項1からのいずれか1項に記載のアライメント装置を備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項17】
真空容器内で、基板にマスクを重ねて又は近接させて保持し、前記マスクに覆われていない前記基板表面に成膜材料を堆積させる成膜方法であって、
請求項10から15のいずれか1項に記載のアライメント方法によって前記基板と前記マスクとのアライメントを行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項18】
請求項17に記載の成膜方法によって、電子デバイスの基板に成膜することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクのアライメントを行うアライメント装置、アライメント方法、成膜装置、成膜方法、および電子デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、アライメント方法としては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。この特許文献1では、基板とマスクの面方向相対位置の位置ずれの測定は、基板に形成されたアライメントマーク(基板側マーク)と、マスクに形成されたアライメントマーク(マスク側マーク)を、マスクに平行な面と直交する方向から、カメラ(マーク撮影手段)で撮影することにより行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-67705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アライメントマークを撮影するカメラの光学系の光軸が、マスクや基板に平行な面に対して、傾いていた場合、カメラの表示上では、基板側マークと、マスク側マークの位置が合っているように見えたとしても、マスク面に正射影した基板側マークと、マスク側マークの位置は、ずれている。以下、この位置ずれを光軸角度起因ずれと呼ぶ。成膜する画素パターンの高精度化を図るうえで、光軸角度起因ずれは無視できないものである。
この点、特許文献1は、アライメント用カメラの画像で確認できる誤差の補正をおこなうものであり、アライメント用カメラの画像では確認できない光軸角度起因ずれは考慮していない。
また、補正の考え方として、評価用の基板の測定結果を用いて、予め誤差テーブルを準備するという考え方をしているため、毎回異なる厚みの基板が入ってきた場合、基板の厚み誤差の影響を考慮できない。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、マーク撮影手段の光軸が、マスクに平行な面に対して、傾いていたとしても、高精度なアライメントが可能なアライメント装置、アライメント方法、成膜装置、成膜方法および電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
基板を保持する基板ステージとマスクを保持するマスクステージとを、相対的に移動させて前記基板と前記マスクとのアライメントを行うアライメント装置であって、
前記基板に形成された基板側マークと前記マスクに形成されたマスク側マークとを撮影するマーク撮影手段と、
前記マーク撮影手段で得られる画像情報から求められた位置ずれ情報を、前記マーク撮影手段の光軸傾き情報と、前記基板の面と前記マスクの面との間の隙間情報と、を用いて補正し、補正された位置ずれ情報に基づいて前記基板ステージと前記マスクステージとを相対移動させる制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のアライメント方法は、
基板とマスクを相対移動可能に配置し、
前記基板に形成された基板側マークと前記マスクに形成されたマスク側マークをマーク撮影手段によって撮影し、
基板とマスクを相対移動可能に配置し、
前記基板に形成された基板側マークと前記マスクに形成されたマスク側マークをマーク
撮影手段によって撮影し、
前記マーク撮影手段によって撮影されたマークの画像情報から前記基板と前記マスクとの間の位置ずれ情報を求め
前記マーク撮影手段の光軸傾き情報と、前記基板の面と前記マスクの面との間の隙間情報と、を用いて、前記位置ずれ情報を補正し、
前記基板と前記マスクとを補正された位置ずれ情報に基づいて相対移動させてアライメントを行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の成膜装置は、
真空容器内で、基板にマスクを重ねて又は近接させて保持し、前記マスクに覆われていない前記基板表面に成膜材料を堆積させて成膜する成膜装置であって、
上記したアライメント装置を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の成膜方法は、
真空容器内で、基板にマスクを重ねて又は近接させて保持し、前記マスクに覆われていない前記基板表面に成膜材料を堆積させる成膜方法であって、
上記したアライメント方法によって前記基板と前記マスクとのアライメントを行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子デバイスの製造方法は、
上記成膜方法によって、電子デバイスの基板に成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マーク撮影手段の光軸が、マスクおよび基板と平行な面に対して、傾いていたとしても、光軸角度起因ずれ(マスク面に正射影した基板側マークとマスク側マークのずれ)を補正でき、高精度なアライメントが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るアライメント装置を備えた成膜装置の概略図。
図2】微動ステージ機構の平面図。
図3】微動ステージ機構の部分断面図。
図4】アライメント装置の概略図。
図5】光軸傾き検出手段の概略説明図。
図6】マーク隙間検出手段の概略説明図。
図7】アライメント工程の基本的なシーケンスを示す図。
図8】シーケンス説明用の成膜装置の概略構成図。
図9】シーケンスの工程説明図。
図10】シーケンスの工程説明図。
図11】第2アライメント工程の詳細フローチャート。
図12】フローチャートの工程説明図。
図13】基板側マークとマスク側マークの位置ずれの説明図。
図14】電子デバイスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置の構成、処理の手順、材質、形状などは、特に限定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明によるところのアライメント装置は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、本実施形態にあっては、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好適に適用することができる。
【0015】
基板の材料としては、半導体(例えば、シリコン)、ガラス、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選ぶことができ、基板は、例えば、シリコンウエハ、又はガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板であってもよい。また、成膜材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選ぶことができる。
【0016】
なお、本実施形態にあっては、真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、適用することができる。本実施形態の技術は、具体的には、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造装置に適用可能である。電子デバイスの具体例としては、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどが挙げられる。本実施形態は、中でも、OLEDなどの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造装置に好ましく適用可能である。なお、本実施形態における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0017】
まず、図1を用いて、本実施形態によるところのアライメント装置を備えた成膜装置11の概略構成に関して説明する。以下の説明では、鉛直方向(紙面上下方向)をZ方向とし、水平面(紙面上下方向と直角な面)をX―Y平面とするXYZ直交座標系を用いる。また、X軸まわりの回転角をθ、Y軸まわりの回転角をθ、Z軸まわりの回転角をθで表す。
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21を有する。真空容器21内には、基板Wを吸着して保持する基板吸着ユニット24と、マスクMを支持するマスク支持ユニット23と、基板吸着ユニット24の位置を少なくともX方向、Y方向、θ方向に位置決めするための微動ステージ機構22が設置されている。更に真空容器21内には、成膜材料を収納し、成膜時にこの成膜材料が昇華して放出する成膜源25が設置されている。更に成膜装置11は、磁気力によってマスクMを基板W側に密着させるための磁力印加ユニット26をさらに含むことができる。磁力印加ユニット26は、昇降ステージ261によりZ方向へ移動可能であり、Z方向位置に応じて磁力を調整可能である。
【0018】
成膜装置11の真空容器21は、基板Wを保持する微動ステージ機構22が配置される第1真空容器部211と、成膜源25が配置される第2真空容器部212とを含む。そして、例えば、第2真空容器部212に接続された真空ポンプ(不図示)によって真空容器21全体の内部空間を高真空状態に維持することができる。
また、少なくとも第1真空容器部211と第2真空容器部212との間には、伸縮可能部材213が設置される。伸縮可能部材213は、第2真空容器部212に連結される真空ポンプからの振動や、成膜装置11が設けられた床又はフロアからの振動が、第2真空容器部212を通して第1真空容器部211に伝わることを低減する。
【0019】
真空容器21は、基板Wを支持する基板ステージである微動ステージ機構22が固定連結される基準プレート214をさらに含む。基準プレート214には、基準プレート214を所定の高さに支持するための基準プレート支持部215が連結されている。本実施形態の一実施例においては、図1に示したように、基準プレート214と第1真空容器部211との間にも伸縮可能部材213をさらに設置してもよい。これにより、基準プレート214を介して微動ステージ機構22に外部振動が伝わることをさらに低減することができる。
基準プレート支持部215と成膜装置11の設置架台217との間には、床又はフロアから成膜装置11の設置架台217を通して基準プレート支持部215に振動が伝わることを低減するための除振ユニット216が設置される。
【0020】
微動ステージ機構22は、磁気浮上しており、リニアモータによって、基板Wを吸着する基板吸着ユニット24の位置を位置決めするための微動ステージ機構である。少なくともX方向、Y方向、θ方向の3つの方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θ方向、θ方向、θ方向の6つの方向に基板吸着ユニット24の位置を位置決めすることができる。
微動ステージ機構22は、固定台として機能するステージ基準プレート部221と、可動台として機能する微動ステージプレート部222と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対し磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニット223とを含む。
【0021】
マスクMを保持するマスクステージであるマスク支持ユニット23は、不図示の搬送ロボットによって搬送されてくるマスクMを受け取って保持する手段である。マスク支持ユニット23は、少なくとも鉛直方向(Z方向)に昇降可能に設置される。これにより、基板Wの面とマスクMの面との間の鉛直方向の隙間を調節することができる。基板Wの位置を微動ステージ機構22によって高精度に位置決めする場合は、マスクMを支持するマスク支持ユニット23は、ボールねじ駆動の転がりガイド(不図示)などで機械的に鉛直方向に昇降駆動できればよい。
マスク支持ユニット23は、水平方向(つまり、X―Y―θ方向)に移動可能に設置してもよい。これにより、マスクMがアライメント用カメラの視野から外れた場合にも、迅速にこれを視野内に移動させることができる。
【0022】
マスク支持ユニット23は、不図示の搬送ロボットによって真空容器21内に搬入されたマスクMを一時的に受け取るためのマスクピックアップ231をさらに含む。マスクピックアップ231は、マスク支持ユニット23のマスク支持面に対して相対的に昇降できるように構成される。
不図示の搬送ロボットのハンドからマスクMを受け取ったマスクピックアップ231は、マスク支持ユニット23のマスク支持面に対し相対的に下降し、マスクMをマスク支持ユニット23に載置する。逆に、使用済みのマスクMを搬出する場合には、マスクMをマスク支持ユニット23のマスク支持面から持ち上げ、不図示の搬送ロボットのハンドがマ
スクMを受け取ることができるようにする。
【0023】
マスクMは、基板W上に形成したい薄膜パターンに対応する開口パターンを有し、マスク支持ユニット23に載置される。マスクMの開口パターンは、昇華した成膜材料を通過させない遮断パターンによって定義される。なお、マスク支持ユニット23は、成膜源25から放出される成膜材料が、マスクMを通して、基板Wに至る経路を妨げないような、開口を有した構造をしている。
【0024】
基板吸着ユニット24は、不図示の搬送ロボットが搬送してきた、被成膜体としての基板Wを吸着して保持する手段である。基板吸着ユニット24は、微動ステージ機構22の可動台である微動ステージプレート部222に設置される。
基板吸着ユニット24は、例えば、誘電体や絶縁体(例えば、セラミック材質)のマトリックス内に金属電極などの電気回路が埋設された構造を有する静電チャックである。
【0025】
成膜装置11は、真空容器21の上部外側(大気側)に設置され、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークである基板側マーク(不図示)及びマスク側マーク(不図示)を撮影するためのマーク撮影手段であるアライメント用カメラユニット27をさらに含む。
アライメント用カメラユニット27は、基板W及びマスクMに形成された基板側マーク及びマスク側マークに対応する位置に設置される。例えば、4つのアライメント用カメラユニット27は、円形基板の外周の90°等配位置に設置される。ただし、本実施形態はこれに限定されず、基板W及びマスクMのアライメントマークの位置に応じて、他の数、他の配置であってもよい。
【0026】
アライメント用カメラユニット27は、真空容器21の上部大気側から基準プレート214を通して真空容器21の内側に入り込むように設置される。このため、アライメント用カメラユニット27は、大気側に配置されるアライメント用カメラと、アライメント用カメラを囲んで密封する筒状部(不図示)を含む。微動ステージ機構22の介在により、基板WとマスクMが基準プレート214から相対的に遠く離れて支持されても、基板WとマスクMに形成されたアライメントマークに焦点を合わせることができる。筒状部の下端の位置は、アライメント用カメラの被写界深度と、基板W及びマスクMが基準プレート214から離れた距離に応じて、適切に決めることができる。
【0027】
図示していないが、成膜工程中に密閉される真空容器21の内部は暗いので、真空容器21の内側に入り込んでいるアライメント用カメラによりアライメントマークを撮影するために、下方(-Z方向)からアライメントマークを照らす照明光源を設置してもよい。
【0028】
なお、磁力印加ユニット26、微動ステージプレート部222は、アライメント用カメラの視野を妨げないような構造となっている。例えば、視野を妨げないように穴があいていても、カメラで取り込む光の波長を透過する部材で、視野に対応する部分が構成されていてもよい。
【0029】
次に、図2及び図3を参照して、微動ステージ機構22について説明する。
図2は、微動ステージ機構22の模式的平面図、図3は微動ステージ機構22の部分断面図であり、図3(A)は図2のA-A線主要断面図、図3(B)は図2のB-B線主要断面図、図3(C)は図2のC-C線主要断面図である。
磁気浮上ユニット223は、可動台である微動ステージプレート部222を固定台であるステージ基準プレート部221に対して移動させる駆動力を発生させるための磁気浮上リニアモータ31と、微動ステージプレート部222の位置を測定するための位置測定手段と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対して浮上させ
る浮上力を提供することで微動ステージプレート部222にかかる重力を補償する自重補償手段33と、微動ステージプレート部222の原点位置を決める原点位置決め手段34とを含む。
磁気浮上リニアモータ31は、微動ステージプレート部222を移動させるための駆動力を発生させる駆動源であって、微動ステージプレート部222をX方向に移動させるための駆動力を発生させる2つのX方向磁気浮上リニアモータ311と、微動ステージプレート部222をY方向に移動させるための駆動力を発生させる2つのY方向磁気浮上リニアモータ312と、微動ステージプレート部222をZ方向に移動させるための駆動力を発生させる3つのZ方向磁気浮上リニアモータ313とを含む。
これら複数の磁気浮上リニアモータ31を用いて、微動ステージプレート部222を6つの自由度に(X方向、Y方向、Z方向、θ方向、θ方向、θ方向に)移動させることができる。
磁気浮上リニアモータ31は、ステージ基準プレート部221に設置される固定子と、微動ステージプレート部222に設置される可動子とを含む。磁気浮上リニアモータ31の固定子は、磁界発生手段、例えば、電流が流れるコイルを含み、可動子は、磁性体、例えば、永久磁石を含む。
また、ステージ基準プレート部221は、位置センサ32を備えている。位置センサ32は、たとえば、レーザ干渉計が用いられ、測定ビームを微動ステージプレート部222に設置された反射部324に照射し、その反射ビームを検出することで、反射部324の位置(微動ステージプレート部222の位置)を測定する。位置センサ32は、微動ステージプレート部222のX方向における位置を測定するX方向位置測定部と、Y方向における位置を測定するY方向位置測定部と、Z方向における位置を測定するためのZ方向位置測定部と、を含む。このような位置センサ32の構成により、6つの自由度(degree of freedom)において、微動ステージプレート部222の位置を精密に測定することができる。
自重補償手段33は、図3(C)に示すように、ステージ基準プレート部221側に設けられた第1の磁石部331と、微動ステージプレート部222側に設けられた第2の磁石部332との間の反発力または吸引力を利用して、微動ステージプレート部222にかかる重力に相応する大きさの浮上力を提供する。
原点位置決め手段34は、図3(B)に示すように、微動ステージプレート部222の原点位置を決める手段であって、三角錐状の凹部341と半球状の凸部342とを含むキネマティックカップリング(kinematic coupling)で構成することができる。前記した三角錐状の凹部341と半球状の凸部342に加えて、V溝と半球状の凸部、平面と半球状の凸部、の3つの組み合わせの接触で、微動ステージプレート部222の位置が決められる。
なお、基板吸着ユニット24を移動するステージ機構としては、6軸駆動の磁気浮上機構を例示してきたが、ボールねじ駆動の転がりステージや、リニアモータ駆動の転がりステージなどの他のステージ機構でも構わない。
【0030】
次に、成膜装置に組み込まれた本実施形態のアライメント装置に関して、図4を参照して説明する。図4(A)は、アライメント装置の概略構成図、図4(B)は、図4(A)のマスク側マーク及び基板側マークの近傍を拡大表示した図である。なお、図4(B)のZ方向の位置関係は模式的に表したものであり、実寸とは異なる。
図4(A)に示すように、アライメント装置は、基板Wを保持する微動ステージプレート部222と、マスクMを保持するマスクステージであるマスク支持ユニット23とを、互いに相対的に移動させて基板WとマスクMのアライメントを行う。マスクMはマスク支持ユニット23に載置され、基板Wは基板吸着ユニット24に吸着される。
装置構成としては、基板Wに形成された基板側マークmaと、マスクMに形成されたマスク側マークmbの光学的な撮影画像を電気信号に変換して検出するマーク撮影手段としてのアライメント用カメラ271と、アライメントのプロセスを実行する制御部100と
によって構成される。
なお、図4(A)では、マスク支持ユニット23及びマスク本体M1を支持するマスクフレームM2に、基板側マークma及びマスク側マークmbに下方からの照明光を通すための孔55が設けられ、さらに、基板吸着ユニット24に、アライメント用カメラ271の視野を妨げないように孔56が設けられた場合を例示している。
制御部100は、位置ずれ情報演算部101と、位置ずれ情報の補正値を演算して位置ずれ情報にフィードバックする補正値演算部102と、位置ずれ情報が減少する方向に微動ステージプレート部222とマスク支持ユニット23を相対移動させる移動制御部103とを備えている。
位置ずれ情報演算部101は、アライメント用カメラ271で取得した基板側マークmaとマスク側マークmbの画像を処理し、基板WとマスクMの位置ずれ情報を演算する。位置ずれ情報演算部101は、基板側マークmaとマスク側マークmbの画像から、水平面における基板側マークmaの座標及びマスク側マークmbの座標を取得してもよい。位置ずれ情報演算部101は、水平面における基板側マークmaの座標とマスク側マークmbの座標との差分を基板WとマスクMの位置ずれ情報として演算してもよい。水平面における基板側マークmaの座標及びマスク側マークmbの座標は、画像情報の一例である。
補正値演算部102は、アライメント用カメラ271の光軸傾き情報と、基板側マークmaとマスク側マークmbの鉛直方向における隙間情報を用いて、位置ずれ情報の補正値を演算し、位置ずれ情報にフィードバックする。
移動制御部103は、位置ずれ情報演算部101で演算された位置ずれ情報を、補正値演算部102で演算された補正値で補正し、補正された位置ずれ情報が予め定めた範囲内に収まるように、位置ずれ情報が減少する方向に微動ステージプレート部222とマスク支持ユニット23とを相対移動させる。移動制御部103は、水平面における基板側マークmaの座標又はマスク側マークmbの座標を、補正値演算部102で演算された補正値で補正し、位置ずれ情報が予め定めた範囲内に収まるように、位置ずれ情報が減少する方向に微動ステージプレート部222とマスク支持ユニット23とを相対移動させてもよい。
なお、制御部100は、アライメントの制御機能だけでなく、基板W及びマスクMの搬送、成膜の制御などの機能を有する。
【0031】
制御部100は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成することができる。この場合、制御部100の機能は、メモリまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(Programmable Logic Controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0032】
次に、図4(B)を用いて、光軸角度起因ずれ(マスク面に正射影した基板側マークとマスク側マークのずれ)を説明する。
アライメント用カメラ271の光軸Nが、マスクMに平行な面に対して、直交する軸線Vに対して傾きを有していた場合、カメラ画像では、マスク側マークmbと基板側マークmaが合っていても、マスク面に正射影した基板側マークma´とマスク側マークmbは、δだけずれている。このずれδを光軸角度起因ずれと呼ぶと、光軸傾きをφ、マスク側マークmbと基板側マークmaの鉛直方向における隙間をdとしたとき、光軸角度起因ずれ量δは、「d×tanφ」となる。例えば、d=50μm、φ=10mradのとき、光軸角度起因ずれ量δは、500nmとなる。近年の画素パターンの高精度化の中で、この値は無視できない値である。
【0033】
本実施形態によれば、制御部100にて、アライメント用カメラ271の光軸傾き情報に相当する図4(B)の光軸傾きφと、鉛直方向における隙間情報に相当する図4(B)のマーク隙間dから、「d×tanφ」により演算し、位置ずれ情報の補正値として、光軸角度起因ずれ量δを得る。そして、「d×tanφ」の量だけ、微動ステージプレート部222及び/またはマスク支持ユニット23を移動させ、基板側マークmaとマスク側マークmbを相対移動させる。このようにすることで、マスク面に正射影した基板側マークma´と、マスク側マークmbの位置を一致させることができる。
成膜源25から放出される成膜材料はマスク面に対してほぼ直角に入射するため、光軸角度起因ずれがあったままの場合は、光軸角度起因ずれ量だけ、基板への成膜位置はずれることになる。本実施形態のアライメント装置によれば、光軸角度起因ずれ量が補正でき、成膜位置が高精度化されることから、画素パターンが高精度となる。
【0034】
光軸角度起因ずれを補正することは、特に有機EL表示装置のように、複数色を、複数の成膜装置で、成膜する場合に好適である。成膜装置毎に光軸傾きφは一般には異なるためである。また、成膜対象である基板Wの厚みは、一般的に数十μmの誤差を持つことから、基板Wの裏面(図4(B)の(-Z)側の面)に基板側マークが形成されていた場合、基板Wが変わる度に、マーク隙間dが変わることになる。基板Wが変わる度に、マーク隙間dに対応する隙間情報を更新し、「d×tanφ」を演算することで、基板厚み誤差の影響も補正することができる。
なお、図4(B)の基板Wがシリコンウエハであった場合、アライメント用カメラ271は近赤外を撮像可能な近赤外カメラとすることが望ましい。近赤外カメラとすることで、シリコンウエハを透過して、基板Wの裏面(図4(B)の(-Z)側の面)に形成された基板側マークmaをアライメント用カメラ271で撮像することができる。
【0035】
次に、光軸角度の傾きを検出する方法について、図5を用いて詳細に説明する。
図5は、光軸傾きを検出する方法の概略説明図である。図5(A)、(B)は、光軸傾き検出のために、マスク支持ユニット23を、マスクMと平行な面と直角な方向に距離αだけ移動させた移動前後のマスク側マークmbと、アライメント用カメラ271の関係を示している。また、図5(C)は、図5(A)でのアライメント用カメラ271の視野F
におけるマスク側マークmbの位置を、図5(D)は、図5(B)でのアライメント用カメラ271の視野Fにおけるマスク側マークmbの位置を示している。
図5(C)、(D)に示すように、マスク支持ユニット23の距離αの移動によって、視野F内で、マスク側マークmbは移動量βだけ移動している。
【0036】
マスク支持ユニット23が、マスク側マークmbが形成されたマスクMと直交方向に距離α移動しているとすると、そのときのカメラ視野F内でのマスク側マークmbの移動量βがわかれば、マスクMと平行な面にたてた垂線と、アライメント用カメラ271の光軸とのずれ量である光軸傾きφが演算できる。演算式は、「φ=arcsin(β÷α)」である。角度が微小な場合には、φ≒β÷αで演算してもよい。このような手段で、光軸傾きφを検出することができる。
この検出した光軸傾き情報(φ)と別途取得したマーク隙間dを用いて、アライメント時の光軸角度起因ずれを演算式「d×tanφ」により補正することで、成膜位置が高精度化され、画素パターンが高精度となる。
【0037】
なお、ここではマスクM側を移動させる方法を説明したが、微動ステージプレート部222をマスク側マークmbが形成されたマスクMと直交方向に距離αだけ移動させ、カメラ視野内での基板側マークmaの移動量βを取得する方法であってもよい。
また、光軸傾きφの検出は、位置関係が既知のキャリブレーションプレートを準備し、アライメント用カメラで取得した画像を処理することで、光軸傾きφを検出する方法であってもよい。さらに、マスクMと平行な面内での距離が既知の2つのマークを有するワー
クを準備し、2つのマークを視野F内に入れた状態で、アライメント用カメラを傾けたときの、2つのマークの距離の変化から光軸傾きを演算して取得する方法でもよい。
【0038】
図6は、マーク隙間検出工程の概略説明図である。
アライメント用カメラ271を、基板側マークma及びマスク側マークmbが視野(F)に入っている状態で、不図示のZ方向移動手段によって、Z方向に走査させたときのZ方向の位置と、アライメント用カメラ271のコントラスト値の関係を示している。ここで、Z方向とは、図1における鉛直方向のことであり、マスクMに平行な面と直交方向のことである。アライメント用カメラ271に入射する光線を点線であらわしており、アライメント用カメラ271から最も離れた点線位置が最もピントが合う位置を示している。コントラスト値は、ピントの合い具合と相関があり、コントラスト値が高いほど、ピントが合っている状態をあらわしている。アライメント用カメラ271を、基板側マークma及びウエハ側マークmbが視野(F)に入っている状態で、Z方向に走査すると、基板側マークmaにピントが合う位置Za、マスク側マークmbにピントが合う位置Zb、において、コントラスト値が極大値をとる。アライメント用カメラ271のZ方向の位置情報は、不図示のZ方向移動手段が有する位置決め用の位置センサや、別途変位センサ設けることで、容易に得ることができ、この位置情報からマーク隙間(鉛直方向における隙間情報)を検出する。すなわち、位置Zaと位置ZbのZ方向位置の差が、マーク隙間dとなる。検出したマーク隙間dと別途取得した光軸傾きφを用いて、アライメント時の光軸角度起因ずれを演算式「d×tanφ」により補正することで、成膜位置が高精度化され、画素パターンが高精度となる。
【0039】
なお、マーク隙間dを得る方法は、微動ステージプレート部222と、マスク支持ユニット23のZ方向位置情報と、基板Wの厚み情報から演算して得る方法でも構わない。ここで、基板Wの厚み情報は、変位計による挟み込み測定で取得してもよいし、特にシリコンウエハの場合には、近赤外レーザを、シリコンを透過するように照射させて得られるシリコンウエハ表裏のレーザ干渉情報から取得してもよい。
【0040】
<アライメント方法>
次に、アライメント方法について説明する。
図7は全体のシーケンスを示すフローチャート、図8は、アライメント方法の説明に使用する構成部分の配置構成を示す図であり、この配置図は、図1の全体構成図で既に説明した部分の構成は省略あるいは簡略化し、アライメント方法の説明に必要な構成を図示している。
まず、図8の配置構成について説明する。
アライメントは、基板WとマスクMとを大まかに位置合わせを行う第1アライメント工程と、基板WとマスクMとを高精度に位置合わせを行う第2アライメント工程とを有し、基板側マークma及びマスク側マークmbは、第1アライメント用に2個、第2アライメント用に2個設けられ、アライメント用カメラ271も、第1アライメント用カメラ271Aが2台、第2アライメント用カメラ271Bが2台設けられ、それぞれZ軸方向に駆動される。
本実施形態が適用されるのは、第2アライメント用カメラ271Bである。第1アライメント用カメラ271Aは、解像度が低く、視野が大きい。一方、第2アライメント用カメラ271Bは、視野は小さいが解像度が高く、位置ずれ量の許容度が小さい高精細な位置合わせで用いられる。
微動ステージ機構22は、上述した通り6軸駆動の磁気浮上機構で、6軸分の位置センサが設けられ、微動ステージプレート部222に、基板吸着ユニット24を介して基板Wが保持される。
マスクMは、開口パターンが形成されたマスク本体M1の周縁部が、マスクフレームM2に保持されている。
マスクMを支持するマスク支持ユニット23には、マスク側マークmbおよび基板側マークmaを下方から照らす照明光源57が設置されている。
マスク支持ユニット23は、粗動ステージ機構28によってZ方向だけでなく、X-Y-θ方向に移動される。粗動ステージ機構28は、X-Y-θ方向に移動させる第1粗動ユニット281と、Z軸方向に昇降させる第2粗動ユニット282を備えている。第1粗動ユニット281及び第2粗動ユニット282は、ボールねじ駆動の転がりステージや、リニアモータ駆動の転がりステージなどの浮上しない機械的な送り機構が用いられる。
この粗動ステージ機構28の固定部には、マスクMを仮受けするマスク仮受けピン283が複数設けられている。このマスク仮受けピン283は、図1で示したマスクピックアップ231として機能する。
また、粗動ステージ機構28には、基板Wを仮受けする仮受け部材29が設けられている。この仮受け部材29は、Z軸方向に延びる支柱292と、支柱292の先端から直角に延びる受爪291とを有しており、粗動ステージ機構28によってX-Y-Z-θ方向
に駆動される。
【0041】
次に、図7に示すアライメントのシーケンスの全体像について、図9及び図10を適宜参照して、説明する。
まず、図9(A)に示すように、不図示の基板ストッカから、ロボットハンド50で、成膜装置の真空容器内に基板Wが搬入される(S1)。搬入された基板Wは、粗動ステージ機構28に支持された4つの仮受け部材29の受爪291を回転させ、第2粗動ユニット282をZ軸方向に上昇させることで、ロボットハンド50から成膜装置側に受け渡される。受け渡し後、ロボットハンド50を退避させる(S2)。
次に、第1アラメント用の基板側マークmaを第1アライメント用カメラ271Aにより撮影し、図9(B)に示すように、第1粗動ユニット281によって、基板WをXYθz方向に移動させて第1アライメントを行う(S3)。この第1アライメントは、基板Wと基板吸着ユニット24との位置合わせを行うことで、基板WとマスクMとを大まかに位置合わせする工程である。たとえば、基板側マークmaを第1アライメント用カメラ271Aの視野(F)の中心にくるように位置合わせする。基板Wを支持する受爪291とマスクMも、基板Wと一緒に、第1粗動ユニット281によってXYθz方向に移動する。
基板吸着ユニット24に対する基板Wの位置合わせが終了すると、図9(C)に示すように、基板吸着ユニット24に、基板Wを静電チャックし、受爪291を退避させる(S4)。
次いで、第2粗動ユニット282によって、マスクMを基板Wに近接させ(S5)、微動ステージ機構22による基板Wの第2アライメントを行う(S6)。
第2アライメントを終了すると、マスクMを磁力印加ユニット26によって吸引する。図10(A)、(B)に示すように、磁力印加ユニット26を下降させて、基板Wを挟んでマスクMを磁気吸着し(S7)、蒸着を開始する(S8)。図10(B)では、マスクMの中央領域の周辺部が基板Wに接触していないような図となっているが、マスクMが基板Wの成膜範囲に重なるように基板WとマスクMが保持される。蒸着が終了すると、ロボットハンドによって基板Wを搬出する(S9)。
なお、上記シーケンスでは、磁力印加ユニット26によって、マスクMを基板Wに接触した状態で重ねて保持しているが、磁力印加ユニット26を使わずに、非接触の状態で、近接して保持するようにしてもよい。つまり、本実施形態には、基板WとマスクMは、重ねて又は近接させて保持される場合が含まれる。
【0042】
次に、図11、12を参照し、上記した第2アライメント工程について詳細に説明する。
まず、粗動ステージ機構28によって、マスクMを上昇させて、図12(A)に示すスタート時から、図12(B)に示すように、基板Wに対して所定位置まで近づける(S61)。次に、微動ステージ機構22によって、基板WをマスクMに接触しない位置、この
例では、0.5mmの隙間となるように、微動させる(S62)。
次に、微動ステージ機構22によって、微動ステージプレート部222とマスクフレームM2を平行にする(S63)。微動ステージ機構22に設けられた位置センサ、粗動ステージ機構28の位置センサによって、それぞれの位置が確認できるので、平行となるように制御可能である。
次に、この時の第2アライメント用の基板側マークmaとマスク側マークmb間のマーク隙間dを測定する(S64)。すなわち、第2アライメント用カメラ271BをZ軸方向に往復させ、そのコントラストのデータから、コントラストカーブの極大値となる第2アライメント用カメラ271Bの駆動ステージの位置情報からマーク隙間dを演算する。
次に、平行整合を確認する(S65)。平行整合では、S64で測定したマーク隙間dと、微動ステージ機構22に設けられた位置センサと粗動ステージ機構28の位置センサから得られる距離を比較する。整合していない場合には、基板Wと基板吸着ユニットとの間にゴミが介在していること等が考えられるため、ステップS80に進み、粗動ユニット282によって、マスクMを下降させ、受爪291を準備して、基板Wを基板吸着ユニット24として例示した静電チャックから離脱して受爪291で受け、静電チャックからやり直す。整合している場合には、次のステップS66に進む。ステップS66では、微動ステージ機構22によって、基板Wを、マスクMとの平行度を維持しながら、マスクMとの隙間が所定値となるまで、-Z方向(下方)に移動する。
次いで、マーク隙間を確認する(S67)。このマーク隙間の確認は、再度、第2アライメント用カメラ271Bを往復移動させて測定し、マーク隙間が所定値以下、例えば10μm以下、となったかどうかを確認する。
マーク隙間が所定値以下に達していない場合には、ステップ80に進み、第2粗動ユニット282を駆動してマスクMを下降させ、静電チャックからやり直す(S80)。
マーク隙間が所定値以下となっている場合には、ステップS68に進み、基板Wの第2アライメントを行う。
制御部100は、第2アライメント用カメラ271Bで取得した第2アライメント用の基板側マークmaとマスク側マークmbの画像を処理し、基板WとマスクMの位置ずれ情報を演算し、メモリ等に一時的に保存しておく。
さらに、予め計測し、保存されている第2アライメント用カメラ271Bの光軸傾き情報と、ステップS67において測定した第2アライメント用の基板側マークmaとマスク側マークmbの鉛直方向における隙間情報を用いて、位置ずれ情報の補正値を演算する。この補正値を位置ずれ情報にフィードバックして位置ずれ情報を補正する。
そして、移動制御部103は、補正された位置ずれ情報と、微動ステージ機構22の位置センサによって得られている基板のXYθz方向の位置情報とに基づいて、位置ずれ情報が予め設定された範囲となるように、微動ステージ機構22を駆動し、位置ずれ情報が減少する方向に移動させる。
次いで、アライメント位置を確認する(S69)。第2アライメントが目標値内であれば、第2アライメントを終了する。目標内に無ければ、ステップ80に進み、基板Wを静電チャックから離脱して、静電チャックによる基板吸着からやり直す。
【0043】
このマークアライメントにおける位置ずれの修正は、たとえば、図13のように条件設定して行われる。図13(A)は、基板側マークmaとマスク側マークmbの関係を示す斜視図、図13(B)は、図13(A)の平面図である。
ここでは、前提として、アライメント時に同時に参照するマークの数は、基板側マークmaが2個、マスク側マークmbが2個とする。また、基板側マークmaとマスク側マークmbの位置は、基板W、マスクM、共に、それぞれの外周部(半径150mm位置)とする。
なお、マークアライメントとは、より詳しくは、基板側マークma、maを結ぶ線分A、マスク側マークmb、mbを結ぶ線分Bを考えたとき、線分Aと線分Bに関して、下記(1)(2)を満足するように基板とマスクの相対位置を制御することである。
(1)線分Aの中点Oaと線分Bの中点Obの間の距離εをゼロに近づける。
(2)両線分A,Bのなす角γをゼロに近づける。
また、マークアライメントにおける位置ずれ量は、下記(1´)(2´)で定義される。
(1´)2つの基板側マークmaを結ぶ線分Aの中点Oa、と2つのマスク側マークmbを結ぶ線分Bの中点Obとの間の距離ε。
(2´)「線分Aと線分Bのなす角γ」×「マークの代表位置(半径150mm位置)」。
上記したマークアライメントでは、倍率成分の誤差は考えていない。倍率成分は、基板WとマスクMの熱変位差等が影響するため、温調等、他の手段で抑制する。
【0044】
<成膜プロセス>
上記アライメント工程が終了すると、図1に示した成膜源25のシャッタ(不図示)を開け、成膜材料を、マスクMを介して基板Wに成膜する。所望の厚さの成膜材料を基板Wに蒸着した後、磁力印加ユニット26を上昇させてマスクMを分離し、マスク支持ユニット23を下降させる。
次いで、不図示の搬送ロボットのロボットハンドが成膜装置11の真空容器21内に進入し、基板吸着ユニット24の電極部にゼロ(0)または逆極性の基板分離電圧が印加され、基板Wを基板吸着ユニット24から分離する。分離された基板Wは、搬送ロボットによって真空容器21から搬出される。
なお、上述の説明では、成膜装置11は、基板Wの成膜面が鉛直方向下方を向いた状態で成膜が行われる、いわゆる上向蒸着方式(デポアップ)の構成としたが、本実施形態はこれに限定はされず、基板Wが真空容器21の側面側に垂直に立てられた状態で配置され、基板Wの成膜面が重力方向と平行な状態で成膜が行われる構成であってもよい。
【0045】
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図14(A)は有機EL表示装置60の全体図、図14(B)は1画素の断面構造を表している。
図14(A)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施形態にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0046】
図14(B)は、図14(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に相当する。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために
、陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0047】
図14(B)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層を形成することができる。
【0048】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および陽極64が形成された基板63を準備する。
陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて基板63を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の陽極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて保持する。基板63とマスクとのアライメントを行い、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
電子輸送層67まで形成された基板63を金属性蒸着材料成膜装置に移動して陰極68を成膜する。金属性蒸着材料成膜装置は、蒸発加熱方式の成膜装置であってもよく、スパッタリング方式の成膜装置であってもよい。
その後、基板63をプラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板63の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0049】
11 成膜装置
21 真空容器
22 微動ステージ機構(移動手段)
23 マスク支持ユニット(マスクステージ)
24 基板吸着ユニット
25 成膜源
27 アライメント用カメラユニット
28 粗動ステージ機構(マスクステージ)
29 基板支持ユニット
100 制御部
101 位置ずれ情報演算部
102 補正値演算部
103 移動制御部
M マスク
W 基板
ma 基板側マーク
mb マスク側マーク
N 光軸
φ 光軸傾き
α 距離、β 移動量
d マーク隙間
Za,Zb ピーク位置
δ 光軸角度起因ずれ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14