(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】永久磁石式回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 16/02 20060101AFI20220204BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220204BHJP
F16H 49/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
H02K16/02
H02K21/14 M
F16H49/00 A
(21)【出願番号】P 2021532967
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048277
【審査請求日】2021-06-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米谷 晴之
(72)【発明者】
【氏名】宮武 亮治
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢治
(72)【発明者】
【氏名】平田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】新口 昇
(72)【発明者】
【氏名】高原 一晶
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛典
(72)【発明者】
【氏名】伊東 拓哉
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137392(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0127869(US,A1)
【文献】国際公開第2015/178111(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/02
H02K 21/14
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に延在する固定子鉄心と、前記固定子鉄心から前記固定子鉄心の中心に向かって突出している複数の固定子ティースと、前記複数の固定子ティースのうち隣り合う固定子ティース同士の間にそれぞれ設けられた複数の固定子スロットと、前記複数の固定子スロットの各々にそれぞれ収納された複数の固定子磁石と、前記複数の固定子ティースの各々に巻き回された固定子コイルとを含む固定子と、
前記固定子から間隔を空けて前記固定子鉄心
の周方向に沿って配置された複数の第1磁極片を含み、かつ前記複数の固定子磁石よりも前記固定子鉄心の内側に配置された第1回転子と、
前記第1回転子から間隔を空けて前記固定子鉄心の
前記周方向に沿って配置されかつ永久磁石を有する複数の第2磁極片を含み、かつ前記複数の第1磁極片よりも前記固定子鉄心の内側に配置された第2回転子とを備え、
前記固定子コイルは、前記固定子ティースに集中巻によって巻き回されており、
前記固定子スロットの数をN
S
とし、前記第1回転子の前記第1磁極片の数をN
L
とし、前記第2回転子の前記第2磁極片の数をN
H
とした場合、N
L
=N
S
+N
H
の関係式が成立し、
前記第2回転子の前記複数の第2磁極片の極数に対する前記複数の固定子スロットの数の割合は、1.25よりも大きく1.5よりも小さいか、1.5よりも大きく3.0よりも小さい、永久磁石式回転電機。
【請求項2】
前記複数の固定子スロットの数と前記複数の第2磁極片の極数との比は、9:4である、請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項3】
前記複数の固定子スロットの数と前記複数の第2磁極片の極数との比は、18:14である、請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項4】
前記固定子コイルは、第1コイル部と、前記第1コイル部に並列に接続された第2コイル部とを含み、
前記複数の固定子ティースは、前記第1コイル部が巻き回された複数の第1ティース部と、前記第2コイル部が巻き回された複数の第2ティース部とを含み、
前記複数の第1ティース部の数は、前記複数の第2ティース部の数と同じであり、
前記複数の第1ティース部の各々と前記複数の第2ティース部の各々とは、交互に配置されている、請求項3に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項5】
前記固定子コイルは、第1コイル部と、前記第1コイル部に並列に接続された第2コイル部とを含み、
前記複数の固定子ティースは、前記第1コイル部が巻き回された複数の第1ティース部と、前記第2コイル部が巻き回された複数の第2ティース部とを含み、
前記複数の第1ティース部の数は、前記複数の第2ティース部の数と同じであり、
前記複数の第1ティース部と前記複数の第2ティース部とは、3つずつ交互に配置されている、請求項3に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項6】
第1電源、第2電源および第3電源をさらに備え、
前記複数の固定子ティースは、前記第1電源に電気的に接続された複数の第1ティース部、前記第2電源に電気的に接続された複数の第2ティース部および前記第3電源に接続された複数の第3ティース部を含み、
前記複数の第1ティース部の各々、前記複数の第2ティース部の各々および前記複数の第3ティース部の各々は、順に循環するように前記固定子鉄心に接続されており、
前記第1電源、前記第2電源および前記第3電源の位相は、20度ずつずれている、請求項3に記載の永久磁石式回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、永久磁石式回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子と回転子とが接触していない状態で回転子の回転速度を変更することができる回転電機がある。例えば、特開2016-135014号公報(特許文献1)には、磁気波動歯車装置である回転電機が開示されている。上記公報に記載された磁気波動歯車装置は、ステータ(固定子)、低速で回転する低速ロータ(第1回転子)および変速比に応じて高速で回転する高速ロータ(第2回転子)を備えている。ステータ、低速ロータおよび高速ロータは、回転軸を中心に順に外周側から配置されている。ステータは、コイルを含んでいる。コイルは、発電した電力を出力するためのコイル、または発生したトルクを制御するためのコイルである。
【0003】
上記公報に記載の磁気波動歯車装置によれば、高速回転子および低速回転子がステータに接触していない状態で高速回転子の速度が変えられるため、機械的な摩耗などに対応するためのメンテナンスを低減することができる。これにより、メンテナンスの負荷が小さくなる。また、磁気波動歯車装置が発電機として用いられた場合には、機械式の変速機が不要であるため、発電システムを小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記公報に記載の永久磁石式回転電機(磁気波動歯車装置)では、固定子コイル(コイル)は、分布巻によって固定子(ステータ)に巻き回されている。分布巻によって巻き回された固定子コイルの容量が大きくなる場合には、固定子コイルの工作性が低下する。このため、上記公報に記載の永久磁石式回転電機の容量が大きくなる場合には、固定子コイルの工作性が低下する。また、集中巻によって巻き回された固定子コイルの容量が大きくなる場合には、固定子コイルの工作性の低下が抑制される。このため、固定子コイルの工作性の低下の抑制のためには、上記公報に記載の永久磁石式回転電機の固定子コイルが集中巻によって巻き回されることが好ましい。しかし、集中巻の回数等によってはトルク脈動が生じることがある。
【0006】
また、集中巻の永久磁石式回転電機では、第2磁極片(永久磁石)から生じた磁束のうち固定子コイルに鎖交した磁束の割合を示す巻線係数という指標が効率あるいは出力密度の評価のために用いられている。巻線係数が大きいほど、第2磁極片から生じた磁束が有効に固定子コイルに鎖交するため、永久磁石式回転電機の効率あるいは出力密度が大きい。しかしながら、上記公報に記載の永久磁石式回転電機のように、変速機構を有する永久磁石式回転電機では、効率あるいは出力密度は、増減速比にも影響を受ける。このため、巻線係数のみが考慮された場合には、効率あるいは出力密度が十分に向上しないことがある。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、トルク脈動が生じることを抑制でき、かつ効率あるいは出力密度を十分に向上できる永久磁石式回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の永久磁石式回転電機は、固定子と、第1回転子と、第2回転子とを備えている。固定子は、固定子鉄心と、複数の固定子ティースと、複数の固定子スロットと、複数の固定子磁石と、固定子コイルとを含んでいる。固定子鉄心は、環状に延在している。固定子ティースは、固定子鉄心から固定子鉄心の中心に向かって突出している。複数の固定子スロットの各々は、複数の固定子ティースのうち隣り合う固定子ティース同士の間にそれぞれ設けられている。複数の固定子磁石の各々は、複数の固定子スロットの各々にそれぞれ収納されている。固定子コイルは、複数の固定子ティースの各々に巻き回されている。第1回転子は、複数の固定子磁石よりも固定子鉄心の内側に配置されている。第1回転子は、複数の第1磁極片を含んでいる。複数の第1磁極片は、固定子から間隔を空けて固定子鉄心の周方向に沿って配置されている。第2回転子は、複数の第1磁極片よりも固定子鉄心の内側に配置されている。第2回転子は、複数の第2磁極片を含んでいる。複数の第2磁極片は、第1回転子から間隔を空けて固定子鉄心の周方向に沿って配置されている。複数の第2磁極片は、永久磁石を有している。固定子コイルは、複数の固定子ティースの各々に集中巻によって巻き回されている。固定子スロットの数をN
S
とし、第1回転子の第1磁極片数をN
L
とし、第2回転子の第2磁極片数をN
H
とした場合、N
L
=N
S
+N
H
の関係式が成立する。第2回転子の複数の第2磁極片の極数に対する複数の固定子スロットの数の割合は、1.25よりも大きく1.5よりも小さいか、1.5よりも大きく3.0よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の永久磁石式回転電機によれば、第2回転子の複数の第2磁極片の極数に対する複数の固定子スロットの数の割合は、1.25よりも大きく1.5よりも小さいか、1.5よりも大きく3.0よりも小さい。このため、トルク脈動が生じることを抑制することができ、かつ効率あるいは出力密度を十分に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る永久磁石式回転電機の構成を概略的に示す模式図である。
【
図2】実施の形態1に係るスロット数/極数と巻線係数との関係を概略的に示すグラフである。
【
図3】実施の形態1に係るスロット数/極数と増減速比との関係を概略的に示すグラフである。
【
図4】実施の形態1に係るスロット数/極数と巻線係数×増減速比との関係を概略的に示すグラフである。
【
図5】実施の形態1に係るスロット数/極数と5次巻線係数との関係を概略的に示すグラフである。
【
図6】実施の形態1に係るスロット数/極数と7次巻線係数との関係を概略的に示すグラフである。
【
図8】実施の形態2に係る永久磁石式回転電機の構成を概略的に示す模式図である。
【
図9】実施の形態2に係る永久磁石式回転電機の固定子の構成を概略的に示す模式図である。
【
図10】実施の形態3に係る永久磁石式回転電機の構成を概略的に示す模式図である。
【
図11】実施の形態3に係る永久磁石式回転電機の固定子の構成を概略的に示す模式図である。
【
図12】実施の形態4に係る永久磁石式回転電機の固定子の構成を概略的に示す模式図である。
【
図13】実施の形態5に係る永久磁石式回転電機の構成を概略的に示す模式図である。
【
図14】実施の形態5に係る永久磁石式回転電機の固定子、第1電源、第2電源および第3電源の構成を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下では、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0012】
実施の形態1.
図1を用いて、実施の形態1に係る永久磁石式回転電機100の構成を説明する。本実施の形態では、永久磁石式回転電機100が発電機として用いられた場合における構成および動作が説明されるが、永久磁石式回転電機100の構成は、永久磁石式回転電機100が電動機として用いられた場合であっても適用可能である。
【0013】
本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100は、変速機構を有する永久磁石式回転電機100である。永久磁石式回転電機100は、三相巻線の永久磁石式回転電機100である。
【0014】
図1に示されるように、永久磁石式回転電機100は、固定子1と、第1回転子2と、第2回転子3とを含んでいる。固定子1、第1回転子2および第2回転子3は、同心円状に配置されている。
【0015】
固定子1は、固定子鉄心11と、複数の固定子ティース12と、複数の固定子スロット13と、複数の固定子磁石15と、固定子コイル14とを含んでいる。なお、
図1等では、固定子コイル14は斜線によって示されている。複数の固定子ティース12の数、複数の固定子スロット13の数および複数の固定子磁石15の数は、同じである。
【0016】
固定子鉄心11は、環状に延在している。第1回転子2の中心および第2回転子3の中心は、固定子鉄心11の中心Cと同じ位置に配置されている。固定子ティース12は、固定子鉄心11から固定子鉄心11の中心Cに向かって突出している。複数の固定子スロット13の各々は、複数の固定子ティース12のうち隣り合う固定子ティース12同士の間にそれぞれ設けられている。固定子コイル14は、複数の固定子ティース12の各々に巻き回されている。固定子コイル14は、複数の固定子ティース12の各々に集中巻によって巻き回されている。すなわち、本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100は、集中巻の永久磁石式回転電機である。
【0017】
複数の固定子磁石15の各々は、複数の固定子スロット13の各々にそれぞれ収納されている。複数の固定子磁石15の各々は、複数の固定子ティース12のうち隣り合う固定子ティース12同士によって挟み込まれている。複数の固定子磁石15の各々は、着磁されている。複数の固定子磁石15の各々の極性の向きは、固定子鉄心11の径方向に沿って同じである。このため、例えば、複数の固定子磁石15の固定子鉄心11の中心C側がN極である場合には、複数の固定子ティース12の固定子鉄心11の中心C側がS極である。
【0018】
1つの固定子磁石15および1つの固定子ティース12は、一対の磁極を構成している。複数の固定子ティース12の数、複数の固定子スロット13の数および複数の固定子磁石15の数が同じであるため、固定子1は、複数の固定子スロット13の数と同じ数の極対数を有している。本実施の形態において、複数の固定子スロット13の数は、N
S
である。
図1に示される永久磁石式回転電機100では、N
S
は、54である。なお、複数の固定子スロット13の数は、スロット数と記載されることもある。
【0019】
第1回転子2は、複数の固定子磁石15よりも固定子鉄心11の内側に配置されている。本実施の形態において、第1回転子2は、低速回転子として構成されている。第1回転子2は、複数の第1磁極片21を含んでいる。複数の第1磁極片21は、固定子1から間隔を空けて固定子鉄心11の周方向に沿って配置されている。複数の第1磁極片21は、環状に配置されている。本実施の形態において、複数の第1磁極片21の数は、N
L
である。
図1に示される永久磁石式回転電機100では、N
L
は、66である。
【0020】
第2回転子3は、複数の第1磁極片21よりも固定子鉄心11の内側に配置されている。本実施の形態において、第2回転子3は、高速回転子として構成されている。第2回転子3は、複数の第2磁極片31と、支持部32とを含んでいる。複数の第2磁極片31は、第1回転子2から間隔を空けて固定子鉄心11の周方向に沿って配置されている。複数の第2磁極片31は、環状に配置されている。複数の第2磁極片31は、支持部32によって支持されている。複数の第2磁極片31は、支持部32の外周に配置されている。
【0021】
複数の第2磁極片31は、永久磁石を有している。本実施の形態において、複数の第2磁極片31の数は、N
Hである。このため、複数の第2磁極片31の極対数は、N
Hである。よって、複数の第2磁極片31の極数は、2N
Hである。
図1に示される永久磁石式回転電機100では、N
Hは、12である。
【0022】
第2回転子3の複数の第2磁極片31の極数に対する複数の固定子スロット13の数の割合(NS/(2NH
))は、1.25よりも大きく1.5よりも小さいか、1.5よりも大きく3.0よりも小さい。なお、本実施の形態において、第2回転子3の複数の第2磁極片31の極数に対する複数の固定子スロット13の数の割合は、NS/(2NH
)と記載される。また、第2回転子3の複数の第2磁極片31の極数に対する複数の固定子スロット13の数の割合は、スロット数/極数と記載されることもある。
【0023】
次に、実施の形態1に係る永久磁石式回転電機100の変速機としての構成を説明する。
【0024】
固定子1、第1回転子2および第2回転子3は、変速機として構成されている。具体的には、複数の固定子スロット13の数N
S
、複数の第1磁極片21の数N
L
および複数の第2磁極片31の数NHが以下の数1の関係を満たしている場合には、固定子1、第1回転子2および第2回転子3は、変速機として機能する。
【0025】
【0026】
本実施の形態において、複数の固定子スロット13の数NS、複数の第1磁極片21の数NLおよび複数の第2磁極片31の数NHは、上記の数1の関係を満たしている。このため、固定子1、第1回転子2および第2回転子3は、変速機として機能する。複数の固定子磁石15の磁力および複数の2回転子の磁力の相互作用によって、複数の第1回転子2に負のトルクが生じる。これに対して、第1回転子2が外部動力によって回転することで、第1回転子2に入力が得られる。
【0027】
第1回転子2に入力が得られた状態において、第2回転子3がフリーラン状態で回転するように固定子1に電流が流される。なお、フリーラン状態とは、回転子が惰性によって回転可能な状態のことである。数1においてNL=NS+NHが満たされる場合には、第2回転子3は、第1回転子2のNL/NH倍の速度で回転する。これにより、永久磁石式回転電機100は、変速機として機能する。また、第2回転子3が第1回転子2のNL/NH倍の回転速度で回転することで、固定子コイル14に誘導起電力が生じる。これにより、固定子コイル14から発電電力が出力される。
【0028】
増減速比は、第2回転子3の回転速度の第1回転子2の回転速度に対する倍率である。増減速比、複数の固定子スロット13の数および複数の第2回転子3の数は、以下の数2の関係を満たす。
【0029】
【0030】
次に、永久磁石式回転電機100の効率あるいは出力密度について説明する。
複数の磁極片から生じる磁束のうち固定子コイル14の発電に寄与する割合は、巻線係数と呼ばれている。複数の第2磁極片31から生じる磁束のうち少なくとも一部の磁束が固定子コイル14に鎖交することで、複数の第2磁極片31から生じた磁束が固定子コイル14の発電に寄与する。このため、本実施の形態における巻線係数は、複数の第2磁極片31から生じた磁束のうち固定子コイル14の発電に寄与する割合である。巻線係数は、以下の数3によって示される。
【0031】
【0032】
nは、空間高調波次数である。また、空間調和次数の基本波は、1である。また、βは、短節度である。短節度は、以下の数4によって示される。
【0033】
【0034】
q’は、毎極毎相のスロット数である。本実施の形態において、相数は、3である。以下の数4を用いて示され、数5の右辺が小数になる場合は右辺の値が整数倍されて得られる最小の整数である。
【0035】
【0036】
従来、集中巻の固定子コイル14を有しておりかつ変速機構を有していない比較例に係る永久磁石式回転電機では、巻線係数によって永久磁石式回転電機の効率あるいは出力が評価されている。このため、巻線係数が大きくなるほど永久磁石式回転電機の効率あるいは出力密度が高くなると評価されている。すなわち、巻線係数のみが永久磁石式回転電機の評価のための指標として用いられている。
【0037】
しかしながら、本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100のように変速機構を有する永久磁石式回転電機100では、第2回転子3の増減速比がさらに考慮される必要がある。巻線係数および増減速比の各々は、固定子ティース12の数および第2磁極片31の極数に基づいて算出される。このため、巻線係数の向上のみが考慮されて固定子ティース12の数および第2磁極片31の極数が定められた場合には、必要な増減速比が得られない可能性がある。
【0038】
したがって、本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100では、巻線係数×増減速比によって永久磁石式回転電機100の効率あるいは出力が評価される。すなわち、巻線係数×増減速比が永久磁石式回転電機100の評価のための指標として用いられる。
【0039】
具体的には、第2回転子3の磁石量(複数の第2磁極片31から生じる磁束の量)が同じであれば、固定子コイル14に生じる誘起電圧は巻線係数×増減速比に比例する。このため、巻線係数×増減速比が大きくなることによって永久磁石式回転電機100の効率あるいは出力密度が向上する。
【0040】
続いて、
図2~
図6を用いて、巻線係数、増減速比、巻線係数×増減速比とN
S/
(2N
H
)との関係について詳細に説明する。
【0041】
図2は、N
S/
(2N
H
)と巻線係数との関係を示すグラフである。
図2に示されるように、N
S/
(2N
H
)が低下するにつれて、巻線係数が増加する。このため、巻線係数の向上のみが考慮される場合には、N
S/
(2N
H
)が小さいことが望ましい。
図3は、N
S/
(2N
H
)と増減速比との関係を示すグラフである。
図3に示されるように、N
S/
(2N
H
)が増加するにつれて、増減速比が増加する。
【0042】
図4は、N
S/
(2N
H
)と巻線係数×増減速比との関係を示すグラフである。本実施の形態に係るN
S
/
(2N
H
)の範囲は、一点鎖線によって囲まれた範囲である。なお、N
S/
(2N
H
)=1.5の点は、本実施の形態に係るN
S/
(2N
H
)の範囲に含まれない。
【0043】
図4に示されるように、N
S/
(2N
H
)が1.25よりも大きく1.5よりも小さい範囲においては、N
S/
(2N
H
)が増加するにつれて、巻線係数×増減速比が増加する傾向がある。N
S/
(2N
H
)が1.2である場合には、巻線係数×増減速比は、増加傾向から突出して大きい。
図4では、点P(1.2)がN
S/
(2N
H
)が1.2である場合に対応する。表1に示されるように、具体的には、N
S/
(2N
H
)が1.2である場合における巻線係数×増減速比は、例えば、3.17である。
【0044】
【0045】
しかしながら、NS/(2NH
)が1.2である場合における増減速比は、十分に大きくない。また、NS/(2NH
)が1.239である場合における巻線係数×増減速比は、例えば、3.17である。このため、NS/(2NH
)が1.239である場合における巻線係数×増減速比は、NS/(2NH
)が1.2である場合における巻線係数×増減速比と略同じである。また、表2に示されるように、NS/(2NH
)が1.260である場合における巻線係数×増減速比は、例えば、3.19である。
【0046】
【0047】
このため、NS/(2NH
)が1.260である場合における巻線係数×増減速比は、NS/(2NH
)が1.2である場合における巻線係数×増減速比よりも大きい。よって、NS/(2NH
)が1.25である場合における巻線係数×増減速比は、NS/(2NH
)が1.2である場合における巻線係数×増減速比よりも大きい。また、NS/(2NH
)が1.25である場合における増減速比は、NS/(2NH
)が1.2である場合における増減速比よりも大きい。このため、増減速比が十分に大きい。よって、NS/(2NH
)が1.25よりも大きいことが好ましい。
【0048】
N
S/
(2N
H
)が1.5の場合には、巻線係数×増減速比は突出して大きい。
図4では、点P(1.5)がN
S/
(2N
H
)が1.5である場合に対応する。
【0049】
表3に示されるように、具体的には、NS/(2NH
)が1.5である場合における巻線係数×増減速比は、例えば、3.46である。
【0050】
【0051】
しかしながら、
図5および
図6に示されるように、N
S/
(2N
H
)が1.5である場合には、5次巻線係数(空間5次高調波)および7次巻線係数(空間7次高調波)が突出して大きい。このため、トルクの変動幅(トルクリップル)および高調波磁束による損失等の空間高調波によって永久磁石式回転電機100の性能が悪化する可能性がある。例えば、トルクの変動幅が大きい場合には、永久磁石式回転電機100が脈動する。トルクの変動による永久磁石式回転電機100の脈動は、トルク脈動と呼ばれる。したがって、N
S/
(2N
H
)が1.5ではないことが好ましい。
【0052】
図4に示されるように、N
S/
(2N
H
)が1.5よりも大きく3.0よりも小さい場合における巻線係数×増減速比は、N
S/
(2N
H
)が1.25よりも大きく1.5よりも小さい場合における巻線係数×増減速比よりも大きい。このため、N
S/
(2N
H
)が1.5よりも大きく3.0よりも小さいことは、N
S/
(2N
H
)が1.25よりも大きく1.5よりも小さい場合よりもさらに好ましい。
【0053】
NS/(2NH
)が3.0の場合には、複数の固定子スロット13の数が分布巻の永久磁石式回転電機100における固定子スロット13の数と同じである。このため、NS/(2NH
)が3の場合には、複数の固定子スロット13が多いことによって固定子コイル14の工作性が悪化するという分布巻における問題点がある。また、NS/(2NH
)が3よりも大きい場合には、NS/(2NH
)が3である場合と同様に固定子コイル14の工作性が悪化する。したがって、NS/(2NH
)が3.0以上であることは好ましくない。
【0054】
次に、
図1、
図4および
図7を用いて、本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100について詳細に説明する。
【0055】
図1および
図7に示されるように、本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100では、複数の固定子スロット13の数と複数の第2磁極片31の極数との比は、9:4である。本実施の形態に係る永久磁石式回転電機100では、N
S/
(2N
H
)は、2.25である。表3に示されるように、N
S/
(2N
H
)が2.25である場合、巻線係数×増減速比は3.39である。また、
図4では、点P(2.25)がN
S/
(2N
H
)が2.25である場合に対応する。
【0056】
図7は、実施の形態1に係る永久磁石式回転電機100の一部を示す模式図である。
図1に示される永久磁石式回転電機100の全体は、
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部を複数有している。具体的には、
図1に示される永久磁石式回転電機100の全体は、
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部を6つ有している。
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部は、周期的に配置されている。
【0057】
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部が含んでいる固定子スロット13の数は、例えば、9である。また、
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部が含んでいる第2磁極片31の数は2であるため、
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部の極対数は、4である。また、
図7に示される永久磁石式回転電機100の一部が含んでいる複数の第1磁極片21の数は、11である。
【0058】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
実施の形態1に係る永久磁石式回転電機100によれば、
図1に示されるように、第2回転子3の複数の第2磁極片31の極数に対する複数の固定子スロット13の数の割合(N
S/
(2N
H
))は、1.25よりも大きく1.5よりも小さいか、1.5よりも大きく3.0よりも小さい。このため、
図4に示されるように、巻線係数×増減速比を大きくすることができる。したがって、永久磁石式回転電機100の効率あるいは出力密度が十分に向上する。また、N
S/
(2N
H
)は、1.5ではない。このため、5次巻線係数および7次巻線係数が突出して大きくなることを抑制することができる。よって、トルクの変動幅(トルクリップル)および高調波磁束による損失等によるトルク脈動が生じることを抑制することができる。したがって、永久磁石式回転電機100の性能が悪化することを抑制することができる。
【0059】
図1および
図7に示されるように、複数の固定子スロット13の数と複数の第2磁極片31の極数との比は、9:4である。複数の固定子スロット13の数と複数の第2磁極片31の極数との比が9:4である場合、N
S/
(2N
H
)は2.25である。
図4に示されるように、N
S/
(2N
H
)が1.25よりも大きく1.5よりも小さい範囲および1.5よりも大きく3.0よりも小さい範囲において、N
S/
(2N
H
)が2.25の場合における巻線係数×増減速比は最も大きい。このため、永久磁石式回転電機100の効率または出力密度が十分に向上する。
【0060】
実施の形態2.
次に、
図4および
図8を用いて、実施の形態2に係る永久磁石式回転電機100の構成を説明する。実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0061】
図8に示されるように、実施の形態2に係る永久磁石式回転電機100では、複数の固定子スロット13の数と複数の第2磁極片31の極数との比は、18:14である。表2に示されるように、本実施の形態に係るN
S/
(2N
H
)は、1.286である。なお、
図4では、点P(1.286)が複数の固定子スロット13の数と複数の第2磁極片31の極数との比が18:14である場合に対応する。
図8は、実施の形態2に係る永久磁石式回転電機100の一部を示す模式図である。永久磁石式回転電機100の全体は、
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部を複数有している。
【0062】
例えば、
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部が含んでいる固定子スロット13の数は、18である。また、
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部が含んでいる第2磁極片31の数は7であるため、
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部の極対数は、14である。また、
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部が含んでいる第1磁極片21の数は、25である。
【0063】
本実施の形態において、固定子コイル14は、複数のコイル部C0を含んでいる。複数のコイル部C0は、互いに並列に接続されている。1つのコイル部C0は、18の固定子ティース12の各々に集中巻によって巻き回されている。このため、18の固定子ティース12ごとに並列回路が構成される。よって、誘起電圧は、18の固定子ティース12ごとに等しい。
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部は、複数のコイル部C0のうち1つのコイル部C0を含んでいる。なお、
図8に示される永久磁石式回転電機100の一部では、複数のコイル部C0のうち1つのコイル部C0が図示されている。
【0064】
次に、NS/(2NH
)が1.25よりも大きく1.5よりも小さい範囲における、具体的な固定子スロット13および第2回転子3の第2磁極片31の極数を検討する。永久磁石式回転電機100は、三相巻線の永久磁石式回転電機100である。このため、複数の固定子スロット13の数は3の倍数である。また、1つの第2磁極片31が2つの極を含んでいるため、第2回転子3の複数の第2磁極片31の極数は、2の倍数(偶数)である。このため、NS/(2NH
)が1.25よりも大きく1.5よりも小さい範囲において、NS/(2NH
)が1.25以上となる場合には、具体的な固定子スロット13の数は大きい。
【0065】
例えば、NS/(2NH
)が1.45となるための最小の固定子スロット13の数は87であり、第2磁極片31の極数は60である(第2磁極片31の数が30である)。この場合、複数のコイル部C0の各々は、87スロットごとに周期的に配置される。
【0066】
1つのコイル部C0が1つの固定子ティース12に巻き回される回数は整数である必要があるため、複数の固定子スロット13の数が大きいほど、コイル部C0の巻線の設計自由度が小さい。また、複数のコイル部C0の各々による複数の並列回路の数が大きい場合には複数のコイル部C0の各々の巻数が小さくなる。
【0067】
また、複数の並列回路同士の誘起電圧が異なる場合には複数の並列回路同士に循環電流が生じるため永久磁石式回転電機100の効率が悪化する。このため、複数のコイル部C0の数を単純に増やすことで複数の並列回路の数を多くすることはできない。よって、複数の並列回路の数を増加させることで複数のコイル部C0の巻線の設計自由度の低下を抑制することは困難である。
【0068】
以上より、NS/(2NH
)が1.45である永久磁石式回転電機100では、例えば、固定子スロット13と第2磁極片31の極数との比が12:10である(NS/(2NH
)が1.20である)場合と比べて、巻線の設計自由度が低い。
【0069】
表4は、本実施の形態に係る複数の固定子ティース12に巻き回されたコイル部C0の相および位相を示す。
【0070】
【0071】
図9および表4に示されるように、本実施の形態において、複数の固定子ティース12は、第1の固定子ティースT101~第18の固定子ティースT118を含んでいる。第1の固定子ティースT101~第18の固定子ティースT118の各々の位相は、それぞれ140度ずつずれている。本実施の形態において、複数のコイル部C0には、U相、V相およびW相からなる三相電流が流れる。また、複数のコイル部C0は、順方向または逆方向に沿って固定子ティース12に巻き回される。三相電流によって生じる回転磁界の方向は、白抜き矢印によって図示されている。
【0072】
表4に示されるように、隣り合う固定子ティース12同士における位相は、140度ずれている。このため、18の固定子ティース12によって、位相が計2520度ずれる。2520は、360の倍数である。よって、電流の位相が18の固定子ティース12ごとに等しくなるため、誘起電圧が18の固定子ティース12ごとに等しくなる。したがって、複数の並列回路同士に循環電流が生じることを抑制することができる。
【0073】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
実施の形態2に係る永久磁石式回転電機100によれば、
図8に示されるように、複数の固定子スロット13の数と複数の第2磁極片31の極数との比は、18:14である。このため、複数の固定子スロット13の数が小さいため、巻線の設計自由度が小さくなることを抑制することができる。また、18の固定子ティース12ごとに並列回路が構成される。よって、循環電流が生じることを抑制することができる。
【0074】
実施の形態3.
次に、
図10および
図11を用いて、実施の形態3に係る永久磁石式回転電機100の構成を説明する。実施の形態3は、特に説明しない限り、上記の実施の形態2と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態2と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0075】
図10に示されるように、実施の形態3に係る永久磁石式回転電機100では、固定子コイル14は、第1コイル部C1と、第2コイル部C2とを含んでいる。本実施の形態において、複数のコイル部C0の各々は、第1コイル部C1と、第2コイル部C2とを含んでいる。第2コイル部C2は、第1コイル部C1に並列に接続されている。
【0076】
複数の固定子ティース12は、複数の第1ティース部T1と、複数の第2ティース部T2とを含んでいる。複数の第1ティース部T1の各々には、第1コイル部C1が巻き回されている。複数の第2ティース部T2の各々には、第2コイル部C2が巻き回されている。複数の第1ティース部T1の数は、複数の第2ティース部T2の数と同じである。複数の第1ティース部T1の各々と複数の第2ティース部T2の各々とは、交互に配置されている。
【0077】
図11に示されるように、複数の第1ティース部T1は、第1の第1ティース部T101~第9の第1ティース部T109を含んでいる。複数の第2ティース部T2は、第1の第2ティース部T201~第9の第2ティース部T209を含んでいる。第1ティース部T1の数および第2ティース部T2の数は、9の倍数である。
【0078】
本実施の形態においては、第1コイル部C1および第2コイル部C2の各々が並列回路を構成している。このため、1つのコイル部C0が2つの並列回路を含んでいる。
【0079】
1群における各相の電流の位相は、2群における各相の電流の位相と等しい。なお、1群は、複数の第1ティース部T1および第1コイル部C1である。2群は、複数の第2ティース部T2および第2コイル部C2である。3群は、複数の第3ティース部T3および第3コイル部C3である。表5に示されるように、例えば、1群におけるU相の電流の位相は、0度、200度、160度である。
【0080】
【0081】
また、2群におけるU相の電流の位相は、340度、180度、20度である。このため、合計の誘起電圧は等しい。よって、1群の並列回路と2群の並列回路との間で位相差が生じることが抑制される。したがって、循環電流が生じることを抑制することができる。
【0082】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
実施の形態3に係る永久磁石式回転電機100によれば、
図10に示されるように、複数の第1ティース部T1の各々と複数の第2ティース部T2の各々とは、交互に配置されている。このため、表5に示されるように、複数の第1ティース部T1に巻き回された第1コイル部C1の誘起電圧と複数の第2ティース部T2に巻き回された第2コイル部C2の誘起電圧は等しい。よって、循環電流が生じることを抑制することができる。
【0083】
図10に示されるように、固定子コイル14は、第1コイル部C1と、第2コイル部C2とを含んでいる。第1コイル部C1および第2コイル部C2の各々は、並列回路を構成している。このため、固定子コイル14が1つの並列回路を構成している場合よりも、永久磁石式回転電機100に含まれる並列回路の数を増やすことができる。
【0084】
実施の形態4.
次に、
図12を用いて、実施の形態4に係る永久磁石式回転電機100の構成を説明する。実施の形態4は、特に説明しない限り、上記の実施の形態3と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態3と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0085】
図12に示されるように、実施の形態4に係る永久磁石式回転電機100では、複数の第1ティース部T1と複数の第2ティース部T2とは、3つずつ交互に配置されている。
【0086】
1群における各相の電流の位相は、2群における各相の電流の位相と等しい。表6に示されるように、例えば、1群におけるU相の電流の位相は、0度、340度、20度である。
【0087】
【0088】
また、2群におけるU相の電流の位相は、200度、180度、160度である。このため、1群におけるU相の合計の誘起電圧と2群におけるU相の合計の誘起電圧とは等しい。よって、1群の並列回路と2群の並列回路との間で位相差が生じることが抑制される。したがって、循環電流が生じることを抑制することができる。
【0089】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
実施の形態4に係る永久磁石式回転電機100によれば、
図12に示されるように、複数の第1ティース部T1と複数の第2ティース部T2とは、3つずつ交互に配置されている。このため、表6に示されるように、複数の第1ティース部T1に巻き回された第1コイル部C1の誘起電圧と複数の第2ティース部T2に巻き回された第2コイル部C2の誘起電圧は等しい。よって、循環電流が生じることを抑制することができる。
【0090】
図12に示されるように、固定子コイル14は、第1コイル部C1と、第2コイル部C2とを含んでいる。第1コイル部C1および第2コイル部C2の各々は、並列回路を構成している。このため、固定子コイル14が1つの並列回路を構成している場合よりも、永久磁石式回転電機100に含まれる並列回路の数を増やすことができる。
【0091】
実施の形態5.
次に、
図13および
図14を用いて、実施の形態5に係る永久磁石式回転電機100の構成を説明する。実施の形態5は、特に説明しない限り、上記の実施の形態3と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態3と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0092】
実施の形態3および4によれば、18の固定子コイル14ごとに2つの並列回路が構成される。しかしながら、永久磁石式回転電機100が電源を1つしか含んでいない場合には、18の固定子コイル14ごとに3つの並列回路を構成することはできない。
【0093】
図13に示されるように、実施の形態5に係る永久磁石式回転電機100では、永久磁石式回転電機100は、第1電源P1、第2電源P2および第3電源P3をさらに含んでいる。第1電源P1、第2電源P2および第3電源P3の各々は、独立している。第1電源P1、第2電源P2および第3電源P3の位相は、20度ずつずれている。
【0094】
複数の固定子ティース12は、複数の第1ティース部T1と、複数の第2ティース部T2と、複数の第3ティース部T3とを含んでいる。複数の第1ティース部T1は、第1電源P1に電気的に接続されている。複数の第2ティース部T2は、第2電源P2に電気的に接続されている。複数の第3ティース部T3は、第3電源P3に電気的に接続されている。複数の第1ティース部T1の各々、複数の第2ティース部T2の各々および複数の第3ティース部T3の各々は、順に循環するように固定子鉄心11に接続されている。
【0095】
固定子コイル14は、第1コイル部C1と、第2コイル部C2と、第3コイル部C3とを含んでいる。第3コイル部C3は、複数の第3ティース部T3の各々に集中巻によって巻き回されている。
【0096】
図14に示されるように、複数の第1ティース部T1は、第1の第1ティース部T101~第6の第1ティース部T106を含んでいる。複数の第2ティース部T2は、第1の第2ティース部T201~第6の第2ティース部T206を含んでいる。複数の第3ティース部T3は、第1の第3ティース部T301~第6の第3ティース部T306を含んでいる。
【0097】
1群における各相の電流の位相は、2群における各相の電流の位相と等しい。表7に示されるように、例えば、1群におけるU相の電流の位相は、0度、340度、20度である。
【0098】
【0099】
また、2群におけるU相の電流の位相は、200度、180度、160度である。このため、1群におけるU相の合計の誘起電圧と2群におけるU相の合計の誘起電圧とは等しい。よって、1群の並列回路と2群の並列回路との間で位相差が生じることが抑制される。したがって、循環電流が生じることを抑制することができる。
【0100】
1群における各相の電流の位相は、2群における各相の電流および3群における電流の位相に対してずれている。例えば、1群におけるU相の電流の位相は、0度、180度である。また、2群におけるU相の電流は、200度、20度である。また、3群におけるU相の電流は、340度、160度である。このため、2群におけるU相の電流の位相は、1群におけるU相の電流の位相よりも20度ずれている。また、3群におけるU相の電流の位相は、2群におけるU相の電流の位相よりも20度ずれている。すなわち、2群は、1群および3群に対して20度ずつずれている。
【0101】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
実施の形態5に係る永久磁石式回転電機100によれば、第1電源P1、第2電源P2および第3電源P3の位相は、20度ずつずれている。このため、1群、2群および3群の位相の30度ずつのずれは、第1電源P1、第2電源P2および第3電源P3のずれによって打ち消されることで解消される。これにより、1群、2群および3群の各々の位相は、等しくなる。よって、18の固定子ティース12ごとに3の並列回路を構成することができる。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1 固定子、2 第1回転子、3 第2回転子、11 固定子鉄心、12 固定子ティース、13 固定子スロット、14 固定子コイル、15 固定子磁石、21 第1磁極片、31 第2磁極片、100 永久磁石式回転電機、C1 第1コイル部、C2 第2コイル部、P1 第1電源、P2 第2電源、P3 第3電源、T1 第1ティース部、T2 第2ティース部。
【要約】
永久磁石式回転電機(100)は、固定子(1)と、第1回転子(2)と、第2回転子(3)とを備えている。固定子(1)は、固定子鉄心(11)と、複数の固定子ティース(12)と、複数の固定子スロット(13)と、複数の固定子磁石(15)と、固定子コイル(14)とを含んでいる。第1回転子(2)は、複数の固定子磁石(15)よりも固定子鉄心(11)の内側に配置されている。第2回転子(3)は、複数の第1磁極片(21)よりも固定子鉄心(11)の内側に配置されている。第2回転子(3)は、複数の第2磁極片(31)を含んでいる。第2回転子(3)の複数の第2磁極片(31)の極数に対する複数の固定子スロット(13)の数の割合は、1.25よりも大きく1.5よりも小さいか、1.5よりも大きく3.0よりも小さい。