(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】融着機
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
G02B6/255
(21)【出願番号】P 2018204043
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高岡 隆治
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
(72)【発明者】
【氏名】服部 真樹
(72)【発明者】
【氏名】細井 英昭
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-019339(JP,A)
【文献】特開2011-090039(JP,A)
【文献】特開2005-164792(JP,A)
【文献】特開2004-240028(JP,A)
【文献】特開平10-039161(JP,A)
【文献】米国特許第04537466(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士を接続する融着機であって、
光ファイバが保持される保持部材と、
前記保持部材に保持された光ファイバを押圧するクランプを有するクランプユニットと、
前記クランプユニットと連動して開閉可能である風防と、
を具備し、
前記風防と前記クランプユニットとは、リンクによって連結され、リンクを介して連動し、
前記風防を閉じて、前記クランプが光ファイバを押圧する際に、前記クランプの押圧動作を減速させる減速機構を有し、
前記減速機構は、上下動可能なアクチュエータであり、
前記風防が開いている状態では、前記クランプユニットと接触しておらず、
前記風防を閉じる際には、前記アクチュエータが上昇して、前記クランプユニットの一部と接触することで、前記クランプの押圧動作を一時停止し、
前記風防が完全に閉じた直後の状態では、前記クランプは前記光ファイバとは接触しておらず、前記クランプユニットは、前記クランプの先端と前記光ファイバとが隙間をあけた位置で停止し、
前記風防が閉じた後に、
前記アクチュエータが作動し、前記アクチュエータが下がって
前記クランプが所定の速度で下降動作を行い、前記クランプユニットの自重によって前記クランプの先端が前記光ファイバに接触し、前記クランプで前記光ファイバを押圧可能であることを特徴とする融着機。
【請求項2】
光ファイバ同士を接続する融着機であって、
光ファイバが保持される保持部材と、
前記保持部材に保持された光ファイバを押圧するクランプを有するクランプユニットと、
前記クランプユニットと連動して開閉可能である風防と、
を具備し、
前記風防を閉じて、前記クランプが光ファイバを押圧する際に、前記クランプの押圧動作を減速させる減速機構を有し、
前記風防と前記クランプユニットとは、リンクによって連結され、リンクを介して連動し、
前記減速機構はショックアブソーバであり、
前記風防が開いている状態では、前記クランプユニットと接触しておらず、
前記風防を閉じる際に、
前記ショックアブソーバが、前記クランプユニットと接触し、
前記クランプユニットと前記ショックアブソーバとが接触した直後の状態では、前記クランプは前記光ファイバとは接触しておらず、前記クランプの先端と前記光ファイバとの間に隙間が形成されており、
前記ショックアブソーバが、前記クランプユニットと接触することで、
前記クランプユニットの自重によって前記ショックアブソーバが作動し、前記クランプユニットの自重によって、前記ショックアブソーバが所定の速度で下降動作を行い、前記クランプユニットの動作が規制され、前記クランプユニットの動作が減速され、前記クランプユニットは、前記風防とは別に動作し、
前記ショックアブソーバの下降に伴い、前記クランプが所定の速度で下降動作を行い、前記クランプユニットの自重によって前記クランプの先端が前記光ファイバに接触することを特徴とする融着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を融着接続するための融着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ同士の接続には、融着機が用いられる。融着機は、一対のホルダに保持された光ファイバ同士を突き合わせて、電極間に配置し、アークによって光ファイバ同士の先端を融着して、光ファイバ同士を接続するものである。
【0003】
図5(a)は、融着機1の平面図であり、
図5(b)は、保持部材7上に光ファイバ5が配置された状態を示す部分拡大図である。融着機1を用いて光ファイバ5を接続する際には、まず、風防3を開き、予め光ファイバ5が保持された一対のホルダ9を、内部のホルダ載置部にセットする。ホルダ9の先端から突出する光ファイバ5は、保持部材7のV溝13に配置され、光ファイバ5の先端同士が突き合わせられた状態となる。
【0004】
この際、
図5(b)に示すように、光ファイバ5の先端位置のずれ等を抑制するため、光ファイバ5は、クランプ15によって保持部材7上に押圧される。この状態で、風防3を閉じ、電極11に通電し、一対の電極11の間にアークを発生させることで、光ファイバ5の先端部を溶融して接合することができる。
【0005】
このように、光ファイバ5の融着の際には、光ファイバ5をクランプする動作と、風防3を閉じる動作が必要である。これに対し、例えば、クランプが蓋に設けられた融着機が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような融着機によれば、風防3を閉じるだけで、光ファイバ5のクランプも同時に行うことができるため、作業性が良好である。
【0008】
しかし、現場では、多数の光ファイバ5同士の接続作業を行う必要があるため、作業者はできるだけ早く、光ファイバ5同士のセット作業と融着作業とを行いたいという要望がある。このため、ホルダ9をセットした後、風防3を勢いよく閉める場合がある。この際、風防3とともにクランプ15が光ファイバに強く衝突するため、クランプ15によって光ファイバ5が損傷する場合がある。
【0009】
実際に、クランプ付きの風防を有する融着機にダミーの光ファイバをセットして、風防をゆっくりと閉めた場合と、勢い良く閉めた場合とで、その後の光ファイバの破断強度を比較したところ、ゆっくりと閉めた場合の平均(N=10)破断強度が12.6Nであったのに対し、勢い良く閉めた場合には、平均破断強度が4.1Nと大きく低下した。このように、発明者らは、クランプによって光ファイバが損傷を受ける場合があることを知見した。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、クランプによる光ファイバの損傷を抑制することが可能な融着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために第1の発明は、光ファイバ同士を接続する融着機であって、光ファイバが保持される保持部材と、前記保持部材に保持された光ファイバを押圧するクランプを有するクランプユニットと、前記クランプユニットと連動して開閉可能である風防と、を具備し、前記風防と前記クランプユニットとは、リンクによって連結され、リンクを介して連動し、前記風防を閉じて、前記クランプが光ファイバを押圧する際に、前記クランプの押圧動作を減速させる減速機構を有し、前記減速機構は、上下動可能なアクチュエータであり、前記風防が開いている状態では、前記クランプユニットと接触しておらず、前記風防を閉じる際には、前記アクチュエータが上昇して、前記クランプユニットの一部と接触することで、前記クランプの押圧動作を一時停止し、前記風防が完全に閉じた直後の状態では、前記クランプは前記光ファイバとは接触しておらず、前記クランプユニットは、前記クランプの先端と前記光ファイバとが隙間をあけた位置で停止し、前記風防が閉じた後に、前記アクチュエータが作動し、前記アクチュエータが下がって前記クランプが所定の速度で下降動作を行い、前記クランプユニットの自重によって前記クランプの先端が前記光ファイバに接触し、前記クランプで前記光ファイバを押圧可能であることを特徴とする融着機である。
【0013】
第2の発明は、光ファイバ同士を接続する融着機であって、光ファイバが保持される保持部材と、前記保持部材に保持された光ファイバを押圧するクランプを有するクランプユニットと、前記クランプユニットと連動して開閉可能である風防と、を具備し、前記風防を閉じて、前記クランプが光ファイバを押圧する際に、前記クランプの押圧動作を減速させる減速機構を有し、前記風防と前記クランプユニットとは、リンクによって連結され、リンクを介して連動し、前記減速機構はショックアブソーバであり、前記風防が開いている状態では、前記クランプユニットと接触しておらず、前記風防を閉じる際に、前記ショックアブソーバが、前記クランプユニットと接触し、前記クランプユニットと前記ショックアブソーバとが接触した直後の状態では、前記クランプは前記光ファイバとは接触しておらず、前記クランプの先端と前記光ファイバとの間に隙間が形成されており、前記ショックアブソーバが、前記クランプユニットと接触することで、前記クランプユニットの自重によって前記ショックアブソーバが作動し、前記クランプユニットの自重によって、前記ショックアブソーバが所定の速度で下降動作を行い、前記クランプユニットの動作が規制され、前記クランプユニットの動作が減速され、前記クランプユニットは、前記風防とは別に動作し、前記ショックアブソーバの下降に伴い、前記クランプが所定の速度で下降動作を行い、前記クランプユニットの自重によって前記クランプの先端が前記光ファイバに接触することを特徴とする融着機である。
【0015】
本発明によれば、風防とクランプユニットが連動して動作するが、クランプによって光ファイバを保持する際に、クランプユニットの動作が減速機構で減速するため、風防を勢いよく閉じてもクランプが光ファイバへ勢いよく衝突することを抑制することができる。このため、クランプによって、光ファイバが損傷を受けることを抑制することができる。
【0016】
また、減速機構として、上下動可能なアクチュエータを用いることで、確実に、クランプユニットの動作を制御することができる。
【0017】
また、減速機構として、ショックアブソーバを用いることで、簡易な構造で、クランプユニットの動作を制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、クランプによる光ファイバの損傷を抑制することが可能な融着機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】風防3が開いた状態のクランプ構造10を示す概略図。
【
図2】(a)、(b)はクランプ構造10の風防3を閉じる工程を示す概略図。
【
図3】(a)、(b)はクランプ構造10aの風防3を閉じる工程を示す概略図。
【
図4】(a)、(b)、(c)はクランプ構造10bの風防3を閉じる工程を示す概略図。
【
図5】(a)は融着機1の平面図、(b)は、保持部材7近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、前述した光ファイバ同士を接続する融着機1(
図5(a))における、クランプ構造10の風防3が開いた状態を示す概略図である。なお、融着機1については重複する説明を省略し、以下の図において、光ファイバ5のクランプ構造に大きな影響のない構造については、図示を省略する。
【0022】
クランプ構造10は、主に、風防3、保持部材7、クランプ15、クランプユニット17、アクチュエータ21等から構成される。保持部材7には、V溝13が設けられ、光ファイバ5は、V溝13に配置されて保持される。
【0023】
風防3は、融着機本体29に対してヒンジ27aを介して配置される。すなわち、風防3は、融着機本体29に対して開閉可能である。
【0024】
融着機本体29には、さらに、ヒンジ27bを介してクランプユニット17が設けられる。すなわち、クランプユニット17は、融着機本体29に対して開閉可能である。クランプユニット17の先端近傍には、クランプ15が設けられる。クランプ15によって、保持部材7に保持された光ファイバ5を押圧することができる。
【0025】
風防3とクランプユニット17とはリンク19によって連結される。リンク19の一方の端部近傍は、ピン23aによって風防3に取り付けられる。リンク19の他方の端部側は、所定の長さ範囲に長穴25が設けられる。また、クランプユニット17の一部には、ピン23bが設けられ、ピン23bは、長穴25と嵌合する。すなわち、ピン23bは長穴25の範囲内で、リンク19に対して移動可能である。
【0026】
このように、風防3とクランプユニット17は、リンク19によって連結され、風防3の開閉動作とクランプユニット17の開閉動作は連動する。すなわち、風防3の開閉動作を行うと、クランプユニット17も、リンク19によって風防3に連動して開閉動作を行う。なお、クランプユニット17と風防3との連動機構は、図示した例には限られず、風防3の開閉動作とクランプユニット17の開閉動作が連動可能であれば、その機構は特に限定されない。
【0027】
融着機本体29には、アクチュエータ21が配置される。アクチュエータ21は、図示を省略した制御部によって上下動作が可能である。なお、アクチュエータ21は、風防3が開いている状態では、上方に移動した状態で保持される。
【0028】
次に、クランプ構造10の動作について詳細に説明する。前述したように、
図1の状態から風防3を閉じると(図中矢印A)、風防3とともに、クランプユニット17が動作する。
図2(a)は、風防3を閉じた直後のクランプ構造10を示す概略図である。
【0029】
前述したように、風防3を閉じる際には、アクチュエータ21が上昇した状態である。このため、風防3を完全に閉じた直後の状態において、クランプユニット17の一部が、アクチュエータ21と接触する。このため、クランプユニット17の動作が規制されて、クランプユニット17の閉動作が一時停止する。すなわち、クランプ15の押圧動作を一時停止する。
【0030】
この状態では、クランプ15は光ファイバ5とは接触しない。すなわち、クランプユニット17は、クランプ15の先端と光ファイバ5とが隙間をあけた位置で停止する。
【0031】
風防3が完全に閉じられると、図示を省略したセンサ等で風防3が閉じられたことが検知され、
図2(b)に示すように、風防3の閉動作に連動して、アクチュエータ21が下降動作を行う(図中矢印B)。なお、アクチュエータ21は、例えば電動アクチュエータであり、所定の速度で下降動作が可能である。
【0032】
アクチュエータ21の下降動作に伴い、クランプユニット17は、自重によってヒンジ27bを軸に回転し、クランプ15の先端が光ファイバ5に接触する。すなわち、アクチュエータ21は、風防3を閉じて、クランプ15が光ファイバ5を押圧する際にクランプ15ユの押圧動作を減速させる減速機構として機能する。
【0033】
なお、クランプ15は、図示を省略したばね等によって、クランプユニット17に対して伸縮可能であってもよい(図中矢印C)。以上により、風防3が閉じた後にアクチュエータ21が下がることで、クランプ15によって光ファイバ5を保持部材7へ押圧可能である。
【0034】
なお、アクチュエータ21の下降動作が完了したことをセンサ等で検知した後、融着操作が可能となる。また、融着作業後に風防3を開けると、クランプユニット17もリンク19によって風防3に連動して開く。また、風防3が開かれると、図示を省略したセンサ等で風防3が開いたことが検知され、これと連動してアクチュエータ21が上昇動作して保持される。
【0035】
以上、本実施の形態によれば、風防3とクランプユニット17とがリンク19を介して連動するため、光ファイバ5のクランプ動作と風防3を閉じる動作を一度で行うことができる。また、風防3を閉じる際には、アクチュエータ21によってクランプユニット17の動作が規制される。このため、風防3を勢い良く閉めたとしても、クランプユニット17は、アクチュエータ21と接触する部位までしか回動することができない。このため、クランプ15が光ファイバ5と衝突することがない。
【0036】
また、完全に風防3が閉じてからアクチュエータ21が作動するため、光ファイバ5に対するクランプ15の動作は、アクチュエータ21の動作速度で制御することができる。このため、クランプ15と光ファイバ5との接触速度を容易に制御し、光ファイバ5の損傷を抑制することができる。
【0037】
また、風防3を開く際には、クランプユニット17は、風防3と同時に即座に開く。このため、作業者は、アクチュエータ21の上昇動作を待つことなく、光ファイバ5の交換等の他の作業を進めることができる。
なお、本実施の形態において、上下方向とは、光ファイバ5を押圧する方向(及び押圧を解除する方向)である。
【0038】
次に、第2の実施形態について説明する。
図3(a)は、クランプ構造10aについて風防3を閉じた状態(
図2(a)に対応)を示す図である。なお、以下の説明において、クランプ構造10と同一の機能等を奏する構成については、
図1~
図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0039】
クランプ構造10aは、クランプ構造10とほぼ同様の構成であるが、ショックアブソーバ31が用いられる点で異なる。ショックアブソーバ31は、内部の弾性体によって上方に押し出されている。ショックアブソーバ31の内部には、流体が封入されており、ショックアブソーバ31の上端を下方に押し込むと、内部の流体の流動抵抗によって、下降動作の速度が規制される。
【0040】
次に、クランプ構造10aの動作について説明する。前述したように、風防3が開いている状態では、ショックアブソーバ31は、上方に突出した状態である。この状態から風防3を閉じると、
図3(a)に示すように、クランプユニット17はショックアブソーバ31と接触する。このため、クランプユニット17の動作が規制され、クランプユニット17は、風防3とは別に動作する。
【0041】
クランプユニット17とショックアブソーバ31とが接触した直後の状態では、クランプ15は光ファイバ5とは接触しない。すなわち、クランプユニット17がショックアブソーバ31と接触する際には、クランプ15の先端と光ファイバ5との間に隙間が形成される。
【0042】
クランプユニット17がショックアブソーバ31と接触すると、クランプユニット17の自重によって、
図3(b)に示すように、ショックアブソーバ31が所定の速度で下降動作を行う(図中矢印B)。
【0043】
ショックアブソーバ31の下降動作に伴い、クランプユニット17がヒンジ27bを軸に回転し、クランプ15の先端が光ファイバ5に接触する。すなわち、ショックアブソーバ31は、風防3を閉じて、クランプ15を光ファイバ5へ接触させる際にクランプユニット17の動作を減速させることが可能な減速機構として機能する。
【0044】
なお、前述したように、クランプ15は、図示を省略したばね等によって、クランプユニット17に対して伸縮可能であってもよい(図中矢印C)。以上により、風防3が閉じた後にショックアブソーバ31が下がることで、クランプ15によって光ファイバ5を保持部材7へ押圧可能である。
【0045】
なお、ショックアブソーバ31の下降動作が完了したことをセンサ等で検知した後、融着操作が可能となる。また、融着作業後に風防3を開けると、風防3と連動して、クランプユニット17も即座に開くことができる。また、風防3が開かれると、内部の弾性体によって、ショックアブソーバ31が上昇動作して保持される。
【0046】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ショックアブソーバ31の上下動には、電気的な制御が不要であり、構造が簡易である。
【0047】
次に、第3の実施形態について説明する。
図4(a)~
図4(c)は、第3の実施形態にかかるクランプ構造10bの動作を示す図である。クランプ構造10bは、クランプ構造10等とほぼ同様の構成であるが、弾性部材であるばね33a、33bが設けられる点で異なる。ばね33aは、融着機本体29上に配置され、ばね33bは、風防3の内面に配置される。
【0048】
図4(a)に示すように、クランプ構造10bにおいて、風防3を閉じていくと(図中矢印A)、
図4(b)に示すように、クランプユニット17の一部が、ばね33aと接触する。さらに風防3を閉じてクランプユニット17がばね33aを押し下げようとすると、ばね33aは、クランプユニット17を上方に向かって押し上げるように反力を発生させる(図中矢印D)。
【0049】
このように、クランプユニット17には、ばね33aによって押し上げられる方向に力が加わるため、クランプユニット17の動作が制限される。例えば、風防3が勢いよく閉じられても、ばね33aによってクランプユニット17の回転速度が減速される。
【0050】
さらに風防3を閉じていくと、
図4(c)に示すように、クランプユニット17がばね33aから受ける反力が増加していくため、クランプ15は速度を落としながら光ファイバ5と接触する。このため、クランプ15と光ファイバ5との衝突が緩和される。
【0051】
クランプ15と光ファイバ5とが接触した後、風防3の内面のばね33bがクランプユニット17と接触する。ばね33bは、風防3の閉動作とともに、クランプユニット17を下方に押圧する(図中矢印E)。このため、風防3を完全に閉じると、ばね33bによってクランプ15が下方に押し付けられて、光ファイバ5を押圧することができる。
【0052】
このように、ばね33aは、風防3を閉じる際に、クランプユニット17の一部と接触し上方に押圧することでクランプユニット17の動作を減速させ、さらに風防3を閉じた際に、ばね33bは、クランプユニット17を下方に押圧する。したがって、ばね33a、33bは、クランプ15で光ファイバ5を保持部材7へ押圧可能な減速機構として機能する。
【0053】
なお、風防3が完全に閉じたことをセンサ等で検知した後、融着操作が可能となる。また、融着作業後に風防3を開けると、風防3と連動して、クランプユニット17も即座に開くことができる。
【0054】
以上、第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、ばね33a、33bによるクランプユニット17の減速機構は、ばね33a、33bの配置やばね定数などの設定が難しい。このため、より確実な減衰機構としては、アクチュエータ21またはショックアブソーバ31の適用が望ましい。
【0055】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、前述した各減衰機構は、風防3に対するクランプユニット17の動作を制限するものであるが、風防3の動作自体を減衰可能な減衰機構としてもよい。例えば、風防3が完全に閉じる直前で風防3の閉動作を一端停止または減速させて、その後、風防3を減速させて完全に閉じることで、クランプ15と光ファイバ5とを接触させてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1………融着機
3………風防
5………光ファイバ
7………保持部材
9………ホルダ
10、10a、10b………クランプ構造
11………電極
13………V溝
15………クランプ
17………クランプユニット
19………リンク
21………アクチュエータ
23a、23b………ピン
25………長穴
27a、27b………ヒンジ
29………融着機本体
31………ショックアブソーバ
33a、33b………ばね