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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20220208BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H01F27/24 Q
H01F37/00 H
H01F37/00 E
H01F37/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019509712
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011725
(87)【国際公開番号】W WO2018180998
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2017061681
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】坂口 睦仁
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-117820(JP,U)
【文献】実開昭50-11016(JP,U)
【文献】特開2013-243211(JP,A)
【文献】特開2013-115321(JP,A)
【文献】特開2017-103422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 27/26
H01F 27/32
H01F 37/00
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字型の磁心を収容する樹脂ケースにコイルを配置したコイル部材を組合せ環状に連結した一対のコイル部材からなるコイル部品であって、
前記コイル部材はそれぞれ前記磁心の両端部側に連結部を有し、
前記連結部のそれぞれには連結機能部と補強機能部とを備え、
前記補強機能部は、樹脂ケースの内側壁と収容した磁心の外周との間に形成された間隙部と、コイル部材の組合せ方向に延びる突片部で構成され、一方側のコイル部材の突片部が他方側のコイル部材の間隙部に挿入可能であり、
前記連結機能部は、前記組合せ方向に延びる鉤状突起部と突起受部とで構成され、一方側のコイル部材の鉤状突起部が他方側のコイル部材の突起受部に遊貫可能なコイル部品。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品において、
それぞれのコイル部材の連結部において、組合せ方向視で、前記磁心を挟んで一方の側に前記連結機能部の鉤状突起部を備え、他方の側に前記突起受部を備え、更に前記補強機能部の突片部を前記連結機能部の突起受部側に備え、前記間隙部を前記連結機能部の鉤状突起部側に備えるコイル部品。
【請求項3】
請求項2に記載のコイル部品において、
前記コイル部材の連結機能部の鉤状突起部と突起受部との位置が、一方の連結部に対して、他方の連結部では180°反転した位置関係にあるコイル部品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のコイル部品において、
コイル部材を組み合わせた状態で、向かい合う磁心の突合せ部の周囲が前記補強機能部の突片部により囲われたコイル部品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のコイル部品において、
前記連結機能部の鉤状突起部が、2つの腕部と、前記腕部の先端に形成された鉤状部とを備えるコイル部品。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のコイル部品において、
前記樹脂ケースは2つのケース部材を組み合わせて形成されていて、前記ケース部材の有底空間に前記磁心を収容するコイル部品。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のコイル部品において、
前記樹脂ケースは、前記コイルの位置を決める鍔部を有するコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス、リアクトル、チョークコイル等に用いられるコイル部品に関し、特には環状に構成されたコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電機器、産業機器、車両など多種多様な用途において、トランス、リアクトル、チョークコイル等のコイル部品が用いられている。一般的なコイル部品は基本構成として、コイルと、コイルが巻装された絶縁性樹脂製のボビンと、前記ボビン内に配置される磁心とを含む。
【0003】
コイル部品は全体として環状の形態をなし、磁心は閉磁路を構成する。磁心の形態はコイル部品の用途によって様々だが、磁心への巻線などの組立性から複数の部材に分割形成されたものを用いて、組み合わせて環状とすることが行なわれる。
【0004】
例えば、実開平3-117820号は、磁心を収容した絶縁ケースにコイルを巻いたコイル部材を組み合わせてなる矩形環状のコイル部品を開示している。このコイル部品の正面図を図16に示す。なお図面上コイル部品の内部構造を理解し易いように一部を断面で示している。図17にコイル部品を構成するコイル部材の斜視図を示す。
【0005】
コイル部品には、2つのU字状の磁心308(308a,308b)が組み合わせて使用される。磁心308(308a,308b)は、コイルが巻かれる直線状の巻線部と、前記巻線部の両端側が巻線部の長手方向と交差する方向に屈曲した非巻線部を備える。磁心308(308a,308b)同士を非巻線部の端部に現われる突合せ面310で対面させて矩形環状の磁心を構成する。
【0006】
それぞれの磁心308(308a,308b)は絶縁ケース301(301a,301b)と組み合わされ、それにコイル309a,309bが設けられてコイル部材が構成される。絶縁ケース301(301a,301b)は一部が開口した窪み部311を有し、そこに磁心308(308a,308b)が組み込まれ、磁心308(308a,308b)の背面や側面は絶縁ケース301(301a,301b)で覆われている。
【0007】
コイル部材の一方の絶縁ケース301bには、突合せ方向に延びる凸部307が設けられ、他方の絶縁ケース301aには前記凸部に対応する凹部306が設けられている。前記凸部307は薄板状の腕部の先端につめを備えていて、前記凹部306は腕部を受ける固定穴として形成されている。また、それぞれの絶縁ケース301(301a,301b)には、磁心308(308a,308b)を突合せ面310方向に押圧可能なバネ部315が設けられている。
【0008】
前記凸部307の先端のつめを前記凹部306の固定穴に係合させ、磁心308(308a,308b)を背面から突合せ面310に向かって常に押圧した状態とし、2つのコイル部材を一体化する。更にワニス含浸によりコイル部材どうしや、磁心308(308a,308b)と絶縁ケース301(301a,301b)を固定してコイル部品とする。
【0009】
このような構成によればコイルの巻線や組立てが容易なコイル部品を得ることができる。しかしながら、磁心の全体が絶縁ケースで覆われていないため、高電圧・大電流で使用されるリアクトル等に用いる場合には、別途コイルと磁心との間の絶縁性を高めることが必要となる。
【0010】
またコイル部材どうしの組み合わせ状態が絶縁ケースの凸部と凹部との係合により維持されるが、ワニス等によって接着固定がなされていない状態では外力により容易に分離し易く、取り扱いに注意を要するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明では、分割された磁心を組み合わせて環状に構成されるコイル部品において、コイルと磁心との絶縁性を向上するとともに、接着固定前でもコイル部材どうしを組み合わせてしまえば容易に分離することが無く、取り扱いが容易なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、U字型の磁心を収容する樹脂ケースにコイルを配置したコイル部材を組合せ環状に連結した一対のコイル部材からなるコイル部品であって、前記コイル部材はそれぞれ前記磁心の両端部側に連結部を有し、前記連結部のそれぞれには連結機能部と補強機能部とを備え、前記補強機能部は、樹脂ケースの内側壁と収容した磁心の外周との間に形成された間隙部と、コイル部材の組合せ方向に延びる突片部で構成され、一方側のコイル部材の突片部が他方側のコイル部材の間隙部に挿入可能であり、前記連結機能部は、前記組合せ方向に延びる鉤状突起部と突起受部とで構成されていて、一方側のコイル部材の鉤状突起部が他方側のコイル部材の突起受部に遊貫可能なコイル部品である。
【0013】
それぞれのコイル部材の連結部において、組合せ方向視で、前記磁心を挟んで一方の側に前記連結機能部の鉤状突起部を備え、他方の側に前記突起受部を備え、更に前記補強機能部の突片部を前記連結機能部の突起受部側に備え、前記間隙部を前記連結機能部の鉤状突起部側に備えるのが好ましい。
【0014】
前記コイル部材の連結機能部の鉤状突起部と突起受部との位置は、一方の連結部に対して、他方の連結部では180°反転した位置関係にあるのが好ましい。
【0015】
コイル部材を組み合わせた状態で、向かい合う磁心の突合せ部の周囲は前記補強機能部の突片部により囲われるのが好ましい。
【0016】
前記連結機能部の鉤状突起部は、2つの腕部と、前記腕部の先端に形成された鉤状部とを備えるのが好ましい。
【0017】
前記樹脂ケースは2つのケース部材を組み合わせて形成されていて、前記ケース部材の有底空間に前記磁心を収容するのが好ましい。
【0018】
前記樹脂ケースに前記コイルの位置を決める鍔部を設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分割された磁心を組み合わせて環状に構成されるコイル部品において、コイルと磁心との絶縁性を向上するとともに、接着固定前でもコイル部材どうしを組み合わせてしまえば容易に分離することが無く、取り扱いが容易なコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1(a)】本発明のコイル部品の一例を示す上面図である。
図1(b)】本発明のコイル部品の一例を示す正面図である。
図2】本発明のコイル部品に用いる磁心の一例を示す斜視図である。
図3】本発明のコイル部品を構成するコイル部材を示す斜視図である。
図4図3に示すコイル部材をC方向から見た右側面図である。
図5図3に示すコイル部材をB方向から見た正面図である。
図6】本発明のコイル部品に用いる樹脂ケースを構成する第1ケース部材を示す斜視図である。
図7図6に示す第1ケース部材をA方向から見た下面図である。
図8図6に示す第1ケース部材をB方向から見た右側面図である。
図9図6に示す第1ケース部材をC方向から見た左側面図である。
図10図6に示す第1ケース部材をD方向から見た正面図である。
図11】本発明のコイル部品に用いる樹脂ケースを構成する第2ケース部材を示す斜視図である。
図12図11に示す第2ケース部材をA方向から見た下面図である。
図13図11に示す第2ケース部材をB方向から見た右側面図である。
図14図11に示す第2ケース部材をC方向から見た左側面図である。
図15図11に示す第2ケース部材をD方向から見た正面図である。
図16】従来のコイル部品の一例を示す正面図である。
図17】従来のコイル部品を構成するコイル部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るコイル部品について具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。また説明において示される寸法や形状、図面を参照して説明する構成部材の相対的な位置関係等は、特に断わりのない限りは、それらの説明、図面等のみに限定されない。さらに説明においては、同一の名称、符号については同一又は同質の部材を示していて、図示していても詳細説明を省略する場合がある。
【0022】
図1(a)はコイル部品の外観を示す上面図であり、図1(b)はその正面図である。図2はコイル部品に用いる磁心の構成例を示す斜視図である。図3はコイル部材を示す斜視図であり、図4はそのコイル部材をC方向から見た右側面図であり、図5はB方向から見た正面図である。なお図3図4及び図5においてはコイルを省略して示している。
【0023】
本発明のコイル部品1はコイル部材2a,2bを組み合わせて構成される。コイル部材2a,2bは、磁心250と前記磁心の全体を囲う樹脂ケース3と、前記樹脂ケース3に巻回されたコイル200を備え、コイル部材2a,2bを相互に対向する2箇所の連結部で組み合わせ、接着剤で固定して矩形環状のコイル部品1とする。コイル200は鍔部30間の直線状部に配置される。
【0024】
図3に示すように、前記鍔部30間の直線状部の角が、導線を巻き易くし、かつ導線を傷つけないように面取りされていている。コイル200の端部は前記鍔部30の一部が切り欠かれた引出し部から導出される。
【0025】
コイル200には、エナメルからなる絶縁被覆された単導線や平角導線を用いても良いし、表皮効果による抵抗増加に伴う温度上昇を低減するように、エナメル銅線の細線を数十~数百本撚り合せて導線の導体表面積を大きくしたリッツ線を用いても良い。コイル部材2a,2bは巻線が容易な形状なので、コイル200に用いる導線の種類や巻数は限定されず、用途に応じて定義選択することができる。
【0026】
詳細は後述するが、樹脂ケース3は2つのケース部材4a,4bを組み合わせて形成されていて、それぞれのケース部材4a,4bは磁心250を部分的に収容可能なU字状の有底空間を備えている。ケース部材4a,4bを組み合わせて形成される空間に磁心250を配置し、更にコイル部材2a,2bを組み合わせて一方の磁心250の端面と他方の磁心250の端面とを対向させ、樹脂ケース3により磁心250の全体を覆うことで、コイル200と磁心250との絶縁性が向上する。
【0027】
磁心250は、Mn系やNi系のソフトフェライトからなる磁心、又はFe-Si合金、Fe-Cr合金、Fe-Cr-Si合金、Fe-Al合金、Fe-Al-Si合金、Fe-Al-Cr合金、Fe-Al-Cr-Si合金、Fe-Ni合金、Fe-M-B系合金等の結晶質もしくは非晶質の合金を用いた圧粉磁心であるのが好ましい。
【0028】
コイル部材2a,2bには2箇所の連結部が設けられている。連結部はU字型の磁心250の両端側にあって、連結機能部と補強機能部とを備える。連結機能部は樹脂ケース3に一体に形成された鉤状突起部20a,20bと突起受部23a,23bとで構成される。また補強機能部は、樹脂ケースの内側と磁心との間に形成された間隙部26a,26bと、樹脂ケース3と一体に形成され、コイル部材2a,2bの組合せ方向に延びる突片部25a,25bとで構成される。
【0029】
図3図5を用いて連結機能部と補強機能部とについて詳細に説明する。
(連結機能部)
鉤状突起部20a,20bはコイル部材2a,2bの組合せ方向に延びる腕部21を有し、その端部が鉤状となっている。突起受部23a,23bは、樹脂ケースの一部が組合せ方向と直交する方向に壁状に突起した部分であって、対応する鉤状突起部20a,20bと組合せ可能な位置に設けられた中空部24a,24bを備えている。対向するコイル部材2a,2bどうしで、鉤状突起部20aと突起受部23a、及び鉤状突起部20bと突起受部23bとを遊貫(遊びを伴って貫通)させる。突起受部23a,23bの中空部24a,24bに鉤状突起部20a,20bの鉤状の先端(鉤状部22)を貫通させ突起受部23a,23bに掛止することで、コイル部材2a,2bが連結される。
【0030】
図3に示すように、鉤状突起部20a,20bは、溝部を間にして形成された一対の腕部21と、それらの先端側にそれぞれ形成された鉤状部22とを備えている。一対の腕部21及び鉤状部22は、溝部中心線に対して互いに線対称に形成されているが、互いに異なる形状であっても良い。鉤状突起部20a,20b及び突起受部23a,23bは、相互に掛止め可能な形状であれば図示した形態に限定されるものではない。
【0031】
(補強機能部)
図4に示したように、磁心250の端部側において、樹脂ケース3(4a,4b)の内側の薄肉部と、前記磁心250の外周との間に形成された隙間(間隙部26a,26b)を有している。図中、間隙部26a,26bを明確になるように黒く塗りつぶして示した。図3に示すように、突片部25a,25bは樹脂ケース3の一部がコイル部材の組合せ方向に延びた薄板状の部分で、樹脂ケース3の外周よりも窪んだ段差を形成している。突片部25a,25bは磁心250の周囲の一部を囲むように、組合せ方向から見てU字状に形成されている。一方のコイル部材の突片部が他方のコイル部材の間隙部に挿入可能であり、対向するコイル部材間で突片部25aを間隙部26aに挿入し、突片部25bを間隙部26bに挿入する。コイル部材2a,2bを組合せた状態では、補強機能部の突片部25a,25bにより向かい合う磁心250の突合せ部の周囲が囲われて連結部の強度が向上する。またコイル部材2a,2bを接着固定する前では、コイル部材間の移動方向を組合せ方向に制限することができて、連結機能部と共同して製造工程中にコイル部材2a,2b間の連結が解かれるのを防ぐことができる。
【0032】
次にコイル部材2a,2bどうしを連結する動作を説明する。まず連結機能部の鉤状突起部20a,20bの鉤状部22を突起受部23a,23bに当接させ、その状態から突起受部23a,23bの中空部24a,24bに押し込む。押し込み動作により腕部21が弾性変形して互いに接近する方向に撓み、中空部24a,24b内に鉤状部22が入り込む。
【0033】
鉤状部22が中空部24a,24bを通過すると、腕部21間の幅が広がって押し込み前の状態に戻り、掛止めされてコイル部材2a,2bが連結される。腕部21とその間の溝部を含む全幅は中空部24a,24bの幅よりも僅かに小さく設定されていて、もってコイル部材2a,2bを遊貫状態で連結することができる。
【0034】
連結機能部の鉤状突起部20a,20bは補強機能部の突片部25a,25bの端面からの突き出しよりも長く形成されていて、コイル部材2a,2bの組立てでは、連結機能部の鉤状突起部20a,20bの鉤状部22を対向する突起受部23a,23bの中空部24a,24bに押入れた後、補強機能部の間隙部26a,26bに突片部25a,25bを挿入する。補強機能部を案内として連結機能部を遊貫し、連結部に形成された補強機能部の間隙部に突片部を嵌り込ませることにより、2つのコイル部材2a,2bにおいて磁心250どうしの横方向及び縦方向の相対位置が正確に決められ、かつそれを容易に行うことができて、磁心250の端面での組み合わせを、ばらつきが少なく、高精度に行うことができる。
【0035】
それぞれのコイル部材2a,2bの連結部において、連結機能部の鉤状突起部20a,20bと突起受部23a,23bとは、組合せ方向視で、磁心250を挟んで一方の側に鉤状突起部20a,20bが設けられており、他方の側に突起受部23a,23bが設けられている。更に補強機能部の突片部25aが連結機能部の突起受部23aの側に設けられ、突片部25bが突起受部23bの側に設けられ、補強機能部の間隙部26aが連結機能部の鉤状突起部20aの側に設けられ、間隙部26bが鉤状突起部20bの側に設けられている。
【0036】
コイル部材2a,2bの連結機能部の鉤状突起部20a,20bと突起受部23a,23bとの位置は、一方の連結部に対して、他方の連結部では180°反転した位置関係にある。このような構成によれば、一対のコイル部材を構成する各樹脂ケースを同一形状とすることができるので、部品点数を減じて製造コストを低下させることができる。
【0037】
図5に示すように、コイル部材の組立てにおいて磁心250の端面どうしの突合せが可能な様に、樹脂ケース3の連結部で僅かに磁心250の端部を突出させている。突出幅Dは0.5 mm以下とするのが好ましい。補強機能部によってコイル部材間の移動方向が限定され、かつ連結機能部の遊貫構造によって、磁心250の寸法ばらつきで突出幅D寸法がコイル部材間で異なる場合や、磁心250の端面間に樹脂フィルム、セラミックや油紙等の絶縁スペーサーを挿入して磁気ギャップを構成する場合があっても、複数の樹脂ケースを準備する必要がなく、共通の樹脂ケースを用いることができる。またコイル部材2a,2bの組み合わせに影響されず、ギャップの距離を0から設定できる環状のコイル部品を容易に得ることができる。
【0038】
次に樹脂ケースの構造について、図面を用いて詳細に説明する。図6図15は樹脂ケースの構造を示す図であり、図6は一方のケース部材(第1ケース部材)の斜視図であり、図7は前記第1ケース部材をA方向から見た底面図であり、図8はB方向から見た右側面図であり、図9はC方向から見た左側面図であり、図10はD方向から見た正面図である。図11は他方のケース部材(第2ケース部材)の斜視図であり、図12は前記第2ケース部材をA方向から見た底面図であり、図13はB方向から見た右側面図であり、図14はC方向から見た左側面図であり、図15はD方向から見た正面図である。
【0039】
前述の通り、樹脂ケースは第1ケース部材4aと第2ケース部材4bの2つのケース部材から構成されている。図6図10に第1ケース部材の構造を詳細に示す。磁心を配置する第1ケース部材4aはU字状の有底空間13を有し、その底部から一体的に上側に延びる外側壁部10a及び内側壁部10bによって画定される基本形を有する。第1ケース部材4aの一方の端部側には連結機能部の突起受部23aと補強機能部の突片部25aとが形成され、他方には鉤状突起部20aと補強機能部の間隙部26aを構成する窪んだ段差14とが設けられている。外側壁部10a及び内側壁部10bには外側段差11a,11bが設けられ、第2ケース部材4bの端部を受ける形状となっている。また外側段差11a,11bは突片部25aと連続し、その上端は同じ高さでつながっている。
【0040】
図11図15に第2ケース部材の構造を詳細に示す。第2ケース部材4bは第1ケース部材4aと同様にU字状の有底空間18を有し、その底部から一体的に下側に延びる外側壁部15a及び内側壁部15bによって画定される基本形を有する。第2ケース部材4bもまた両端側には、連結機能部と補強機能部とを備える。一方の端部側には連結機能部の突起受部23bと補強機能部の突片部25bとが形成され、他方には鉤状突起部20bと補強機能部の間隙部26bを構成する窪んだ段差17とが設けられている。コイルの端部を支持する切欠き部がコーナー拡張部分に4ヶ所形成されている。外側壁部15a及び内側壁部15bには内側段差16a,16bが設けられている。有底空間18の開口側が薄肉で底部側が厚肉となっていて、第1ケース部材4aの端部を受ける形状となっている。
【0041】
第1ケース部材4aの外側段差11a,11bと第2ケース部材4bの内側段差16a,16bとが組合ってケース部材同士の位置決めが行われる。ケース部材4a,4bの段差どうしが隙間なく嵌入するので、組み立てた後の樹脂ケース3の外面、内面には実質的に段差はない。
【0042】
樹脂ケースには絶縁性、耐熱性、可境性及び成形性に優れた樹脂で形成するのが好ましく、具体的にはポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、エンジニアリングプラスチック等のプラスチック材料が好ましい。
【0043】
分割された磁心を組み合わせて環状に構成されたコイル部品において、コイルと磁心との絶縁性を向上し、コイル部材どうしが容易に分離することが無く、組立てが容易であるので、本発明を様々なコイル部品に適用することができる。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17