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特許7021144印刷物の検査方法及びプログラム、印刷物の検査装置、印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】印刷物の検査方法及びプログラム、印刷物の検査装置、印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/393 20060101AFI20220208BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B41J29/393 105
G01N21/892 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019063240
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020163572
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】浮島 正之
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053673(JP,A)
【文献】特開2015-094666(JP,A)
【文献】特開2016-193504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0066292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
G01N 21/892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物である印刷物を撮像装置で撮像した検査画像に基づいて検査データを取得する検査データ取得工程と、
前記印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて基準データを取得する基準データ取得工程と、
前記検査画像に基づくデータと前記基準画像に基づくデータとの少なくとも一方に基づいて平滑化したベースレベルデータを取得するベースレベルデータ取得工程と、
前記検査データと前記基準データと前記ベースレベルデータとに基づいて前記印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補であるスジ候補を特定するスジ候補特定工程と、
を備え、
前記スジ候補特定工程は、
特定位置の前記検査データと前記基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、前記特定位置の前記基準データと前記ベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど前記特定位置に前記スジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出するスジ度指標算出工程と、
前記算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施す第1閾値処理工程と、
を備える印刷物の検査方法。
【請求項2】
前記スジ度指標は、前記特定位置の前記第2差分強度が一定の値を有する場合には、前記特定位置の前記第1差分強度が大きいほど前記特定位置に前記スジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標である請求項1に記載の印刷物の検査方法。
【請求項3】
前記スジ度指標は、前記第1差分強度を含む第1値と、前記第2差分強度を含む第2値との比を利用した指標である請求項1又は2に記載の印刷物の検査方法。
【請求項4】
前記スジ候補特定工程において特定されたスジ候補の位置の前記第1差分強度をΔS、
前記スジ候補特定工程において特定されたスジ候補の位置の前記第2差分強度をΔR、
とすると、ΔS>0の場合、0.1以上かつ0.9以下であるεに対して、
ΔS/(ΔS+ΔR)>ε
を満たす請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項5】
前記特定位置の前記第1差分強度をΔS、
前記特定位置の前記第2差分強度をΔR、
前記特定位置の前記スジ度指標をP、
とすると、
前記スジ度指標Pは、
P=ΔS/(ΔS+ΔR)
で表される請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項6】
前記第1閾値を0.1以上かつ0.9以下であるεとすると、
前記スジ候補特定工程は、ΔS>0の場合、
P>ε
を満たす場合に前記特定位置を前記スジ候補の位置として特定する請求項5に記載の印刷物の検査方法。
【請求項7】
前記ベースレベルデータは、前記基準画像に基づくデータを平滑化して取得される請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項8】
前記ベースレベルデータは、前記基準データを平滑化して取得される請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項9】
前記ベースレベルデータは、前記検査画像に基づくデータと前記基準画像に基づくデータとを平滑化して取得される請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項10】
前記ベースレベルデータは、前記検査データと前記基準データとを平滑化して取得される請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項11】
前記基準データは、前記撮像装置で撮像された基準画像に基づいて取得される請求項1から10のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項12】
前記基準データは、前記印刷物が印刷された際に使用されたハーフトーン処理済みのデジタルデータに基づいて取得される請求項1から10のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項13】
前記基準データは、前記ハーフトーン処理済みのデジタルデータに対して印刷装置の印刷による印刷ドット画像がシミュレーションされて取得される請求項12に記載の印刷物の検査方法。
【請求項14】
前記基準データ、及び前記基準データと前記ベースレベルデータとの差分データ、の少なくとも一方に、少なくとも空間方向に膨張させるフィルタによるフィルタ処理を実施するフィルタ処理工程を備える請求項1から13のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項15】
前記フィルタは最大値フィルタである請求項14に記載の印刷物の検査方法。
【請求項16】
前記第1差分強度に基づく値に対して第2閾値による閾値処理を施す第2閾値処理工程を備える請求項1から15のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の印刷物の検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項18】
被検査物である印刷物を撮像装置で撮像した検査画像に基づいて検査データを取得する検査データ取得部と、
前記印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて基準データを取得する基準データ取得部と、
前記検査画像に基づくデータと前記基準画像に基づくデータとの少なくとも一方に基づいて平滑化したベースレベルデータを取得するベースレベルデータ取得部と、
前記検査データと前記基準データと前記ベースレベルデータとに基づいて前記印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補であるスジ候補を特定するスジ候補特定部と、
を備え、
前記スジ候補特定部は、
特定位置の前記検査データと前記基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、前記特定位置の前記基準データと前記ベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど前記特定位置に前記スジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出するスジ度指標算出部と、
前記算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施す第1閾値処理部と、
を備える印刷物の検査装置。
【請求項19】
デジタルデータに基づいて印刷物を印刷する印刷装置と、
前記印刷物を撮像して検査画像を取得する撮像装置と、
請求項18に記載の検査装置と、
を備えた印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷物の検査方法及びプログラム、印刷物の検査装置、印刷システムに係り、特に印刷物からスジ状の欠陥の候補を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルパス方式のインクジェット記録装置では、ノズルの不吐出や吐出曲り不良によってスジ状の欠陥が発生しやすい。これに対し、印刷物を読取装置で読み取った検査画像と、印刷物の検査基準となる基準画像とを、差分に基づく手法で比較してスジ検査を行う方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、印刷物を読み取った検査画像と平滑化処理が施された検査画像との差分を示すハイパス検査画像からスジ欠陥候補を抽出し、印刷物の生成元の基準画像と平滑化処理が施された基準画像との差分を示すハイパス基準画像からスジ類似パターンを抽出し、スジ欠陥候補とスジ類似パターンを照合してスジ状の欠陥を検出する検査装置が記載されている。この検査装置では、スジ長さと照合範囲を用いた「重なり度合い」を照合している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置では、ハイパス検査画像とハイパス基準画像の各強度や差分強度の比較方法の規定によっては、重なり度合いを精度良く求めることができず、スジ状の欠陥の未検知や誤検知が発生する。特に、基準画像が印刷物の生成元のデジタルデータである場合、検査画像と画像の微細構造が異なるため重なり度合いを精度良く求めることが難しい。
【0005】
また、ハイパス検査画像とハイパス基準画像の単純な差分に基づく検出法に対して、弱い信号差では重なり度合いが相対的に小さくなりやすいため、弱いスジ状の欠陥の未検知が起こりやすい。
【0006】
さらに、ハイパス検査画像を検査画像と検査画像の平滑化画像との差分から作成しているため、強いスジ状の欠陥を含む箇所では平滑化が十分に行われず、平滑化後もスジ情報が残ってしまうことが多い。その結果、差分でスジ情報の多くをかき消してしまうために、スジ状の欠陥の未検知が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-53673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シングルパス方式のインクジェット記録装置で印刷された印刷物では、スジ状の欠陥はある方向にのみ発生する。このため、印刷物が撮像された検査画像の各検査区画に対してスジの方向に平均や積算などで1次元化することで検査データを取得し、検査基準となる基準画像から基準データを取得した上で、検査データと基準データとの差分データの信号強度差によってスジ状の欠陥のあるスジ部か、又はスジ状の欠陥の無い非スジ部かを見分けることが行われている。しかしながら、このような検査を実施した場合、次の問題が発生することがわかった。
【0009】
検査データにおけるスジ部の読取値は、スジ状の欠陥が弱い場合には非常に微弱な信号値として観測される。このように弱い欠陥であっても、空間周波数が低周波な背景上に発生した場合には、目視で目立つために検知する必要がある。この場合、スジ部における検査データと基準データとの差分データの信号強度差は小さいため、小さい信号強度差でもスジ部と判定するような閾値処理が必要となる。
【0010】
一方、背景の空間周波数が高周波な箇所では、検査データと基準データとのそれぞれの信号が高周波でノイズの影響を受けやすく、差分データにはノイズ起因の信号強度差が発生する。このノイズ起因の信号強度差は、低周波な背景上に発生する弱いスジ部の信号強度差以上になる場合があり、小さい信号強度差でもスジ部と判定するような閾値を用いてしまうと、非スジ部にもかかわらずノイズによってスジ部と誤検知してしまうという問題がある。
【0011】
そこで、例えば基準データを周波数解析し、高周波であった場合はスジ部と判定しないように判断させることが考えられる。しかしながら、この場合、高周波な背景のスジ部が未検知となってしまうという問題がある。印刷物はインクドットの有無で中間階調が表現されるため、中間階調においては微視的に高周波な空間周波数分布となることが多く、高周波な背景のスジが未検知となることは好ましくない。
【0012】
このように、従来は低周波部の弱いスジ部の正検知、高周波部のスジ類似部の誤検知の回避、及び高周波部のスジ部の正検知の3点を全て充足することは困難であった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定する印刷物の検査方法及びプログラム、印刷物の検査装置、印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための印刷物の検査方法の一の態様は、被検査物である印刷物を撮像装置で撮像した検査画像に基づいて検査データを取得する検査データ取得工程と、印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて基準データを取得する基準データ取得工程と、検査画像に基づくデータと基準画像に基づくデータとの少なくとも一方に基づいて平滑化したベースレベルデータを取得するベースレベルデータ取得工程と、検査データと基準データとベースレベルデータとに基づいて印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補であるスジ候補を特定するスジ候補特定工程と、を備え、スジ候補特定工程は、特定位置の検査データと基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の基準データとベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出するスジ度指標算出工程と、算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施す第1閾値処理工程と、を備える印刷物の検査方法である。
【0015】
本態様によれば、特定位置の検査データと基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の基準データとベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出し、算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施すようにしたので、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【0016】
スジ度指標は、特定位置の第2差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の第1差分強度が大きいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であることが好ましい。これにより、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【0017】
スジ度指標は、第1差分強度を含む第1値と、第2差分強度を含む第2値との比を利用した指標であることが好ましい。これにより、スジ度指標を適切に算出することができる。
【0018】
スジ候補特定工程において特定されたスジ候補の位置の第1差分強度をΔS、スジ候補特定工程において特定されたスジ候補の位置の第2差分強度をΔR、とすると、ΔS>0の場合、0.1以上かつ0.9以下であるεに対して、ΔS/(ΔS+ΔR)>εを満たすことが好ましい。これにより、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【0019】
特定位置の第1差分強度をΔS、特定位置の第2差分強度をΔR、特定位置のスジ度指標をP、とすると、スジ度指標Pは、P=ΔS/(ΔS+ΔR)で表されることが好ましい。これにより、スジ度指標を適切に算出することができる。
【0020】
第1閾値を0.1以上かつ0.9以下であるεとすると、スジ候補特定工程は、ΔS>0の場合、P>εを満たす場合に特定位置をスジ候補の位置として特定することが好ましい。これにより、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【0021】
ベースレベルデータは、基準画像に基づくデータを平滑して取得されることが好ましい。また、ベースレベルデータは、基準データを平滑化して取得されてもよい。これにより、ベースレベルデータを適切に取得することができる。
【0022】
ベースレベルデータは、検査画像に基づくデータと基準画像に基づくデータとを平滑化して取得されることが好ましい。また、ベースレベルデータは、検査データと基準データとを平滑化して取得されてもよい。これにより、ベースレベルデータを適切に取得することができる。
【0023】
基準データは、撮像装置で撮像された基準画像に基づいて取得されることが好ましい。これにより、基準データを適切に取得することができる。
【0024】
基準データは、印刷物が印刷された際に使用されたハーフトーン処理済みのデジタルデータに基づいて取得されることが好ましい。また、基準データは、ハーフトーン処理済みのデジタルデータに対して印刷装置の印刷による印刷ドット画像がシミュレーションされて取得されてもよい。これにより、基準データを適切に取得することができる。
【0025】
基準データ、及び基準データとベースレベルデータとの差分データ、の少なくとも一方に、少なくとも空間方向に膨張させるフィルタによるフィルタ処理を実施するフィルタ処理工程を備えることが好ましい。これにより、検査データと基準データとの位置ずれを吸収することができる。
【0026】
フィルタは最大値フィルタであることが好ましい。これにより、検査データと基準データとの位置ずれを適切に吸収することができる。
【0027】
第1差分強度に基づく値に対して第2閾値による閾値処理を施す第2閾値処理工程を備えることが好ましい。これにより、スジ状の欠陥が発生していないにもかかわらずスジ候補と誤検知することを防止することができる。
【0028】
本態様は、印刷物の検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラムも含まれる。
【0029】
上記目的を達成するための印刷物の検査装置の一の態様は、被検査物である印刷物を撮像装置で撮像した検査画像に基づいて検査データを取得する検査データ取得部と、印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて基準データを取得する基準データ取得部と、検査画像に基づくデータと基準画像に基づくデータとの少なくとも一方に基づいて平滑化したベースレベルデータを取得するベースレベルデータ取得部と、検査データと基準データとベースレベルデータとに基づいて印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補であるスジ候補を特定するスジ候補特定部と、を備え、スジ候補特定部は、特定位置の検査データと基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の基準データとベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出するスジ度指標算出部と、算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施す第1閾値処理部と、を備える印刷物の検査装置である。
【0030】
本態様によれば、特定位置の検査データと基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の基準データとベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出し、算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施すようにしたので、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【0031】
上記目的を達成するための印刷システムの一の態様は、デジタルデータに基づいて印刷物を印刷する印刷装置と、印刷物を撮像して検査画像を取得する撮像装置と、上記の検査装置と、を備えた印刷システムである。
【0032】
本態様によれば、デジタルデータに基づいて印刷物を印刷し、印刷物を撮像して検査画像を取得して印刷物を検査するようにしたので、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、印刷物の空間周波数にかかわらず印刷物に含まれるスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】相対的に低周波な背景の画像の強度分布を示すグラフ
図2】インクドットの分布とその強度分布を示す図
図3】インクドットの分布とその強度分布を示す図
図4】各値の定義を示す図
図5】インクジェット印刷システムの全体の概略構成を示す全体構成図
図6】インクジェット印刷システムの内部構成を示すブロック図
図7】検査装置の内部構成を示すブロック図
図8】印刷方法の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0035】
<スジ度指標>
〔スジの検出の問題の具体例〕
まず、印刷物に含まれるスジ状の欠陥(以下では、単にスジと表記する)を検出する印刷物の欠陥検査について説明する。印刷物の欠陥検査は、印刷物を撮像装置で撮像した検査画像に基づく検査データと、印刷物の検査基準となる基準画像に基づく基準データとを比較することで行われる。
【0036】
図1は、相対的に低周波な背景の画像の強度分布を示すグラフである。図1において、横軸は画像のX方向の位置を示し、縦軸は画像の輝度が大きい(明るい)ほど大きい値になる強度値を示す。図1の実線は、検査画像がX方向に直行するY方向に1次元化された検査データであって、低コントラストのスジである弱スジがY方向に発生した場合の検査データの強度分布を示している。また、図1の点線は、基準画像がY方向に1次元化された基準データの強度分布を示している。図1の破線については後述する。
【0037】
図1に示す例では、X方向の位置Xにおいて弱スジが発生しているため、位置Xにおける検査データの強度値が相対的に大きい。このため、検査データと基準データとの差である差分強度を計算すると、スジ部である位置Xでは、他の位置と比較して差分強度が相対的に大きい。したがって、検査データと基準データとの差分強度を抽出し、スジ部以外の差分強度を抽出しない閾値を設定して閾値処理すれば、スジ部を正検知することができることがわかる。
【0038】
図2は、検査画像のインクドットの分布とその強度分布を示す図である。図2に示すF2Aは、検査画像の中間階調のインクドットの分布である。図2に示すF2Bは、F2Aに示した検査画像の検査データ及びその基準画像の基準データの強度分布を示すグラフである。F2Bは、図1と同様に、横軸は画像のX方向の位置を示し、縦軸は強度値を示す。図2Bの実線はY方向に1次元化された検査データ、点線はY方向に1次元化された基準データを示す。図2Bの破線については後述する。
【0039】
図2に示す例では、スジは発生していないが、中間階調であるため、検査データと基準データとが共に高周波な信号となっている。また、高周波であるために、検査データと基準データとがノイズの影響を受けやすくなっている。例えば、X方向の位置Xにおいては、スジが発生していないにもかかわらず検査データと基準データとにある程度の強度差が発生しており、スジ類似部となっている。
【0040】
したがって、図1に示した弱スジを正検知するための閾値を用いて図2に示した検査データと基準データとの差分強度を閾値処理すると、スジがないスジ類似部をスジがあるスジ部と誤検知してしまうという問題が発生する。
【0041】
このような問題を解決する方法として、例えば基準データの周波数解析を実施し、相対的に高周波な箇所ではスジ部を検知させない方法がある。
【0042】
図3は、検査画像のインクドットの分布とその強度分布を示す図である。図3に示すF3Aは、検査画像の中間階調のインクドットの分布である。この検査画像の基準画像は、図2に示した検査画像の基準画像と同様である。F3Aは、ドット形成を担当する一部のノズルが不吐出であるために、X方向の位置Xにおいてドットが抜けてスジが発生した例を示している。
【0043】
図3に示すF3Bは、F3Aに示した検査画像の検査データ及びその基準画像の基準データの強度分布を示すグラフである。F3Bは、F2Bと同様に、横軸は画像のX方向の位置を示し、縦軸は強度値を示す。図3Bの実線はY方向に1次元化された検査データ、点線はY方向に1次元化された基準データを示す。F3Bの破線については後述する。
【0044】
X方向の位置Xにおいてドットが抜けているため、F3Bに示すように、位置Xにおいて検査データの強度が相対的に大きくなっている。F3Aに示す検査画像の例では、スジが発生しているため正検知させたい。しかしながら、仮に相対的に高周波な箇所ではスジ部を検知させない制御を実施した場合、このスジ部は未検知となってしまう。
【0045】
このように、低周波部の弱スジ部の正検知、高周波部のスジ類似部の誤検知の回避、及び高周波部のスジ部の正検知の3点を全て充足することは困難であった。本願発明者は、鋭意検討の結果、この3点を充足する解決策を見出した。
【0046】
〔解決策〕
図1図2、及び図3の強度分布を示すグラフにおいて、破線はY方向に1次元化されたベースレベルデータを示している。ベースレベルデータは、基準画像に基づいたデータ及び検査画像に基づいたデータの少なくとも一方を何らかの手段で平滑化することで取得される。図1図2、及び図3に示すベースレベルデータは、基準画像がY方向に1次元化された基準データが平滑化されて取得されたものである。
【0047】
図1図2のグラフを比較すると、図1のグラフに示すX方向の位置Xにおける検査データと基準データとの差である第1差分強度と、図2のグラフに示すX方向の位置Xにおける検査データと基準データとの差である第1差分強度は、同じ一定の値である。そして、第1差分強度が同じ値である場合には、基準データとベースレベルデータとの差である第2差分強度が小さいほど、その位置にスジがある可能性が高まることがわかる。この特性を利用することで、低周波部の弱スジ部の正検知、高周波部のスジ類似部の誤検知の回避、及び高周波部のスジ部の正検知の3点を充足させることができる。
【0048】
詳細について説明する。図4は、各値の定義を示す図である。図4の実線はY方向に1次元化された検査データ、点線はY方向に1次元化された基準データ、破線はY方向に1次元化されたベースレベルデータを示している。図4に示すように、X方向の位置が特定位置(ここでは、位置X)における検査データの強度をT、基準データの強度をR、ベースレベルデータの強度をB、検査データTと基準データRとの差分(T-R)である第1差分強度をΔS、基準データRとベースレベルデータBとの差分(R-B)である第2差分強度をΔR、と定義する。
【0049】
ここで、ΔSとΔRとを用いて、スジ度指標Pを以下の(式1)のように定義することができる。
【0050】
P=ΔS/(ΔS+ΔR) …(式1)
式1に示すように、スジ度指標Pは、第1差分強度ΔSと第2差分強度ΔRとが共に0以上の場合には、第2差分強度ΔRが大きくなるほど0に近づき、第2差分強度ΔRが小さくなるほど1に近づく。即ち、第1差分強度ΔSと第2差分強度ΔRとが共に0以上の条件下においては、スジ度指標Pは0~1の範囲の値域を有し、スジ度指標Pが大きいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高く、スジ度指標Pが小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が低い。このように、スジ度指標Pは、特定位置の第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標である。
【0051】
また、スジ度指標Pは、第2差分強度ΔRが一定の値を有する場合には、第1差分強度ΔSが大きいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標である。即ち、第1差分強度ΔSが大きいほど、第2差分強度ΔRの計算上の寄与度は小さくなる。これは、本特性を利用することで、低周波部の弱スジ部の正検知、高周波部のスジ類似部の誤検知の回避、及び高周波部のスジ部の正検知の3点を充足させることができることを示している。
【0052】
このように算出されるスジ度指標Pに対して、閾値εで閾値処理を施し、スジ度指標Pが閾値εより大きい場合はスジ候補と判断し、閾値ε以下の場合は非スジ部と判断することができる。
【0053】
例えば、閾値εを「0.5」に設定すると、図1のX方向の位置Xはスジ候補、図2のX方向の位置Xは非スジ部、図3のX方向の位置Xはスジ候補と判断される。
【0054】
なお、第1差分強度ΔSが0未満の場合は、そもそもスジの強度がないことになるため、非スジ部と判断すればよい。また、第1差分強度ΔSが0以上で第2差分強度ΔRが0未満の場合は、スジ度指標Pは1より大きくなるが、この場合はスジである可能性が極めて高い。したがって、値が大きいほどスジである確率が高いというスジ度指標Pの定義として破綻はない。
【0055】
なお、「スジ候補」という言葉を用いているが、この理由は、スジ部及び非スジ部の判断基準が複数あって、複数の基準を総合して最終的にスジと判断してもよいためである。例えば、上記方法で特定したスジ候補の位置に関して、更に第1差分強度ΔSが第2閾値αを超えていた場合に最終的にスジ部と判断する、などとしてもよい。このようにすることで、第1差分強度ΔSと第2差分強度ΔRが共に小さかった場合において、非スジ部をスジ部と誤検知することを防止することができる。
【0056】
〔閾値εの大きさ〕
閾値εは、値を大きく設定するほど誤検知率を下げる効果がある一方、未検知率は上がるため、正検知率は下がる。最低限の誤検知率を確保するために、閾値εは0.1以上であることが望ましい。また、最低限の正検知率を確保するために、閾値εは0.9以下であることが望ましい。
【0057】
〔スジ度指標Pの変形〕
図4に示したように、ΔS=T-R、ΔR=R-Bの関係がある。したがって、この関係を用いて(式1)を変形した状態で使用してもよい。また、検査データTとベースレベルデータBとの差分(T-B)をΔTと定義すると、ΔT=ΔS+ΔRであることがわかる。したがって、スジ度指標Pを以下の(式2)のように定義してもよい。
【0058】
P=ΔS/ΔT …(式2)
また、ε’=1-εのようにして、閾値の設定の大小の関係を逆転させて判定する、などとしてもよい。
【0059】
これらのような変形例は、すべて(式1)の適用範囲に含まれる。即ち、スジ度指標Pは、第1差分強度を含む第1値と、第2差分強度を含む第2値との比を利用したものを含む。
【0060】
〔ピーク位置のズレ対策〕
ノイズの発生状況によっては、検査データのX方向のピーク位置と基準データのX方向のピーク位置とがずれることがある。例えば、図2のF2Bにおいて、X方向の位置X21に検査データのピーク位置があり、X方向の位置X22に基準データのピーク位置がある。しかし、検査データのピーク位置と基準データのピーク位置とは、本来は同じX方向の位置に存在するはずである。このようなずれが生じると、第1差分強度ΔSの値が不当に大きく計算される箇所が発生し、誤検知あるいは未検知の原因となる。印刷物の欠陥検査では、誤検知の発生を嫌うことが多い。したがって、誤検知の発生を抑制するために、基準データ、及び基準データとベースレベルデータとの差分データ、の少なくとも一方に、少なくとも空間方向に膨張させるフィルタによるフィルタ処理を実施することが望ましい。空間方向に膨張させるフィルタは、最大値フィルタであることが好ましい。空間方向とは、ここではX方向を指す。後述するように、1次元化を行わずに2次元の画像で検査を行う場合、空間方向とは少なくともX方向を含む。
【0061】
〔基準画像〕
基準データは、印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて取得される。基準データは、スジのない印刷物が撮像装置で撮像された基準画像に基づいて取得されてもよいし、印刷物が印刷された際に使用されるデジタルデータに基づいて取得されてもよい。
【0062】
〔ベースレベルデータの取得方法〕
本実施形態では、ベースレベルデータは基準データが平滑化されることで取得された。ベースレベルデータは、画像にスジが存在すると十分に平滑されない可能性があり、このような場合には差分でスジ情報の多くをかき消してしまって未検知につながることがある。このため、ベースレベルデータは、基準データを元に作成されるのがよい。ただし、ベースレベルデータは、検査データが平滑化されることで取得されてもよい。あるいは、ベースレベルデータは、基準データと検査データとが平滑化されることで取得されてもよい。
【0063】
また、基準画像がデジタルデータの場合は、基準データの画像構造と検査データとの画像構造が異なるため、基準データ用のベースレベルデータは基準データを平滑化して取得され、検査データ用のベースレベルデータは検査データを平滑化して取得され、2つのベースレベルデータがそれぞれの計算で用いられてもよい。例えば、検査データ用のベースレベルデータをBT、基準データ用のベースレベルデータをBRとすると、ΔT=T-BT、ΔR=R-BR、ΔS=ΔT-ΔR、などのように計算してもよい。
【0064】
ただし、デジタルデータと検査データの画像構造が近い条件下においては、やはり基準データを元にベースレベルデータを作成するとよい。画像構造が近い条件下の例としては、デジタルデータとしてハーフトーン処理済み(単一インク滴サイズの2値化、複数インク滴サイズの多値化のいずれも含む)のデジタルデータを用いる場合がある。ハーフトーン処理済みのデジタルデータに対して実際に印刷を行う印刷装置の印刷による印刷ドット画像をシミュレーションするシミュレーション処理部を設け、更に画像構造を近づけてもよい。シミュレーションの例としては、インク滴サイズ及びインク滴形状といった物理ドットゲインをシミュレートする方法、印刷媒体の光散乱による光学ドットゲインをシミュレートする方法などがある。もちろん他のシミュレーションを実施してもよい。
【0065】
〔1次元化しない方法〕
本実施形態の検査データ、基準データ、及びベースレベルデータは、予めスジの方向に1次元化されたデータであったが、2次元の画像のままでも本実施形態は適用可能である。即ち、検査データとして印刷物を撮像装置で撮像した検査画像を用い、基準データとして印刷物の検査基準となる基準画像を用い、ベースレベルデータとして基準画像及び検査画像の少なくとも一方を平滑化したベースレベル画像を用いることで、同様の考え方でスジ候補を検出することができる。
【0066】
<インクジェット印刷システム>
上記のスジ度指標を用いた印刷物の検査装置を適用したインクジェット印刷システムについて説明する。
【0067】
〔インクジェット印刷システムの構成〕
図5は、インクジェット印刷システム100の全体の概略構成を示す全体構成図である。インクジェット印刷システム100は、印刷媒体である枚葉の用紙1にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びクロ(K)の4色のインクを吐出してカラー画像を印刷する印刷装置を含む。
【0068】
用紙1には汎用の印刷用紙が使用される。汎用の印刷用紙とは、いわゆるインクジェット専用紙ではなく、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙などのセルロースを主体とした用紙をいう。また、インクには水性インクが使用される。水性インクとは、水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインクをいう。
【0069】
図5に示すように、インクジェット印刷システム100は、搬送部110、印刷部120、撮像部130、乾燥部140、選別部150、及び排紙部160等を備えて構成される。このうち、少なくとも搬送部110及び印刷部120によって印刷装置が構成される。
【0070】
〔搬送部〕
搬送部110は、不図示の給紙部から給紙された用紙1を搬送方向(Y方向)に搬送する。搬送部110は、上流側プーリ112、下流側プーリ114、及び搬送ベルト116を備えている。
【0071】
上流側プーリ112は、水平方向に延びる不図示の回転軸を有し、回転軸が回転自在に軸支されている。下流側プーリ114は、上流側プーリ112の回転軸と平行な不図示の回転軸を有し、回転軸が回転自在に軸支されている。
【0072】
搬送ベルト116は、ステンレス製の無端状のベルトである。搬送ベルト116は、上流側プーリ112及び下流側プーリ114に架け渡されている。ステンレス製の搬送ベルト116を使用することで、用紙1の平坦性を良好に保つことができる。
【0073】
下流側プーリ114は、駆動手段として不図示のモータを有している。モータが駆動すると、下流側プーリ114が図5において左回りに回転する。上流側プーリ112は、下流側プーリ114の回転に従動して図5において左回りに回転する。上流側プーリ112及び下流側プーリ114の回転により、搬送ベルト116は上流側プーリ112及び下流側プーリ114の間を走行経路に沿って走行する。
【0074】
搬送ベルト116の搬送面には、不図示の給紙部から供給された用紙1が載置される。搬送部110は、搬送ベルト116に載置された用紙1を上流側プーリ112から下流側プーリ114に向かう搬送経路に沿って搬送し、排紙部160に受け渡す。この搬送経路の、印刷部120、撮像部130、乾燥部140、及び選別部150に対向する位置において、用紙1は印刷面を水平に保持されて搬送される。
【0075】
搬送ベルト116に不図示の複数の吸着孔を設け、不図示のポンプにより搬送ベルト116の吸着孔を吸引することで、搬送ベルト116の搬送面に載置された用紙1を搬送面に吸着保持してもよい。
【0076】
〔印刷部〕
印刷部120は、用紙1に画像を形成(印刷)する。印刷部120は、インクジェットヘッド122C、122M、122Y、及び122Kを備えている。インクジェットヘッド122Cは、シアン(C)のインク滴をインクジェット方式で吐出する。同様に、インクジェットヘッド122M、122Y、及び122Kは、それぞれマゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びクロ(K)のインク滴をインクジェット方式で吐出する。吐出されたインク滴は、用紙1の印刷面にインクドットを形成する。
【0077】
インクジェットヘッド122C、122M、122Y及び122Kは、搬送ベルト116による用紙1の搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。インクジェットヘッド122C、122M、122Y及び122Kは、インク滴を吐出する不図示の複数のノズルが用紙1のX方向幅以上の長さに渡って配置されたラインヘッドである。ラインヘッドは、不図示の複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて構成されてもよい。
【0078】
インクジェットヘッド122C、122M、122Y及び122Kは、不図示の複数のノズルが設けられたノズル面が搬送ベルト116に対向するように配置される。インクジェットヘッド122C、122M、122Y及び122Kは、ノズル面に形成されたノズルから、搬送ベルト116によってY方向に搬送される用紙1に向けてインク滴を吐出することにより、用紙1の印刷面にシングルパス方式でインクドットによる画像を形成する。したがって、例えばインク滴の吐出されない不吐出のノズルが発生すると、形成される画像にはY方向の白スジが発生する。
【0079】
〔撮像部〕
撮像部130は、印刷物である用紙1の印刷面を撮像した画像を取得する撮像装置である。撮像部130は、用紙1の搬送方向に対して印刷部120の下流側に配置される。撮像部130は、スキャナ132を備えている。
【0080】
スキャナ132は、インクジェットヘッド122C、122M、122Y及び122Kを用いて用紙1に形成された画像を光学的に読み取り、その読取画像を示す画像データを生成する装置である。スキャナ132は、用紙1上に印刷された画像を撮像して電気信号に変換する撮像デバイスを含む。撮像デバイスとしてカラーCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサを用いることができる。なお、カラーCCDリニアイメージセンサに代えて、カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)リニアイメージセンサを用いることもできる。
【0081】
スキャナ132は、撮像デバイスの他、読み取り対象を照明する照明光学系及び撮像デバイスから得られる信号を処理してデジタル画像データを生成する信号処理回路を含んでもよい。
【0082】
〔乾燥部〕
乾燥部140は、用紙1のインクを乾燥させる。乾燥部140は、用紙1の搬送方向に対して撮像部130の下流側に配置される。
【0083】
乾燥部140は、ヒータ142を備えている。ヒータ142としては、例えば、ハロゲンヒータ及び赤外線ヒータのうち少なくとも一方が使用される。ヒータ142は、用紙1の印刷面を加熱して、用紙1のインクを乾燥させる。乾燥部140は、ファン又はブロアなどの送風手段を含んでいてもよい。
【0084】
〔選別部〕
選別部150は、搬送ベルト116によって搬送される用紙1に関する良否判定に応じて、印刷物を選別する。選別部150は、用紙1の搬送方向に対して乾燥部140の下流側に配置される。選別部150は、スタンパ152を備えている。
【0085】
スタンパ152は、搬送ベルト116によって搬送される用紙1に関する良否判定に応じて、不良品印刷物と判定された用紙1の先端エッジにインクを付着させるスタンプ処理を行う。
【0086】
〔排紙部〕
排紙部160は、画像が形成され、乾燥された用紙1(印刷物)を回収する。排紙部160は、用紙1の搬送方向に対して選別部150の下流側であって、搬送部110の搬送経路の終点に配置される。排紙部160は、排紙台162を備えている。
【0087】
排紙台162は、搬送ベルト116によって搬送された用紙1を積み重ねて回収する。排紙台162には、不図示の前用紙当て、後用紙当て、横用紙当てが備えられており、用紙1を整然と積み重ねる。
【0088】
また、排紙台162は、不図示の昇降装置によって昇降可能に設けられる。昇降装置は、排紙台162に積み重ねられる用紙1の増減に連動して駆動が制御される。これにより、排紙台162に積み重ねられた用紙1のうち最上位に位置する用紙1が常に一定の高さとなる。
【0089】
〔インクジェット印刷システムの制御系〕
図6は、インクジェット印刷システム100の内部構成を示すブロック図である。インクジェット印刷システム100は、搬送部110、印刷部120、撮像部130、乾燥部140、選別部150、及び排紙部160の他、検査装置10、ユーザインターフェース170、記憶部172、統括制御部174、搬送制御部176、印刷制御部178、撮像制御部180、乾燥制御部182、選別制御部184、及び排紙制御部186を備えている。
【0090】
ユーザインターフェース170は、ユーザがインクジェット印刷システム100を操作するための不図示の入力部及び不図示の表示部を備えている。入力部は、例えばユーザからの入力を受け付ける操作パネルである。表示部は、例えば画像データ及び各種の情報を表示するディスプレイである。ユーザは、ユーザインターフェース170を操作することで、インクジェット印刷システム100に所望の画像を印刷させることができる。
【0091】
記憶部172は、インクジェット印刷システム100を制御するためのプログラム及びプログラムの実行に必要な情報を記憶する。記憶部172は、不図示のハードディスク、又は各種半導体メモリ等の非一時的記録媒体により構成される。基準画像等を一時的に記憶する不図示のRAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリを備えていてもよい。
【0092】
統括制御部174は、記憶部172に記憶されたプログラムに従って各種の処理を行い、インクジェット印刷システム100の全体の動作を統括制御する。
【0093】
搬送制御部176は、搬送部110の不図示のモータを制御することで、搬送部110によって用紙1を搬送方向に搬送させる。これにより、不図示の給紙部から供給された用紙1は、印刷部120、撮像部130、乾燥部140、及び選別部150と対向する位置を通過し、最後に排紙部160に排紙される。
【0094】
印刷制御部178は、インクジェットヘッド122C、122M、122Y、及び122Kによるインクの吐出を制御する。印刷制御部178は、インクジェットヘッド122C、122M、122Y、及び122Kによって、それぞれのノズル面と対向する位置を用紙1が通過するタイミングにおいて、シアン、マゼンタ、イエロー、及びクロのインク滴を用紙1に向けて吐出させる。これにより、用紙1の印刷面にカラー画像が形成され、用紙1は「印刷物」となる。
【0095】
撮像制御部180は、スキャナ132による撮像を制御することで、撮像部130によって用紙1(印刷物)の画像を撮像させる。撮像制御部180は、スキャナ132によって、スキャナ132と対向する位置を用紙1が通過するタイミングにおいて、用紙1に形成された画像を読み取らせる。これにより、スキャナ132は検査画像を取得する。
【0096】
乾燥制御部182は、ヒータ142による加熱を制御することで、乾燥部140によって用紙1を乾燥させる。乾燥制御部182は、ヒータ142によって、ヒータ142と対向する位置を用紙1が通過する際に用紙1を加熱させる。
【0097】
選別制御部184は、検査装置10の検査結果に基づいてスタンパ152によるスタンプ処理を制御することで、選別部150によって用紙1を選別させる。選別制御部184は、スタンパ152と対向する位置を通過する用紙1が不良品印刷物と判定された用紙1である場合は、スタンパ152によってスタンプ処理を行う。
【0098】
排紙制御部186は、排紙台162による用紙1の積載を制御する。用紙1は、排紙台162に排紙され、積み重ねられる。不良品印刷物の用紙1には先端エッジにインクが付着している。このため、ユーザは、排紙台162に積載された用紙1の中から不良品印刷物を特定することができる。
【0099】
検査装置10(印刷物の検査装置の一例)は、用紙1(被検査物である印刷物の一例)のスジ状の欠陥の有無を検査し、印刷物の良品及び不良品を決定する。検査装置10は、スジ状の欠陥の有無以外の検査を行ってもよい。
【0100】
図7は、検査装置10の内部構成を示すブロック図である。図7に示すように、検査装置10は、検査データ取得部12、基準データ取得部14、ベースレベルデータ取得部16、スジ度指標算出部18、閾値処理部20、及び良否判定部22を備える。
【0101】
検査データ取得部12は、被検査物である印刷物を撮像部130で撮像した検査画像に基づいて検査データを取得する。例えば、検査データ取得部12は、スキャナ132から検査画像を取得し、取得した検査画像をY方向に積算して1次元化した検査データを取得する。
【0102】
基準データ取得部14は、印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて基準データを取得する。例えば、基準データ取得部14は、予めスジのない印刷物を撮像して作成された基準画像をY方向に1次元化した基準データを取得する。基準データ取得部14は、ハーフトーン処理済みのデジタルデータを取得し、実際の印刷ドット画像のシミュレーションをして基準データを取得してもよい。
【0103】
ベースレベルデータ取得部16は、検査画像に基づくデータと基準画像に基づくデータとの少なくとも一方に基づいて平滑化したベースレベルデータを取得する。ベースレベルデータ取得部16は、検査データと基準データとの少なくとも一方に基づいて平滑化手段で平滑化したベースレベルデータを取得してもよい。ベースレベルデータ取得部16は、検査画像に基づくデータと基準画像に基づくデータとを平滑化手段で平滑化して取得してもよいし、検査データと基準データとを平滑化手段で平滑化して取得してもよい。さらに、ベースレベルデータ取得部16は、検査画像に基づくデータと基準データとを平滑化手段で平滑化して取得してもよいし、検査データと基準画像に基づくデータとを平滑化手段で平滑化して取得してもよい。ここでは、ベースレベルデータ取得部16は、基準データを平滑化手段によって平滑化してベースレベルデータを取得する。ベースレベルデータ取得部16は、検査画像に基づくデータと基準画像に基づくデータとの少なくとも一方を平滑化手段によって少なくともX方向に平滑化した画像を1次元化してベースレベルデータを取得してもよい。
【0104】
なお、平滑化手段は特に限定されないが、一例としてガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、移動平均フィルタ等の平滑化フィルタを挙げることができる。
【0105】
また、「基づいて」や「基づく」という用語は、そのものを使用することも含んだ表現である。例えば、「基準画像に基づいた基準データ」には基準画像そのものも含むし、基準画像をなんらかの手段で加工したデータも含む。
【0106】
スジ度指標算出部18と閾値処理部20とにより、スジ候補特定部を構成する。スジ候補特定部は、検査データと基準データとベースレベルデータとに基づいてスジ状の欠陥の候補であるスジ候補を特定する。
【0107】
スジ度指標算出部18は、特定位置の検査データと基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の基準データとベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標を算出する。スジ度指標は、特定位置の第2差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の第1差分強度が大きいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であることが好ましい。スジ度指標は、第1差分強度を含む第1値と、第2差分強度を含む第2値との比を利用したものであればよい。スジ度指標算出部18は、例えば(式1)を用いてスジ度指標Pを算出する。
【0108】
閾値処理部20は、算出したスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施す。第1閾値は、例えば前述のεである。また、閾値処理部20は、第1差分強度に対して第2閾値による閾値処理を施してもよい。
【0109】
良否判定部22は、閾値処理部20の閾値処理結果に基づいて、検査データの元となった被検査物である印刷物の良否判定を行う。良否判定部22の判定結果は、検査装置10の検査結果として選別制御部184に出力される。
【0110】
〔印刷方法〕
インクジェット印刷システム100における印刷方法について説明する。図8は、印刷方法の処理を示すフローチャートである。図8に示すように、印刷方法は、基準データ取得工程(ステップS1)、ベースレベルデータ取得工程(ステップS2)、印刷工程(ステップS3)、検査データ取得工程(ステップS4)、スジ度指標算出工程(ステップS5)、第1閾値処理工程(ステップS6)、第2閾値処理工程(ステップS7)、良否判定工程(ステップS8)、及びスタンプ処理工程(ステップS9)を含む。このうち、少なくとも基準データ取得工程(ステップS1)、ベースレベルデータ取得工程(ステップS2)、検査データ取得工程(ステップS4)、スジ度指標算出工程(ステップS5)、及び第1閾値処理工程(ステップS6)によって印刷物の検査方法が構成される。印刷物の検査方法には、第2閾値処理工程(ステップS7)、及び良否判定工程(ステップS8)を含んでもよい。
【0111】
ステップS1では、基準データ取得部14は、印刷物の検査基準となる基準画像に基づいて基準データを取得する。ここでは、予めスジのない印刷物を撮像部130で撮像して作成された基準画像が、記憶部172に記憶されているものとする。基準データ取得部14は、記憶部172から基準画像を取得し、取得した基準画像をY方向に1次元化した基準データを取得する。なお、記憶部172に記憶された基準画像は、予めスジのない印刷物を撮像部130とは異なる撮像装置で撮像して作成されたものであってもよい。
【0112】
基準データ取得部14は、印刷用のデジタルデータを基準データとして取得してもよい。また、基準データ取得部14は、ハーフトーン処理済みのデジタルデータを取得し、実際の印刷ドット画像のシミュレーションをして基準データを取得してもよい。さらに、基準データは、予め記憶部172に記憶されていてもよい。
【0113】
ステップS2では、ベースレベルデータ取得部16は、検査画像と基準画像との少なくとも一方に基づいて平滑化したベースレベルデータを取得する。ここでは、ステップS1で取得した基準データを平滑化したベースレベルデータを取得する。
【0114】
ステップS3では、インクジェット印刷システム100は、用紙1に印刷を行う。即ち、搬送制御部176は、搬送部110によって用紙1をY方向に搬送させ、印刷制御部178は、印刷用のデジタルデータに基づいてインクジェットヘッド122C、122M、122Y、及び122Kを制御し、搬送される用紙1に対してインク滴を吐出させる。印刷用のデジタルデータは、基準画像の元となったスジのない印刷物を印刷した際のデジタルデータと同じデータである。
【0115】
ステップS4では、撮像制御部180は、印刷部120によって印刷されて搬送部110によって撮像部130に対向する位置に搬送される用紙1を、スキャナ132によって撮像させる。これにより、検査画像が取得される。検査データ取得部12は、取得した検査画像をY方向に1次元化した検査データを取得する。
【0116】
ステップS5~ステップS7によって、スジ候補特定工程が構成される。スジ候補特定工程は、被検査物の印刷物のスジ状の欠陥の候補であるスジ候補を抽出する。
【0117】
ステップS5では、スジ度指標算出部18は、基準データ、検査データ、及びベースレベルデータを用いて、X方向の各位置について(式1)を用いてスジ度指標Pを算出する。なお、ステップS5に先立って、スジ度指標算出部18は、基準データ、あるいは基準データとベースレベルデータとの差分データに、最大値フィルタなどの空間方向に膨張させるフィルタによるフィルタ処理を実施する(フィルタ処理工程の一例)ことが好ましい。
【0118】
ステップS6では、閾値処理部20(第1閾値処理部の一例)は、ステップS5で算出したX方向の各位置のスジ度指標に対して、それぞれ第1閾値による閾値処理を施す。ここでは、閾値処理部20は、(式1)によって算出されたスジ度指標Pが0.1以上かつ0.9以下である閾値ε(第1閾値の一例)を超えているX方向の位置をスジ候補の位置として特定する。
【0119】
ステップS7では、閾値処理部20(第2閾値処理部の一例)は、ステップS6で抽出したスジ候補の位置に関して第2閾値による閾値処理を施し、最終的なスジ部を抽出する。ここでは、閾値処理部20は、第1差分強度ΔSと第2閾値αとを比較し、第1差分強度ΔSが第2閾値αを超えていた場合に最終的にスジ部と判断する。閾値処理部20は、スジ候補の位置だけでなく、X方向の各位置について第2閾値による閾値処理を施してもよい。
【0120】
ステップS6とステップS7とは、順序が逆であってもよい。即ち、閾値処理部20は、X方向の各位置において第2閾値による閾値処理を施してスジ候補を抽出し、このスジ候補について第1閾値による閾値処理を施して最終的なスジ部を抽出してもよい。
【0121】
ステップS8では、良否判定部22は、ステップS7の結果に基づいて、検査データの元となった印刷物の良否判定を行う。例えば、良否判定部22は、ステップS7においてスジ部が存在する場合には印刷物が不良品印刷物であると判定し、スジ部が存在しない場合に印刷物が良品印刷物であると判定する。良否判定部22は、スジ部の数が第3閾値よりも多い場合に不良品印刷物と判定してもよい。良否判定部22は、ステップS7の結果以外の良否判定基準を有していてもよい。良否判定部22の判定結果は、検査装置10の検査結果として選別制御部184に出力される。
【0122】
なお、ステップS8では、良否判定部22は、ステップS6の処理結果から印刷物の良否判定を行ってもよい。この場合、ステップS7を省略することができる。
【0123】
ステップS9では、選別制御部184は、検査装置10の検査結果に基づいて、搬送部110によって選別部150に対向する位置に搬送される用紙1(印刷物)が良品印刷物であるか否かを判定する。良品印刷物である場合は、ステップS11へ移行する。良品印刷物でない場合、即ち不良品印刷物である場合は、ステップS10へ移行する。
【0124】
ステップS10では、選別制御部184は、スタンパ152によって不良品印刷物と判定された用紙1にスタンプ処理を行わせる。
【0125】
ステップS11では、統括制御部174は、全ての用紙1の印刷が終了したか否かを判定する。全ての用紙1の印刷が終了した場合は、本フローチャートの処理を終了する。印刷する用紙1が存在する場合は、ステップS3に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0126】
以上のように、本実施形態にかかる印刷方法及び印刷物の検査方法によれば、特定位置の検査データと基準データとの第1差分強度が一定の値を有する場合には、特定位置の基準データとベースレベルデータとの第2差分強度が小さいほど特定位置にスジ状の欠陥がある確率が高まる特性を定量化した指標であるスジ度指標に対して第1閾値による閾値処理を施すようにしたので、印刷物の空間周波数にかかわらずスジ状の欠陥の候補を適切に特定することができる。
【0127】
本実施形態に係る印刷方法及び印刷物の検査方法は、各工程を必ずしも逐次的に行うことに限定されない。例えば、ある用紙1についてステップS4~ステップS9の処理を実施している間に、次に搬送される用紙1についてステップS3の処理を開始するなど、各工程を並列的に実施してもよい。
【0128】
<その他>
ここでは、スジが発生しない箇所よりも輝度が大きくなる、いわゆる白スジ(明スジ)の検出について説明したが、スジが発生しない箇所よりも輝度が小さくなる、いわゆる黒スジ(暗スジ)の検出にも適用可能である。黒スジ(暗スジ)に適用する場合は、例えば第1差分強度ΔSと第2差分強度ΔRを計算する際に「差分するものとされるものを逆転」させればよい(例:A-BをB-Aにする)。あるいは、差分時の逆転はせずに、撮像画像(輝度が高いほど高い値)を予め変換し、輝度が高いほど低い値になる画像にしておいてもよい。その他、同様の効果を得られる別の手段を用いてもよい。
【0129】
印刷物の検査方法をコンピュータに実行させる検査プログラムは、コンピュータの読取可能な非一時的な記憶媒体に記憶させて提供されてもよい。また、検査プログラムは、外部のサーバからダウンロード可能なアプリケーションとして提供されてもよい。
【0130】
ここまで説明した実施形態において、例えば、検査装置10の各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0131】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、或いはCPUとFPGAの組み合わせ、又はCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、サーバ及びクライアント等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0132】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0133】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0134】
1…用紙
10…検査装置
12…検査データ取得部
14…基準データ取得部
16…ベースレベルデータ取得部
18…スジ度指標算出部
20…閾値処理部
22…良否判定部
100…インクジェット印刷システム
110…搬送部
112…上流側プーリ
114…下流側プーリ
116…搬送ベルト
120…印刷部
122C…インクジェットヘッド
122K…インクジェットヘッド
122M…インクジェットヘッド
122Y…インクジェットヘッド
130…撮像部
132…スキャナ
140…乾燥部
142…ヒータ
150…選別部
152…スタンパ
160…排紙部
162…排紙台
170…ユーザインターフェース
172…記憶部
174…統括制御部
176…搬送制御部
178…印刷制御部
180…撮像制御部
182…乾燥制御部
184…選別制御部
186…排紙制御部
図1
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