(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置、判定方法及び判定プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2018050319
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】永沢 理
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087895(JP,A)
【文献】特開2012-068822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0141110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液体を吐出する液体吐出装置であって、
前記記録媒体の液体の付着面を撮影した撮影画像における白抜けそれぞれの面積を算出する面積算出部と、
算出された前記白抜けそれぞれの面積の合計から、前記撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出する面積率算出部と、
算出された前記面積率をもとに、前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定する判定部と
、
前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないと判定された場合に、液体が吐出された前記記録媒体を乾燥させるための温度の設定、前記記録媒体に対する液体の吐出に使用される液体の量の設定、及び、前記記録媒体を搬送する速度の設定、を含む設定情報のうち少なくとも一つを変更する設定変更部と
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記撮影画像を二値化する二値化部を有し、
前記面積算出部は、前記撮影画像のピクセルサイズと、二値化された前記撮影画像における白抜けそれぞれのピクセル数とから、白抜けそれぞれの面積を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
算出された前記白抜けそれぞれの面積から、それぞれの白抜け径を算出し、最大の白抜け径を導出する導出部を有し、
前記判定部は、導出された前記最大の白抜け径をもとに、前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記記録媒体の液体の付着面を撮影する撮影部を制御する撮影制御部を有し、
前記面積算出部は、前記撮影部によって撮影された前記撮影画像における白抜けそれぞれの面積を算出する
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないと判定された場合に、前記記録媒体の搬送時に液体の付着面に接触する搬送部材の交換タイミングであることを示す情報を出力する出力部を有する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
情報処理装置において実行される判定方法であって、
記録媒体の液体の付着面を撮影した撮影画像における白抜けそれぞれの面積を算出するステップと、
算出された前記白抜けそれぞれの面積の合計から、前記撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出するステップと、
算出された前記面積率をもとに、前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定するステップと
、
前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないと判定された場合に、液体が吐出された前記記録媒体を乾燥させるための温度の設定、前記記録媒体に対する液体の吐出に使用される液体の量の設定、及び、前記記録媒体を搬送する速度の設定、を含む設定情報のうち少なくとも一つを変更するステップと
を含むことを特徴とする判定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
記録媒体の液体の付着面を撮影した撮影画像における白抜けそれぞれの面積を算出するステップと、
算出された前記白抜けそれぞれの面積の合計から、前記撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出するステップと、
算出された前記面積率をもとに、前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定するステップと
、
前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないと判定された場合に、液体が吐出された前記記録媒体を乾燥させるための温度の設定、前記記録媒体に対する液体の吐出に使用される液体の量の設定、及び、前記記録媒体を搬送する速度の設定、を含む設定情報のうち少なくとも一つを変更するステップと
を実行させるための判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、判定方法及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット連帳機では、インクの乾燥性が低い場合に、用紙を搬送するローラ等に接触した際に印刷面のインクが剥離し、白抜けが生じる場合がある。かかる白抜けは、ピッキングと呼ばれる。ピッキングの発生は、画質の低下に繋がり得る。そこで、印刷面と接触するローラの表面に微細な凹凸を設けることで、許容できる品質の印刷物を得られる程度にピッキングの発生を留める技術が存在する。但し、ローラの表面に微細な凹凸を設ける技術は、ローラに付着したインクが堆積していけば、インクを取り除くことが困難になるため、結果的に、許容できない品質の印刷物となるピッキングの発生につながる。従って、定期的にローラを交換することが好ましく、ローラを交換するタイミングを検知する技術が存在する。
【0003】
特許文献1(特開2016-87895号公報)では、印刷された画像を撮影し、撮影された画像より閾値以上の白抜け(例えば、直径が50μm以上の白抜け)がある場合のみ、表面に微細な凹凸が設けられたローラを交換する旨を報知する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、例えば直径が50μm以上の白抜けが1個でも存在する場合に、許容できる品質の印刷物を得られるにも関わらず、ローラを交換する旨を報知する。また、例えば直径が50μm未満の白抜けが複数個存在する場合に、許容できない品質の印刷物になるにも関わらず、ローラを交換する旨を報知しない。従って、ピッキングの検知精度が良いとは言い難い。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ピッキングの検知精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る液体吐出装置は、記録媒体に液体を吐出する液体吐出装置であって、前記記録媒体の液体の付着面を撮影した撮影画像における白抜けそれぞれの面積を算出する面積算出部と、算出された前記白抜けそれぞれの面積の合計から、前記撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出する面積率算出部と、算出された前記面積率をもとに、前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定する判定部と、前記記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないと判定された場合に、液体が吐出された前記記録媒体を乾燥させるための温度の設定、前記記録媒体に対する液体の吐出に使用される液体の量の設定、及び、前記記録媒体を搬送する速度の設定、を含む設定情報のうち少なくとも一つを変更する設定変更部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピッキングの検知精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る液体吐出装置による液体の吐出処理例を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る液体吐出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る白抜け径の算出例を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る白抜け度合いに対応する白抜けの面積率と最大の白抜け径との関係の例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係るローラの交換タイミングであることを示す情報を出力する処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る設定情報を変更する処理の流れの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出装置、判定方法及び判定プログラムの実施の形態を説明する。以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
図1を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、本実施の形態では、液体吐出装置100の一例として、インクジェット連帳機等の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0011】
液体吐出装置100は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、センサ群14と、操作部15と、表示部16とを有する。また、液体吐出装置100は、アンワインダー17と、液体吐出部18と、乾燥部19と、撮影部20と、リワインダー21と、I/O22と、HDD(Hard Disk Drive)23とを有する。
【0012】
CPU11は、液体吐出装置100を統括制御する。ROM12は、液体吐出装置100を動作させる制御プログラムを格納する。RAM13は、ROM12から読み出された制御プログラムを一時的に格納する。HDD23は、画像データを格納する。センサ群14は、アンワインダー17の巻き取り残量を検知するセンサや、リワインダー21の巻き取り量を検知するセンサ、乾燥部19の温度を検知するセンサ等を含む各種センサである。操作部15は、電源スイッチ、印刷開始/停止スイッチ、印刷枚数設定キー等を含む入力装置である。表示部16は、例えば液晶モニタが用いられ、印刷枚数やエラーメッセージ等の各種の情報を表示する表示装置である。I/O22は、外部からの画像データを入力したり、応答信号を発生したりするためのポートである。
【0013】
液体吐出装置100では、記録媒体としての用紙はアンワインダー17により巻き出され、インク等の液体の付着面(例えば、用紙の表面)にインク等の液体を吐出する液体吐出部18に到達する。なお、液体吐出部18の前段には、用紙のインク等の液体の付着面に対して、例えばインクの浸透性を制御する処理液を塗布する機構が設けられても良い。液体吐出部18を通過した用紙は、液体の付着面を乾燥させる乾燥部19を通過して、撮影部20を通過する。撮影部20では、用紙の液体の付着面の撮影が行なわれる。リワインダー21は、液体が付着された用紙を巻き取る。なお、液体付着後の加工処理の内容によっては、リワインダー21の代わりに、カッターを用いて用紙が裁断される。
【0014】
次に、
図2を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100による液体の吐出処理を説明する。
図2は、実施の形態1に係る液体吐出装置100による液体の吐出処理例を説明する図である。
【0015】
図2に示すように、液体吐出装置100は、液体吐出部18と、乾燥部19と、ローラ3と、撮影部20とを有する。なお、用紙等の記録媒体は、ローラ3を含む各ローラの回転により、図中矢印に示す搬送方向に搬送される。
【0016】
例えば、液体吐出部18は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドにより、搬送されてきた記録媒体に液体を吐出する。記録媒体に液体が吐出された後は、乾燥部19によって液体の付着面の乾燥が行なわれる。例えば、乾燥部19は、記録媒体の裏面から接触加熱を行なうヒートドラムである。乾燥部19を通過した記録媒体は、ローラ3において液体の付着面が接触する。
【0017】
ローラ3では、液体の付着面が十分に乾燥されていない場合にインク等の液体が付着する可能性がある。インク等の液体がローラ3に付着し、記録媒体の液体の付着面からインク等の液体が剥離すると、ピッキングが発生する。撮影部20は、液体の付着面とローラ3とが接触する箇所よりも下流に設置される。撮影部20の撮影手段としては、例えば、CCDカメラやスキャナ等が挙げられる。例えば、撮影部20は、ローラ3に記録媒体が接触した後の液体の付着面を撮影する。
【0018】
次に、
図3を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機能構成を説明する。
図3は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機能構成例を示すブロック図である。
【0019】
図3に示すように、液体吐出装置100は、撮影制御部101と、二値化部102と、面積算出部103と、面積率算出部104と、導出部105と、判定部106と、出力部107と、設定変更部108とを有する。上記各部は、これらの一部又は全てがソフトウェア(プログラム)で実現されても良いし、ハードウェアで実現されても良い。
【0020】
まず、液体吐出装置100は、PC(Personal Computer)等からI/O22を介して入力された印刷ジョブデータに基づいて、液体吐出ヘッド(例えば、液体吐出部18)を駆動し、記録媒体に液体を吐出する。液体が吐出された記録媒体は、搬送部材によって乾燥部19に搬送される。乾燥部19は、搬送されてきた記録媒体を乾燥する。これらの後、記録媒体は、搬送部材の一つであるローラ3を通過する。
【0021】
撮影制御部101は、撮影部20による撮影を制御する。より具体的には、撮影制御部101は、撮影部20を制御し、液体吐出ヘッド(例えば、液体吐出部18)によって記録媒体へ液体が吐出され、乾燥部19によって乾燥された記録媒体の液体の付着面を撮影させる。ここで、記録媒体の液体の付着面の撮影によって得られた画像を「撮影画像」と呼ぶ。
【0022】
二値化部102は、撮影画像を二値化する。より具体的には、二値化部102は、撮影制御部101の制御に従い、撮影部20によって記録媒体の液体の付着面が撮影された撮影画像を、画像濃度の明暗等を基準に二値化する。
【0023】
面積算出部103は、撮影画像における白抜けそれぞれの面積を算出する。より具体的には、面積算出部103は、撮影画像のピクセルサイズと、二値化部102によって二値化された撮影画像における白抜けそれぞれのピクセル数とから、白抜けそれぞれの面積を算出する。例えば、撮影画像における白抜けの面積は、「撮影画像のピクセルサイズ×白抜けのピクセル数」により算出される。
【0024】
面積率算出部104は、撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出する。より具体的には、面積率算出部104は、面積算出部103によって算出された白抜けそれぞれの面積から、これらの面積の合計を求め、撮影画像の全領域に対する白抜けの面積率を算出する。例えば、撮影画像の全領域に対する白抜けの面積率は、「(白抜けの面積の合計÷全領域の面積)×100」により算出される。
【0025】
導出部105は、最大の白抜け径を導出する。より具体的には、導出部105は、面積算出部103によって算出された白抜けそれぞれの面積から、それぞれの白抜け径を算出し、これらの中で最大となる白抜け径を導出する。
【0026】
図4は、実施の形態1に係る白抜け径の算出例を説明する図である。これらのうち、
図4(a)は、撮影画像に含まれる白抜けのイメージである。上述したように、撮影画像は、二値化部102によって二値化される。そして、面積算出部103が、ピクセルサイズと、二値化された撮影画像中の白抜けのピクセル数とから、白抜けの面積を算出する。
【0027】
また、
図4(b)は、白抜けの面積から白抜け径を算出するための変換のイメージである。ピッキングによる白抜けの形状は、完全な円(真円)ではなく様々な形状となっている可能性が高い。様々な形状となっている白抜けに対しては、最大径や最小径、垂直フェレ径、水平フェレ径といった径の指標が複数存在する。本実施の形態では、白抜け径が真円であったと仮定した際の直径(例えば、「円相当径」と呼ばれる)を白抜け径とする。
【0028】
例えば、導出部105は、以下の(数1)を用いて白抜け径を算出する。
白抜け径(μm)=√((4×白抜け面積(μ平方メートル))/π) ・・・(数1)
そして、導出部105は、算出した白抜け径のうち、最大となる白抜け径を導出する。
【0029】
判定部106は、記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定する。より具体的には、判定部106は、面積率算出部104によって算出された面積率と、導出部105によって導出された最大の白抜け径とをもとに、記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるかを判定する。
【0030】
例えば、判定部106は、面積率算出部104によって算出された面積率が第1の閾値以上であるかを判定する。第1の閾値は、撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率に対応する閾値である。このとき、判定部106は、面積率が第1の閾値以上である場合に、白抜けの面積の割合が多いことから、記録媒体の液体の付着面における白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定する。一方、判定部106は、面積率が第1の閾値未満である場合に、白抜けの面積の割合が少ないことから、記録媒体の液体の付着面における白抜けの度合いが許容できるレベルであると判定する。
【0031】
また、判定部106は、導出部105によって導出された最大の白抜け径が第2の閾値以上であるかを判定する。第2の閾値は、白抜け径の大きさに対応する閾値である。このとき、判定部106は、最大の白抜け径が第2の閾値以上である場合に、大きい白抜け径が存在することから、記録媒体の液体の付着面における白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定する。一方、判定部106は、最大の白抜け径が第2の閾値未満である場合に、大きい白抜け径が存在しないことから、記録媒体の液体の付着面における白抜けの度合いが許容できるレベルであると判定する。
【0032】
図5は、実施の形態1に係る白抜け度合いに対応する白抜けの面積率と最大の白抜け径との関係の例を示す図である。例えば、撮影画像における白抜けの面積率と、最大の白抜け径との値を
図5にプロットしたときに、何れの値も閾値未満である状態は、
図5の領域(a)となる。また、撮影画像における白抜けの面積率と、最大の白抜け径との値を
図5にプロットしたときに、少なくとも一方の値が閾値以上である状態は、
図5の領域(b)となる。つまり、判定部106は、白抜けの面積率と、最大の白抜け径との値を図にプロットすることで、白抜けの度合いが許容できるレベル「領域(a)」、又は、白抜けの度合いが許容できないレベル「領域(b)」の状態であるかを判定する。
【0033】
出力部107は、記録媒体の搬送時に液体の付着面に接触する搬送部材の交換タイミングであることを示す情報を出力する。より具体的には、出力部107は、判定部106から、第1の閾値を用いた許容可否の判定結果と、第2の閾値を用いた許容可否の判定結果とを受け付ける。そして、出力部107は、判定部106から受け付けた判定結果のうち、少なくとも一方が、記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないレベルであると判定された判定結果である場合に、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力する。
【0034】
例えば、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報は、表示部16等に出力される。これにより、表示部16は、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報を表示する。また、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報は、印刷ジョブデータを入力したPC等に出力され、該PCによって表示されても良い。なお、液体吐出装置100は、判定結果の全てが、記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できるレベルであると判定された判定結果である場合に、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力することなく処理を終了する。
【0035】
設定変更部108は、設定情報を変更する。より具体的には、設定変更部108は、判定部106から、第1の閾値を用いた許容可否の判定結果と、第2の閾値を用いた許容可否の判定結果とを受け付ける。そして、設定変更部108は、判定部106から受け付けた判定結果のうち、少なくとも一方が、記録媒体の液体の付着面における白抜けが許容できないレベルであると判定された判定結果である場合に、設定情報のうち少なくとも一つを変更する。例えば、設定情報の一つは、液体が吐出された記録媒体を乾燥させるための温度の設定である。また、設定情報の一つは、記録媒体に対するインク等の液体の吐出に使用される液体の量の設定である。また、設定情報の一つは、記録媒体を搬送する速度の設定である。
【0036】
詳細には、設定変更部108は、乾燥部19(例えば、ヒートドラム)による加熱の温度を上げることができる場合に、温度を上げる設定を行なう。すなわち、液体吐出装置100は、記録媒体を乾燥させる温度を上げることで、記録媒体上に吐出されたインク等の液体を速乾させ、ローラ3にインク等の液体が付着することを抑制する。温度を上げる設定を行なった後は、続けて、液体吐出処理が実行されても良い。なお、温度を上げる設定を行なった場合は、表示部16等に、記録媒体を乾燥させるための温度を上げる設定を行なったことを示す情報を表示するようにしても良い。
【0037】
また、設定変更部108は、記録媒体に対するインク等の液体の吐出に使用されるインク等の液体の量を削減する設定を行なう。すなわち、液体吐出装置100は、インク等の液体の吐出に使用されるインク等の液体の量を削減することで、記録媒体上に吐出されたインク等の液体の乾燥時間を早め、ローラ3にインク等の液体が付着することを抑制する。インク等の液体の量を削減する設定を行なった後は、続けて、液体吐出処理が実行されても良い。なお、インク等の液体の量を削減する設定を行なった場合は、表示部16等に、記録媒体に対するインク等の液体の吐出に使用されるインク等の液体の量を削減する設定を行なったことを示す情報を表示するようにしても良い。
【0038】
また、設定変更部108は、記録媒体を搬送する速度を遅くする設定を行なう。すなわち、液体吐出装置100は、記録媒体を搬送する速度を遅くすることで、ローラ3に到達するまでの時間を遅らせ、記録媒体上に吐出されたインク等の液体を乾燥させる時間を多くする。記録媒体を搬送する速度を遅くする設定を行なった後は、続けて、液体吐出処理が実行されても良い。なお、記録媒体を搬送する速度を遅くする設定を行なった場合は、表示部16等に、記録媒体を搬送する速度を遅くする設定を行なったことを示す情報を表示するようにしても良い。
【0039】
なお、上述した設定情報は、少なくとも一つを変更すれば良いが、適宜組み合わせて変更しても良い。例えば、設定変更部108は、記録媒体を乾燥させる温度を上げられない場合に、液体の吐出に使用される液体の量を削減したり、記録媒体を搬送する速度を遅くしたりしても良い。また、出力部107による処理と、設定変更部108による処理とは、何れか一方が実施されれば良い。
【0040】
次に、
図6を用いて、実施の形態1に係るローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力する処理の流れを説明する。
図6は、実施の形態1に係るローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力する処理の流れの例を示すフローチャートである。
【0041】
図6に示すように、液体吐出装置100は、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドにより、搬送されてきた記録媒体にインク等の液体を吐出する(ステップS101)。そして、液体吐出装置100は、ヒートドラム等である乾燥部19により、記録媒体の乾燥を行なう(ステップS102)。ここで、乾燥部19を通過した記録媒体は、ローラ3においてインク等の液体の付着面が接触する。
【0042】
続いて、液体吐出装置100は、撮影制御部101の制御に従い撮影部20により、記録媒体の液体の付着面を撮影する(ステップS103)。その後、液体吐出装置100は、二値化部102により、撮影部20によって撮影された撮影画像を二値化する(ステップS104)。そして、液体吐出装置100は、面積算出部103により、撮影画像のピクセルサイズと、二値化部102によって二値化された撮影画像における白抜けそれぞれのピクセル数とから、白抜けそれぞれの面積を算出する(ステップS105)。
【0043】
また、液体吐出装置100は、面積率算出部104により、面積算出部103によって算出された白抜けそれぞれの面積から、これらの面積の合計を求め、撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出する(ステップS106)。そして、液体吐出装置100は、判定部106により、面積率算出部104によって算出された面積率が第1の閾値以上であるか否かを判定することにより、記録媒体の液体の付着面における白抜けの許容可否を判定する(ステップS107)。例えば、判定部106は、面積率が第1の閾値以上である場合に、白抜けの度合いが許容できないレベルであることを示す判定結果を出力する。
【0044】
また、液体吐出装置100は、導出部105により、面積算出部103によって算出された白抜けそれぞれの面積から、それぞれの白抜け径を算出し、これらの中で最大となる白抜け径を導出する(ステップS108)。そして、液体吐出装置100は、判定部106により、導出部105によって導出された最大の白抜け径が第2の閾値以上であるか否かを判定することにより、記録媒体の液体の付着面における白抜けの許容可否を判定する(ステップS109)。例えば、判定部106は、最大の白抜け径が第2の閾値以上である場合に、白抜けの度合いが許容できないレベルであることを示す判定結果を出力する。
【0045】
その後、液体吐出装置100は、出力部107により、判定部106による判定結果の少なくとも一つが、白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定されたか否かを判定する(ステップS110)。このとき、液体吐出装置100は、出力部107により、判定部106による判定結果の少なくとも一つが、白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定された場合に(ステップS110:Yes)、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力する(ステップS111)。なお、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報は、表示部16等に出力され、表示部16等に表示されれば良い。一方、液体吐出装置100は、出力部107により、判定部106による判定結果の全てが、白抜けの度合いが許容できるレベルであると判定された場合に(ステップS110:No)、処理を終了する。
【0046】
次に、
図7を用いて、実施の形態1に係る設定情報を変更する処理の流れを説明する。
図7は、実施の形態1に係る設定情報を変更する処理の流れの例を示すフローチャートである。なお、
図7では、
図6に示したローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力する処理と同様の処理については詳細な説明を省略する。具体的には、ステップS201~ステップS209は、ステップS101~ステップS109における処理と同様である。
【0047】
図7に示すように、液体吐出装置100は、設定変更部108により、判定部106による判定結果の少なくとも一つが、白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定されたか否かを判定する(ステップS210)。このとき、液体吐出装置100は、設定変更部108により、判定部106による判定結果の少なくとも一つが、白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定された場合に(ステップS210:Yes)、設定情報を変更する(ステップS211)。一方、液体吐出装置100は、設定変更部108により、判定部106による判定結果の全てが、白抜けの度合いが許容できるレベルであると判定された場合に(ステップS210:No)、処理を終了する。
【0048】
設定情報の変更に関し、例えば、液体吐出装置100は、設定変更部108により、記録媒体を乾燥させるための温度が上げられる場合に、温度を上げる設定を行なう。また、液体吐出装置100は、設定変更部108により、記録媒体を乾燥させるための温度が上げられない場合に、吐出に使用されるインク等の液体の量を削減したり、記録媒体を搬送する速度を遅くしたりする。
【0049】
液体吐出装置100は、記録媒体の液体の付着面を撮影した撮影画像を二値化し、撮影画像のピクセルサイズと、二値化された撮影画像における白抜けそれぞれのピクセル数とから、白抜けそれぞれの面積を算出する。そして、液体吐出装置100は、白抜けそれぞれの面積の合計から、撮影画像の所定領域に対する白抜けの面積率を算出し、面積率をもとに、記録媒体の液体の付着面における白抜けの許容可否を判定する。これらの結果、液体吐出装置100は、許容できない数の白抜けが存在する場合に、白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定するので、ピッキングの検知精度を向上させることができる。
【0050】
また、液体吐出装置100は、白抜けそれぞれの面積から、それぞれの白抜け径を算出し、最大の白抜け径を導出して、面積率と、最大の白抜け径とをもとに、記録媒体の液体の付着面における白抜けの許容可否を判定する。そして、液体吐出装置100は、面積率と最大の白抜け径とをもとにした判定結果のうち、少なくとも一つが、白抜けの度合いが許容できないレベルであると判定した場合に、ローラ3の交換タイミングであることを示す情報を出力したり、設定情報を変更したりする。これらの結果、液体吐出装置100は、複数の判定条件を用いて白抜けの許容可否を判定するので、ピッキングの検知精度を向上させることができる。また、液体吐出装置100は、設定情報を変更するので、ピッキングの発生を抑制することができる。
【0051】
また、上記文書中や図面中等で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータ等を含む情報は、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、図示した装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、装置の分散又は統合の具体的形態は、図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負担や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に、分散又は統合することができる。上記実施の形態では、例えば、液体吐出装置100が
図3等に示した各機能を実行する場合を例に挙げた。各機能は、例えばPC等の情報処理装置によって実行されても良い。
【0052】
また、液体吐出装置100や任意の情報処理装置等で実行される判定プログラムは、一つの様態として、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、判定プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、判定プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。また、判定プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【0053】
液体吐出装置100や任意の情報処理装置等で実行される判定プログラムは、上述した各部(二値化部102、面積算出部103、面積率算出部104、判定部106)を少なくとも含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が記憶媒体から判定プログラムを読み出して実行することにより、上記各部が主記憶装置上にロードされ、二値化部102、面積算出部103、面積率算出部104、判定部106が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0054】
また、上記実施の形態で説明した液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけではなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0055】
このような液体吐出装置100は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙にかかわる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
【0056】
例えば、液体吐出装置100として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、紛体を層状に形成した紛体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0057】
また、液体吐出装置100は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0058】
上記の「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、紛体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
【0059】
上記の「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的にでも付着可能であれば良い。
【0060】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであれば良く、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0061】
また、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0062】
また、液体吐出装置100としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
【符号の説明】
【0063】
100 液体吐出装置
101 撮影制御部
102 二値化部
103 面積算出部
104 面積率算出部
105 導出部
106 判定部
107 出力部
108 設定変更部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】