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特許7019913フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイ
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  • 特許-フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20220208BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220208BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220208BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20220208BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J133/04
C09J7/35
G09F9/00 342
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020523029
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 KR2019001433
(87)【国際公開番号】W WO2019151822
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013378
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒー
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ビュンス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン チョル
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュイ ジェ
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0097850(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0061007(KR,A)
【文献】特開2005-290357(JP,A)
【文献】特開平08-155040(JP,A)
【文献】特開2018-028051(JP,A)
【文献】特許第6163824(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G09F9/00
H05B33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、イオン塩と、架橋剤と、を含むフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着フィルムであって、
前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物をアプリケータにより塗布して塗膜を形成した後、マティスオーブンにて140℃、3分乾燥することで、厚さ25μmの粘着フィルムを製造したときの-30℃および60℃での貯蔵弾性率が10Pa~10Paであり、
前記イオン塩が、カチオンおよびアニオンを含むイオン塩であり、
前記アニオンが、下記化学式1で表されるものであり、
25℃、60RH%、100KHzでの比誘電率が4以上である、粘着フィルム。
[化学式1]
[X(YOmRf)n]
(前記化学式1中、Xは、窒素原子または炭素原子であり、
Yは、炭素原子または硫黄原子であり、
Rfはパーフルオロアルキル基であり、
mは1または2であり、nは2または3であって、
前記Yが炭素である場合、mは1であり、前記Yが硫黄である場合、mは2であり、前記Xが窒素である場合、nは2であり、前記Xが炭素である場合、nは3である。)
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、重量平均分子量が100万以上の重合体を含む、請求項1に記載の粘着フィルム
【請求項3】
前記イオン塩が金属塩または有機塩である、請求項1または2に記載の粘着フィルム
【請求項4】
前記カチオンが金属塩である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着フィルム
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂は、アクリレート基を含む化合物に由来の単位を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が-70℃以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着フィルム
【請求項7】
前記粘着フィルムの厚さが10μm~50μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
請求項からのいずれか一項に記載の粘着フィルムを含むフォルダブルディスプレイ。
【請求項9】
前記粘着フィルムは、カバーウィンドウとタッチパネルとの間、またはタッチパネルと表示パネルとの間に備えられる、請求項に記載のフォルダブルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイに関する。
【0002】
本出願は、2018年2月2日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10‐2018‐0013378号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ディスプレイに関する技術の発達に伴い、折ったり、ロール(Roll)状に巻いたり、ゴムひものように伸縮させたりするなど、使用段階で変形が可能なディスプレイ装置が研究および開発されている。これらのディスプレイは、様々な形態に変形可能であるため、使用段階でのディスプレイの大型化の要求と、携帯のためのディスプレイの小型化の要求を両方とも満たすことができる。
【0004】
変形可能なディスプレイ装置は、予め設定された形態に変形可能であるだけでなく、ユーザの要求に応じて、またはディスプレイ装置が用いられる状況の必要に応じて、様々な形態に変形可能である。したがって、ディスプレイの変形された形態を認識し、認識した形態に対応してディスプレイ装置を制御する必要がある。
【0005】
一方、変形可能なディスプレイ装置は、変形により、ディスプレイ装置の各構成が損傷され得るという問題があるため、かかるディスプレイ装置の各構成は、フォールディング(Folding)信頼性および安定性を満たすべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルム、およびそれを含むフォルダブルディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱硬化性樹脂と、イオン塩と、架橋剤と、を含むフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物であって、
前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、硬化後に、-30℃および60℃での貯蔵弾性率が10Pa~10Paである、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物を提供する。
【0008】
本出願の一実施態様において、上述のフォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着フィルムを提供する。
【0009】
本出願の一実施態様において、上述の粘着フィルムを含むフォルダブルディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本出願の一実施態様に係るディスプレイ用粘着剤組成物は、イオン塩を添加することで、粘着剤組成物のイオン伝導を増加させ、誘電率を増加させる。特に、粘着剤組成物でのイオン塩の解離が生じやすいと、イオン伝導が増加し、比誘電率が向上する。
【0011】
フォルダブルディスプレイ用粘着剤として、ディスプレイが損傷することなくフォールディング(folding)特性を実現するために、貯蔵弾性率(modulus)を減少させた粘着剤にイオン塩を添加することで、内部イオン伝導を増加させ、誘電率を増加させた粘着剤組成物を提供する。
【0012】
本発明は、従来のフォルダブル粘着剤が有する粘着特性およびフォールディング特性は維持しつつ、誘電率を増加させ、オンセルタイプタッチ構造(On-cell type touch:TOE)で高解像度および速い反応性のタッチを可能とする。
【0013】
また、本発明のイオン塩の種類としては、金属塩と有機塩が何れも使用可能であり、粘着剤の内部でイオン解離が生じやすく、イオン伝導に優れた塩であるほど、比誘電率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本明細書の一実施態様に係るスタティックフォールディング(Static folding)テストにおける2セットスタックアップ(2-Set_Stack Up)構造の試験片の模式図である。
図2】本明細書の粘着剤が用いられるフォルダブルディスプレイの模式図である。
図3】本明細書の一実施態様に係る実施例1、2、比較例2および3の温度-モジュラスを測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0016】
本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」としたときに、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、アクリレート基を含む化合物に由来の単位を含む。
【0019】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂であり、具体的に、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、または2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来の単位を含んでもよい。
【0020】
本明細書の一実施態様において、前記アクリレート基を含む化合物は、エチルヘキシルアクリレート、またはアクリル酸である。
【0021】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、エチルヘキシルアクリレート、またはアクリル酸に由来の単位を含む。
【0022】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂は、エチルヘキシルアクリレート、およびアクリル酸に由来の単位を含む。
【0023】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、エチルヘキシルアクリレートに由来の単位は97~99重量部で、アクリル酸に由来の単位は1~3重量部で含まれる。
【0024】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、エチルヘキシルアクリレートに由来の単位は98重量部で、アクリル酸に由来の単位は2重量部で含まれる。前記含量を満たす樹脂を用いる場合、本発明の貯蔵弾性率値を満たすことができる。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤、またはイソシアネート系架橋剤である。
【0026】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N,N'-テトラグリシジル-1,3-キシレンジアミン、またはグリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4''-トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω-イソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、またはキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、または2,4,4-トラメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;または3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、または1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ポリイソシアネートなどや、または上記のうち1つ以上のポリイソシアネートとポリオールの反応物などが挙げられる。
【0028】
一例示として、本出願の粘着剤組成物は、前記架橋剤を含み、熱硬化性樹脂に含まれる重合体に含まれている架橋性官能基と架橋反応を行うことができる。
【0029】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、100万g/mol以上である。
【0030】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、100万g/mol以上200万g/mol以下である。
【0031】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量が100万g/mol以下である場合には、耐久性が弱くなり、200万g/mol以上である場合には、コーティング性が低下し、フォールディング時にストレスが増加するという問題がある。
【0032】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)により、一般的な高分子の測定方式により測定し、分子量が既知のポリスチレン(Polystyrene)を基準として測定した。
【0033】
本明細書の一実施態様において、前記イオン塩は、金属塩または有機塩である。
【0034】
本明細書の一実施態様において、前記イオン塩は、カチオンおよびアニオンを含むイオン塩を意味する。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記イオン塩として、金属塩が使用可能である。前記金属塩は、例えば、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンを含んでもよい。カチオンとしては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)、ベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、およびバリウムイオン(Ba2+)などの一種または二種以上が挙げられる。例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびバリウムイオンの一種または二種以上、またはイオン安定性および移動性を考慮して、リチウムイオンを用いてもよい。
【0036】
イオン性化合物に含まれるアニオンとしては、PF 、AsF、NO2-、フルオリド(F)、クロリド(Cl)、ブロミド(Br)、ヨージド(I)、パークロレート(CLO )、ヒドロキシド(OH)、カーボネート(CO 2-)、ニトレート(NO )、トリフルオロメタンスルホネート(CFSO )、スルホネート(SO-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、メチルベンゼンスルホネート(CH(C)SO )、p-トルエンスルホネート(CHSO )、テトラボレート(B 2-)、カルボキシベンゼンスルホネート(COOH(C)SO )、トリフロロメタンスルホネート(CFSO )、ベンゾネート(CCOO)、アセテート(CHCOO)、トリフロロアセテート(CFCOO)、テトラフルオロボレート(BF )、テトラベンジルボレート(B(C )、またはトリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C )などが挙げられる。
【0037】
本明細書の一実施態様において、前記アニオンは、下記化学式1で表される。
[化学式1]
[X(YOmRf)n]
前記化学式1中、Xは、窒素原子または炭素原子であり、Yは、炭素原子または硫黄原子であり、Rfはパーフルオロアルキル基であり、mは1または2であり、nは2または3である。化学式1中、Yが炭素である場合、mは1であり、Yが硫黄である場合、mは2であり、Xが窒素である場合、nは2であり、Xが炭素である場合、nは3であってもよい。
【0038】
他の例示として、アニオンとしては、下記化学式1で表されるアニオン、またはビスフルオロスルホニルイミドなどが用いられてもよい。
【0039】
本明細書において、前記化学式1のアニオン、またはビス(フルオロスルホニル)イミドは、パーフルオロアルキル基(Rf)またはフルオロ基により、高い電気陰性度を示し、また、特有の共鳴構造を含むことで、カチオンとの弱い結合を形成するとともに、疎水性を有する。したがって、イオン性化合物が、粘着樹脂などの組成物の他成分と優れた相溶性を示す。前記化学式1のRfは、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~8、または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であってもよく、この際、前記パーフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、または環状の構造を有してもよい。化学式1のアニオンは、スルホニルメチド系、スルホニルイミド系、カルボニルメチド系、またはカルボニルイミド系アニオンであってもよく、具体的には、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミド、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド、トリストリフルオロメタンカルボニルメチド、ビスパーフルオロブタンカルボニルイミド、またはビスペンタフルオロエタンカルボニルイミドなどの一種または二種以上の混合であってもよい。イオン性塩は、例えば、カチオンとして、N-エチル-N,N-ジメチル-N-プロピルアンモニウム、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、N-メチル-N,N,N-トリブチルアンモニウム、N-エチル-N,N,N-トリブチルアンモニウム、N-メチル-N,N,N-トリヘキシルアンモニウム、N-エチル-N,N,N-トリヘキシルアンモニウム、N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム、またはN-エチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウムなどのような4級アンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)、ピリジニウム(pyridinium)、イミダゾリウム(imidazolium)、ピロリジニウム(pyrolidinium)、またはピペリジニウム(piperidinium)などを前記アニオン成分とともに含む有機塩が用いられてもよく、必要に応じて、前記金属塩と前記有機塩が併用されてもよい。
【0040】
本明細書の一実施態様において、前記イオン塩は、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、ビス(トリフルオロメタン)スルホニウムリチウム塩、およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群から選択される。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、前記イオン塩は0.01重量部以上10重量部以下で含まれる。
【0042】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物は、硬化後、-30℃および60℃での貯蔵弾性率が10Pa~10Paである。前記貯蔵弾性率が前記範囲を満たす場合、ブリードアウト(bleed-out)現象が減少するとともに、衝撃伝達率が減少する効果がある。前記範囲より貯蔵弾性率が低い場合には、ブリードアウト現象が発生して工程効率が減少し、前記範囲より貯蔵弾性率が高い場合には、フォールディング過程で基板に大きい衝撃が伝達され、ディスプレイに損傷を与えることになる。したがって、フォルダブル(foldable)ディスプレイに適した曲げ信頼性を有する粘着剤層を形成するにおいて有用である。
【0043】
フォルダブルディスプレイは、折り畳まれる過程で各層が物理的な力を受けることになる。この場合、一般のディスプレイよりも、粘着剤のブリードアウト現象および物理的な衝撃によって浮き上がり、気泡、および剥離などが発生しやすく、衝撃伝達率が大きいと、フォールディング過程で粘着剤に付いているカバーウィンドウのクラックが生じやすい。したがって、フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物においては、粘着剤のブリードアウト(bleed-out)現象を減少させるとともに、衝撃伝達率を減少させることが非常に重要である。
【0044】
<貯蔵弾性率の測定>
本明細書の一実施態様に係る前記粘着剤組成物をアプリケータにより塗布して塗膜を形成した後、マティスオーブンにて140℃、3分乾燥することで、厚さ25μmの粘着フィルムを製造した。前記粘着フィルムを複数回重ねて厚さ1mmの試験片に裁断し、直径8mmのパラレルプレートフィクスチャ(parallel plate fixture)を用いて、Advanced Rheometric Expansion System G2(TA社)にて、1Hz、5% strain、10℃/minの条件で貯蔵弾性率を測定した。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度は-70℃以下である。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度は-200℃以上-70℃以下である。
【0047】
本明細書に系る熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)により、試料の熱流(Heat Flow)を利用して測定した。
【0048】
本明細書の一実施態様において、前記フォルダブルディスプレイ用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着フィルムを提供する。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記組成物は、熱硬化することが好ましい。
【0050】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化として、熱乾燥した後、熱処理してもよい。
【0051】
本明細書の一実施態様において、前記熱硬化として、熱乾燥することが好ましい。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記熱乾燥は、100℃~150℃で1分~10分乾燥することが好ましい。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記熱乾燥は、135℃~145℃で2分~4分乾燥することが好ましい。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記熱処理過程は、30℃~50℃で60時間~90時間放置することが好ましい。
【0055】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムの厚さは、10μm~50μmである。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムの厚さは、20μm~30μmである。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムの厚さは、25μmである。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムは、25℃、60RH%、100KHzでの比誘電率が4以上である。
【0059】
<比誘電率の測定方法>
本明細書において、比誘電率は、インピーダンスゲイン・フェーズアナライザ(Impedance gain-phase analyzer)を利用して静電容量値(Cp)を測定した後、下記式1により比誘電率値を計算する。
[式1]
【数1】
前記式1中、εは、粘着フィルムの比誘電率であり、
は、粘着フィルムの静電容量値(F)であり、
hは、粘着フィルムの厚さ(m)であり、
Aは、粘着フィルムと付着された電極の面積(m)であり、
εは、真空誘電率であって、8.854*10-12F/mである。
【0060】
本明細書の一実施態様において、比誘電率が4以上であることが好ましい。比誘電率値は高いほど好ましく、20も可能である。
【0061】
本明細書の一実施態様において、前記比誘電率が4以上である粘着フィルムをオンセルタッチ構造に用いる場合、タッチ分解能が高く、応答速度が速いのに対し、比誘電率が4未満である場合には、タッチ分解能に劣り、タッチの感度にも劣る。
【0062】
フォルダブルディスプレイのその他の具体的な構成は、例えば、韓国特許出願公開第2015-0138450号などに公知されており、本出願は、前記粘着剤を含むかかる公知のフォルダブルディスプレイの構成を制限なしに含み得る。
【0063】
本明細書の一実施態様において、前記粘着フィルムは、カバーウィンドウとタッチパネルとの間、またはタッチパネルと表示パネルとの間に備えられる。図2には、基板201と、タッチパネルまたは表示パネル202と、偏光フィルム203と、カバーウィンドウ204と、が順に積層されたフォルダブルディスプレイの構造が例示されており、それぞれのバックプレートとタッチパネルまたは表示パネルとの間、タッチパネルまたは表示パネルと偏光板との間、偏光板とカバーウィンドウとの間に、本発明の粘着剤205が備えられてもよい。
【0064】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0065】
実施例.1
【0066】
1.1共重合体の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易であるように冷却装置を取り付けた1Lの反応器に、エチルヘキシルアクリレート(Ethylhexyl acrylate、EHA)98重量部およびアクリル酸(Acrylic acid、AA)2重量部から構成される単量体混合物(100重量部)を投入した後、溶媒としてメチルエチルケトン(Methyl ethyl ketone、MEK)を投入した。次いで、酸素を除去するために、窒素ガスを約1時間パージ(purging)した後、反応器の温度を62℃に維持した。混合物を均一にした後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)400ppm、および連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン(n-dodecylmercaptan、n-DDM)400ppmを投入し、混合物を反応させた。反応後にMEKで希釈し、重量平均分子量が200万g/molの共重合体を製造した。
【0067】
1.2粘着剤組成物Aの製造
前記共重合体の製造で製造された共重合体100gに、エポキシ系架橋剤であるBXX-5240、およびイソシアネート系架橋剤であるBXX-5627を添加し、エチルアセテート溶液で18重量%に希釈して投入した後、均一に混合して組成物を製造した。その後、前記組成物の100重量部に対して、イオン塩添加剤LiTFSIを3重量部さらに配合し、コーティングに適当な粘度(500~1500cp)を有するように、固形分の調節のための溶剤(MEK)で希釈した後、メカニカルスターラ(Mechanical stirrer)を利用して15分以上混合(mixing)して組成物Aを製造した。
【0068】
1.3粘着フィルムの製造
前記組成物Aを常温で放置し、混合中に発生した気泡を除去し、アプリケータ(applicater)を用いて塗膜を形成した後、マティスオーブン(mathis oven)にて140℃、3分乾燥することで、厚さ25μmの粘着フィルムを製造した。
【0069】
実施例2
前記実施例1において、イオン塩添加剤LiTFSI3重量部の代わりに、LiTFSIを5重量部使用したことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0070】
実施例3
前記実施例1において、イオン塩添加剤LiTFSI3重量部の代わりに、NaTFSIを5重量部使用したことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0071】
実施例4
前記実施例1において、イオン塩添加剤LiTFSI3重量部の代わりに、NaFSIを5重量部使用したことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0072】
実施例5
前記実施例1において、イオン塩添加剤LiTFSI3重量部の代わりに、FC-4400を3重量部使用したことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0073】
比較例1
前記実施例1において、イオン塩添加剤を使用していないことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0074】
比較例2
前記実施例2において、エチルヘキシルアクリレート(Ethylhexyl acrylate、EHA)98重量部の代わりに、ブチルアクリレート(Butyl acrylate、BA)を98重量部使用したことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0075】
比較例3
前記比較例1において、エチルヘキシルアクリレート(Ethylhexyl acrylate、EHA)98重量部の代わりにブチルアクリレート(Butyl acrylate、BA)を94重量部使用し、アクリル酸(Acrylic acid、AA)2重量部の代わりにアクリル酸(Acrylic acid、AA)を6重量部使用したことを除き、同様に粘着フィルムを製造した。
【0076】
前記実施例1~5および比較例1~3の粘着フィルムの貯蔵弾性率、比誘電率、接着力、スタティックフォールディング(Static folding)、およびダイナミックフォールディング(Dynamic folding)を測定し、下記表1に表示した。
【0077】
【表1】
【0078】
前記実施例1、2、比較例2および3の粘着フィルムの温度-モジュラスを測定したグラフを図3に表示した。
【0079】
前記貯蔵弾性率および比誘電率は、本明細書に記載の貯蔵弾性率の測定方法、比誘電率の測定方法と同様の方法により測定した。
【0080】
<接着力の測定>
前記粘着フィルムを1inchx5inchのサイズに切断し、ガラスにラミネートした後、常温で1日間放置してから、TA texture analyzerを用いて速度300mm/minで測定した。
【0081】
<スタティックフォールディング(Static folding)テスト>
図1に記載の2セットスタックアップ(2-Set_Stack Up)構造を有するように、試験片を7.8cmx14cmに製作した後、半分に折り、5mmの間隔を有する平行板(parallel plate)で挟み、60℃、90%RHの条件で放置した。20日が経過した後に試験片を回収し、気泡発生の程度および浮き上がりの程度を目視で観察した。
【0082】
気泡発生がなく、浮き上がりがないとOK、気泡や浮き上がりが発生するとN.Gと表示した。
【0083】
図1における2セットスタックアップ(2-Set_Stack Up)構造は、タッチパネルまたは表示パネル101、粘着剤層(PSA)102、偏光フィルム(POL)103、粘着剤層(PSA)104、ハードコーティング層(HC)105、ポリイミド層(PI)106、およびハードコーティング層(HC)107を順にラミネートして積層した構造であり、前記構造の試験片を7.8cmx14cmのサイズに製作した。
【0084】
<ダイナミックフォールディング(Dynamic folding)テスト>
前記スタティックフォールディング(Static folding)と同様に試験片を製作し、5mmの間隔を有する平行板で挟み、25℃で10万回折って伸ばすテストを行った。テストが終わった後に試験片を回収し、気泡発生の程度、浮き上がりの程度、およびハードコーティング層のクラックを目視で観察した。
【0085】
気泡発生がなく、浮き上がりがなく、ハードコーティング層のクラックがないとOK、気泡や浮き上がり、またはハードコーティング層のクラックが発生すると、N.G.と表示した。
【0086】
イオン塩添加剤を使用していない前記比較例1および3の比誘電率は4未満であり、イオン塩添加剤を使用した実施例1~5の比誘電率は4以上であることを確認した。したがって、実施例1~5の粘着フィルムが、比較例1および3の粘着フィルムに比べてタッチ分解能が高く、応答速度が速いため、フォルダブルディスプレイ用粘着剤として好適である。
【0087】
また、本明細書の一実施態様に系る貯蔵弾性率を満たさない比較例2および3は、実施例1~5に比べて、ダイナミックフォールディングでハードコーティング層のクラックが発生した。したがって、本明細書の一実施態様に系る貯蔵弾性率を満たさない粘着剤は、フォルダブルディスプレイ用粘着剤に適しないことが分かる。
【符号の説明】
【0088】
101 タッチパネルまたは表示パネル
102、104 粘着剤層(PSA)
103 偏光フィルム(POL)
105、107 ハードコーティング層(HC)
106 ポリイミド層(PI)
201 基板
202 タッチパネルまたは表示パネル
203 偏光フィルム
204 カバーウィンドウ
205 粘着剤(PSA)
図1
図2
図3