(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】フェライト系コーティング触媒の製造方法及びこれを用いたブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20220208BHJP
B01J 23/80 20060101ALI20220208BHJP
C07C 5/48 20060101ALI20220208BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20220208BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20220208BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
B01J37/02 301M
B01J23/80 Z
C07C5/48
C07C11/167
B01J37/04 102
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020538076
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2019002315
(87)【国際公開番号】W WO2019177286
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0029251
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュヒョク
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、キョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】スー、ミュンジ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536066(JP,A)
【文献】特表2004-516132(JP,A)
【文献】特開昭58-036635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体であるコーティング機内で、支持体、フェライト系触媒及び水を混合するステップを含み、
前記支持体の総重量に対する前記水の重量比は、0.15~0.3であ
り、
前記支持体、フェライト系触媒及び水を混合する混合するステップでは乾燥を行わず、
前記支持体、フェライト系触媒及び水を混合するステップの後に、乾燥するステップをさらに含み、
前記フェライト系触媒は、下記化学式1で表されるものである、
[化学式1]
AFe
2
O
4
前記化学式1において、Aは、Ra、Ba、Sr、Ca、Cu、Be、Zn、Mg、Mn、Co又はNiである、
フェライト系コーティング触媒の製造方法。
【請求項2】
前記フェライト系コーティング触媒内でフェライト系触媒の含量は、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に10重量%~40重量%である、
請求項1に記載のフェライト系コーティング触媒の製造方法。
【請求項3】
前記支持体は、アルミナ、シリカ、コージェライト、チタニア、ジルコニア、シリコンナイトライド及びシリコンカーバイドのうち1種以上を含むものである、
請求項1
又は2のフェライト系コーティング触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか一項に記載のフェライト系コーティング触媒の製造方法で製造されたフェライト系コーティング触媒を準備するステップ;及び
前記フェライト系コーティング触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用してブタジエンを製造するステップ
を含む
ブタジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年3月13日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-000029251号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、フェライト系コーティング触媒の製造方法及びこれを用いたブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1,3-ブタジエン(1,3-butadiene)は、石油化学製品の中間体として世界的にその需要と価値が次第に増加している。上記1,3-ブタジエンは、ナフタ分解、ブテンの直接脱水素化反応、ブテンの酸化的脱水素化反応などを用いて製造されている。
【0004】
しかしながら、上記ナフタ分解工程は、高い反応温度のためエネルギー消費量が多いだけでなく、1,3-ブタジエンの生産のみのための単独工程ではないから、1,3-ブタジエン以外に他の基礎留分が余剰に生産されるという問題がある。また、n-ブテンの直接脱水素化反応は、熱力学的に不利であるだけでなく、吸熱反応であって、高い収率の1,3-ブタジエンの生産のために、高温及び低圧の条件が要求されて、1,3-ブタジエンを生産する商用化工程には適していない。
【0005】
一方、ブテンの酸化的脱水素化反応は、金属酸化物触媒の存在下にブテンと酸素とが反応して、1,3-ブタジエンと水を生成する反応であって、安定した水が生成されるので、熱力学的に非常に有利であるという利点を有する。また、ブテンの直接脱水素化反応と違って、発熱反応であるので、直接脱水素化反応に比べて低い反応温度でも高い収率の1,3-ブタジエンを得ることができ、追加の熱供給を要しなくて 、1,3-ブタジエンの需要を満たすことができる効果的な単独生産工程になることができる。
【0006】
上記金属酸化物触媒は、一般に、金属溶液を塩基性溶液に同時に沈殿させて製造する共沈法によって合成される。知られているノルマルブテンの酸化的脱水素化反応に使用される金属酸化物触媒のうちフェライト(Ferrite)系触媒は、活性及び安定性に優れるものとされている。しかしながら、フェライト系触媒は、高温/高圧の反応条件による過量の発熱によってその活性や耐久性が低下する問題があり、ひいてはCOxが生成される副反応が促進されて、発熱量がさらに増加することによって、触媒の活性や耐久性などの減少はもちろん、ブタジエンの選択度が低下する問題があった。
【0007】
かかる問題点を解消するために、アルミボールのような非活性物質(inert materials)を混合して発熱を分散させるなどの発熱制御技術が報告されているが、発熱緩和効果は微々たるもので、特にブタジエンの生産量が相当であるバルク反応でフェライト系触媒の発熱を制御することがより難しいことと知られている。これに加え、添加剤が投入されて、むしろ活性が低下する現象も発見されている。
【0008】
そこで、高温及び高圧の反応条件でブタジエンの選択度や収率に影響を与えることなく触媒の物理的強度を改善させることができる触媒製造法に関する開発が切実に要求されているのが実状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、フェライト系コーティング触媒の製造方法及びこれを用いたブタジエンの製造方法を提供しようとする。
【0010】
特に、ブタジエンの生産量が実験室スケール以上である商業化反応に使用するとき、発熱をより効果的に制御することができる酸化的脱水素化反応用コーティング触媒及びこれの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本願は、上記コーティング触媒を使用してブタジエンの収率や選択度などを維持しながら、物理的触媒強度を改善する製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本願の上記目的及びその他の目的は、以下に説明する本願の詳細な説明によっていずれも達成されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の一実施態様は、
回転体であるコーティング機内で、支持体、フェライト系触媒及び水を混合するステップを含み、
上記支持体の総重量に対する上記水の重量比は、0.15~0.3である、フェライト系コーティング触媒の製造方法を提供する。
【0014】
また、本願の別の実施態様は、
上記製造方法で製造されたフェライト系コーティング触媒を準備するステップ;及び
上記フェライト系コーティング触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用してブタジエンを製造するステップ
を含むブタジエンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本願の一実施態様によれば、フェライト系コーティング触媒の製造の際に、水を特定の重量比で投入することにより、フェライト系コーティング触媒の強度を向上することができる。よって、上記フェライト系コーティング触媒を用いたブタジエンの製造のとき、摩耗(attrition)による触媒の損失を防止することができる。
【0016】
また、本願の一実施態様によって製造されるフェライト系コーティング触媒は、触媒活性を維持しながら触媒強度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願の実験例で適用された摩耗(attrition)テスト装置を示す図である。
【
図2】本願の実施例1のコーティング触媒の内部状態を示す図である。
【
図3】本願の比較例1のコーティング触媒の内部状態を示す図である。
【
図4】本願の比較例3のコーティング触媒の内部状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、「収率(%)」は、酸化的脱水素化反応の生成物である1,3-ブタジエンの重量を、原料であるブテンの重量で割った値と定義される。例えば、収率は、下記の式で表されることができる。
【0020】
収率(%)=[(生成された1,3-ブタジエンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0021】
本明細書において、「転換率(conversion, %)」は、反応物が生成物に転換される割合を言い、例えば、ブテンの転換率は、下記の式で定義されることができる。
【0022】
転換率(%)=[(反応したブテンのモル数)/(供給されたブテンのモル数)]×100
【0023】
本明細書において、「選択度(%)」は、ブタジエン(BD)の変化量をブテン(BE)の変化量で割った値と定義される。例えば、選択度は、下記の式で表されることができる。
【0024】
選択度(%)=[(生成された1,3-ブタジエン又はCOxのモル数)/(反応したブテンのモル数)]×100
【0025】
触媒コーティング量(wt%)=[(フェライト系触媒質量、g)/(支持体質量、g+フェライト系触媒質量、g)]×100
【0026】
触媒損失率(wt%)=[(摩耗実験前の質量、g-摩耗実験後の質量、g)/(摩耗実験前の質量、g×触媒コーティング量、wt%)]×100
【0027】
本発明者らは、金属酸化物を製造し、これを支持体にコーティングさせて触媒を製造する場合、酸化的脱水素化反応時に触媒の単位体積当たりの表面積が広くて反応性に優れ、生成物に対する選択性に優れることを確認して、これを土台に本発明を完成するに至った。
【0028】
従来のフェライト系コーティング触媒の製造の際には、コーティング機に支持体、フェライト系回転触媒を入れて、触媒の外面に触媒をコーティングして製造していた。しかしながら、このような方法は、触媒が支持体の外面にのみあるようになり、触媒強度が低下する。
【0029】
このような部分を解決するために、減圧蒸発器(Rotary evaporator)に支持体と触媒を投入した後、水を減圧蒸発させて製造することができ、このとき、触媒の強度は容易に改善されることができる。 しかしながら、支持体にコーティングされる触媒の量が増加するほど強度改善の効果は減少し、これに加え、従来のフェライト系コーティング触媒の製造方法は、大量生産時に減圧設備が必要であるという問題点がある。
【0030】
本願の一実施態様に係るフェライト系コーティング触媒の製造方法は、回転体であるコーティング機内で、支持体、フェライト系触媒及び水を混合するステップを含み、上記支持体の総重量に対する上記水の重量比は、0.15~0.3である。
【0031】
本願の一実施態様によれば、フェライト系コーティング触媒の製造の際に、水を特定の重量比で投入することにより、フェライト系コーティング触媒の強度を向上することができる。よって、上記フェライト系コーティング触媒を用いたブタジエンの製造のとき、摩耗(attrition)による触媒の損失を防止することができる。
【0032】
本願の一実施態様において、上記支持体の総重量に対する上記水の重量比は、0.15~0.3であってもよく、0.18~0.25であってもよい。 上記支持体の総重量に対する上記水の重量比が0.15未満の場合には、支持体の外面にのみ触媒がコーティングされて、触媒強度が低下するおそれがあり、0.3を超過する場合には、支持体が触媒と水に浸るようになって、触媒コーティングが不可能になるおそれがある。
【0033】
本願の一実施態様において、上記支持体、フェライト系触媒及び水を混合するステップは、回転体であるコーティング機で行われる。上記コーティング機は、特に制限されるものではなく、当該技術分野で知られているものを用いることができる。
【0034】
本願の一実施態様において、上記フェライト系触媒は、下記化学式1で表されることができる。
【0035】
[化学式1]
AFe2O4
【0036】
上記化学式1において、Aは、Cu、Ra、Ba、Sr、Ca、Cu、Be、Zn、Mg、Mn、Co又はNiである。
【0037】
本願の一実施態様において、上記フェライト系触媒は、亜鉛フェライト触媒であることが好ましい。
【0038】
本願の一実施態様において、上記フェライト系コーティング触媒内でフェライト系触媒の含量は、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に10重量%~40重量%であってもよく、12重量%~35重量%であってもよい。上記フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に、上記フェライト系触媒の含量が10重量%未満であるか40重量%を超過する場合には、触媒活性の改善効果が微々たるものであり、上記範囲を満足する場合に、触媒活性を維持しながら触媒強度が改善したフェライト系コーティング触媒を製造することができる。
【0039】
本願の一実施態様において、上記支持体は、アルミナ、シリカ、コージェライト、チタニア、ジルコニア、シリコンナイトライド及びシリコンカーバイドのうち1種以上を含むことができる。本願の一実施態様において、上記支持体は、アルミナであることが好ましい。
【0040】
上記支持体の形態は、特に制限されず、例えば、上記支持体は球状のアルミナであってもよく、このときの直径は2mm~7mmであってもよい。
【0041】
本願の一実施態様において、上記支持体、フェライト系触媒及び水を混合するステップの後に、乾燥するステップをさらに含むことができる。必要によって、乾燥後に焼成させるステップをさらに含むことができる。上記乾燥は、室温、50℃~150℃、90℃~120℃などの温度条件で行われることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0042】
また、本願の一実施態様は、上記製造方法で製造されたフェライト系コーティング触媒を準備するステップ; 及び上記フェライト系コーティング触媒をブテンの酸化的脱水素化反応に使用してブタジエンを製造するステップを含むブタジエンの製造方法を提供する。
【0043】
上記酸化的脱水素化反応は、フェライト系コーティング触媒下にオレフィンと酸素とが反応して、共役ジエン及び水を生成する反応を意味し、具体的な例として、ブテンと酸素とが反応して、1,3-ブタジエン及び水を生成する反応であってもよい。
【0044】
上記酸化的脱水素化反応に使用される反応器は、酸化的脱水素化反応に使用されることができる反応器であれば、特に制限されないが、一例として、設けられた触媒層の反応温度が一定に維持され、反応物が触媒層を連続的に通過しながら酸化的脱水素化反応が進行される反応器であってもよく、具体的な例として、管型反応器、回分式反応器、流動床反応器又は固定床反応器であってもよく、上記固定床反応器は、一例として、多管式反応器又はプレート式反応器であってもよい。
【0045】
本願の一実施態様によれば、上記ブタジエンを製造するステップは、C4留分、スチーム(steam)、酸素(O2)及び窒素(N2)を含む原料を250℃~450℃、300℃~430℃又は350℃~425℃の反応温度で行うことができ、この範囲内でエネルギー費用を大きく増加させることなく反応効率に優れていて、ブタジエンを生産性良く提供できると共に、触媒活性及び安定性が高く維持されることができる。
【0046】
上記酸化的脱水素化反応は、一例として、ノルマルブテンを基準に、50h-1~2,000h-1、50h-1 ~1,500h-1又は50h-1~1,000h-1の空間速度(GHSV: Gas Hourly Space Velocity)で行うことができ、この範囲内で反応効率に優れていて、転換率、選択度、収率などに優れるという効果がある。
【0047】
上記C4留分は、ナフタ分解で生産されたC4混合物から有用な化合物を分離して残ったC4ラフィネート-1、2、3を意味するものであってもよく、エチレン二量化(dimerization)を通じて得ることができるC4類を意味するものであってもよい。
【0048】
本明細書の一実施態様によれば、上記C4留分は、n-ブタン(n-butane)、トランス-2-ブテン(trans-2-butene)、シス-2-ブテン(cis-2-butene)、及び1-ブテン(1-butene)からなる群より選択される1又は2以上の混合物であってもよい。
【0049】
本明細書の一実施態様によれば、上記スチーム(steam)又は窒素(N2)は、酸化的脱水素化反応において、反応物の爆発の危険を減らすと共に、触媒のコーキング(coking)防止及び反応熱の除去などの目的で投入される希釈ガスである。
【0050】
本明細書の一実施態様によれば、上記酸素(O2)は、酸化剤(oxidant)としてC4留分と反応して脱水素化反応を起こす。
【0051】
本明細書の一実施態様によれば、酸化的脱水素化反応は、下記反応式1又は反応式2によって製造されることができる。
【0052】
[反応式1]
C4H8+1/2O2 → C4H6+H2O
【0053】
[反応式2]
C4H10+O2 → C4H6+2H2O
【0054】
上記酸化的脱水素化反応でブタン又はブテンの水素が除去されることにより、ブタジエン(butadiene)が製造される。一方、上記酸化的脱水素化反応は、上記反応式1又は2のような主反応の他に、一酸化炭素(CO)、又は二酸化炭素(CO2)などを含む副反応生成物が生成されることができる。上記副反応生成物は、工程内で持続的な蓄積が発生しないように分離されて、系外部に排出される工程を含むことができる。
【0055】
本明細書の一実施態様によれば、上記ブタジエンの製造方法において、ブテンの転換率は、72%以上であってもよく、好ましくは72.5%以上であってもよく、より好ましくは79%以上であってもよい。
【0056】
本明細書の一実施態様によれば、上記ブタジエンの製造方法において、ブタジエンの選択度は、85%以上であってもよく、好ましくは85.8%以上であってもよく、より好ましくは87%以上であってもよい。
【実施例】
【0057】
以下、本願を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。ところが、本願に係る実施例は、種々の異なる形態に変形されることができ、本願の範囲が以下に述べる実施例に限定されるものとは解釈されない。本願の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本願をより完全に説明するために提供されるものである。
【0058】
<実施例>
【0059】
<実施例1>
【0060】
pHが8に調節されたアンモニア水2Lを準備し、別途の容器に蒸留水2L、塩化亜鉛(ZnCl2)288.456g及び塩化鉄(FeCl3)1132.219gを含む金属前駆体溶液を準備した。このとき、上記金属前駆体溶液内に含まれた金属成分のモル比は、Fe:Zn=2:1であった。準備したアンモニア水に準備した金属前駆体溶液を添加しながら、pHを8に維持させるために、濃度9wt%のアンモニア水を共に添加した。均一な組成の試料を得るために、撹拌機を使用して1時間撹拌しながら金属前駆体溶液を全部添加した後、1時間熟成させてから、沈殿物が形成された溶液を蒸留水4Lを使用して洗浄すると共に、ろ過して、沈殿物を分離した。撹拌及び熟成が完了した共沈溶液を減圧ろ過器を使用して減圧ろ過して、共沈物を得て、これを洗浄した後、90℃で24時間乾燥させ、乾燥した共沈物を焼成炉に入れて650℃で6時間熱処理して、亜鉛フェライト触媒を製造した。ZnFe2O4粉末を得た。得られた粉末を粉砕し、45マイクロメートル以下の大きさを有するようにふるい分け法で選別した。
【0061】
上記フェライト系触媒を直径が4mm~6mmのボール状のアルミナ支持体及び水と共に、回転体であるコーティング機に投入して混合することにより、フェライト系コーティング触媒を製造した。このとき、上記水の投入重量比は、上記支持体の総重量を基準に0.2であり、上記フェライト系触媒の含量は、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に15重量%であった。
【0062】
コーティングされた触媒の乾燥は、90℃~120℃の温度条件で数時間進行した。
【0063】
<実施例2>
【0064】
実施例1において、上記フェライト系触媒の含量を、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に25重量%としたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0065】
<実施例3>
【0066】
実施例1において、上記フェライト系触媒の含量を、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に35重量%としたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0067】
<比較例1>
【0068】
実施例1において、上記コーティング機を用いずに、回転式減圧蒸発器を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。このとき、上記水の投入重量比は、上記支持体の総重量を基準に0.6以上で投入して、支持体が水に完全に浸るようになる状態で、減圧蒸留を進行した。
【0069】
<比較例2>
【0070】
比較例1において、上記フェライト系触媒の含量を、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に25重量%としたこと以外には、上記比較例1と同様に行った。
【0071】
<比較例3>
【0072】
実施例1において、少量の水を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。このとき、上記水の投入重量比は、上記支持体の総重量を基準に0.1以下であった。
【0073】
<比較例4>
【0074】
比較例3において、上記フェライト系触媒の含量を、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に25重量%としたこと以外には、上記比較例3と同様に行った。
【0075】
<比較例5>
【0076】
比較例3において、上記フェライト系触媒の含量を、フェライト系コーティング触媒の総重量を基準に35重量%としたこと以外には、上記比較例3と同様に行った。
【0077】
<比較例6>
【0078】
実施例2において、水の投入重量比を、上記支持体の総重量を基準に0.38投入したこと以外には、上記実施例2と同様に行った。
【0079】
<実験例>
【0080】
反応物としてトランス-2-ブテン及びシス-2-ブテンの混合物と酸素を使用し、付加的に窒素とスチームが共に流入するようにした。反応組成は、ブテンを基準に酸素、窒素、スチームの体積比はそれぞれ1、4、5であり、ブテンは、トランス-2-ブテンとシス-2-ブテンの成分比が、体積比で60%、40%とされる。反応は、400℃、GHSV=133h-1、 OBR=1、SBR=8、NBR=1の条件下で進行された。反応器としては、金属管型固定層反応器を使用した。実施例及び比較例で製造された触媒200ccを固定層反応器に充填し、スチームは水の形態で注入されるが、気化器(vaporizer)を用いて120℃でスチームに気化して、反応物であるブテン混合物及び酸素と共に混合されて反応器に流入するようにした。反応後、生成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析し、ブテン転換率、ブタジエン選択度、COx選択度及び収率は、ガスクロマトグラフィーで測定された結果を用いて計算した。
【0081】
GHSV:Gas Hourly Space Velocity
OBR:O2/butene molar ratio
SBR:Steam/butene molar ratio
NBR:N2/butene molar ratio
【0082】
下記
図1の摩耗テスト装置を用いて、触媒の損失程度を評価し、その結果を下記表1に示す。より具体的に、製造されたコーティング触媒を摩耗テスト装置に入れて、90rpmの速度で5min間回転させ、実験前後の質量を測定して、触媒損失率を計算した。
【0083】
【0084】
また、ブテンの転換率、ブタジエンの選択度などをGC装備を用いて計算した結果を、下記表2に示す。また、実施例1に係るコーティング触媒の内部状態を下記
図2に示し、比較例1に係るコーティング触媒の内部状態を下記
図3に示し、比較例3に係るコーティング触媒の内部状態を下記
図4に示す。
【0085】
下記
図2~
図4の結果のように、実施例1に係るコーティング触媒は、乾式製造法に比べて水を多く投入することにより、触媒が支持体の内部に染み込むことができるようにコーティングすることが可能であった。また、比較例1に係るコーティング触媒も、回転式減圧蒸発器で水を減圧蒸発させることにより、触媒が支持体の内部に侵透しながらコーティングされた。しかしながら、比較例3に係るコーティング触媒は、支持体の外面にのみ触媒がコーティングされたことを確認することができる。 特に、比較例6では、水が過量投入されて、触媒の強度が減少することを確認することができる。よって、本願のように、フェライト系コーティング触媒の製造のとき、上記支持体の総重量に対する上記水の重量比を0.15~0.3とすることにより、上記フェライト系コーティング触媒の触媒活性を維持しながら触媒強度を改善することができる。
【0086】
【0087】
上記結果のように、本願の一実施態様では、フェライト系コーティング触媒の製造時に適正量の水を投入することにより、摩耗性が改善されることを確認することができる。
【0088】
また、本願の一実施態様に係るフェライト系コーティング触媒は、従来の触媒と比較したとき、触媒活性も同等な水準であった。
【0089】
以上の通り、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。