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特許7019027中空粒子及びその製造方法、並びに、造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】中空粒子及びその製造方法、並びに、造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/18 20060101AFI20220204BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20220204BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220204BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B01J13/18
A61K8/87
A61Q1/00
C08J3/12 101
C08J3/12 CFF
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020507861
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011599
(87)【国際公開番号】W WO2019181987
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018056909
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018202215
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 政宏
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-326457(JP,A)
【文献】特開2008-247630(JP,A)
【文献】特開2001-241162(JP,A)
【文献】特開2001-199835(JP,A)
【文献】特開平04-009319(JP,A)
【文献】特開2019-034283(JP,A)
【文献】特開2017-048323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J13/02-13/22
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C04B38/00-38/10
C08J 9/00- 9/42
C08J18/00-71/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン又はポリウレアを含む壁部を有し、内部が多孔質構造であり、前記多孔質構造の最外部における複数の開口空間が前記壁部で閉塞されている中空粒子。
【請求項2】
空隙率が10%~90%である請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
粒子形状が球状である請求項1又は請求項2に記載の中空粒子。
【請求項4】
体積標準のメジアン径が、0.1μm~500μmである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の中空粒子。
【請求項5】
前記ポリウレタン又はポリウレアが、脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造を有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の中空粒子。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の中空粒子を含む造孔材。
【請求項7】
多孔セラミックの製造又は多孔樹脂の製造に用いられる請求項に記載の造孔材。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の中空粒子を含み、吸油性もしくは吸水性である化粧料用粒子。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の中空粒子を含む軽量化材。
【請求項10】
水相に、多官能イソシアネート化合物と沸点が90℃~150℃の化合物とポリオール及びポリアミンの少なくとも一方とを含む油相を分散させて分散液を調製する工程と、
前記分散液を加熱処理することで、少なくとも前記多官能イソシアネート化合物を重合反応させて壁部を形成し、前記沸点が90℃~150℃の化合物を内包する粒子を得る工程と、
加熱処理により前記粒子から前記沸点が90℃~150℃の化合物を除去することで、多孔質構造を有する中空粒子を形成する工程と、
を有する中空粒子の製造方法。
【請求項11】
前記粒子の壁部の壁材である樹脂のガラス転移温度が、前記沸点が90℃~150℃の化合物の沸点以下である、請求項10に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項12】
前記沸点が90℃~150℃の化合物の分配係数ClogPの値が、1~4である請求項10又は請求項11に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項13】
前記多官能イソシアネート化合物が、脂肪族ポリイソシアネートを含む請求項10~請求項12のいずれか1項に記載の中空粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空粒子及びその製造方法、並びに、造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に空間が形成された中空粒子が、様々な分野で利用されている。
中空粒子は、樹脂で形成された外殻の中に気体が閉じ込められた粒子であるため、熱及び振動が伝達されにくい性質があり、断熱材、防音材等に利用したり、所望とする原材料に充填して例えば成形物を軽量化する等の用途に利用されている。
【0003】
このような用途に中空粒子を用いる場合、例えば、中空粒子を所望とする材料に混合、混練、又は分散等させて塗布液又は成形材等を調製し、塗布又は成形等が行われることで、中空粒子が含有された材料又は中空粒子を加熱除去等して形成される空間を含む材料が製造される。
【0004】
そして、中空粒子の例として、従来から熱膨張性のカプセルが広く使用されている。
また、中空粒子の壁部を形成する材料としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂及びアクリル樹脂、並びに、シリカ等の無機材料が多く利用されている。
【0005】
具体的な例として、マイクロカプセルの形成中又は形成後に、マイクロカプセル中に含まれるトルエン等の揮発性溶媒を気化させることで中空マイクロカプセルを形成する技術が開示されている(例えば、特開2006-326457号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来から使用されている中空粒子は、一般に樹脂で形成された外殻により粒子の形状を維持しているため、中空粒子を含めようとする材料の性状、又は採用する混合等の方法によっては、中空粒子が外部応力を受けて変形又は破壊される場合がある。材料中に含有される中空粒子の形状に著しいバラツキが発生すると、製造される製品に品質バラツキが生じやすく、所望とする性能(例えば断熱性能)が期待できなくなるおそれもある。
上記した特開2006-326457号公報に記載の中空マイクロカプセルも、内部中空なため、外部応力を受けた場合に変形しやすい課題がある。
【0007】
また、中空粒子は、メラミンホルムアルデヒド樹脂もしくはアクリル樹脂等のポリマー、又はシリカ等の無機材料等の、壁部形成用の材料によっては、中空粒子を含めようとする材料に良好に混合又は混練等することができない場合がある。例えば、ポリウレタン又はポリウレアに中空粒子を含めようとした際、従来の中空粒子では良好な分散性を確保することは難しい。
【0008】
なお、従来から提案されている熱膨張性のカプセルは、熱による体積変化が比較的大きいが、熱による体積変化を小さくできればより小径の中空構造の作製に好適である。加えて、例えば造孔材のように最終的に加熱処理を施すことで内部空間を形成する用途では、加熱処理を施した後に造孔材が残存しない方が好ましいと考えられる。
【0009】
本開示は、上記に鑑みなされたものである。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、耐変形性に優れた中空粒子を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、耐変形性に優れた中空粒子が製造される中空粒子の製造方法を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、所望とする空間を形成することができる造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ポリウレタン又はポリウレアを含む壁部を有し、内部が多孔質構造であり、多孔質構造の最外部における複数の開口空間が壁部で閉塞されている中空粒子である。
<2> 空隙率が10%~90%である<1>に記載の中空粒子である。
<3> 粒子形状が球状である<1>又は<2>に記載の中空粒子である。
<4> 体積標準のメジアン径が、0.1μm~500μmである<1>~<3>のいずれか1つに記載の中空粒子である。
【0011】
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載の中空粒子を含む造孔材である。
<6> 多孔セラミックの製造又は多孔樹脂の製造に用いられる<5>に記載の造孔材である。
<7> <1>~<4>のいずれか1つに記載の中空粒子を含み、吸油性もしくは吸水性である化粧料用粒子である。
<8> <1>~<4>のいずれか1つに記載の中空粒子を含む軽量化材である。
【0012】
<9> 水相に、多官能イソシアネート化合物と沸点が90℃~150℃の化合物とポリオール及びポリアミンの少なくとも一方とを含む油相を分散させて分散液を調製する工程と、分散液を加熱処理することで、少なくとも多官能イソシアネート化合物を重合反応させて壁部を形成し、沸点が90℃~150℃の化合物を内包する粒子を得る工程と、加熱処理により上記の粒子から沸点が90℃~150℃の化合物を除去することで、多孔質構造を有する中空粒子を形成する工程と、を有する中空粒子の製造方法である。
<10> 粒子の壁部の壁材である樹脂のガラス転移温度が、沸点が90℃~150℃の化合物の沸点以下である、<9>に記載の中空粒子の製造方法である。
<11> 沸点が90℃~150℃の化合物の分配係数ClogPの値が、1~4である<9>又は<10>に記載の中空粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、耐変形性に優れた中空粒子が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、耐変形性に優れた中空粒子が製造される中空粒子の製造方法が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、所望とする空間を形成することができる造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の中空粒子及びその製造方法、並びに、造孔材、化粧料用粒子及び軽量化材について詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0016】
本明細書において、「壁部」及び「シェル」は、中空粒子を形づくる外殻を指し、中空粒子がマイクロカプセルの場合はカプセル壁のことをいう。また、「芯部」又は「コア」は、壁部(シェル)により内包された部分を指す。
また、本明細書において、壁部(シェル)を形成するための材料を「壁材」又は「シェル材」といい、コアに含まれる成分を「コア材」という。
本開示の中空粒子において、「内包」とは、目的物が中空粒子の壁部(シェル)に覆われて閉じ込められている状態を指す。
【0017】
<中空粒子>
本開示の中空粒子は、ポリウレタン又はポリウレアを含む壁部を有し、内部に多孔質構造を有し、かつ、多孔質構造の最外部における複数の開口空間が壁部で閉塞された構造を有している。本開示の中空粒子は、内部構造が多孔質構造であるので、外部応力に対する強度及び弾性を有しており、外部応力を受けた場合に変形又は破壊され難いという利点を有している。また、ポリウレタン又はポリウレアを含むため、壁部の厚みを薄くしても安定であり、環境に対する毒性が少なく、人体への悪影響が抑制されている。
ポリウレタン又はポリウレアは、多官能イソシアネート化合物に由来する構造を有するものとすることができる。
【0018】
従来から利用されている中空粒子は、一般に樹脂で形成された外殻(壁部)により粒子の形状を維持しているため、外部応力を受けた際に容易に変形し、場合によっては破壊される場合がある。この点は、上記した特開2006-326457号公報に記載の中空マイクロカプセルによっても同様であり、外部応力に対して変形しやすい課題がある。また、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂もしくはアクリル樹脂等のポリマー、又はシリカ等の無機材料等の材料を用いて形成された中空粒子の場合、中空粒子を含めようとする材料との親和性が悪く、混合又は混練等が容易に行えない場合がある。更に、熱膨張性を有するカプセル粒子として知られる中空粒子は、粒子の小径化が容易に行えない傾向があり、粒子の更なる小径化が可能であれば適用可能な用途が拡がることが期待される。
本開示は、上記に鑑み、ポリウレタン又はポリウレアを含む壁部で覆われた内部に多孔質構造が形成されていることで、中空粒子を含めようとする材料の性状又は採用する混合方法等で形状が変化しにくい、優れた耐変形性を有している。
【0019】
ここで、耐変形性とは、粒子形状の変化が生じ難い性状、又は粒子自体が破壊されて潰れることが生じ難い性状が含まれる。
【0020】
本開示の中空粒子は、粒子の外郭をなす壁部を有し、壁部で取り囲まれた内部は複数に区画され、区画された部分に空間を有する多孔質構造となっている。本開示の中空粒子は、壁部がポリウレタン又はポリウレアで形成され、内部の多孔質構造を形成する仕切壁もポリウレタン又はポリウレアで形成されている。
【0021】
本開示の中空粒子は、壁部で取り囲まれた構造となっているため、中空粒子に壁部が無かったと仮定した場合の多孔質構造の最外部には、複数の開口空間が存在し、各々の開口空間は壁部によって閉塞された構造を有する態様となっている。
【0022】
中空粒子における多孔質構造の空隙率は、用途又は目的等により異なり、一定の空間を確保する点で大きいほど好ましく、10%~90%の範囲であることが好ましい。中でも、中空粒子を用いて所望の領域又は材料中に一定以上の空間を確保する観点からは、空隙率は、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。
また、中空粒子の耐変形性をより良好にする(即ち、強度を向上させる)観点からは、細孔数の多い多孔質構造又は内部構造を多孔形状にする仕切壁が厚い多孔質構造であることが好ましいことから、この場合の空隙率は、85%以下であることがより好ましい。
【0023】
空隙率は、中空粒子を裁断して、中空粒子の裁断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、中空粒子の裁断面の全面積に対する中空部の面積の比率を算出することにより求められる。
【0024】
中空粒子の形状には、特に制限はなく、用途又は目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、棒状、板状等のいずれでもよい。中でも、粒子形状は、球状であることが好ましく、真球であることがより好ましい。
【0025】
中空粒子の体積標準のメジアン径(D50)としては、0.1μm~500μmであることが好ましく、空隙量の観点からは、1μm以上であることがより好ましく、視認性の観点からは、200μm以下であることがより好ましい。
【0026】
中空粒子の体積標準のメジアン径は、分散条件を変更すること等により制御することができる。
ここで、中空粒子の体積標準のメジアン径とは、中空粒子全体を体積累計が50%となる粒子径を閾値に2つに分けた場合に、大径側と小径側での粒子の体積の合計が等量となる径をいう。
本開示において、中空粒子の体積標準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定される。
【0027】
中空粒子の一例として、壁部(シェル)と壁部に内包された芯部(コア)とを有するマイクロカプセルが挙げられる。
【0028】
次に、中空粒子の壁部及び多孔質構造を形成する仕切り壁について説明する。
本開示における壁部及び仕切り壁は、ポリウレタン又はポリウレアを含む。
【0029】
-ポリウレタン、ポリウレア-
壁部(シェル)に含まれるポリウレタン及びポリウレアについて説明する。
本開示におけるポリウレタン及びポリウレアは、多官能イソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート」と称することがある。)に由来する構造を有するものが好ましい。ポリイソシアネートには、芳香族ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネート等が含まれ、ポリイソシアネートは、2官能のポリイソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートのいずれを用いてもよい。
本開示におけるポリウレタン及びポリウレアは、芳香族ポリイソシアネートに由来する構造及び脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造を有するポリマーであることが好ましく、内部に多孔質構造を形成しやすい点で、芳香族ポリイソシアネートに由来する構造を有するポリマーであることがより好ましい。
また、本開示におけるポリウレタン及びポリウレアは、内部に多孔質構造を形成しやすい点で、3官能以上のポリイソシアネートに由来する構造を有するポリマーであることが好ましい。
【0030】
本開示の、ポリウレタン又はポリウレアを含む中空粒子には、ポリウレタンポリウレアを含む中空粒子が含まれる。また、ポリウレタン又はポリウレアを含む中空粒子の中でも、ポリウレタンポリウレアを含む壁部を有する中空粒子が好ましい。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、4-クロロキシリレン-1,3-ジイソシアネート、2-メチルキシリレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
以上では、2官能である脂肪族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートとしてジイソシアネート化合物を例示したが、脂肪族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートとしてジイソシアネート化合物から類推される3官能のトリイソシアネート化合物及び4官能のテトライソシアネート化合物も含まれる。
また、上記ポリイソシアネートと、エチレングリコール系化合物もしくはビスフェノール系化合物等の2官能アルコール又はフェノールとの付加物も挙げられる。
【0034】
ポリイソシアネートを用いた縮合体、重合体又は付加体の例としては、上記の2官能ポリイソシアネートの3量体であるビューレット体もしくはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能ポリイソシアネート化合物の付加体として多官能とした化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するポリイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0035】
上記の中でも、中空粒子のシェルは、3官能以上のポリイソシアネートの重合物を含む態様が好ましい。
3官能以上のポリイソシアネートとしては、例えば、3官能以上の芳香族ポリイソシアネート化合物、3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。3官能以上のポリイソシアネート化合物の例としては、2官能のポリイソシアネート化合物(分子中に2つのポリイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン、又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたポリイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能のポリイソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましい。
3官能以上のポリイソシアネート化合物の具体的な例としては、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体等であってもよい。
【0036】
アダクト型の3官能以上のポリイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、タケネート(登録商標)D-102、D-103、D-103H、D-103M2、P49-75S、D-110N、D-120N(イソシアネート価=3.5 mmol/g;3官能以上の芳香族イソシアネート化合物)、D-140N、D-160N(以上、三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン株式会社製)、P301-75E(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)D-750(DIC株式会社製;3官能以上の芳香族イソシアネート化合物)等が挙げられる。
中でも、アダクト型の3官能以上のポリイソシアネート化合物として、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D-110N、D-120N、D-140N、D-160N、及びDIC株式会社製のバーノック(登録商標)D-750から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のポリイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D-127N、D-170N、D-170HN、D-172N、D-177N、D-204(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TLA-100、TSE-100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のポリイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D-165N、NP1100(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン)、デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
中空粒子の壁部の厚さ(壁厚)としては、0.01μm~10μmが好ましい。中空粒子の壁厚が0.01μm以上であることで、中空粒子が変形し難くなる。中空粒子の壁厚が10μm以下であることで、空隙率が高くなるという利点がある。
上記と同様の観点から、中空粒子の壁厚は、より好ましくは0.05μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~2μmであり、特に好ましくは0.1μm~1μmである。
【0038】
壁厚は、5個の中空粒子の個々の壁厚(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。
具体的には、中空粒子を含有する液を任意の支持体上に塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する。得られた塗布膜の断面切片を作製し、その断面をSEMを用いて観察し、任意の5個の中空粒子を選択して、それら個々の中空粒子の断面を観察して壁厚を測定して平均値を算出することにより求められる。
【0039】
本開示の中空粒子について、「単分散性が高い」とは、粒径分布の範囲が狭い(すなわち、粒径のバラツキが少ない)ことを意味し、「単分散性が低い」とは、粒径分布の範囲が広い(すなわち、粒径のバラツキが多い)ことを意味する。
より具体的には、中空粒子の単分散性の高低は、CV値(coefficient of variation;変動係数)を用いて表すことができる。ここで、CV値とは、下記式で求められる値である。
CV値(%)=(標準偏差/体積平均粒径)×100
CV値が低いほど中空粒子の単分散性が高く、CV値が高いほど中空粒子の単分散性が低いことが表される。
本開示において、体積平均粒径及び標準偏差は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて算出される。
【0040】
例えば、中空粒子の「単分散性が高い」とは、中空粒子の粒径分布のCV値が、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更により好ましくは30%以下、最も好ましくは25%以下であることをいうこともできる。CV値が上記範囲である場合、中空粒子の粒径の単分散性が高いため、中空粒子の取扱い、機能発現の制御などが容易になる。
【0041】
中空粒子の形態は、例えば、中空粒子を分散させて含む中空粒子分散液、中空粒子の粉体等が挙げられ、好ましくは、中空粒子が粉体の形態である。
【0042】
本開示の中空粒子の、壁部(シェル)に内包された芯部(コア)は、空間として存在していることが好ましい。
なお、芯部には、用途等に応じてコア材が内包されてもよい。コア材としては、溶媒、補助溶媒、添加剤等が挙げられる。
【0043】
(溶媒)
コア材は、オイル成分として溶媒を含有してもよい。
溶媒の例としては、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル系化合物、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン系化合物、1-フェニル-1-キシリルエタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;ツバキ油、大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、魚油等の天然動植物油;鉱物油等の天然物高沸点留分などが挙げられる。
【0044】
(補助溶媒)
コア材として、必要に応じて、中空粒子の壁部を形成する壁材(シェル材)の油相中への溶解性を高めるための油相成分として補助溶媒を含有してもよい。
補助溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール系化合物等が挙げられる。好ましくは、補助溶媒は、沸点が130℃以下である。補助溶媒には、上記の溶媒は含まれない。
【0045】
(添加剤)
例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、臭気抑制剤などの添加剤は、必要に応じて、マイクロカプセルに内包することができる。
【0046】
<中空粒子の製造方法>
本開示の中空粒子の製造方法は、水相に、多官能イソシアネート化合物と沸点が90℃~150℃の化合物とポリオール及びポリアミンの少なくとも一方とを含む油相を分散させて分散液を調製する工程(以下、分散工程)と、分散液を加熱処理することで、少なくとも上記の多官能イソシアネート化合物を重合反応させて壁部を形成し、沸点が90℃~150℃の化合物を内包する粒子を得る工程(以下、粒子化工程)と、加熱処理により粒子から「沸点が90℃~150℃の化合物」を除去することにより、多孔質構造を有する中空粒子を形成する工程(以下、中空粒子形成工程)と、を有している。
【0047】
-分散工程-
分散工程では、水相に、多官能イソシアネート化合物と、沸点が90℃~150℃の化合物と、ポリオール及びポリアミンの少なくとも一方と、を含む油相を分散させて分散液を調製する。
分散液として、界面活性剤を用いて乳化した乳化液を調製してもよい。乳化液を調製する場合、溶媒とシェル材とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散させることにより調製することができる。
【0048】
(油相)
本開示における油相は、少なくとも、シェル材である多官能イソシアネート化合物と、有機溶媒である沸点が90℃~150℃の化合物と、ポリオール及びポリアミンと、を含み、必要に応じて、補助溶媒、添加剤などの他の成分が含まれてもよい。
なお、多官能イソシアネート化合物、並びに、補助溶媒及び添加剤の詳細については、既述のマイクロカプセルの芯成分と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
-沸点が90℃~150℃の化合物-
油相には、沸点が90℃~150℃の化合物の少なくとも一種が含有される。
芯成分中の化合物の沸点を90℃~150℃の範囲とすることで、後述するように、中空粒子の前駆体である分散粒子が含まれる分散液を加熱処理して「沸点が90℃~150℃の化合物」を内包する粒子を得た後に、更に加熱処理し中空粒子を得る過程において、化合物が除かれ、中空粒子の内部を多孔質構造にすることができる。
【0050】
沸点が90℃~150℃の化合物の沸点は、多孔質構造を形成しやすくなる観点より、後述する粒子化工程で形成される粒子の壁部の壁材である樹脂(好ましくはポリウレタン又はポリウレア)のガラス転移温度(Tg;℃)以上であることが好ましい。
かかる観点のもと、好ましい沸点は、100℃~140℃である。
【0051】
沸点は、1気圧(101325Pa)下における沸点を意味する。
沸点は、定法によって求めることができ、例えばJIS K2254:1998の4項
に規定される常圧法蒸留試験方法によって求めることができる。沸点は沸点計を用いて測定することもでき、沸点計としてはBPM-2000(東亜ディーケーケー株式会社製、常圧法蒸留試験方式)、DosaTherm300(Dosatec GmbH製)等を
用いることができる。
【0052】
また、沸点が90℃~150℃の化合物は、分配係数であるClogPの値が1~4であることが好ましく、1.5~3がより好ましく、1.5~2が更に好ましい。
CLogPは、値が小さいほど化合物の極性が高いことを示す。
したがって、本開示では、油相に含有される「沸点が90℃~150℃の化合物」のClogPの値が1~4であると、同一相中に存在する多官能イソシアネート化合物が分散粒子とした際の油水界面に移動し難くなり、油相中で多官能イソシアネート化合物の反応が進行しやすくなる、結果、壁部が形成されて得られる粒子の内部には、多孔質構造がより形成されやすくなる。
【0053】
CLogPの値は、Chem BioDraw Ultra13.0を用いて算出される
値である。
【0054】
沸点が90℃~150℃の化合物としては、例えば、有機溶剤、香料などが挙げられる。
【0055】
有機溶剤としては、例えば、1,1,2,2,-テトラクロルエタン(沸点:146℃、ClogP=2.64)、p-キシレン(沸点:138℃、ClogP=3.14)、クロルベンゼン(沸点:132℃、ClogP=2.86)、酢酸イソブチル(沸点:118℃、ClogP=1.64)、酢酸ブチル(沸点:126℃、ClogP=1.77)、酢酸プロピル(沸点:97℃、ClogP=1.24)、スチレン(沸点:145℃、ClogP=2.89)、テトラクロルエチレン(沸点:121℃、ClogP=3.48)、トルエン(沸点:111℃、ClogP=2.64)などが挙げられる。
【0056】
香料としては、例えば、酢酸イソアミル(沸点:142℃、ClogP=2.17)、プロピオン酸エチル(沸点:99℃、ClogP=1.24)、酪酸エチル(沸点:121℃、ClogP=1.77)、γ-ノナラクトン(沸点:136℃、ClogP=1.83)、酢酸アミル(沸点:149℃、ClogP=1.62)などが挙げられる。
【0057】
沸点が90℃~150℃の化合物の油相中における含有量としては、油相の全質量に対して、10質量%~95質量%の範囲とすることができ、空隙率を高める観点からは含有量は多いほど好ましい。中でも、沸点が90℃~150℃の化合物の含有量は、中空粒子とした場合の空隙率と耐変形性との両立の観点から、油相の全質量に対して、30質量%~90質量%がより好ましく、50質量%~90質量%が最も好ましい。
【0058】
-多官能イソシアネート化合物-
シェル材である多官能イソシアネート化合物の詳細については、既述のマイクロカプセルの項で説明した通りであり、ここでの詳細な説明は省略する。
多官能イソシアネート化合物の油相中における含有量は、中空粒子の大きさ、空隙率、及び壁部の厚み等に応じて適宜調整することができる。
具体的には、多官能イソシアネート化合物の油相中における含有量としては、油相の全質量に対して、1質量%~90質量%の範囲とすることができる。また、多官能イソシアネート化合物の含有量は、空隙率を高める観点から、5質量%~70質量%が好ましく、25質量%~65質量%がより好ましく、25質量%~50質量%がより好ましい。
【0059】
-ポリオール、ポリアミン-
油相には、ポリオール及びポリアミンの少なくとも一種が含有される。
ポリオールは、1分子あたり2個以上の水酸基を有する任意の構造を有する分子である。ポリオールは、1分子あたり3個以上の水酸基を有することが好ましく、例えば4個、8個の水酸基を有してよい。
ポリオールは、合成ポリオール又は天然ポリオールのいずれでもよく、直鎖状、分枝状又は環状の構造の分子であってもよい。
【0060】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度は2、3、4、5、又は6以上であってよい。)、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(重合度は2、3、4、5、又は6以上であってよい。)、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン(重合度は2、3、4、5、又は6以上であってよい。)、ペンタエリスリトール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどが挙げられる。
また、ポリオールは、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、株式会社ADEKA社製のアデカポリエーテル(Pシリーズ、BPXシリーズ、Gシリーズ、Tシリーズ、EDPシリーズ、SCシリーズ、SPシリーズ、AMシリーズ、BMシリーズ、CMシリーズ、PRシリーズ、GRシリーズ、FC-450、NS-2400、YT-101、F7-67、#50、F1212-29、YG-108、V14-90、Y65-55、等)などを用いることができる。
【0061】
ポリアミンには、ジアミン,トリアミン,テトラアミン等が含まれ、例えば、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
また、ポリアミンは、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、東ソー株式会社製のエチレンアミン(例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルピぺラジン、ピぺラジン、ポリエイト、等)などを用いることができる。
【0062】
ポリオール及びポリアミンの油相中における総含有量としては、空隙率を高める観点から、油相の全質量に対して、0.1質量%~20質量%の範囲が好ましく、0.1質量%~10質量%の範囲がより好ましく、0.1質量%~5質量%の範囲がより好ましい。
【0063】
後述する粒子化工程において壁部が形成されることで、中空粒子の前駆体である、「沸点が90℃~150℃の化合物」を内包する粒子が得られる。その後の中空粒子形成工程で更に加熱処理を施した際に粒子内部を中空にしやすくする観点から、粒子の壁部の壁材である樹脂は、ガラス転移温度(Tg;℃)が「沸点が90℃~150℃の化合物」の沸点以下とされていることが好ましい。
中でも、壁部の樹脂のガラス転移温度(Tg)が、上記と同様の理由から、「沸点が90℃~150℃の化合物」の沸点より10℃以上低いことが好ましい。
【0064】
なお、壁部の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定される値である。
【0065】
(水相)
本開示における水相は、少なくとも水系溶媒及び乳化剤を含むことが好ましい。
-水系媒体-
本開示の水系媒体は、水、水及びアルコール等が挙げられ、イオン交換水等を用いることができる。
水系媒体の水相中における含有量としては、水相に油相を乳化分散して得られる乳化液の全質量に対して、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましく、40質量%~60質量%が更に好ましい。
【0066】
-乳化剤-
乳化剤には、分散剤もしくは界面活性剤又はこれらの組み合わせが含まれる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物(例えばアニオン変性ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム及びアルギン酸ナトリウムなどを挙げることができ、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0067】
分散剤は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、株式会社クラレ製のクラレポバール(登録商標)シリーズ(例:3-98、5-98、28-98、60-98、27-96、3-88、5-88、22-88、44-88、95-88、48-80、L-10、25-88KL、32-97KL、3-86SD、LM-20、LM-10HD、105-88KX、200-88KX、等)、日本酢ビ・ポバール株式会社製の顆粒品Jシリーズ(JC-25、JC-33、JC-40、JF-02、JF-03、JF-04、JF-05、JF-10、JF-17、JF-17L、JF-20、JM-17、JM-17L、JM-23、JM-26、JM-33、JT-05、JT-13Y、JP-03、JP-04、JP-05、JP-10、JP-15、JP-18、JP-20、JP-24、JP-33、JP-45、JP-24E、JL-05E、JL-18E、JL-22E、JL-25E、JR-05、JF-17S、JP-05S、JP-18S、JP-20S、JP-24S、等)、Vシリーズ(V、VC-10、VC-13、VC-20、VF-17、VF-20、VM-17、VT-13KY、VP-18、VP-20、等)、日本合成化学社製のゴーセノール(N-300、NL-05、A-300、AL-06R、GH-23、GH-22、GH-20、GH-20R、GH-17R、GM-14R、GM-14L、GL-05、GL-03、KH-20、KH-17、KL-05、KL-03、KP-08R、NK-05R、等)、ゴーセネックス(Z-100、Z-200、Z-205、Z-210、Z-220、Z-300、Z-320、Z-410、K-434、L-3266、CKS-50、T-330H、T-330、T-350、LW-100、LW-200、EG-05、EG-40、WO-320N、等)、デンカ社製のデンカポバール(K-05、K-17E、K-17C、H-12、H-17、H-24、B-05、B-17、B-20、B-24、B-33、K-177、NP-05F、EP-130、U-12、PC-1000、PC-2000、PC-5000F、PC-5500、W-100、D-100、F-3005、B-24N、W-20N、W-24N、MP-10、MP-10R、等)などを用いることができる。
【0068】
分散剤は、シェル材と反応しないこと又は極めて反応し難いことが好ましく、例えばゼラチンなどの分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め反応性を失わせる処理をしておくことが好ましい。
【0069】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ノニオン界面活性剤は、特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系化合物、グリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル系化合物、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル系化合物、ショ糖脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル系化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系化合物、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレン化ひまし油系化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、脂肪酸ジエタノールアミド系化合物、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン系化合物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0071】
アニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム塩、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩、アルケニルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩などが挙げられる。
【0072】
カチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0073】
両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸、スルホベタイン、アミノ硫酸エステル、及びイミタゾリンが挙げられる。
【0074】
乳化剤の濃度は、乳化液の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.005質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上10質量%以下が更に更に好ましく、1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
【0075】
水相は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤などの他の成分を含有してもよい。他の成分を含有する場合の含有量は、水相の全質量に対して、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.1質量%超15質量%以下がより好ましく、1質量%超10質量%以下が更に好ましい。
【0076】
(分散)
分散は、油相を油滴として本開示における水相に分散させることをいい、水相に界面活性剤(乳化剤)を含めて乳化させることも含まれる。
分散は、油相と水相との分散に通常用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル、又はその他の公知の分散装置を用いて行うことができる。
【0077】
水相に対する油相の混合比率(油相/水相;質量基準)としては、0.1~1.5が好ましく、0.2~1.2がより好ましく、0.4~1.0が更に好ましい。混合比率が0.1~1.5の範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、乳化液の安定性に優れる。
【0078】
-粒子化工程-
粒子化工程では、分散工程で得た分散液を加熱処理することで、少なくとも上記の多官能イソシアネート化合物を重合反応させて壁部を形成し、「沸点が90℃~150℃の化合物」を内包する粒子を得る。
ここでの加熱処理により、分散液中における油水界面にて多官能イソシアネート化合物が重合反応して壁部が形成され、芯成分として「沸点が90℃~150℃の化合物」が内包される。
【0079】
本工程では、少なくとも多官能イソシアネート化合物を重合反応させる。重合は、分散液中の油相に含まれるシェル材を水相との界面で重合させることにより行われる。これにより、壁部(シェル)が形成される。この際、油相を内包する粒子が水相中に分散された分散液(例えば、マイクロカプセルの水分散液)が調製される。
壁部の形成にあたっては、分散液に加熱処理を施す。加熱処理する際の温度は、通常は40℃~100℃が好ましく、50℃~80℃がより好ましい。
また、加熱時間は、加熱温度にも依存し、通常は0.5時間~10時間程度が好ましく、1時間~5時間程度がより好ましい。加熱温度が高い程、重合時間を短くすることができるが、粒子の内部に多孔質構造を形成しやすくする観点からは、低温で長時間重合させることが望ましい。
【0080】
重合中に粒子同士の凝集を防止するため、水性溶液(例えば、水、酢酸水溶液など)を更に加えて粒子同士の衝突確率を下げることが好ましく、充分な攪拌を行うことも好ましい。
重合中にあらためて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。
更に、必要に応じて、ニグロシン等の荷電調節剤、又はその他任意の補助剤を添加することができる。補助剤は、壁部の形成時又は任意の時点で添加することができる。
【0081】
-中空粒子形成工程-
中空粒子形成工程では、更に加熱処理を行い、粒子化工程で形成された粒子から「沸点が90℃~150℃の化合物」を除去する。これにより、多孔質構造を有する中空粒子が得られる。
【0082】
本工程では、上記の粒子化工程で調製された分散液(例えばマイクロカプセルの水分散液)に対して加熱処理が行われる。この場合、分散液中の水系媒体を予め除いた後、粒子を加熱処理することが好ましい。
具体的には、分散液に対して乾燥処理を施して水系媒体を粒子から分離して粉体化し、得られた粉体に対して加熱処理を行うことが好ましい。これにより、分散液から取り出された芯成分を内包する粒子(即ち、中空粒子の前駆体粒子)が加熱され、粒子に内包されている「沸点が90℃~150℃の化合物」が粒子の壁部を通じて効率良く外部へ放出される。これにより、内部中空の粒子を形成することができる。
【0083】
本工程で加熱処理する際の加熱温度は、「沸点が90℃~150℃の化合物」を効率良く除去しやすい観点から、内包する「沸点が90℃~150℃の化合物」の沸点以上の温度以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。加熱温度の上限は、特に制限されるものではなく、例えば200℃以下とすることができる。
【0084】
加熱処理時の加熱時間は、加熱温度及び粒子の量に依存するため、加熱時における加熱温度等の条件に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の加熱温度の範囲で1時間~5時間とすることができ、1時間~3時間としてもよい。
【0085】
本工程での加熱処理は、公知の加熱器を用いて行うことができ、例えば、温風器(ドライヤー)、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
【0086】
また、粒子の加熱処理前に予め分散液中の水系媒体を除く場合、水系媒体の除去は公知の乾燥装置を用いて行ってもよく、例えば、スプレードライヤー等が好適に用いられる。また、濾過装置等で脱水してもよい。
【0087】
<造孔材>
本開示の造孔材は、既述の本開示の中空粒子を含む。
本開示の中空粒子は、内部が多孔質構造であることで耐変形性を有するので、造孔材を所望とする材料へ混入する際に中空粒子が材料の性状又は混入方法等の影響で変形し難い。そのため、造孔後の孔形状が所望の形状及び大きさを再現しやすい。
また、本開示の造孔材は、壁部がポリウレタン又はポリウレアで形成されているので、造孔時の熱処理で壁部が除去される用途に使用された場合、壁部の残存を抑制することができ、成形後の成型物に造孔材をそのまま残すこともできる。
【0088】
造孔材としては、例えば、多孔セラミックを製造するための多孔セラミック用造孔材、多孔樹脂を製造するための多孔樹脂用造孔材、建材用コンクリート、土木用コンクリート(例えば道路面用コンクリート)等が挙げられる。
多孔セラミック用造孔材は、例えば、セラミックスフィルター又はセラミックス人工骨の造孔材として用いることができる。
造孔材は、例えば、土木用コンクリート及び建材用コンクリートの凍結耐久性もしくは凍結融解変化の応力緩和を目的として、例えば特開2016-17026号公報及び特表2009-527451号公報に記載の中空微小球として用いることができる。
また、造孔材は、タイヤのグリップ力向上を目的として、例えば特開2015-137332号公報に記載の中空粒子として用いることができる。また、造孔材は、シリコンウエハなどの研磨シートの研磨レート向上を目的として、例えば特開2006-297497号公報に記載の微小中空エレメントとして用いることができる。また、造孔材は、衝撃吸収フィルムの衝撃吸収性能向上を目的として、例えば特開2016-30394号公報に記載の発泡体の形成体として用いることができる。さらに、造孔材は、接着剤の柔軟性向上を目的として、例えば特開2010-275453号公報に記載の中空粒子として用いることができる。
本開示の造孔材は、他の原材料と混合して用いることもできる。混合する際は、例えば、粉体化して得られた粉末状の中空粒子と所望とする他の原材料とを混合する。他の原材料としては、セラミック原料、各種樹脂、接着剤、セメント、モルタル、コンクリート等が挙げられる。
【0089】
<化粧料用粒子>
本開示の化粧料用粒子は、既述の本開示の中空粒子を含む。
本開示の化粧料用粒子は、ポリウレタン又はポリウレアで形成された壁部を有することで、ポリウレタン又はポリウレアの性状及び内部の空隙に由来して吸油性もしくは吸水性を有するものと考えられ、化粧料の用途に適している。
【0090】
<軽量化材>
本開示の軽量化材は、既述の本開示の中空粒子を含む。
本開示の中空粒子は、内部が多孔質構造であることで耐変形性を有するので、所望の材料中に混入等する際に潰れたり壊れるのを抑制でき、材料に対して空隙部を導入できるため、所望の軽量化が実現できる。即ち、中空粒子が混入等される材料の性状又は混入方法等の影響を受けた場合に変形し難いため、所望とする形状及び大きさの空間を再現することができる。
また、本開示の軽量化材は、上記の通り壁部がポリウレタン又はポリウレアで形成されているので、最終的に熱処理で壁部を除去することで壁部が存在しない空間が形成された軽量化材を提供することができる。軽量化材として用いられる用途としては、上述した造孔材の項に記載された用途が挙げられる。
【実施例
【0091】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
なお、本実施例では、中空粒子の一例であるマイクロカプセルを作製した場合を中心に説明する。但し、本開示の中空粒子は、実施例で示すマイクロカプセルに制限されるものではない。
【0093】
また、本実施例において、体積基準のメジアン径は、マイクロトラックMT3300EXII(日機装株式会社製)により測定した。壁部の厚み(壁厚)は、中空粒子を切断した断面を走査型電子顕微鏡JSM-7800F(日本電子株式会社製)により観察して5個の中空粒子の個々の壁厚(μm)を測定し、平均して求めた。
沸点は、沸点計(DosaTherm300、Dosatec GmbH製)を用いて
測定した。
Tgは、示差走査型熱量計(DSC-60A、(株)島津製作所社製)を用いて測定した。
CLogPの値は、ChemBioDrawUltra13.0を用いて算出した。
【0094】
(実施例1)
酪酸エチル(沸点121℃;沸点が90℃~150℃の化合物)50質量部と、壁材として芳香族ポリイソシアネートであるバーノック(登録商標)D-750(DIC株式会社製、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体;多官能イソシアネート化合物)49.5質量部と、アデカポリエーテルEPD-300(株式会社ADEKA社製、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;ポリエーテルポリオール)0.5質量部と、を撹拌混合して油相を得た。
次に、クラレポバール(登録商標)PVA-217E(株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール(PVA);乳化剤)の5質量%水溶液を用意した。この水溶液100質量部に油相100質量部を加えて、1300rpm(revolutions per minute)の回転数で乳化分散して乳化液(エマルション分散液)を調製した(分散工程)。乳化分散後、調製した乳化液を70℃まで加温することにより油水界面で芳香族ポリイソシアネートを重合反応させて壁部(シェル)を形成し、シェルにより芯(コア)成分として酪酸エチルを内包したマイクロカプセルの水分散液を得た(粒子化工程)。
得られた水分散液中のマイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は、15μmであった。
【0095】
続いて、上記で得られたマイクロカプセルの水分散液を、スプレードライヤー(ミニスプレードライヤーB-290、BUCHI社製)によって粉体化し、更に150℃のドライオーブン内で3時間加熱処理を行い、マイクロカプセル内から酪酸エチルを除去することにより、中空マイクロカプセルを形成した(中空粒子形成工程)。
中空粒子である中空マイクロカプセルの体積基準のメジアン径(D50)は、15μmであった。また、中空マイクロカプセルのカプセル壁(壁部)のガラス転移温度(Tg)を示差走査型熱量計(DSC-60A、(株)島津製作所社製)を用いて測定したところ、105℃であった。
【0096】
中空マイクロカプセルの表面を走査型電子顕微鏡JSM-7800F(日本電子株式会社製)により観察することにより、中空マイクロカプセルの粒子形状(外部形状)を確認した。
【0097】
また、中空マイクロカプセルの粒子粉体を、PVA-217E(株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール(PVA))の5質量%水溶液を接着剤としてコーティングしたPETフィルムに付着させた後、ミクロトーム(EM UC7、Leica社製)で裁断して裁断面を走査型電子顕微鏡JSM-7800F(日本電子株式会社製)により観察し、中空マイクロカプセルの粒子内の状態(内部形状)を確認した。
【0098】
中空マイクロカプセルの粒子を裁断して、裁断面を走査型電子顕微鏡JSM-7800F(日本電子株式会社製)により観察し、中空粒子の裁断面の全面積に対する中空部の面積の比率を算出することにより、中空マイクロカプセルの空隙率(%)を算出した。
【0099】
(実施例2~実施例9)
実施例1において、油相の調製に用いた多官能ポリイソシアネート、ポリオール、及び有機溶剤の含有量、又は乳化時の撹拌回転数をそれぞれ表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0100】
(実施例10~11)
実施例1において、有機溶剤(沸点が90℃~150℃の化合物)の種類、又は乳化時の撹拌回転数を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0101】
(実施例12)
実施例1において、ポリオールをポリアミン(テトラエチレンペンタミン、東ソー株式会社製)に代えたこと、カプセル壁(壁部)のガラス転移温度(Tg)を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0102】
(実施例13)
実施例1において、酪酸エチルを酢酸イソブチルに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0103】
(実施例14)
実施例1において、芳香族ポリイソシアネートであるバーノック(登録商標)D-750を、同量のタケネート(登録商標)D-165N(三井化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、中空マイクロカプセルを形成した後、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0104】
(比較例1~2)
実施例1において、有機溶剤(沸点が90℃~150℃の化合物)、乳化時の撹拌回転数を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル水分散液を調製し、更に粉体化し、150℃のドライオーブン内で3時間加熱処理を行った。その後、実施例1と同様の方法にて、粒子形状及び粒子内の状態の確認、並びに空隙率の算出を行った。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に示すように、実施例では、内部が多孔質構造の中空粒子を得ることができ、弾性を有し、耐変形性に優れていた。また、得られた中空粒子は、多孔質構造の最外部に複数存在する開口空間がカプセル壁(壁部)で閉塞されたものであった。
これに対して、実施例で用いた「沸点が90℃~150℃の化合物」に代えて沸点が90℃を下回る有機溶剤を用いた比較例1では、内部中空の粒子を形成することができなかった。また逆に、実施例で用いた「沸点が90℃~150℃の化合物」に代えて沸点が150℃を超える有機溶剤を用いた比較例2では、中空の粒子は得られたものの、内部が多孔質構造となった粒子を形成することは不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示の中空粒子及びその製造方法は、中空粒子が利用されるいずれの分野においても好適に利用することが可能である。
具体的には、中空粒子が有する断熱機能、弾性、防音機能等を利用して、例えば、断熱性、弾力性、防音性、耐振動性等の諸機能が要求される材料に好適に用いられる。また、本開示の中空粒子は、壁部がポリウレタン又はポリウレアを含む有機物であるので、空間形成用の材料(例えば、造孔材、軽量化材)に好適に用いられる。更に、本開示の中空粒子は、化粧料等の用途にも好適である。
【0108】
2018年3月23日に出願された日本出願特願2018-056909及び2018年10月26日に出願された日本出願特願2018-202215の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。