(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】表面実装リレー用液晶性樹脂組成物及びそれを用いた表面実装リレー
(51)【国際特許分類】
C08L 77/12 20060101AFI20220204BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220204BHJP
C08K 7/10 20060101ALI20220204BHJP
H01H 45/02 20060101ALI20220204BHJP
C08G 69/44 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
C08L77/12
C08K3/34
C08K7/10
H01H45/02
C08G69/44
(21)【出願番号】P 2021547691
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012893
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2020084717
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】長永 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】松村 卓馬
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/116888(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/203157(WO,A1)
【文献】特開2018-106005(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038421(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/100618(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂と、(B)繊維状ウォラストナイトと、(C)マイカと、を含む表面実装リレー用液晶性樹脂組成物であって、
前記(A)液晶性樹脂は、必須の構成成分として、下記構成単位(I)~(VI)からなり、
全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は50~70モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25~22.25モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は5.75~23.75モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(VI)の含有量は1~7モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)と構成単位(IV)との合計の含有量は1モル%以上5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は100モル%であり、
構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が0.04~0.37である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドであり、
前記(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり、
前記液晶性樹脂組成物全体に対して、
前記(A)液晶性樹脂の含有量は、55~75質量%、
前記(B)繊維状ウォラストナイトの含有量は、2.5~17.5質量%、
前記(C)マイカの含有量は、15~32.5質量%、
前記(B)繊維状ウォラストナイト及び前記(C)マイカの合計の含有量は、25~45質量%
であり、
前記表面実装リレーは、ベースと、前記ベースから突出する端子とを備え、前記端子をプリント基板に半田付けするようにした表面実装リレーである液晶性樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
構成単位(III)と構成単位(IV)との合計のモル数が構成単位(V)と構成単位(VI)との合計のモル数の1~1.1倍であり、又は、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計のモル数が構成単位(III)と構成単位(IV)との合計のモル数の1~1.1倍である請求項1に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物からなる表面実装リレー用部品。
【請求項4】
請求項3に記載の部品を備える表面実装リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装リレー用液晶性樹脂組成物及びそれを用いた表面実装リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
リレーは、エレクトロニクス産業の発展とともに、その生産量も順調に伸びており、通信機器、OA機器、家電機器、自販機等使用される分野も多岐にわたっている。従来、プリント基板に実装して使用するリレーとして、挿入実装型(スルーホールタイプ)のリレーが知られている。挿入実装リレーは、リレー本体より垂直に突き出した端子を備え、まず、プリント基板の孔にこの端子を挿入することでプリント基板の一方の面に載置される。その後、上記プリント基板の他方の面において上記端子を半田付けすることにより、挿入実装リレーは、電気的に導通可能にプリント基板に固定される。
【0003】
近年、プリント基板に実装して使用する新たなリレーとして、表面実装型(サーフェースアマウントタイプ)のリレーが開発されている(例えば、特許文献1)。表面実装リレーでは、半田付け面がリレー本体と平行になるように、リレー本体より垂直に突き出した端子が直角に曲げられている。そのため、表面実装リレーは、プリント基板に孔を設けることなく、プリント基板表面の導体パターン上に設けられた半田パッドに上記端子を載置し、半田リフロー処理を行うことにより、電気的に導通可能にプリント基板に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、表面実装リレーは、半田リフロー処理によりプリント基板に固定されるため、表面実装リレーを構成する成形体、例えば、ベース、ケース、ボビン等は、半田リフロー処理に耐えられるよう、優れた耐熱性が求められる。また、表面実装リレーは、半田リフロー処理後でも気密性及び形状を保持できることも求められる。
【0006】
ところで、耐熱性、寸法精度、流動性等に優れる点で、液晶性樹脂組成物が注目されている。しかし、液晶性樹脂組成物には、当該組成物の成形体表面からフィラーが突出し、更に脱離して、製品の導通不良等の機能障害を発生させる問題が生じ得る。また、液晶性樹脂組成物を成形して、表面実装リレーを構成する成形体を得る場合、該液晶性樹脂組成物には、良好な流動性が求められる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性及び気密性に優れ、変形とフィラーの脱離とが抑制された成形体を与える、流動性が良好な表面実装リレー用液晶性樹脂組成物、前記組成物からなる表面実装リレー用部品、及び前記部品を備える表面実装リレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定の含有量で、特定の構成単位を所定量含む液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカと、を組み合わせ、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比を所定の範囲とすることで上記の課題を解決できることを見出した。具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) (A)液晶性樹脂と、(B)繊維状ウォラストナイトと、(C)マイカと、を含む表面実装リレー用液晶性樹脂組成物であって、
前記(A)液晶性樹脂は、必須の構成成分として、下記構成単位(I)~(VI)からなり、
全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は50~70モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25~22.25モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は0.5モル%以上4.5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は5.75~23.75モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(VI)の含有量は1~7モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)と構成単位(IV)との合計の含有量は1モル%以上5モル%未満であり、
全構成単位に対して構成単位(I)~(VI)の合計の含有量は100モル%であり、
構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が0.04~0.37である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドであり、
前記(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり、
前記液晶性樹脂組成物全体に対して、
前記(A)液晶性樹脂の含有量は、55~75質量%、
前記(B)繊維状ウォラストナイトの含有量は、2.5~17.5質量%、
前記(C)マイカの含有量は、15~32.5質量%、
前記(B)繊維状ウォラストナイト及び前記(C)マイカの合計の含有量は、25~45質量%
であり、
前記表面実装リレーは、ベースと、前記ベースから突出する端子とを備え、前記端子をプリント基板に半田付けするようにした表面実装リレーである液晶性樹脂組成物。
【化1】
【0010】
(2) 構成単位(III)と構成単位(IV)との合計のモル数が構成単位(V)と構成単位(VI)との合計のモル数の1~1.1倍であり、又は、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計のモル数が構成単位(III)と構成単位(IV)との合計のモル数の1~1.1倍である(1)に記載の液晶性樹脂組成物。
【0011】
(3) (1)又は(2)に記載の組成物からなる表面実装リレー用部品。
【0012】
(4) (3)に記載の部品を備える表面実装リレー。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性及び気密性に優れ、変形とフィラーの脱離とが抑制された成形体を与える、流動性が良好な表面実装リレー用液晶性樹脂組成物、前記組成物からなる表面実装リレー用部品、及び前記部品を備える表面実装リレーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係る表面実装リレーの実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)のAA断面を示す部分断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、本発明に係る表面実装リレーの実施形態をプリント基板に実装した状態を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3(a)は、実施例で成形したリレーケースを示す平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のBB断面を示す部分縦断面図である。なお、特に記載がない限り図中の数値の単位はmmである(以下、
図4(a)~
図5(b)でも同じ)。
【
図4】
図4(a)は、
図3(a)及び
図3(b)に示すリレーケースの底面側から装着される台座を示す平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のCC断面を示す部分縦断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施例においてリレーケースリフロー時膨れ及びリレーケース気密性を評価するために、
図4(a)及び
図4(b)に示す台座を装着して内部を密閉したリレーケースを示す部分縦断面図である。
図5(b)は、実施例で行ったリレーケースのリフロー時膨れの評価における測定箇所を示す図である。具体的にいうと、
図5(b)は、
図3(a)と同様に、リレーケースを示す平面図であり、黒丸で示す複数の位置が測定箇所である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0016】
<表面実装リレー用液晶性樹脂組成物>
本発明に係る表面実装リレー用液晶性樹脂組成物は、特定の液晶性樹脂と、繊維状ウォラストナイトと、マイカとを所定量ずつ含み、繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり、前記表面実装リレーは、ベースと、前記ベースから突出する端子とを備え、前記端子をプリント基板に半田付けするようにした表面実装リレーである。以下、本発明に係る液晶性樹脂組成物を構成する成分について説明する。
【0017】
[液晶性樹脂]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、上記全芳香族ポリエステルアミドである液晶性樹脂が含まれる。上記全芳香族ポリエステルアミドは、融点が低いため、加工温度を低くすることができ、溶融時の分解ガスの発生が抑制される。液晶性樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、下記構成単位(I)、下記構成単位(II)、下記構成単位(III)、下記構成単位(IV)、下記構成単位(V)、及び下記構成単位(VI)からなる。
【0019】
【0020】
構成単位(I)は、4-ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」ともいう。)から誘導される。本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)を50~70モル%含む。構成単位(I)の含有量が50モル%未満、又は70モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(I)の含有量は、好ましくは54~67モル%、より好ましくは58~64モル%である。
【0021】
構成単位(II)は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(以下、「HNA」ともいう。)から誘導される。本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(II)を0.5モル%以上4.5モル%未満含む。構成単位(II)の含有量が0.5モル%未満、又は4.5モル%以上であると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(II)の含有量は、好ましくは0.75~3.75モル%、より好ましくは1~3モル%である。
【0022】
構成単位(III)は、1,4-フェニレンジカルボン酸(以下、「TA」ともいう。)から誘導される。本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(III)を10.25~22.25モル%含む。構成単位(III)の含有量が10.25モル%未満、又は22.25モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(III)の含有量は、好ましくは12.963~20.75モル%、より好ましくは15.675~19.25モル%である。
【0023】
構成単位(IV)は、1,3-フェニレンジカルボン酸(以下、「IA」ともいう。)から誘導される。本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(IV)を0.5モル%以上4.5モル%未満含む。構成単位(IV)の含有量が0.5モル%未満、又は4.5モル%以上であると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(IV)の含有量は、好ましくは0.5~3.75モル%、より好ましくは0.5~3モル%である。
【0024】
構成単位(V)は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(以下、「BP」ともいう。)から誘導される。本発明における全芳香族ポリエステルアミドには、全構成単位に対して構成単位(V)を5.75~23.75モル%含む。構成単位(V)の含有量が5.75モル%未満、又は23.75モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(V)の含有量は、好ましくは8.5~20.375モル%、より好ましくは11.25~17モル%(例えば、11.675~17モル%)である。
【0025】
構成単位(VI)は、N-アセチル-p-アミノフェノール(以下、「APAP」ともいう。)から誘導される。本発明における全芳香族ポリエステルアミドには、全構成単位に対して構成単位(VI)を1~7モル%含む。構成単位(VI)の含有量が1モル%未満、又は7モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(VI)の含有量は、好ましくは1.5~7モル%、より好ましくは2~7モル%である。
【0026】
本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(II)と構成単位(IV)との合計を1モル%以上5モル%未満含む。上記全芳香族ポリエステルアミドにおいては、ナフタレン骨格を有する屈曲性の構成単位(II)とベンゼン骨格を有する屈曲性の構成単位(IV)とが上記範囲の合計量で並存することで低融点化と耐熱性との両立が十分となりやすい。上記合計の含有量が1モル%未満であると、屈曲性の構成単位の割合が少なくなり過ぎるため、低融点化は不十分となりやすい。上記合計の含有量が5モル%以上であると、屈曲性の構成単位の割合が多くなり過ぎるため、耐熱性は不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、上記合計の含有量は、好ましくは1.75~4.75モル%、より好ましくは2.5~4.5モル%である。
【0027】
本発明における全芳香族ポリエステルアミドにおいては、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が0.04~0.37である。上記モル比が0.04未満であると、ビフェニル骨格を有する構成単位の割合が多くなるため、全芳香族ポリエステルアミドの結晶性が低くなり、低融点化と耐熱性との両立が不十分となりやすい。また、上記モル比が0.37を超えると、エステル結合以外の異種結合が増加するため、全芳香族ポリエステルアミドの結晶性が低くなり、低融点化と耐熱性との両立が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、上記モル比は、好ましくは0.07~0.36、より好ましくは0.11~0.35である。
【0028】
低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(III)と構成単位(IV)との合計のモル数(以下、「モル数1A」ともいう。)は、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計のモル数(以下、「モル数2A」ともいう。)の1~1.1倍であり、又は、モル数2Aは、モル数1Aの1~1.1倍であることが好ましい。モル数1Aは、モル数2Aの1.02~1.06倍であり、又は、モル数2Aは、モル数1Aの1.02~1.06倍であることがより好ましい。モル数1Aは、モル数2Aの1.024~1.056倍であり、又は、モル数2Aは、モル数1Aの1.024~1.056倍であることが更により好ましい。
【0029】
以上の通り、本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、特定の構成単位である(I)~(VI)及び構成単位(II)と構成単位(IV)との合計のそれぞれを、全構成単位に対して特定の量含有し、かつ、構成単位(V)と構成単位(VI)との合計に対する構成単位(VI)のモル比が特定の範囲であるため、低融点化と耐熱性との両立が十分である。なお、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)~(VI)を合計で100モル%含む。
【0030】
次いで、本発明における全芳香族ポリエステルアミドの製造方法について説明する。本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、直接重合法やエステル交換法等を用いて重合される。重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
【0031】
本発明では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の脂肪酸無水物等が挙げられる。
【0032】
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、1-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。
【0033】
反応条件としては、例えば、反応温度200~380℃、最終到達圧力0.1~760Torr(即ち、13~101,080Pa)である。特に溶融反応では、例えば、反応温度260~380℃、好ましくは300~360℃、最終到達圧力1~100Torr(即ち、133~13,300Pa)、好ましくは1~50Torr(即ち、133~6,670Pa)である。
【0034】
反応は、全原料モノマー(HBA、HNA、TA、IA、BP、及びAPAP)、アシル化剤、及び触媒を同一反応容器に仕込んで反応を開始させることもできるし(一段方式)、原料モノマーHBA、HNA、BP、及びAPAPの水酸基をアシル化剤によりアシル化させた後、TA及びIAのカルボキシル基と反応させることもできる(二段方式)。
【0035】
溶融重合は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行う。撹拌機のトルクが所定値に達した後、不活性ガスを導入し、減圧状態から常圧を経て、所定の加圧状態にして反応系から全芳香族ポリエステルアミドを排出する。
【0036】
上記重合方法により製造された全芳香族ポリエステルアミドは、更に常圧又は減圧、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。固相重合反応の好ましい条件は、反応温度230~350℃、好ましくは260~330℃、最終到達圧力10~760Torr(即ち、1,330~101,080Pa)である。
【0037】
次いで、全芳香族ポリエステルアミドの性質について説明する。本発明における全芳香族ポリエステルアミドは、溶融時に光学的異方性を示す。溶融時に光学的異方性を示すことは、本発明における全芳香族ポリエステルアミドが液晶性樹脂であることを意味する。
【0038】
本発明において、全芳香族ポリエステルアミドが液晶性樹脂であることは、全芳香族ポリエステルアミドが熱安定性と易加工性を併せ持つ上で不可欠な要素である。上記構成単位(I)~(VI)から構成される全芳香族ポリエステルアミドは、構成成分及びポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本発明における液晶性樹脂は溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドに限られる。
【0039】
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性樹脂は光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
【0040】
ネマチックな液晶性樹脂は融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点又はそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。融点は、でき得る限り高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、液晶性樹脂の溶融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、360℃以下であることが好ましい目安となる。なお、より好ましくは300~360℃であり、更により好ましくは340~358℃である。
【0041】
本発明における全芳香族ポリエステルアミドの融点より10~30℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における前記全芳香族ポリエステルアミドの溶融粘度は、好ましくは500Pa・s以下であり、より好ましくは0.5~300Pa・sであり、更により好ましくは1~100Pa・sである。上記溶融粘度が上記範囲内であると、前記全芳香族ポリエステルアミドそのもの、又は、前記全芳香族ポリエステルアミドを含有する組成物は、その成形時において、流動性が確保されやすく、充填圧力が過度になりにくい。なお、本明細書において、溶融粘度とは、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度をいう。
【0042】
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、上記の液晶性樹脂を、液晶性樹脂組成物全体に対して55~75質量%含む。液晶性樹脂の含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対し55質量%未満であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化しやすく、また、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の気密性が低下する恐れがあるため好ましくない。液晶性樹脂の含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して75質量%超であると、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の変形抑制効果、気密性等の少なくともいずれかが低下する恐れがあるため好ましくない。本発明に係る液晶性樹脂組成物は、上記の液晶性樹脂を、液晶性樹脂組成物全体に対して57.5~72.5質量%含むことが好ましく、60~70質量%含むことがより好ましい。
【0043】
[(B)繊維状ウォラストナイト]
(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比、即ち、平均繊維長/平均繊維径の値は8以上である。上記アスペクト比は、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の変形抑制効果等の観点から、好ましくは10~25であり、より好ましくは15~20である。
【0044】
(B)繊維状ウォラストナイトとしては、特に限定されず、例えば、公知の繊維状ウォラストナイトを用いることができる。(B)繊維状ウォラストナイトは、1種単独で使用してもよく、アスペクト比、平均繊維長、平均繊維径等が異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維径は好ましくは3.0~50μmであり、より好ましい平均繊維径は4.5~40μmである。上記平均繊維径が3.0μm以上であると、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体は、十分な機械的強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維径が50μm以下であると、上記成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。なお、本明細書において、液晶性樹脂組成物中の(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維径としては、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存した繊維状ウォラストナイトを走査型電子顕微鏡で観察し、100本の繊維状ウォラストナイトについて繊維径を測定した値の平均を採用する。
【0046】
(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維長は好ましくは30~800μmであり、より好ましい平均繊維長は50~600μmである。上記平均繊維長が30μm以上であると、本発明に係る液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体は、十分な機械的強度及び荷重たわみ温度が確保されやすい。上記平均繊維長が800μm以下であると、上記成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。なお、本明細書において、液晶性樹脂組成物中の(B)繊維状ウォラストナイトの平均繊維長としては、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存した繊維状ウォラストナイトの実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本の繊維状ウォラストナイト、即ち、合計1000本の繊維状ウォラストナイトについて繊維長を測定した値の平均を採用する。
【0047】
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(B)繊維状ウォラストナイトを、液晶性樹脂組成物全体に対して2.5~17.5質量%含む。(B)繊維状ウォラストナイトの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して2.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の気密性が低下する恐れがあるため好ましくない。(B)繊維状ウォラストナイトの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して17.5質量%超であると、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の変形抑制効果が低下する、恐れがあるため好ましくない。本発明における(B)繊維状ウォラストナイトは、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して3.5~14質量%含まれることが好ましく、5~10質量%含まれることがより好ましい。
【0048】
[(C)マイカ]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、マイカが含まれる。本発明に係る液晶性樹脂組成物にマイカが含まれることにより、液晶性樹脂組成物の流動性が向上しやすく、また、変形が抑制された成形体を得ることができる。マイカは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
マイカは、液晶性樹脂組成物全体に対して15~32.5質量%含まれる。マイカの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して15質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られる成形体の変形抑制が十分ではないため好ましくない。マイカの含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して32.5質量%超であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化しやすく、液晶性樹脂組成物の成形が困難になる可能性があり、また、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の気密性が低下する恐れがあるため好ましくない。マイカは、液晶性樹脂組成物中に、液晶性樹脂組成物全体に対して17~31.5質量%含まれることが好ましく、20~30質量%含まれることがより好ましい。
【0050】
〔マイカ〕
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。本発明において使用できるマイカとしては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられ、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
【0051】
また、マイカの製造において、鉱物を粉砕する方法としては、湿式粉砕法及び乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。湿式粉砕法と比較して、乾式粉砕法は低コストで一般的な方法であるが、湿式粉砕法を用いると、鉱物を薄く細かく粉砕することがより容易である。後述する好ましい平均粒子径及び厚みを有するマイカが得られるという理由で、本発明においては薄く細かい粉砕物を使用することが好ましい。したがって、本発明においては、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0052】
また、湿式粉砕法においては、被粉砕物を水に分散させる工程が必要であるため、被粉砕物の分散効率を高めるために、被粉砕物に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を加えることが一般的である。本発明において使用できる凝集沈降剤及び沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄-シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄-シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH)2)、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)等が挙げられる。これらの凝集沈降剤及び沈降助剤は、pHがアルカリ性又は酸性である。本発明で使用するマイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を使用していないものが好ましい。凝集沈降剤及び/又は沈降助剤で処理されていないマイカを使用すると、液晶性樹脂組成物中の液晶性樹脂の分解が生じにくく、多量のガス発生や液晶性樹脂の分子量低下等が起きにくいため、得られる表面実装リレー用部品等の成形体の性能をより良好に維持するのが容易である。
【0053】
本発明において使用できるマイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒子径が10~100μmであるものが好ましく、平均粒子径が20~80μmであるものが特に好ましい。マイカの平均粒子径が10μm以上であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。マイカの平均粒子径が100μm以下であると、成形体の剛性の向上が十分となりやすく、ウェルド強度も十分となりやすいため好ましい。更に、マイカの平均粒子径が100μm以下であると、本発明の表面実装リレー用部品等を成形するのに十分な流動性を確保しやすい。
【0054】
本発明において使用できるマイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることが特に好ましい。マイカの厚みが0.01μm以上であると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形体の剛性が向上しやすい可能性があるため好ましい。マイカの厚みが1μm以下であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。
【0055】
本発明において使用できるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、かつ/又は、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0056】
本発明に係る液晶性樹脂組成物において、(B)繊維状ウォラストナイト及び(C)マイカの合計の含有量は、液晶性樹脂組成物全体に対して25~45質量%である。上記含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して25質量%未満であると、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の変形抑制効果、気密性等の少なくともいずれかが低下する恐れがあるため好ましくない。上記含有量が、液晶性樹脂組成物全体に対して45質量%超であると、液晶性樹脂組成物の流動性が悪化しやすく、また、液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体の気密性が低下する恐れがあるため好ましくない。上記含有量は、液晶性樹脂組成物全体に対して27.5~37.5質量%であることが好ましく、30~40質量%であることがより好ましい。
【0057】
[その他の成分]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等のその他の成分も要求性能に応じ適宜添加することができる。その他の成分は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
その他の重合体としては、例えば、(A)液晶性樹脂以外の液晶性樹脂が挙げられる。但し、成形体の変形抑制効果、気密性等の少なくともいずれかの観点から、本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂以外の液晶性樹脂を含まないことが好ましい。その他の重合体としては、例えば、エポキシ基含有共重合体も挙げられる。但し、エポキシ基含有共重合体の加熱分解によりガスが発生することも、それに起因して表面実装リレー用部品等の成形体が膨れることも起きにくいことから、本発明に係る液晶性樹脂組成物は、エポキシ基含有共重合体を含まないことが好ましい。
【0059】
その他の充填剤とは、アスペクト比8以上の繊維状ウォラストナイト、マイカ、及びカーボンブラック以外の充填剤をいい、例えば、アスペクト比8以上の繊維状ウォラストナイト以外の繊維状充填剤(例えば、アスペクト比8未満の繊維状ウォラストナイト、ミルドファイバー)、マイカ以外の板状充填剤(例えば、タルク)が挙げられる。但し、液晶性樹脂組成物の流動性、成形体の変形抑制効果、フィラー脱離抑制効果等の観点から、本発明に係る液晶性樹脂組成物は、アスペクト比8未満の繊維状ウォラストナイト、ミルドファイバー、及びタルクを含有しないことが好ましい。
【0060】
本発明に係る液晶性樹脂組成物の製造方法は、液晶性樹脂組成物中の成分を均一に混合できれば特に限定されず、従来知られる樹脂組成物の製造方法から適宜選択することができる。例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出した後、得られた液晶性樹脂組成物を粉末、フレーク、ペレット等の所望の形態に加工する方法が挙げられる。
【0061】
本発明に係る液晶性樹脂組成物は流動性に優れるため、成形時の最小充填圧力が過度になりにくく、表面実装リレー用部品等を好ましく成形できる。
【0062】
液晶性樹脂の融点より10~30℃高い温度で、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して測定した液晶性樹脂組成物の溶融粘度が500Pa・s以下(より好ましくは、5Pa・s以上100Pa・s以下)であることが、表面実装リレー用部品の成形時において、液晶性樹脂組成物の流動性を確保しやすく、充填圧力が過度になりにくい点で好ましい。
【0063】
<表面実装リレー用部品及び表面実装リレー>
本発明に係る液晶性樹脂組成物を成形することにより、本発明に係る表面実装リレー用部品を得ることができる。本発明に係る表面実装リレー用部品は、耐熱性及び気密性に優れ、変形とフィラーの脱離とが抑制されている。本発明に係る表面実装リレーは、上記部品を備えるため、(1)耐熱性に優れ、半田リフロー処理に耐えることができ、(2)半田リフロー処理後でも気密性及び形状を保持することができ、(3)フィラーの脱離が抑制され、導通不良等の機能障害が発生しにくい。
【0064】
本発明に係る表面実装リレー用部品及び本発明に係る表面実装リレーについて説明する。
図1(a)は、本発明に係る表面実装リレーの実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)のAA断面を示す部分断面図である。表面実装リレー1は、ベース2と、ケース3と、コイルブロック4と、接極子ブロック5と、端子6とを備える。
【0065】
ベース2は、ベース2から突出する端子6を備える。ベース2の上面の外周部には、ケース3が配置される。ベース2の上面の中央部には、コイルブロック4及び接極子ブロック5がこの順に配置される。
【0066】
ケース3は、ベース2の上面の外周部と、コイルブロック4及び接極子ブロック5とを覆うように配置される。ベース2とケース3とで形成される中空容器状の空間内部にコイルブロック4及び接極子ブロック5が収容される。
【0067】
コイルブロック4は、ボビン41と、コイル42と、鉄心43とを備え、ベース2の上面の中央部に配置される。ボビン41は、長軸方向に貫通した円筒部を有し、ボビン41の外周には、端子6の一部の一端と電気的に接続されているコイル42が巻かれ、ボビン41の上記円筒部には、鉄心43が挿入されている。
【0068】
接極子ブロック5は、接極子連結部51と、接極子連結部51からボビン41の長軸方向に沿って互いに逆向きに延びる接極子52とを備え、コイルブロック4上に配置される。接極子52は、端子6の別の一部の一端と電気的に接続されている。コイル42への導通により電磁石が形成されると、磁力により、接極子52の先端は、コイルブロック4側に移動する。その結果、コイル42を含む入力側からの信号が、接極子52を含む出力側へと伝達される。
【0069】
端子6は、一端がコイル42又は接極子52と電気的に接続されており、他端が後述のプリント基板7に電気的に導通可能に接続されている。端子6は、ベース2から突出しており、後述の通り、プリント基板7に半田付けするようになっている。
【0070】
上述の部品のうち、ベース2、ケース3、ボビン41は、耐熱性及び気密性に優れ、変形とフィラーの脱離とが抑制された成形体として形成できる点等を考慮し、本発明に係る液晶性樹脂組成物からなることが好ましい。即ち、本発明に係る表面実装リレー用部品としては、例えば、ベース、ケース、ボビン等が挙げられる。
【0071】
表面実装リレー1は、例えば、ベース2の上面の中央部にコイルブロック4及び接極子ブロック5をこの順に配置し、その後、ベース2の上面の外周部にケース3を配置し、ベース2とケース3とを接着剤により接着することにより、製造することができる。
【0072】
表面実装リレー1をプリント基板7に実装する方法について説明する。
図2(a)に示す通り、表面実装リレー1では、半田付け面が表面実装リレー1と平行になるように、表面実装リレー1より垂直に突き出した端子6が直角に曲げられている。そのため、表面実装リレー1は、プリント基板7に孔を設けることなく、プリント基板7表面の導体パターン8上に設けられた半田パッド(図示せず)に端子6を載置し、半田リフロー処理を行うことにより、電気的に導通可能にプリント基板7に固定される。
【0073】
なお、上述の説明では、
図2(a)に示す通り、表面実装リレー1より垂直に突き出した端子6の先端が表面実装リレー1の外側へ直角に曲げられている場合を示した。一方、
図2(b)に示す通り、表面実装リレー1より垂直に突き出した端子6の先端が表面実装リレー1の内側へ直角に曲げられていてもよい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
<実施例1~3、比較例1~11>
下記の実施例及び比較例において、液晶性樹脂LCP1~LCP4は、以下の通りにして製造した。その際、ペレットの融点及び溶融粘度の測定は、それぞれ下記の条件で行った。
【0076】
[融点の測定]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶性樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の測定後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
【0077】
[溶融粘度の測定]
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂の溶融粘度を測定した。なお、測定温度は、LCP1については360℃、LCP2については350℃、LCP3については380℃、LCP4については380℃であった。
【0078】
(LCP1の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸:1385g(60モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸:88g(2.8モル%)(HNA)
(III)1,4-フェニレンジカルボン酸:504g(18.15モル%)(TA)
(IV)1,3-フェニレンジカルボン酸:19g(0.7モル%)(IA)
(V)4,4’-ジヒドロキシビフェニル:415g(13.35モル%)(BP)
(VI)N-アセチル-p-アミノフェノール:126g(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒:120mg
無水酢酸:1662g
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(即ち、1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は345℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
【0079】
(LCP2の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸1380g(60モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸157g(5モル%)(HNA)
(III)1,4-フェニレンジカルボン酸484g(17.5モル%)(TA)
(V)4,4’-ジヒドロキシビフェニル388g(12.5モル%)(BP)
(VI)N-アセチル-p-アミノフェノール126g(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒110mg
無水酢酸1659g
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち、1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は336℃、溶融粘度は20Pa・sであった。
【0080】
(LCP3の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸:1040g(48モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸:89g(3モル%)(HNA)
(III)1,4-フェニレンジカルボン酸:547g(21モル%)(TA)
(IV)1,3-フェニレンジカルボン酸:91g(3.5モル%)(IA)
(V)4,4’-ジヒドロキシビフェニル:716g(24.5モル%)(BP)
酢酸カリウム触媒:110mg
無水酢酸:1644g
【0081】
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は355℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
【0082】
(LCP4の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸:37g(2モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸:1218g(48モル%)(HNA)
(III)1,4-フェニレンジカルボン酸:560g(25モル%)(TA)
(V)4,4’-ジヒドロキシビフェニル:628g(25モル%)(BP)
酢酸カリウム触媒:165mg
無水酢酸:1432g
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから30分かけて5Torr(即ち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で3時間の熱処理を行った。ペレットの融点は348℃、溶融粘度は9Pa・sであった。
【0083】
(液晶性樹脂以外の成分)
・繊維状充填剤
繊維状ウォラストナイト1:NYGLOS 8(NYCO Materials社製、アスペクト比17、平均繊維長136μm、平均繊維径8μm)
繊維状ウォラストナイト2:NYAD 325(NYCO Materials社製、アスペクト比5、平均繊維長50μm、平均繊維径10μm)
ミルドファイバー:日東紡(株)製PF70E001、繊維径10μm、平均繊維長70μm(メーカー公称値)
ガラス繊維:日本電気硝子(株)製ECS03T-786H、繊維径10μm、長さ3mmのチョプドストランド
・板状充填剤
マイカ;(株)山口雲母工業製AB-25S、平均粒子径25μm
タルク;松村産業(株)製クラウンタルクPP、平均粒子径10μm
【0084】
上記で得られた各液晶性樹脂と、上述した液晶性樹脂以外の成分とを二軸押出機を使用して混合し、液晶性樹脂組成物を得た。各成分の配合量は表1及び表2に示した通りである。なお、以下、表中の配合量に関する「%」は質量%を示す。また、液晶性樹脂組成物を得る際の押出条件は下記の通りである。
[押出条件]
メインフィード口に設けられたシリンダーの温度を250℃とし、他のシリンダーの温度はすべて下記の通りとした。液晶性樹脂はすべてをメインフィード口から供給した。また、充填剤はサイドフィード口から供給した。
他のシリンダー温度:
360℃(実施例1~3並びに比較例1~7及び11)
350℃(比較例8)
370℃(比較例9及び10)
【0085】
(液晶性樹脂組成物の溶融粘度の測定)
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂組成物の溶融粘度を測定した。なお、測定温度は、LCP1を使用した液晶性樹脂組成物については360℃、LCP2を使用した液晶性樹脂組成物については350℃、LCP3を使用した液晶性樹脂組成物については380℃、LCP4を使用した液晶性樹脂組成物については380℃であった。結果を表1及び表2に示す。
【0086】
下記の方法に基づき、液晶性樹脂組成物から成形した成形体の物性を測定した。各評価結果を表1及び表2に示す。
【0087】
(荷重たわみ温度)
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形して成形体を得、ISO75-1,2に準拠して荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度を成形体の耐熱性を表す指標として用いた。
[成形条件]
成形機:住友重機械工業(株)、SE100DU
シリンダー温度:
360℃(実施例1~3並びに比較例1~7及び11)
350℃(比較例8)
370℃(比較例9及び10)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
【0088】
(曲げ試験)
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形して0.8mm厚の成形体を得、ASTM D790に準拠し、曲げ強度、曲げ歪、及び曲げ弾性率を測定した。
[成形条件]
成形機:住友重機械工業(株)、SE100DU
シリンダー温度:
360℃(実施例1~3並びに比較例1~7及び11)
350℃(比較例8)
370℃(比較例9及び10)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
【0089】
(リレーケース最小充填圧力)
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形し(ゲート:ピンゲート、ゲートサイズ:φ0.3mm)、
図3(a)及び
図3(b)に示すような、リレーケースを得た。
[成形条件]
成形機:住友重機械工業(株)、SE30DUZ
シリンダー温度:
360℃(実施例1~3並びに比較例1~7及び11)
350℃(比較例8)
370℃(比較例9及び10)
金型温度:90℃
射出速度:200mm/sec
【0090】
上記のリレーケースを射出成形する際に良好な成形体を得られる最小の射出充填圧力を最小充填圧力として測定した。
【0091】
(リレーケース変形)
上述の通りにして得た
図3(a)及び
図3(b)に示すリレーケースの底面の寸法をミツトヨ製クイックビジョン404PROCNC画像測定機により測定した。測定は、下記条件で行ったリフローの前後で行い、以下の基準に従って評価した。
○(良好):リフロー前後の寸法変化の絶対値がリフロー前の寸法の0.6%未満であった。
×(不良):リフロー前後の寸法変化の絶対値がリフロー前の寸法の0.6%以上であった。
[リフロー条件]
測定機:(株)二葉科学製コンベア式熱風循環乾燥機DFC-27-022S
試料送り速度:0.45mm/min
リフロー炉通過時間:5分
プレヒートゾーンの温度条件:185℃
リフローゾーンの温度条件:295℃
ピーク温度:257℃
【0092】
(リレーケースリフロー時膨れ)
上述の通りにして得た
図3(a)及び
図3(b)に示すリレーケースの底面側から、
図4(a)及び
図4(b)に示す台座(材質はリレーケースと同一)を装着し、
図5(a)に示す通り、リレーケース内部を密閉した。このリレーケースを、前述の条件で行ったリフローに供した後、水平な机の上に静置し、リレーケース天面の高さをミツトヨ製クイックビジョン404PROCNC画像測定機により測定した。その際、
図5(b)において黒丸で示す複数の位置で高さを測定し、最小二乗平面からの最大高さと最小高さとの差をリレーケース天面の平面度として、以下の
基準に従って評価した。
○(良好):平面度が0.45mm未満であり、リレーケースにリフロー時膨れが生じなかった。
×(不良):平面度が0.45mm以上であり、リレーケースにリフロー時膨れが生じた。
【0093】
(フィラー脱離性)
上述の通りにして得た
図3(a)及び
図3(b)に示すリレーケースを、前述の条件で行ったリフローに供した後、充填剤の脱離状況を観察し、以下の基準に従って評価した。
○(良好):変化がなく、充填剤の脱離が抑制されていた。
×(不良):充填剤が脱離していた。
【0094】
(リレーケース気密性)
上述と同様にして、
図5(a)に示す通り、リレーケース内部を密閉した。このリレーケースを、前述の条件で行ったリフローに供した後、70℃の温水に1分間浸漬した。その際の気泡の有無を観察し、以下の基準に従って評価した。
○(良好):気泡が観察されなかった。
×(不良):気泡が観察された。
【0095】
【0096】
【0097】
表1及び表2に示される通り、実施例において、溶融粘度、荷重たわみ温度、曲げ強度、曲げ歪、曲げ弾性率は良好な値を示し、リレーケース最小充填圧力は80MPa以下であり、リレーケース変形、リレーケースリフロー時膨れ、リレーケースフィラー脱離、リレーケース気密性の評価はいずれも良好であった。よって、本発明に係る液晶性樹脂組成物は、流動性に優れ、この液晶性樹脂組成物から得られる表面実装リレー用部品等の成形体は、耐熱性及び気密性に優れ、変形とフィラーの脱離とが抑制されていることが確認された。したがって、上記液晶性樹脂組成物は、表面実装リレー用部品及び表面実装リレーの製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 表面実装リレー
2 ベース
3 ケース
4 コイルブロック
41 ボビン
42 コイル
43 鉄心
5 接極子ブロック
51 接極子連結部
52 接極子
6 端子
7 プリント基板
8 導体パターン
【要約】
耐熱性及び気密性に優れ、変形とフィラーの脱離とが抑制された成形体を与える、流動性が良好な表面実装リレー用液晶性樹脂組成物、並びにそれを用いた表面実装リレー用部品及び表面実装リレーを提供する。
本発明に係る表面実装リレー用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂と、(B)繊維状ウォラストナイトと、(C)マイカと、を含み、上記(A)液晶性樹脂は、必須の構成成分として、所定量の下記構成単位(I)~(VI)からなる、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドであり、前記(B)繊維状ウォラストナイトのアスペクト比は、8以上であり、前記表面実装リレーは、ベースと、前記ベースから突出する端子とを備え、前記端子をプリント基板に半田付けするようにした表面実装リレーである。