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特許7019896酸化的脱水素化反応用触媒、その製造方法及びそれを用いた酸化的脱水素化方法
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  • 特許-酸化的脱水素化反応用触媒、その製造方法及びそれを用いた酸化的脱水素化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】酸化的脱水素化反応用触媒、その製造方法及びそれを用いた酸化的脱水素化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/80 20060101AFI20220208BHJP
   C07C 5/333 20060101ALN20220208BHJP
   C07C 11/167 20060101ALN20220208BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
B01J23/80 Z
C07C5/333
C07C11/167
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020108189
(22)【出願日】2020-06-23
(62)【分割の表示】P 2019502067の分割
【原出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2020157301
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0047503
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0042150
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スー、ミョン ジ
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、デ ヘウン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、イェ スル
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、スン ファン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04658074(US,A)
【文献】特開昭49-079988(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0082869(KR,A)
【文献】特開昭51-125001(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105582954(CN,A)
【文献】米国特許第03849545(US,A)
【文献】特開平11-043380(JP,A)
【文献】SON, L. T. et al.,e-Journal of Surface Science and Nanotechnology,日本,2012年06月23日,Vol.10,pp.263-267
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 5/333
C07C 5/48
C07C 11/167
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化的脱水素化反応の活性成分であるABが多孔性支持体にコーティングされた触媒であって、下記数式1
[数式1]
Xwt%+Ywt%=100wt%
(前記数式1において、Xは、ABの含量値であって、14以上~27以下であり、Aは、銅(Cu)、ラジウム(Ra)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)からなる群から選択された1種以上であり、Bは鉄(Fe)であり、Yは、多孔性支持体の含量値であって、70超~95以下である。)を満た
前記多孔性支持体は、パッキング密度(packing density)が0.7~2g/cm である、酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項2】
前記ABは、Aが亜鉛(Zn)であり、Bが鉄(Fe)である、亜鉛フェライト触媒である、請求項1に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項3】
前記ABは、平均粒径が250μm以下である、請求項1または2に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項4】
前記多孔性支持体は、平均粒径が3mm以上であり、球状、ペレット状または中空状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項5】
前記多孔性支持体は、アルミナ、シリカ及びジルコニアからなる群から選択された1種以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項6】
前記多孔性支持体は、平均気孔サイズが50~200μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項7】
前記触媒は、バインダーとして、ケイ酸アルミニウム、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択された1種以上をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【請求項8】
前記触媒はバインダーフリー(free)である、請求項1からのいずれか一項に記載の酸化的脱水素化反応用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2017年04月12日付の韓国特許出願第10-2017-0047503号及び該特許を優先権として2018年04月11日付で再出願された韓国特許出願第10-2018-0042150号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、酸化的脱水素化反応用触媒、その製造方法及びそれを用いた酸化的脱水素化方法に関し、より詳細には、酸化的脱水素化反応に活性である金属酸化物を多孔性支持体に特定の含量範囲内でコーティングして触媒の耐久性を向上させ、それをブタジエンの製造時に使用することで、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度、収率などを大幅に改善することができる酸化的脱水素化反応用触媒、その製造方法及びそれを用いた酸化的脱水素化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1,3-ブタジエンは、合成ゴムの代表的な原材料であって、石油化学産業の需給状況と連係して価格が急激に変動する主要な基礎留分の一つである。1,3-ブタジエンを製造する方法としては、ナフサクラッキング、ノルマルブテンの直接脱水素化反応、ノルマルブテンの酸化的脱水素化反応などがある。
【0004】
ノルマルブテンの酸化的脱水素化反応は、金属酸化物触媒の存在下でブテンと酸素が反応して1,3-ブタジエンと水を生成する反応であって、安定した水が生成されるので、熱力学的に非常に有利であるという利点がある。また、ノルマルブテンの酸化的脱水素化反応は、直接脱水素化反応とは異なって発熱反応であるので、低い温度で反応工程が運転されることで、エネルギーが低減されると共に、高い収率で1,3-ブタジエンを得ることができ、酸化剤を添加することによって触媒を被毒させて、触媒の寿命を短縮させる炭素沈積物の生成が少なく、それの除去が容易であるので商用化工程に非常に適しているという利点がある。
【0005】
通常、酸化的脱水素化反応用金属酸化物触媒は、固定層反応器に対する充填の容易性、触媒の耐久性などを向上させるために、機械的強度が増加したペレット状に押出成形された後、反応器に充填され、このとき、触媒粉末の弱い凝集力を改善するために過量の有無機バインダーが混合される。この場合、バインダーによる副反応により、ブタジエンの収率、選択度などが低下するという問題があり、触媒の充填時に活性物質が消失するという問題が依然として残っているため、これらの問題を解消するための方案が模索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国登録特許第10-0847206号
【文献】韓国登録特許第10-1340620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消するために案出されたもので、酸化的脱水素化反応に活性である金属酸化物を多孔性支持体に特定の含量範囲内で所定の方法でコーティングすることによって、触媒の耐久性、充填の容易性などを改善し、究極的には、ブタジエンの製造時に転化率、選択度、収率などを向上させることができる酸化的脱水素化反応用触媒を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法を提供し、本発明による触媒を用いた酸化的脱水素化方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、酸化的脱水素化反応の活性成分であるABが多孔性支持体にコーティングされた触媒であって、下記の数式1を満たすことを特徴とする酸化的脱水素化反応用触媒を提供する。
[数式1]
Xwt%+Ywt%=100wt%
(前記数式1において、Xは、ABの含量値であって、5以上~30未満であり、Aは、銅(Cu)、ラジウム(Ra)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)からなる群から選択された1種以上であり、Bは鉄(Fe)であり、Yは、多孔性支持体の含量値であって、70超~95以下である。)
【0011】
また、本発明は、酸化的脱水素化反応の活性成分であるAB粉末を製造するステップ;前記AB粉末を蒸留水に分散させて触媒スラリーを製造するステップ;前記触媒スラリーを多孔性支持体にコーティングするステップ;及び前記コーティングの後、乾燥させて酸化的脱水素化反応用触媒を収得するステップ;を含み、製造された触媒が前記数式1を満たすことを特徴とする酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記酸化的脱水素化反応用触媒が充填された反応器に、ノルマルブテンを含有するC4混合物及び酸素を含む反応物を通過させながら酸化的脱水素化反応を行うステップを含むことを特徴とするブタジエンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応器に触媒を充填することが容易でありながらも、充填時に活性成分の消失を最小化し、触媒の耐久性を向上させることができると共に、究極的には、ブタジエンの製造時に使用することで、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度や収率などが大幅に改善される効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例によって製造された酸化的脱水素化反応用触媒の表面及び断面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本記載の酸化的脱水素化反応用触媒及びその製造方法を詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る酸化的脱水素化反応用触媒は、酸化的脱水素化反応の活性成分であるABが多孔性支持体にコーティングされた触媒であって、下記数式1を満たすことを特徴とする。
[数式1]
Xwt%+Ywt%=100wt%
(前記数式1において、Xは、ABの含量値であって、5以上~30未満であり、Aは、2価陽イオン金属であり、具体的な一例として、銅(Cu)、ラジウム(Ra)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)からなる群から選択された1種以上であり、Bは鉄(Fe)であり、Yは、多孔性支持体の含量値であって、70超~95以下である。)
【0017】
前記数式1において、Xは、一例として、5以上~30未満、または5~28であってもよく、より好ましくは、7~27、7~20、7~18、または7~14であってもよく、この範囲内で、反応効率に優れるので、収率、選択度、転化率などが向上するという利点がある。
【0018】
前記数式1において、Yは、一例として、70超~95以下、または72~95であってもよく、より好ましくは、73~93、80~93、82~93、または86~93であってもよく、この範囲内で、触媒の使用量が適切であるので、反応効率に優れながらも、反応熱の制御が容易であり、究極的には、ブタジエンの収率、選択度などが向上するという効果がある。
【0019】
前記ABは、酸化的脱水素化反応に活性を示す金属酸化物であって、一例として、AがZnであり、BがFeである亜鉛フェライト(ZnFe)であってもよく、これは、ノルマルブテンの酸化的脱水素化反応に優れた活性を示しながらも、副反応を抑制して1,3-ブタジエンの選択度が高いという利点がある。
【0020】
前記ABは、平均粒径が、一例として、250μm以下、0.1~250μm、0.1~75μm、45μm以下、45~250μm、または100~250μmであってもよく、好ましくは、70μm以下、50μm以下、または45μm以下であってもよく、この範囲内で、触媒の活性に優れるので、反応効率が向上するという効果がある。
【0021】
前記多孔性支持体は、平均粒径が、一例として、3mm以上、3~9mm、または4~6mmであってもよく、好ましくは、3~5mmまたは6~9mmであってもよく、この範囲内で、反応効率に優れるので、転化率、選択度などが向上するという効果がある。
【0022】
前記多孔性支持体は、平均気孔サイズが、一例として、50~200μmまたは100~150μmであってもよく、この範囲内で、AB粉末のコーティングが容易であり、粉末が脱着しないという効果がある。
【0023】
本記載において平均粒径及び平均気孔サイズは、一例として、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope)で測定することができる。
【0024】
前記多孔性支持体のパッキング密度(packing density)は、一例として、0.4~3g/cm、または0.4超~3未満g/cm、好ましくは0.7~2.0g/cm、より好ましくは0.8~1.5g/cmであってもよく、この範囲内で、酸化的脱水素化反応の効率に優れながらも、反応熱の制御が容易であり、究極的には、ブタジエンの収率、選択度などが向上するという効果がある。
【0025】
本記載においてパッキング密度は、チューブ型メスシリンダーに100ccを充填できる質量を、その体積値100ccで除して計算した値である。
【0026】
前記多孔性支持体の形状は、好ましくは、球状、ペレット状または中空状であってもよく、この場合に、反応効率に優れるので、収率、選択度、転化率などが向上するという効果を提供する。
【0027】
前記多孔性支持体は、一例として、アルミナ、シリカ、及びジルコニアからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルミナまたはシリカを含むものであり、この場合に、反応器への充填のための機械的強度が満足され、副反応が少ないという効果がある。
【0028】
一例として、前記触媒は、酸化的脱水素化反応に活性であるAB粉末の凝集力などを向上させるための目的で有無機バインダーをさらに含むことができ、この場合に、バインダーの含量は、AB100重量部を基準として、30重量部以下、0.1~20重量部、または0.1~10重量部であってもよく、この範囲内で、酸化的脱水素化反応の効率を大きく低下させないながらも、触媒の耐摩耗性が向上するという効果を提供することができる。
【0029】
前記バインダーは、一例として、ケイ酸アルミニウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはこれらの全てを含むことができ、これを適正量含む場合、酸化的脱水素化反応の効率を大きく低下させないながらも、触媒の耐摩耗性が向上するという効果がある。
【0030】
他の一例として、前記触媒はバインダーフリー(free)であってもよく、この場合に、バインダーによる副反応を引き起こさないので、ノルマルブテンの転化率、ブタジエンの選択度などが大幅に改善されるという効果を提供し、一部の成分の投入を省略することによって、触媒の製造工程の短縮やコストを低減するという効果がある。
【0031】
本記載においてバインダーフリー(free)は、触媒の製造時に有機バインダーや無機バインダーを省略すること、及び/又はこれから製造されたことを意味する。
【0032】
本記載の酸化的脱水素化反応用触媒の製造方法は、一例として、酸化的脱水素化反応の活性成分であるAB粉末を製造するステップ;前記AB粉末を蒸留水に分散させて触媒スラリーを製造するステップ;前記触媒スラリーを多孔性支持体にコーティングするステップ;及び前記コーティングの後、乾燥させて酸化的脱水素化反応用触媒を収得するステップ;を含み、前記ステップを含んで製造された触媒は、前記数式1を満たすことを特徴とすることができる。以下、前記触媒の製造方法を、各ステップ別に具体的に詳述する。
【0033】
本記載において、酸化的脱水素化反応の活性成分であるAB粉末を製造するステップは、一例として、共沈槽を準備するステップ;A金属前駆体及びB金属前駆体を含む金属前駆体水溶液を準備するステップ;前記金属前駆体水溶液を、pHを7~10に維持させるためのアンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液などのような塩基性水溶液と前記共沈槽に滴加して、A金属とB金属を共沈させるステップ;及び前記共沈が完了した後、共沈溶液を乾燥し、焼成するステップ;を含むことができる。
【0034】
前記塩基性水溶液は、一例として、アンモニア水、及び水酸化ナトリウム水溶液から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアンモニア水である。
【0035】
前記A金属前駆体及びB金属前駆体は、当業界で通常使用される金属前駆体であれば、特に制限されず、好ましくは、A又はB金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、及び酢酸塩から選択されてもよく、これらの水和物の形態も可能である。
【0036】
前記A金属前駆体は、一例として、酸化的脱水素化反応に高い活性を示す亜鉛前駆体であってもよく、より具体的には、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などから選択された1種以上であってもよい。前記B金属前駆体は、一例として、鉄前駆体であってもよく、より具体的には、硝酸鉄、塩化鉄などから選択された1種以上であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではないことを明示する。
【0037】
前記塩基性水溶液をA金属前駆体及びB金属前駆体と滴加して共沈させるときには、酸化的脱水素化反応に非活性である結晶構造の形成を最小化し、安定的に共沈が行われ得るように、pHを7~10、7~9、または7.5~8.5に維持させることが好ましい。
【0038】
また、前記A金属前駆体とB金属前駆体は、一例として、A金属とB金属のモル比が、一例として、1:1.5~1:3になるように調節することが好ましく、この範囲内で、酸化的脱水素化反応の活性に優れたAB触媒が製造され得る。
【0039】
前記金属前駆体水溶液を滴加するときには、A金属とB金属の十分な共沈のために、共沈槽を攪拌しながら一定の速度で滴加することが好ましい。また、前記A金属前駆体とB金属前駆体をいずれも滴加した後に、共沈が十分に行われ得るように攪拌;熟成;または攪拌及び熟成;させるステップをさらに含むことができる。
【0040】
前記A金属とB金属の共沈が完了した後には、共沈溶液を濾過して固体成分を分離した後、これを乾燥及び焼成して粉末状のABを収得することができ、この場合に、不純物が除去されて高純度のAB粉末を収得することができ、触媒活性が向上するという効果がある。
【0041】
前記乾燥及び焼成は、当業界で通常行われる範囲内であれば、特に制限されず、一例として、乾燥は、60~200℃で10~24時間行うことができ、焼成は、350~800℃または400~700℃の温度で1~40時間または3~18時間行うことができる。
【0042】
前記製造ステップを通じて収得されたAB粉末を使用して触媒スラリーを製造するステップの前に、前記AB粉末を粉砕し、一例として、250μm以下、0.1~250μm、0.1~75μm、45μm以下、45~250μm、または100~250μm、好ましくは、70μm以下、50μm以下、または45μm以下の粒子サイズを有するように分級するステップをさらに含むことができ、前記AB粉末の平均粒径が前記範囲内である場合に、触媒活性に優れるので、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度などが向上するという効果がある。
【0043】
前記粉砕及び分級は、機械的な力を加えて粉末をさらに小さくした後、目的とする平均粒径を有するAB粉末を収得する工程であって、通常の粉砕及び分級方法や装置を使用することができ、特に制限されない。
【0044】
前記のようにAB粉末を製造した後には、これを蒸留水に分散させて、一例として、濃度5~60重量%、好ましくは5~35重量%、より好ましくは10~30重量%の触媒スラリーとして製造する。このとき、触媒スラリーの濃度が前記範囲内である場合には、後述するコーティング工程が容易でありながらも、活性に優れた触媒を提供するという効果がある。
【0045】
前記触媒スラリーの製造時には、必要に応じて選択的に、ケイ酸アルミニウム、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択された1種以上のバインダーをさらに含むことができ、前記バインダーは、AB100重量部を基準として、30重量部以下、または0.1~20重量部添加することができる。
【0046】
より好ましくは、前記触媒の製造方法は、バインダーを含まないバインダーフリー(free)であってもよく、この場合に、ブタジエンの製造時にバインダーによる副反応が発生しないので、ブタジエンの選択度、収率などが向上するという効果がある。
【0047】
前記触媒スラリーを多孔性支持体にコーティングする方法は、本発明の属する技術分野で通常使用される、触媒スラリーを多孔性支持体にコーティングする方法であれば、特に制限されず、一例として、ディップコーティング、ウォッシュコーティング、スプレーコーティング、含浸などで行われてもよい。
【0048】
具体例として、前記のように触媒スラリーを製造した後に、コーティング用押出機、担持槽(impregnator)、回転型チャンバー、またはミキサーなどに多孔性支持体を投入し、これを作動させながら前記触媒スラリーを投入してコーティングするステップを含む。このような方式で触媒スラリーを多孔性支持体にコーティングする場合には、触媒の浪費を最小化することができながらも、均等かつ均一なコーティングに有利であるという利点があり、酸化的脱水素化反応のための反応器に触媒を充填するときに活性成分が消失する問題を最小化することができる。
【0049】
前記コーティング時の触媒スラリーの投入方法は、特に制限されないが、一括投入、多段投入、連続投入、噴射投入、噴霧投入などであってもよく、触媒の浪費を最小化し、均一なコーティングのためには多段投入、連続投入、噴射投入、噴霧投入などの方式が有利である。
【0050】
また、前記コーティングは、一例として、15~90℃、または50~80℃の範囲内で行うことができる。
【0051】
本記載の酸化的脱水素化反応用触媒は、ノルマルブテンから1,3-ブタジエンを製造する反応に使用することができ、以下、本記載の酸化的脱水素化方法を具体的に説明する。
【0052】
本記載の酸化的脱水素化方法は、前記酸化的脱水素化反応用触媒が充填された反応器に、ノルマルブテンを含有するC4混合物及び酸素を含む反応物を通過させながら酸化的脱水素化反応を行うステップを含むことを特徴とすることができる。
【0053】
具体的な一例として、本記載の酸化的脱水素化方法は、i)酸化的脱水素化反応用触媒を反応器に充填させるステップ;及びii)ノルマルブテンを含有するC4混合物及び酸素を含む反応物を、前記触媒が充填された反応器の触媒層に連続して通過させながら酸化的脱水素化反応を行うステップ;を含むことができる。
【0054】
本記載の酸化的脱水素化方法は、一例として、ブタジエンの製造方法であってもよい。
【0055】
一例として、前記触媒は、反応器に固定床として充填されてもよい。また、前記反応器は、特に制限されず、好ましい一例として、金属管型反応器、多管式反応器、プレート式反応器などを使用することができる。
【0056】
前記触媒は、一例として、反応器内部の体積の10~90体積%充填されてもよい。
【0057】
前記C4混合物は、一例として、2-ブテン(trans-2-Butene、cis-2-Butene)、及び1-ブテン(1-Butene)から選択された1種以上のノルマルブテンを含み、選択的に、ノルマルブタンやC4ラフィネート-3をさらに含むことができる。
【0058】
前記反応物は、一例として、空気、窒素、スチーム及び二酸化炭素から選択された1種以上をさらに含むことができ、好ましくは、窒素及びスチームをさらに含むものである。
【0059】
具体的な一例として、前記反応物は、C4混合物、酸素、スチーム及び窒素を、1:0.1~1.5:1~15:0.5~10、1:0.5~1.2:5~12:0.5~5、1:1.0~1.2:5~12:0.5~5、または1:1.2~1.5:5~12:0.5~5のモル比で含むことができる。また、本記載によるブタジエンの製造方法は、C4混合物1モルに対し1~10または5~10モルとして少量のスチームを使用するにもかかわらず、反応効率に優れ、廃水の発生が少ないという利点があり、究極的には、廃水処理コストは勿論、工程で消耗されるエネルギーを節減するという効果を提供する。
【0060】
前記酸化的脱水素化反応は、一例として、250~500℃、300~450℃、320~400℃、または330~380℃の反応温度で行うことができ、この範囲内で、エネルギー費用を大きく増加させないと共に、反応効率に優れるので、ブタジエンを生産性高く提供することができる。
【0061】
前記酸化的脱水素化反応は、一例として、ノルマルブテンを基準として、50~2000h-1、50~1500h-1、または50~1000h-1の空間速度(GHSV:Gas Hourly Space Velocity)で行うことができ、この範囲内で、反応効率に優れるので、転化率、選択度、収率などに優れるという効果がある。
【0062】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0063】
[実施例1~5]
【0064】
1.ZnFe粉末の製造
蒸留水2L、塩化亜鉛(ZnCl)288.456g及び塩化鉄(FeCl)1132.219gを含む金属前駆体水溶液を準備した。蒸留水2Lが入っている共沈槽に準備した金属前駆体溶液を滴加しながら、pHが8になるように濃度9wt%のアンモニア水を添加した。均一な組成の試料を得るために、撹拌機を使用して1時間攪拌しながら金属前駆体溶液を全て滴加した後、1時間熟成させた後、沈殿物が形成された溶液を濾過して沈殿物を分離した。分離された沈殿物を16時間乾燥させた後、650℃で焼成してZnFe粉末を収得し、収得された粉末を粉砕した。
【0065】
2.コーティング触媒の製造
下記の表1に記載された割合を有するように計量されたZnFe粉末を蒸留水に分散させて、濃度が約10~30wt%である触媒スラリーを製造した。前記製造された触媒スラリーを、平均粒径5mmであり、パッキング密度1.1g/cmであるアルミナボールにコーティングさせた。コーティングは、シリンダーやチャンバー内の温度が50~80℃である範囲内で行った。コーティングが完了した後、蒸留水が蒸発し得るように90~120℃のオーブンで乾燥させて、コーティング触媒を製造した。製造されたコーティング触媒の表面及び断面を示す写真を下記の図1に示した。下記の図1を説明すると、本記載によるコーティング触媒は、多孔性支持体の表面だけでなく内部気孔にも均等に活性成分(ZnFe)がコーティングされる特徴があることを確認できる。
【0066】
3.酸化的脱水素化反応
前記のように製造されたコーティング触媒を使用してブテンの酸化的脱水素化反応を行い、具体的な反応条件は、次の通りである。反応物の比率及び気体空間速度(GHSV)は、C4混合物内のノルマルブテンを基準とする。
【0067】
反応物として、トランス-2-ブテンとシス-2-ブテンを含むC4混合物、酸素、スチーム及び窒素を1:1:5:4のモル比で混合して使用し、C4混合物、酸素及び窒素の量は、質量流速調節器を使用して制御し、スチームの注入速度は、液体ポンプを使用して調節した。また、前記で製造されたコーティング触媒は、管型反応器に固定床として充填された。反応物の注入速度は、C4混合物内のノルマルブテンを基準として空間速度(GHSV)が120h-1となるように触媒の量を設定し、反応温度は、下記の表1に示したように設定して反応させた。
【0068】
[比較例1]
前記実施例と同じ方法で平均粒径1mmサイズのZnFe粉末を製造した後、コーティング工程を経ずに、固定層反応器にZnFe粉末4wt%とアルミナボール96wt%を混合して希釈充填する以外は、前記実施例と同様の方法で酸化的脱水素化反応を行った。
【0069】
[比較例2]
前記実施例において、アルミナボールにコーティングされるZnFeの含量が3wt%となるように調節する以外は、前記実施例と同様の方法でコーティング触媒を製造し、酸化的脱水素化反応を行った。
【0070】
[比較例3]
前記実施例において、アルミナボールにコーティングされるZnFeの含量が30wt%となるように調節する以外は、前記実施例と同様の方法でコーティング触媒を製造した。この場合、コーティングが完了した後、ZnFe粉末がアルミナボールから剥がれ落ちてコーティングが維持されないため、酸化的脱水素化反応に適用することが不可能であった。
【0071】
[参照例1]
前記実施例において、触媒スラリーの製造時に、バインダーとしてケイ酸アルミニウムを、ZnFe粉末100重量部を基準として5.26重量部さらに添加し、アルミナボールにコーティングされるZnFe粉末の含量が14wt%となるように調節した以外は、実施例と同様の方法でコーティング触媒を製造した。
【0072】
[実験例]
前記実施例、比較例及び参照例による触媒を用いた酸化的脱水素化反応で生成された物質を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。ブテンの転化率、1,3-ブタジエンの収率及び選択度は、下記の数式2、3及び4によってそれぞれ算出し、生成物の分析結果は、下記の表1に示す。
[数式2]
転化率(%)=[(反応したブテンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
[数式3]
選択度(%)=[(生成された1,3-ブタジエン又はCOのモル数)/(反応したブテンのモル数)]×100
[数式4]
収率(%)=[(生成された1,3-ブタジエンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0073】
【表1】
【0074】
(前記表において、Xは、ZnFeと多孔性支持体の合計100重量%を基準とし、*は、ZnFe粉末をアルミナボールにコーティングせず、ZnFe粉末4wt%をアルミナボール96wt%と希釈充填したことを意味する。)前記表1に示すように、数式1を満たすように製造されたコーティング触媒を使用して酸化的脱水素化反応を行う場合(実施例1~5)、多孔性支持体に活性物質をコーティングせずに、混合して希釈充填した比較例1と比較して、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度及び収率、酸素の転化率などが優れていることを確認できる。
【0075】
また、前記の表1に示したように、本発明によるコーティング触媒は、活性成分の含量が7~27wt%である範囲内では、広い温度範囲で触媒の活性が高く維持されることで、ブテンの転化率、1,3-ブタジエンの選択度、収率などが優れていることを確認できる。
【0076】
反面、多孔性支持体にコーティングされた活性成分の含量が3wt%としてコーティング割合が低い場合には、反応条件が同一である実施例1と比較して、触媒活性が非常に低下することを確認でき、活性成分の含量が30wt%としてコーティング割合が本発明の範囲を超える場合には、コーティングが維持されないため、酸化的脱水素化反応に適用することが不可能であった。
【0077】
また、バインダーを含んで製造された参照例1のコーティング触媒は、副反応物質であるCOの選択度が高いものと確認された。
【0078】
追加実施例1
前記実施例3において、パッキング密度3g/cmである支持体を使用する以外は、前記実施例3と同様の方法でコーティング触媒を製造し、酸化的脱水素化反応を行った。
【0079】
追加実施例2
【0080】
前記実施例3において、パッキング密度0.4g/cmである支持体を使用する以外は、前記実施例3と同様の方法でコーティング触媒を製造し、酸化的脱水素化反応を行った。
【0081】
【表2】
【0082】
追加実施例3
前記実施例3において、パッキング密度0.8g/cmである支持体を使用する以外は、前記実施例3と同様の方法でコーティング触媒を製造し、酸化的脱水素化反応を行った。
【0083】
追加実施例4
前記実施例3において、パッキング密度1.5g/cmである支持体を使用する以外は、前記実施例3と同様の方法でコーティング触媒を製造し、酸化的脱水素化反応を行った。
【0084】
【表3】
【0085】
前記表2及び3に示すように、本発明による支持体のパッキング密度に応じてブテンの転化率、ブタジエンの選択度及び収率などが変わることが確認できた。より詳細に説明すると、追加実施例1、2のように支持体のパッキング密度が小さすぎる又は大きすぎる場合、ブテンの転化率又は収率が低下し、追加実施例3、4のようにパッキング密度が0.8~1.5g/cmの範囲に入る場合、ブテンの転化率、ブタジエンの選択度及び収率などがいずれも優れた範囲に入ることが確認できた。
図1