(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】車載カメラ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/04 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B60R11/04
(21)【出願番号】P 2017191330
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和藤 弘二
(72)【発明者】
【氏名】二村 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆好
(72)【発明者】
【氏名】高松 周史
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-091177(JP,A)
【文献】特開2017-139700(JP,A)
【文献】特開2017-114469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375828(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0251605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00,11/00
B60S 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外界を撮像するように構成された少なくとも1つの撮像部(3)と、
前記撮像部が取り付けられるように構成された第1筐体(5)と、
前記第1筐体とは別体に構成され、車両に締結部材(160)を介して取り付けられるように構成された第2筐体(7)と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを接続するように構成された接続部(100)と、
を備え
、
前記締結部材は第1ネジであり、
前記接続部は、前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくともいずれか一方に螺合して前記第1筐体と前記第2筐体とを接続するように構成された第2ネジ(100)であり、
前記撮像部に係る制御を行うように構成された回路基板(9)を、
更に備え、
前記第2ネジは、前記回路基板を挟んで前記第2筐体と前記第1筐体とを接続するように構成され、
前記第1筐体、前記回路基板及び前記第2筐体は前記第2ネジにより接続される
車載カメラ装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車載カメラ装置であって、
前記第2筐体は、前記第1筐体を下方から支持するように構成された車載カメラ装置。
【請求項3】
車両の外界を撮像するように構成された少なくとも1つの撮像部(3)と、
前記撮像部が取り付けられるように構成された第1筐体(5)と、
前記第1筐体とは別体に構成され、車両に締結部材(160)を介して取り付けられるように構成された第2筐体(7)と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを接続するように構成された接続部(100)と、
を備え
、
前記第2筐体は、前記第1筐体を下方から支持するように構成された
車載カメラ装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の車載カメラ装置であって、
前記締結部材は第1ネジであり、
前記接続部は、前記第1筐体及び前記第2筐体の少なくともいずれか一方に螺合して前記第1筐体と前記第2筐体とを接続するように構成された第2ネジ(100)である車載カメラ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車載カメラ装置であって、
前記少なくとも1つの撮像部は、2つの撮像部であり、
前記第1筐体は、前記2つの撮像部の位置関係を規定するように構成された車載カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される車載カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車両周辺の映像又は車両内部の映像を撮像するため、撮像部を備えた車載カメラ装置を搭載することがなされている。この種の車載カメラ装置は、車両にボルト等のネジを介して取り付けられる場合があるが、その場合、ネジの締め付け時に、撮像部が取り付けられる筐体に歪が生じることがある。筐体に歪が生じると、撮像部の位置又は向き(すなわち、撮像方向)が、当初の設計通りの位置又は向きと異なり、撮像部を介して所望の映像が撮像できなくなる場合がある。
【0003】
そこで、例えば、下記特許文献1に記載の車載カメラ装置では、筐体としてのカメラステイの後部(すなわち、車両への取り付け時に後側となる部分)に固定部を設け、カメラステイの前部に剛性の高いリブを設けて、当該リブによって撮像部の位置を規定している。特許文献1では、カメラステイ後部に設けられた固定部をボルト等のネジで締め付けて車両に取り付けても、カメラステイ前部に設けられた剛性の高いリブによって撮像部の位置は所望の位置に維持されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、特許文献1に記載のように、車載カメラ装置の筐体において、ネジによって締め付けられる部分と撮像部を支持する部分とを一体に構成した場合、次のような事態が生じる可能性があるという課題が見出された。すなわち、ネジによって締め付けられる部分に当該ネジの締め付け時に強い力が加わると、撮像部を支持する部分にも歪が生じる可能性があるという課題が見出された。その場合、撮像部の位置が所望の位置からずれる可能性がある。
【0006】
本開示の1つの局面は、車両にネジを介して取り付けられる筐体を備えた車載カメラ装置であって、当該車載カメラ装置の筐体に取り付けられる撮像部の位置が、ネジの締め付け時に所望の位置からずれることを抑制できる車載カメラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による車載カメラ装置は、少なくとも1つの撮像部(3)と、第1筐体(5)と、第2筐体(7)と、接続部(100)と、を備える。撮像部は、車両の外界を撮像するように構成されている。第1筐体は、前記撮像部が取り付けられるように構成されている。第2筐体は、前記第1筐体とは別体に構成され、車両に締結部材(160)を介して取り付けられるように構成されている。接続部は、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続するように構成されている。
【0008】
このような構成によれば、撮像部が取り付けられる第1筐体は、車両に締結部材を介して取り付けられる第2筐体とは別体に構成され、接続部を介して第2筐体と接続されている。このため、前記締結部材の締め付け時に第2筐体に歪が生じても、当該歪が第1筐体の歪として直接反映されることが抑制され、撮像部の位置が所望の位置からずれることも
抑制することができる。
【0009】
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の車載カメラ装置を表す分解斜視図である。
【
図2】その車載カメラ装置におけるカメラ本体及びヒータ部を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
図1に示すように、実施形態の車載カメラ装置1は、2つの撮像部3,第1筐体5,第2筐体7及び回路基板9を備えたカメラ本体11を備えている。なお、回路基板9は、撮像部3に係る制御を実行する。また、この車載カメラ装置1は、カメラ本体11に加えて、ヒータ部13と、ブラケット金具15と、を備えている。
【0012】
撮像部3は、それぞれ、第1面にレンズ31を露出させるように備え、当該レンズ31によって結像された映像を電気信号に変換する撮像素子(例えば、CCD)を内蔵している。なお、
図1では、撮像素子は図示省略している。2つの撮像部3は、第1筐体5の長尺方向に並べて形成された2つの穴部51からそれぞれのレンズ31が露出するように、前記第1面が同一方向を向くように並べて配置される。第1筐体5は、部分的に盛り上がって構成された収容部53を有し、2つの穴部51は収容部53における同一の側に形成されている。2つの撮像部3は、収容部53の内側に収容される。なお、以下の説明では、便宜上、前記第1面が向く方向を+X方向とし、収容部53が盛り上がった方向を+Z方向とした右手系直交座標を用いて、各部の位置関係を説明する場合がある。この座標系は、車載カメラ装置1が使用される際の上下左右等の方向とは無関係である。
【0013】
2つの撮像部3は、それぞれ、+Y方向及び-Y方向にそれぞれ突出した2つのフランジ33を備えている。このフランジ33が、ビス35を介して、第1筐体5の穴部51の周囲における収容部53の内壁面に固定されることにより、2つの撮像部3は第1筐体5に取り付けられる。
【0014】
第1筐体5及び回路基板9及び第2筐体7の外形は、±Z方向に見た場合、いずれも、概略、±Y方向に沿って長辺を有する長方形状に構成されている。当該長方形状の外周に沿って、第2筐体7及び回路基板9には、ビス100を+Z方向に貫通させる複数の穴部71,91がそれぞれ形成されている。第1筐体5及び回路基板9及び第2筐体7は、+Z方向から-Z方向に向かって、第1筐体5、回路基板9、第2筐体7の順で重ねられる。そのように重ねられた状態において、第2筐体7の-Z側から、穴部71,91を通ってビス100が第1筐体5に螺合されることにより、第1筐体5及び回路基板9及び第2筐体7が順次接続される。その接続によって、
図2に示すようなカメラ本体11が組み立てられる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、第1筐体5の+Z側には、ヒータ部13が重ねて配置される。第1筐体5の+Z側の面には、ヒータ部13が重ねられる部分及び収容部53を除いて、放熱用のフィン55が形成されている。詳細には、ヒータ部13は、2つの撮像部3に対してそれぞれカメラフードとして機能する2つのフード部131を備え、その2つのフード部131は発熱部133を挟んで±Y方向に連接されている。第1筐体5は、2つの穴部51それぞれの+X側に、平坦に切り欠かれた2つの平坦部57を有し、それぞれ
の平坦部57に、それぞれのフード部131が重ねられる。そのとき、発熱部133が重ねられる第1筐体5の部分は、フィン55が欠落して平坦に構成されたフィン欠落部59とされている。
【0016】
また、第2筐体7は、+X側の長辺中央が、第1筐体5及び回路基板9よりも+X方向に突出し、-X側の長辺両端が、第1筐体5及び回路基板9よりも-X方向に突出している。そして、それら計3箇所の突出部分に、穴部71,91よりも大径の穴部72がそれぞれ±Z方向に貫通して形成されている。
【0017】
ブラケット金具15は、三角形の板状に構成され、その3つの頂点に、穴部72をそれぞれ貫通するボルト151を、-Z方向に突出するように支持している。このため、ブラケット金具15に支持された3つのボルト151に第2筐体7における3つの穴部72をそれぞれ貫通させ、しかる後に各ボルト151にナット160をそれぞれ螺合させれば、第2筐体7をブラケット金具15に固定することができる。なお、当該固定がなされる際、カメラ本体11は前述のように予め組み立てられ、ヒータ部13は第1筐体5の+Z側に前述のように予め重ねられる。
【0018】
ブラケット金具15は、中心部に外形と略相似形の穴部152を形成され、+Z側の面153に接着剤を塗布されることにより、ウィンドシールド(すなわち、フロントガラス)上部に接着固定される。このとき、±Y方向が車幅方向と一致し、+X方向及び+Z方向が車両の前方に向くように、ブラケット金具15は配置される。なお、面153には、ブラケット金具15の強度を向上させるための絞り加工等が施されてもよい。また、ブラケット金具15は、必要に応じて、前記と異なる姿勢に配置されてもよい。ブラケット金具15は、必要に応じて、ウィンドシールドにおける上部以外の位置又は車両におけるウィンドシールド以外の位置に接着されてもよい。このようにブラケット金具15が接着された後、当該ブラケット金具15におけるボルト151に、ヒータ部13及びカメラ本体11が前述のようにナット160を介して固定される。
【0019】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(A)ボルト151にナット160を締め付ける際、当該締め付けに応じた応力によって、カメラ本体11に歪が生じる可能性がある。しかしながら、本実施形態の車載カメラ装置1では、撮像部3が取り付けられる第1筐体5は、車両にブラケット金具15及びナット160を介して取り付けられる第2筐体7とは別体に構成され、ビス100を介して第2筐体7と接続されている。このため、前記ナット160の締め付け時に第2筐体7に歪が生じても、当該歪が第1筐体5の歪として直接反映されることが抑制され、撮像部3の位置が所望の位置からずれることも抑制することができる。
【0020】
(B)しかも、第1筐体5と第2筐体7とは、溶接や接着によって接続されるのではなく、ビス100によるネジ固定によって接続されている。このため、第2筐体7に生じた歪が第1筐体5の歪として直接反映されることを、一層良好に抑制することができる。従って、撮像部3の位置が所望の位置からずれることも一層良好に抑制することができる。
【0021】
なお、第1筐体5と第2筐体7とをビス100によって接続する際も、第1筐体5に応力が加わるが、そのときに加わる応力は極めて小さく、第1筐体5には殆ど歪は生じない。また、カメラ本体11が組み立てられると、通常、キャリブレーションがなされるので、そのカメラ本体11の組み立て時に発生した歪はキャンセルすることができる。これに対して、ボルト151にナット160を締め付けることにより、カメラ本体11が車両に固定された後は、キャリブレーション等によって歪をキャンセルすることは困難な場合がある。従って、本実施形態のように、ボルト151にナット160を締め付ける際に第1
筐体5に歪が生じることを抑制する効果は、極めて顕著な効果であるといえる。
【0022】
(C)また、本実施形態の車載カメラ装置1では、回路基板9を挟んで、第2筐体7と第1筐体5とがビス100により接続されている。このため、回路基板9が歪に対する緩衝材として機能し、第2筐体7に生じた歪が第1筐体5の歪として直接反映されることを、一層良好に抑制することができる。従って、撮像部3の位置が所望の位置からずれることも一層良好に抑制することができる。
【0023】
(D)また、前述のようにして車両に車載カメラ装置1を取り付けた場合、第2筐体7は、当該第2筐体7における+Z側端面(すなわち、上端面)のほぼ全体によって、第1筐体5及び撮像部3を下方から支持する。このため、ビス100による接続は、第1筐体5が水平方向にずれない程度の強固さであればよく、第1筐体5及び撮像部3の重量に対抗できるほどに強固でなくてもよい。よって、ビス100の締め付け時に第2筐体7に生じる歪を一層良好に抑制することができる。従って、第1筐体5に生じる歪も一層良好に抑制することができ、延いては、撮像部3の位置が所望の位置からずれることも一層良好に抑制することができる。
【0024】
(E)また、本実施形態の車載カメラ装置1は、2つの撮像部3を備えている。このため、前述のように撮像部3の位置が所望の位置からずれることを抑制することにより、2つの撮像部3の相対的な位置関係も、所望の位置関係からずれることが抑制される。従って、本実施形態では、撮像部3の位置が所望の位置からずれることを抑制する効果が一層顕著になる。
【0025】
(F)また、本実施形態の車載カメラ装置1は、フード部131が一体に形成されたヒータ部13を備えている。このため、フード部131を暖めて、その熱でウィンドシールド及びレンズ31のくもりを抑制することができる。
【0026】
[3.特許請求の範囲の要素との対応]
なお、前記実施形態において、ナット160が締結部材及び第1ネジに対応する。ビス100が接続部及び第2ネジに対応する。なお、ナット160は、雌ねじとしての第1ネジに対応する。
【0027】
[4.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0028】
(A)前記実施形態では、ビス100により第1筐体5と第2筐体7とが接続されたが、これに限定されるものではない。例えば、第1筐体と第2筐体との接続は、かしめ等による接続であってもよく、フック等による接続であってもよい。また、ビス100を用いる場合であっても、第1筐体5の側に当該ビス100を貫通させる穴部を形成し、当該穴部を貫通したビス100を第2筐体7に螺合させてもよい。
【0029】
(B)前記実施形態では、回路基板9を挟んで第1筐体5と第2筐体7とが接続されたが、これに限定されるものではない。例えば、回路基板は第1筐体と第2筐体の間に内蔵され、第1筐体と第2筐体とは回路基板の周囲で直接接続されてもよい。
【0030】
(C)前記実施形態では、第2筐体7が第1筐体5を下方から支持したが、これに限定されるものではない。例えば、第2筐体は、第1筐体を側方から支持してもよく、上方から支持してもよい。
【0031】
(D)前記実施形態の車載カメラ装置1は、撮像部3を2つ備えたいわゆるステレオカメラとして構成されたが、これに限定されるものではない。例えば、車載カメラ装置は、撮像部を1つだけ備えたいわゆる単眼カメラであってもよい。その場合も、撮像部の位置が所望の位置からずれることを抑制することができる。
【0032】
(E)前記実施形態の車載カメラ装置1は、第1筐体5とブラケット金具15との間にヒータ部13を備えたが、これに限定されるものではない。例えば、ヒータ部13は省略されてもよく、ヒータ部13をはじめブラケット金具15,第1筐体5,第2筐体7等の形状は図示した形状以外にも種々の形状とすることができる。
【0033】
(F)前記実施形態の車載カメラ装置1におけるカメラ本体11は、ブラケット金具15を介して車両に取り付けられているが、これに限定されるものではない。例えば、車両のルーフ等から直接突出したボルトに穴部72を貫通させてナット160を締め付けることにより取り付けられてもよい。
【0034】
(G)前記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、前記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、前記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の前記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0035】
1…車載カメラ装置 3…撮像部 5…第1筐体
7…第2筐体 9…回路基板 11…カメラ本体
13…ヒータ部 15…ブラケット金具 100…ビス
131…フード部 151…ボルト 160…ナット