(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】平版印刷版作製用現像処理装置、及び、平版印刷版の作製方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/30 20060101AFI20220204BHJP
B41C 1/10 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
G03F7/30 501
B41C1/10
(21)【出願番号】P 2020510428
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006389
(87)【国際公開番号】W WO2019187818
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2018065222
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019019576
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 年宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 英之
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-123039(JP,A)
【文献】特開平03-107950(JP,A)
【文献】特開平05-265225(JP,A)
【文献】特開2001-281885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 - 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像部と、
前記現像部に連続するガム処理部
と、
前記ガム処理部に連続する第2ガム処理部とを有し、
前記ガム処理部が、搬送ローラーと、前記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段Aとを有
し、
前記第2ガム処理部が、ガム液排出口、及び、前記ガム処理部へのガム液供給手段を有し、
前記ガム液排出口及び前記ガム液供給手段を通じて前記第2ガム処理部から前記ガム処理部へガム液が供給される
平版印刷版作製用現像処理装置。
【請求項2】
前記手段Aが、前記ガム処理部における前記搬送ローラーの上方に設置され、かつ前記搬送ローラー上に洗浄液を滴下する手段である請求項1に記載の現像処理装置。
【請求項3】
現像処理装置の運転開始時、現像処理終了時から次の現像処理開始時までの間、及び、現像処理装置の運転終了時よりなる群から選ばれた少なくとも1つの時点において、前記洗浄液を供給する手段から前記搬送ローラー上に洗浄液を供給するように設定されている請求項2に記載の現像処理装置。
【請求項4】
前記ガム処理部における前記搬送ローラー上に、前記搬送ローラー上に滴下された洗浄液を搬送ローラー上に拡散させる洗浄液拡散部材が設置されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の現像処理装置。
【請求項5】
前記洗浄液拡散部材が、前記搬送ローラー上の洗浄液が滴下される位置よりも現像部側にあり、かつ、前記搬送ローラーのうち上側のローラーの軸の中心よりも上部に前記上側のローラーの外周上に接して設置されている請求項4に記載の現像処理装置。
【請求項6】
前記ガム処理部における前記搬送ローラー
上に、ガム液が前記現像部の現像液に混入することを抑制する逆流防止部材が設置されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の現像処理装置。
【請求項7】
前記ガム処理部が、前記搬送ローラーを含め2対の搬送ローラーを有し、
前記ガム処理部において、搬送方向上流側の1対の前記搬送ローラーと搬送方向下流側の1対の前記搬送ローラーとの間で、現像後の平版印刷版の版面に直接又は搬送方向上流側の1対の前記搬送ローラーを介して現像後の平版印刷版の版面にガム液を供給する手段を有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の現像処理装置。
【請求項8】
前記ガム処理部のガム液の液面よりも前記第2ガム処理部のガム液の液面が高い請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の現像処理装置。
【請求項9】
前記第2ガム処理部が、搬送ローラーと、前記第2ガム処理部における前記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段A2とを有する請求項
1~請求項8のいずれか1項に記載の現像処理装置。
【請求項10】
現像部と、
前記現像部に連続するガム処理部とを有し、
前記ガム処理部が、搬送ローラーと、前記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段Aとを有し、
前記ガム処理部における前記搬送ローラー上に、ガム液が前記現像部の現像液に混入することを抑制する逆流防止部材が設置されており、
前記逆流防止部材が、接している前記搬送ローラーの回転方向において、前記手段Aからローラー上への洗浄液の供給位置よりも上流側に設けられている
平版印刷版作製用現像処理装置。
【請求項11】
前記ガム処理部における前記搬送ローラー上に、前記搬送ローラー上に滴下された洗浄液を搬送ローラー上に拡散させる洗浄液拡散部材が設置されている請求項10に記載の現像処理装置。
【請求項12】
前記逆流防止部材が、接している前記搬送ローラーの回転方向において、前記手段Aからローラー上への洗浄液の供給位置、及び、前記洗浄液拡散部材よりも上流側に設けられている請求項11に記載の現像処理装置。
【請求項13】
請求項1~請求項
12のいずれか1項に記載の現像処理装置を用いて、平版印刷版原版を前記現像部においてpHが8.5~14のアルカリ現像液で現像し、続いて前記ガム処理部においてガム液を用いてガム処理を行う平版印刷版の作製方法。
【請求項14】
前記ガム処理部における前記搬送ローラーに供給される洗浄液が、防腐剤を含有する水溶液である請求項
13に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項15】
前記ガム処理部における前記搬送ローラー上への洗浄液の供給量が、50mL/回以上であり、かつ前記ガム処理部におけるガム液の全質量に対して20質量%以下である請求項
13又は請求項
14に記載の平版印刷版の作製方法。
【請求項16】
前記ガム処理部における前記搬送ローラーのニップ部分に残存するガム液の固形分濃度に対して、洗浄液の供給後の前記ガム液の固形分濃度が、50質量%以下である請求項
13~請求項
15のいずれか1項に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平版印刷版作製用現像処理装置、及び、平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。
平版印刷は、水と油性インキとが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
【0003】
現在、平版印刷版原版から平版印刷版を作製する製版工程においては、CTP(コンピュータトゥプレート)技術による画像露光が行われている。即ち、画像露光は、レーザーやレーザーダイオードを用いて、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版原版に走査露光などにより行われる。
【0004】
従来の現像処理装置としては、特許文献1又は2に記載されているものが知られている。
【0005】
特許文献1:国際公開第2017/157570号
特許文献2:特開2005-258281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の現像処理装置である、現像後に連続してガム処理する装置を用いた印刷版原版の処理方法では、下記のような課題が生じることを本発明者らは見出した。
平版印刷版原版は、現像処理部通過した後、現像液、例えば、高pHのアルカリ現像液が版上に付着しているため、感光層の溶解が完全には停止していない。その後、ガム処理部で低pHのガム液が供給されて現像液が中和されて、感光層の溶解が完全に停止する。
現像処理が終了(停止)すると、長時間ガム液が供給されなくなるため、搬送ローラー上に付着したガム液中の水分が蒸発し、搬送ローラー上には固着したガム成分或いは高濃度のガム液が残存する。
このため、処理再開時にローラー上に再びガム液が供給された際に、処理再開直後はローラー上に高濃度のガム液や固着したガム成分が残っている。この時、水分の蒸発によってガム処理部のローラー上のガム液濃度が高くなり、ローラー上に部分的にpHがより低いガム液が生じる。その結果、pHのより低いガム液成分が残存している部分は中和されて現像が速やかに停止するため、得られる平版印刷版の印刷時における網点再現性や網点の耐刷性にムラが生じるという問題があった。
【0007】
また、平版印刷版原版を構成するアルカリ可溶性樹脂などの成分が溶解したアルカリ現像液が版上に付着してガム処理部のpHの低いガム液中に持ち込まれるため、これらの成分が蓄積すると、ローラー上で水分が蒸発して濃度が高くなった時、カスとして析出しやすくなる。これらの析出物が、ローラー表面に損傷を与えたり平版印刷版上に付着したりして、平版印刷版の品質を大きく低下させ、網点再現性や網点の耐刷性にムラが生じるという問題があった。
【0008】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、得られる平版印刷版の印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制される平版印刷版作製用現像処理装置を提供ことである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記平版印刷版作製用現像処理装置を用いた平版印刷版の作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 現像部と、上記現像部に連続するガム処理部とを有し、上記ガム処理部が、搬送ローラーと、上記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段Aとを有する平版印刷版作製用現像処理装置。
<2> 上記手段Aが、上記ガム処理部における上記搬送ローラーの上方に設置され、かつ上記搬送ローラー上に洗浄液を滴下する手段である<1>に記載の現像処理装置。
<3> 現像処理装置の運転開始時、現像処理終了時から次の現像処理開始時までの間、及び、現像処理装置の運転終了時よりなる群から選ばれた少なくとも1つの時点において、上記洗浄液を供給する手段から上記搬送ローラー上に洗浄液を供給するように設定されている<2>に記載の現像処理装置。
<4> 上記ガム処理部における上記搬送ローラー上に、上記搬送ローラー上に滴下された洗浄液を搬送ローラー上に拡散させる洗浄液拡散部材が設置されている<1>~<3>のいずれか1つに記載の現像処理装置。
<5> 上記洗浄液拡散部材が、上記搬送ローラー上の洗浄液が滴下される位置よりも現像部側にあり、かつ、上記搬送ローラーのうち上側のローラーの軸の中心よりも上部に上記上側のローラーの外周上に接して設置されている<4>に記載の現像処理装置。
<6> 上記ガム処理部における上記搬送ローラーに、ガム液が上記現像部の現像液に混入することを抑制する逆流防止部材が設置されている<1>~<5>のいずれか1つに記載の現像処理装置。
<7> 上記ガム処理部が、上記搬送ローラーを含め2対の搬送ローラーを有し、上記ガム処理部において、搬送方向上流側の1対の上記搬送ローラーと搬送方向下流側の1対の上記搬送ローラーとの間で、現像後の平版印刷版の版面に直接又は搬送方向上流側の1対の上記搬送ローラーを介して現像後の平版印刷版の版面にガム液を供給する手段を有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の現像処理装置。
<8> 上記ガム処理部に連続する第2ガム処理部を更に有する<1>~<7>のいずれか1つに記載の現像処理装置。
<9> 上記第2ガム処理部が、上記第2ガム処理部において一定量を超えたガム液を上記ガム処理部に供給する手段を有する<8>に記載の現像処理装置。
<10> 上記第2ガム処理部が、搬送ローラーと、上記第2ガム処理部における上記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段A2と、上記搬送ローラー上に滴下された洗浄液を搬送ローラー上に拡散させる洗浄ローラーとを有する<8>又は<9>に記載の現像処理装置。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の現像処理装置を用いて、平版印刷版原版を上記現像部においてpHが8.5~14のアルカリ現像液で現像し、続いて上記ガム処理部においてガム液を用いてガム処理を行う平版印刷版の作製方法。
<12> 上記ガム処理部における上記搬送ローラーに供給される洗浄液が、防腐剤を含有する水溶液である<11>に記載の平版印刷版の作製方法。
<13> 上記ガム処理部における上記搬送ローラー上への洗浄液の供給量が、50mL/回以上であり、かつ上記ガム処理部におけるガム液の全質量に対して20質量%以下である<11>又は<12>に記載の平版印刷版の作製方法。
<14> 上記ガム処理部における上記搬送ローラーのニップ部分に残存するガム液の固形分濃度に対して、洗浄液の供給後の上記ガム液の固形分濃度が、50質量%以下である<11>~<13>のいずれか1つに記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、得られる平版印刷版の印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制される平版印刷版作製用現像処理装置を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記平版印刷版作製用現像処理装置を用いた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る平版印刷版作製用現像処理装置の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0013】
(平版印刷版作製用現像処理装置)
本開示に係る平版印刷版作製用現像処理装置(以下、単に「現像処理装置」ともいう。)は、現像部と、上記現像部に連続するガム処理部とを有し、上記ガム処理部が、搬送ローラーと、上記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段Aとを有する。
また、本開示に係る現像処理装置は、自動現像処理装置であることが好ましい。
【0014】
従来の現像処理装置の多くは、現像部に連続する水洗部と更にガム処理部とを有する装置であり、一方、従来の現像後に連続してガム処理する装置を用いた平版印刷版原版の処理方法では、上述したように、得られる平版印刷版における網点再現性や網点の耐刷性にムラが生じるという問題があった。
本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、得られる平版印刷版の印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制される平版印刷版作製用現像処理装置を提供できることを見出した。
上記構成による優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
上述したように、従来の平版印刷版作製用現像処理装置では、網点再現性や網点の耐刷性にムラが生じるという問題があることを、本発明者らは見出した。
本発明者らが鋭意検討した結果、現像部と、上記現像部に連続するガム処理部とを有する現像処理装置において、上記ガム処理部が、搬送ローラーと、上記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段Aとを有することにより、搬送ローラー上に存在すると考えられる固着したガム成分或いは高濃度のガム液を、上記手段Aから供給される洗浄液により、溶解又は希釈することにより、現像ムラを抑制することができ、得られる平版印刷版の印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制されると推定される。
【0015】
以下、本開示における実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示に係る現像処理装置の一例における断面概略図である。
図1に示す現像処理装置2は、現像部4と、上記現像部4に連続するガム処理部6と、上記ガム処理部6に連続する第2ガム処理部8と、乾燥部10とを有する。
本開示に係る現像装置は、上記
図1に示す構造に限定されることなく、少なくとも、現像部4と、上記現像部4に連続するガム処理部6とを有するものであれば適用することができる。
本開示に係る現像処理装置は、上記ガム処理部6に連続する第2ガム処理部8を有していても、有していなくともよいが、耐汚れ性の観点から、第2ガム処理部8を有していることが好ましい。
また、本開示に係る現像処理装置は、乾燥部10を有していても、有していなくともよく、例えば、本開示に係る現像処理装置に加え、乾燥装置を有する平版印刷版作製システムであってもよい。
【0016】
図1に示す現像処理装置2は、図示されない露光装置によって露光された平版印刷版原版の現像処理を行う。ここで、露光装置は、特に制限はなく、公知の露光装置を用いることができる。
露光に用いられる活性エネルギー線としては、平版印刷版原版の露光に用いられるものであれば、特に制限はなく、例えば、赤外線、紫外線等が好ましく挙げられる。
露光に用いられる活性エネルギー線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーがより好ましい。中でも、本開示においては、波長750nm~1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10mJ/cm
2~300mJ/cm
2であることが好ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像の損傷を防ぐことができる。
また、露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて行うことができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。上記オーバーラップ係数は、0.1以上であることが好ましい。
上記露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0017】
本開示に係る現像処理装置により現像される平版印刷版原版は、特に制限はなく、公知のポジ型又はネガ型の平版印刷版原版を用いることができる。
中でも、網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制の効果をより発揮する観点から、ポジ型平版印刷版原版であることが好ましい。
なお、本開示に用いられる平版印刷版原版の詳細については、後述する。
【0018】
図1に示す現像処理装置2は、露光された平版印刷版原版(不図示)を現像液18によって処理するための現像部4と、現像された平版印刷版原版(不図示)に版面保護用のガム液56及び64を付与して不感脂化処理するガム処理部6及び第2ガム処理部8と、ガム処理された平版印刷版原版(平版印刷版、不図示)を乾燥させる乾燥部10と、が配設されている。すなわち、現像処理装置2には、平版印刷版原版の搬送方向(
図1の左側から右側へ向かう方向)方向に沿って、現像部4、ガム処理部6、第2ガム処理部8及び乾燥部10が順に配置されている。
露光された平版印刷版原版(不図示)は、1対の2つのローラーからなる搬送ローラー12により、現像部4へと搬送される。
現像処理装置2は、壁材14に加え、現像部4、ガム処理部6、第2ガム処理部8、及び、乾燥部10等の少なくとも上部を覆う筐体(不図示)を有していてもよく、上記筐体を有することが好ましい。
壁材14及び筐体の形状は、特に制限はなく、必要に応じ、適宜選択すればよい。また、壁材14及び筐体の材質は、特に制限はなく、公知の材質を用いることができる。
【0019】
現像部4は、1対の2つのローラーからなる搬送ローラー16、28及び38、現像液18、現像液排出口20を有する現像液排出手段22、搬送ベルト24、現像液供給手段26、ブラシローラー30、搬送ローラー32、搬送ガイド板34、搬送ガイド板保持部材36、並びに、カバー40を有する。
また、現像部4は、底部中央が下方へ向けて突出された略山形状となっており、露光された平版印刷版原版(不図示)の現像処理を行うための現像液18を貯留する。
例えば、搬送ローラー16が回転駆動することにより、露光された平版印刷版原版(不図示)を現像部4へ引き入れながら、水平方向に対して約15°から31°の範囲の角度で現像液18中へ送り込む。
現像液18の温度は、特に制限はないが、好ましくは0℃~60℃、より好ましくは15℃~40℃の温度である。
本開示に好適に用いられる現像液18の詳細については、後述する。
【0020】
露光された平版印刷版原版(不図示)は、搬送ローラー16により搬送され、現像液18へ浸漬され、搬送ベルト24上、搬送ローラー28、搬送ガイド板34上、及び、搬送ローラー38を順に通過し、ガム処理部6へ搬送される。
露光された平版印刷版原版(不図示)が、現像部4において、現像液18に浸漬し現像され、また、現像液18中において、ブラシローラー30により平版印刷版原版の版面がこすられて現像が促進される。更に、平版印刷版原版が、搬送ローラー38を通過することにより、現像された平版印刷版原版に付着した現像液18が一部絞られて除去される。
また、現像部4においては、現像液供給手段26より新しい現像液18が供給されており、例えば、
図1の右側の現像液供給手段26に付記されている矢印の方向に、現像液18を吐出している。
現像液供給手段26による現像液18の供給は、連続的であっても、間欠的であってもよく、必要に応じ、供給することができる。また、現像液18の供給方向は、特に制限はなく、平版印刷版原版に当てるように吐出してもよいし、現像液18に意図的な流れが生じないように供給してもよい。
現像部4には、現像液18がある程度の高さ(現像液排出口20の高さ)まで満たされており、また、現像液排出口20の上部には、現像液18のない空間を有しており、現像液排出口20の高さを超える現像液18が、現像液排出口20を通り現像液排出手段22により排出される。
現像液排出口20及び現像液排出手段22の形状は、特に制限はなく、例えば、
図1に示すようなパイプ形状が好ましく挙げられる。
このように
図1に本開示における現像部4の一例を示したが、現像部4はこれに限定されないことは言うまでもない。
【0021】
ガム処理部6は、現像部4に連続して設けられている。
本開示における上記「連続」とは、現像部4による現像と、ガム処理部6によるガム処理との間に、他の処理(例えば、水洗処理等)を行わずに、上記現像と上記ガム処理とが行われる態様であればよく、現像部4及びガム処理部6の位置やこれらの距離については、特に制限はなく、適宜設定すればよい。
また、ガム処理部6の少なくとも一部、好ましくは現像部4から連続する部分においては、現像部4の現像液18の液面よりも高い位置に、現像された平版印刷版原版の搬送位置があることが好ましい。上記態様であると、現像液18のガム処理部6のガム液56への混入を少なくすることができる。
【0022】
ガム処理部6は、1対の2つのローラーからなる搬送ローラー42及び44、ガム液供給スプレー46、洗浄液を滴下する手段48(手段A)、洗浄液拡散部材50、洗浄液供給手段固定部52、逆流防止部材54、ガム液56、並びに、ガム液排出口58を有するガム液排出手段59を有する。
現像された平版印刷版原版(不図示)が、現像部4から搬送され、搬送ローラー42と搬送ローラー44との間において、上下2つのガム液供給スプレー46により平版印刷版原版の上面及び下面の両方がガム処理され、第2ガム処理部8へと搬送される。
【0023】
図1における上側のガム液供給スプレー46は、2つのローラーからなる搬送ローラー42における上側のローラーに向けてガム液56をスプレーしている。
また、
図1における下側のガム液供給スプレー46は、平版印刷版原版の下面に向けてガム液56をスプレーしている。
また、上記ガム処理部6において、少なくとも1対の搬送ローラー(例えば、搬送ローラー44)の搬送方向上流側に位置でガム液が平版印刷版原版の上面に供給され、平版印刷版原版上にガム液が溜まって、現像液を中和及び洗浄する態様が好ましく挙げられる。
更に、上記ガム処理部6が、上記搬送ローラーを含め2対の搬送ローラー42及び44を有し、上記ガム処理部において、搬送方向上流側の1対の上記搬送ローラー42と搬送方向下流側の1対の上記搬送ローラー44との間で、現像後の平版印刷版の版面に直接又は搬送方向上流側の1対の上記搬送ローラー44を介して現像後の平版印刷版の版面にガム液56を供給する手段(上側の46)を有することが好ましい。上記態様であると、2対の搬送ローラー42及び44間でガム液56が溜まることにより、ガム処理がよりムラなく行われ、網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制性により優れる。
本開示におけるガム液供給スプレー46によるガム液56の吐出方向は、特に制限はないが、それぞれ、
図1に示す態様が好ましく挙げられる。
余剰のガム液56は、ガム処理部6の下部に貯留される。
図1における上側のガム液供給スプレー46により、ローラーに向けて吐出されたガム液56は、ローラーの回転に伴い、ローラーの上側へと移動するが、逆流防止部材54を有することにより、平版印刷版原版をつたってガム液56が現像部4の現像液18に混入することを抑制することができる。
逆流防止部材54の形状は、特に制限はないが、円柱状又はブレード状であることが好ましい。また、逆流防止部材54は、搬送ローラー42に接して設けられていることが好ましい。更に、逆流防止部材54は、接しているローラーの回転方向において、手段A(洗浄液を滴下する手段48)からローラー上への洗浄液の供給位置、及び、洗浄液拡散部材50よりも上流側に設けられていることが好ましい。
すなわち、搬送ローラー42において、回転方向下流側から、洗浄液拡散部材50、手段A(洗浄液を滴下する手段48)からローラー上への洗浄液の供給位置、逆流防止部材54の順で設けられていることが好ましい。
また、逆流防止部材54における上記ローラーの軸方向における幅は、ガム液の現像部への流入抑制の観点から、上記ローラーの幅以上であることが好ましい。
【0024】
ガム処理部6は、搬送ローラー42と、上記搬送ローラー42に洗浄液を供給する手段A(洗浄液を滴下する手段48)とを有する。
手段Aは、ガム処理部6における搬送ローラー42の上方に設置され、かつ搬送ローラー42上に洗浄液を滴下する手段48であることが好ましい。
手段Aによる洗浄液の供給は、スプレー状に吐出してもよいが、滴下することが好ましい。
洗浄液を滴下する手段48は、洗浄液供給手段固定部52により固定されており、搬送ローラー42の上側のローラー上へ洗浄液を滴下する。また、洗浄液を滴下する手段48から搬送ローラー42の上側のローラー上へ洗浄液を滴下する位置よりも現像部4側(上側のローラーの回転方向下流側)に、かつ、上側のローラーの軸の中心よりも上部に前記上側のローラーの外周上に接して洗浄液拡散部材50が設けられている。
洗浄液拡散部材50は、上記ガム処理部6における上記搬送ローラー42上に設けられ、上記搬送ローラー42上に滴下された洗浄液を搬送ローラー42上に拡散させる部材である。
【0025】
洗浄液拡散部材50は、上記洗浄水を供給する手段Aから、上記ガム処理部6内の上方のローラーに供給された洗浄水を、上方のローラーの周面に均一に拡散させて、搬送ローラー42の上下のローラーの周面からガム液56を洗い流す機能を有する。これによって、処理停止前に搬送ローラー42上に残存したガム液を均一に除去し、処理停止後に搬送ローラー42上でガム成分の濃度が高くなったり、固着したりしてしまうことを抑制するようにしている。
洗浄液拡散部材50と上方のローラーとの間に液溜まりが形成でき、洗浄水がバーやブレードからローラー以外の場所へ溢れないようにするため、洗浄液拡散部材50は、上方のローラーの回転軸よりも上の位置でローラーと接していることが好ましい。
洗浄液拡散部材50の形状は、円柱状のバー又は板状のブレードが好ましく、円柱状のバーがより好ましい。
洗浄液拡散部材50が円柱状の部材である場合、ステンレス等の金属製のバー、ゴムローラー、樹脂ローラーが好ましい。また、円柱状の洗浄水洗拡散バーは、接しているローラーの回転に伴って追従回転してもよく、固定されていてもよく、駆動軸によって回転していてもよい。
洗浄液拡散部材50が板状のブレード状の部材である場合、材質はゴム製や樹脂製、金属製が好適に挙げられ、柔軟性があり、接するローラーの表面に損傷を与えない材質であることが好ましく、柔軟性のあるゴム板、又は、柔軟性のある樹脂の板がより好ましい。
【0026】
洗浄液供給手段固定部52の形状は、特に制限はないが、
図1に示すように、断面形状が、洗浄液を滴下する手段48の3方を少なくとも覆う形状であることが好ましい。
また、洗浄液を滴下する手段48から吐出された洗浄液は、直接ローラー上に供給されてもよいし、吐出後、一度洗浄液供給手段固定部52の壁面等を介して、ローラ上に流下されてもよい。
洗浄液を滴下する手段48から上側のローラー上に滴下された洗浄液は、洗浄液拡散部材50により、上側のローラーの軸方向へと拡散され、上側のローラー及び下側のローラーへも洗浄液が供給され、搬送ローラー42上に存在すると考えられる固着したガム成分或いは高濃度のガム液を洗浄液により溶解又は希釈することができる。
また、搬送ローラー42の各ローラーが回転することにより、各ローラーの全面に洗浄液を供給することもできる。
搬送ローラー42から流れ落ちた洗浄液は、ガム液56と混合する。
洗浄液、及び、ガム液56の温度及びその使用量は、特に制限はなく、適宜選択すればよい。
本開示に好適に用いられる洗浄液、及び、ガム液56の詳細については、後述する。
【0027】
洗浄液を供給する手段A(洗浄液を滴下する手段48)から、洗浄液を供給するタイミングとしては、特に制限はなく、必要に応じ、所望のタイミングで洗浄液を供給すればよい。
中でも、得られる平版印刷版の網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制の観点から、手段Aは、現像処理装置の運転開始時、現像処理終了時から次の現像処理開始時までの間、及び、現像処理装置の運転終了時よりなる群から選ばれた少なくとも1つの時点において、上記洗浄液を供給する手段から上記搬送ローラー上に洗浄液を供給するように設定されていることが好ましい。
洗浄液を供給するタイミングを制御する方法としては、特に制限はなく、コンピューター等の公知の制御手段により制御すればよい。
【0028】
洗浄液の供給量が多いほど洗浄性に優れ、固着したガム成分が除去されやすいが、ガム廃液量が増加する。また、洗浄液の供給量が少ないほど、ガム廃液量が少ないが、洗浄速度は低下する。
洗浄によってローラー上に付着したガム液及び固着したガム液成分を洗浄できれば、一定量の洗浄液を連続して供給しても、間欠的に供給してもよく、また、間欠的に供給する場合、平版印刷版原版のある版面に対し、1回のみ洗浄液を供給しても、複数回に分けて間隔をおいて洗浄液を供給してもよい。
洗浄液の供給量は、現像処理装置の幅やガム液の成分にもより、また、供給方法にもよるため特に制限はないが、間欠的に洗浄液を供給する場合、洗浄液の供給量は、1回の洗浄液の供給あたり、50mL~1,000mLであることが好ましく、100mL~500mLであることがより好ましい。
また、少量の洗浄液で効率よく洗浄する観点からは、洗浄液を複数回に分けて間隔をおいて供給することが好ましく、これによってガム廃液量をより低減することができる。例えば、10秒~60秒間隔で2回~5回に分けて好ましく洗浄することができる。
【0029】
また、ガム処理部6は、搬送ローラー44と、上記搬送ローラー44に洗浄液を供給する手段A(洗浄液を滴下する手段48)とを有する。
搬送ローラー44及びその近傍に設けられている洗浄液を滴下する手段48(手段A)、洗浄液拡散部材50、及び、洗浄液供給手段固定部52の態様は、搬送ローラー42における態様と同様である。
ガム処理部6は、2つ目の搬送ローラーである搬送ローラー44を有していても、有していなくともよいが、ガム処理の確実性、及び、余分なガム液56を搾り取る観点から、2つめの搬送ローラーである搬送ローラー44を有していることが好ましい。
また、ガム処理部6において、搬送ローラー42及び搬送ローラー44の間において、平版印刷版原版の上面が、ガム液供給スプレー46により供給されたガム液で覆われている態様も好ましく挙げられる。
【0030】
2つのガム液供給スプレー46から供給されるガム液56はそれぞれ、ガム処理部6の底部60より採取されたガム液56であることが好ましい。ガム処理部6の底部60より採取されたガム液56を、配管(不図示)及びポンプ(不図示)により、ガム液供給スプレー46に供給し、スプレーする。
また、2つのガム液供給スプレー46から供給されるガム液56は、新しいガム液56であってもよいし、第2ガム処理部8のより採取されたガム液64であってもよい。
ガム処理部6の下部に貯留されるガム液56は、例えば、ガム液56がある程度の高さ(ガム液排出口58の高さ)まで満たされており、また、ガム液排出口58の高さを超えるガム液56が、ガム液排出口58を通りガム液排出口58に続くガム液排出手段59により排出される。
ガム液排出口58及びガム液排出手段59の形状は、特に制限はなく、例えば、
図1に示すようなパイプ形状が好ましく挙げられる。
また、2つの洗浄液を滴下する手段48には、洗浄液タンク(不図示)、配管(不図示)及びポンプ(不図示)が接続されており、洗浄液タンクより供給される洗浄液を滴下する。
このように
図1に本開示におけるガム処理部6の一例を示したが、ガム処理部6は、搬送ローラーと、上記搬送ローラーに洗浄液を供給する手段Aとを有する以外、これに限定されないことは言うまでもない。
【0031】
第2ガム処理部8は、ガム処理部6に連続して設けられている。
本開示に係る現像処理装置は、第2ガム処理部8を有していても、有していなくともよいが、ガム処理性及び版面汚れ防止性の観点から、第2ガム処理部8を有していることが好ましい。
第2ガム処理部8は、1対の2つのローラーからなる搬送ローラー62、ガム液供給スプレー46、洗浄液を滴下する手段48(手段A2)、洗浄液拡散部材50、洗浄液供給手段固定部52、ガム液64、並びに、ガム液排出口66を有するガム処理部6へのガム液供給手段68を有する。
現像された平版印刷版原版(不図示)が、ガム処理部6から搬送され、搬送ローラー62の搬送方向手前において、上下2つのガム液供給スプレー46により平版印刷版原版の上面及び下面の両方がガム処理され、乾燥部10へと搬送される。
【0032】
第2ガム処理部8における上下2つのガム液供給スプレー46により供給されるガム液64は、第2ガム処理部8の底部に接続された配管(不図示)及びポンプ(不図示)を通して、循環されている。ガム処理性及び版面汚れ防止性の観点から、処理された面積に応じて、新しいガム液(新鮮なガム液)が補充されることが好ましい。
例えば、第2ガム処理部8における上下2つのガム液供給スプレー46には、ガム液タンク(不図示)、配管(不図示)及びポンプ(不図示)が接続されており、ガム液タンクより新しいガム液が供給される。
また、ガム処理性及び版面汚れ防止性の観点から、処理された面積及び運転時間に応じて、水の蒸発量を補正するために、第2ガム処理部8は、水を補充する手段(不図示)を有することが好ましい。また、ガム処理部6に、水を補充する手段を有していてもよい。
第2ガム処理部8の下部に貯留されるガム液64は、例えば、ガム液64がある程度の高さ(ガム液排出口66の高さ)まで満たされており、また、ガム液排出口66の高さ(一定量)を超えるガム液64が、ガム液排出口66及びガム液供給手段68を通り、ガム処理部6の下部へと供給される。
また、ガム処理部6へのガム液64の供給における安定性の観点から、ガム処理部6のガム液56の液面よりも第2ガム処理部8のガム液64の液面が高いことが好ましく、その差dは、1cm以上であることが好ましく、2cm以上であることがより好ましく、2cm以上10cm以下であることが特に好ましい。
【0033】
また、第2ガム処理部8は、搬送ローラー62により、余分なガム液64が搾られ、乾燥部10へと搬送される。
搬送ローラー62及びその近傍に設けられている洗浄液を滴下する手段48(手段A)、洗浄液拡散部材50、及び、洗浄液供給手段固定部52の態様は、搬送ローラー42における態様と同様である。
また、第2ガム処理部8における洗浄液を滴下する手段48には、洗浄液タンク(不図示)、配管(不図示)及びポンプ(不図示)が接続されており、洗浄液タンクより供給される洗浄液を滴下する。
更に、第2ガム処理部8は、搬送ローラー62よりも搬送方向上流側に、1対の2つのローラーからなる搬送ローラーを更に有していてもよい。
このように
図1に本開示における第2ガム処理部8の一例を示したが、第2ガム処理部8は、これに限定されないことは言うまでもない。
【0034】
乾燥部10は、第2ガム処理部8に連続して設けられている。
本開示に係る現像処理装置は、乾燥部10を有していても、有していなくともよく、例えば、本開示に係る現像処理装置と乾燥装置とが別の装置であってもよい。
乾燥部10は、支持ローラー70、1対の2つのローラーからなる搬送ローラー74及び78、上下1対のダクトを有する乾燥手段72及び76、並びに、平版印刷版排出口80を有する。
ガム処理された平版印刷版原版(不図示)が、第2ガム処理部8から搬送され、更に、支持ローラー70、並びに、搬送ローラー74及び78により搬送される途中において、乾燥手段72及び76により、ガム処理された平版印刷版原版(不図示)の上面及び下面とも乾燥され、平版印刷版排出口80より乾燥された平版印刷版(不図示)が排出される。
乾燥手段72及び76はそれぞれ、図示しない乾燥風発生手段によって発生された乾燥風を、乾燥手段72及び76が有するダクトからガム処理された平版印刷版原版へ向けて送風する。これにより、ガム処理された平版印刷版原版の上面及び下面に塗布されているガム液が乾燥され、保護膜が形成される。
乾燥手段72及び76から送風される乾燥風の強さや温度等は、搬送速度にも関連するが、特に制限はなく、所望の強さ及び温度に設定することができる。
また、第2ガム処理部8と乾燥部10との間には、仕切り板(不図示)が設けられていてもよい。上記仕切り板は、ガム処理された平版印刷版原版の搬送路の上方に配置されており、これにより、乾燥部10内の空気が第2ガム処理部8内に入り込むことを抑制できる。
このように
図1に本開示における乾燥部10の一例を示したが、乾燥部10は、これに限定されないことは言うまでもない。
【0035】
また、本開示に係る現像処理装置は、上述した以外の公知の構成を有していてもよい。
例えば、現像部4の前に、露光された平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
【0036】
次に、本開示に用いられる平版印刷版原版、現像液、洗浄液、及び、ガム液について説明する。
【0037】
<平版印刷版原版>
本開示に用いられる平版印刷版原版は、上述したように、特に制限はなく、公知のポジ型又はネガ型の平版印刷版原版を用いることができる。
中でも、網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制の効果をより発揮する観点から、ポジ型平版印刷版原版であることが好ましい。
平版印刷版原版としては、例えば、支持体上に感光層、感熱層などの画像記録層を設けた種々の平版印刷版原版を挙げることができる。
画像記録層としては、例えば、特開平7-285275号公報及び特開2003-345014号公報に記載されたサーマルポジタイプ、特開平7-20625号公報又は特開平11-218903号公報に記載されたサーマルネガタイプ、並びに、特開2001-100412号、特開2002-169282号公報に記載されたフォトポリネガタイプ等が挙げられる。
本開示に用いられる平版印刷版原版は、保護層、下塗り層等の公知の層を更に有していてもよい。
支持体、画像記録層、保護層、下塗り層等は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0038】
<現像液>
本開示に好適に用いられる現像液の各成分の詳細を以下に説明する。
【0039】
〔pH〕
本開示に用いられる現像液のpHは、特に制限はないが、8.5~14であることが好ましく、10~14であることがより好ましい。上記範囲であると、網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制の効果がより発揮される。
本開示において、pHはpHメーター(型番:HM-31、東亜ディーケーケー(株)製)を用いて25℃で測定される値である。
【0040】
現像処理に用いられるアルカリ現像液は、アルカリ性水溶液であり、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択して用いることができる。例えば、ケイ酸アルカリ又は非還元糖と、塩基とを含有するアルカリ水溶液が好適に挙げられ、pH12.5~pH14.0のアルカリ水溶液がより好適に挙げられる。上記アルカリ現像液については、例えば、特開2003-1956号公報の段落0270~0292の記載を参照することができる。
【0041】
〔界面活性剤〕
本開示に用いられる現像液には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤を含有してもよい。
中でも、上記現像液は、ブラン汚れ性の観点から、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記現像液は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。
【0042】
アニオン性界面活性剤として、下記式(I)で表される化合物が好ましく挙げられる。
R1-Y1-X1 (I)
式(I)中、R1は置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基等を好ましく挙げることができる。
シクロアルキル基としては、単環型でもよく、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3~8の単環型シクロアルキル基であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロオクチル基であることがより好ましい。多環型としては例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基等を好ましく挙げることができる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等を好ましく挙げることができる。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基であることが好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を好ましく挙げることができる。
アリール基としては、例えば、炭素数6~15のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10-ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0043】
また、置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、スルホン酸アニオン基等が挙げられる。
【0044】
これらの置換基におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の好ましくは炭素数1~40、より好ましくは炭素数1~20のものが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6~18のものが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2~24のものが挙げられる。アミド基としては、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2~24のものが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2~20のものが挙げられる。エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1~24のものが挙げられる。置換基は、上記置換基の2以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0045】
X1は、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表す。
Y1は、単結合、-CnH2n-、-Cn-mH2(n-m)OCmH2m-、-O-(CH2CH2O)n-、-O-(CH2CH(CH3)O)n-、-O-(CH(CH3)CH2O)n-、-O-(CH2CH2CH2O)n-、-CO-NH-、又は、これらの2以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、n≧1、n≧m≧0である。
【0046】
このうち、式(I)で表される化合物の中で、下記式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物が、耐キズ汚れ性の観点から、好ましい。
【0047】
【0048】
式(I-A)及び式(I-B)中、RA1~RA10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nAは1~3の整数を表し、XA1及びXA2はそれぞれ独立に、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表し、YA1及びYA2はそれぞれ独立に、単結合、-CnH2n-、-Cn-mH2(n-m)OCmH2m-、-O-(CH2CH2O)n-、-O-(CH2CH(CH3)O)n-、-O-(CH(CH3)CH2O)n-、-O-(CH2CH2CH2O)n-、-CO-NH-、又は、これらを2以上組み合わせた2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たし、RA1~RA5又はRA6~RA10中、及び、YA1又はYA2中の炭素数の総和は3以上である。
【0049】
上記式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物における、RA1~RA5及びY1A、又は、RA6~RA10及びYA2の総炭素数は、25以下であることが好ましく、4~20であることがより好ましい。上述したアルキル基の構造は、直鎖であってもよく、分枝であってもよい。
式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物におけるXA1及びXA2は、スルホン酸塩基、又は、カルボン酸塩基であることが好ましい。また、XA1及びXA2における塩構造は、アルカリ金属塩が特に水系溶媒への溶解性が良好であり、好ましい。中でも、ナトリウム塩、又は、カリウム塩が特に好ましい。
また、上記式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物としては、特開2007-206348号公報の段落0019~0037の記載を参酌することができる。
更に、アニオン性界面活性剤としては、特開2006-65321号公報の段落0023~0028に記載された化合物も好適に用いることができる。
【0050】
本開示に係る現像液に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾールなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
【0051】
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例としては、特開2008-203359号公報の段落0256の式(2)で示される化合物、特開2008-276166号公報の段落0028の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009-47927号公報の段落0022~0029に記載の化合物を挙げることができる。
【0052】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、下記式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【0054】
式(1)及び(2)中、R1及びR11はそれぞれ独立に、炭素数8~20のアルキル基又は総炭素数8~20の連結基を有するアルキル基を表す。
R2、R3、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド基を含有する基を表す。
R4及びR14はそれぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
また、R1、R2、R3及びR4のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0055】
上記式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化するが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R1~R4又はR11~R14の炭素数の総和は好ましくは10~40、より好ましくは12~30である。
【0056】
R1又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「-アルキレン基-連結基-アルキル基」で表すことができる。連結基としては、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1~5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3~19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0057】
R2又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1~5であることが好ましく、1~3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0058】
R3又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1~5であることが好ましく、1~3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
R3又はR13で表されるエチレンオキサイドを含有する基としては、-Ra(CH2CH2O)nRbで表される基を挙げることができる。ここで、Raは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rbは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1~10の整数を表す。
【0059】
R4及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1~5であることが好ましく、1~3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでも構わないが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R1又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
式(1)又は式(2)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、式(1)で表される化合物は川研ファインケミカル(株)製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB-R、ビスタMAP、竹本油脂(株)製のタケサーフC-157L等があげられる。式(2)で表される化合物は川研ファインケミカル(株)製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬(株)製のアモーゲンAOL等が挙げられる。
両性イオン系界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンジグリセリン類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等が挙げられる。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系等の界面活性剤も同様に使用することができる。これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。
【0065】
ノニオン性界面活性剤として特に好ましくは、下記式(N1)で示されるノニオン性芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
XN-YN-O-(A1)nB-(A2)mB-H (N1)
式中、XNは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、YNは単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、A1及びA2は互いに異なる基であって、-CH2CH2O-又は-CH2CH(CH3)O-のいずれかを表し、nB及びmBはそれぞれ独立に、0~100の整数を表し、ただし、nBとmBとは同時に0ではなく、また、nB及びmBのいずれかが0である場合には、nB及びmBは1ではない。
式中、XNの芳香族基としてフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1~100の有機基が挙げられる。なお、式中、A及びBがともに存在するとき、ランダムでもブロックの共重合体でもよい。
上記炭素数1~100の有機基の具体例としては、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などが挙げられる。上記アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
また、ノニオン性界面活性剤としては、特開2006-65321号公報の段落0030~0040に記載された化合物も好適に用いることができる。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0067】
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、現像液の全質量に対し、1質量%~25質量%が好ましく、2質量%~20質量%がより好ましく、3質量%~15質量%が更に好ましく、5質量%~10質量%が特に好ましい。上記範囲であると、耐キズ汚れ性により優れ、現像カスの分散性に優れ、また、得られる平版印刷版のインキ着肉性に優れる。
【0068】
〔その他の添加剤〕
本開示に用いられる現像液は、上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0069】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。これらの湿潤剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。上記湿潤剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。
【0070】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4-イソチアゾリン-3-オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-エタノール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-プロパノール等が好ましく使用できる。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対し、0.01質量%~4質量%の範囲が好ましい。また、種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0071】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
これらキレート剤は、現像液中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものであることが好ましい。キレート剤の含有量としては、現像液の全質量に対し、0.001質量%~1.0質量%であることが好ましい。
【0072】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)の5以下等の化合物を使用することができる。シリコーン消泡剤が好ましい。
なお、本開示においては、シリコーン系界面活性剤は、消泡剤と見なすものとする。
消泡剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%~1.0質量%の範囲が好適である。
【0073】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%~0.5質量%の量が好ましい。
【0074】
含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、ガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロロベンゼン等)、極性溶剤等が挙げられる。
【0075】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N-フェニルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0076】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、現像液における溶剤の濃度は、40質量%未満が好ましい。
【0077】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%~0.5質量%の量が好ましい。
【0078】
本開示に用いられる現像液は、必要に応じて、上記各成分を水に溶解又は分散することによって得られる。現像液の固形分濃度は、2質量%~25質量%であることが好ましい。また、現像液としては、濃縮液を作製しておき、使用時に水で希釈して用いることもできる。
また、本開示に用いられる現像液は、水性の現像液であることが好ましい。
【0079】
また、本開示に用いられる現像液は、現像カスの分散性の観点から、アルコール化合物を含有することが好ましい。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ベンジルアルコールが好ましい。
アルコール化合物の含有量としては、現像カスの分散性の観点から、現像液の全質量に対し、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~2質量%であることがより好ましく、0.2質量%~1質量%であることが特に好ましい。
【0080】
<洗浄液>
本開示に好適に用いられる洗浄液の各成分の詳細を以下に説明する。
【0081】
洗浄液は、好ましくは、水道水、井水、純水、イオン交換水等のような、水単独でもよいし、洗浄水によってローラー上に残るガム液を希釈又は除去するという目的を損なわない範囲で、下記成分を含む水溶液であってもよい。
洗浄液における水の含有量は、特に制限はないが、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0082】
洗浄液は、中性(好ましくはpH5~9、より好ましくはpH6~8)であることが好ましく、中性を維持するためにpH調製剤を含むことが好ましい。
pH調整剤としては、公知の緩衝液に用いられる緩衝化合物を使用することができる。
また、洗浄液は、界面活性剤、親油性物質、防腐剤、防黴剤、消泡剤などを含有してもよい。
中でも、保存安定性の観点から、防腐剤を少なくとも含有することが好ましく、防腐剤を含有する水溶液であることがより好ましい。
【0083】
防腐剤としては、繊維、木材加工、食品、医薬、化粧品、農薬分野等で使用されている公知の物が使用できる。
例えば、第四級アンモニウム塩、一価フェノール誘導体、二価フェノール誘導体、多価フェノール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾロピリミジン誘導体、一価ナフトール、カーボネート類、スルホン誘導体、有機スズ化合物、シクロペンタン誘導体、フェニル誘導体、フェノールエーテル誘導体、フェノールエステル誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、ニトリル誘導体、ナフタリン類、ピロール誘導体、キノリン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、第二級アミン、1,3,5-トリアジン誘導体、チアジアゾール誘導体、アニリド誘導体、ピロール誘導体、ハロゲン誘導体、二価アルコール誘導体、ジチオール類、シアン酸誘導体、チオカルバミド酸誘導体、ジアミン誘導体、イソチアゾール誘導体、一価アルコール、飽和アルデヒド、不飽和モノカルボン酸、飽和エーテル、不飽和エーテル、
【0084】
ラクトン類、アミノ酸誘導体、ヒダントイン、シアヌール酸誘導体、グアニジン誘導体、ピリジン誘導体、飽和モノカルボン酸、ベンゼンカルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、ビフェニル、ヒドロキサム酸誘導体、芳香族アルコール、ハロゲノフェノール誘導体、ベンゼンカルボン酸誘導体、メルカプトカルボン酸誘導体、第四級アンモニウム塩誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒノキチオール、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、イソキノリン誘導体、アルシン誘導体、チオカルバミン酸誘導体、リン酸エステル、ハロゲノベンゼン誘導体、キノン誘導体、ベンゼンスルホン酸誘導体、モノアミン誘導体、有機リン酸エステル、ピペラジン誘導体、フェナジン誘導体、ピリミジン誘導体、チオファネート誘導体、イミダゾリン誘導体、イソオキサゾール誘導体、アンモニウム塩誘導体等の、公知の防腐剤が使用できる。
【0085】
特に好ましい防腐剤としては、ピリジンチオール-1-オキシドの塩、サリチル酸及びその塩、1,3,5-トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,3,5-トリスヒドロキシメチルヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオールが挙げられる。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、添加量としては、50ppm~5,000ppmであることが好ましく、100ppm~3,000ppmであることがより好ましい。
また、種々のカビ、細菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
また、防腐剤の市販品としては、富士フイルム(株)製BK-3が好適に用いられる。
【0086】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び、ノニオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、α-オレフィンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム類、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、α-オレフィンスルホン酸塩類、及び、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が特に好ましく用いられる。
【0087】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等が用いられる。
【0088】
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン類、アルキルイミダゾリン類、アルキルアミノカルボン酸類等が用いられる。
【0089】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、分子量200~5,000のポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン又はソルビトールのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンの付加物、アセチレングリコール系等が挙げられる。
また、フッ素系、シリコーン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0090】
界面活性剤は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
界面活性剤の含有量は、特に制限はないが、洗浄液の全質量に対し、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.05質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0091】
また、洗浄液は、消泡剤を含有してもよい。
消泡剤としては、公知の消泡剤を用いることができ、シリコーン消泡剤が好ましい。また、シリコーン消泡剤としては、乳化分散型及び可溶化型等がいずれも使用できる。
消泡剤は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
消泡剤の含有量は、特に制限はないが、洗浄液の全質量に対し、0.001質量%~1.0質量%であることが好ましい。
【0092】
洗浄水中にカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属や金属イオンが含まれる場合、ガム処理部6内での析出物の発生を防止するため、例えば、特開昭58-75152号公報に記載のNaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭59-190952号公報に記載のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)等のキレート剤を含んでもよい。
【0093】
また、洗浄水によってローラー上に残るガム液を希釈又は除去するという目的を損なわない範囲で、洗浄水がガム成分を含んでいてもよく、ガム処理部で用いられるガム液の希釈液でも良い。洗浄水中のガム成分の濃度は、ガム処理部で使用されるガム液のガム成分の濃度に対して、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0094】
<ガム液>
本開示に好適に用いられるガム液の各成分の詳細を以下に説明する。
【0095】
ガム液は、水を含有することが好ましい。
ガム液における水の含有量は、特に制限はないが、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0096】
ガム液は、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
水溶性高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、マルトデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉酵素分解デキストリン、カルボキジメチル化澱粉、リン酸化澱粉、サイクロデキストリン)、プルラン及びプルラン誘導体等が挙げられる。
【0097】
また、水溶性高分子化合物として使用することができるその他の澱粉誘導体としては、ブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉及び無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体等が挙げられる。
【0098】
水溶性高分子化合物として使用することができる天然高分子化合物としては、水溶性大豆多糖類、澱粉、ゼラチン、大豆から抽出されるヘミセルロース、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の澱粉類、カラジーナン、ラミナラン、海ソウマンナン、ふのり、アイリッシュモス、寒天及びアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、トロロアオイ、マンナン、クインスシード、ペクチン、トラガカントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、キャロブガム、ベンゾインガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、レバン等のホモ多糖、並びに、サクシノグルカン及びサンタンガム等のヘトロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等の蛋白質が好ましい。
【0099】
中でも、水溶性高分子化合物としては、アラビアガム、デキストリンやヒドロキシプロピル澱粉といった澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類などが好ましく使用することができる。
水溶性高分子化合物の含有量は、ガム液の全質量に対し、0.1質量%~25.0質量%であることが好ましく、0.3質量%~20.0質量%であることがより好ましい。
【0100】
ガム液のpHは、酸性であることが好ましく、pH2~6であることがより好ましい。 ガム液を上記pHにするため、ガム液中に、鉱酸、有機酸、又は、それらの塩等のpH調整剤を添加し調節することが好ましい。
pH調整剤としては、例えば、鉱酸として、硝酸、硫酸、燐酸、メタ燐酸、ポリ燐酸などが挙げられる。有機酸としては、酢酸、蓚酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、乳酸、レプリン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。好ましく使用できる塩として、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸水素二アンモニウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸二水素アンモニウム、ピロ燐酸カリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の含有量は、ガム液の全質量に対し、0.01質量%~3.0質量%であることが好ましい。
【0101】
ガム液のpH調整のため、アルカリ剤をガム液に添加してもよい。
ガム液に用いられるアルカリ剤としては、従来公知のアルカリ剤を適宜選択して用いることができる。アルカリ剤としては、例えば、特開平11-216962号公報の段落0083~0084に記載されている化合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
ガム液は、界面活性剤を更に含有することが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム類、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類又はアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0103】
また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル等が好ましく用いられる。
【0104】
また、界面活性剤としては、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコーン系等のアニオン又はノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0105】
これら界面活性剤は、2種以上併用することもできる。例えば、互いに異なる2種以上のアニオン界面活性剤の併用やアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の併用が好ましい。これらの化合物は環境面への影響を考慮して適宜選択して使用することが好ましい。 界面活性剤の使用量は、特に制限ないが、ガム液の全質量に対し、0.01質量%~20質量%であることが好ましい。
【0106】
また、ガム液は、平版印刷版における画像部の感脂性を保護する観点から、沸点130℃以上の有機溶剤を含有することが好ましい。この種の有機溶剤は一方で非画像部親水性層上に残留して付着している微量の画像記録層を除去し、非画像部の親水性を高める効果を発揮する働きをする。
【0107】
沸点130℃以上の有機溶剤の具体例としては、アルコール類として、n-ヘキサノール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
ケトン類としては、メチル-n-アミルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル類としては、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸ベンジル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸-n-アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル及び安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸-ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸ジエステル類、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えばエポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセライド類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェートなどの燐酸エステル類等が挙げられる。
アミド類としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0108】
多価アルコール類及びその誘導体としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、グリセリンモノアセテート、グリセリントリアセテート類を挙げることができる。
炭化水素系有機溶剤としては、沸点160℃以上の石油留分の芳香族、脂肪族化合物、スクワランなどが挙げられる。
【0109】
上記沸点130℃以上の有機溶剤を選択するときの条件としては、その環境安全性、特に臭気が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。
沸点130℃以上の有機溶剤の含有量は、ガム液の全質量に対し、0.1質量%~5.0質量%であることが好ましく、0.3質量%~3.0質量%であることがより好ましい。
ガム液において、これらの有機溶剤は、界面活性剤によって可溶化させて溶液タイプとしてもよいし、あるいは油相として乳化分散させて乳化タイプとしてもよい。
【0110】
また、上記ガム処理部、及び、上記第2ガム処理部等において用いられるガム液は、現像液を添加して使用してもよい。ガム液中での感光層成分の析出を低減できる。
ガム液への現像液を添加する方法として、現像浴から版上に付着した現像液の上記ガム処理部への持ち出しや、上記ガム処理部への現像液の手動による投入、又は、自動補充装置による補充が挙げられる。
現像浴からガム処理部への現像液の持ち出し量は、1mL/m2~5mL/m2が好ましい。
ガム処理部への現像液の補充は、上記ガム処理部への直接投入でもよいし、第2ガム処理部がある場合は、第2ガム処理部に投入後、第2ガム浴から上記ガム処理部への流入によって補充してもよい。補充量は、0.1mL/m2~10mL/m2の範囲が好ましい。
添加する現像液の成分は、上記現像部において使用する現像液と同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
上記ガム液に添加する現像液の量は、特に制限はないが、印刷汚れ性の観点から、添加前のガム液の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましい。特に第2ガム処理部への現像液の添加量が上記範囲であると、ガム液が濃度が維持され、非画像部の保護性により優れるため、キズ汚れがより抑制され、また、非画像部の保水性により優れるため、放置汚れもより抑制される。
また、廃液量をより少なくする観点から、現像液として、pHのより高い液、例えば、現像補充液や濃縮液を用いて、少量添加してもよい。
また、上記ガム液に現像液を添加した場合のガム液のpHは、特に制限はないが、添加した現像液のpHよりも低いことが好ましい。更に、上記ガム液に現像液を添加した場合のガム液のpHは、着肉性、印刷汚れ性、及び、細線再現性の観点から、2~11であることが好ましく、2~9であることがより好ましい。ガム液のpHが上記範囲であると、現像性により優れ、5%以下の網点再現性や細線再現性により優れる。
【0111】
(平版印刷版の作製方法)
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る現像処理装置を用いて平版印刷版を作製する方法であれば、特に制限はないが、平版印刷版原版を上記現像部において現像液で現像し、続いて上記ガム処理部においてガム液を用いてガム処理を行う方法であることが好ましく、平版印刷版原版を上記現像部においてpHが8.5~14のアルカリ現像液で現像し、続いて上記ガム処理部においてガム液を用いてガム処理を行う方法であることがより好ましく、平版印刷版原版を上記現像部においてpHが8.5~14のアルカリ現像液で現像し、続いて上記ガム処理部においてpHが2~6のガム液を用いてガム処理を行う方法であることが特に好ましい。
本開示に係る平版印刷版の作製方法に用いる本開示に係る現像処理装置、現像液、及び、ガム液、及び、洗浄液等の好ましい態様は、上述した好ましい態様と同様である。
【0112】
上記ガム処理部における上記搬送ローラー上への洗浄液の供給量は、特に制限はないが、得られる平版印刷版の網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制の観点から、洗浄液の供給一回あたりにおいて、上記供給量が50mL/回以上であり、かつ上記ガム処理部におけるガム液の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、上記供給量が50mL/回以上200mL/回以下であり、かつ上記ガム処理部におけるガム液の全質量に対して1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0113】
また、得られる平版印刷版の網点再現性及び網点の耐刷性ムラ抑制の観点から、上記ガム処理部における上記搬送ローラーのニップ部分に残存するガム液の固形分濃度に対して、洗浄液の供給後の上記ガム液の固形分濃度は、50質量%以下であることが好ましい。また、上記洗浄液の供給後の上記ガム液の固形分濃度の下限値は、0質量%である。
なお、上記ガム液の固形分濃度は、上記ガム処理部における上記搬送ローラーのニップ部分(例えば、2つのローラー間)に残存するガム液をスポイト等により採取し、水等の揮発性成分を揮発させ、揮発前後の質量を測定することにより、固形分濃度を算出する。
【0114】
洗浄前のローラー上のガム液の固形分濃度は、次の手順で求めることができる。
ガム処理停止後、1分以内に、ガム処理部内の入口側搬送ローラー対のニップ部の幅方向の中央から、ガム液が形成しているメニスカスから、マイクロピペットを用いてガム液を0.5cc採取する。これを直ちに10cm×10cmのアルミニウム板上にのせ、電子天秤で重量を測定する。予め測定したアルミニウム板の重量を差し引いて、ガム液の重量を算出する。更に、ガム液を載せたアルミニウム板を80℃の乾燥オーブンに入れ、乾燥させた後、電子天秤で重量を測定し、ガム液固形分の重量、及び、洗浄前のローラー上のガム液の固形分濃度を算出する。
更に、ガム処理停止後、所定の時間経過後に、上述の条件でローラーの洗浄を行う。洗浄後終了後、洗浄前と同様にして、洗浄後のローラー上のガム液の固形分濃度を算出する。
以上から、洗浄水によるローラー上のガム成分の希釈率を算出できる。
【0115】
また、本開示に係る平版印刷版の作製方法における本開示に係る現像処理装置、現像液、ガム液、及び、洗浄液以外の態様については、公知の平版印刷版の作製方法を参照することができる。
【0116】
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。
平版印刷版原版の画像露光は、通常の平版印刷版原版の画像露光操作に準じて行うことができる。
画像露光は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で行われる。光源の波長は700nm~1,400nmが好ましく用いられる。700nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20μ秒以内であるのが好ましく、照射エネルギー量は10mJ/cm2~300mJ/cm2であることが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。
【0117】
本開示に係る平版印刷版の作製方法により得られた平版印刷版は、平版印刷版に湿し水及び印刷インキを供給する記録媒体への印刷に好適に用いられ、印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制される。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられ、UVインキがより好ましく挙げられる。
また、湿し水としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成単位の比率はモル百分率である。
【0119】
(実施例1)
図1に示す現像処理装置を使用した。
各ガム液供給スプレーからは、使用時において吐出量200mL/minでガム液がスプレーされ、手段Aから供給される洗浄液の量は、洗浄1回あたり、500mLとした。
上記現像処理装置における洗浄タイミングは、待機状態中一定時間毎(24時間に1回)、及び、現像処理装置の運転スイッチOFF時に設定した。
また、各搬送ローラー42、44及び62の大きさは全て、直径60mm、幅1,350mmであった。
【0120】
また、平版印刷版原版、現像液、洗浄液、及び、ガム液は、以下のものを使用した。
平版印刷版原版:富士フイルム製XP-F(ポジ型平版印刷版原版、1,030mm×800mm))
現像液:富士フイルム(株)製XP-Dとイオン交換水とを質量比1:8で混合した液(pH=13)
現像補充液:富士フイルム(株)製XP-DRとイオン交換水とを質量比1:6.5で混合した液(pH=13)
洗浄液:防腐剤(富士フイルム(株)製BK-3)1,000ppm含有水溶液
ガム液:富士フイルム(株)製XP-G(pH=4.5)
【0121】
また、平版印刷版原版は、上記に示すものをCREO社製のLotem 400 Quantumイメージャーにより80mJ/cm2のエネルギーで画像様に露光したものを使用した。
露光画像には、ベタ画像及び富士フイルム(株)製のTAFFETA20(FMスクリーン)の50%網点の平網画像を含むようにした。
【0122】
<網点再現性、及び、網点の耐刷性ムラ評価>
上記現像処理装置を使用し、露光された平版印刷版原版を10枚現像し平版印刷版を作製し、一旦、上記現像処理装置の運転スイッチをOFFにした。12時間後に再度、上記現像処理装置の運転スイッチをONにし、露光された平版印刷版原版を1枚現像し、平版印刷版を作製した。なお、洗浄は、上記現像処理装置の運転スイッチOFF時、及び、ON時に行われた。
最後に作製した平版印刷版を用い、以下の評価を行った。
【0123】
-網点再現性評価-
運転スイッチをOFFにする前に作製した平版印刷版、及び、再度ONにした後に作製した平版印刷版の版上の網点再現性を目視評価した。両者共に50%網点の平網画像にむらは見られなかった。
【0124】
-網点の耐刷性ムラ評価-
網点再現性評価した平版印刷版を、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity-2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues-G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して、印刷を開始し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(連量76.5kg)紙に印刷を行った。
印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。運転スイッチをOFFにする前に作製した平版印刷版、及び、再度ONにした後に作製した平版印刷版の、20,000枚印刷後の印刷物上の平網画像中に、現像処理方向と垂直な方向にむらが発生しないか目視評価したところ、50%網点の平網画像にむらは見られなかった。
【0125】
上記に示すように、実施例1においては、印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制された平版印刷版が得られた。
【0126】
(実施例2)
使用する現像液を、富士フイルム(株)製XP-DRとイオン交換水とを質量比1:6.5で混合した液(pH=13)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
実施例2においても、印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制された平版印刷版が得られた。
【0127】
(比較例1)
図1に示す現像処理装置から、洗浄液の供給手段Aを取り除き、手段Aへの送液を停止した現像処理装置を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷版の作製を行った。
運転スイッチをOFFにする前に作製した平版印刷版、及び、再度ONにした後に作製した平版印刷版の版上の網点再現性を目視評価した。前者は50%網点の平網画像にムラは見られなかったのに対して、後者は版上の50%網点の平網画像中に、現像処理の方向と垂直な方向に、幅3mm~8mm程度の領域に網点の濃い部分ができているのが複数観察された。
また、運転スイッチをOFFにする前に作製した平版印刷版、及び、再度ONにした後に作製した平版印刷版の20,000枚印刷後の印刷物上の平網画像中を目視評価すると、後者は版上の50%網点の平網画像中に、現像処理の方向と垂直な方向に、幅5mm~10mm程度の網点の濃い部分ができているのが複数観察され、版上での目視評価と比べてより顕著となった。
【0128】
このことから、本開示に係る現像処理装置である洗浄液の供給手段Aを設けた現像処理装置によって、印刷時における網点再現性に優れ、網点の耐刷性ムラの発生が抑制された平版印刷版が得られる。
【0129】
2018年3月29日に出願された日本国特許出願第2018-065222号の開示、及び、2019年2月6日に出願された日本国特許出願第2019-019576号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0130】
2:平版印刷版作製用現像処理装置(現像処理装置)、4:現像部、6:ガム処理部、8:第2ガム処理部、10:乾燥部、12:搬送ローラー、14:壁材、16:搬送ローラー、18:現像液、20:現像液排出口、22:現像液排出手段、24:搬送ベルト、26:現像液供給手段、28:搬送ローラー、30:ブラシローラー、32:搬送ローラー、34:搬送ガイド板、36:搬送ガイド板保持部材、38:搬送ローラー、40:カバー、42:搬送ローラー、44:搬送ローラー、46:ガム液供給スプレー、48:洗浄液を滴下する手段、50:洗浄液拡散部材、52:洗浄液供給手段固定部、54:逆流防止部材、56:ガム液、58:ガム液排出口、59:ガム液排出手段、60:ガム処理部底部、62:搬送ローラー、64:ガム液、66:ガム液排出口、68:ガム液供給手段、70:支持ローラー、72:乾燥手段、74:搬送ローラー、76:乾燥手段、78:搬送ローラー、80:平版印刷版排出口、d:ガム処理部6のガム液56の液面と第2ガム処理部8のガム液64の液面との差