(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】認識装置、認識システム、プログラムおよび位置座標検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/70 20170101AFI20220208BHJP
G06T 7/80 20170101ALI20220208BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G06T7/70 A
G06T7/80
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2018064873
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】関 海克
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009050(JP,A)
【文献】特開2010-183265(JP,A)
【文献】特開2012-089954(JP,A)
【文献】特開2015-032883(JP,A)
【文献】特開平11-261868(JP,A)
【文献】特開2008-048443(JP,A)
【文献】特開2010-217984(JP,A)
【文献】特開2017-058801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/70
G06T 7/80
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚眼レンズを備えるカメラにより所定領域を撮影した魚眼動画を複数の歪み補正要素画像に変換する変換手段と、
前記歪み補正要素画像に対して対象物の認識処理を行う認識手段と、
認識した前記対象物の前記歪み補正要素画像における位置座標を求める第1位置座標検出手段と、
前記歪み補正要素画像における位置座標から、認識した前記対象物の前記所定領域での位置座標を求める第2位置座標検出手段と、
を備え
、
前記認識手段は、前記歪み補正要素画像の座標から単位球での経度と緯度を計算し、前記単位球を要素画像の方位角、仰角、回転角により、回転行列計算によって、正距円筒魚眼画像の経度と緯度座標値を求める、
ことを特徴とする認識装置。
【請求項2】
魚眼レンズを備えるカメラにより所定領域を撮影した魚眼動画を複数の歪み補正要素画像に変換する変換手段と、
前記歪み補正要素画像に対して対象物の認識処理を行う認識手段と、
認識した前記対象物の前記歪み補正要素画像における位置座標を求める第1位置座標検出手段と、
前記歪み補正要素画像における位置座標から、認識した前記対象物の前記所定領域での位置座標を求める第2位置座標検出手段と、
を備え、
前記第2位置座標検出手段は、前記所定領域の平面上に4点以上のマーカーを設けて事前に測定した前記所定領域における前記マーカーの位置座標と、前記歪み補正要素画像における前記マーカーの位置座標とから、前記歪み補正要素画像から前記所定領域への位置座標変換式を求める、
ことを特徴とする認識装置。
【請求項3】
魚眼レンズを備えるカメラにより所定領域を撮影した魚眼動画を複数の歪み補正要素画像に変換する変換手段と、
前記歪み補正要素画像に対して対象物の認識処理を行う認識手段と、
認識した前記対象物の前記歪み補正要素画像における位置座標を求める第1位置座標検出手段と、
前記歪み補正要素画像における位置座標から、認識した前記対象物の前記所定領域での位置座標を求める第2位置座標検出手段と、
を備え、
前記変換手段は、複数の前記歪み補正要素画像を生成する際に、複数の前記歪み補正要素画像が一部互いに重なる領域を設ける、
ことを特徴とする認識装置。
【請求項4】
前記変換手段は、複数の方位角、仰角、回転角のパラメータ入力により、透視投影図法によって異なる方位角の複数
の歪み補正要素画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の認識装置。
【請求項5】
前記認識手段は、前記対象物を認識した結果を矩形で囲み、前記矩形の底辺中心点座標は、前記歪み補正要素画像での前記対象物の位置座標とする、
ことを特徴とする請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の認識装置。
【請求項6】
魚眼レンズを備えるカメラと、
請求項1ないし
5の何れか一項に記載の認識装置と、
を備えることを特徴とする認識システム。
【請求項7】
認識装置を制御するコンピュータを、
魚眼レンズを備えるカメラにより所定領域を撮影した魚眼動画を複数の歪み補正要素画像に変換する変換手段と、
前記歪み補正要素画像に対して対象物の認識処理を行う認識手段と、
認識した前記対象物の前記歪み補正要素画像における位置座標を求める第1位置座標検出手段と、
前記歪み補正要素画像における位置座標から、認識した前記対象物の前記所定領域での位置座標を求める第2位置座標検出手段と、
として機能させ
、
前記認識手段は、前記歪み補正要素画像の座標から単位球での経度と緯度を計算し、前記単位球を要素画像の方位角、仰角、回転角により、回転行列計算によって、正距円筒魚眼画像の経度と緯度座標値を求める、
ためのプログラム。
【請求項8】
認識装置で認識した対象物の位置座標検出方法であって、
魚眼レンズを備えるカメラにより所定領域を撮影した魚眼動画を複数の歪み補正要素画像に変換する変換ステップと、
前記歪み補正要素画像に対して前記対象物の認識処理を行う認識ステップと、
認識した前記対象物の前記歪み補正要素画像における位置座標を求める第1位置座標検出ステップと、
前記歪み補正要素画像における位置座標から、認識した前記対象物の前記所定領域での位置座標を求める第2位置座標検出ステップと、
を含
み、
前記認識ステップは、前記歪み補正要素画像の座標から単位球での経度と緯度を計算し、前記単位球を要素画像の方位角、仰角、回転角により、回転行列計算によって、正距円筒魚眼画像の経度と緯度座標値を求める、
ことを特徴とする位置座標検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認識装置、認識システム、プログラムおよび位置座標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物がいつどこにいるかを可視化するため、所定領域を撮影した動画を分析することで、対象物の位置を測定し、対象物の位置情報を分析することが行われている。
【0003】
特許文献1には、360度全方位の画像を撮像可能なカメラを用いた対象物の検出において、低解像度の画像と高解像度の画像とを用いて対象物の認識処理を行う技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術によれば、360度全方位の画像を撮像可能なカメラで撮影した動画像においては歪みが発生しており、歪んだ画像から所定領域における対象物の位置情報を測定するのは難しい、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、魚眼レンズを備えるカメラで撮影した動画像から所定領域における対象物の位置情報を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、魚眼レンズを備えるカメラにより所定領域を撮影した魚眼動画を複数の歪み補正要素画像に変換する変換手段と、前記歪み補正要素画像に対して対象物の認識処理を行う認識手段と、認識した前記対象物の前記歪み補正要素画像における位置座標を求める第1位置座標検出手段と、前記歪み補正要素画像における位置座標から、認識した前記対象物の前記所定領域での位置座標を求める第2位置座標検出手段と、を備え、前記認識手段は、前記歪み補正要素画像の座標から単位球での経度と緯度を計算し、前記単位球を要素画像の方位角、仰角、回転角により、回転行列計算によって、正距円筒魚眼画像の経度と緯度座標値を求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、魚眼レンズを備えるカメラで撮影した動画像から所定領域における対象物の位置情報を測定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる認識システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図2】
図2は、魚眼カメラのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、認識装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、認識装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、魚眼カメラにより入力した画像の例を示す図である。
【
図7】
図7は、正距円筒図法の座標系について説明する図である。
【
図8】
図8は、透視投影図法の座標系について説明する図である。
【
図9】
図9は、複数方位角および複数画角の設定例を示す図である。
【
図10】
図10は、3方向の歪み補正要素画像の作成例を示す図である。
【
図11】
図11は、作業領域での座標系と位置座標を例示的に示す図である。
【
図12】
図12は、歪み補正要素画像での座標系と位置座標を例示的に示す図である。
【
図13】
図13は、人認識処理のブロック走査を示す図である。
【
図17】
図17は、認識装置における処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、認識装置、認識システム、プログラムおよび位置座標検出方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
ここで、
図1は実施の形態にかかる認識システム100のハードウェア構成を示す図である。
図1に示すように、認識システム100は、魚眼カメラ200と、認識装置300とを備えている。認識装置300は、認識処理部321と、認識処理部321と魚眼カメラ200とを接続するインタフェース部322と、を備えている。
【0011】
まず、魚眼カメラ200のハードウェア構成について説明する。
【0012】
ここで、
図2は魚眼カメラ200のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示すように、魚眼カメラ200は、対角線画角が180度以上の画角を有する魚眼レンズ201およびCCD(Charge Coupled Device)203を備えている。魚眼カメラ200は、被写体光を、魚眼レンズ201を通してCCD203に入射する。また、魚眼カメラ200は、魚眼レンズ201とCCD203との間に、メカシャッタ202を備えている。メカシャッタ202は、CCD203への入射光を遮断する。魚眼レンズ201及びメカシャッタ202は、モータドライバ206より駆動される。
【0013】
CCD203は、撮像面に結像された光学像を電気信号に変換して、アナログの画像データとして出力する。CCD203から出力された画像情報は、CDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路204によりノイズ成分を除去され、A/D変換器205によりデジタル値に変換された後、画像処理回路208に対して出力される。
【0014】
画像処理回路208は、画像データを一時格納するSDRAM(SynchronousDRAM)212を用いて、YCrCb変換処理や、ホワイトバランス制御処理、コントラスト補正処理、エッジ強調処理、色変換処理などの各種画像処理を行う。なお、ホワイトバランス処理は、画像情報の色濃さを調整し、コントラスト補正処理は、画像情報のコントラストを調整する画像処理である。エッジ強調処理は、画像情報のシャープネスを調整し、色変換処理は、画像情報の色合いを調整する画像処理である。また、画像処理回路208は、信号処理や画像処理が施された画像情報を液晶ディスプレイ216(以下、LCD16とする)に表示する。
【0015】
また、画像処理回路208は、魚眼レンズ201から入力した魚眼画像を正距円筒図法で変更した正距円筒画像を生成する。
【0016】
画像処理回路208において信号処理、画像処理が施された画像情報は、圧縮伸張回路213を介して、メモリカード214に記録される。圧縮伸張回路213は、操作部215から取得した指示によって、画像処理回路208から出力される画像情報を圧縮してメモリカード214に出力すると共に、メモリカード214から読み出した画像情報を伸張して画像処理回路208に出力する。
【0017】
魚眼カメラ200は、プログラムに従って各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)209を備えている。CPU209は、プログラムなどを格納した読み出し専用メモリであるROM(Read Only Memory)211、および各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)10とバスラインによって相互接続されている。
【0018】
CCD203、CDS回路204及びA/D変換器205は、タイミング信号を発生するタイミング信号発生器207を介してCPU209によって、タイミングを制御される。さらに、画像処理回路208、圧縮伸張回路213、メモリカード214も、CPU209によって制御される。
【0019】
魚眼カメラ200の出力は、
図1に示す認識装置300の信号処理ボードであるインタフェース部322に入力する。
【0020】
次に、認識装置300のハードウェア構成について説明する。
【0021】
ここで、
図3は認識装置300のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、認識装置300は、認識装置300全体の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)301、CPU801の駆動に用いられるプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)302、CPU301のワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)303を有する。また、プログラム等の各種データを記憶するHD(Hard Disk)304、CPU301の制御にしたがってHD304に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御するHDD(Hard Disk Drive)305を有する。
【0022】
また、認識装置300は、メディアI/F307、ディスプレイ308、ネットワークI/F309を有する。メディアI/F307は、フラッシュメモリ等のメディア306に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。ディスプレイ308は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。ネットワークI/F309は、通信ネットワークを利用してデータ通信する。
【0023】
また、認識装置300は、キーボード311、マウス312、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ314、バスライン310を有する。キーボード311は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備える。マウス312は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う。CD-ROMドライブ314は、着脱可能な記録媒体の一例としてのCD-ROM313に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。バスライン310は、上記各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0024】
図示した認識装置300のハードウェア構成は、1つの筐体に収納されていたりひとまとまりの装置として備えられていたりする必要はなく、認識装置300が備えていることが好ましいハード的な要素を示す。また、クラウドコンピューティングに対応するため、本実施形態の認識装置300の物理的な構成は固定的でなくてもよく、負荷に応じてハード的なリソースが動的に接続・切断されることで構成されてよい。
【0025】
なお、プログラムは実行可能形式や圧縮形式などでメディア306やCD-ROM313などの記憶媒体に記憶された状態で配布されるか、又は、プログラムを配信するサーバから配信される。
【0026】
本実施の形態の認識装置300で実行されるプログラムは、下記に示す各機能を含むモジュール構成となっている。認識装置300のCPU301は、ROM302やHD304などの記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより各モジュールがRAM303上にロードされ、各機能を発揮する。
【0027】
図4は、認識装置300の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施の形態にかかる認識装置300の認識処理部321は、魚眼カメラ動画入力部101、変換手段として機能する歪み補正要素画像生成部102、歪み補正要素画像生成パラメータ入力部103、人認識辞書入力部104、認識手段として機能する人認識処理部105、第1位置座標検出手段および第2位置座標検出手段として機能する作業領域人位置計算部106、作業領域人位置測定結果出力部107を備えている。
【0028】
魚眼カメラ動画入力部101は、魚眼カメラ200によりオフィスや工場などの作業領域(所定領域)を撮影した魚眼動画を入力する。
【0029】
ここで、
図5は魚眼カメラ200により入力した画像の例を示す図である。
図5に示すように、魚眼カメラ200により入力される画像は、魚眼画像を正距円筒図法で変更した正距円筒画像である。
【0030】
図6は、単位球について説明する図である。
図6においては、半径が1の単位球を示す。この単位球を用いて、魚眼カメラ200の結像について説明する。
図6に示すように、魚眼カメラ200へ入力する光線は単位球の赤道面に対する入射角、つまり仰角を示す緯度はlatitudeである。入射光線の方位角を示す経度はlongitudeである。
【0031】
図7は、正距円筒図法の座標系について説明する図である。
図7に示すように、横軸は経度longitudeであり、縦軸は緯度latitudeである。横軸の経度の角度範囲は(-180度~180度)であり、縦方向緯度の角度範囲は(-90度~90度)である。縦方向と横方向は等間隔に交差する。つまり、縦方向と横方向は等間隔角度である。
【0032】
歪み補正要素画像生成部102は、透視投影図法により、複数の方向で要素画像を作成し、歪み補正要素画像を作成する。歪み補正要素画像生成部102は、複数の方向の要素画像により、作業領域をカバーする。歪み補正要素画像生成パラメータ入力部103は、複数の方向で要素画像を作成するため、歪み補正要素画像作成のためのパラメータを入力する。入力パラメータは、要素画像の数、それぞれ要素画像の画像サイズ、画角、方位角、仰角、回転角を入力する。
【0033】
図8は、透視投影図法の座標系について説明する図である。
図8に示すように、魚眼歪みを補正し、歪み補正要素画像を作成するには、透視投影図法により、歪み補正要素画像を作る。
図8に示すように、透視投影図法は3次元の物体を見たとおりに2次元平面に描画するための投影図法である。
【0034】
歪み補正要素画像生成部102は、歪み補正要素画像を作成するため、
図8に示す透視投影図法で歪み補正要素画像を作成する。そのため、歪み補正要素画像の1画素座標(xp,yp)は、
図5に示す入力魚眼画像での対応する座標(longitude,latitude)を求めれば良い。
【0035】
歪み補正要素画像生成部102は、
図8に示すように、要素画像の画素(xp,yp)から下記に示す式(1)と式(2)により、(longitude,latitude)経度と緯度を計算する。
【0036】
【0037】
式(1)、式(2)は、歪み補正要素画像の方位角、仰角と回転角はすべて0のときの計算式である。歪み補正要素画像生成部102は、複数の歪み補正要素画像を作成するとき、それぞれの方位角、仰角と回転角で魚眼画像での座標、経度緯度(longitude,latitude)を計算する。歪み補正要素画像生成部102は、
図6に示す単位球の回転変換により、式(1)と式(2)の結果からそれぞれの方位角、仰角と回転角で魚眼画像での座標、経度緯度(longitude,latitude)を計算する。
【0038】
【0039】
式(3)は単位球の回転変換式である。ここで、αは方位角、βは仰角、γは回転角である。これらのパラメータは、歪み補正要素画像生成パラメータ入力部103から入力する。歪み補正要素画像生成部102は、前記求めた経度緯度(longitude,latitude)から単位球上での(x,y,z)座標を計算する。
【0040】
歪み補正要素画像生成部102は、方位角、仰角、回転角により、式(3)の単位球回転行列計算によって(x’,y’,x’)の単位球面上の座標を求める。この座標から、経度と緯度座標(longitude’,latitude’)を求める。つまり、魚眼画像上での座標値である。
【0041】
歪み補正要素画像生成部102は、魚眼画像上の座標(longitude’,latitude’)での画素値を作り、歪み補正要素画像の座標の(xp,yp)画素値に与える。このようにして、歪み補正要素画像生成部102は、歪み補正要素画像を作成する。
【0042】
ここで、複数方向の歪み補正要素画像を生成する方法を説明する。複数の歪み補正要素画像のそれぞれの方位角と画角を設定する必要である。そこで、それぞれの方位角と画角の設定方法を説明する。分割する画像数を設定する際に、数を多く設定すると、それぞれの補正画像の画角が小さくなる。すなわち、分割数をパラメータとして設定できる。
【0043】
ここで、
図9は複数方位角および複数画角の設定例を示す図である。
図9に示す例は、分割数3の例を示すものである。
図9に示すように、歪み補正要素画像生成部102は、180度の範囲内で、3分割し、それぞれの方位角と画角を設定する。歪み補正要素画像生成部102は、それぞれの画像間では境目が発生するため、一部お互いに重なる領域を設け、それぞれの画角を少し広く設定する。歪み補正要素画像生成部102は、設定したそれぞれの方位角と画角で、歪み補正を行う。
【0044】
歪み補正要素画像生成部102は、複数の方位角、仰角、回転角により、複数の歪み補正要素画像を作成する。3方向の歪み補正要素画像の作成例を
図10に示す。
【0045】
歪み補正要素画像により人を認識し、認識結果の位置座標から作業領域での位置座標を計算する必要である。そのため、事前キャリブレーションを行い、変換式を求める。
【0046】
ここで、
図11は作業領域での座標系と位置座標を例示的に示す図である。本実施形態においては、作業領域の地面にマーカーを設けることによりキャリブレーションを行う。
図11に示すように、例えば、作業領域で黒い点のマーカーMを設置する。マーカーMの座標(X,Y)を事前に測定し、既知の値とする。なお、
図5においては、白いマーカーを設けている。
【0047】
ここで、
図12は歪み補正要素画像での座標系と位置座標を例示的に示す図である。
図12に示すように、対応する歪み補正要素画像は、作業領域の地面で設けたマーカーMを結像する。歪み補正要素画像からマーカーMの位置を検出し、マーカーの座標は(x,y)とする。作業領域の地面と透視投影図法で作成した歪み補正要素画像の地面は平面なので、射影変換の関係を持つ。下記に示す式(4)で変換する。
【0048】
【0049】
式(4)の未知数としては、8個のmijがあるので、対応点(X,Y)と(x,y)が4点以上あれば、係数mijを求めることができる。
【0050】
人認識処理部105は、歪み補正要素画像を用いて人認識処理を行う。より詳細には、人認識処理部105は、歪み補正要素画像生成部102で作成した歪み補正要素画像に対して、人認識処理を行う。
【0051】
人認識辞書入力部104は、人認識処理部105における人認識処理に用いる人認識用辞書を入力する。より詳細には、人認識辞書入力部104は、機械学習方法によって、事前に人の学習データを用いた人認識用辞書を作成する。
【0052】
ここで、
図13は人認識処理のブロック走査を示す図である。
図13に示すように、人認識処理部105は、人を認識するため、まず画像から歪み補正要素画像の範囲内で、矩形形状のブロック1を切り出す。矩形形状のブロック1における左上の座標(Xs,Ys)と右下の座標(Xe,Ye)は、ブロック1の画像内での位置とブロック1の大きさにより決まる。
【0053】
矩形形状のブロックの選択は、大きいサイズから小さいサイズまで順に選択する。その理由として、本手法では、ブロックの正規化を行うので、大きいブロックと小さいブロックの処理時間は同じである。画像に大きいブロックとなる候補の数が少なく、小さいサイズのブロック数は多いので、大きいサイズのブロックから選択するとより早くオブジェクトを検知される。大きい画像が検知されると、出力すると体感速度は速くなる。
【0054】
人認識処理部105は、人認識の特徴量を計算する。ここで、
図14は人認識の特徴量を示す図である。
図14に示すように、人認識処理部105は、ブロック内にある白黒の矩形特徴量を計算する。つまり、人認識処理部105は、ブロック内にある白黒の矩形領域に白い領域内の画素値を加算し、黒い画素領域内の画素合計値との差はブロック領域内の特徴量h(x)とする。
図14においては、A、B、C、Dの4つの特徴の例を挙げた。
【0055】
【0056】
計算した矩形特徴量は、式(5)示すように特徴量重み付け評価値f(x)の計算に用いる。式(5)に示すように、人認識処理部105は、ブロック内に特徴量ht(x)を計算して、重み係数αtを付けて、評価値f(x)を計算する。
【0057】
式(5)に示すように、評価関数に特徴量ht(x)と重み係数αtを有している。人認識辞書入力部104は、特徴量と重み係数を、機械学習方法により予め計算しておく。人認識辞書入力部104は、人認識対象に対して、学習データを集め、学習させ、特徴量と重み係数を求める。
【0058】
ここで、
図15は人認識処理の階層構造を示す図である。
図15に示すように、人認識処理は、階層構造を有している。各階層では、式(5)に示す評価関数を持つ。人認識処理部105は、評価関数の値が、予め設定した閾値より小さい場合、人でないと判断し、そのブロック(非人ブロック)の評価を中止する。人認識処理部105は、各階層で評価値を計算する。人認識処理部105は、最後の階層において人でないと判断しなかったブロックについて、人と判断する。
【0059】
人認識辞書入力部104は、人認識処理部105の各階層での評価値を計算する特徴量と重み係数および、各階層での評価値閾値を予め、人と人でない学習画像を用いて学習させ、人認識用辞書を作成する。
【0060】
ここで、
図16は人認識の結果の例を示す図である。
図16に示す枠500A,500Bは、人認識した結果を矩形で囲んで人領域としたものである。矩形の底辺中心点座標は、歪み補正要素画像での人認識の位置座標とする。
【0061】
作業領域人位置計算部106は、歪み補正要素画像と作業領域の座標変換式(4)を用いて人認識処理部105における人認識処理により得られた歪み補正要素画像上の人位置座標(x,y)を変換し、作業領域での人位置(X,Y)を求める。
【0062】
作業領域人位置測定結果出力部107は、作業領域人位置計算部106で求められた作業領域での人位置(X,Y)を出力する。
【0063】
ここで、
図17は認識装置300における処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図17に示すように、まず、魚眼カメラ動画入力部101は、魚眼カメラ200によりオフィスや工場などの作業領域を撮影した魚眼動画を入力する(ステップS1)。
【0064】
次いで、歪み補正要素画像生成部102は、透視投影図法により、複数の方向で要素画像を作成し、歪み補正要素画像を作成する(ステップS2)。
【0065】
次いで、人認識処理部105は、ステップS2で作成した歪み補正要素画像に対して、人認識処理を行う(ステップS3)。
【0066】
次いで、作業領域人位置計算部106は、ステップS3により得られた歪み補正要素画像上の人位置座標(x,y)を変換し、作業領域での人位置(X,Y)を求める(ステップS4)。
【0067】
最後に、作業領域人位置測定結果出力部107は、ステップS4で求められた作業領域での人位置(X,Y)を出力する(ステップS5)。
【0068】
このように本実施の形態によれば、魚眼カメラで撮影した動画像から所定領域における対象物の位置情報を測定することができる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、オフィスや工場などの作業領域を撮影した魚眼動画から人の位置情報を測定する形態を例示的に説明したが、これに限るものではなく、各種の測定に適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
100 認識システム
102 変換手段
105 認識手段
106 第1位置座標検出手段、第2位置座標検出手段
200 カメラ
300 認識装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】