(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ホイップクリーム用澱粉および当該澱粉を含むホイップクリーム
(51)【国際特許分類】
A23L 29/212 20160101AFI20220207BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20220207BHJP
C08B 30/12 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A23L29/212
A23L9/20
C08B30/12
(21)【出願番号】P 2018558858
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2017039492
(87)【国際公開番号】W WO2018123253
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2016252398
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】長畑 雄也
(72)【発明者】
【氏名】美藤 武敏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健市
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-075430(JP,A)
【文献】特開2001-231469(JP,A)
【文献】特表平05-506564(JP,A)
【文献】特表2008-516050(JP,A)
【文献】国際公開第2008/155892(WO,A1)
【文献】特開2011-084674(JP,A)
【文献】国際公開第2016/049577(WO,A1)
【文献】特開平08-154612(JP,A)
【文献】特開平06-225720(JP,A)
【文献】特開2004-154092(JP,A)
【文献】特開2003-169616(JP,A)
【文献】倉沢新一,食物繊維の定量法-定義と定量法の変遷-,日本食物繊維学会誌,2007年,Vol.11, No.1,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C08B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が
60%以上であ
り、
前記澱粉の分子量ピークが1×10
3
以上4×10
4
以下であり、
前記澱粉の分子量分散度が1.5以上6.0以下であり、
前記澱粉の示差走査熱量測定による50℃~130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下である、ホイップクリーム用澱粉。
【請求項2】
前記澱粉の200℃、20分間加熱後の前記レジスタントスターチ含有量が50%以上である請求項
1に記載の澱粉。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホイップクリーム用澱粉を含むホイップクリーム。
【請求項4】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項
3に記載のホイップクリーム。
【請求項5】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記ホイップクリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、請求項
3または
4に記載のホイップクリーム。
【請求項6】
前記ホイップクリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、前記ホイップクリーム中の前記油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下である、請求項
3乃至
5のいずれか一項に記載のホイップクリーム。
【請求項7】
請求項
3乃至
6のいずれか一項に記載のホイップクリームを含む飲食品。
【請求項8】
ホイップクリームの製造方法であって、
請求項1または2に記載のホイップクリーム用澱粉をクリームに添加し、撹拌する工程を含む、前記製造方法。
【請求項9】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、請求項
8または
9に記載の製造方法。
【請求項11】
甘味料を前記クリームに添加する工程を含む、請求項
8乃至
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
ホイップクリームに
、請求項1または2に記載のホイップクリーム用澱粉を含有させる、ホイップクリームの保形性を向上させる方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載のホイップクリーム用澱粉を含むホイップクリーム用クリーム。
【請求項14】
前記クリーム中の前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項
13に記載のクリーム。
【請求項15】
前記クリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、請求項
13または
14に記載のクリーム。
【請求項16】
前記クリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、前記クリーム中の前記油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下である、請求項
13乃至
15のいずれか一項に記載のクリーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップクリーム用澱粉および当該澱粉を含むホイップクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイップクリームは、ケーキやプリン等の洋菓子のトッピングに広く使用されている。ホイップクリームは、生乳、牛乳等の乳由来の動物性油脂のクリームを用いた動物性ホイップクリームと乳脂肪以外の植物性油脂のクリームを用いた植物性ホイップクリームと、さらに、動物性油脂と植物性油脂のクリームを用いたコンパウンド型ホイップクリームがある。
【0003】
これらホイップクリームは、保管中にいわゆる「ダレ」という現象が生じ、そのため、例えば、ホイップクリームのデコレーションの形状を維持できなくなるといった課題があった。また、ケーキ等にデコレーションしたホイップクリームが輸送中の振動等で形状が崩れるという課題もあった。
【0004】
上記課題を解決するため、特許文献1(特開2005-278482号公報)では、こんにゃく粉、糖質及び澱粉を合わせて調製した乾燥こんにゃく加工品、及びゼラチンを含むことを特徴とするホイップクリーム用安定剤に関する発明が開示されている。この発明によれば、こんにゃく加工品とゼラチンを併用することで保形性を高めることができるとされている。また、こんにゃく加工品単独およびゼラチン単独では、保形性が充分でないことも開示されている(比較例1-4、1-5)。
【0005】
また、特許文献2(特開平8-154612号公報)では、特定のタンパク質、特定の乳化剤、特定の食物繊維および/または特定の化工澱粉を必須成分としたホイップクリーム組成物が保形性に優れることが開示されている。実施例においては、特定の食物繊維としてパインファイバー(難消化性デキストリン)、特定の化工澱粉としてはコルフロ67(アセチル化アジピン酸架橋デンプン)が使用されている。
【0006】
またさらに、特許文献3(特開2004-337166号公報)では、所定の澱粉分解物を含有するホイップクリームが開示されている。実施例および比較例では、デキストロース当量(DE)9.8~30.0の澱粉分解物が開示されており、ホイップクリームとしては、DE20.7および14.5(実施例11および比較例5)を用いたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-278482号公報
【文献】特開平8-154612号公報
【文献】特開2004-337166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載の技術については、後述するように難消化性デキストリンやアセチル化アジピン酸架橋デンプンでは、ショック時の保形性向上の効果は充分ではなかった。
【0009】
また、特許文献3には、保形性向上の効果についての開示はなく、また、本発明者らが検討したところ、後述するようにDE20の澱粉分解物では、ショック時の保形性向上の効果は充分ではなかった。
【0010】
そこで、本発明は、ホイップクリームの保形性を向上できるホイップクリーム用澱粉、当該澱粉を含むホイップクリーム並びにホイップクリーム用クリームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の結果、AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉がホイップクリームの保形性を向上させることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明の澱粉は、ホイップクリームに含有させることでホイップクリームの保形性を向上させることができる。たとえば、本発明の澱粉を用いることにより、振動等のショック時においても、保形性の優れたホイップクリームとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
すなわち、本実施形態によれば、AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が60%以上であり、
前記澱粉の分子量ピークが1×10
3
以上4×10
4
以下であり、
前記澱粉の分子量分散度が1.5以上6.0以下であり、
前記澱粉の示差走査熱量測定による50℃~130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下である、ホイップクリーム用澱粉が提供される。
【0017】
前記澱粉の200℃、20分間加熱後の前記レジスタントスターチ含有量が50%以上であることが好ましい。
【0018】
また、本実施形態によれば、前記本実施形態における澱粉を含むホイップクリームが提供される。
【0019】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0020】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記ホイップクリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0021】
前記ホイップクリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、前記ホイップクリーム中の前記油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態によれば、前記ホイップクリームを含む飲食品が提供される。
【0023】
また、本実施形態によれば、ホイップクリームの製造方法であって、
前記本実施形態における澱粉をクリームに添加し、撹拌する工程を含む、前記製造方法が提供される。
【0024】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0025】
前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0026】
本実施形態における製造方法は、甘味料を前記クリームに添加する工程を含むことが好ましい。甘味料を前記クリームに添加する工程は、澱粉をクリームに添加し、撹拌する工程と同じ工程であってもよいし別の工程であってもよい。
【0027】
また、本実施形態によれば、前記本実施形態における澱粉を含有させる、ホイップクリームの保形性を向上させる方法が提供される。
【0028】
また、本実施形態によれば、前記本実施形態における澱粉を含むホイップクリーム用クリームが提供される。
【0029】
前記クリーム中の前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0030】
前記クリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0031】
前記クリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、前記クリーム中の前記油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0032】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。例えば、「ホイップクリームの保形性改善剤」である。
【0033】
本実施形態のホイップクリーム用澱粉は、AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上であり、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは62%以上、さらにより好ましくは65%以上である。なお、レジスタントスターチ含有量の上限に制限はなく、100%以下であり、たとえば90%以下であってもよい。
ここで、レジスタントスターチ含有量は、試料乾燥重量当たりのレジスタントスターチ重量(w/w)として定義される。
【0034】
また、本実施形態のホイップクリーム用澱粉の分子量ピークは、保形性を一層向上させる観点から、好ましくは1×103以上4×104以下であり、より好ましくは2×103以上、さらに好ましくは3×103以上、さらにより好ましくは5×103以上である。また、上記分子量ピークは、より好ましくは3.6×104以下、さらに好ましくは2.5×104以下、さらにより好ましくは1.5×104以下である。
【0035】
また、本実施形態のホイップクリーム用澱粉の分子量分散度は、ホイップ用クリームがざらついた食感になることを低減する観点から、好ましくは1.5以上6.0以下、より好ましくは2.0以上5.5以下、さらに好ましくは3.0以上5.0以下である。
なお、分子量分散度とは、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnをいう。澱粉の分子量は、たとえば、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:プルラン換算)で測定することができる。
【0036】
また、本実施形態のホイップクリーム用澱粉の示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)による50℃~130℃における糊化エンタルピーは、ホイップ用クリームを事前に滅菌処理しても機能を維持する観点から、好ましくは10J/g以下、より好ましくは8J/g以下、さらに好ましくは6J/g以下である。なお、糊化エンタルピーの下限に制限はなく、たとえば1J/g以上であり、好ましくは3J/g以上である。
【0037】
また、本実施形態のホイップクリーム用澱粉の200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量は、ホイップ用クリームの滅菌処理後でも十分な保形性を保持させる観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは58%以上、よりさらに好ましくは60%以上であり、特に好ましくは63%以上である。当該レジスタントスターチ含有量の上限に制限はなく、100%以下であり、たとえば90%以下であってもよい。
【0038】
本実施形態のホイップクリーム用澱粉は、その製造方法は特に限定されないが、例えば、澱粉を酸処理、湿熱処理等の処理をすることにより製造することができ、好ましくは、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉の酸処理物や湿熱処理物であり、より好ましくは酸処理ハイアミロースコーンスターチである。
【0039】
アミロース高含有澱粉の酸処理物は、たとえば、アミロース含有量が40%以上であるアミロース高含有澱粉を原料とし、該原料を無機酸水溶液中で酸処理することにより得られ、たとえば、特開2011-84674号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
また、アミロース高含有澱粉の酸処理物のデキストロース当量(DE)は、保形性を一層向上させる観点から、例えば、0.001以上1以下であり、好ましくは0.01以上1以下である。
【0040】
なお、本明細書においてとくに記述がない場合、各用語の定義は以下の通りである。
スラリー濃度:澱粉スラリー重量に対する澱粉乾重量の割合(w/w)。
酸規定度:澱粉由来の水分も含めた、反応液中の水に対する酸の規定度。ここで、水分とは、澱粉湿重量に対する水分の割合(w/w)である。
レジスタントスターチ含有量:試料乾重量に対するレジスタントスターチの重量の割合(w/w)。
【0041】
原料として用いられるアミロース高含有澱粉の由来は、コーン、馬鈴薯、米、小麦、甘藷、タピオカなど問わないが、容易に入手できるという観点からは、コーン由来のものが好ましく、具体的には、ハイアミロースコーンスターチが好ましい。ハイアミロースコーンスターチは育種によりアミロース含有量を高めたコーンスターチであり、アミロース含有量は40%以上のもの、70%以上のものが現在入手可能である。澱粉中のアミロース含有量がたとえば40%以上であり、好ましくは60%以上であれば、いずれの澱粉も原料として使用できる。
【0042】
酸処理においては、原料の澱粉と水を反応装置に投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的に行う観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理を行う上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10%以上50%以下、好ましくは20%以上40%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0043】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0044】
酸処理反応は、たとえば酸処理時の無機酸濃度、反応温度および反応時間を特定の条件に設定する。以下、各条件について具体的に説明する。
【0045】
まず、酸処理の時間は、反応中の変質をより確実に抑制する観点から、酸処理に要する時間を、たとえば5日以内、好ましくは3日以内、より好ましくは2日以内とする。
【0046】
また、酸処理における無機酸濃度および反応温度については、たとえば以下の式(1)を満たす条件とする。
(5.54×(4.20)(T-40)/10) (-0.879)≦C<-0.000016×T3+0.00068×T2-0.028×T+4.3 (1)
(ただし、上記式(1)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)である。)
【0047】
無機酸規定度および反応温度がいずれも高すぎると、レジスタントスターチ含有量を充分高めることができない場合がある。一方、低すぎると、酸処理反応に時間がかかりすぎる場合がある。
【0048】
さらに、酸処理における反応時間は、反応温度および酸規定度の2つのファクターから以下の式(2)で一義的に決定することができる。
13.0×C (-1.14)×(1/4.2) (T-40)/10≦t≦180×C (-1.58)×(1/4.2) (T-40)/10 (2)
(ただし、上記式(2)において、T:反応温度(℃)、C:無機酸水溶液中の無機酸の規定度(N)、t:反応時間(時間)である。)
【0049】
上記式(2)は実験的に求められた式であり、酸規定度が2倍になると、反応の最短時間が1/2.2倍、最長時間が1/3倍になり、反応温度が10℃上昇すると最短時間、最長時間ともに1/4.2倍になるという関係に基づく式である。
【0050】
本実施形態のホイップクリームは、クリームを撹拌し、ホイップをすることにより得られる。クリームには、生乳・牛乳等の乳由来の動物性油脂を用いた動物性クリーム(動物性生クリーム、生クリームともいう。)と乳脂肪以外の植物性油脂を用いた植物性クリーム(植物性ホイップ、ホイップともいう。)がある。また、動物性油脂と植物性油脂を用いたコンパウンドタイプクリームもある。本実施形態で使用するクリームは、特に限定されないが、クリーム中の植物性クリーム含量が好ましくは10質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上100質量%以下であり、さらにより好ましくは45質量%以上100質量%以下である。
【0051】
また、前記クリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量は、保形性を十分に向上させる観点から、クリーム中の油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下が好ましく、30質量%以上100質量%以下がより好ましく、40質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、45質量%以上100質量%以下がさらにより好ましい。
【0052】
また、同様の観点から、本実施形態のホイップクリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量は、ホイップクリーム中の油脂全体に対して好ましくは10質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上100質量%以下であり、さらにより好ましくは45質量%以上100質量%以下である。
【0053】
また、本実施形態のホイップクリームにおける、AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉の含有量は、保形性を十分に向上させる観点から、クリーム100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましく、0.3質量部以上8質量部以下含むことがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下含むことがさらに好ましく、0.5質量部以上3質量部以下含むことが特に好ましい。また、クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下含むことがより好ましく、1質量部以上10質量部以下含むことがさらに好ましく、2質量部以上8質量部以下含むことがさらにより好ましい。
【0054】
また、同様の観点から、本実施形態のホイップクリーム中の、前記澱粉の含有量は、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上5質量%以下、さらにより好ましくは0.7質量%以上3.5質量%以下である。
【0055】
また、同様の観点から、ホイップクリームは、前記澱粉を、ホイップクリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下含むことがより好ましく、1質量部以上10質量部以下含むことがさらに好ましく、2質量部以上8質量部以下含むことがさらにより好ましい。
【0056】
本実施形態のホイップクリーム用クリームは、AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含有する。クリーム中の前記澱粉の含有量は、保形性を十分に向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上5質量%以下、さらにより好ましくは0.7質量%以上3.5質量%以下である。
また、使用するクリームは、特に限定されず、市販のクリームを使用することもできる。
【0057】
前記クリーム中の植物性クリーム含有量は、特に限定されないが、保形性を十分に向上させる観点から、クリーム全体に対して好ましくは10質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上100質量%以下であり、さらにより好ましくは45質量%以上100質量%以下である。
【0058】
また、同様の観点から、前記クリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量は、クリーム中の油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下が好ましく、30質量%以上100質量%以下がより好ましく、40質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、45質量%以上100質量%以下がさらにより好ましい。
【0059】
このようなクリームに前記澱粉を添加することで、本実施形態のホイップクリーム用クリームを製造することができ、ホイップクリームは、前記澱粉を、前記クリーム100質量部に対し、保形性を十分に向上させる観点から、0.1質量部以上10質量部以下含むことが好ましく、0.3質量部以上8質量部以下含むことがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下含むことがさらに好ましく、0.5質量部以上3質量部以下含むことが特に好ましい。また、同様の観点から、ホイップクリームは、前記澱粉を、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下含むことがより好ましく、1質量部以上10質量部以下含むことがさらに好ましく、2質量部以上8質量部以下含むことがさらにより好ましい。
【0060】
本実施形態のホイップクリームを製造するに際し、本実施形態のホイップクリーム用澱粉を添加するタイミングは特に問わないが、ホイップする前のクリームに添加することが好ましく、その後、殺菌工程を経てもよい。
【0061】
また、ホイップクリームを製造する際のホイップをする方法については、特に限定されず、手作業でも良いし、市販の装置(例えば、工業用攪拌機、ホイッパー、家庭用ハンドミキサー等)を用いて、ホイップをしてもよい。
【0062】
本実施形態のホイップクリームは、本実施形態のホイップクリーム用澱粉の他に、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて、乳製品、甘味料、乳化剤、安定剤、香料、保存料、酸化防止剤、ビタミン、ミネラル等の添加剤を適宜用いてもよい。
【0063】
甘味料としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール等)、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アドバンテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、サッカリン、ステビア抽出物等があげられる。
【0064】
甘味料の含有量は、特に限定されないが、味質への違和感を生じさせない観点から、例えば、ホイップクリーム中に0.1質量%以上30質量%以下であり、好ましくは2質量%以上20質量%以下である。
【0065】
本実施形態のホイップクリームは、冷蔵保存(0℃超10℃以下)及び/または冷凍保存(-100℃以上0℃以下)をするものが好ましく、特にホイップクリームを造形後、冷蔵保存及び/または冷凍保存をするものが好ましい。
【0066】
本実施形態のホイップクリームは、そのまま食すこともできるが、他の飲食品と組み合わせることもできる。そのような飲食品の例として、クッキー、ビスケット、ケーキ、スポンジケーキ、カステラ、パンケーキ、クレープ等の焼き菓子、プリン、チョコレート、ゼリー等の砂糖菓子、団子、和生菓子、饅頭、ロールケーキ、シュークリーム等の洋生菓子、パフェ、サンドイッチ、菓子パン等のパン類、コーヒー、メロンソーダ等の飲料などが挙げられる。
【0067】
本発明は、以下の態様を含む。
1. AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である、ホイップクリーム用澱粉。
2. 前記澱粉の分子量ピークが1×103以上4×104以下である1.に記載の澱粉。
3. 前記澱粉の分子量分散度が1.5以上6.0以下である1.又は2.に記載の澱粉。
4. 前記澱粉の示差走査熱量測定による50℃~130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下である1.乃至3.のいずれか一項に記載の澱粉。
5. 前記澱粉の200℃、20分間加熱後の前記レジスタントスターチ含有量が50%以上である1.乃至4.のいずれか一項に記載の澱粉。
6. AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含むホイップクリーム。
7. 前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、6.に記載のホイップクリーム。
8. 前記澱粉が、前記ホイップクリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、6.又は7.に記載のホイップクリーム。
9. 前記ホイップクリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、10質量%以上100質量%以下である、6.乃至8.のいずれか一項に記載のホイップクリーム。
10. 6.乃至9.のいずれか一項に記載のホイップクリームを含む飲食品。
11. ホイップクリームの製造方法であって、
AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉をクリームに添加し、撹拌する工程を含む、前記製造方法。
12. 前記澱粉が前記クリーム100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下である、11.に記載の製造方法。
13. 前記澱粉が前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、11.又は12.に記載の製造方法。
14. 甘味料を前記クリームに添加する、11.乃至13.のいずれか一項に記載の製造方法。
15. ホイップクリームにAOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含有させることを特徴とする、ホイップクリームの保形性を向上させる方法。
16. AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含むホイップクリーム用クリーム。
17. 前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、16.に記載のクリーム。
18. 前記澱粉が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、16.又は17.に記載のクリーム。
19. 前記クリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、10質量%以上100質量%以下である、16.乃至18.のいずれか一項に記載のクリーム。
【実施例】
【0068】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量(以下、「RS含有量」という場合がある。)が50%以上である澱粉の製造例1)
特開2011-84674号公報に記載の実施例1に準じて、RS含有量が50%以上である澱粉(澱粉A)を製造した。
具体的には、ハイアミロースコーンスターチHS-7 classVII(株式会社J-オイルミルズ社製、水分15.0%、アミロース含有量70%)を用い、スラリー重量に対する澱粉乾重量が40%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを320g調製した。そこに、懸濁しながら6.67Nに調製した塩酸水溶液80mLを加え、40℃に調整した。このとき、澱粉水分を含めた反応水当たりの塩酸の規定度は1.96Nとなった。塩酸水溶液を加えたのち、40℃に達した時点を開始時とした。24時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、レジスタントスターチ高含有澱粉である酸処理ハイアミロースコーンスターチ(澱粉A)を得た。澱粉AのDEは0.1であった。なお、酸規定度とは最終的な反応液における澱粉水分を含めた反応水当たりの酸規定度を意味する。
【0070】
得られた澱粉Aの分析結果を以下に示す。
RS含有量:68%
分子量ピーク:1.2×104
分子量分散度:4.0
示差走査熱量測定(DSC)による糊化エンタルピー:4.9J/g
200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量:67%
ここで、分子量分布、糊化エンタルピー、および、200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量の測定は、それぞれ以下の方法でおこなった。
【0071】
(分子量分布の測定)
分子量分布(分子量ピークおよび分子量分散度)の測定は、東ソー社製HPLCユニット(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)を使用した。分析条件は、以下の通りである。
カラム:TSKgel α-M(内径7.8mm、長さ30cm)(東ソー社製)2本
流速:0.5ml/min
移動相:5mM NaNO3/ジメチルスルホキシド:水(9:1)
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL(試料濃度1.0mg/mL移動相)
【0072】
検出器のデータは専用のソフトウェア(マルチステーションGPC-8020 modelIIデータ収集version5.70、東ソー社製)を用いて収集し、分子量ピーク、分子量分散度を計算した。検量線は分子量既知のプルラン(昭和電工社製、Shodex Standard P-82)を使用して作成した。
【0073】
(示差走査熱量測定(DSC)による糊化エンタルピーの測定)
DSCの測定には、マックサイエンス社製DSC3100を使用した。試料15mgと蒸留水45μLを70μL容量のアルミセル中に入れ、蓋をして密閉し、室温で3時間以上放置し、吸水させた。リファレンスにはブランクセルを用いた。昇温は、室温から130℃まで10℃/minの速度でおこなった。得られたDSCチャートの50℃~130℃における吸熱ピークの面積より測定される熱量である糊化エンタルピーを澱粉乾燥重量当たりの糊化熱(J/g)として定義した。
【0074】
(200℃、20分間加熱後のRS含有量の測定)
水分が30%となるよう澱粉と水を混ぜ、Wonder Brender(大阪ケミカル社製)で3秒間の混合を2回行った。その後、ゴムベラで側面および底部に付着した澱粉をかき落とし、再度3秒間の混合を1回行った。この調湿した澱粉6gを取り、底面の直径が52mm、開口部の直径が72mm、高さが36mmのステンレス製カップに詰め、同じ大きさのステンレス製カップを上に重ね、10秒間上から押し固めた。重ねたステンレス製カップを外し、試料を200℃の送風定温乾燥機(EYELA WFO-40、東京理化器械社製)に入れ20分間加熱した。加熱後の試料を粉砕し、60メッシュの篩に通し、AOAC公定法2002.02による測定法により、レジスタントスターチ含有量を測定した。
【0075】
(RS含有量が50%以上である澱粉の製造例2)
以下のように、RS含有量が50%以上である澱粉(澱粉B)を製造した。
ハイアミロースコーンスターチHS-7 classVII(株式会社J-オイルミルズ社製、水分15.0%、アミロース含有量70%)を用い、スラリー重量に対する澱粉乾重量が40%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを320g調製した。そこに、懸濁しながら2.05Nに調製した塩酸水溶液80mLを加え、50℃に調整した。このとき、澱粉水分を含めた反応水当たりの塩酸の規定度は0.6Nとなった。塩酸水溶液を加えたのち、50℃に達した時点を開始時とした。100時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、レジスタントスターチ高含有澱粉である酸処理ハイアミロースコーンスターチ(澱粉B)を得た。なお、酸規定度とは最終的な反応液における澱粉水分を含めた反応水当たりの酸規定度を意味する。
【0076】
得られた澱粉Bの分析結果を以下に示す。
RS含有量:66%
分子量ピーク:0.5×104
分子量分散度:1.9
示差走査熱量測定(DSC)による糊化エンタルピー:2.7J/g
200℃、20分間加熱後のレジスタントスターチ含有量:64%
【0077】
(実施例1~4、比較例1~6)
実験に際し、上述の澱粉Aおよび澱粉Bの他、以下の製品を使用した。
【0078】
(添加成分)
アセチル化アジピン酸架橋デンプン(ジェルコールCT-2、株式会社J-オイルミルズ社製;RS含有量1%以下)
α化オクテニルコハク酸リン酸架橋デンプン(NクリーマーF、イングレディオン・ジャパン株式会社製;RS含有量1%以下)
デキストリン(サンデックス#180、三和澱粉工業株式会社製、デキストロース当量(DE)20;RS含有量0%)
難消化性デキストリン(パインファイバー、松谷化学工業株式会社製;RS含有量0%)
米澱粉(ミクロパールF、上越スターチ株式会社製;RS含有量1%以下)
微結晶セルロース(セオラスDX-3、旭化成ケミカルス株式会社製;RS含有量0%)
【0079】
(クリーム)
植物性クリーム(商品名:ホイップ 植物性脂肪、植物性油脂100%(41.6g/100g)、製造者:雪印メグミルク株式会社)
動物性クリーム(商品名:フレッシュ 北海道産生クリーム使用、動物性油脂100%(44.3g/100g)、製造者:雪印メグミルク株式会社)
【0080】
(ホイップクリームの作製方法)
植物性クリームを5℃で一晩調温し、表3の配合で各原料を卓上ミキサー(HOBART CORPORATION、MODEL N50)のボウルに投入した。ホイッパーを接続し、撹拌速度を2速に設定し、常温(26℃程度)の室内でホイップ状態になるまで撹拌し、ホイップクリームを得た。
【0081】
(調製時のホイップクリームの評価)
得られたホイップクリームを3時間、5℃で調温した後、ホイップクリームの口溶け、及びなめかさの官能評価をした。また、星形の金口で絞った後の形状(絞り時の形状)の評価もおこなった。いずれの評価も表1の基準で、3名での合議の上、決定した。
【0082】
【0083】
(絞り後のホイップクリームの冷蔵安定性の評価)
上記で得られたホイップクリームを3時間、5℃で調温した後、星形の金口でホイップクリームをステンレスのバットに絞った。バットを食品用フィルムラップで包み、5℃、24時間保管後、離水及び形状を目視で評価した。また、保形性(ショック付与時)は、前記バットを3回卓上に落下させた後、その形状を目視することで、評価をおこなった。いずれの評価も表2の基準で、3名での合議の上、決定した。
【0084】
(絞り後のホイップクリームの冷解凍安定性の評価)
上記で得られたホイップクリームを3時間、5℃で調温した後、星形の金口でホイップクリームをステンレスのバットに絞った。バットを食品用フィルムラップで包み、-30℃のショックフリーザーで冷凍後、-20℃の冷凍庫で24時間保管した。5℃で6時間解凍後、離水及び形状を目視で評価した。また、保形性(ショック付与時)は、前記バットを3回卓上に落下させた後、その形状を目視することで、評価をおこなった。いずれの評価も表2の基準で、3名での合議の上、決定した。
【0085】
【0086】
上記評価結果を表3に示す。
【0087】
【0088】
各実施例の澱粉では、調製時のホイップクリームの口溶けやなめらかさが良好であり、さらに、冷蔵安定性、冷解凍安定性に優れていた。とりわけ、ショック付与時の保形性に優れることから、流通における振動等の生じる場面において、特に有用であることが示された。
一方、アセチル化アジピン酸架橋デンプン等のRS含有量が50%未満である澱粉や難消化性デキストリン等では、充分な保形性を得ることができなかった。
【0089】
(製造例1)
植物性クリーム300g、動物性クリーム300gを混合し、得られたコンパウンドクリームに、澱粉A 6gを配合し、混合し、ホイップクリーム用クリームを製造した。
【0090】
(製造例2)
植物性クリーム300g、動物性クリーム300gを混合し、得られたコンパウンドクリームを5℃、一晩調温した。前記コンパウンドクリーム600gに、砂糖60g、澱粉A 6gを配合し、卓上ミキサー(HOBART CORPORATION、MODEL N50)のボウルに投入した。ホイッパーを接続し、撹拌速度を2速に設定し、常温(26℃程度)の室内でホイップ状態になるまで撹拌し、ホイップクリームを得た。
当該ホイップクリームは、保形性・口どけが良く、なめらかであった。
【0091】
(製造例3)
植物性クリーム300g、動物性クリーム300gを混合し、得られたコンパウンドクリームを5℃、一晩調温した。前記コンパウンドクリーム600gに、砂糖60g、澱粉A 3gを配合し、卓上ミキサー(HOBART CORPORATION、MODEL N50)のボウルに投入した。ホイッパーを接続し、撹拌速度を2速に設定し、常温(26℃程度)の室内でホイップ状態になるまで撹拌し、ホイップクリームを得た。
当該ホイップクリームは、保形性・口どけが良く、なめらかであった。
【0092】
(製造例4(飲食品))
実施例1で得られたホイップクリームをプリンにトッピングをした。
【0093】
(製造例5(飲食品))
実施例1で得られたホイップクリームを用いて、ロールケーキを作成した。
【0094】
この出願は、2016年12月27日に出願された日本出願特願2016-252398号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
1. AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である、ホイップクリーム用澱粉。
2. 前記澱粉の分子量ピークが1×10
3
以上4×10
4
以下である1.に記載の澱粉。
3. 前記澱粉の分子量分散度が1.5以上6.0以下である1.又は2.に記載の澱粉。
4. 前記澱粉の示差走査熱量測定による50℃~130℃における糊化エンタルピーが10J/g以下である1.乃至3.のいずれか一つに記載の澱粉。
5. 前記澱粉の200℃、20分間加熱後の前記レジスタントスターチ含有量が50%以上である1.乃至4.のいずれか一つに記載の澱粉。
6. AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含むホイップクリーム。
7. 前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、6.に記載のホイップクリーム。
8. 前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記ホイップクリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、6.又は7.に記載のホイップクリーム。
9. 前記ホイップクリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、前記ホイップクリーム中の前記油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下である、6.乃至8.のいずれか一つに記載のホイップクリーム。
10. 6.乃至9.のいずれか一つに記載のホイップクリームを含む飲食品。
11. ホイップクリームの製造方法であって、
AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉をクリームに添加し、撹拌する工程を含む、前記製造方法。
12. 前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下である、11.に記載の製造方法。
13. 前記ホイップクリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、11.又は12.に記載の製造方法。
14. 甘味料を前記クリームに添加する工程を含む、11.乃至13.のいずれか一つに記載の製造方法。
15. ホイップクリームにAOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含有させる、ホイップクリームの保形性を向上させる方法。
16. AOAC公定法2002.02のレジスタントスターチ測定法によるレジスタントスターチ含有量が50%以上である澱粉を含むホイップクリーム用クリーム。
17. 前記クリーム中の前記澱粉の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、16.に記載のクリーム。
18. 前記クリーム中の前記澱粉の含有量が、前記クリーム中の油脂100質量部に対し、0.2質量部以上15質量部以下である、16.又は17.に記載のクリーム。
19. 前記クリーム中の油脂に含まれる植物性油脂の含有量が、前記クリーム中の前記油脂全体に対して10質量%以上100質量%以下である、16.乃至18.のいずれか一つに記載のクリーム。