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  • 特許-光ファイバおよび光ファイバの製造方法 図1
  • 特許-光ファイバおよび光ファイバの製造方法 図2
  • 特許-光ファイバおよび光ファイバの製造方法 図3
  • 特許-光ファイバおよび光ファイバの製造方法 図4
  • 特許-光ファイバおよび光ファイバの製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】光ファイバおよび光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/036 20060101AFI20220207BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220207BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20220207BHJP
   C03B 37/018 20060101ALI20220207BHJP
   C03B 37/027 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
G02B6/036
G02B6/02 356A
C03B37/012 A
C03B37/018 A
C03B37/027 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019020946
(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2020129037
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/093187(WO,A2)
【文献】特開2013-235261(JP,A)
【文献】特開2007-033466(JP,A)
【文献】特表2010-526749(JP,A)
【文献】国際公開第2004/092794(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104316994(CN,A)
【文献】国際公開第2016/031901(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/104724(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138736(WO,A2)
【文献】特開2011-203552(JP,A)
【文献】特表2010-503019(JP,A)
【文献】特開2012-212115(JP,A)
【文献】特開2013-242545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
6/10
6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心コア部と、
前記中心コア部の外周に形成された中間層と、
前記中間層の外周に形成されたトレンチ層と、
前記トレンチ層の外周に形成されたクラッド部と、
を備え、前記クラッド部に対する、前記中心コア部の比屈折率差をΔ1、前記中間層の比屈折率差をΔ2、前記トレンチ層の比屈折率差をΔ3とすると、Δ1>Δ2>Δ3かつ0>Δ3が成り立ち、Δ1が0.37%以上0.40%以下であり、Δ2が-0.05%以上0.05%以下であり、|Δ3|が0.25%以下であり、Δ1×|Δ3|が0.078%以下であり、前記トレンチ層の内径を2b、外径を2cとしたときに、(c-b)が4.5μm未満である
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記Δ1×|Δ3|が0.034%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記(c-b)が4.1μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記中心コア部のコア径を2a、前記トレンチ層の内径を2bとしたときに、b/aが1.8以上3.6以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の光ファイバ。
【請求項5】
実効カットオフ波長が1260nm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の光ファイバ。
【請求項6】
波長1310nmにおけるモードフィールド径が8.6μm以上9.5μm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の光ファイバ。
【請求項7】
直径20mmで曲げた場合の波長1550nmにおける曲げ損失が1.59dB/m以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の光ファイバ。
【請求項8】
零分散波長が1300nm以上1324nm以下あり、前記零分散波長での分散スロープが0.092ps/nm/km以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の光ファイバ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一つに記載の光ファイバの製造方法であって、
光ファイバ母材を製造する工程と、
前記光ファイバ母材を加熱溶融して線引きして前記光ファイバを製造する工程と、
を含み、前記光ファイバ母材を製造する工程において、気相軸付法を用いて、少なくとも前記中心コア部、前記中間層、前記トレンチ層、および前記クラッド部の一部となる部分を形成する
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバおよび光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばITU-T(国際電気通信連合)G.657.A2などで定義される、低曲げ損失特性を有するシングルモード光ファイバを実現するために、トレンチ構造を備える3層構造の光ファイバが開示されている(特許文献1~6)。3層構造の光ファイバは、たとえば、中心コア部と、中心コア部の外周に形成された中間層と、中間層の外周に形成されたトレンチ層と、トレンチ層の外周に形成されたクラッド部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4833071号公報
【文献】特開2008-139887号公報
【文献】特開2010-181641号公報
【文献】特開2012-212115号公報
【文献】特開2013-242545号公報
【文献】特開2013-235261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3層構造の光ファイバの光学特性は、中心コア部の比屈折率差Δ1、中間層の比屈折率差Δ2、トレンチ層の比屈折率差Δ3、中心コア部のコア径2a、トレンチ層の内径(すなわち中間層の外径)2b、外径2cなどの構造パラメータの設定によって設計される。なお、通常、Δ3は負値であり、Δ2はΔ1よりも小さい値である。特許文献1~6においても、これらの構造パラメータの値について様々な組み合わせが開示されている。
【0005】
しかしながら、開示されている光ファイバにおいても、製造性の観点から改善の余地がある。たとえば、Δ1が高い設計であると、製造の際に屈折率を高めるドーパントの使用量が多くなる。同様に、Δ3の絶対値が高い設計や、中間層の幅(外径と内径との差)が高い設計であると、製造の際に屈折率を低めるドーパントの使用量が多くなる。一方、特にΔ1については、低すぎる設計であると、ドーパントの使用量の緻密な制御が必要となり、また外乱の影響を受けやすくなるので、製造誤差が大きくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、低曲げ損失特性を有し、かつ製造性が高い光ファイバおよび光ファイバの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光ファイバは、中心コア部と、前記中心コア部の外周に形成された中間層と、前記中間層の外周に形成されたトレンチ層と、前記トレンチ層の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記クラッド部に対する、前記中心コア部の比屈折率差をΔ1、前記中間層の比屈折率差をΔ2、前記トレンチ層の比屈折率差をΔ3とすると、Δ1>Δ2>Δ3かつ0>Δ3が成り立ち、Δ1が0.36%以上0.40%以下であり、Δ2が-0.05%以上0.05%以下であり、|Δ3|が0.25%以下であり、Δ1×|Δ3|が0.08%以下であり、前記トレンチ層の内径を2b、外径を2cとしたときに、(c-b)が4.5μm未満であることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る光ファイバは、前記中心コア部のコア径を2a、前記トレンチ層の内径を2bとしたときに、b/aが1.8以上3.6以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る光ファイバは、前記中心コア部のコア径を2aとしたときに、2aが7.5μm以上9.0μm以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバは、実効カットオフ波長が1260nm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバは、波長1310nmにおけるモードフィールド径が8.6μm以上9.5μm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光ファイバは、直径20mmで曲げた場合の波長1550nmにおける曲げ損失が1.59dB/m以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る光ファイバは、零分散波長が1300nm以上1324nm以下あり、前記零分散波長での分散スロープが0.092ps/nm/km以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記光ファイバの製造方法であって、光ファイバ母材を製造する工程と、前記光ファイバ母材を加熱溶融して線引きして前記光ファイバを製造する工程と、を含み、前記光ファイバ母材を製造する工程において、気相軸付法を用いて、少なくとも前記中心コア部、前記中間層、前記トレンチ層、および前記クラッド部の一部となる部分を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれは、低曲げ損失特性を有し、かつ製造性が高い光ファイバを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態1に係る光ファイバの模式的な断面図である。
図2図2は、図1に示す光ファイバの屈折率プロファイルを示す図である。
図3図3は、トレンチ幅(c-b)とマクロベンド損失との関係を示す図である。
図4図4は、Δ1とΔ2とマクロベンド損失との関係を示す図である。
図5図5は、Δ3とトレンチ幅とマクロベンド損失との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付し、適宜説明を省略している。また、本明細書においては、カットオフ(Cutoff)波長とは、実効カットオフ波長であり、ITU-T(国際電気通信連合)G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長を意味する。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはG.650.1およびG.650.2における定義、測定方法に従うものとする。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光ファイバの模式的な断面図である。光ファイバ10は、石英系ガラスからなり、中心コア部11と、中心コア部11の外周に形成された中間層12と、中間層12の外周に形成されたトレンチ層13と、トレンチ層13の外周に形成されたクラッド部14と、を備える。
【0019】
図2は、光ファイバ10の屈折率プロファイルを示す図である。プロファイルP11は中心コア部11の屈折率プロファイルであり、いわゆるステップインデックス型を有する。プロファイルP12は中間層12の屈折率プロファイルである。プロファイルP13はトレンチ層13の屈折率プロファイルである。プロファイルP14はクラッド部14の屈折率プロファイルである。
【0020】
光ファイバ10の構造パラメータについて説明する。まず、中心コア部11のコア径は2aである。また、中間層12の外径すなわちトレンチ層13の内径は2bであり、トレンチ層13の外径は2cである。したがって、トレンチ層13の幅(トレンチ幅)は(c-b)である。また、クラッド部14の屈折率に対する中心コア部11の最大屈折率の比屈折率差はΔ1である。クラッド部14の屈折率に対する中間層12の屈折率の比屈折率差はΔ2である。クラッド部14の屈折率に対するトレンチ層13の屈折率の比屈折率差はΔ3である。Δ1、Δ2、Δ3については、Δ1>Δ2>Δ3かつ0>Δ3が成り立つ。すなわち、Δ3は負値であり、これによりトレンチ層13は光ファイバ10の低曲げ損失特性を向上させる。
【0021】
光ファイバ10の構成材料を例示すると、中心コア部11は、ゲルマニウム(Ge)などの屈折率を高める屈折率調整用のドーパントを添加した石英ガラスからなる。トレンチ層13は、フッ素(F)などの屈折率を低めるドーパントが添加された石英ガラスからなる。クラッド部14は、GeやFなどの屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。中間層12は、純石英ガラスからなってもよいし、屈折率調整用のドーパントがある程度添加されていてもよい。ただし、構成材料やドーパントは、上述したΔ1、Δ2、Δ3に関する不等式が成立すれば、特に限定はされない。
【0022】
この光ファイバ10では、Δ1、Δ2、Δ3、トレンチ幅(c-b)について、Δ1が0.36%以上0.40%以下であり、Δ3の絶対値である|Δ3|が0.25%以下であり、Δ1×|Δ3|が0.08%以下であり、トレンチ幅(c-b)が4.5μm未満である。また、Δ2は、-0.05%以上0.05%以下である。このように、Δ1が0.36%以上0.40%以下であることによって、製造の際に屈折率を高めるドーパントの使用量を抑制でき、かつドーパントの使用量の制御が容易であり、外乱に対しても比較的強くなるので製造誤差を抑制できる。また、|Δ3|が0.25%以下かつトレンチ幅(c-b)が4.5μm未満であることによって、屈折率を低めるドーパントの使用量を抑制できる。また、トレンチ幅(c-b)が4.5μm未満であることによって、トレンチ幅(c-b)と中心コア部11のコア半径を同程度とできるので、中心コア部の製造条件を参考にした製造条件を用いやすくなり、製造が容易になる。さらには、Δ1×|Δ3|が0.08%以下であることによって、ドーパントの使用量の抑制の効果と制御の容易性の効果と製造誤差の抑制の効果とを効果的に高めることができるので、光ファイバ10は製造性が高いものとなる。
【0023】
|Δ3|については、0.25%未満、さらには0.20%以下であれば、ドーパントの使用量を一層抑制できる。また、0.10%以上であれば、ドーパントの使用量の制御が容易であり、製造誤差を抑制できる。その結果、光ファイバ10は一層製造性が高いものとなる。なお、|Δ3|が0.10%以上の場合、Δ1×|Δ3|は0.034%以上である。したがって、Δ1×|Δ3|は0.034%以上であることがより好ましい。
【0024】
後に詳述するが、その他の構造パラメータに関して、好ましい範囲を例示すると、b/aは、たとえば1.8以上3.6以下である。また、2aは7.5μm以上9.0μm以下である。
【0025】
これらの構造パラメータの値を適宜組み合わせることによって、後に詳述するように、光ファイバ10の波長1310nmにおけるモードフィールド径(MFD)を8.6μm以上9.5μm以下とできる。また、光ファイバ10の実効カットオフ波長を1260nm以下とできる。また、光ファイバ10を直径20mmで曲げた場合の波長1550nmにおける曲げ損失(以下、直径20mmで曲げた場合の波長1550nmにおける曲げ損失を、単にマクロベンド損失と記載する場合がある)を1.59dB/m以下とできる。さらには、光ファイバ10の零分散波長を1300nm以上1324nm以下、かつ零分散波長での分散スロープを0.092ps/nm/km以下とできる。その結果、光ファイバ10を、たとえばITU-T G.652に規定される規格(以下、G.652規格と記載する場合がある)を満たすものとできる。さらに、MFDを9.2μm以下とすれば、光ファイバ10を、G.657A規格、特にG.657A2規格を満たすものとできる。なお、マクロベンド損失の1.59dB/mという値は、G.657A2規格における0.1dB/turnの値を、単位を変換して表したものである。また、構造パラメータの値を適宜組み合わせて、実効カットオフ波長が1530nm以下になるようにし、G.654規格を満たすものにしてもよい。
【0026】
以下、シミュレーション計算結果を用いて具体的に説明する。図4は、シミュレーション計算に基づく、トレンチ幅(c-b)とマクロベンド損失との関係を示す図である。菱形はデータ点を示し、実線はデータ点を指数関数で近似した曲線を示す。データ点は、構造パラメータであるΔ1、Δ2、Δ3、a、b、cを、|Δ3|が0.25%以下となるように様々に設定して計算した結果を示す。|Δ3|を0.25%以下としながらマクロベンド損失を低減するためには、トレンチ幅(c-b)は大きい方が好ましい。したがって、トレンチ幅(c-b)を4.5μm未満とするためには、構造パラメータを適切に設定することが必要である。
【0027】
図4は、Δ1とΔ2とマクロベンド損失との関係を示す図である。図4においては、Δ3と(c-b)とb/aについて、それぞれ|Δ3|が0.25%以下、Δ1×|Δ3|が0.08%以下、(c-b)が4.5μm未満、b/aが1.8以上3.6以下を満たすように変化させた条件において、マクロベンド損失の平均値を示している。図4から解るように、Δ1が0.36%以上0.40%以下かつΔ2が-0.05%以上0.05%以下の条件において、マクロベンド損失が1.59dB/m以下となる場合がある。なお、製造ばらつきなども考慮すると、マクロベンド損失が1.5dB/m以下となる構造パラメータの組み合わせを選択することが好ましい。
【0028】
なお、上述したように、図4はマクロベンド損失の平均値を示しているので、図4においてマクロベンド損失が1.5dB/m以下となっていないΔ1とΔ2との組み合わせであっても、他の構造パラメータの最適化によってマクロベンド損失が1.5dB/m以下となる場合がある。
【0029】
たとえば、図5は、Δ3とトレンチ幅とマクロベンド損失との関係を示す図である。図5においては、Δ1を0.36%に設定し、Δ2を0.02%に設定している。図4では、Δ1が0.36%、Δ2が0.02%の場合は、マクロベンド損失が1.5~2dB/mである。しかし、図5から解るように、Δ1が0.36%、Δ2が0.02%であっても、Δ3と(c-b)との組み合わせを適宜設定することで、マクロベンド損失を1.5dB/m以下にできる。
【0030】
また、本発明者の鋭意検討によれば、実効カットオフ波長、MFD、零分散波長、分散スロープについても、Δ1が0.36%以上0.40%以下であり、Δ2が-0.05%以上0.05%以下であり、|Δ3|が0.25%以下であり、Δ1×|Δ3|が0.08%以下であり、(c-b)が4.5μm未満である条件のもとで、実効カットオフ波長は1260nm以下、MFDは波長1310nmにおいて8.6μm以上9.5μm以下、零分散波長は1300nm以上1324nm以下、分散スロープは零分散波長において0.092ps/nm/km以下であるという、G.657A2規格の特性またはそれに近い特性を実現できることを確認した。なお、上記の特性を実現するには、b/aが1.8以上3.6以下であることが好ましく、2aが7.5μm以上9.0μm以下であることが好ましいが、b/a、2aについてはこれらの範囲には限定されない。
【0031】
つづいて、幾つかの構造パラメータを変化させたときの光ファイバ10の光学特性の変化について、シミュレーション計算結果を用いて具体的に説明する。まず、表1に示すNo.1~No.8までの構造パラメータの組み合わせについて、その光学特性の変化を計算した。No.1からNo.8では、Δ1は0.36%~0.40%で変化させている。Δ2は-0.05%~0.05%で変化させている。|Δ3|は0.2%~0.22%、Δ1×|Δ3|は0.08%~0.074%で変化させている。b/aは1.8~3.6で変化させている。2aは7.9μm~8.8μmで変化させている。(c-b)は2.87μm~4.46μmで変化させている。
【0032】
【表1】
【0033】
表2は、No.1~No.8についてシミュレーション計算した結果としての光学特性のうち、零分散波長、分散スロープ、MFD、Cutoff波長、マクロベンド損失の値を示す。なお、表2では、規格として、G.657A2規格の規格値も合わせて示してある。表1、2から解るように、No.1~No.8のいずれも、シミュレーション計算結果がG.657A2規格を満たすことが確認された。
【0034】
【表2】
【0035】
なお、本実施形態に係る光ファイバ10は、光ファイバ母材を製造する工程と、光ファイバ母材を加熱溶融して線引きして光ファイバを製造する工程とを含む公知の製造方法にて製造できる。このとき、光ファイバ母材は、光ファイバ10の中心コア部11、中間層12、トレンチ層13、およびクラッド部14となる部分を含むものである。光ファイバ母材は、気相軸付(VAD)法、内付気相堆積(MCVD)法、プラズマ気相堆積(PCVD)法、ゾルゲル法などを用いて製造できる。たとえば、VAD法を用いて、光ファイバ10の中心コア部11、中間層12、トレンチ層13、およびクラッド部14の一部となる部分を形成し、これにクラッド部14の残りの部分となるガラス層をたとえば外側気相堆積(OVD)法を用いて形成することで、光ファイバ母材を製造できる。
【0036】
表3は、VAD法とOVD法とを用いて光ファイバ母材を製造し、さらに光ファイバ母材を線引きして製造した試作光ファイバの光学特性の測定結果を示す。なお、試作光ファイバNo.1、No.2は、それぞれ、表1のNo.1、No.2の構造パラメータの組み合わせとなるように設計したものである。その結果、試作光ファイバNo.1、No.2のいずれも、零分散波長、分散スロープ、MFD、Cutoff波長、マクロベンド損失について、G.657A2規格を満たし、かつ伝送損失も0.2dB/km以下と良好であることが確認された。また、零分散波長、分散スロープ、MFD、Cutoff波長、マクロベンド損失については、表2に示すNo.1、No.2のシミュレーション計算による光学特性と、試作光ファイバNo.1、No.2の光学特性とが殆ど一致していることも確認した。
【0037】
【表3】
【0038】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 光ファイバ
11 中心コア部
12 中間層
13 トレンチ層
14 クラッド部
P11、P12、P13、P14 プロファイル
図1
図2
図3
図4
図5