(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-02
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】注射器スタビライザ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61M5/00 500
(21)【出願番号】P 2018566972
(86)(22)【出願日】2017-06-26
(86)【国際出願番号】 US2017039260
(87)【国際公開番号】W WO2018005353
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2019-05-20
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アリアーグノ, スコット リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ミュリセット, アンジェラ テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ロウシュ, ダニエル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー, デニス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン, マドレーヌ クレア
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ギン-フー
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0066862(US,A1)
【文献】米国特許第4737151(US,A)
【文献】特開2008-302237(JP,A)
【文献】特表2003-533245(JP,A)
【文献】特開昭61-262271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61P 3/02
A61P 7/04
A61P 43/00
A61K 45/00
A61K 45/06
A61K 38/36
A61K 38/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器安定装置であって、前記注射器安定装置は、
ベースと、
前記ベースの上に垂直に配置された注射器支持体であって、前記注射器支持体は、輸液セットの流体で満たされた部分を前記ベースの上に垂直に引き上げ、前記流体で満たされた部分の送達端部を水平面に対して上方に配向することにより、前記流体で満たされた部分から患者への流体の送達中に、前記流体に対する重力の効果を利用する、注射器支持体と
を備え、
前記注射器支持体は、
開口部を有する第1の保定装置であって、前記開口部の中には、ユーザのさらなる介入なしで前記輸液セットの剛直性部分が収容され、かつ、保持される、第1の保定装置と、
前記第1の保定装置と動作可能に整列され、選択的に作動されるチューブクランプであって、可撓性チューブが前記輸液セットの前記剛直性部分から前記チューブクランプを通って延在する、チューブクランプと
前記第1の保定装置と交差する横断スロットであって、前記チューブクランプは、前記横断スロットの内部にあり、かつ、前記横断スロットの内部でスライド可能である、横断スロットと
を含み、
前記選択的に作動されるチューブクランプは、前記流体で満たされた部分の前記送達端部からの前記流体の流れを可能にするために、ユーザの第1の腕によって解放可能である一方で、ユーザの第2の腕は、前記ユーザが前記流体の流れを前記第2の腕に受けるとき実質的に静止したまま、前記ベースに対して安定させる力を提供する、注射器安定装置。
【請求項2】
前記第1の保定装置は、前記注射器支持体の上面における長手方向スロットであり、前記長手方向スロットは、注射器バレルの内部に配置されたプランジャが前記送達端部に向かって押し下げられるとき、前記輸液セットの前記剛直性部分に接合された前記注射器バレルの位置および配向を維持するために十分な抵抗力で前記輸液セットの前記剛直性部分と摩擦によって係合する、請求項1に記載の注射器安定装置。
【請求項3】
前記チューブクランプは、前記長手方向スロットと整列可能な開口部を有するチューブ受け部と、前記長手方向スロットに対して略横断方向にあるクランプ区分とを含み、前記クランプ区分は、前記チューブクランプが前記横断スロットの内部で前記長手方向スロットを横切る方向にスライドするとき前記可撓性チューブを締め付けるように構成された断面面積を有する、請求項2に記載の注射器安定装置。
【請求項4】
前記クランプ区分の断面面積は、前記チューブ受け部の断面面積よりも小さい、請求項3に記載の注射器安定装置。
【請求項5】
前記横断スロットは、前記横断スロットの長さと平行な方向に延在する窪んだ陥凹を有し、前記チューブクランプは、前記陥凹の内部に凸状のスナップフィット保持部を有し、前記チューブクランプの内部で前記可撓性チューブをクランプおよび解放する作動の間、その中を横切ることができる、請求項3に記載の注射器安定装置。
【請求項6】
前記長手方向スロットは、前記輸液セットの前記剛直性部分を収容かつ保持するように構成された第1の横断方向断面積を有する第1のセグメントと、前記可撓性チューブを収容かつ保持するように構成された第2の横断方向断面積を有する第2のセグメントとを有する、請求項3に記載の注射器安定装置。
【請求項7】
前記横断スロットは、前記長手方向スロットの前記第2のセグメントと交差する、請求項4に記載の注射器安定装置。
【請求項8】
前記ベースは、持運び可能であり、前記ベースは、人間工学的ハンドセットを含み、前記ユーザは、第2の手で前記人間工学的ハンドセットを係合させることによって、前記第2の手でワーク面に対して前記注射器安定装置を安定させる、請求項1に記載の注射器安定装置。
【請求項9】
前記人間工学的ハンドセットは、指輪である、請求項4に記載の注射器安定装置。
【請求項10】
前記人間工学的ハンドセットは、前記注射器支持体の上面の表面積よりも大きい表面積を有する前記ベースの上面上に配置されている、請求項4に記載の注射器安定装置。
【請求項11】
前記ベースは、前記ユーザの第2の腕を載せる略平坦なワーク面によって支持されるようなサイズかつ形状にされた係合面を有する、請求項6に記載の注射器安定装置。
【請求項12】
前記注射器支持体は、垂直に配向されたステムによって前記ベースと一体に接合され、単一ピースの単体の構成を形成する、請求項1に記載の注射器安定装置。
【請求項13】
前記注射器支持体は、輸液セットの部分を受け入れて前記輸液セットの前記部分を保持するように構成された長手方向スロットを有する上面を含み、前記輸液セットの注射器バレルは、前記注射器バレルの送達端部が注射器プランジャの下で垂直にオフセットされ、かつ、前記注射器バレルが前記ベースに対して高められた位置に保持されるように水平軸上の角度で配向されており、前記角度は、5度よりも大きく、かつ、90度未満であり、前記輸液セットの前記部分と前記長手方向スロットの間の摩擦係合は、前記バレルの内部に配置されたプランジャが前記送達端部に向かって押し下げられるとき、前記注射器バレルの位置および配向を維持するために十分である、請求項8に記載の注射器安定装置。
【請求項14】
注射器バレルおよび前記バレルの内部でスライド可能なプランジャを含む注射器をさらに備える、請求項1に記載の注射器安定装置。
【請求項15】
前記注射器バレルの内部に治療液をさらに備え、前記治療液は、肝臓疾患によって引き起こされた止血障害を処置する、請求項14に記載の注射器安定装置。
【請求項16】
前記注射器バレルの内部に治療液をさらに備え、前記治療液は、出血性障害を処置する、請求項14に記載の注射器安定装置。
【請求項17】
前記出血性障害は、凝固因子の欠損症である、請求項16に記載の注射器安定装置。
【請求項18】
前記凝固因子は、第V因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、または、フォンビルブラント因子である、請求項17に記載の注射器安定装置。
【請求項19】
前記注射器バレルの内部の前記治療液は、組換え因子VIII(rFVIII)、凝血促進剤バイパス薬、または、組換えフォンビルブラント因子(rVWF)である、請求項16に記載の注射器安定装置。
【請求項20】
前記注射器は、前記注射器支持体に取り付けられたフィッティングにねじ止めされている、請求項14に記載の注射器安定装置。
【請求項21】
前記注射器支持体の内部の取り外し可能なフィッティング受け部をさらに備え、前記フィッティング受け部は、その中にフィッティングする輸液セットの部分を収容かつ保持するように構成されたスロットを有する、請求項1に記載の注射器安定装置。
【請求項22】
注射器安定装置であって、
人間工学的ハンドセットを有する持運び可能なベースと、
前記ベースの上に垂直に配設された注射器支持体と
を備え、
前記注射器支持体は、
長さ方向の開口部を有する第1のチャネルであって、前記長さ方向の開口部は、輸液セットの部分を受け入れ、かつ、前記輸液セットの前記部分を保持するように構成されており、前記輸液セットの注射器バレルは、前記注射器バレルの送達端部が注射器プランジャの下で垂直にオフセットされ、かつ、前記注射器バレルが前記ベースに対して高められた位置に保持されるように水平軸上の角度で配向されており、前記角度は、5度よりも大きく、かつ、90度未満である、第1のチャネルと、
前記第1のチャネルを横切り、かつ、前記第1のチャネルと交差する第2のチャネルであって、選択的に作動されるチューブクランプは、前記第2のチャネルの内部に配置され、かつ、その中でスライド可能であり、前記チューブクランプは、前記第1のチャネルと整列可能な開口部を有するチューブ受け部と、前記第1のチャネルに対して略横断方向のクランプ区分とを含み、前記クランプ区分は、前記チューブクランプが前記第2のチャネルの内部で前記第1のチャネルを横切る方向にスライドするとき前記輸液セットの可撓性チューブを締め付けるように構成された断面面積を有する、第2のチャネルと
を含む、注射器安定装置。
【請求項23】
前記選択的に作動されるチューブクランプは、前記注射器の前記バレルの前記送達端部からの前記流体の流れを可能にするために、ユーザの第1の腕によって解放可能である一方で、前記ユーザの第2の腕は、前記ユーザが前記第2の腕に前記流体の流れを受けるとき実質的に静止したまま、前記ベースの前記人間工学的ハンドセットに対して安定させる力を提供する、請求項22に記載の注射器安定装置。
【請求項24】
前記注射器支持体は、垂直に配向されたステムによって前記ベースと一体に接合され、単一ピースの単体の構成を形成する、請求項23に記載の注射器安定装置。
【請求項25】
前記注射器支持体の内部の取り外し可能なフィッティング受け部をさらに備え、前記フィッティング受け部は、その中にフィッティングする輸液セットの部分を収容かつ保持するように構成されたスロットを有する、請求項24に記載の注射器安定装置。
【請求項26】
注射器安定装置であって、前記注射器安定装置は、
ベースと、
前記ベースの上に垂直に配置された注射器支持体であって、前記注射器支持体は、輸液セットの流体で満たされた部分を前記ベースの上に垂直に引き上げ、前記流体で満たされた部分を水平面に対して90度未満の角度で上方へ向けることにより、前記流体で満たされた部分から患者への流体の送達中に、前記流体に対する重力の効果を利用する、注射器支持体と
を備え、
前記注射器支持体は、
開口部を有する第1の保定装置であって、前記開口部の中には、ユーザのさらなる介入なしで前記輸液セットの剛直性部分が収容され、かつ、保持される、第1の保定装置と、
前記第1の保定装置と動作可能に整列され、選択的に作動されるチューブクランプであって、可撓性チューブが前記輸液セットの前記剛直性部分から前記チューブクランプを通って延在する、チューブクランプと
前記第1の保定装置と交差する横断スロットであって、前記チューブクランプは、前記横断スロットの内部にあり、かつ、前記横断スロットの内部でスライド可能である、横断スロットと
を含み、
前記ベースおよび前記注射器支持体の配置は、治療液を自己投与している患者が、第1の腕で前記チューブクランプおよび前記流体で満たされた部分を操作し得る一方で、第2の腕を実質的に静止させたまま前記ベースに対して安定させる力を提供するときに、前記輸液セットを介して前記第2の腕に治療液を受けるように、前記輸液セットの前記流体で満たされた部分を位置決めし、配向し、保持する、注射器安定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
特定の疾患に苦しむ患者は、輸液セットによって患者の手を含む腕に送達される治療を頻繁に受けなければならないことが多い。この治療中に、流体で満たされた注射器は、医療用チューブを介して針またはカニューレを通って患者に送達される薬物を含む。
【背景技術】
【0002】
特に凝固因子の先天性欠損症または後天性欠損症といった出血性疾患は、一般的には因子補充によって処置される。先天性凝固障害は、血友病、凝固因子VIIIの欠損症(血友病A)または凝固因子IXの欠損症(血友病B)に関する劣性のX連鎖障害、およびフォンビルブラント因子の重い欠損症をともなうまれな出血性障害であるフォンビルブラント病を含む。血友病Cは、第XI因子の欠損症によって引き起こされる血友病の軽症型である。血友病Cは通常は無症候性であるが、手術中に因子補充治療を必要とすることがある。後天性凝固障害は、疾患経過の結果として出血の既往歴のない各個人に生じることがある。たとえば、後天性凝固障害は、インヒビタもしくは第VIII因子、フォンビルブラント因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子などの血液凝固因子に対する自己免疫によりまたは肝臓疾患によって引き起こされる凝固因子の合成低下に関連した止血障害によって、引き起こされ得る。血友病Aおよび第VIII因子インヒビタの患者に対する伝統的治療は、組換え因子VIII(rFVIII)のような治療、またはたとえばFEIBAもしくは組換え因子ビラといった凝血促進剤バイパス薬によって達成される。フォンビルブラント病に対する伝統的治療は、組換えフォンビルブラント因子(rVWF)のような治療によって達成される。
【0003】
いくつかの静脈の生物学的処置は、所望の用量レジメンまたは治療レジメンを達成するために複数の連続した注射器の管理を必要とする。これは、1)液量が大きいため、2)単一の注射器に貯留することによって生物製剤の特性に悪影響があるとき、または3)複数の生物学的製剤を単一の注射器に貯留せずに共に投与しなければならないとき、生じる可能性がある。
【0004】
頻度が増加することにより、生物製剤の自宅設定の自己投与は医療従事者による臨床設定の投与よりも好まれる。患者にできるようにすることは、コスト効率が良く、しかも患者の生活に対する全般的な影響を軽減する。しかしながら、複数の注射器の静脈内投与に固有の事例では、自己投与する患者にとって人間工学の課題がある。注入針が、たとえば手の末梢静脈に一旦挿入されると、その手で作業するのは困難になる。その手を継続的に使用するのはかなり不快感があり、または針が滑り出てしまう可能性がある。
【0005】
たとえば、フォンビルブラント病に対する単一の治療セッションが、代表的には、それぞれ患者に送達されるrVWFを含む医薬品組成物で満たされた複数の注射器を必要とする。治療薬量を自己投与する患者にとって、針またはカニューレを腕に挿入されると、治療中にはその腕の使用を制限されるので、注射器を再装填するかまたは輸液セットに取り付けられた注射器を交換するのは困難であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
治療液を投与するためのシステムおよび方法が提供される。本明細書で説明される特定のシステムおよび方法は、1人のユーザが自分自身で静脈内に治療液を投与することを許容するものである。本発明の主題は、場合によっては、相互関係がある製品、特定の問題に対する代替案、ならびに/あるいは1つまたは複数のシステムおよび/または用品の複数の異なる使用法を包含するものである。
【0007】
一態様によれば注射器安定装置が提供される。注射器安定装置はベースおよび注射器支持体を含む。注射器支持体はベースの上に垂直に配設され、輸液セットの流体で満たされた部分をベースの上に垂直に引き上げて、流体で満たされた部分の送達端部を水平面に対して上方に配向し、流体で満たされた部分から患者への流体の送達中に、流体に対する重力の効果を利用する。注射器支持体は、第1の保定装置および選択的に作動されるチューブクランプを含む。輸液セットの剛直性部分は、ユーザのさらなる介入がなくても第1の保定装置の開口部の内部に収容かつ保持される。いくつかの実施形態では、選択的に作動されるチューブクランプが第1の保定装置と動作可能に整列され、可撓性チューブが、輸液セットの剛直性部分からチューブクランプを通って延在する。ユーザの第1の腕は、選択的に作動されるチューブクランプを解放するために使用されて、流体で満たされた部分の送達端部からの流体の流れを可能にする一方で、ユーザの第2の腕は、ユーザが第2の腕への流体の流れを受けるとき実質的に静止したまま、ベースに対して安定させる力を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の保定装置は、注射器支持体の上面における長手方向スロットであり、長手方向スロットは、注射器バレルの内部に配設されたプランジャが送達端部に向かって下方に押し下げられるとき、摩擦によって、輸液セットの剛直性部分に接合されたバレルに固定するに十分な抵抗力で輸液セットの剛直性部分と係合する。注射器支持体は長手方向スロットと交差する横断スロットを含み得、チューブクランプは横断スロットの内部にあって、かつその中でスライド可能である。チューブクランプは、長手方向スロットと整列可能な開口部を有するチューブ受け部と、長手方向スロットに対して略横断方向にあるクランプ区分とを含み得る。クランプ区分は、チューブクランプが長手方向スロットの内部で長手方向スロットを横切る方向にスライドするとき輸液セットの可撓性チューブを締め付けるように構成された断面面積を有し得る。クランプ区分の断面面積はチューブ受け部の断面面積未満でよい。横断スロットは、横断スロットの長さと平行な方向に延在する窪んだ陥凹を有し得、チューブクランプは、陥凹の内部に凸状のスナップフィット保持部を有し、チューブクランプの内部で可撓性チューブをクランプおよび解放する作動の間、スロットの中を横切ることができる。長手方向スロットは、輸液セットの剛直性部分を収容かつ保持するように構成された第1の横断方向断面積を有する第1のセグメントと、可撓性チューブを収容かつ保持するように構成された第2の横断方向断面積を有する第2のセグメントとを有し得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、横断スロットは長手方向スロットの第2のセグメントと交差してよい。ベースは持運び可能でよく、人間工学的ハンドセットを含み得、ユーザは、第2の手で、ワーク面に対して人間工学的ハンドセットを係合させることにより、注射器安定装置を安定させる。
【0010】
いくつかの実施形態では、人間工学的ハンドセットは、注射器支持体の上面の表面積よりも大きい表面積を有するベースの上面上に配置されてよい。ベースは、ユーザの第2の腕を載せる略平坦なワーク面によって支持されるようなサイズかつ形状にされた係合面を有し得る。製作を簡単にするために、注射器支持体は、垂直に配向されたステムによってベースと一体に接合される。注射器支持体は、輸液セットの部分を受け入れ、かつ輸液セットの部分を保持するように構成された長手方向スロットを有する上面をさらに含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、輸液セットの注射器バレルは、注射器バレルの送達端部が注射器プランジャの下で垂直にオフセットされて、注射器バレルがベースに対して高められた位置に保持されるように水平軸上の角度で配向される。この角度は5度よりも大きく、かつ90度未満でよい。輸液セットの部分と長手方向スロットの間の摩擦係合は、バレルの内部に配設されたプランジャが送達端部に向かって下方に押し下げられるとき、注射器バレルの位置および配向を維持するに十分である。注射器安定装置はまた、注射器支持体の内部に取り外し可能なフィッティング受け部も含み、これは、輸液セットのフィッティングの部分を収容かつ保持するように構成されたスロットを有する。
【0012】
別の態様によれば、注射器安定装置は持運び可能なベースおよび注射器支持体を含む。持運び可能なベースは、ワーク面および人間工学的ハンドセットに対して注射器スタビライザを支持する係合面を有する。ベースの上に垂直に配設された注射器支持体は、第1のチャネル、第2のチャネル、および選択的に作動されるチューブクランプを含む。第1のチャネルにおいて、長さ方向の開口部は、輸液セットの部分を受け入れ、かつ輸液セットの注射器バレルを水平軸の上で所定の角度で配向されるように保持するよう構成されている。この構成において、注射器バレルの送達端部は注射器プランジャの下で垂直にオフセットされ、注射器バレルはベースに対して高められた位置で保持される。その上、言及された角度は5度よりも大きく、かつ90度未満である。また、第2のチャネルが第1のチャネルに対して横断方向であつて、かつそれと交差し、第2のチャネルの内部にはチューブクランプがスライド可能に配設されている。チューブクランプは、第1のチャネルと整列可能な開口部を有するチューブ受け部と、第1のチャネルに対して略横断方向にあるクランプ区分とを含む。クランプ区分の断面面積は、チューブクランプが第2のチャネルの内部を第1のチャネルに対して横断方向にスライドするとき、輸液セットの可撓性チューブを締め付けるように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、ユーザは、注射器のバレルの送達端部からの流体の流れを可能にするように、ユーザの第2の腕を実質的に静止させたまま、ユーザの第1の腕でチューブクランプを解放することができる。加えて、ユーザが流体の流れを第2の腕に受けるとき、スタビライザは、ベースの人間工学的ハンドセットに対して安定させる力を提供する。注射器支持体は、垂直に配向されたステムによってベースと一体に接合されてよく、それとともに単一ピースの単体の構成を形成する。注射器安定装置は、注射器支持体の内部に取り外し可能なフィッティング受け部をさらに備えてよく、これは、輸液セットのフィッティングの部分をその中に収容かつ保持するように構成されたスロットを有する。
【0014】
さらに別の態様によれば、本注射器安定装置はベースおよび注射器支持体を含む。注射器支持体はベースの上に垂直に配設され、輸液セットの流体で満たされた部分をベースの上に垂直に引き上げて、流体で満たされた部分を水平面に対して90度未満の角度で上方へ角度付け、流体で満たされた部分から患者への流体の送達中に、流体に対する重力の効果を利用する。注射器支持体は、第1の保定装置および選択的に作動されるチューブクランプを含み得る。第1の保定装置の開口部は、ユーザのさらなる介入なしで輸液セットの剛直性部分を収容かつ保持し得る。選択的に作動されるチューブクランプが第1の保定装置と動作可能に整列され得、その結果、可撓性チューブが、輸液セットの剛直性部分からチューブクランプを通って延在する。ベースおよび注射器支持体の個々の配置は、治療液を自己投与している患者が、第1の腕でチューブクランプおよび流体で満たされた部分を操作する一方で、第2の腕を実質的に静止させたままベースに対して安定させる力を提供するとき、輸液セットによって第2の腕に治療液を受けることができるように、輸液セットの流体で満たされた部分を配向かつ保持し得る。
【0015】
本発明の他の利点および新規な特徴が、本発明の種々の非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から、添付の図とともに検討されたとき明らかになる。本明細書と、参照によって組み込まれる文献とが、矛盾する開示および/または一貫しない開示を含む場合には、本明細書が支配するものとする。参照によって組み込まれた2つまたはそれよりも多い文献が、互いに矛盾する開示および/または一貫しない開示を含む場合には、最近の発効日を有する文献が支配するも。
【0016】
本発明の非限定的な実施形態が、原寸に比例にしない添付の概略図を参照しながら例として説明される。図では、図示されたそれぞれの同一の構成要素またはほぼ同一の構成要素は、一般的には単一の数字で表される。明瞭さのために、すべての図においてすべての構成要素にラベルが付けられるわけではなく、また、当業者が本発明を理解することを可能にするために解説が不要な場合には、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されるわけではない。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
注射器安定装置であって、
ベースと、
前記ベースの上に垂直に配設され、輸液セットの流体で満たされた部分を前記ベースの上に垂直に引き上げて、前記流体で満たされた部分の送達端部を水平面に対して上方に配向し、前記流体で満たされた部分から患者への流体の送達中に、前記流体に対する重力の効果を利用する注射器支持体であって、
ユーザのさらなる介入なしで前記輸液セットの剛直性部分を収容してその中に保持する開口部を有する第1の保定装置と、
前記第1の保定装置と動作可能に整列され、選択的に作動されるチューブクランプであって、可撓性チューブが前記輸液セットの前記剛直性部分から前記チューブクランプを通って延在する、チューブクランプとを備える、注射器支持体とを備え、
前記選択的に作動されるチューブクランプが、前記流体で満たされた部分の前記送達端部からの前記流体の流れを可能にするために、ユーザの第1の腕によって解放可能である一方で、ユーザの第2の腕が、前記ユーザが前記流体の流れを前記第2の腕に受けるとき実質的に静止したまま、前記ベースに対して安定させる力を提供する、注射器安定装置。
(項目2)
前記第1の保定装置が前記注射器支持体の上面における長手方向スロットであり、前記長手方向スロットが、注射器バレルの内部に配設されたプランジャが前記送達端部に向かって押し下げられるとき、摩擦によって、前記輸液セットの前記剛直性部分に接合された前記注射器バレルの位置および配向を維持するに十分な抵抗力で前記輸液セットの前記剛直性部分と係合する、項目1に記載の注射器安定装置。
(項目3)
前記注射器支持体が、前記長手方向スロットと交差する横断スロットをさらに備え、前記チューブクランプが前記横断スロットの内部にあり、かつその内部でスライド可能な、項目2に記載の注射器安定装置。
(項目4)
前記チューブクランプが、前記長手方向スロットと整列可能な開口部を有するチューブ受け部と、前記長手方向スロットに対して略横断方向にあるクランプ区分とを備え、前記クランプ区分が、前記チューブクランプが前記長手方向スロットの内部で前記長手方向スロットを横切る方向にスライドするとき前記輸液セットの可撓性チューブを締め付けるように構成された断面面積を有する、項目3に記載の注射器安定装置。
(項目5)
前記クランプ区分の断面面積が前記チューブ受け部の断面面積よりも小さい、項目4に記載の注射器安定装置。
(項目6)
前記横断スロットが、前記横断スロットの長さと平行な方向に延在する窪んだ陥凹を有し、前記チューブクランプが、前記陥凹の内部に凸状のスナップフィット保持部を有し、前記チューブクランプの内部で前記可撓性チューブをクランプおよび解放する作動の間、その中を横切ることができる、項目4に記載の注射器安定装置。
(項目7)
前記長手方向スロットが、前記輸液セットの前記剛直性部分を収容かつ保持するように構成された第1の横断方向断面積を有する第1のセグメントと、前記可撓性チューブを収容かつ保持するように構成された第2の横断方向断面積を有する第2のセグメントとを有する、項目4に記載の注射器安定装置。
(項目8)
前記横断スロットが前記長手方向スロットの前記第2のセグメントと交差する、項目5に記載の注射器安定装置。
(項目9)
前記ベースが持運び可能であって人間工学的ハンドセットを備え、前記ユーザが、第2の手で、ワーク面に対して前記人間工学的ハンドセットを係合させることにより、前記注射器安定装置を安定させる、項目1に記載の注射器安定装置。
(項目10)
前記人間工学的ハンドセットが指輪である、項目5に記載の注射器安定装置。
(項目11)
前記人間工学的ハンドセットが、注射器支持体の上面の表面積よりも大きい表面積を有する前記ベースの上面上に配置されている、項目5に記載の注射器安定装置。
(項目12)
前記ベースが、前記ユーザの第2の腕を載せる略平坦なワーク面によって支持されるようなサイズかつ形状にされた係合面を有する、項目7に記載の注射器安定装置。
(項目13)
前記注射器支持体が、垂直に配向されたステムによって前記ベースと一体に接合され、単一ピースの単体の構成を形成する、項目1に記載の注射器安定装置。
(項目14)
前記注射器支持体が、輸液セットの部分を受け入れて前記輸液セットの前記部分を保持するように構成された長手方向スロットを有する上面を備え、前記輸液セットの注射器バレルは、前記注射器バレルの送達端部が注射器プランジャの下で垂直にオフセットされて、前記注射器バレルが前記ベースに対して高められた位置に保持されるように水平軸上の角度で配向されており、前記角度が5度よりも大きく、かつ90度未満であって、前記輸液セットの前記部分と前記長手方向スロットの間の摩擦係合が、前記バレルの内部に配設されたプランジャが前記送達端部に向かって押し下げられるとき、前記注射器バレルの位置および配向を維持するに十分である、項目9に記載の注射器安定装置。
(項目15)
注射器バレルおよび前記バレルの内部でスライド可能なプランジャを備える注射器をさらに備える、項目1に記載の注射器安定装置。
(項目16)
肝臓疾患によって引き起こされた止血障害を処置する治療液を前記注射器バレルの内部にさらに含む、項目15に記載の注射器安定装置。
(項目17)
出血性障害を処置する治療液を前記注射器バレルの内部にさらに含む、項目15に記載の注射器安定装置。
(項目18)
前記出血性障害が凝固因子の欠損症である、項目17に記載の注射器安定装置。
(項目19)
前記凝固因子が、第V因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、またはフォンビルブラント因子である、項目18に記載の注射器安定装置。
(項目20)
前記注射器バレルの内部の前記治療液が、組換え因子VIII(rFVIII)、凝血促進剤バイパス薬、または組換えフォンビルブラント因子(rVWF)である、項目17に記載の注射器安定装置。
(項目21)
前記注射器が、前記注射器支持体に取り付けられたフィッティングにねじ止めされている、項目15に記載の注射器安定装置。
(項目22)
前記注射器支持体の内部の取り外し可能なフィッティング受け部であって、輸液セットのフィッティングの部分をその中に収容かつ保持するように構成されたスロットを有する、フィッティング受け部をさらに備える、項目1に記載の注射器安定装置。
(項目23)
注射器安定装置であって、
ワーク面におよび人間工学的ハンドセット対して注射器スタビライザを支持する係合面を有する持運び可能なベースと、
前記ベースの上に垂直に配設された注射器支持体であって、
輸液セットの一部分をその中に受け入れ、かつ前記輸液セットの一部分を保持するように構成された長さ方向の開口部を有する第1のチャネルであって、前記輸液セットの注射器バレルは、前記注射器バレルの送達端部が注射器プランジャの下で垂直にオフセットされて、前記注射器バレルが前記ベースに対して高められた位置に保持されるように水平軸上の角度で配向されており、前記角度が5度よりも大きく、かつ90度未満である、第1のチャネルと、
前記第1のチャネルと交差して横切る第2のチャネルであって、選択的に作動されるチューブクランプは、前記第2のチャネルの内部に配設され、その中でスライド可能であり、前記チューブクランプが、前記第1のチャネルと整列可能な開口部を有するチューブ受け部、および前記第1のチャネルに対し略横断方向のクランプ区分を備え、前記クランプ区分が、前記チューブクランプが前記第2のチャネルの内部で前記第1のチャネルを横切る方向にスライドするとき前記輸液セットの可撓性チューブを締め付けるように構成された断面面積を有する、第2のチャネルとを備える、注射器支持体とを備える、注射器安定装置。
(項目24)
前記選択的に作動されるチューブクランプが、ユーザの第1の腕によって解放可能であり、前記注射器の前記バレルの前記送達端部からの前記流体の流れを可能にする一方で、前記ユーザの第2の腕が、前記ユーザが前記第2の腕に前記流体の流れを受けるとき実質的に静止したまま、前記ベースの前記人間工学的ハンドセットに対して安定させる力を提供する、項目23に記載の注射器安定装置。
(項目25)
前記注射器支持体が、垂直に配向されたステムによって前記ベースと一体に接合され、それとともに単一ピースの単体の構成を形成する、項目24に記載の注射器安定装置。
(項目26)
前記注射器支持体の内部の取り外し可能なフィッティング受け部であって、輸液セットのフィッティングの部分をその中に収容かつ保持するように構成されたスロットを有する、フィッティング受け部をさらに備える、項目25に記載の注射器安定装置。
(項目27)
注射器安定装置であって、
ベースと、
前記ベースの上に垂直に配設され、輸液セットの流体で満たされた部分を前記ベースの上に垂直に引き上げて、前記流体で満たされた部分を水平面に対して90度未満の角度で上方へ向け、前記流体で満たされた部分から患者への流体の送達中に、前記流体に対する重力の効果を利用する注射器支持体であって、
ユーザのさらなる介入なしで前記輸液セットの剛直性部分をその中に収容かつ保持する開口部を有する第1の保定装置と、
前記第1の保定装置と動作可能に整列され、選択的に作動されるチューブクランプであって、可撓性チューブが前記輸液セットの前記剛直性部分から前記チューブクランプを通って延在する、チューブクランプとを備える、注射器支持体とを備え、
前記ベースおよび注射器支持体の配置は、治療液を自己投与している患者が、第1の腕で前記チューブクランプおよび前記流体で満たされた部分を操作し得る一方で、第2の腕を実質的に静止させたまま前記ベースに対して安定させる力を提供し、前記輸液セットを介して前記第2の腕に治療液を受けるように、前記輸液セットの前記流体で満たされた部分を位置決め、配向、かつ保持する、注射器安定装置。
(項目28)
注射器安定装置を使用する方法であって、
第1の腕を使用して、チューブクランプを、前記チューブクランプの内部の管が締めつけられ、かつ閉じられる閉位置へ移動するステップと、
輸液セットのカニューレが第2の腕に取り付けられたままであるように、前記第2の腕で前記注射器スタビライザのベースを安定させながら、前記注射器安定装置に取り付けられたフィッティングから、前記第1の腕を使用してねじを回して前記第1の注射器を分離するステップと、
前記第2の腕で前記ベースを安定させながら、前記第1の腕を使用して前記フィッティングに第2の注射器をねじ止めするステップと、
前記第2の腕が安定した状態で、前記第1の腕を使用して前記チューブクランプを開位置へ移動するステップとを含む、方法。
(項目29)
前記カニューレを通し介して前記第2の腕に流体を押し込むために、前記第2の腕で前記ベースを安定させながら、前記第1の腕を使用して前記第2の注射器のプランジャを前記第2の注射器の送達端部に向かって押し進めるステップをさらに含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記注射器スタビライザが、
前記ベースの上に垂直に配設された注射器支持体であって、前記第2の注射器を前記ベースの上に垂直に引き上げて、前記第2の注射器の送達端部を水平面に対して上方に配向し、注射器からユーザへの流体の送達中に、前記流体に対する重力の効果を利用する、注射器支持体を備え、前記注射器支持体が、
ユーザのさらなる介入なしで輸液セットの剛直性部分を収容かつ保持する開口部を有する第1の保定装置と、
前記第1の保定装置と動作可能に整列され、選択的に作動されるチューブクランプであって、可撓性チューブが前記輸液セットの前記剛直性部分から前記チューブクランプを通って延在する、チューブクランプとを備え、
前記選択的に作動されるチューブクランプが、ユーザの第1の腕によって解放可能であり、前記流体で満たされた部分の前記送達端部からの前記流体の流れを可能にし、ユーザの第2の腕が、前記ユーザが前記第2の腕に前記流体の流れを受けるとき実質的に静止したまま、前記ベースに対して安定させる力を提供する、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記注射器スタビライザの前記ベースが持運び可能であり、ワーク面および人間工学的ハンドセットに対して前記注射器スタビライザを支持する係合面を有し、前記注射器スタビライザが、
前記ベースの上に垂直に配設された注射器支持体であって、
輸液セットの一部分を受け入れ、かつ前記輸液セットの一部分をその中に保持するように構成された長さ方向の開口部を有する第1のチャネルであって、前記輸液セットの注射器バレルは、前記注射器バレルの送達端部が注射器プランジャの下で垂直にオフセットされて、前記注射器バレルが前記ベースに対して高められた位置に保持されるように水平軸上の角度で配向されており、前記角度が5度よりも大きく、かつ90度未満である、第1のチャネルと、
前記第1のチャネルと交差して横切る第2のチャネルであって、選択的に作動されるチューブクランプは、前記第2のチャネルの内部に配設され、その中でスライド可能であり、前記選択的に作動されるチューブクランプが、前記第1のチャネルと整列可能な開口部を有するチューブ受け部、および前記第1のチャネルに対し略横断方向のクランプ区分を備え、前記クランプ区分が、前記選択的に作動されるチューブクランプが前記第2のチャネルの内部で前記第1のチャネルを横切る方向にスライドするとき前記輸液セットの可撓性チューブを締め付けるように構成された断面面積を有する、第2のチャネルとを備える、注射器支持体をさらに備える、項目28に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、注射器バレルから患者へ治療液の流れを可能にするための開状態にあるチューブクランプを使用する一態様による注射器スタビライザの斜視図である。
【
図2】
図2は、閉位置にあるチューブクランプを示す、本発明の一態様による注射器スタビライザの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の注射器スタビライザの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4の軸6-6に沿って得られた
図2の注射器スタビライザの断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一態様による注射器スタビライザの代替実施形態の斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の一態様による注射器スタビライザの代替実施形態の斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の一態様による注射器スタビライザの代替実施形態の斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の一態様による注射器スタビライザの代替実施形態の斜視図である。
【
図16】
図16は、本発明の一態様による注射器スタビライザの代替実施形態の斜視図である。
【
図19】
図19は、本発明の一態様による注射器スタビライザの代替実施形態の斜視図である。
【
図22】
図22は、選択的に作動されるチューブクランプの斜視図である。
【
図24】
図24は、
図23の選択的に作動されるチューブクランプの軸24-24に沿って得られた断面図である。
【
図25】
図25は、
図23の選択的に作動されるチューブクランプの軸25-25に沿って得られた断面図である。
【
図26】
図26は、
図23の選択的に作動されるチューブクランプの軸26-26に沿って得られた断面図である。
【
図27】
図27は、輸液セットの部分をともなう
図2の注射器スタビライザの斜視図である。
【
図28】
図28は、輸液セットの部分を取り付けられた
図2の注射器スタビライザの斜視図である。
【
図29】
図29は、輸液セットを取り付けられた
図2の注射器スタビライザの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本発明のいくつかの態様は治療液の投与に関する。いくつかの態様によれば、1人のユーザが自分で静脈内に治療液を投与することを可能にする装置が提供される。
【0019】
本明細書では提供される注射器スタビライザが説明され、いくつかの実施形態では、上記で論じられた問題および他の問題を解決すること、ならびに従前の治療の送達デバイスによって提供されない利点および態様を提供することが説明される。本注射器スタビライザの特徴および利点の十分な議論は、添付図面を参照しながら進む以下の詳細な説明に譲る。
【0020】
図を全体的に参照すると、注射器安定装置、すなわち簡単には注射器スタビライザ10が図示されている。注射器スタビライザ10は、ベース14と、概してステム22または以下でより詳細に説明される、ワーク面に対する所望の位置を達成するために適切な他の構造によって、ベース14の上に垂直に配設された注射器支持体18とを有する。一実施形態では、注射器支持体18は、垂直に配向されたステムまたはアーム22によりベース18と一体に接合され、単一ピースの単体の一体式構造を形成する。
【0021】
一態様によれば、いくつかの実施形態では、注射器スタビライザ10の一般目的は、患者またはユーザが、第1の腕を相対的に静止させるかまたは動きを止めたまま、第2の腕を使用して、薬を担持する注射器を操作して、輸液セットによる輸液療法または薬を自己投与するのを可能にすることである。このようにして、注射器スタビライザ10は、薬を担持する容器(すなわち注射器)を引き上げ、支持、かつ配向し得る一方で、注射器からの薬送達も調整し得る。これらの注射器スタビライザ10は、人間工学的で概して持運び可能であり、卓上で使用するようなサイズ、形状、構築として構成される。
【0022】
いくつかの実施形態では、ステム22は注射器スタビライザ10の高さを設定する。注射器スタビライザの高さは、概して、輸液セットからの針またはカニューレが患者/ユーザの腕の内部にセットされる間、ユーザが注射器のプランジャを作動させることができる快適なユーザレベルで注射器を配置するように選択される。いくつかの実施形態では、注射器スタビライザの高さは2インチ~10インチ(5.1cm~25.4cm)であり得る。
【0023】
図2~
図6に図示された一実施形態では、ベース14は上面26および反対の下部面30を有する。この実施形態では、ベース14は卵形の楕円形状であり得る楕円形を有し、図示のような幅の広い卵形でもよい。このベース14の形状は、安定性をもたらすために幅よりも長さが大きく、
図2~
図6に示された幅の広い卵形の形状は、ほぼステム22において交差する長軸と短軸を有する。
【0024】
下部面30は、シート38の内部にリング34を有する。リング34は、柔軟な弾性素材から生産されてよく、それによってベース14とベース14を支持するワーク面の間の摩擦が増加する。リングは、摩擦すなわち機械的はめ合い、接着接合、溶接、またはマルチショット成形によってベースに固定され得る。したがって、リング34は、ユーザが腕を載せるように略平坦で水平に配向されたワーク面に対する係合面をもたらし得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、上面26は人間工学的特徴またはハンドセット40を有し得る。この人間工学的特徴40は、ユーザが、使用中に注射器スタビライザ10を強化、支持または安定させることができるように配置される。
図2~
図6に図示された人間工学的特徴40は、ベース14の卵形の形状によって提供される。卵形の形状は、本質的に、長軸に沿って上面26の表面積を拡張し、ユーザの手または腕が容易に到達するアヒルのくちばし(ダックビル)または舌を形成し、上面26に力を提供し、使用中の不要な移動または望ましくない移動に対して注射器スタビライザを強化する。ここで、ベース14の上面26の表面積は注射器支持体18の上面の表面積よりも大きい。
【0026】
図7~
図18に図示された他の実施形態では、人間工学的特徴またはハンドセットは指輪42などの1つまたは複数のフィンガレシーバである。
【0027】
図2~
図21に図示された実施形態による注射器支持体18は、構造上は、ユーザまたは患者に対する流体の治療送達の全体にわたって輸液セット44を所望の位置に維持するように構成されている。これは、ユーザがプランジャ50を作動させて、流体を、注射器バレルから管54を通し、カニューレまたは針58を介してユーザに自分の腕に押し込む間に注射器46を保持することを含む。
【0028】
図2~
図15および
図19~
図21に示されるように、注射器支持体18は、注射器46の送達端部62を、プランジャ50が挿入される対向端部66のベースの上の垂直高さよりも低いベース14の上の垂直高さに位置決めするような角度で、注射器46を配向し得る。この位置決めは、重力の効果を利用する一方で、ユーザにとってプランジャ50にアクセスして作動させる際の快適さおよび人間工学的な使いやすさの点で有利な場所および位置にプランジャ50を置く。
【0029】
いくつかの実施形態では、注射器支持体18は、輸液セット44の剛直性部分を収容する第1のチャネルなどの保定装置を有する。第1のチャネルは、ほぼ注射器46の送達端部62である、輸液セット44のこの剛直性部分、またはスナップフィット配置などの摩擦係合によるフィッティングを受け入れ、かつ保持するように構成されている。第1のチャネルの構成により、輸液セット44の注射器バレル68は、注射器バレル68がベース14に対して高められた位置に保持されて、注射器46の送達端部62が注射器プランジャ50の下で垂直にオフセットされるような角度で水平軸の上に配向され得、この角度は、5度よりも大きく、かつ90度未満であり、いくつかの実施形態では5度と75度の間にあり、いくつかの実施形態では約15度である。
【0030】
図2~
図21に図示されたように、いくつかの実施形態では、第1のチャネルは、注射器支持体18の上面72における長手方向の第1のスロット70である。それゆえに、第1のスロット70は、輸液セットの部分を受け入れるように構成された長さ方向の開口部を有し、これは、代表には、ルアーフィッティングなどの注射器バレル68に取り付けられたチューブコネクタなど、フィッティング74の狭い延長部である。第1のスロット70は、その形状がフィッティングの狭い延長部の形状と相補形になるように、テーパー状でよい。一実施形態では、第1のスロット70は、輸液セット44の剛直性部分を収容かつ保持するように構成された第1の横断方向断面積を有する第1のセグメントと、可撓性チューブ54を収容かつ保持するように構成された第2の横断方向断面積を有する第2のセグメントとを有する。
【0031】
たとえば
図6Aに図示されたように、いくつかの実施形態では、フィッティング受け部76は、注射器46を注射器支持体18の内部にさらに保持するように、第1のチャネルの内部に配置されてよく、または第1のチャネルと連通してよい。フィッティング受け部76は、サイズおよび形状などにおいて、フィッティングの部分を収容するように構成されている。たとえば、図示のフィッティング受け部76は、中央のアーチ形区分80によって分離された対向するスロット78を有する。フィッティング受け部76のこの配置は翼状フィッティング74を補完し、フィッティング74に配置された対向する翼がスロット78の中に挿入され得、フィッティング74のアーチ形の中央セグメントがフィッティング受け部76のアーチ形区分80の内部に収容される。このフィッティング受け部76は、注射器支持体18の内部のスナップフィットである取り外し可能な挿入物として提供されてよく、構造上多様な輸液セットのフィッティング74を受け入れるように、フィッティング受け部76は、異なるフィッティング受け部74と交換され得る。たとえば、フィッティング受け部76のスロット78およびアーチ形区分80は、サイズ、配向および形状などで、特定の輸液セットのフィッティング74を受け入れるように構成され得る(
図16と
図19を比較されたい)。
【0032】
図6Bに図示されたように、いくつかの実施形態では、アーチ形区分80の前方にある高くなった平坦なアバットメント表面82は、セットアセンブリを案内するための視認キューを提供する。フィッティング74は、フィッティング受け部78に、この表面80に対して当接するまで挿入される。アバットメント表面80は、フィッティング74に適合するために、どこにかつどの深さにそれらが命令されるのかをユーザにとってより明白になるように、好対照をなす色で印を付けられてよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、注射器支持体18は、第1のチャネルと交差して横切る第2のチャネルも有する。一実施形態では、第2のチャネルは、第1のスロット70の第2のセグメントと交差する。いくつかの実施形態では、選択的に作動されるチューブクランプ84が第2のチャネルの内部に配設され、その中でスライド可能である。図示の実施形態では、第2のチャネルは第2のスロット86である。第2のスロット86は、直立した側壁90に窪んだ陥凹88を有する。陥凹88は、第1のスロット70を横切って第2のスロット86の全長に及ぶように、第2のスロット86の内部で長さ方向に延び、したがって、第2のスロット86の長さと平行に、または補足する方向に延在する。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2のスロット86の内部にチューブクランプ84が配設されている。チューブクランプは、
図22~
図26において個々に図示されている。チューブクランプ84は、開口部98を有するチューブ受け部94を有し、それは、チューブクランプ84と第1のスロット70の間の相対運動に際し、第1のスロット70と整列することができる。開口部98は、第1のスロット70の内部に存在するチューブの断面の長さを受け入れるに十分に大きい。チューブ受け部94はさらに、開口部98と連通し、かつにこれとは略横断方向にあるクランプ区分102を有する。
【0035】
クランプ区分102は、輸液セット44の可撓性チューブ54の断面積よりも実質的に小さい断面積を有するスロット状の構造を有する。ここで、「実質的に」という用語は、クランプ区分102の断面積が管54の断面積よりも小さいことを表し、ここで、管54は、管54がクランプ区分102の内部にあるとき、管を通る流体の流れを制限するかまたはなくするように、締めつけ、かつ閉鎖する。クランプ区分102のスロット状の構造は直立壁90に対して所定角度で配向され、いくつかの実施形態ではそれに対して垂直である。
【0036】
図1は開状態のチューブクランプ84を示す。チューブクランプ84が開状態のとき、注射器バレル68の内部の治療液がユーザへ流れることができる。
図2は閉状態に転じたチューブクランプ84を示す。閉状態では、チューブ54がチューブクランプ84のクランプ区分102内で締めつけられているため、治療液が患者に送達され得ず、ユーザからの血液のいかなる流れも制限される。
【0037】
チューブクランプ84は、直立壁90の第2のスロット86における窪んだ陥凹88の内部に保持された凸状の保持部104を有する。陥凹88の内の保持部104の組合せは、第2のスロット86内でチューブクランプ84を適切な位置および配向に維持するとともに、チューブクランプ84がスロット86内にあることを可能にする。
【0038】
いくつかの実施形態では、チューブクランプ84の上面の角度βは、注射器支持体18の上面72の角度とほぼ等しい。この構造上の配置は、注射器支持体18の第2のスロット86内のチューブクランプ84と注射器支持体18の上面72の隣接部分との間の滑らかな遷移を提供し得る。
【0039】
図1および
図27~
図29に図示されたように、
図2~
図6の注射器スタビライザ10は以下の様式で使用され得る。ベース14が安定なほぼ水平である安定なワーク面上に支持されて、フィッティング74により接続されている管54を備えた流体充填バレル68を有する注射器46が第1のスロット70で挿入され、その一方、フィッティング74がフィッティング受け部76内に挿入される。チューブクランプ84のチューブ受け部94は、管54が第1のスロット70に収容されるように第1のスロット70と整列する。チューブクランプ84は、第1のスロット70を横切る、クランプ区分102の方向とは反対の方向にスライドすることにより、第2のスロット86の内部で選択的に作動される。チューブクランプ84と第1のスロット70の間の相対運動により、管54が締めつけられ、かつ閉じられる。この例では、クランプ区分102が管54と係合したとき、管54と第1のスロット70の間の係合によって管54が静止位置に固定され、クランプ区分102の断面積と管54の間の相違により、クランプ区分102の内部で管54が締めつけられ、管54の内部の流体の流れが妨げられる。これによって、ユーザが輸液セット44による治療投与のプロセスを始めるとき、注射器46をユーザに対する望ましい位置に引き上げ、クランプし、配向かつ保持することができる。ここで、ユーザの腕は、第2の腕110でカニューレ58を操作しながら第1の腕106にカニューレまたは針58を自由に挿入する。したがって、ベース位置および注射器支持体位置の配列は、治療液を自己投与する患者が、第1の腕106でチューブクランプ84および流体で満たされた部分を操作する一方で、第2の腕110を実質的に静止させてベース14に対して安定させる力を提供しながら輸液セットによって第2の腕110が治療液を受けることができるように、輸液セット44の流体で満たされた部分を位置決め、配向、かつ保持する。安定させる力は、チューブクランプ84の操作中に、少なくともユーザの第1の腕106によるプランジャ50の作動を通じて第2のスロット86の内部のチューブクランプ84のスライドを一例とするワーク面に沿った注射器スタビライザ10の移動に耐えるように、十分に大きくなければならない。
【0040】
たとえば
図1に図示されたように、ユーザは、第2の腕110にカニューレ58を挿入された状態で、第2の腕110で、代表的には手で、人間工学的特徴40などベース14の特定部分と係合することにより、ベース14を安定させ得る。ユーザは、第1の腕106を使用してチューブクランプ84と注射器支持体18の残りの部分の間を相対運動させることにより、チューブクランプ84を選択的に作動させてよい。ここで、ユーザは、第2のスロット86の内部でチューブクランプ84をスライドさせて、チューブクランプ84による管54の締めつけを解放する。次いで、ユーザは、第1の腕106を使用してプランジャ50を作動させ、流体を、カニューレ58を通して第2の腕110に押し込む。これによって、ユーザの第2の腕/手110が実質的に静止したまま、注射器46の流体で満たされた部分の送達端部62からの流体の流れが可能になり、ユーザが第2の腕110への流体の流れを受けるとき、ベース18に対して安定させる力を提供する。当然、バレル68の内部に配設されたプランジャ50が注射器46の送達端部62に向かって下方に押し下げられるとき、輸液セット44と第1のスロット70の間の摩擦係合が、輸液セット44の剛直性部分に接合された注射器バレル68の位置および配向を維持するに十分な抵抗力をもたらす。
【0041】
図1~
図6に図示された一実施形態によれば、フィッティング受け部76のアーチ形区分80は、輸液セット44のルアーフィッティング74の部分またはハブを最小のクリアランスで受け入れる。アーチ形区分80における開口部は面取り縁部を有し、ユーザがこの面積にルアーハブを係合/挿入することをより容易にする。これは、ルアーを、テーブル表面の上方に約2インチ~2.75インチ(5cm~7cm)、わずかに上向きの角度(水平に対して10度~20度)に位置決めし得、ユーザは、手106、110のいずれかをテーブル表面から持ち上げるかまたはテーブル表面上に載せて、取り付けられた注射器46を快適に動作させることが可能になる。
【0042】
注射器46のフィッティング74との間の接続中または取り外し中に自由な回転を防止するために(すなわち抵抗トルク)、ルアーフィッティング74の翼状部は、アーチ形区分80に隣接する対向するスロット78内に収容されてよい。場合によっては、翼状部とアーチ形区分80のクリアランスが大きすぎると、フィッティング74の翼状部に対する損傷のリスクが増大する恐れがある。本発明者は、試験を通じて、たとえば
図19に示された3時と9時の構成の対向したスロット78が使用され得ると判定した。他の実施形態では、「×」のスロットパターンまたは「+」のパターンなど、スロット78の他の構成が使用され得る。
【0043】
アーチ形区分80の前方におけるアバットメント表面82は、スタビライザ10の使用を案内するための目に見えるキューをもたらす。ルアーハブは、このアバットメント82に対して底に達するまで挿入される。
【0044】
いくつかの実施形態では、ベース14は、約2.36インチ×4.72インチ(6cm×12cm)の偏長形状である。この特徴は、平坦なテーブルの表面にしっかりと着座する。この特徴は、ステム22の左側と右側の両方に、約0.79インチ~1.18インチ(2cm~3cm)延在する。ステム22の背後ろの1.18インチから1.97インチ(3cm~5cm)のわずかに大きい延長部と、注射器46を動作させない第2の腕110を休止させることの快適さが改善する(
図30を参照されたい)。ユーザは、ステム22のまわりまたはそばで指/手のいずれかを休止させ得る。ステム22の前方の延長部が2.36インチ~3.15インチ(6cm~8cm)とさらに大きければ、30ccまで満たされて取り付けられた注射器46の重さと平衡する。これはまた、パッド印刷、エンボス、レーザマーキングなどによる、商標/アートワーク、グラフィカル指示または他の所望の標識に適する広い表面を提供する。あるいは、
図1に図示されたように、第2の腕110はこの区分に据えられ得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、下部ベース14の高さは低くてよく、縁部はたとえば手の快適さのために丸められてよい。ベース14の底面30は、エラストマのリング34をしっかりと圧入するようなサイズにされた周囲溝38を取り込み得る。リング34の目的は、注射器スタビライザ10がテーブル表面に対してスライドするのを防止することにある。この実施形態では、Marco Rubberの部品番号SB1000-152(標準寸法S152、70Aブラックブナ角リング)が溝38に適合し得る。Oリングなどの他のリング断面が可能である。必要に応じて、リング構成は調節されてよく、かつ/またはクリーニング処理によって粘着性がさらに向上し得る。溝の高さは、露出した方形リングとテーブル表面の間の十分な接触を可能にし得るものである。構造の剛直性を増すために、中央から周囲へ八方に広がるリブのパターンが追加されてよい。
【0046】
ステム22はベース14から垂直に延在する。いくつかの実施形態では、ステムの直径は約0.40インチ~0.79インチ(1cm~2cm)であって、適切な構造向けに十分に大きく、ユーザがステム22のまわりに指を休止させることができるように十分に小さい。ステムの高さは1.18インチ~1.97インチ(3cm~5cm)であって、1cm未満のブレンド半径は、手に対して適切なクリアランスを可能にし得る一方でアセンブリの全体サイズを最小にする。
【0047】
いくつかの実施形態では、注射器支持体18はステム22の上に位置する。第1のスロット70は、管54を受け入れるように面取りされた開口部である。第2のスロット86は、製造プラントにおいてスナップフィット特徴を係合させる下向きの押し込みによってアセンブルされたチューブクランプ84構成要素を受け入れる。スナップフィットの幾何学的特徴および材料の選択は、たとえば清掃可能性を改善するために、クランプの容易な取り外しを許容し得る。代替実施形態では、係合の程度が増加され得、一方向スナップ構成のためのスナップフィットの角度が調節され得る。搭載面積の側面は実質的に内部が取り除かれてもてよく(すなわち材料を除去されてよく)、射出成形によって製作性を改善するように設計され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、チューブクランプ84は、注射器支持体18の上面72とほぼ同じ平面に着座する平坦な上面を含む。この平坦な上面は、「OPEN」および開のクランプ位置を示す矢印など、容易に読むことができる(約3mm~5mmの高さの)印刷またはエンボス加工されたテキストおよび記号を可能にし得る。このより広いクランプ面はまた、製造中に不正確なクランプ配向を防止し得る。チューブクランプ84は、ベースから目立つ色すなわち好対照をなす色に成形されてよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、チューブ受け部94の開口部98は、約0.16インチ~0.20インチ(4mm~5mm)である。クランプが
図1に図示されたような開位置にあるとき、開口部98は第1のスロット70と整列する。クランプ開口部98はクランプ区分102に通じ、これは、ユーザがクランプ84を閉位置へ完全にスライドさせたとき管を締めつける狭めたスロット(約0.025インチ~0.035インチ(0.6mm~0.9mm))である。この面積における縁部は、クランプ中に管を切るリスクを低減するように調和されてよい。可撓性チューブの壁が流れを閉鎖する/制限するように崩壊するので、クランプが起こり得る。(クランプからベース、クランプからチューブの)摩擦が制限されているので、たとえば8ポンドまでの小さな力でクランプ動作が可能になり得る。管をクランプすると、流れが阻止されるとともにスタビライザアセンブリにおけるセットの軸方向移動も防止される。
【0050】
いくつかの実施形態では、クランプ82の両端に約0.4インチ×0.4インチ(1cm×1cm)の平坦なパッドがあって、クランプ84を動作させるのに快適かつ直観的な表面をもたらす。この面積の縁部およびスタビライザアセンブリのすべての露出した縁部は、ユーザの快適さのために調和される。
【0051】
ベース14およびクランプの構成要素向けに、ポリオレフィン材料(ポリエチレン、ポリプロピレン)または他のコスト効率の良い可塑性樹脂(ABS、PC、ポリスチレンなど)が使用され得る。いくつかの実施形態では殺菌は不要である。高密度ポリエチレンは、皿洗い機のサイクルにもかけられるほどのクリーニング可能性および家庭の清浄液との全体的な適合性のために、材料として使用され得る。ゴム、シリコーンまたは熱可塑性エラストマを含むいろいろな材料がリング成分に使用されてよい。ベース要素の底面には、2ショットまたはオーバーモールドするエラストマ材料によって類似の機能が達成され得る。
【0052】
一態様によれば、スタビライザデバイス10は使いやすさを改善することによって注入経験を向上し得る。
図29に図示されたように、スタビライザデバイス10によって治療液の複数の注射器46の取扱い/注射が簡単になる。
図29上の矢印は、ルアーフィッティング74に対してねじ止めされた注射器46を反時計回りに回転させて、ルアーフィッティング74から注射器44を下の矢印の方向に外向きに取り外し得ることを示す。新規の注射器46は、ルアーフィッティングへ上の矢印の方向に挿入して時計回りに注射器46を回転させることにより、ルアーフィッティング74にねじ止めすることができる。
【0053】
より具体的には、注射器スタビライザ10は以下のように使用され得る。ユーザは、チューブクランプ84を(たとえば
図27に示された)開位置へスライドさせて、輸液セット44の管54を第1のスロット70に据える。ユーザは、ルアーフィッティングが注射器支持体18の内部にしっかりと適合するまで、フィッティング受け部76の開口部のスロット78にルアーフィッティング74の翼状部をスライドさせる。
【0054】
注射器46を交換するために、チューブクランプ84は、第2のスロット86の内部で(たとえば
図2に示された)閉位置まで移動され、すなわちスライドされ、閉位置では、管54がチューブクランプ84のクランプ区分102の内部で締めつけられ、かつ閉じられる。ルアーフィッティング74にねじ止めされた空の注射器44は、第2の腕110でベース14を支持するかまたは安定させながら第1の腕106で注射器46を反時計回りに回転させることにより、ルアーフィッティング74から取り外される。このように、注射器46を交換または変更するとき、ユーザの第2の腕110から輸液セット44のカニューレ58を取り外す必要はない。治療液を十分に装填された新規または置換の注射器46を接続するために、第2の腕110でベース14を安定させながら、第1の腕106を使用して送達端部62がルアーフィッティング74に挿入され、注射器46を時計回りの方向に回転させることによってねじ止めされる。次いで、ユーザは、第2の腕110を、ベース14を安定させるのに使用したまま、第1の腕106を使用してチューブクランプ84を開位置へスライドさせる。次いで、ユーザは、第2の腕でベース14を安定させながら、第1の腕106を使用してプランジャ50を注射器46の送達端部62に向かって押し進め、第2の腕110に流体を押し込む。
【0055】
一態様によれば、スタビライザデバイス10により、ユーザは、片手で複数の注射器46を輸液セット44に接続したり切り離したりすることができ、他方の手でこのセットを直接取り扱うことはない。スタビライザは、輸液セット44のルアーフィッティング74を、テーブル表面の上の固定された一段高められた位置に効率よく留める。
【0056】
一態様によれば、スタビライザ10は、ユーザが、オープンセットからの漏れ(すなわち血圧によるもの)のリスクおよび注射器交換中にオープンセットが接触汚染するリスクを最小にするのを支援する。いくつかの実施形態では、スタビライザデバイス10が含むチューブクランプ84は、活性化されたとき、デバイス10において管54を閉鎖し、かつ留める。スタビライザ10によって支持されているルアーフィッティングに必要とされるのは、あまり直接的でないルアーフィッティング74の取扱いである。いくつかの実施形態では、チューブクランプは、閉じたとき、針における約31mmHg(0.6psi)の圧力にさらされた状態で、輸液セットを通る流体の流れを防止する。
【0057】
一態様によれば、ユーザが注射器46の握りを解放したとき、スタビライザ10は、安定したハンズフリーのやり方で、満ちた注射器46の重さを支持することができる。
【0058】
一態様によれば、スタビライザ10は、ユーザが取り付けられた注射器46を快適に動作させ得るように、取り付けられた注射器46の適切な位置と、そのまわりの適切なクリアランスとを可能にする。たとえば、ユーザは、代替として、投与中に、注射器46を動作させている手106をテーブル表面の上に上げるかまたはテーブル上に載せることができる。
【0059】
一態様によれば、スタビライザ46は流体と接触しない。したがって、この簡単な付属品は再使用可能であって殺菌は不要である。スタビライザの材料および設計は、軽量、可搬、浄化可能、再利用可能、かつ低コストのシステムをもたらす。
【0060】
特定の実施形態が図示され、説明されてきたが、本発明の精神から著しく逸脱することなく多くの修正形態が思い浮かび、保護の範囲を限定するのは添付の特許請求の範囲のみである。