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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】液晶配向用フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220208BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20220208BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220208BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G02F1/1337
B23K26/16
G02F1/13 101
G02F1/1339 505
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020514198
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2018011264
(87)【国際公開番号】W WO2019059720
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0123422
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ブ ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ハー、ウン キュ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-075767(JP,A)
【文献】特開2005-186109(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0023560(KR,A)
【文献】特開平02-310525(JP,A)
【文献】特開2016-043558(JP,A)
【文献】米国特許第06099786(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0052590(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
G02F 1/1339
B23K 26/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、導電性膜、液晶配向膜、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体にパルスレーザを照射して、前記液晶配向膜の一領域をエッチングするステップと、
前記保護フィルムを除去して、前記導電性膜の一領域を露出させるステップとを含み、
前記パルスレーザは、前記保護フィルムから前記液晶配向膜の方向に照射され
前記導電性膜の一領域を露出させるステップは、前記パルスレーザの照射によってエッチングされた前記液晶配向膜の残留物と共に前記保護フィルムを除去して行われる液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記基材は、高分子基材である、請求項1に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記パルスレーザの波長は、343nmであり、前記保護フィルムの前記343nmの波長を有するパルスレーザにおける光透過度は、50%以上である、請求項1または2に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記多層構造体は、前記保護フィルムおよび前記液晶配向膜の間に粘着層をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記多層構造体は、前記導電性膜および前記液晶配向膜の間に2以上の互いに離隔したスペーサをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記スペーサは、カラムスペーサまたはビーズスペーサである、請求項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記パルスレーザは、前記保護フィルムに隣接した前記液晶配向膜の表面に焦点を合わせて照射される、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記パルスレーザは、ピコ秒レーザである、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記パルスレーザの最大パルスエネルギーは、50μJ以上100μJ以下であり、
前記パルスレーザのパルスエネルギーは、前記最大パルスエネルギーの5%以上15%以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記パルスレーザの周波数は、10kHz以上400kHz以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記パルスレーザのスポット間隔は、10μm以上100μm以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記パルスレーザの照射速度は、0.1m/s以上10m/s以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の液晶配向用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2017年9月25日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2017-0123422号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、液晶配向用フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ、スマートウィンドウ、またはサンルーフのようなフレキシブル電子素子製品に適用可能な液晶変色素子に関する研究が続いている。
【0004】
特に、液晶変色素子用フィルムは、基材の上部に導電性膜が導入され、導電性膜の上下部に誘電フィルム、電気的(electrical)または電気光学的(electro-optical)機能を有する光配向フィルム、ギャップスペーサなどが備えられた液晶配向用フィルムの形態を含む。また、液晶を中心として上下部に備えられた液晶変色素子用フィルムは、既存のロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll;R2R)ベースの連続工程で作製される。
【0005】
前記液晶変色素子用フィルムに含まれる導電性膜は、基材フィルムの上部に透明で導電性を有する金属酸化膜層が形成され、液晶の配向を制御するための電界(electrical-field)を形成できるだけでなく、高温・高湿の条件で発生する気泡を遮断(gas barrier)することができ、前記液晶配向膜は液晶に配向機能を付与することができる。
【0006】
前記液晶変色素子用フィルムを製品の用途に合わせて加工するステップにおいて、電気的短絡(short-circuit)および裁断などの工程も重要であるが、液晶を中心として上下部に備えられた液晶変色素子用フィルムの接着性および耐久性を付与する工程が特に重要である。
【0007】
また、前記液晶を中心とする上下部の液晶変色素子用フィルム間の貼着のためには、前記液晶配向膜が前記上下部の液晶変色素子用フィルムの間に備えられる密封材(sealant)との優れた接着力を有しなければならないが、前記液晶配向膜が前記密封材との優れた接着力を有し得ない場合、前記液晶配向膜を選択的に除去して前記導電性膜を露出させる工程が追加的に要求された。
【0008】
これは、導電性膜に含まれる金属酸化物をベースとする透明電極の導電性だけでなく、密封材との優れた接着特性および高温高湿の臨界的環境でプラスチック基材内で発生しうる気泡(Outgassing)の遮断特性も活用しようとするものである。
【0009】
従来、前記液晶配向膜を選択的に除去する方法として、有機溶剤を処理するなどのウェットエッチングを利用していたが、前記ウェットエッチングは、連続工程の効率を阻害するだけでなく、前記有機溶剤の使用による経済的、環境的問題点があった。
【0010】
また、ディスプレイ装置の耐久性向上のためには、前記液晶配向膜が耐薬品性および高温安定性のための硬化物性が要求されることが最近の技術的傾向であることを勘案する時、前記ウェット工程を代替可能な工程の開発が必要なのが現状である。
【0011】
前記有機溶剤の使用による問題点を解決するために、すでに形成された液晶配向膜を除去するのではない、フォトリソグラフィ(photolithography)、インクジェット(inkjet)、スロットダイ(slot dye)、スクリーンプリンティング(screen printing)などのパターニング(patterning)工程を用いて前記液晶配向膜を形成する方法が試みられている。
【0012】
ただし、前記液晶配向膜を形成する工程は、ロール・ツー・ロールベースの連続工程に符合しない問題点があった。具体的には、前記液晶配向膜を形成する工程は、小型液晶素子からフレキシブル素子への大面積化のための工程設備を確保するための製造工程設備の価格が高くなり、生産性が低下する問題点がある。
【0013】
そこで、単純でありながらも、ロール・ツー・ロール連続工程に符合する加工工程の開発により製造費用を節減できる液晶配向用フィルム、具体的には、液晶変色素子用フィルムの製造方法に関する研究が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開第1997-266234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、液晶配向用フィルムの製造方法を提供しようとする。
【0016】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていない他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施態様は、基材、導電性膜、液晶配向膜、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体を用意するステップと、前記多層構造体側にパルスレーザを照射して、前記液晶配向膜の一領域をエッチングするステップと、前記保護フィルムを除去して、前記導電性膜の一領域を露出させるステップとを含み、前記パルスレーザは、前記保護フィルムから前記液晶配向膜の方向に照射されるものである液晶配向用フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施態様は、ロール・ツー・ロール連続工程に符合するという利点がある。具体的には、本発明の一実施態様は、有機溶剤を用いて別途のエッチング残留物を洗浄する工程を伴わないので、連続工程に符合し、環境に優しく、経済的な利点がある。
【0019】
本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムは、導電性膜の損傷を最小化して外部環境の変化による水分および/または気泡の遮断特性を最大化した液晶変色素子を提供することができるという利点がある。
【0020】
本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムの製造方法は、導電性膜上に存在するエッチングされた液晶配向膜残留物の量を最小化するという利点がある。
【0021】
本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムは、密封材との接着力が高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法の模式図を示すものである。
図2】本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの平面図を示すものである。
図3】本発明の一実施態様によりパルスレーザが照射された多層構造体、前記多層構造体から保護フィルムを除去する過程、前記液晶配向用フィルムおよび前記保護フィルムのデジタルカメラ画像を示すものである。
図4】本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムを用いた液晶変色素子の製造方法の模式図を示すものである。
図5】実施例1-1~実施例1-3の液晶配向用フィルム表面および保護フィルム表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
図6】実施例2-1~実施例2-3の液晶配向用フィルム表面および保護フィルム表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
図7】実施例3-1~実施例3-3の液晶配向用フィルム表面および保護フィルム表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
図8】比較例1-2~比較例1-4の液晶配向用フィルム表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
図9】比較例2-3~比較例2-4の液晶配向用フィルム表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
図10】比較例3-1~比較例3-4の液晶配向用フィルム表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
図11】高温・高湿耐久性実験時に用いられた試験片の模式図およびそのデジタルカメラ画像を示すものである。
図12】実施例1-4および実施例3-4の高温・高湿耐久性評価結果のデジタルカメラ画像を示すものである。
図13】比較例4の高温・高湿耐久性評価結果のデジタルカメラ画像を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0024】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0025】
本願明細書全体で使われる程度の用語「~(する)ステップ」または「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味しない。
【0026】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0027】
本発明の一実施態様は、基材、導電性膜、液晶配向膜、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体を用意するステップと、前記多層構造体側にパルスレーザを照射して、前記液晶配向膜の一領域をエッチングするステップと、前記保護フィルムを除去して、前記導電性膜の一領域を露出させるステップとを含み、前記パルスレーザは、前記保護フィルムから前記液晶配向膜の方向に照射されるものである液晶配向用フィルムの製造方法を提供する。
【0028】
以下、前記製造方法の各ステップごとに詳細に説明する。
【0029】
多層構造体を用意するステップ
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向用フィルムの製造方法は、基材、導電性膜、液晶配向膜、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体を用意するステップを含む。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、基材を含むことができる。前記基材は、高分子基材であってもよい。具体的には、前記高分子基材は、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)、サイクリックオレフィン重合体(cyclic olefin polymer、COP)、サイクリックオレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、トリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)、MMA(methyl methacrylate)、およびフッ素系樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができる。ただし、前記高分子基材の種類を限定するものではなく、たわみ特性を有する高分子として、当業界で知られたものであれば制限なく選択可能である。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、前記高分子基材を含むことにより、前記液晶配向用フィルムの機械的耐久性および構造的可変性を確保することができる。具体的には、前記多層構造体が前記高分子基材を含むことにより、前記液晶配向用フィルムのたわみ特性を実現することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記基材の厚さは、50μm以上200μm以下であってもよく、具体的には、70μm以上200μm以下、50μm以上150μm以下、または70μm以上150μm以下であってもよいし、より具体的には、90μm以上150μm以下、70μm以上110μm以下、または90μm以上110μm以下であってもよい。前記基材の厚さを前述した範囲に調節することにより、製造される液晶配向用フィルムの耐久性およびたわみ特性を同時に実現することができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、前記基材上に備えられる導電性膜を含むことができる。前記基材が高分子基材の場合、前記液晶配向用フィルムが耐久性および構造的可変性を同時に実現させることができる。ただし、前記高分子基材は、一般的に透湿性が低くないことから、外部環境の変化による水分および/または気泡が透過する問題点があった。
【0034】
これに対し、本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体の基材上に無機物ベースの導電性膜を備えることにより、前記液晶配向用フィルムの電気的伝導性を確保することができ、外部環境の変化による水分および/または気泡の遮断特性を容易に確保することができる。
【0035】
具体的には、前記導電性膜は、前記液晶配向膜の上部に塗布可能な、液晶の配向を制御するための電界を形成することができ、外部から供給された電荷を伝達可能な電気的伝導性があり、高い表面エネルギーを有し得る金属酸化膜であって、密封材との高い接着力を実現することができる。また、前記導電性膜は、高温・高湿などの外部環境の変化による水分および/または気泡を遮断することができる特性がある。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記導電性膜は、導電性高分子、導電性金属、および導電性金属酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができ、具体的には、導電性金属および導電性金属酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0037】
具体的には、前記導電性膜は、金、銀、ニッケル、銅、およびパラジウムのうち少なくとも1つの金属、金属酸化物、または合金物質を含むことができる。また、前記導電性膜は、ITO(indium tin oxide)、AZO(antimony-doped zinc oxide)、ATO(antimony-doped tin oxide)、SnO、RuO、およびIrOのうちの少なくとも1つを含むことができる。ただし、前記導電性膜に含まれる物質の種類を限定するものではなく、水分および/または気泡を遮断することができ、液晶の配向を制御するための電界を形成することができ、電荷を供給することができ、密封材との接着力に優れた物質を制限なく使用可能である。
【0038】
また、前記導電性膜は、透明性を有するように備えられ、当業界で知られた多様な素材および形成方法を適用して、透明性を有する導電性膜を実現することができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記導電性膜の厚さは、20nm以上100nm以下であってもよく、具体的には、30nm以上100nm以下、20nm以上80nm以下、または30nm以上80nm以下であってもよいし、より具体的には、40nm以上80nm以下、30nm以上70nm以下、または40nm以上70nm以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記多層構造体に照射されるパルスレーザの条件に応じて前記導電性膜の厚さを適切に調節することができる。
【0040】
前記導電性膜は、前記基材の厚さより非常に薄い厚さを有するので、前記導電性膜上に備えられる前記液晶配向膜をエッチングする過程で、前記導電性膜が損傷する問題点が発生することがある。また、前記導電性膜が損傷する場合、前記液晶配向用フィルムの水分および/または気泡の遮断特性を実現できない問題点が発生することがある。したがって、前記導電性膜の損傷を最小化してこそ、前記液晶配向用フィルムの外部環境の変化による水分および/または気泡の遮断特性を最大化することができる。
【0041】
そこで、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法は、前記多層構造体に含まれた液晶配向膜の上部に保護フィルムを備えることにより、前記パルスレーザの照射による導電性膜の損傷を最小化することができる。これによって、前述した問題点が発生するのを効果的に防止することができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、前記導電性膜上に備えられる液晶配向膜を含むことができる。前記導電性膜上に液晶配向膜が備えられることにより、前記液晶配向膜上に塗布される液晶の配向が制御できる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向膜は、光配向膜およびラビング(rubbing)配向膜のうちの少なくとも1つを含むことができる。また、前記液晶配向膜は、前記光配向膜およびラビング配向膜が積層された構造で備えられる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記光配向膜の場合には、光照射により、液晶配向膜上に塗布可能な液晶の配向を制御することができる。また、前記ラビング配向膜の場合には、前記液晶配向膜上にローラを回転させるラビング(rubbing)工程により、前記液晶配向膜上に塗布可能な液晶の配向を制御することができる。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記光配向膜は、光配向性化合物を含むことができる。前記光配向性化合物は、方向性を有するように整列された状態で存在することができる。また、前記光配向性化合物は、光の照射により所定方向に整列(orientationally ordered)され、前記整列状態で隣接する液晶化合物などを一定の方向に配向させることができる化合物であって、当業界で知られたものであれば制限なく選択可能である。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記ラビング配向膜は、方向性を有するように整列された状態で存在することができる。また、前記ラビング配向膜は、ラビング工程により所定方向に整列され、前記整列状態で隣接する液晶化合物などを一定の方向に配向させることができる物質であって、当業界で知られたものであれば制限なく含むことができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向膜の厚さは、50nm以上300nm以下であってもよく、具体的には、70nm以上300nm以下、50nm以上200nm以下、または70nm以上200nm以下であってもよいし、より具体的には、90nm以上200nm以下、70nm以上110nm以下、または90nm以上110nm以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記多層構造体に照射されるパルスレーザの条件に応じて前記液晶配向膜の厚さを適切に調節することができる。
【0048】
前記液晶配向膜は、前記基材の厚さより相対的に薄い厚さを有するので、パルスレーザの照射により前記液晶配向膜をエッチングする過程で、前記導電性膜の損傷を最小化してこそ、前記液晶配向用フィルムの外部環境の変化による水分および/または気泡の遮断特性を最大化することができる。
【0049】
前述のように、前記液晶配向膜は、密封材との低い接着力によって液晶配向用フィルムの水分および/または気泡の遮断性が低下する問題があった。具体的には、前記液晶配向膜は、密封材との低い接着力のため、前記液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子を製造した場合、前記液晶配向用フィルム間の貼着が円滑に行われず、外部環境の変化によって外部から水分および/または気泡が流入する問題点があった。
【0050】
これに対し、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法は、パルスレーザの照射により前記配向膜の一領域をエッチングして前記配向膜のエッチング残留物を除去し、一領域が露出する前記導電性膜の上部に密封材を塗布し、エッチングされない前記配向膜の他の領域には液晶を塗布することができる。これによって、前記液晶配向用フィルムを上部および下部に含み、前記2以上の液晶配向用フィルムが貼着されて形成された液晶変色素子の水分および/または気泡の遮断性を向上させることができる。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、前記液晶配向膜上に備えられる保護フィルムを含むことができる。パルスレーザを照射して前記液晶配向膜の一領域をエッチングする過程で、前記保護フィルムは、前記パルスレーザの照射による前記導電性膜の損傷を最小化すると同時に、前記導電性膜上に備えられた前記液晶配向膜のエッチング残留物を十分に剥離させることができる。
【0052】
具体的には、前述のように、前記液晶配向膜および前記導電性膜は、前記基材より薄い厚さを有するので、前記液晶配向膜の一領域をエッチングする過程でパルスレーザを照射する場合、前記液晶配向膜だけでなく、前記導電性膜が損傷する問題点があった。より具体的には、前記液晶配向用フィルムが高分子基材を含む場合、前記導電性膜が損傷することにより、外部の水分および/または気泡が配向膜上に備えられた液晶側に流入する問題点があった。
【0053】
これに対し、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法は、前記液晶配向膜上に保護フィルムを備えることにより、前記パルスレーザの照射により前記液晶配向膜の一領域をエッチングする場合にも、前記エッチングされた液晶配向膜の一領域の下部に備えられた前記導電性膜の損傷を最小化することができる。また、前記液晶配向膜上に保護フィルムが備えられることにより、パルスレーザの照射により一領域がエッチングされた液晶配向膜のエッチング残留物を前記保護フィルムに転写(transfer)および除去させることができる。
【0054】
従来の液晶配向用フィルムの製造方法は、導電性膜の一領域が露出した液晶配向膜を備えるために、パターニングされた液晶配向膜を前記導電性膜上に備える方法、保護フィルムを除去した後、液晶配向膜に直接レーザを照射して液晶配向膜を切断する方法、または保護フィルムを除去した後、有機溶剤などを用いて液晶配向膜を溶かす方法を使用した。
【0055】
ただし、従来の方法は、前述のように、ロール・ツー・ロール方式の連続工程には符合せず、導電性膜が損傷し、経済性を確保できなかった問題点があった。
【0056】
そこで、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法は、前記液晶配向膜上に保護フィルムを備えることにより、導電性膜の損傷を最小化することができ、パルスレーザの照射による液晶配向膜のエッチング残留物を除去する別途の工程を伴わず、工程上経済性を確保するという利点がある。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記保護フィルムの343nmの波長における光透過度は、50%以上、具体的には70%以上であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記多層構造体に照射されるパルスレーザの条件に応じて前記保護フィルムの光透過度を適切に調節することができる。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記343nmの波長における前記保護フィルムの光透過度は、343nmの波長を有するパルスレーザを照射する場合、保護フィルムに照射される光量に対する、前記保護フィルムを透過する光量の比を意味するものであってもよい。
【0059】
本発明の一実施態様によれば、前記保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリオレフィン、およびエチレンビニルアセテートのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記保護フィルムの厚さは、20μm以上60μm以下、20μm以上50μm以下、30μm以上60μm以下、30μm以上50μm以下、30μm以上45μm以下、35μm以上50μm以下、または35μm以上45μm以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記多層構造体に照射されるパルスレーザの条件に応じて前記保護フィルムの厚さを適切に調節することができる。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記保護フィルムは、前記液晶配向膜および前記導電性膜より厚い厚さを有するので、前記液晶配向膜をエッチングするためのパルスレーザが照射される場合、前記パルスレーザが前記範囲の厚さを有する保護フィルムを透過し、前記液晶配向膜のエッチングが可能でありながらも、前記導電性膜を損傷させない程度のエネルギーを有するパルスレーザが照射される。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、前記保護フィルムおよび前記液晶配向膜の間に粘着層をさらに含んでもよい。具体的には、前記粘着層を含むことにより、前記多層構造体は、基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムが順次に備えられるものであってもよい。また、前記粘着層は、前記液晶配向膜の上部面および前記保護フィルムの下部面に接するものであってもよい。また、前記パルスレーザは、基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体に照射される。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着層は、前記パルスレーザの照射後、前記保護フィルムを除去/剥離する過程で、前記液晶配向膜のエッチング残留物を前記導電性膜から除去または剥離させることができる。具体的には、前記粘着層は、液晶配向膜のエッチング残留物、および前記保護フィルムと接しており、前記保護フィルムが除去/剥離されることにより、前記粘着層に接する前記エッチング残留物が同時に除去/剥離できる。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着層の厚さは、5μm以上20μm以下、5μm以上15μm以下、10μm以上20μm以下、または10μm以上15μm以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記多層構造体に照射されるパルスレーザの条件に応じて前記粘着層の厚さを適切に調節することができる。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着層は、アクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、およびシリコーン系のうち少なくとも1つの粘着剤を含むことができる。
【0066】
本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体は、前記導電性膜および前記液晶配向膜の間に2以上の互いに離隔したスペーサをさらに含んでもよい。また、前記スペーサは、前記導電性膜と前記液晶配向膜との間に含浸されるものであってもよい。前記多層構造体がスペーサをさらに含むことにより、この後に前記液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子を製造する過程で、2以上の前記液晶配向用フィルムを圧着する工程を行っても、前記導電性膜と前記液晶配向膜との間の間隔を一定に維持することができる。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記スペーサは、ビーズスペーサ(Bead Spacer、B/S)またはカラムスペーサ(Column Spacer、C/S)であってもよい。具体的には、前記ビーズスペーサは、玉(Bead)形態である球状のスペーサを意味することができ、前記カラムスペーサは、柱(column)形態のスペーサを意味することができる。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、前記スペーサがカラムスペーサの場合、前記多層構造体は、基材、導電性膜、カラムスペーサ、液晶配向膜、および保護フィルムが順次に備えられた形態であってもよい。
【0069】
また、前記スペーサがビーズスペーサの場合、前記液晶配向膜は、光配向膜およびラビング配向膜が順次に備えられたものであってもよく、前記ビーズスペーサは、前記光配向膜およびラビング配向膜の間に備えられるものであってもよい。すなわち、前記スペーサがビーズスペーサの場合、前記多層構造体は、基材、導電性膜、光配向膜、ビーズスペーサ、ラビング配向膜、および保護フィルムが順次に備えられた形態であってもよい。
【0070】
液晶配向膜の一領域をエッチングするステップ
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向用フィルムの製造方法は、前記多層構造体側にパルスレーザを照射して、前記液晶配向膜の一領域をエッチングするステップを含む。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向膜の一領域をエッチングするステップは、前記保護フィルム上にエッチングマスクを備えた後、前記エッチングマスクによって前記保護フィルムが露出する領域にパルスレーザを照射するものであってもよい。本明細書において、パルスレーザは、当業界で知られたパルスレーザを意味することができ、具体的には、パルス形態のレーザ、すなわち時間的に発振および停止があるレーザを意味することができる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザは、ピコ秒(pico second)レーザ、具体的には、ピコ秒パルスレーザであってもよい。本明細書において、ピコ秒レーザは、パルス幅がピコ(pico、10-12)秒単位であるレーザを意味することができる。具体的には、前記パルス幅は、パルスレーザのパルスの立ち上がり時間と立ち下がり時間で振幅が半分になる時刻の間隔を意味することができる。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザの波長は、紫外線領域の波長、具体的には、10nm以上400nm以下、10nm以上100nm以下、100以上280nm以下、280nm以上320nm以下、320nm以上400nm以下、または343nmであってもよい。すなわち、前記パルスレーザは、超短波紫外線レーザであってもよい。
【0074】
前記超短波紫外線レーザの代わりに赤外線波長のレーザを照射する場合、前記液晶配向膜だけでなく、前記導電性膜も剥離される問題点が発生することがある。具体的には、前記多層構造体に赤外線波長、具体的には、長波長赤外線レーザを照射する場合、導電性膜と基材との間の熱膨張率の差によって界面が剥離される問題点が発生することがある。
【0075】
これに対し、本発明の一実施態様によれば、前記多層構造体に超短波紫外線レーザを照射することにより、前記導電性膜は剥離されず、前記導電性膜の損傷を最小化することができ、前記液晶配向膜のみ選択的にエッチングすることができる。
【0076】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザの最大パルスエネルギーは、50μJ以上100μJ以下であり、前記パルスレーザのパルスエネルギーは、前記最大パルスエネルギーの5%以上15%以下であってもよい。具体的には、前記パルスレーザの最大パルスエネルギーは、50μJ以上100μJ以下、50μJ以上90μJ以下、50μJ以上80μJ以下、60μJ以上100μJ以下、60μJ以上90μJ以下、60μJ以上80μJ以下、70μJ以上100μJ以下、70μJ以上90μJ以下、70μJ以上80μJ以下、または75μJであってもよい。ただし、前記パルスレーザの最大パルスエネルギーを前述した範囲に限定するものではなく、前記基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムの厚さおよび/または物性に応じて適切に調節可能である。
【0077】
また、本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザのパルスエネルギーは、前記最大パルスエネルギーの5%以上15%以下、5%以上12%以下、8%以上15%以下、または8%以上12%以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前述した基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムの厚さおよび/または物性に応じて前記パルスレーザのパルスエネルギーは適切に調節可能である。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザの周波数は、10kHz以上400kHz以下、10kHz以上300kHz以下、100kHz以上400kHz以下、100kHz以上300kHz以下、100kHz以上250kHz以下、150kHz以上300kHz以下、150kHz以上250kHz以下、または200kHzであってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前述した基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムの厚さおよび/または物性に応じて適切に調節可能である。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザのスポット間隔は、10μm以上100μm以下、10μm以上75μm以下、10μm以上50μm以下、または10μm以上15μm以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前述した基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムの厚さおよび/または物性に応じて適切に調節可能である。
【0080】
本明細書において、前記パルスレーザのスポット間隔は、前記パルスレーザが照射される地点間の距離を意味することができる。ただし、これに限定されるものではなく、前述した基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムの厚さおよび/または物性に応じて適切に調節可能である。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザの照射速度は、0.1m/s以上10m/s以下、0.1m/s以上7m/s以下、0.5m/s以上10m/s以下、0.5m/s以上7m/s以下、0.5m/s以上5m/s以下、1m/s以上7m/s以下、1m/s以上5m/s以下、または3.5m/sであってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前述した基材、導電性膜、液晶配向膜、粘着層、および保護フィルムの厚さおよび/または物性に応じて適切に調節可能である。
【0082】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザは、前記保護フィルムから前記液晶配向膜の方向に照射されるものであってもよい。また、前記パルスレーザは、前記保護フィルムに隣接した前記液晶配向膜の表面に焦点を合わせて照射される。前記パルスレーザが前記保護フィルムに隣接した前記液晶配向膜の表面に焦点を合わせて照射されることにより、前記パルスレーザは、前記保護フィルムを透過して照射され、これによって前記導電性膜の損傷を防止することができる。
【0083】
具体的には、前記パルスレーザが照射される焦点に応じて前記保護フィルムによってパルスエネルギーが濾過し、濾過したパルスエネルギーを有するパルスレーザによって前記液晶配向膜がエッチングされる。また、前記パルスレーザが照射される前記液晶配向膜が均一にエッチングされ、これによる前記導電性膜の損傷を最小化することができる。
【0084】
また、前記パルスレーザは、前記保護フィルムが備えられていない多層構造体または前記保護フィルムが除去された多層構造体側に照射されるのではなく、前記保護フィルムを含む多層構造体側に照射されるものであってもよいし、前記保護フィルムは、前記多層構造体側に前記パルスレーザが照射された後に除去されるものであってもよい。前記保護フィルムが除去された多層構造体側に前記パルスレーザが照射される場合、前記液晶配向膜だけでなく、前記導電性膜まで前記パルスレーザの照射によって損傷する問題点が発生することがある。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、前記パルスレーザは、エッチングしようとする前記液晶配向膜の一領域の両側末端ではない、エッチングしようとする前記液晶配向膜の一領域全体に照射されるものであってもよい。
【0086】
前記パルスレーザが前記液晶配向膜の一領域の両側末端にのみ照射されて、前記液晶配向膜を切断する場合、前記液晶配向膜の一領域を除去するためには、前記パルスレーザが前記保護フィルムおよび前記液晶配向膜をすべて透過して照射されなければならず、前記パルスレーザが前記液晶配向膜を透過し照射される場合、前記導電性膜が損傷する問題点が発生することがある。また、前記パルスレーザが前記液晶配向膜の一領域の両側末端にのみ照射される場合、前記液晶配向膜の残留物を除去するための別途の工程が要求され、前記液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子の製造工程が複雑になる問題点が発生することがある。
【0087】
これに対し、本発明の一実施態様のように、前記パルスレーザをエッチングしようとする前記液晶配向膜の一領域全体に照射する場合、前記パルスレーザが前記液晶配向膜を透過しなくても前記液晶配向膜の一領域をエッチングすることができ、前記保護フィルムを剥離または除去しながら前記液晶配向膜のエッチング残留物を共に剥離または除去可能なため、前記液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子の製造工程を単純化することができる。
【0088】
導電性膜の一領域を露出させるステップ
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向用フィルムの製造方法は、前記保護フィルムを除去して、前記導電性膜の一領域を露出させるステップを含む。前記導電性膜の一領域が露出することにより、液晶配向膜のエッチング残留物が除去された領域を有する液晶配向膜が備えられる。
【0089】
具体的には、前記導電性膜の一領域を露出させることにより、前記液晶配向用フィルムは、基材、導電性膜、および前記導電性膜が露出した領域を有する液晶配向膜が順次に備えられたものであってもよい。また、前記液晶配向膜は、前記パルスレーザの照射によってエッチングされた液晶配向膜のエッチング残留物が除去された領域を含むものであってもよい。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記導電性膜の一領域を露出させるステップは、前記パルスレーザの照射によってエッチングされた前記液晶配向膜の残留物と共に前記保護フィルムを除去して行われるものであってもよい。
【0091】
具体的には、前記導電性膜の一領域を露出させるステップは、前記パルスレーザの照射によってエッチングされ、前記粘着層に接する前記液晶配向膜の残留物と共に前記保護フィルムを除去して行われるものであってもよい。これによって、液晶配向膜のエッチング残留物が除去された前記導電性膜の一領域が外部に露出することができる。
【0092】
本発明の一実施態様によれば、前記液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子の製造過程で、前記外部に露出した導電性膜の一領域上に密封材が塗布される。
【0093】
前述のように、前記導電性膜は、前記液晶配向膜より密封材との接着力に優れるので、2以上の前記液晶配向用フィルムを貼着して製造される液晶変色素子の優れた水分および/または気泡遮断特性を実現することができる。
【0094】
また、前記導電性膜が露出しない前記液晶配向膜上には液晶が塗布される。
【0095】
図1は、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法の模式図を示すものである。図1(a)を参照すれば、基材10、導電性膜20、液晶配向膜30、および保護フィルム40が順次に備えられた多層構造体100が用意され、前記多層構造体100側にパルスレーザ200が照射される。具体的には、前記パルスレーザ200は、前記保護フィルム40を透過し、前記保護フィルム40に隣接した前記液晶配向膜30の表面に焦点を合わせて照射される。前記パルスレーザ200の照射によって、前記液晶配向膜のエッチング部分31が形成される。
【0096】
また、図1(a)によれば、前記保護フィルム40に接し、前記パルスレーザ200によって形成された液晶配向膜のエッチング部分31は、前記保護フィルム40の除去または剥離時に前記保護フィルム40に接して、多層構造体100から除去される。
【0097】
その結果、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルム110は、前記基材10、前記導電性膜20、および前記導電性膜20が露出する領域を有する前記液晶配向膜30が順次に備えられた形態であってもよい。
【0098】
図2は、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの平面図を示すものである。ただし、図2は、本発明の多様な実施態様のうち一つの例示に過ぎず、本発明の液晶配向用フィルムは、図2に示されるものに制限されることはない。
【0099】
図2によれば、相対的に明るい領域は、液晶配向膜を示すものであり、相対的に暗い領域は、前記液晶配向膜のエッチング残留物が除去されて、前記導電性膜が露出した一領域を示すものである。
【0100】
本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法の一部ステップのデジタルカメラ画像を図3に示した。
【0101】
図3(a)は、パルスレーザが照射され、保護フィルムが除去されていない多層構造体のデジタルカメラ画像を示すものであり、(b)は、保護フィルムを除去する過程のデジタルカメラ画像を示すものであり、(c)は、保護フィルム除去後の多層構造体および保護フィルムのデジタルカメラ画像を示すものである。
【0102】
また、図3にて矢印(→)で表した部分は、前記パルスレーザの照射でエッチングされる液晶配向膜の一領域を示すものである。
【0103】
図3によれば、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムの製造方法により製造された液晶配向用フィルムは、レーザ照射によってエッチングされた液晶配向膜のエッチング残留物が保護フィルムに接して除去されることを確認することができる。
【0104】
本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムは、液晶変色素子用フィルムとして使用できる。
【0105】
本発明の一実施態様は、液晶配向用フィルムを提供する。具体的には、前記液晶配向用フィルムは、基材、導電性膜、および前記導電性膜が露出する領域を有する液晶配向膜が順次に備えられたものであってもよい。また、前記液晶配向用フィルムは、前述した液晶配向用フィルムの製造方法により製造されたものであってもよい。さらに、前記液晶配向用フィルムは、液晶変色素子用フィルムに適用可能である。
【0106】
本発明の一実施態様に係る前記液晶配向用フィルムの基材、導電性膜、および液晶配向膜それぞれは、前記液晶配向用フィルムの製造方法における基材、導電性膜、および液晶配向膜と同一であってもよい。
【0107】
本発明の一実施態様は、前記液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子の製造方法を提供する。具体的には、本発明の一実施態様は、前記液晶配向用フィルムを上部フィルムおよび下部フィルムとして用意するステップと、前記下部フィルムの一領域が露出した導電性膜上に密封材を塗布するステップと、前記下部フィルムの一領域が除去されていない液晶配向膜上に液晶を塗布するステップと、前記下部フィルム上に前記上部フィルムを備え、前記下部フィルムと前記上部フィルムとを貼着するステップとを含む液晶変色素子の製造方法を提供する。
【0108】
本発明の一実施態様によれば、前記密封材および前記液晶はそれぞれ、密封材および液晶として、当業界で知られた一般的なものから選択されるものであってもよく、その種類が制限/限定されることはない。
【0109】
本発明の一実施態様に係る液晶変色素子の製造方法の模式図を図4に示した。
【0110】
図4によれば、前記液晶変色素子は、本発明の一実施態様に係る液晶配向用フィルムを上部フィルムおよび下部フィルムとして用意し、前記下部フィルムの一領域が露出した導電性膜上には密封材を、前記下部フィルムの導電性膜の一領域が除去されていない液晶配向膜上には液晶を塗布し、前記下部フィルムと前記上部フィルムとを互いに貼着することにより製造されるものであってもよい。
【実施例
【0111】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0112】
[製造例-多層構造体の製造]
【0113】
製造例1-Clear試験片
基材、導電性膜、ラビング配向膜、粘着層、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体を製造した。
【0114】
製造例2-C/S試験片
基材、導電性膜、カラムスペーサ、ラビング配向膜、粘着層、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体を製造した。
【0115】
製造例3-B/S試験片
基材、導電性膜、光配向膜、ビーズスペーサ、ラビング配向膜、粘着層、および保護フィルムが順次に備えられた多層構造体を製造した。
【0116】
前記製造例1~製造例3の具体的な情報は、下記表1の通りである。
【0117】
【表1】
【0118】
*COP:Cyclo Olefin Polymer
*PC:Polycarbonate
*ITO:Indium Tin Oxide
*PI:Polyimide
*PET:Polyethylene Terephthalate
【0119】
[実施例1-1~実施例3-4-保護フィルム未除去後のレーザ照射]
製造例1~製造例3のうちいずれか1つの多層構造体に、下記表2のような情報のパルスレーザを、前記保護フィルムに接する前記ラビング配向膜に焦点を合わせて、前記保護フィルムから前記ラビング配向膜の方向に、パルスレーザのパルスエネルギーを調節しながら照射し、前記ラビング配向膜をエッチングした。
【0120】
前記ラビング配向膜がエッチングされた多層構造体の保護フィルムを剥離して、液晶配向用フィルムを製造した。
【0121】
【表2】
【0122】
実施例1-1~実施例3-4の具体的な情報は、下記表3の通りである。
【0123】
【表3】
【0124】
[比較例1-1~比較例3-4-保護フィルム除去後のレーザ照射]
製造例1~製造例3のうちいずれか1つの多層構造体の保護フィルムを除去し、前記表2のような情報のパルスレーザを、パルスエネルギーを調節して前記ラビング配向膜に直接焦点を合わせて照射した。
【0125】
前記パルスレーザの照射後、市販の粘着テープ(3M社製)を用いて配向残留物を除去した。
【0126】
比較例1-1~比較例3-4の具体的な情報は、下記表4の通りである。
【0127】
【表4】
【0128】
[比較例4-保護フィルム除去および赤外線波長レーザ照射]
製造例3による多層構造体の保護フィルムを除去し、下記表5による赤外線波長のパルスレーザを、前記ラビング配向膜に直接焦点を合わせて照射し、配向膜のエッチング残留物をトルエンを用いて除去して、液晶配向用フィルムを製造した。
【0129】
【表5】
【0130】
[実験例1-保護フィルムへの配向膜残留物の転写有無の評価]
実施例1-1~実施例1-3、実施例2-1~実施例2-3、および実施例3-1~実施例3-3による液晶配向用フィルムの導電性膜表面および前記保護フィルムの前記多層構造体への接着面を、光学顕微鏡(BX51M、オリンパス社)を用いて撮影し、前記光学顕微鏡画像を図5図7に示した。
【0131】
図5は、実施例1-1~実施例1-3の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0132】
具体的には、図5(a)および(b)はそれぞれ、実施例1-1の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を、(c)および(d)はそれぞれ、実施例1-2の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を、(e)および(f)はそれぞれ、実施例1-3の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0133】
図5にて矢印(→)で表示される領域は、パルスレーザの照射でエッチングされ、保護フィルムに転写されるラビング配向膜のエッチング残留物を示すものである。
【0134】
具体的には、図5(a)、(c)および(e)でエッチングされるラビング配向膜のエッチング残留物は、図5(b)、(d)および(f)により保護フィルムの接着面に転写されることを確認することができた。
【0135】
図5によれば、前記パルスレーザのパルスエネルギーの増加に伴ってエッチングされる程度に差があるが、多層構造体のラビング配向膜のエッチング残留物が保護フィルムの表面に転写されることを確認することができ、導電性膜表面のパターンが均一に維持されることにより、前記パルスレーザの照射によっても導電性膜の損傷が最小化されることを確認することができた。
【0136】
図6は、実施例2-1~実施例2-3の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0137】
具体的には、図6(a)および(b)はそれぞれ、実施例2-1の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を、(c)および(d)はそれぞれ、実施例2-2の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を、(e)および(f)はそれぞれ、実施例2-3の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0138】
図6にて矢印(→)で表示される領域は、パルスレーザの照射でエッチングされ、保護フィルムに転写されるラビング配向膜のエッチング残留物を示すものである。また、図6にて円形で表示される領域は、カラムスペーサに相当する。
【0139】
図6(a)、(c)、(e)によれば、パルスレーザのパルスエネルギーの増加に伴ってエッチングされる程度の差があるが、多層構造体のラビング配向膜のエッチング残留物が保護フィルムの表面に転写されることを確認することができた。また、前記エッチング残留物に相当する部分は、図6(b)、(d)および(f)により保護フィルムの接着面に転写されることを確認することができた。
【0140】
さらに、図6によれば、ラビング配向膜のカラムスペーサに隣接する領域は、保護フィルムと接しなくなって、保護フィルムを剥離しても保護フィルムに液晶配向膜のエッチング残留物が転写されないことを確認することができた。ただし、前記導電性膜表面のパターンが均一に維持されることにより、前記パルスレーザの照射によっても導電性膜の損傷が最小化されることを確認することができた。
【0141】
図7は、実施例3-1~実施例3-3の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0142】
具体的には、図7(a)および(b)はそれぞれ、実施例3-1の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を、(c)および(d)はそれぞれ、実施例3-2の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を、(e)および(f)はそれぞれ、実施例3-3の導電性膜表面および保護フィルムの接着面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0143】
図7にて矢印(→)で表示される領域は、パルスレーザの照射でエッチングされ、保護フィルムに転写されるラビング配向膜および光配向膜のエッチング残留物を示すものである。また、図7にて暗い円形で表示される領域は、ビーズスペーサに相当する。
【0144】
図7(a)、(c)および(e)によれば、前記パルスレーザの照射によってエッチングされ、前記保護フィルムに転写される領域が前記パルスレーザが照射される領域と一致しないことを通して、導電性膜の上部の光配向膜と、ビーズスペーサの上部の配向膜が同時に剥離されることを確認することができた。
【0145】
さらに、図7(b)、(d)および(f)により前記パルスレーザの照射によるエッチング残留物が保護フィルムに転写されることを確認することができた。
【0146】
図5図7についての内容をまとめてみれば、保護フィルムを除去せずにパルスレーザを照射する場合、導電性膜の損傷を最小化できると同時に、液晶配向膜の部分的エッチングが可能になり、前記液晶配向膜と前記導電性膜との間に別途のスペーサが備えられても同様であることを確認することができた。また、前記液晶配向膜の部分的エッチングによる液晶配向膜の残留物は前記保護フィルムに転写されて剥離可能であることを確認することができた。
【0147】
[実験例2-比較例の導電性表面の損傷有無の評価]
比較例1-2~比較例1-4、比較例2-3~比較例2-4および比較例3-1~比較例3-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面を、光学顕微鏡(BX51M、オリンパス社)を用いて撮影し、前記光学顕微鏡画像を図8図10に示した。
【0148】
比較例1-2~比較例1-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面の光学顕微鏡画像を図8に示した。
【0149】
具体的には、図8(a)、(b)および(c)はそれぞれ、比較例1-2、比較例1-3および比較例1-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面の光学顕微鏡画像を示すものである。図8(a)、(b)および(c)それぞれの中央の線を基準として、上部はラビング配向膜がエッチングされない領域を、下部はラビング配向膜がエッチングされた領域を示すものである。
【0150】
また、図8にて矢印(→)で表示された領域を通して、パルスレーザが照射された導電性膜の表面が損傷したことを確認することができた。
【0151】
図8によれば、照射されるパルスレーザのパルスエネルギーによる程度の差はあるが、中央の線の下部の相対的に暗い点で表示される領域を通して、前記パルスレーザの照射によって導電性膜が損傷したことを確認することができた。
【0152】
特に、図8(c)に示された右側中央部の液晶配向膜のエッチング残留物が下部に突出したことを通して、パルスレーザの照射前に保護フィルムを除去する場合、前記パルスレーザの照射後、粘着テープを用いてもエッチング残留物がまともに除去されない問題点が発生したことを確認することができた。
【0153】
比較例2-3~比較例2-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面の光学顕微鏡画像を図9に示した。
【0154】
具体的には、図9(a)および(b)はそれぞれ、比較例2-3および比較例2-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面の光学顕微鏡画像を示すものである。図9(a)および(b)それぞれの中央の線を基準として、上部はラビング配向膜がエッチングされない領域を、下部はラビング配向膜がエッチングされた領域を示すものである。
【0155】
特に、図9にて矢印(→)で表示された領域を通して、パルスレーザが照射された導電性膜の表面が損傷したことを確認することができた。
【0156】
特に、図9(b)の右側下部にカラムスペーサに相当する領域が示されたことを通して、多層構造体の形状を問わず保護フィルムを除去し、直接液晶配向膜の表面にレーザを照射する場合、導電性膜の損傷が起こることを確認することができた。
【0157】
比較例3-1~比較例3-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面の光学顕微鏡画像を図10に示した。
【0158】
具体的には、図10(a)、(b)、(c)および(d)はそれぞれ、比較例3-1、比較例3-2、比較例3-3および比較例3-4による液晶配向用フィルムの導電性膜表面の光学顕微鏡画像を示すものである。
【0159】
図10(a)~(d)それぞれの中央の線を基準として、上部はパルスレーザが照射された領域を、下部はパルスレーザが照射されない領域を示すものである。
【0160】
図10(a)~(d)によれば、液晶配向膜が除去される領域とパルスレーザが照射された領域とが一致しないことを通して、ラビング配向膜および光配向膜が同時に除去されることを確認することができた。
【0161】
また、程度の差はあるが、図10にて矢印(→)で表示された領域を通して、パルスレーザが照射された導電性膜表面が損傷したことを確認することができた。
【0162】
さらに、図10には示されていないが、別途のビーズスペーサが備えられても、保護フィルムを除去し、直接液晶配向膜の表面にレーザを照射する場合、導電性膜が損傷することを確認することができた。
【0163】
図8図10の内容をまとめてみれば、図8図10にて矢印で表した部分を通して、パルスレーザが照射された多層構造体の種類を問わず、保護フィルムを除去した後、パルスレーザを照射する場合、前記パルスレーザの照射によって導電性膜の損傷が起こることを確認することができた。
【0164】
以下、前記導電性膜の損傷の程度をより具体的に示すために、これを定量化した実験に関する内容を説明する。
【0165】
[実験例3-4針測定法]
比較例1-1~比較例1-4、比較例2-1~比較例2-4および比較例3-1~比較例3-4による液晶配向用フィルムの導電性膜の表面に、4つの探針を用いて、それぞれの面抵抗を測定し、3回の測定値の平均値を下記表6に示した。
【0166】
【表6】
【0167】
具体的には、面抵抗値が大きいほど、導電性膜の損傷程度が大きいことを意味することができる。
【0168】
前記表6によれば、照射されるパルスレーザのパルスエネルギーが増加するほど、面抵抗値が増加するので、照射されるパルスレーザのパルスエネルギーの増加に伴って導電性膜が損傷する程度が大きいことを確認することができた。
【0169】
また、パルスレーザが照射される多層構造体の種類(製造例1~製造例3)によって、導電性膜の損傷する程度が異なることを確認することができた。
【0170】
前記内容をまとめてみれば、パルスレーザの照射前に保護フィルムを除去する場合、導電性膜の損傷が発生し、照射されるパルスレーザのパルスエネルギーが増加するほど、導電性膜の損傷する程度が大きく、パルスレーザが照射される多層構造体の種類によって導電性膜の損傷程度が異なることを確認することができた。
【0171】
具体的には、同一のパルスエネルギーを有するパルスレーザが照射される場合、カラムスペーサが備えられる場合、ビーズスペーサが備えられる場合、およびスペーサが備えられない場合の順に導電性膜の損傷程度が増加することを確認することができた。
【0172】
以下、保護フィルムを除去せずにパルスレーザを照射する場合、導電性膜の損傷が最小化されたことを示すための、高温・高湿耐久性評価について説明する。
【0173】
[実験例4-高温・高湿耐久性評価]
実施例1-4、実施例3-4および比較例4による液晶配向用フィルムをそれぞれ2枚ずつ用意した。
【0174】
前記二枚の液晶配向用フィルムをそれぞれ上部フィルムおよび下部フィルムとし、前記下部フィルムの導電性膜が露出した部分に密封材を塗布し、導電性膜が露出しない液晶配向膜部分には液晶を塗布した。
【0175】
前記密封材および液晶が塗布された下部フィルム上に上部フィルムを備え、貼着して試験片を製造した。
【0176】
前記実験時に用いられた試験片の模式図およびそのデジタルカメラ画像を図11に示した。
【0177】
図11(a)は、前記試験片の模式図であり、図11(b)は、実施例1-4および実施例3-4による試験片のデジタルカメラ画像である。
【0178】
図11(a)にて矢印で表した部分がパルスレーザによって液晶配向膜がエッチングされた領域に相当する。
【0179】
実施例1-4および実施例3-4による試験片は、60℃の温度、相対湿度90%の条件で約70時間放置し、前記比較例4による試験片は、60℃の温度、相対湿度90%の条件で約300時間放置して、高温・高湿耐久性実験を行った。
【0180】
実施例1-4および実施例3-4の高温・高湿耐久性実験評価結果のデジタルカメラ画像を図12に示した。具体的には、図12(a)は実施例1-4、(b)は実施例3-4の高温・高湿耐久性実験評価結果のデジタルカメラ画像に相当する。
【0181】
図12によれば、本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムを用いて製造された試験片は、高温・高湿の条件下でも気泡が発生しないことを確認することができた。
【0182】
比較例4の高温・高湿耐久性実験評価用試験片の評価前/後のデジタルカメラ画像を図13に示した。具体的には、図13(a)は評価前、(b)は評価後の比較例4の高温・高湿耐久性実験評価用試験片のデジタルカメラ画像を示すものである。
【0183】
一方、図13によれば、保護フィルムを除去した後にレーザを照射し、前記レーザが赤外線の長波長レーザである比較例4の液晶配向用フィルムを用いて製造された試験片は、高温・高湿の条件下で気泡が発生することを確認することができた。
【0184】
前記内容をまとめてみれば、前記気泡は気泡遮断特性を有する導電性膜が損傷した場合に発生するものであるので、本発明の一実施態様により製造された液晶配向用フィルムは、導電性膜の損傷が最小化されたことを確認することができた。
【0185】
すなわち、前記内容を通して、保護フィルムを除去せず、保護フィルムに隣接する液晶配向膜の表面に焦点を合わせて、ピコ秒単位の超短波紫外線レーザを照射してこそ、導電性膜の損傷が最小化された液晶配向用フィルムを製造可能であることを確認することができた。
【0186】
また、これによって製造された液晶配向用フィルムを含む液晶変色素子は、高温・高湿の条件下でも外部環境の変化による水分および/または気泡の流入が遮断されることを通して、前記導電性膜の損傷が最小化されたことを確認することができた。
【符号の説明】
【0187】
10:基材
20:導電性膜
30:液晶配向膜
31:液晶配向膜のエッチング部分
40:保護フィルム
100:多層構造体
110:液晶配向用フィルム
200:パルスレーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12(a)】
図12(b)】
図13(a)】
図13(b)】