(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】移動体用カメラ及びカメラを搭載した移動体
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B60R11/02 Z
(21)【出願番号】P 2020138205
(22)【出願日】2020-08-18
(62)【分割の表示】P 2015222398の分割
【原出願日】2015-11-12
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2014253468
(32)【優先日】2014-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 栄太
(72)【発明者】
【氏名】関口 洋義
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112051(JP,A)
【文献】特開2001-088609(JP,A)
【文献】特開2013-112314(JP,A)
【文献】特開2006-039934(JP,A)
【文献】特開2010-198552(JP,A)
【文献】特表2005-512876(JP,A)
【文献】実開昭60-093541(JP,U)
【文献】特表2005-523200(JP,A)
【文献】特開2015-107764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に並列配置され
、フロントガラスを有する移動体の前方を
、前記フロントガラスを介さずに撮影する一対の撮影部と、
前記一対の撮影部からの信号により、前記移動体の前方の対象物までの距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部からの信号に基づいて前記移動体の制御を行う制御信号を発する信号発生部と、を備え、
前記一対の撮影部を含む筐体が、ルーフと天井の内貼りの間に固定され、前記移動体のルーフと一体的に形成されていることを特徴とする移動体用カメラ。
【請求項2】
前記筐体は、正面形状は台形であり、平面形状は前面から背面に向かってせまくなるほぼ台形であり、側面形状は前面が45度以上の勾配を有し、背面が45度未満の二段階の勾配を有する山形であり、底面形状は前面から背面に向かってせまくなるほぼ台形であり、前記移動体のルーフ上に配置されることを特徴とする請求項1記載の移動体用カメラ。
【請求項3】
前記筐体は、正面形状はほぼ台形であり、平面形状は前面から背面に向かってせまくなるほぼ台形であり、側面形状は前面から背面にかけて勾配を有する山形であり、底面形状は前面から背面に向かってせまくなるほぼ台形であり、前記撮影部及び前記信号発生部が前記ルーフと前記移動体の天井内貼りとの間に固定されることを特徴とする請求項2記載の移動体用カメラ。
【請求項4】
前記筐体の前面は前記移動体のフロントガラスと同様の部材で覆われていることを特徴とする請求項2または3記載の移動体用カメラ。
【請求項5】
前記一対の撮影部付近に、通気穴を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項記載の移動体用カメラ。
【請求項6】
前記一対の撮影部の中央に、通気穴を備えていることを特徴とする請求項5記載の移動体用カメラ。
【請求項7】
前記移動体の停止時には、前記移動体の移動時よりも前記一対の撮影部のフレームレートが小さくなることを特徴とする請求項1から6の何れか一項記載の移動体用カメラ。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項記載の移動体用カメラを搭載したことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体用カメラ及びカメラを搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人や車や障害物などの物体と自車両との衝突による事故が多く発生している。事故を未然に防ぐための対策として、自車両にカメラを自車両に搭載し、カメラによって撮像された画像を使って自車両前方の人や車や障害物等の物体や、路面上に描かれている文字や白線等の情報を、撮像した画像からリアルタイムに認識し、運転手や自車両に情報を伝達する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1 、2及び非特許文献1のように、カメラを自車両の室内に搭載し、運転支援システムに用いる技術が挙げられる。また、特許文献3のように多数のカメラを自車両の周囲方向に視線方向が向くよう固定し、自車両周囲の状況を監視する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献1のように、ステレオカメラが室内に搭載されている場合、運転者の視野を阻害し、乗員の居住空間を圧迫することに繋がる。またフロントガラスの反射による、撮像画像への写り込みやフロントガラスの汚れをはじめ、非特許文献2に記載されている使用上の注意事項が多数存在し、ユーザーのメンテナンスが多数必要になる。
【0005】
特許文献1では、視野下方からのウインドウシールドへ光の入り込みを遮断する手段を設け、遮断手段を駆動させているが、駆動装置を設けることで装置全体が大きくなり運転者の視野を阻害し、居住空間を圧迫する恐れがある他、ウインドウシールド内側の汚れを回避することができない。
【0006】
特許文献2では、フィルム等の反射防止層を、車内に搭載した車載カメラ前方のフロントガラスに搭載しているが、ウインドウシールド内側の汚れを回避することができない。また、車内にカメラが搭載されるため居住空間を圧迫することは回避できない。
【0007】
さらに、非特許文献3に挙げられるように、自動車検査の審査規定には、フロントガラス貼付物に関する規定があり、反射防止フィルムや車載カメラは取り付けが許可されているものの、フロントガラスの上部20%を超えるサイズを搭載することはできない。
【0008】
上記のように、移動体の制御に用いるため常に正常な状態での撮像を求められる一方で、居住空間および、汚れ、写りこみに対して現状多くの課題が残っている。
本発明は、上記の課題を解決するために鑑みられた発明であり、フロントガラス内側やカメラのレンズに対する汚れ、車内空間や視野の圧迫を無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、水平に並列配置され、フロントガラスを有する移動体の前方を、前記フロントガラスを介さずに撮影する一対の撮影部と、前記一対の撮影部からの信号により、前記移動体の前方の対象物までの距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部からの信号に基づいて前記移動体の制御を行う制御信号を発する信号発生部と、を備え、前記一対の撮影部を含む筐体が、ルーフと天井の内貼りの間に固定され、前記移動体のルーフと一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フロントガラス内側やカメラのレンズに対する汚れ、車内空間や視野の圧迫を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】( a )は、移動体1と移動体用カメラ2との関係を示す外観斜視図であり、(b) は、(a)に示した移動体用カメラ2のハードウェアブロック図の一例である。
【
図2】(a)、(b)は、
図1(a)に示したカメラ2とフロントガラス3及びルーフ4との関係を示す説明図である。
【
図3】(a)は、移動体1の室内にステレオカメラを搭載した場合の室内図であり、(b) は、移動体用カメラ2をルーフ前方であって、ルーフ4上、もしくはルーフ4と天井内貼りとの間に固定した場合の室内図である。
【
図4】(a) は、カメラ本体6を移動体1の室内に搭載した場合を示し、(b)は、カメラ2を移動体1の室内以外に搭載した場合を示す説明図である。
【
図5】(a)は、カメラ本体6を移動体1の室内に搭載した場合を示し、(b) は、(a) のフロントガラス3に汚れや異物20が付着した場合の説明図である。
【
図6】(a)は、移動体用カメラ2をルーフに固定する場合を示し、(b)は、移動体用カメラ2をルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に固定した場合を示す図である。
【
図7】(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の六面図である。
【
図8】(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の他の六面図である。
【
図9】(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の他の六面図である。
【
図10】(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の他の六面図である。
【
図11】(a)は、移動体用カメラ2をルーフ4に固定すると共にベンチレーション機構30を設けた場合を示し、(b)は、自車両の走行中の風の流れを示し、(c)は、(a)に示した移動体用カメラ2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の主な特徴は、移動体のルーフの上、もしくはルーフと移動体の天井内貼りとの間に配置され、移動体の走行状態の検知信号の発生及び運転者への警告信号の発生に用いる移動体用カメラを搭載することである。移動体に搭載する移動体用カメラの具体例としては、例えば、
図1(a)、(b)に示すように、乗用車等の移動体1のルーフの上に筐体ごと固定される移動体用カメラ2が挙げられる。
【0013】
[構 成]
図1(a)は、移動体1と移動体用カメラ2との関係を示す外観斜視図であり、
図1(b) は、
図1(a)に示した移動体用カメラ2のハードウェアブロック図の一例である。
図1(a)に示す移動体用カメラ2は、移動体1のルーフ上の前方に搭載されるカメラである。移動体用カメラ2は、並列に水平配置され移動体1の前方を撮影する一対の撮影部である。信号発生部100は、カメラ本体6からの信号に基づき移動体1の走行状態の検知信号及び移動体1の運転手への警告信号を発生する。
【0014】
図1(b)に示す移動体用カメラ2は、カメラ本体6(6a,6b)、および信号発生部100を有する。また、信号発生部100は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、I/O14、画像処理プロセッサ15、及びバスライン16を有する。
CCD一対のカメラ6a及びカメラ6bは移動体1 に水平に並列配置されている。CPU11は、移動体用カメラ2を統括制御する機能、画像処理プロセッサ15からの認識結果に基づいて、移動体1の減速、停止、方向変更、運転者への警告を発生するための各種信号を発生する機能を有する素子であり、例えばマイクロプロセッサが挙げられる。ROM12は、移動体用カメラ2の制御プログラムが記憶された記憶素子であり、例えばマスクROMが挙げられる。RAM13は、ROM12に記憶された制御プログラムを動作させるため一時的に記憶する記憶素子であり、例えば、フラッシュメモリが挙げられる。I/O14は移動体用カメラ2の外部回路である、移動体1側の制御装置との間で信号の授受をする素子である。画像処理プロセッサ15は、カメラ6a,6bで撮影された画像から移動体1の前方にある他の移動体、人、物、白線、道路形状、移動体1の前方との間の距離、移動速度、等を認識する機能を有する素子である。2つのカメラ6a,6bを備える移動体用カメラ2はステレオカメラであり、移動体用カメラ2から移動体1前方の他の移動体、人、物等の対象物までの距離を距離算出部により算出することができる。距離の算出は、三角測量の原理により行うことができる旨が広く一般に知られている。距離算出部は、CPU11、ROM12、及びRAM13によって実現される。
尚、距離算出部は、ASICやFPGA等によっても実現可能である。
【0015】
信号発生部100はカメラ本体及び移動体1への走行、停止、舵取り、警告等の各種制御信号を発する機能を有し、例えばCPU、ROM、RAM、及びI/Oを有する。
【0016】
信号発生部100からの信号は、移動体1のブレーキシステム、駆動システム、警告音発生システムに入力され、停止、走行、警告等に利用される。
【0017】
尚、本明細書では、移動体用カメラ2をルーフ4上の前方に固定する場合で説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、移動体用カメラ2の位置はルーフ4と天井内貼りとの間の前方に固定してもよい。
移動体用カメラ2を移動体1の前方であって、室内以外のルーフ4の上、もしくはルーフ4と天井内貼りとの間に固定することで、移動体1の室内に移動体用カメラ2を搭載した際に生じる種々の課題を解決することができる。
【0018】
<第一の特徴>
本発明の第一の特徴である、移動体用カメラ2を移動体1の室内以外のルーフ4の上、もしくはルーフ4と天井内貼りとの間に固定する特徴は、移動体1の室内へのカメラ搭載による室内空間の圧迫と、運転者への視野の阻害という課題を解決する。
例えば、ステレオカメラのようにサイズが大きいカメラを移動体1の室内に搭載すると、室内の居住空間が狭くなり、乗員に圧迫感を与える。また、運転者の視野範囲にステレオカメラが含まれ、視野を阻害する場合もある。
【0019】
一方、
図1(a)のように移動体1の前方であって、ルーフの上、もしくはルーフと天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を設置した場合、
図3に示すように室内の居住性を損なわず、加えて運転者の視野範囲にカメラが入らないため、視野を阻害する事が無い。
図2(a)、(b)は、
図1(a)に示した移動体用カメラ2とフロントガラス3及びルーフ4 との関係を示す説明図である。
図2(a)に示す移動体用カメラ2は、筐体が移動体1のルーフ4と一体的に形成され、移動体用カメラ2のカメラ本体6がルーフ4と、天井内貼りとの間に固定された場合を示している。移動体用カメラ2の筐体の前面の開口は、シールド5で覆われている。シールド5は、移動体1のフロントガラス3と同様の部材、例えば合わせガラスで覆われている。
【0020】
図3(a)は、移動体1の室内にステレオカメラを搭載した場合の室内図であり、
図3(b)は、移動体用カメラ2をルーフ前方であって、ルーフ4上、もしくはルーフ4と天井内貼りとの間に固定した場合の室内図である。
図3(b)の方が
図3(a)よりも視界が広く、圧迫感が無いことが分かる。
【0021】
また、移動体用カメラ2は、カメラ視野における写りこみを防止することができる。
例えば、
図4(a)に示す移動体1の室内に搭載したカメラ本体6の視野におけるフロントガラス3に、ダッシュボード( インストゥルメント・パネルとも言う。)9やその周辺に置かれた物体が、下からの反射光として写り込むことがある。フロントガラス3に写りこみ7が発生すると、カメラ本体6はフロントガラス3の写りこみも撮像してしまうため、人や物が見えず、認識処理等に悪影響を及ぼす。
【0022】
一方、
図1(a)のように移動体1の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した場合は、
図4(b)に示すようにダッシュボード9からの反射光が移動体用カメラ2に写りこむことを防ぐことができる。
尚、
図4(a)は、移動体用カメラ2を移動体1の室内に搭載した場合を示し、
図4(b) は、カメラ2を移動体1の室内以外に搭載した場合を示す説明図である。
図4(c)は、
図4(a)のフロントガラス3周辺の説明図であり、
図4(d)は、
図4(b)のフロントガラス3周辺の説明図である。
【0023】
図5(a)は、移動体用カメラ2を移動体1の室内に搭載した場合を示し、
図5(b)は、
図5(a)のフロントガラス3に汚れや異物20が付着した場合の説明図である。
図5(b)は、移動体用カメラ2を移動体1の室内以外に搭載した場合を示す説明図であり、
図5(d)は、
図5(b)のフロントガラス3周辺の説明図である。
【0024】
また、フロントガラス3の内側、カメラレンズの汚れや異物20の付着を防止する手段を備えることができる。例えば、移動体1の室内に搭載した移動体用カメラ2の視野におけるフロントガラス3は、運転者を含む乗員の手や物が触れる可能性があり、皮脂、ホコリ、蒸気等の汚れや異物20が付着する。カメラレンズも同様である。フロントガラス3やカメラレンズに汚れや異物20が付着すると、移動体用カメラ2の撮像画像にも汚れや異物20が写り、人や物が見えず、認識処理等に悪影響を及ぼす(
図5(a)、(c)参照。) 。
【0025】
一方、
図1(a)のように移動体1の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した場合は移動体用カメラ2が移動体1の室内に無い。このため、
図5(b)に示すように移動体用カメラ2の視野のシールド5の内側に皮脂・ホコリ・蒸気等の汚れや異物20が付着しない。
【0026】
また、本実施形態の移動体用カメラ2によれば自動車検査規定に適合することができる。自動車検査規定「5-47窓ガラス貼付物等」には、窓ガラス貼付物に関する規定がある。反射防止フィルムや車載カメラは取り付けが許可されているが、フロントガラス3の上部20%を超えるサイズは規定に適合しない。移動体1の室内にカメラ本体6を固定し、フロントガラス3に貼り付けるように移動体用カメラ2を固定すると、取り付け位置や移動体用カメラ2の大きさにより規定に適合しなくなる。
【0027】
一方、
図1(a)に示すように移動体1の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した場合は、フロントガラス貼り付け物に関する自動車検査規定を考慮する必要が無い。
【0028】
< 第二の特徴>
本発明の第二の特徴は、移動体用カメラ2が移動体1のルーフ4と境界なく搭載されること、すなわち、移動体用カメラ2の筐体を移動体1のルーフ4と一体的な形成が可能なことである。
図6(a) は、移動体用カメラ2をルーフに固定する場合を示し、
図6(b)は、移動体用カメラ2をルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に固定した場合を示す図である。
一例を
図6(a)に示す。移動体1のルーフ4の上に、取り付け部品21で移動体用カメラ2の筐体の底面から左右に延長された固定装置22を固定した場合、取り付け誤差による精度低下、部品点数の増加、外観を損なう、取り付け部品21による故障箇所が増加することがある。
【0029】
図6(b)のようにルーフ4の前方であって、ルーフ4と移動体用カメラ2の筐体とが一体的に形成される。この結果、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2が固定された場合、ルーフ4への取り付け誤差は発生せず、外観も損なわず、取り付け部品21が無いため取り付け部品21による故障も発生しない。
【実施例1】
【0030】
移動体1としての自車両のルーフの前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に、ステレオカメラを有する移動体用カメラ2を固定した。移動体用カメラ2は、車両前方を撮影し、物体や路面までの距離を測距可能となっている。
この状態で、運転席および助手席に乗員を配置し、頭上空間の圧迫感について感応試験を行った。自車両の室内以外のルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を設けた場合は、ステレオカメラを搭載していない車両とほぼ同じ結果となった。
ここで、官能試験とは、人間の感覚( 視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚) によって、製品の品質を判定する検査を言う。
一方、車内にカメラ本体6としてのステレオカメラを設けた場合、特に運転者や、体格の大きい乗員が、ステレオカメラ未搭載の車に比べて圧迫感を感じる結果となった。
【実施例2】
【0031】
移動体1としての自車両のルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した。移動体用カメラ2は、車両前方を撮影し、物体や路面までの距離を測距可能となっている。
この状態で、フロントガラス3の上部から徐々に印をつけたマーカーを移動し、運転者を含む乗員による視野範囲の感応試験を行った。自車両のルーフ内部前方にカメラ本体6を設けた場合は、マーカーがルーフ4とフロントガラス3の上部境界を越えた時点で、乗員によってマーカーが確認された。
【0032】
一方、車内に移動体用カメラ2を設けた場合、マーカーがルーフ4とフロントガラス3の上部境界を過ぎてから、運転者の視点の誤差を含めて10cm~15cm程度マーカーが移動した時点で、乗員にマーカーが確認された。
【実施例3】
【0033】
移動体1としての自車両のルーフ前方であって、ルーフと天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した。移動体用カメラ2は、車両前方を撮影し、物体や路面までの距離を測距可能となっている。
移動体1としての自車両のフロントガラス3にダッシュボード9の写りこみが発生する状態で、実車両でのシミュレーションを行った。自車両のルーフ前方であって、ルーフと天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した場合は、フロントガラス3への写りこみは移動体用カメラ2での撮影画像に確認されず、移動体用カメラ2での測距結果も異常は見られなかった。
一方、車内にカメラ本体6を設けた場合は、フロントガラス3への写りこみがカメラ本体6での撮影画像に確認され、ステレオカメラとしての移動体用カメラ2での測距結果の精度低下が確認された。
【実施例4】
【0034】
移動体1としての自車両のルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した。移動体用カメラ2は、車両前方を撮影し、物体や路面までの距離を測距可能となっている。
自車両のフロントガラス3の内側に曇りが発生する状態で、自車両でのシミュレーションを行った。自車両のルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を設けた場合は、フロントガラス3の内側の曇りは移動体用カメラ2での撮影画像に確認されず、移動体用カメラ2での測距結果も異常は見られなかった。
一方、車内にステレオカメラとしての移動体用カメラ2を設けた場合は、フロントガラス3の内側の曇りがカメラ本体6での撮影画像に確認され、移動体用カメラ2での測距結果の精度低下が確認された。
【実施例5】
【0035】
移動体1としての自車両の車内に、単眼カメラのドライブレコーダーを設けた。ドライブレコーダーは、前方を撮影するため車内のフロントガラス3のルームミラー付近に貼り付けている。貼り付けにあたっては、ドライブレコーダーの撮影範囲が、ほぼ車両中心から前方を撮影できる位置を選択している。
この状態で、自動車検査の「審査事務規定5-47窓ガラス貼付物等」に適合するか実車両で確認を行った。その結果、車種の違いによるフロントガラスの面積、ルームミラー形状や、レインセンサーの形状、各種検査証等の取り付け位置により、ドライブレコーダーの取り付け位置は「審査事務規定5-47窓ガラス貼付物等」に適合せずフロントガラス上部20%を超えてしまうケースがあった。
【0036】
一方、ルーフ4と天井内貼りとの間に単眼カメラのドライブレコーダーを固定した場合、フロントガラス3の上部にはルームミラー及び各種検査証等の取り付け位置に影響されず、自動車検査の「審査事務規定5-47窓ガラス貼付物等」に適合しなくなることは無かった。
【0037】
< 変形例>
以下に移動体用カメラ2の外径形状の変形例について述べる。
図7(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の六面図である。
図7(a)は平面図、
図7(b)は左側面図、
図7(c)は正面図、
図7(d)は右側面図、
図7(e)は背面図、
図7(f)は底面図である。
移動体用カメラ2の筐体は、撮影部としてのカメラ本体及び制御部を覆い正面形状はほぼ台形である。移動体用カメラ2の筐体の平面形状は前面から背面に向かってせまくなるほぼ台形である。右側面形状及び左側面形状は前面が45度以上の勾配を有し、背面が45度未満の二段階の勾配を有する、前面から背面にかけて勾配を有する山形である。底面形状は前面から背面に向かってせまくなるほぼ台形である。
移動体用カメラ2の底面は図では平坦であり、実際の車両のルーフ4は曲面であることが多いため、移動体用カメラ2とルーフ4との間に例えば、ゴムシートや軟性樹脂を挿入してもよい。
【0038】
図8(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の他の六面図である。
図8(a)は平面図、
図8(b)は左側面図、
図8(c)は正面図、
図8(d)は右側面図、
図8(e)は背面図、
図8(f)は底面図である。
図8(a)~(f)の
図7(a)~(f)との相違点は、正面の形状が六角形である点である。
図8(a)~(f)に示した移動体用カメラであっても
図1に示した移動体用カメラ2と同様の効果が得られる。
【0039】
図9(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の他の六面図である。
図9(a)は平面図、
図9(b)は左側面図、
図9(c)は正面図、
図9(d)は右側面図、
図9(e)は背面図、
図9(f)は底面図である。
図9 ( a ) ~ ( f ) の
図7 ( a ) ~ ( f ) との相違点は、側面の形状が曲面である点である。
図9(a)~(f)に示した移動体用カメラであっても
図1に示した移動体用カメラ2と同様の効果が得られる。
【0040】
図10(a)~(f)は、
図1に示した移動体用カメラ2の他の六面図である。
図10(a)は平面図、
図10(b)は左側面図、
図10(c)は正面図、
図10(d) は右側面図、
図10(e)は背面図、
図10(f)は底面図である。
図10(a)~(f)の
図9(a)~(f)との相違点は、正面の形状が六角形である点である。
図10(a)~(f)に示した移動体用カメラであっても
図1に示した移動体用カメラ2と同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0041】
次に実施例6について述べる。
図11(a)は、移動体用カメラ2をルーフ4に固定すると共にベンチレーション機構30を設けた場合を示し、
図11(b)は、自車両の走行中の風の流れを示し、
図11(c) は、
図11(a)に示した移動体用カメラ2の断面図である。
実施例6の実施例1との相違点は、ベンチレーション機構30を設けた点である。
移動体1としての自車両のルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した。移動体用カメラ2は、車両前方を撮影し、物体や路面までの距離を測距可能となっている。
【0042】
本実施例における移動体用カメラ2は、ベンチレーション機構30としての通気穴33を備えている。通気穴33は、ステレオカメラとしての移動体用カメラ2が備える2つの撮影部の中央付近に備えられている。ステレオカメラは、熱の影響を受けると、熱膨張によってその基線長が伸びてしまい、測距精度に影響が出てしまう。特に、一対の撮影部の中央付近は、熱の影響を受けてステレオカメラの基線長を伸張させやすい。通気穴33を一対の撮影部の中央付近に備えることにより、熱の影響によるステレオカメラの基線長の膨張効果を効果的に抑制することができる。また、発熱しやすいカメラ基板31上の回路は、一対の撮影部の間に配置されることが多いが、通気穴33を一対の撮影部の中央付近に備えることにより、これを効果的に冷却することもできる。
【0043】
自車両の室温が高くなる環境下において、連続動作試験を行った。連続動作は、移動体1が一定距離の走行を続け、一定距離の走行後に停止、再度走行を開始するという動作を行ない、車両前方を撮影しつづけ、距離測定を行っている状態での連続動作を行った。自車両のルーフ4の前方であって、ルーフ4と天井内貼りとの間に移動体用カメラ2を固定した場合は、走行中に受ける風によるベンチレーション機構30により、カメラ本体6から発せられる熱が気流と共に外部に排気され、カメラ本体6の温度上昇を抑えることができた。一方、車内にカメラ本体6を取り付けた場合は、カメラ本体6から発せられる熱は移動先がなく、高温の状態が続くことが確認された。
【0044】
移動体用カメラ2は、高フレームレートで常時撮影を行うため発熱する。そのため、上記のような冷却機構が要求される。上記の冷却効果は、冷却ファン等を備えることによっても実現できる。しかし、冷却ファン等の装置は騒音が発生するほか、室内に熱排気が行われるため室内の快適性を損ねることに繋がる。よって、上記のように移動体用カメラ2を移動体のルーフ4上の前方、もしくはルーフ4と移動体の天井内貼りとの間に配置し、通気穴33を設けることにより、室内の快適性を保ちつつ効果的な冷却を行うことができる。
【0045】
連続動作試験時には、停車時において熱の発生状況は室内と同程度になることが確認されたが、停車時には高フレームレートでの撮影は不要であるため、CPU11にカメラ本体6のフレームレートを落とす動作をさせても良い。すなわち、移動体の停止時には、移動体の移動時よりも一対の撮影部のフレームレートが小さくなる。これにより、さらに発熱を抑制することができる。
【0046】
[作用効果]
以上より、本実施例によれば、フロントガラスに汚れや異物、移動体用カメラのフロントガラスへの写り込みの影響を受けることがないので、移動体用カメラの画像が正常に制御装置へ伝達される。これにより、自動ブレーキ、自動車間距離制御システム、自動走行レーン追従システム、警告システムが正常に作動するので、交通事故の発生を低減させることができる。また、フロントガラス内側やカメラのレンズに対する汚れ、車内空間や視野の圧迫を無くすだけでなく、法規制による制限の影響を無くすこともできる。
【0047】
また、本実施例によれば、ベンチレーション機構を設けることにより、熱の影響によるステレオカメラの基線長の膨張効果を効果的に抑制することができる。
【0048】
尚、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。上述した実施例ではルーフ( ルーフパネル) の場合で説明したが、本発明はこれに限定されず、移動体( 自動車) のルーフを含めた外装の板金であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 移動体
2 移動体用カメラ
3 フロントガラス
4 ルーフ
5 シールド
6 カメラ本体
7 写りこみ
9 ダッシュボード
1 1 CPU
1 2 ROM
1 3 RAM
1 4 I/O
1 5 画像処理プロセッサ
1 6 バスライン
2 0 汚れや異物
2 1 取り付け部品
2 2 固定装置
3 0 ベンチレーション機構
3 1 カメラ基板
3 2 カメラ筐体兼放熱機構
3 3 通気穴
1 0 0 信号発生部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【文献】特開2010-042703号公報
【文献】特開2013-255064号公報
【文献】特開2013-66247号公報
【非特許文献】
【0051】
【文献】http://www.subaru.jp/eyesight/function/
【文献】http://www.subaru.jp/eyesightowner/about/
【文献】http://www.navi.go.jp/info/regulation/examination.html