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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ポリアミドイミド樹脂組成物及び塗料
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20220208BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20220208BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20220208BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20220208BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220208BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220208BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C08L79/08 C
C08K5/3415
C08L61/06
C08L61/28
C08L63/00 A
C09D7/20
C09D179/08 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018524599
(86)(22)【出願日】2016-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2016069011
(87)【国際公開番号】W WO2018002988
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2018-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 康之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】杉江 渉
【審判官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-143462(JP,A)
【文献】特開2016-89016(JP,A)
【文献】特開2003-138134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/00- 79/08
C08K 5/00- 5/59
C08G 73/00- 73/26
C09D179/00-179/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドイミド樹脂、及び下記式(I)の構造を含む溶媒を含み、無機フィラーを含まず、前記ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は10,000~30,000である、放熱部材の硬化膜形成用の塗料であって、該塗料を用いて形成される硬化膜の熱伝導率が0.26W/m・K以上である、塗料。
【化1】
(式中、R 及びR は、互いに独立に炭素数が1~3のアルキル基であるか、又は互いに結合して5員又は6員の、窒素原子を含む複素環基を構成しており、R は水素、又は炭素数が1~4のアルキル基である。)
【請求項2】
さらにエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、又はブロックイソシアネートを含む、請求項1記載の塗料
【請求項3】
N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、及び液状アミンからなる群から選ばれる1以上の溶媒をさらに含む、請求項1又は2に記載の塗料
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の塗料に用いられるポリアミドイミド樹脂組成物であって、ポリアミドイミド樹脂、及び下記式(I)の構造を含む溶媒を含み、無機フィラーを含まず、前記ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は10,000~30,000である、放熱部材の硬化膜形成用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【化1】
(式中、R及びRは、互いに独立に炭素数が1~3のアルキル基であるか、又は互いに結合して5員又は6員の、窒素原子を含む複素環基を構成しており、Rは水素、又は炭素数が1~4のアルキル基である。)
【請求項5】
前記式(I)の構造を含む溶媒は、全溶媒中に5質量%以上70質量%以下である、請求項記載の放熱部材の硬化膜形成用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項記載の塗料、又は請求項4又は5記載の放熱部材の硬化膜形成用ポリアミドイミド樹脂組成物を用いて得られる、熱伝導率が0.26W/m・K以上である、放熱部材用硬化膜。
【請求項7】
請求項6記載の放熱部材用硬化膜を備える、放熱部材。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項記載の塗料、又は請求項4又は5記載の放熱部材の硬化膜形成用ポリアミドイミド樹脂組成物の、放熱部材への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリアミドイミド樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いた塗料、硬化膜、及び放熱部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れているため、各種の基材のコート剤として広く使用される。例えば、エナメル線用ワニス、耐熱塗料等として使用されている。
【0003】
従来、ポリアミドイミド樹脂の重合には、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド又はジメチルホルムアミド等の極性溶媒が用いられ、なかでも、アミドイミド化反応を高温で短時間に行うために、N-メチル-2-ピロリドン等の高沸点溶媒が好ましく用いられていた。そして、この重合溶媒はそのまま、このポリアミドイミド樹脂を用いた塗料等の溶媒として用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-111844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ポリアミドイミド樹脂を放熱部材に用いるとの新規な用途に着目し、検討を行った。近年、各種電気・電子機器における高密度化、高出力化、高性能化に伴い、単位面積あたりの発熱量が増大しており、一方で、小型化及び軽量化の要請から、機器内部への放熱フィン等の設置、又は熱伝導性に優れた金属の利用等も問題となっている。そこで、放熱塗料への期待は大きいが、従来技術においては充分な放熱特性を得ることができなかった。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、放熱性に優れた硬化膜を形成可能なポリアミドイミド樹脂組成物と、該組成物を用いた塗料、硬化膜等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、ポリアミドイミド樹脂、及び下記式(I)の構造を含む溶媒を含む、ポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
【化1】

(式中、R及びRは、互いに独立に炭素数が1~3のアルキル基であるか、又は互いに結合して5員又は6員の、窒素原子を含む複素環基を構成しており、Rは水素、又は炭素数が1~4のアルキル基である。)
【0008】
本発明の別の実施形態は、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物を含有する塗料に関する。
【0009】
本発明の別の実施形態は、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物又は上記実施形態の塗料を用いて得られる、熱伝導率が0.26W/m・K以上である硬化膜、又は、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物又は上記実施形態の塗料を用いて得られる、放熱部材用硬化膜に関する。
【0010】
本発明の別の実施形態は、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物又は上記実施形態の塗料を用いて得られる硬化膜を備える、放熱部材に関する。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態は、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物又は上記実施形態の塗料の、放熱部材への使用に関する。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物は、熱伝導性に優れた硬化膜を形成することができる。したがって、このポリアミドイミド樹脂組成物を放熱材料又は放熱塗料として用いることができ、放熱性に優れた放熱部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
1.ポリアミドイミド樹脂組成物
本実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂、及び該ポリアミドイミド樹脂を溶解又は分散させ得る溶媒を、少なくとも含む組成物である。
【0014】
<ポリアミドイミド樹脂>
ポリアミドイミド樹脂は、ジイソシアネート化合物及び/又はジアミン化合物と、酸成分としての三塩基酸無水物又は三塩基酸ハライドとを反応させて得られる樹脂である。ここで、各原料化合物は、各々、任意に複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
例えば、以下の一般式(II)で示される構造単位を含むポリアミドイミド樹脂を用いることができる。
【化2】
一般式(II)中、Xは、酸塩基酸無水物の酸無水物基(又は酸ハライド基)及びカルボキシル基を除いた残基、Rは、ジイソシアネートのイソシアネート基又はジアミンのアミノ基を除いた残基を示す。
【0016】
ジイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、ジアミン化合物としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0017】
好ましい実施形態においては、ジイソシアネート化合物が用いられる。
さらには、得られる硬化膜の弾性率を高める観点から、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニルを用いることが好ましく、また、材料コスト及び反応性の観点からは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0018】
三塩基酸無水物としては、特に限定されないが、好ましくはトリメリット酸無水物が挙げられ、三塩基酸ハライドも特に限定はされないが、三塩基酸クロライドが好ましく、トリメリット酸無水物クロライド(無水トリメリット酸クロリド)等が挙げられる。環境への負荷を軽減させる観点から、トリメリット酸無水物等を用いることが好ましい。
【0019】
酸成分としては、上記の三塩基酸無水物(又は三塩基酸ハライド)の他に、ジカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物等の飽和又は不飽和多塩基酸を、ポリアミドイミド樹脂の特性を損なわない範囲で用いることができる。
ジカルボン酸としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、及びセバシン酸等が挙げられる。テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いられるほか、複数種を任意の組み合わせで使用してもよい。
三塩基酸以外のカルボン酸(ジカルボン酸とテトラカルボン酸)の総量は、ポリアミドイミド樹脂の特性を保つ観点から、全カルボン酸中に0~30モル%の範囲で使用されるのが好ましい。
【0020】
好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、次の一般式(III)に示される構造単位を有する。
【化3】
一般式(III)中、Rは、ジイソシアネートのイソシアネート基又はジアミンのアミノ基を除いた残基を示す。
【0021】
ジイソシアネート及び/又はジアミンと酸成分(三塩基酸無水物又は三塩基酸無水物ハライドと必要に応じて使用するジカルボン酸及びテトラカルボン酸二無水物の合計量)の使用比率は、生成されるポリアミドイミド樹脂の分子量及び架橋度の観点から、酸成分の総量1.0モルに対してジイソシアネート化合物及び/又はジアミン化合物を0.8~1.1モルとすることが好ましく、0.95~1.08モルとすることがより好ましく、特に、1.0~1.08モルとすることが一層好ましい。
【0022】
ポリアミドイミド樹脂の合成条件は多様であり、一概に特定できないが、ジイソシアネートと三塩基酸無水物を反応させる最も代表的な方法については、例えば、特開平4-39323号公報などに例示されている。
【0023】
重合に用いる溶媒(以下、「重合溶媒」とも記す。)は、特に限定されず、極性溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-モルホリンカルボアルデヒド等が挙げられる。γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のケトン類を用いることもできる。重合溶媒は、これらの一種以上を適宜組み合わせることが好ましい。上記式(I)の構造を含む溶媒を一部に使用してもよい。
【0024】
反応温度は、特に限定されず、使用する重合溶媒の沸点に応じて適宜設定すればよい。例えば、90~150℃の温度で反応させることが好ましい。重合反応は、空気中の水分の影響を低減するため、窒素等の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0025】
ポリアミドイミド樹脂は必要に応じて、末端がブロックされていてもよく、それにより樹脂組成物の粘度安定性を向上させることができる。ブロック剤としては、特に限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、一級アミン、アルデヒド基含有化合物、ε-カプロラクタム等のラクタム、などが挙げられる。
【0026】
ポリアミドイミド樹脂は、例えば次の手順で製造することができる。
(1)酸成分、及びジイソシアネート成分及び/又はジアミン成分を一度に使用し、反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
(2)酸成分と、ジイソシアネート成分及び/又はジアミン成分の過剰量とを反応させて、末端にイソシアネート基又はアミノ基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、酸成分を追加して末端のイソシアネート基及び/又はアミノ基と反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
(3)酸成分の過剰量と、ジイソシアネート成分及び/又はジアミン成分を反応させて、末端に酸又は酸無水物基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、ジイソシアネート成分及び/又はジアミン成分を追加して末端の酸又は酸無水物基と反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
【0027】
ポリアミドイミド樹脂の末端をブロックする場合は、ブロック剤を樹脂の合成中に反応させてもよいし、樹脂の合成後に反応させてもよい。ブロック剤を樹脂の合成中に反応させるときは、ブロック剤の種類によっては、重合溶媒の一部として用いるようにしてもよい。ブロック剤の使用量は、特に限定はされないが、そのブロック化の効果を充分に得るために、ポリアミドイミド樹脂1モルに対し0.01モル以上のブロック剤を用いることができる。また、上記溶媒(I)を樹脂合成時に重合溶媒の一部として添加することで、溶媒(I)がポリアミドイミド樹脂のブロック剤として機能すると考えられる。
【0028】
好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、無水トリメリット酸又は無水トリメリット酸ハライド等の三塩基酸無水物又は三塩基酸ハライドと、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物及び/又はジアミン化合物とを、N-メチル-2-ピロリドンと、4-モルホリンカルボアルデヒド等の上記式(I)の溶媒とを含む重合溶媒中で反応させて得ることができる。
【0029】
ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、塗膜の強度を確保する観点から10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましい。一方、塗料等として用いる際の塗料化を容易にし且つ塗布に適した粘度とするために、その数平均分子量は50,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、25,000以下であることが一層好ましい。
【0030】
ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、樹脂合成時にサンプルリングして、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)等の分析機器を用いて測定し(GPCの場合は標準ポリスチレンの検量線を用いて測定する)、目的とする数平均分子量になるまで合成を継続することにより、上記範囲に管理することができる。
【0031】
ポリアミドイミド樹脂は、樹脂中のカルボキシル基と酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価が5~40mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が5mgKOH/g以上であると、溶媒への樹脂の溶解又は分散が容易になる傾向にあり、10mgKOH/g以上、15mgKOH/g以上、及び20mgKOH/g以上であることが、この順でより好ましい。また、酸価が40mgKOH/g以下であると、最終的に得られるポリアミドイミド樹脂組成物が、経日によりゲル化しにくくなる傾向にある。
【0032】
上記酸価は、以下の方法で得ることができる。まず、ポリアミドイミド樹脂組成物を約0.5g採取し、これに1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを約0.15g加え、さらにN-メチル-2-ピロリドン約60gとイオン交換水約1mlを加え、ポリアミドイミド樹脂が完全に溶解するまで攪拌する。これを、0.05モル/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を使用して電位差滴定装置で滴定し、ポリアミドイミド樹脂中の、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価を得る。
【0033】
<溶媒>
ポリアミドイミド樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂を溶解又は分散させる溶媒として、下記の式(I)で示される構造を含む溶媒(以下、これを「溶媒(I)」とも記す。)を含んでいる。下記溶媒(I)を、複数種組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、組成物中の溶媒を、ポリアミドイミド樹脂合成時に用いる重合溶媒と区別するために、貯蔵溶媒と記す場合がある。
【化4】
【0034】
上記式(I)中、R及びRは、互いに独立に炭素数が1~3のアルキル基であるか、又は互いに結合して5員又は6員の、窒素原子を含む複素環基を構成しており、Rは水素、又は炭素数が1~4のアルキル基である。上記式(I)において、RとRは、互いに同一であることが好ましく、またメチル基又はエチル基であることが好ましい。RとRが互いに結合して、式(I)のカルボアミド基(-N-CO-)の窒素原子と共に複素環構造を形成する場合、さらに別の窒素原子を含んでいてもよいし、異種原子として酸素を含んでいてもよい。また、複素環は不飽和結合を有さないヘテロシクロアルキル基であってもよいし、又は環内に1つ以上の不飽和結合を有するヘテロシクロアルケニル基等であってもよい。さらに複素環は、炭素数1~4のアルキル基等の置換基を有していてもよい。Rは水素、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
【0035】
溶媒(I)の具体的な化合物としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ホルミルモルホリン(4-モルホリンカルボアルデヒド)、N,N-アセチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0036】
本発明者らの検討によると、ポリアミドイミド樹脂組成物が上記溶媒(I)を含むことにより、驚くべきことに、得られる樹脂硬化膜の放熱特性が良好なものとなる。その理由については、あくまで推論に過ぎないが、溶媒(I)は、その式(I)の構造により、ポリアミドイミド樹脂の有する酸基、及び末端イソシアネート基と、樹脂硬化時の加熱によって反応して樹脂に結合し、その後の更なる加熱で離脱することが考えられ、溶媒(I)が離脱する際に硬化膜内部に空孔を発生させ、それが熱伝導性を向上させているのではないかと考えることができる。また、貯蔵溶媒の揮発性が樹脂の硬化速度に影響を与え、その結果、硬化膜の熱伝導性を変化させているとも考えられる。
【0037】
ポリアミドイミド樹脂組成物から硬化塗膜を形成するためには、高温で溶媒を揮発させて塗膜形成(硬化)させる必要があるため、その高温に耐えうる基材を選択することが必要となる。基材の選択の幅を拡げ、かつ、生産性向上の観点からも、低温での使用が望まれている。ここで、低温とは270℃以下程度であることを意味する。したがって、上記溶媒(I)は、低温での塗膜形成を可能とするために、270℃よりも低い沸点、好ましくは250℃よりも低い沸点を有するものであることが好ましい。
【0038】
ポリアミドイミド樹脂組成物は、上記溶媒(I)以外の一種以上の貯蔵溶媒を含んでいてもよい。この貯蔵溶媒としては、ポリアミドイミド樹脂を溶解又は分散させうるものであれば特に限定はされず、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド;ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン等の液状アミン;水などを用いることができる。
【0039】
また、ポリアミドイミド樹脂を溶解させて均一な樹脂液とするとの観点から、貯蔵溶媒には極性溶媒を用いることが好ましく、例えば溶解度パラメータ(SP値)が20~31(J/cm1/2のものを選択することが好ましい。本明細書においてSP値は、Fedorsの計算方法により推算される値を意味する。
【0040】
なお、樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂の重合に用いた重合溶媒、例えばN-メチル-2-ピロリドン、及び上記溶媒(I)等を、そのまま貯蔵溶媒として含むことができる。重合溶媒が上記溶媒(I)を含まない場合、又は貯蔵溶媒としての溶媒(I)の量を増やしたい場合は、ポリアミドイミド樹脂合成後の溶液に、適宜溶媒(I)を添加して樹脂組成物を希釈し、適当な粘度に調整して用いることが好ましい。溶媒(I)の添加は、重合後すぐでもよいし、保存時でも、又は使用時でも、いつでもよい。
【0041】
樹脂組成物が、上記の溶媒(I)以外の貯蔵溶媒を含む場合、上記溶媒(I)は、得られる硬化膜の熱伝導性等の観点から、全溶媒中に5質量%以上含まれていることが好ましく、10質量%以上含まれていることがより好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。その上限値については特に制限はなく、100%でも問題はないが、重合溶媒をそのまま組成物の貯蔵溶媒の一部として使用するとの便宜性から、また、得られる硬化膜の硬度と柔軟性の観点から、溶媒(I)は全貯蔵溶媒中に70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが一層好ましい。
【0042】
組成物中の溶媒の量は、特に限定されず、使用目的に応じ、例えば塗料であれば塗装方法に応じて、適切な粘度となるように溶媒で希釈して、樹脂濃度の調整をすればよい。例えば、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対し、溶媒が80~200質量部であることが好ましく、100質量部~150質量部であることがより好ましい。
【0043】
<硬化剤>
ポリアミドイミド樹脂組成物は、上記のポリアミドイミド樹脂と溶媒に加え、さらに硬化剤を含むことができる。硬化剤としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ブロックイソシアネートなどを適宜用いることができ、なかでもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を配合することにより、ポリアミドイミド樹脂の熱的、機械的、電気的特性をより向上させることができる。
【0044】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル-アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で、また、2種以上を混合して用いることができる。
エポキシ樹脂は単独で添加してポリアミドイミド樹脂と反応させてもよいが、硬化後にエポキシ樹脂の未反応物が残留しにくいように、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤等と共に添加してもよい。
【0045】
エポキシ樹脂等の硬化剤を配合する場合の配合割合は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、1質量部~30質量部の範囲とすることが好ましく、5質量部~25質量部とすることがより好ましく、熱伝導性をより高める観点からは5~22質量部とすることが一層好ましい。
【0046】
<その他の成分>
ポリアミドイミド樹脂組成物は、その使用目的等に応じて、さらにその他の任意の成分を含んでいてもよい。例えば、この樹脂組成物は塗料として好ましく使用できるため、塗料として使用するときには、後述のとおり必要に応じて、顔料、充填材、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、及び界面活性剤等の任意成分を添加してもよい。
【0047】
2.塗料
本実施形態の塗料は、上記ポリアミドイミド樹脂組成物を含有する塗料である。
ポリアミドイミド樹脂は、塗料の塗膜形成成分となるものであり、複数種の上記ポリアミドイミド樹脂を組み合わせて使用してもよい。
ポリアミドイミド樹脂は、その機能を十分に発揮させるために、塗料中に10~50質量%含まれることが好ましい。
【0048】
塗料には、必要に応じて、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、フッ素樹脂等を、単独で、又は混合して用いることができる。なかでも、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、及びメラミン化合物は、塗膜の密着性をより向上させることができるために好ましい。
【0049】
エポキシ化合物としては、例えば、上記した樹脂組成物に配合できるエポキシ樹脂のほか、トリグリシジルイソシアヌレート等を用いることができ、これらを単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
【0050】
イソシアネート化合物としては、デュラネート等のヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートから合成されるポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの質量平均分子量は500~9000であることが好ましく、より好ましくは1000~5000である。
【0051】
メラミン化合物としては、特に制限はないが、例えば、メラミンにホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等を反応させたメチロール基含有化合物等が挙げられる。このメチロール基は、炭素原子数1~6個のアルコールによりエーテル化されているものが好ましい。
【0052】
塗料に添加されるエポキシ化合物、イソシアネート化合物、及びメラミン化合物の各配合量は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、それぞれ、それらを配合することによる密着性向上効果を確保しつつポリアミドイミド樹脂の特性も十分に発揮させる観点から、例えば1~40質量部であることが好ましく、5~30質量部とすることがより好ましい。
【0053】
塗料は、必要に応じ界面活性剤を含有していることが好ましい。界面活性剤としては、特に制限されるものではないが、塗膜を形成するための成分が均一に混合して、塗膜が乾燥するまで分離せず(分層を起こさず)、焼付け後に多くの残留物が残らないものが好ましい。
【0054】
界面活性剤の含有量は、特に制限されるものではないが、均一な混合状態を保つために塗料中に0.01質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、塗膜の焼付け時に炭化分が多く残留して成膜性に悪影響を与えることがないよう、界面活性剤の含有量は塗料中に10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
塗料は、塗膜の耐水性等を向上させるために、必要に応じて充填材を含有することが好ましい。
充填材の種類は、その耐水性や耐薬品性等を考慮し、塗膜の用途に応じて選択することができ、水に溶解しないものであることが好ましい。具体的には、充填材としては、金属粉、金属酸化物(酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等)、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粒子、セラミックス、炭化珪素、酸化珪素、弗化カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、及び硫酸バリウム等を挙げることができる。これらは、各々が単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
さらに塗料は、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の、一般的に塗料に添加される公知の添加剤を、適宜含むことができる。
【0057】
塗料の塗装方法は特に限定されず、公知の塗装方法、例えばディッピング塗装、スプレー塗装、及び刷毛塗り等を採用できる。塗装方法に応じて、溶媒の量を適宜調節して、適切な濃度に希釈することが好ましい。
【0058】
塗料を塗布した後は、乾燥(予備乾燥)及び硬化(焼成)させて塗膜を形成する。乾燥及び硬化の条件は、特に限定されず、使用する基材の耐熱特性に応じ、低温での塗膜形成を行うことができる。例えば、120℃以上270℃未満の範囲で加熱することが好ましく、150℃~250℃の範囲がより好ましい。
【0059】
上記のポリアミドイミド樹脂組成物及び塗料(コーティング剤)は、様々な用途に用いることができる。例えば、耐熱性が求められるフィルム等への耐熱性塗料、又は各種コーティング塗料等として好ましく使用できる。また、本実施形態の塗料は、低温硬化が可能であるため、アルミニウム基材への絶縁皮膜としても好ましく使用できる。また、複写機の中間転写ベルト等として利用される環状のベルト等の、ベルト状に成型する成型品用途にも好ましく用いることができる。これらはいずれも、非粘着用途である。
【0060】
本実施形態の塗料は、低温下の塗膜形成性に優れており、様々な基材に対し、密着性に優れた良好な塗膜を形成することができるので、塗布する基材は特に限定されない。なかでも、アルミニウム基材は、250℃よりも高温での焼成中に基材の変形が懸念されるが、本実施形態の塗料は低温塗膜形成が可能であるので、アルミニウム基材に対し、250℃以下、例えば200℃~230℃程度の焼成で塗膜の硬化を充分に進行させて、硬度及び密着性等に優れた塗膜を形成することができる。したがって、この塗料は、アルミニウム基材への絶縁皮膜形成、保護コートなどの非粘着用途に好ましく用いられる。
【0061】
3.ポリアミドイミド樹脂組成物又は塗料の使用
本実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物又は塗料は、熱伝導率の高い硬化膜を形成することができるので、放熱部材に対して、いわゆる放熱塗料として好ましく用いることができる。
【0062】
一般に、放熱塗料には窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の熱伝導性無機フィラーを配合して、熱伝導性を高めることが行われている。しかし、これらのフィラーを高充填すると、混練機の軸を劣化させたり、機器の故障等の発生原因となったりする場合がある。
本実施形態の樹脂組成物又は塗料は、上記のように硬化膜自体の熱伝導性が高いので、熱伝導性フィラーを配合しても良いが、配合しなくても、放熱塗料としての機能を発揮させることができる。
【0063】
4.硬化膜
本実施形態の硬化膜は、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物、又は塗料を用いて、スプレー法、浸漬法等の任意の方法により得られるものである。ポリアミドイミド樹脂は、一般的に芳香族環を有しており、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる。
【0064】
好ましい実施形態において、硬化膜の熱伝導率は0.26W/m・K以上であることが好ましく、0.27W/m・K以上であることがより好ましく、0.275W/m・K以上であることが一層好ましい。熱伝導率は、熱拡散率と密度と比熱から、
熱伝導率=熱拡散率×密度×比熱
の式に基づき計算することができる。ここで、熱拡散率は熱拡散率測定装置を用いて測定することができ、比熱はDSC法で測定することができ、密度はアルキメデス法で測定することができる。
【0065】
硬化膜の厚みは、その用途に応じて適宜定めることができ、特に限定はされないが、30~100μm程度であることが好ましい。
【0066】
5.放熱部材
本実施形態の放熱部材は、上記実施形態ポリアミドイミド樹脂組成物、又は塗料を用いて得られる硬化膜を備えるものである。硬化膜は、放熱部材表面の少なくとも一部に形成されていることが好ましい。
放熱部材は、特に限定はされず、家電、厨房機器、及び産業機器等を含む各種電気・電子機器において放熱対策が求められる部材を意味する。
【実施例
【0067】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0068】
<合成例1>
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート250.3g(1.0モル)、無水トリメリット酸192.1g(1.0モル)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)660gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えた2リットルのフラスコに仕込み、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら約4時間かけて130℃まで昇温し、この温度を保持して7時間反応させて、数平均分子量16,500のポリアミドイミド樹脂溶液(固形分濃度:約40質量%)を得た。得られた樹脂溶液を「ポリマー溶液A」とした。
【0069】
ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、次の条件で測定した。
GPC機種:日立 L6000
検出器:日立 L4000型UV
波長:270nm
データ処理機:ATT 8
カラム:Gelpack GL-S300MDT-5×2
カラムサイズ:8mmφ×300mm
溶媒:DMF/THF=1/1(リットル)+リン酸0.06M+臭化リチウム0.06M
試料濃度:5mg/1ml
注入量:5μl
圧力:49kgf/cm(4.8×106Pa)
流量:1.0ml/min
【0070】
<合成例2>
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート250.3g(1.0モル)、無水トリメリット酸192.1g(1.0モル)、及びNMP600gと4-モルホリンカルボアルデヒド60gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えた2リットルのフラスコに仕込み、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら約3時間かけて145℃まで昇温し、この温度を保持して6時間反応させて、数平均分子量19,000のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を「ポリマー溶液B」とした。
【0071】
<合成例3>
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート150.2g(0.6モル)、3,3′-ジメチル-4,4′-ジイソシアナトビフェニル105.7g(0.4モル)、無水トリメリット酸172.9g(0.9モル)、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.2g(0.1モル)、及びNMP640gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えた2リットルのフラスコに仕込み、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら約2時間かけて145℃まで昇温し、この温度を保持して9時間反応させて、数平均分子量21,500のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。この溶液にN,N-ジメチルホルムアミド350gを加え、2時間攪拌混合した。得られた樹脂溶液を「ポリマー溶液C」とした。
【0072】
<合成例4>
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート250.2g(1.0モル)、無水トリメリット酸182.5g(0.95モル)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.7g(0.05モル)、及びNMP670gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えた2リットルのフラスコに仕込み、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら約2時間かけて140℃まで昇温し、この温度を保持して8時間反応させて、数平均分子量16,100のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を「ポリマー溶液D」とした。
【0073】
<実施例及び比較例>
上記合成例1~4で得られたポリマー溶液A~Dに、表1に示す貯蔵溶媒組成となるように希釈溶媒を添加して、1時間混合して、実施例及び比較例の樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を試験塗料として、次の試験を行った。
【0074】
<熱伝導率>
上記実施例及び比較例の各試験塗料を、基材(ガラス板、150mm×120mm×厚み5mm)に塗布した後、250℃で30分間焼付けて、膜厚約80μmの塗膜板を作製し、熱拡散率、比熱、及び密度を測定した。
熱拡散率は、アドバンス理工株式会社製の周期加熱法熱拡散率測定装置FTC-1型を用いて、25℃で測定した。比熱は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示査走査熱量計DSC6200型を用いて、25℃で測定した。密度は、アルファーミラージュ株式会社製の電子比重計SD-200L型を用いて、25℃で測定した。測定結果に基づき、熱伝導率(=熱拡散率×密度×比熱)を求めた。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
上記実験より、上記溶媒(I)を含む実施例の試験塗料を用いることにより、熱伝導率の高い硬化膜が得られることがわかった。
【0077】
既に述べられたもの以外に、本発明の新規かつ有利な特徴から外れることなく、上記の実施形態に様々な修正や変更を加えてもよいことに注意すべきである。したがって、そのような全ての修正や変更は、添付の請求の範囲に含まれることが意図されている。