(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】通信システム、通信システムの制御方法、および、通信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 41/12 20220101AFI20220207BHJP
【FI】
H04L41/12
(21)【出願番号】P 2019116813
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】服部 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 卓弘
(72)【発明者】
【氏名】有馬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】濱田 浩樹
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-205929(JP,A)
【文献】特開平02-299339(JP,A)
【文献】特開平02-001654(JP,A)
【文献】特開2010-268342(JP,A)
【文献】特開2008-028981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置が階層構造を有するように接続されて構成される通信システムにおいて、
前記通信装置は、
自身が属するネットワークの階層を示す階層情報を記憶する記憶手段と、
自身が属する階層と同じ階層に対しては前記階層情報を付与した所定のパケットを送信し、自身が属する階層よりも高いまたは低い階層に対しては当該高いまたは低い階層を示す前記階層情報を付与した前記所定のパケットを送信する送信手段と、
他の前記通信装置から送信された前記階層情報が付与された前記所定のパケットを受信する受信手段と、
他の前記通信装置から前記所定のパケットを受信した場合に、前記所定のパケットに付与された前記階層情報が前記記憶手段に記憶した前記階層情報よりも高いまたは低い階層を示す場合には、前記所定のパケットに付与された前記階層情報によって、前記記憶手段に記憶された前記階層情報を更新する更新手段と、を有する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記所定のパケットは、Helloパケットであることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
自身が属する階層よりも上の階層または同じ階層に属する他の前記通信装置とは第1ポートを介して接続され、
自身が属する階層よりも下の階層に属する他の前記通信装置とは第2ポートを介して接続され、
これらのポートの種類によって階層を識別することを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
自身が属する階層よりも下の階層または同じ階層に属する他の前記通信装置とは第1ポートを介して接続され、
自身が属する階層よりも上の階層に属する他の前記通信装置とは第2ポートを介して接続され、
これらのポートの種類によって階層を識別することを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項5】
前記ネットワークの各階層は、リング構造を有することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記階層情報を参照して、前記通信装置の階層構造を解析して管理する管理装置を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記階層情報を参照して、前記通信装置を特定して管理を行う管理装置を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
複数の通信装置が階層構造を有するように接続されて構成される通信システムの制御方法において、
前記通信装置は、
自身が属するネットワークの階層を示す階層情報を記憶部に記憶させる記憶ステップと、
自身が属する階層と同じ階層に対しては前記階層情報を付与した所定のパケットを送信し、自身が属する階層よりも高いまたは低い階層に対しては当該高いまたは低い階層を示す前記階層情報を付与した前記所定のパケットを送信する送信ステップと、
他の前記通信装置から送信された前記階層情報が付与された前記所定のパケットを受信する受信ステップと、
他の前記通信装置から前記所定のパケットを受信した場合に、前記所定のパケットに付与された前記階層情報が前記記憶部に記憶した前記階層情報よりも高いまたは低い階層を示す場合には、前記所定のパケットに付与された前記階層情報によって、前記記憶部に記憶された前記階層情報を更新する更新ステップと、を有する、
ことを特徴とする通信システムの制御方法。
【請求項9】
複数の通信装置が階層構造を有するように接続されて構成される通信システムの前記通信装置において、
自身が属するネットワークの階層を示す階層情報を記憶する記憶手段と、
自身が属する階層と同じ階層に対しては前記階層情報を付与した所定のパケットを送信し、自身が属する階層よりも高いまたは低い階層に対しては当該高いまたは低い階層を示す前記階層情報を付与した前記所定のパケットを送信する送信手段と、
他の前記通信装置から送信された前記階層情報が付与された前記所定のパケットを受信する受信手段と、
他の前記通信装置から前記所定のパケットを受信した場合に、前記所定のパケットに付与された前記階層情報が前記記憶手段に記憶した前記階層情報よりも高いまたは低い階層を示す場合には、前記所定のパケットに付与された前記階層情報によって、前記記憶手段に記憶された前記階層情報を更新する更新手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信システムの制御方法、および、通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ツリー構造やリング構造を基本とし、それを多段化あるいは変形するようなネットワークを構築する場合には、データ信号が周回して際限なく転送され続けないように何らかの仕組みを組み込む必要があり、そのような仕組みがないと運用上の支障が生じる。
【0003】
そこで、例えばOSI参照モデルのネットワーク層におけるルーティング(経路選択)を活用し、データ信号をネットワーク機器間で中継転送すれば、そのような支障は回避できる。このようなルーティングを実施するためには、ルーティングプロトコルの規定に従って、機器それぞれが自身に必要な特定宛先機器に至るための経路情報を所持し、その情報をもとにデータ信号の中継転送を行う事になる。
【0004】
ここで、非特許文献1のようなメッシュ接続に対応しているルーティングプロトコルを採用していれば、頻繁に迂回接続を構築するような、変化に強いネットワーク構造を得る事が可能となる。このようなネットワークにおいては、ネットワーク自体の保守・運用管理の一環として、ネットワーク機器の相互接続関係を管理するためには、現実のネットワーク機器から収集した情報を基準にして、相互接続関係をモニタ画面などに表示するようにすれば、変化に対応した管理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】IETF RFC3561 「Ad hoc On-Demand Distance Vector (AODV) Routing」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、現実のネットワーク機器から収集した情報を基準にして、相互接続関係を整理すれば、管理をする上で有用である。この場合、各ネットワーク機器から収集すべき情報は、各機器が自身で管理する項目であって、自身に隣接する機器のID(隣接者ID)である。
【0007】
この隣接者IDは一意性という点で隣接者のIPアドレスで代替でき、これは隣接者が定期的に発するhelloメッセージから得る事が出来る。
【0008】
相互接続関係の管理側では、この隣接者IDを各機器から収集した後、収集した全ての隣接者IDからどの機器がどの機器の隣になるかを分析して相互接続関係を矛盾無く展開して表現することになる。
【0009】
ところが、この隣接者IDは、各ネットワーク機器がトポロジー上のどの位置に位置しているのかに関わらずフラットな情報として存在するため、相互接続関係の管理側では情報全体から解析せざるを得ず、処理の負担が増加するという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明は、処理の負担を増大させることなく、管理が容易な通信システム、通信システムの制御方法、および、通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の通信装置が階層構造を有するように接続されて構成される通信システムにおいて、前記通信装置は、自身が属するネットワークの階層を示す階層情報を記憶する記憶手段と、自身が属する階層と同じ階層に対しては前記階層情報を付与した所定のパケットを送信し、自身が属する階層よりも高いまたは低い階層に対しては当該高いまたは低い階層を示す前記階層情報を付与した前記所定のパケットを送信する送信手段と、他の前記通信装置から送信された前記階層情報が付与された前記所定のパケットを受信する受信手段と、他の前記通信装置から前記所定のパケットを受信した場合に、前記所定のパケットに付与された前記階層情報が前記記憶手段に記憶した前記階層情報よりも高いまたは低い階層を示す場合には、前記所定のパケットに付与された前記階層情報によって、前記記憶手段に記憶された前記階層情報を更新する更新手段と、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、処理の負担を増大させることなく、管理を容易にすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記所定のパケットは、Helloパケットであることを特徴とする。
このような構成によれば、既存のHelloパケットを用いることで、構成を複雑化することなる、管理を容易にすることができる。
【0013】
また、本発明は、自身が属する階層よりも上の階層または同じ階層に属する他の前記通信装置とは第1ポートを介して接続され、自身が属する階層よりも下の階層に属する他の前記通信装置とは第2ポートを介して接続され、これらのポートの種類によって階層を識別することを特徴とする。
このような構成によれば、ポートを用いることで、構成を複雑化することなく、管理を容易にすることができる。
【0014】
また、本発明は、自身が属する階層よりも下の階層または同じ階層に属する他の前記通信装置とは第1ポートを介して接続され、自身が属する階層よりも上の階層に属する他の前記通信装置とは第2ポートを介して接続され、これらのポートの種類によって階層を識別することを特徴とする。
このような構成によれば、ポートを用いることで、構成を複雑化することなく、管理を容易にすることができる。
【0015】
また、本発明は、同じ階層のネットワークが複数存在し、これら複数のネットワークを識別するためのサブコードを前記階層情報に加えて有することを特徴とする。
このような構成によれば、同じ階層のネットワークを識別することができる。
【0016】
また、本発明は、前記ネットワークの各階層は、リング構造を有することを特徴とする。
このような構成によれば、リング構造を有するネットワークの管理を容易化することができる。
【0017】
また、本発明は、前記階層情報を参照して、前記通信装置の階層構造を解析して管理する管理装置を有することを特徴とする。
このような構成によれば、解析対象の母数を減らすことで解析処理を容易化することができる。
【0018】
また、本発明は、前記階層情報を参照して、前記通信装置を特定して管理を行う管理装置を有することを特徴とする。
このような構成によれば、階層毎により細かな管理を行うことができる。
【0019】
また、本発明は、複数の通信装置が階層構造を有するように接続されて構成される通信システムの制御方法において、前記通信装置は、自身が属するネットワークの階層を示す階層情報を記憶部に記憶させる記憶ステップと、自身が属する階層と同じ階層に対しては前記階層情報を付与した所定のパケットを送信し、自身が属する階層よりも高いまたは低い階層に対しては当該高いまたは低い階層を示す前記階層情報を付与した前記所定のパケットを送信する送信ステップと、他の前記通信装置から送信された前記階層情報が付与された前記所定のパケットを受信する受信ステップと、他の前記通信装置から前記所定のパケットを受信した場合に、前記所定のパケットに付与された前記階層情報が前記記憶部に記憶した前記階層情報よりも高いまたは低い階層を示す場合には、前記所定のパケットに付与された前記階層情報によって、前記記憶部に記憶された前記階層情報を更新する更新ステップと、を有する、ことを特徴とする。
このような方法によれば、処理の負担を増大させることなく、管理を容易にすることができる。
【0020】
また、本発明は、複数の通信装置が階層構造を有するように接続されて構成される通信システムの前記通信装置において、自身が属するネットワークの階層を示す階層情報を記憶する記憶手段と、自身が属する階層と同じ階層に対しては前記階層情報を付与した所定のパケットを送信し、自身が属する階層よりも高いまたは低い階層に対しては当該高いまたは低い階層を示す前記階層情報を付与した前記所定のパケットを送信する送信手段と、他の前記通信装置から送信された前記階層情報が付与された前記所定のパケットを受信する受信手段と、他の前記通信装置から前記所定のパケットを受信した場合に、前記所定のパケットに付与された前記階層情報が前記記憶手段に記憶した前記階層情報よりも高いまたは低い階層を示す場合には、前記所定のパケットに付与された前記階層情報によって、前記記憶手段に記憶された前記階層情報を更新する更新手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、処理の負担を増大させることなく、管理を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、処理の負担を増大させることなく、管理が容易な通信システム、通信システムの制御方法、および、通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態の通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す通信装置の詳細な構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示す接続構造を簡易化して示す図である。
【
図4】第1実施形態において送信されるHelloパケットの簡略化した構造の一例を示す図である。
【
図5】
図3においてHelloパケットが送信され、恒常的な状態になった場合の接続構造を簡易化して示す図である。
【
図6】第1実施形態においてHelloパケットを送信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第1実施形態においてHelloパケットを受信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態の動作を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態においてHelloパケットを送信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第2実施形態においてHelloパケットを受信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
(A)本発明の第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、通信システムは、通信装置10-1~10-15、GW(Gate Way)20、および、管理装置30が相互に接続されて構成される。
【0025】
図1の例では、通信装置10-1~10-8およびGW20によってメインリングR1が構成される。通信装置10-6~10-11によってサブリングR2が構成される。通信装置10-10~10-13によってサブリングR3が構成される。また、通信装置10-4~10-5および通信装置10-14~10-15によってサブリングR3が構成される。また、GW20には管理装置30が接続されている。
【0026】
図1において、各通信装置に付与された数字1~3はポートを示している。ここで、1,2はメインポートを示し、3はサブポートを示す。同一のリングを形成する際にはメインポート同士が接続され、サブリングと接続する場合(リングから分岐する場合)には上位の通信装置のサブポートと、下位の通信装置のメインポートが接続される。
【0027】
GW20は、ネットワーク全体を管理する管理装置30と、メインリングR1とを相互に接続するための接続装置である。管理装置30は、ネットワーク全体を管理するための装置である。
【0028】
図2は、
図1に示す通信装置10-1~10-15の構成例を示す図である。なお、通信装置10-1~10-15は同様の構成とされているので、以下では、これらを通信装置10として説明する。
【0029】
図2に示すように、通信装置10は、パケット中継処理部11、制御部12、記憶部13、および、受信部14-1~14-3、および、送信部15-1~15-3を有している。
【0030】
ここで、パケット中継処理部11は、制御部12の制御に応じて、受信部14-1~14-3によって受信されたパケットを、そのヘッダに格納されている情報に応じて、対応する送信部15-1~15-3から送出する。制御部12は、記憶部13に記憶されている経路情報13aに応じて、パケット中継処理部11のパケット処理を制御する。
【0031】
記憶部13は、例えば、半導体メモリによって構成され、パケットを転送するための情報である経路情報13aを記憶するとともに、後述する処理を実行するためのプログラムやデータを格納している。
【0032】
受信部14-1~14-3は、他の通信装置からパケットを受信する。送信部15-1~15-3は、他の通信装置に対してパケットを送信する。なお、受信部14-1および送信部15-1によってメインポート1が構成され、受信部14-2および送信部15-2によってメインポート2が構成され、受信部14-3および送信部15-3によってサブポート3が構成される。
【0033】
(B)本発明の第1実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第1実施形態の動作について説明する。以下では、
図3~
図5を参照して、本発明の第1実施形態の動作の概要について説明した後、
図6~
図7を参照して詳細な動作について説明する。
【0034】
図3は、
図1に示す構成例を、模式的に示した図である。第1実施形態では、各リングがサブセットID(Identification)を有することを特徴とする。このようなサブセットIDは、IPアドレスとともに、記憶部13に記憶される。管理装置30は、個々の通信装置のIPアドレスとともに、サブセットIDを参照することで、ネットワークをリングに分割して管理することができる。すなわち、各通信装置がどのサブセットIDに属するかを知ることで、解析の際の母数を減少させ、解析の負荷を軽減することができる。また、サブセットID単位で制御命令を送信することで、通信システムをサブセットID単位で制御することができる。
【0035】
図3は、通信システムが構成され、運用が開始される前の状態を示している。運用開始前の状態では、各リングには、サブセットIDの初期値として0が設定されている。より詳細には、通信装置10-1~10-15の記憶部13には、自身が属するサブセットIDとして0が格納されている。
【0036】
つぎに、運用が開始されると、通信装置10-1~10-15は、予め設定された周期で、それぞれが独立して、
図4に示すHelloパケットを送信する。Helloパケットには、当該Helloパケットを送信する通信装置のIPアドレスが「送信元IPアドレス」として格納されるとともに、自身のサブセットIDが「送信元サブセットID」として格納される。運用開始直後(通信装置が起動された直後)は、サブセットIDとしては初期値の0が格納される。
【0037】
Helloパケットを送信する場合のルールとして、送信者は、記憶部13に記憶されている自身のIPアドレスと、その時点でのサブセットIDを取得し、Helloパケットに付与する。そして、メインポートからは、このようなHelloパケットを送信する。一方、サブポートからは、IPアドレスと、値を1インクリメントしたサブセットIDを付与したHelloパケットを送信する。
【0038】
また、Helloパケットを受信する場合のルールとして、受信者は受信したサブセットIDが、受信したポートから送信するサブセットIDよりも値が大きい場合には、記憶部13のサブセットIDを大きい値のサブセットIDによって書き換える。
【0039】
この結果、例えば、
図3に示すメインリングR1に属する通信装置10-1~10-8は、メインポートによって相互に接続されているので、運用開始直後にこれらの間で相互に送信されるHelloパケットは、サブセットID=0の状態で送信される。一方、メインリングR1からサブリングR2に送信される際には、サブセットIDの値が1インクリメントされて1になる。例えば、通信装置10-6,10-8のサブボートから送信されるHelloパケットのサブセットID=1となる。
【0040】
通信装置10-6,10-8のサブポートから送信されたHelloパケット(サブセットID=1のHelloパケット)は、通信装置10-9,10-11によって受信される。通信装置10-9,10-11は、受信したサブセットIDが、自身が記憶部13に記憶しているサブセットID(メインポートから送信するサブセットID)よりも値が大きいので、値が大きいサブセットIDによって記憶部13に記憶されているサブセットIDを書き換える。この結果、通信装置10-9,10-11が記憶部13に記憶するサブセットID=1になる。
【0041】
つぎに、通信装置10-8または通信装置10-6が通信装置10-10にHelloパケットを送信する場合、これらはメインポートで接続されているので、サブセットIDはそのままの状態(サブセットID=1の状態)で送信される。通信装置10-10は、受信したサブセットIDが、自身が記憶部13に記憶するサブセットIDよりも大きいので、記憶部13に記憶されているサブセットIDを書き換える。この結果、サブリングR2に属する通信装置10-9~10-11の記憶部13には自身のサブセットIDとして1が記憶される。
【0042】
サブリングR4に属する通信装置10-14~10-15でも、サブリングR2と同様の動作によって、記憶部13に記憶するサブセットIDは1の状態となる。
【0043】
また、通信装置10-10,10-11は、通信装置10-12,10-13に対しては、サブポートによって接続されることから、自身が有するサブセットIDを1インクリメントしたサブセットID(=2)を含むHelloパケットをそれぞれが独立して送信する。この結果、通信装置10-12~10-13が記憶部13に記憶するサブセットIDは2の状態となる。
【0044】
以上の動作により、各リングのサブセットIDは、
図5に示すようになる。すなわち、メインリングR1に属する通信装置10-1~10-8が記憶部13に記憶するサブセットID=0となり、サブリングR2に属する通信装置10-9~10-11が記憶部13に記憶するサブセットID=1となり、サブリングR3に属する通信装置10-14~10-15が記憶部13に記憶するサブセットID=1となり、サブリングR3に属する通信装置10-12~10-13が記憶部13に記憶するサブセットID=2となる。
【0045】
管理装置30は、全ての通信装置10-1~10-15に対してIPアドレス、サブセットID、および、隣接する通信装置を示す情報を問い合わせるパケットをブロードキャストによって送信する。この結果、全ての通信装置10-1~10-15のIPアドレス、サブセットID、隣接する通信装置を示す情報を知ることができるので、これらを参照して、ネットワークの接続構造を知ることができる。このとき、サブセットIDを参照して区分することで、サブセットID単位で接続構造を解析することで、母数を減らして解析の負荷を低減することができる。また、サブセットIDを使用して、特定のリングに属する通信装置に対して制御命令を送ることが可能になる。
【0046】
つぎに、
図6および
図7を参照して、より詳細な動作について説明する。
【0047】
図6は、Helloパケットを送信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0048】
ステップS10では、制御部12は、Helloパケットを送信するか否かを判定し、送信すると判定した場合(ステップS10:Y)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:N)にはステップS18に進む。
【0049】
ステップS11では、制御部12は、サブセットIDを記憶部13から取得する。例えば、初期状態の場合にはサブセットIDとして0が取得される。
【0050】
ステップS12では、制御部12は、IPアドレスを記憶部13から取得する。例えば、IPアドレスとして、個々の通信装置に付与されたIPアドレスが取得される。
【0051】
ステップS13では、制御部12は、ステップS11で取得したサブセットIDと、ステップS12で取得したIPアドレスを含むHelloパケットを生成する。
【0052】
ステップS14では、制御部12は、Helloパケットをメインポートである送信部15-1および送信部15-2から送信する。
【0053】
ステップS15では、制御部12は、ステップS11で取得したサブセットIDの値を1インクリメントする。例えば、初期状態の場合には、ステップS11では、サブセットIDとして0が取得されるので、サブセットIDが1にインクリメントされる。
【0054】
ステップS16では、制御部12は、ステップS15でインクリメントされたサブセットIDを含むHelloパケットを生成する。
【0055】
ステップS17では、制御部12は、Helloパケットをサブポートである送信部15-3から送信する。
【0056】
ステップS18では、制御部12は、処理を継続するか否かを判定し、処理を継続すると判定した場合(ステップS18:Y)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS18:N)には処理を終了する。
【0057】
つぎに、
図7を参照して、Helloパケットを受信する場合の処理について説明する。
図7に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0058】
ステップS30では、制御部12は、Helloパケットを受信したか否かを判定し、Helloパケットを受信したと判定した場合(ステップS30:Y)にはステップS31に進み、それ以外の場合(ステップS30:N)にはステップS34に進む。
【0059】
ステップS31では、制御部12は、ステップS30で受信したHelloパケットに含まれるサブセットIDを抽出する。
【0060】
ステップS32では、制御部12は、Helloパケットを受信したポートから送信するサブセットIDよりも、受信したサブセットIDの値の方が大きい場合(ステップS32:Y)にはステップS33に進み、それ以外の場合(ステップS32:N)にはステップS34に進む。
【0061】
ステップS33では、制御部12は、サブセットIDを書き換える処理を実行する。より詳細には、制御部12は、記憶部13に記憶しているサブセットIDを、ステップS31で抽出したサブセットIDによって書き換える。
【0062】
ステップS34では、制御部12は、処理を継続するか否かを判定し、処理を継続すると判定した場合(ステップS34:Y)にはステップS30に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS34:N)には処理を終了する。
【0063】
以上に説明したよう本発明の第1実施形態によれば、ネットワークを構成する各リングに対してサブセットIDを付与するようにしたので、ネットワークの接続構造を解析する際に、サブセットID毎に区分して解析することで母数を減らし、解析の負荷を低減することができる。また、サブセットID単位で制御命令を送信することで、サブセットID単位での制御が可能になる。例えば、サブセットID毎に通信装置の設置環境が異なる場合、異常検出の閾値をサブセットID毎に設定することで、設置環境に応じた細かな設定を行うことが可能になる。
【0064】
(C)本発明の第2実施形態の構成の説明
つぎに、本発明の第2実施形態の構成例について説明する。なお、第2実施形態の構成は、第1実施形態と同様であり、各通信装置において実行される処理が異なっているので、以下では処理を中心に説明する。
【0065】
(D)本発明の第2実施形態の動作の説明
つぎに、第2実施形態の動作について説明する。以下では、
図8を参照して、第2実施形態の動作の概要について説明した後、
図9および
図10を参照して、詳細な動作について説明する。
【0066】
第2実施形態では、
図8に示すように、サブセットIDに対してサブカテゴリが付与される点が第1実施形態とは異なる。すなわち、
図8の例では、メインリングR1にはサブセットIDとして0と、サブカテゴリとしてのa(例えば、16進数)が付与されている。サブリングR2にはサブセットIDとして1と、サブカテゴリとしてのbが付与されている。サブリングR3にはサブセットIDとして2と、サブカテゴリとしてのdが付与されている。サブリングR4にはサブセットIDとして1と、サブカテゴリとしてのcが付与されている。
【0067】
このように、サブカテゴリを付与することで、サブセットIDが同じ場合でも、サブカテゴリによって区別することができる。具体的には、サブリングR2とサブリングR4とは同じサブセットIDとしての1を有するが、サブカテゴリがそれぞれbとcで異なるので、サブカテゴリを参照することで、これらを区別することができる。
【0068】
つぎに、第2実施形態の動作について説明する。なお、サブセットIDについての動作は、第1実施形態と同様であるので、サブカテゴリに関する動作を中心に説明する。
【0069】
Helloパケットを送信する際には、自身が有するIPアドレスから、サブカテゴリを生成する。IPアドレスは、ネットワーク上ではユニーク(一意)であるので、IPアドレスから生成されるサブカテゴリもユニークとなる。
【0070】
このようにして生成されたサブカテゴリは、Helloパケットに付与され、メインポートから送信されるとともに、サブセットIDが1インクリメントされたHelloパケットにも付与されて、サブポートから送信される。
【0071】
一方、Helloパケットを受信する際には、サブカテゴリを抽出し、初めてサブカテゴリを受信した場合には当該サブカテゴリを記憶部13に記憶する。また、2回目以降の場合には、記憶部13に記憶しているサブカテゴリと、新たに抽出したサブカテゴリとを比較し、記憶しているサブカテゴリの値の方が小さい場合には、抽出したサブカテゴリによって記憶部13のサブカテゴリを更新(上書き)する。また、記憶しているサブカテゴリの値の方が大きい場合には更新は行わない。
【0072】
以上の動作により、各リングのサブカテゴリは、そのリングに属する通信装置のうち最も値が大きいサブカテゴリと同じとなる。例えば、メインリングR1の場合には、メインリングR1に属する通信装置10-1~10-8のサブカテゴリのうち、最も値が大きいサブカテゴリがaの場合には、サブカテゴリはaとなる。同様にして、各リングのサブカテゴリが決定される。
【0073】
つぎに、
図9および
図10を参照して、第2実施形態において実行される処理の一例について説明する。
【0074】
図9は、Helloパケットを送信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図9において、
図6と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図9では、
図6と比較すると、ステップS13が除外され、ステップS51およびステップS52が新たに追加されている。これら以外は、
図6と同様である。以下では、ステップS51およびステップS52について説明する。
【0075】
ステップS51では、制御部12は、自身の有するIPアドレスからサブカテゴリを生成する。例えば、IPアドレスのビット数を短縮したり、IPアドレスにハッシュ処理を施したりすることでサブカテゴリを生成する。もちろん、ネットワーク上での一意性が確保できれば、これ以外の方法で生成してもよい。
【0076】
ステップS52では、制御部12は、ステップS51で生成したサブカテゴリ付きのHelloパケットを生成する。
【0077】
なお、このようにして生成されたサブカテゴリ付きのHelloパケットは、メインポートおよびサブポートから送信される。
【0078】
図10は、Helloパケットを受信する際に実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図10において、
図7と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図10では、
図7と比較すると、ステップS33とステップS34の間にステップS71~ステップS73が追加されている。これら以外は、
図7と同様である。以下では、ステップS71~ステップS73について説明する。
【0079】
ステップS71では、制御部12は、ステップS30で受信したHelloパケットからサブカテゴリを抽出する。
【0080】
ステップS72では、制御部12は、ステップS71で抽出したサブカテゴリと、記憶部13に記憶されているサブカテゴリを比較し、記憶しているサブカテゴリの方が大きい場合(ステップS72:Y)にはステップS73に進み、それ以外の場合(ステップS72:N)にはステップS34に進む。例えば、記憶しているサブカテゴリがaで、抽出したサブカテゴリがbの場合には、Yと判定してステップS73に進む。
【0081】
ステップS73では、制御部12は、記憶部13に記憶されているサブカテゴリを、ステップS71で抽出したサブカテゴリによって更新する。例えば、いまの例では、記憶されているサブカテゴリのaが、サブカテゴリのbによって更新される。
【0082】
以上に説明したよう本発明の第2実施形態によれば、ネットワークを構成する各リングに対してサブセットIDとともにサブカテゴリを付与するようにしたので、ネットワークの接続構造を解析する際に、サブセットIDおよびサブカテゴリ毎に区分して解析することで母数を減らし、解析の負荷を低減することができる。また、サブセットIDおよびサブカテゴリ単位で制御命令を送信することで、サブセットIDおよびサブカテゴリ単位での制御が可能になる。例えば、サブカテゴリ毎に通信装置の設置環境が異なる場合、異常検出の閾値をサブカテゴリ毎に設定することで、設置環境に応じた細かな設定を行うことが可能になる。
【0083】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の各実施形態では、ネットワークは、複数のリンクが連結したマルチリング構造としたが、リングではない構造としてもよい。例えば、
図1において、通信装置10-14のメインポート2と、通信装置10-4のサブポート3とが接続されない構成としてもよい。すなわち、本発明では、リングが構成要件ではなく、複数の通信装置が階層構造を有するように接続されていればよい。このとき、同層の通信装置同士はメインポートによって相互に接続され、異層の通信装置同士はサブポートとメインポートによって接続される。また、サブセットIDは、通信装置が属する層を示す指標値となる。
【0084】
また、以上の各実施形態では、同じ階層または上の階層とはメインポートによって接続し、下の階層とはサブポートで接続するようにした。しかしながら、同じ階層または下の階層とはメインポートによって接続し、上の階層とはサブポートで接続し、上の階層に送信する場合にはサブセットIDを1デクリメントし、同じ階層または下の階層に対してはそのまま送信するようにしてもよい。
【0085】
また、以上の各実施形態では、Helloパケットを用いてサブセットIDを伝送するようにしたが、これ以外のパケットを用いるようにしてもよい。
【0086】
また、第2実施形態では、各リングにおいて、最大のサブカテゴリが、各リングのサブカテゴリに選択されるようにしたが、最小のサブカテゴリを選択するようにしてもよい。また、IPアドレスではなく、MAC(Media Access Control)アドレスを用いるようにしたり、それ以外の情報を用いたりするようにしてもよい。要は、各リングにおいてユニークな値を選択するようにすればよい。
【0087】
また、
図2に示す構成例では、それぞれ3つの受信部14-1~14-3および送信部15-1~15-3を有するようにしたが、4つ以上の受信部および送信部を有するようにしてもよい。
【0088】
また、前述の例では、各通信装置は、2つのメインポートと、1つのサブポートを有するようにしたが、3つ以上のメインポートを有するようにしたり、あるいは、2つ以上のサブポートを有したりするようにしてもよい。もちろん、3つ以上のメインポートを有するとともに、2つ以上のサブポートを有するようにしてもよい。
【0089】
また、通信装置10-1~10-15の外部に機器を接続し、通信装置10-1~10-15の制御部12によって、制御するようにしてもよい。このような場合、管理装置30は、例えば、通信装置10-1~10-15の属する階層に応じた制御を実行することができる。
【0090】
また、
図6、
図7、
図9、および、
図10に示すフローチャートは一例であって、これ以外のフローチャートを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10-1~10-15 通信装置
11 パケット中継処理部
12 制御部
13 記憶部
13a 経路情報
14-1~14-3 受信部
15-1~15-3 送信部
30 管理装置