(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ビスフェノールの製造方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/20 20060101AFI20220209BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20220209BHJP
C07C 39/17 20060101ALI20220209BHJP
C08G 64/30 20060101ALI20220209BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C39/16
C07C39/17
C08G64/30
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018031477
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2017041829
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 馨
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴治
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171943(JP,A)
【文献】特開昭50-035141(JP,A)
【文献】特開2015-051935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 37/20
C07C 39/16
C07C 39/17
C08G 64/30
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドからビスフェノールを製造する方法におい
て、硫酸モノアルキルの存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドからビス
フェノールを生成する工程を含むことを特徴とするビスフェノールの製造方法。
【請求項2】
前記硫酸モノアルキルが、硫酸と脂肪族アルコールから生成されることを特徴とする請
求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
【請求項3】
前記硫酸に対する前記脂肪族アルコールのモル比が、0.0001以上、10以下であ
ることを特徴とする請求項2に記載のビスフェノールの製造方法。
【請求項4】
前記脂肪族アルコールの炭素数が1以上、12以下であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
【請求項5】
前記ビスフェノールを生成する工程が、チオールの存在下で行われることを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
【請求項6】
前記チオールと前記ケトン又は前記アルデヒドを混合させた後、前記硫酸モノアルキル
と混合することを特徴とする請求項5に記載のビスフェノールの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によりビスフェノール
を製造し、これを用いてポリカーボネート樹脂を製造することを特徴とするポリカーボネ
ート樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールの製造方法及び該製造方法により得られるビスフェノールを
用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。詳しくは、芳香族アルコールとケトン
又はアルデヒドを原料とし、硫酸に脂肪族アルコールを混合させて得られた硫酸モノアル
キルを触媒として用いるビスフェノールの製造方法に関する。
本発明で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族
ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌
防カビ剤等の添加剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、従来より、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエス
テル樹脂などの高分子材料の原料、硬化剤のほか、感熱用の顕色剤や退色防止剤、酸化防
止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤、難燃剤等の添加剤として広く有用に用いられており、ます
ます重要性を増している。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4
-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル
)プロパンなどが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなビスフェノールの製法として、例えば塩化水素ガスを触媒とする製造方法(
特許文献1)、塩酸を触媒とする製造方法(特許文献2)、塩酸と硫酸の混合物を触媒と
する製造方法(特許文献3)、硫酸を触媒とする製造方法(特許文献4)が知られている
。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-138443
【文献】特開2008-214248
【文献】特開2014-40376
【文献】特開2015-51935
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本化学協会誌 1982(8) 1363-1370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塩化水素ガスを触媒とする製造方法(特許文献1)は、ビスフェノール
の汎用性の高い製造方法として知られているが、該塩化水素ガスは腐食性が高く、工業的
に実施する場合は専用の設備が必要である。塩酸を触媒とする製造方法(特許文献2)は
、塩化水素ガスを触媒とする製造方法より塩化水素の取扱い量は少ないが、濃塩酸は、腐
食性があり取扱いが容易ではない。また、反応時間を要する問題がある。また、塩酸と硫
酸の混合物を触媒とする製造方法(特許文献3)は、塩酸を使用しているため腐食性の問
題がある。硫酸を触媒とする製造方法(特許文献4)では、フェノールのスルホン化等の
副反応が起こりやすく、それを抑制するために種々の溶媒を比較的多量に使用する必要が
ある(非特許文献1)。また、硫酸を用いる必要があり、そのため原料であるケトン類や
アルデヒド類が縮合(多量化)などの副反応が起き、着色成分となることが知られている
。さらに、本発明者らが検討した結果、ビスフェノールの反応液が固化し、反応時間を要
するという問題が発生することが判明した。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、樹脂原料や顕色剤として使用した場合にも色相を損なうこ
とのなく、副生物の少ない、簡便で、効率的で、工業的に有利なビスフェノールの製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、硫酸と脂肪族アルコール
を混合して得られた硫酸モノアルキルを触媒とするビスフェノールの製造方法を見出し、
簡便で、効率的で、工業的に有利なビスフェノールの製造方法の発明を完成させるに至っ
た。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[7]に存する。
[1] 芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドからビスフェノールを製造する方法
において、硫酸モノアルキルの存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドか
らビスフェノールを生成する工程を含むことを特徴とするビスフェノールの製造方法。
[2] 前記硫酸モノアルキルが、硫酸と脂肪族アルコールから生成されることを特徴と
する[1]に記載のビスフェノールの製造方法。
[3] 前記硫酸に対する前記脂肪族アルコールのモル比が、0.0001以上、10以
下であることを特徴とする[2]に記載のビスフェノールの製造方法。
[4] 前記脂肪族アルコールの炭素数が1以上、12以下であることを特徴とする[1
]~[3]のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
[5] 前記ビスフェノールを生成する工程が、チオールの存在下で行われることを特徴
とする[1]~[4]のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法。
[6] 前記チオールと前記ケトン又は前記アルデヒドを混合させた後、前記硫酸モノア
ルキルを混合することを特徴とする[5]に記載のビスフェノールの製造方法。
[7] [1]~[6]のいずれか1項に記載のビスフェノールの製造方法によりビスフ
ェノールを製造し、これを用いてポリカーボネート樹脂を製造することを特徴とするポリ
カーボネート樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、触媒として硫酸モノアルキルを用いることで、触媒の酸強度を制御し
、原料のケトン類及びアルデヒド類の縮合(多量化)及び着色化を抑制し、副反応物の生
成及び生成物の着色が低減されたビスフェノールを、簡便に効率よく、高収率で製造する
ことが可能である。また、該ビスフェノールを用いて着色が低減されたポリカーボネート
などの高分子材料を製造することが可能である。
【0010】
このように、本発明によれば、様々なビスフェノールについて、簡便で、効率的で、工
業的に有利なビスフェノールの製造方法を提供することができる。さらには、本発明の製
造方法により製造されたビスフェノールを、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香
族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として用いることにより、これらの樹脂を効
率よく製造することができ、また、着色による色相の低下を抑制して、物性に優れたポリ
カーボネート樹脂等の高分子材料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のビスフェノールの製造方法の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明では、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドからビスフェノールを製造す
る方法において、硫酸モノアルキルの存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデ
ヒドからビスフェノールを生成する工程を含む。
本発明のビスフェノールの製造方法では、硫酸モノアルキルを触媒として芳香族アルコ
ールとケトン又はアルデヒドを縮合させることにより製造する。
ビスフェノールの反応は、通常、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
【0012】
【0013】
(式中、R1~R6は、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコ
キシ基、アリール基を示す。)
【0014】
[ビスフェノール]
本発明で製造されるビスフェノールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物で
ある。
【0015】
【0016】
R1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコ
キシ基、アリール基などが挙げられ、例えば、プロトン;フルオロ基、クロロ基、ブロモ
基、ヨード基等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、i―プロピル基
、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i‐ペンチル基、n-
ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n―ウン
デシル基、n-ドデシル基等の鎖状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキ
シ基、i―プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペン
チルオキシ基、i‐ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、
n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n―ウンデシルオキ
シ基、n-ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シ
クロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデ
シル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェ
ニル基等のアリール基などが挙げられる。これらのうちR2とR3は立体的に嵩高いと縮
合反応が進行しにくいことから、好ましくはプロトンである。
【0017】
R5とR6としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリー
ル基などが挙げられ、例えば、プロトン;メチル基、エチル基、n-プロピル基、i―プ
ロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i‐ペンチル
基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノ
ニル基、n-デシル基、n―ウンデシル基、n-ドデシル基等の鎖状アルキル基;メトキ
シ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i―プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキ
シ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i‐ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオ
キシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシ
ルオキシ基、n―ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロ
プロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基
、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェニル基、
トリル基、2,6-ジメチルフェニル基等のアリール基などが挙げられる。
【0018】
R5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良く、例えば、シクロプ
ロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5
-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノ
ニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニ
リデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
【0019】
[芳香族アルコール]
本発明の製造方法に用いる芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(3)で表される
化合物である。
【0020】
【0021】
R1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコ
キシ基、アリール基などが挙げられ、例えば、プロトン;フルオロ基、クロロ基、ブロモ
基、ヨード基等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、i―プロピル基
、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i‐ペンチル基、n-
ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n―ウン
デシル基、n-ドデシル基等の鎖状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキ
シ基、i―プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペン
チルオキシ基、i‐ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、
n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n―ウンデシルオキ
シ基、n-ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シ
クロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデ
シル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェ
ニル基等のアリール基などが挙げられる。これらのうちR2とR3は立体的に嵩高いと縮
合反応が進行しにくいことから、好ましくはプロトンである。
【0022】
[ケトン及びアルデヒド]
本発明の製造方法に用いるケトン及びアルデヒドは、通常、以下の一般式(4)で表さ
れる化合物である。
【0023】
【0024】
R5とR6としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリー
ル基などが挙げられ、例えば、プロトン;メチル基、エチル基、n-プロピル基、i―プ
ロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i‐ペンチル
基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノ
ニル基、n-デシル基、n―ウンデシル基、n-ドデシル基等の鎖状アルキル基;メトキ
シ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i―プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキ
シ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i‐ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオ
キシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシ
ルオキシ基、n―ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロ
プロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基
、シクロオクチル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基;ベンジル基、フェニル基、
トリル基、2,6-ジメチルフェニル基等のアリール基などが挙げられる。
【0025】
R5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良く、例えば、シクロプ
ロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5
-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノ
ニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニ
リデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
【0026】
芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドを縮合させる反応において、ケトン又はアル
デヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、少ない場合ケトン又はアルデヒドが多量化
してしまい、また多い場合は芳香族アルコールを未反応のままロスする傾向がある。これ
らのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比は、好ましくは
1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上であり、また、好ま
しくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
ケトン及びアルデヒドの供給方法は、一括で供給する方法、または分割して供給する方
法を用いることができる。ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少
しずつ滴下して供給するような分割して供給する方法が好ましい。
【0027】
[硫酸モノアルキル]
本発明では、硫酸モノアルキルの存在下で、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒ
ドからビスフェノールを生成する。本発明の製造方法に用いられる硫酸モノアルキルとし
ては、例えば、硫酸モノメチル、硫酸モノエチル、硫酸モノプロピル、硫酸モノイソプロ
ピル、硫酸モノブチル、硫酸モノイソブチル、硫酸モノt-ブチル、硫酸モノペンチル、
硫酸モノイソペンチル、硫酸モノへキシル、硫酸モノへプチル、硫酸モノオクチル、硫酸
モノノニル、硫酸モノデシル、硫酸モノウンデシル、硫酸モノドデシル、硫酸モノ(ヒド
ロキシエチル)、硫酸モノ(2-ヒドロキシエトキシエチル)、硫酸モノ(2-(2’-
ヒドロキシエトキシ)エトキシエチル)などを挙げることができる。これらの中で、炭素
数が多くなると親油性が増加し、硫酸モノアルキルが有機相と水相を行き来し難くなるこ
とから、炭素数が8以下の硫酸モノアルキルが好ましく用いられる。
【0028】
硫酸モノアルキルのビスフェノール生成反応液中の濃度としては、0.0001重量%
以上、50重量%以下であることが好ましい。ビスフェノール生成反応液中の硫酸モノア
ルキルの濃度は、1HNMRにより分析することにより求めることができる。
硫酸モノアルキルの調製方法はとしては、下記に示す硫酸と下記に示す脂肪族アルコー
ルを混合させて得る方法、硫酸モノアルキルナトリウムなどの硫酸モノアルキル金属塩と
硫酸を混合させて得る方法が挙げられる。尚、本発明において、ビスフェノールの生成工
程において存在させる硫酸モノアルキルは、予め調整したものを反応原料の少なくとも一
部と混合することにより存在させても、ビスフェノールを生成させる反応系に硫酸と脂肪
族アルコールを共存させることで、硫酸モノアルキルを生成させ、反応系に存在させても
よい。
【0029】
脂肪族アルコールと硫酸を混合すると発熱することから、その混合は該脂肪族アルコー
ルの沸点以下で行うことが好ましい。
尚、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドからビスフェノールを製造する反応は
、好ましくは、溶媒中で行われる。したがって、硫酸モノアルキルは、芳香族アルコール
、溶媒、ケトン又はアルデヒド、必要によりチオール、を反応器に供給した後に供給する
方法、又はケトン又はアルデヒドを反応器に供給・混合する前に硫酸モノアルキルを反応
器に供給して、硫酸モノアルキルを芳香族アルコール等と混合し、これにケトン又はアル
デヒドを混合する方法が挙げられるが、ケトン又はアルデヒドが多量化してしまう怖れが
あることから、ケトン又はアルデヒドを反応器に供給する前に硫酸モノアルキルを反応器
に供給し、これにケトン又はアルデヒドを混合する方法が好ましい。
【0030】
[脂肪族アルコール]
本発明の製造方法のビスフェノールを生成する反応において、硫酸モノアルキルを生成
するためには、通常、脂肪族アルコールを原料として用いる。脂肪族アルコールとしては
、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノ
ール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i‐ペンタノール、n-ヘ
キサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、
n―ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、
トリエチレングリコールなどの炭素数1~12のアルキルアルコール類などを挙げること
ができる。該脂肪族アルコールは、炭素数が多くなると親油性が増加し、硫酸と混ざりに
くくなり硫酸モノアルキルを得にくくなる傾向があることから、炭素数が8以下のアルキ
ルアルコールが好ましい。
【0031】
本発明において、該脂肪族アルコールは、硫酸と混合して硫酸モノアルキルを調製して
、用いることができる。該脂肪族アルコールは、硫酸と混合すると発熱することから、硫
酸を供給する前に反応器に供給することが好ましい。硫酸に対する脂肪族アルコールのモ
ル比は、低い場合は発生する硫酸モノアルキルの量が少なくなり反応時間を要し、また、
多い場合硫酸濃度が低下する傾向があることから、好ましくは0.0001以上、より好
ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また好ましくは10以下、よ
り好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
【0032】
[硫酸]
本発明の製造方法のビスフェノールを生成する反応において、硫酸モノアルキルを生成
するために硫酸を用いることが好ましい。用いる硫酸の濃度が高いと、ケトン又はアルデ
ヒドの多量化及び脂肪族アルコールの脱水2量化を促進させ、チオールの劣化及び生成し
たビスフェノールをスルホン化させる怖れがある。また、用いる硫酸の濃度が低いと、反
応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することが困難となる傾向がある。そ
のため、用いられる硫酸の濃度は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量
%以上である。また、該硫酸濃度が高く(即ち、該硫酸中の水の濃度が低く)、かつ、該
硫酸に含まれる水の量に対する、アセトンと予め混合する溶媒(詳細は後述)の量が少な
い場合には、アセトンがメシチルオキサイド(2量化生成物)などに多量化し、脂肪族ア
ルコールの脱水2量化を促進させ、チオールを酸化分解させてしまう怖れがあることから
、用いられる硫酸の濃度は、好ましくは95重量以下、より好ましくは90重量%以下で
ある。一方で、該硫酸濃度が高く(即ち、該硫酸中の水の濃度が低く)、かつ、該硫酸に
含まれる水の量対する、アセトンと予め混合する溶媒(詳細は後述)の量が多い場合には
、アセトンがメシチルオキサイド(2量化生成物)などの多量化を抑制し、脂肪族アルコ
ールの脱水2量化を抑制し、チオールの酸化分解を抑制できることから、用いられる硫酸
の濃度は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
【0033】
本発明において、反応液中のケトン又はアルデヒドに対する硫酸(但し、硫酸モノアル
キルに由来する硫酸分)のモル比は、少ない場合は縮合反応時に副生する水によって硫酸
が希釈されて反応時間を要する、多い場合はケトン又はアルデヒドの多量化が進行する。
これらのことから、反応液中のケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比は、好ましく
は0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上5以下であり
、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
本発明において、硫酸の仕込み時の濃度とは、反応器に供給する時の硫酸の濃度である
。
【0034】
[チオール]
本発明の製造方法のビスフェノールを生成する反応においては、チオールを存在させる
ことが好ましい。用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸
、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸など
のメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプ
タン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメ
ルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ウンデ
シル、ドデシルメルカプタンである。
【0035】
本発明において、ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比は、少ない場合選
択性改善の効果が得られない、また、多い場合ビスフェノールに混入して品質が悪化する
。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する該チオールのモル比は、好ましくは
0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、
また、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である
。
尚、チオールを使用する場合、該チオールをケトン又はアルデヒドと混合した後、硫酸
モノアルキルと混合するのがチオールの酸化分解を抑制する点で好ましい。
【0036】
[溶媒]
本発明の製造法において、ビスフェノールを生成する反応は、トルエン、キシレン、メ
シチレン、クロロベンゼンなどの溶媒存在下で行っても良い。ビスフェノールの製造に使
用した溶媒は、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。
ビスフェノールを生成する反応に供給する溶媒の使用量は、硫酸モノアルキルの調製に
用いられる硫酸の量に対して少な過ぎる場合、生成したビスフェノールが分解する場合が
あり、得られるビスフェノールが減少してしまう可能性がある。一方で、硫酸の量に対し
て多すぎる場合、ケトン又はアルデヒドと芳香族アルコールと縮合反応速度が低下し、ビ
スフェノールを生成する時間を要する可能性がある。したがって、該溶媒の使用量は、硫
酸の量に対して、0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましく、10倍以下
が好ましく、5倍以下がより好ましい。特に、濃度の高い硫酸を用いる場合は、硫酸の量
に対して、1倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、10倍以下が好ましく、5倍
以下がより好ましい。
また、溶媒を使わず芳香族アルコールを多量に使用して溶媒の代わりにしても良い。未
反応の芳香族アルコールはロスとなることから、蒸留などにより回収及び精製して再使用
することが可能である。
【0037】
[ビスフェノールの生成反応]
本発明の製造方法において、ビスフェノールの生成反応は、芳香族アルコールとケトン
又はアルデヒドとの縮合反応である。縮合反応の反応温度は、高温の場合ケトン又はアル
デヒドの多量化が進行し、低温の場合は反応に要する時間が長時間化する。これらのこと
から、反応温度は、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、更に好まし
くは-15℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、
更に好ましくは70℃以下である。
本発明において、縮合反応の反応時間は、長い場合生成したビスフェノールが分解する
可能性があることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好
ましくは20時間以内である。なお、用いる硫酸と同等量以上の水を加えて硫酸濃度を低
下させ、反応を停止することが可能である。
【0038】
[精製方法]
本発明の製造方法において縮合反応によって得られた前記ビスフェノールの精製は、常
法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段
により精製することが可能である。具体的には、縮合反応後、反応液を分液して得られた
有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて重曹水などで中和洗浄する。次い
で、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。芳香族アルコールを多量に用いる場合は、該晶
析前に蒸留による余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させる。
【0039】
[ビスフェノールの用途]
本発明のビスフェノールは、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接
着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポ
リアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の
熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾ
オキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加
剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色
剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
【0040】
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の
原料(モノマー)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキ
シ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好まし
く、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0041】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明で製造されるビスフェノールの用途のひとつであるポリカーボネート樹脂は、上
述の方法により製造されたビスフェノールと、炭酸ジフェニル等とを、アルカリ金属化合
物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させることで製造
できる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下
に該ビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
【0042】
上記のポリカーボネートの製造方法において、炭酸ジフェニルは、該ビスフェノールに
対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの
量は、製造されたポリカーボネートに末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる
点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカ
ーボネートを製造し易い点では少ないことが好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノ
ール1モルに対する炭酸ジフェニルの使用量は、通常1.001モル以上、好ましくは1
.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である
。
【0043】
原料の供給方法としては、該ビスフェノールおよび炭酸ジフェニルを固体で供給するこ
ともできるが、一方または両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネートを製造する
際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネートの製造方法においては、この
エステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を
使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合
わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
【0044】
触媒の使用量は、ビスフェノールまたは炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05
μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であ
り、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μ
モル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネートを製造
するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの
分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネートを得やすい。
【0045】
上記方法によりポリカーボネートを製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続
的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ま
しい。
エステル交換法によるポリカーボネートの製造においては、通常、原料混合槽に供給さ
れた両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生
産される。
【0046】
上述のように本発明の製造方法により得られるビスフェノールは非常に高純度であり、
着色が少ないことから、高純度なポリカーボネートの製造方法に用いることができ、例え
ば、本発明の製造方法により得られるビスフェノールと炭酸ジフェニルとをエステル交換
触媒の存在下で重縮合させることにより高純度なポリカーボネートを得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそ
の要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0048】
[原料及び試薬]
オルトクレゾールは、和光純薬株式会社製特級試薬又は新日本製鐵化学株式会社製の製
品を使用した。
アセトンとメタノールは、和光純薬株式会社製特級試薬又は大伸化学株式会社製の製品
を使用した。
ドデカンチオールは、和光純薬株式会社製特級試薬又は花王株式会社製の製品を使用し
た。
トルエンは、和光純薬株式会社製特級試薬又はコスモ石油株式会社製の製品を使用した
。
【0049】
硫酸は、和光純薬株式会社製特級試薬又は要薬品株式会社製の製品を使用した。
アセトニトリル、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸エチル、オルトキシレン、パラキシレ
ン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、イソプロピルアルコール、1-オクタノー
ル、エチレングリコール、2,6-キシレノール、フェノール、ドデカナール、シクロヘ
キサノン、シクロへプタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3.3.
5-トリメチルシクロヘキサノン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アセトフェ
ノン、重クロロホルム、ヘプタン、炭酸セシウム、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-
メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フル
オレン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンは、和
光純薬株式会社製特級試薬を使用した。
【0050】
3-メルカプトプロピオン酸、フルオレノン、2-エチルヘキサナール、2-フェニル
フェノール、2-シクロへキシルフェノール、2-シクロへキシルフェノール、2-ベン
ジルフェノールは東京化成工業株式会社製試薬を使用した。
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン及び炭酸ジフェニルは、三菱ケミカ
ル株式会社製の製品を使用した。
1,1―ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンは、株式会社新菱製の製品を使用し
た。
【0051】
[分析]
硫酸モノメチル及び硫酸モノ(2-ヒドロキシエチル)の分析は、プロトン核磁気共鳴
(1HNMR)を用いて測定することにより実施した。プロトン核磁気共鳴(1HNMR
)測定は、日本電子株式会社製のJNM=ECS400型を用いて実施した。
生成したビスフェノールの分析は、高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)を用
いて測定することにより実施した。高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)は、以
下の手順と条件で行った。
【0052】
(分離装置):アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent1200、Im
taktScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID。低圧グラ
ジェント法。分析温度40℃。溶離液組成:A液酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3
.000g:1ミリリットル:1リットルの溶液。B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセ
トニトリル=1.500g:1ミリリットル:1000ミリリットルの溶液。分析時間0
分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)分析時間0~25分は溶離液組成
をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、分析時間25~30分はA液:B液=90
:10に維持、流速1.0ミリリットル/分にて分析した。検出波長は、280nmとし
た。
【0053】
(質量分析装置):アジレント・テクノロジー株式会社製AgilentLC/MS
6130。イオン源は、ESI(Postive/Negative) AJSプローブ
使用。
ビスフェノール反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順
と条件で行った。
【0054】
(分離装置):島津製作所社製LC-2010A、ImtaktScherzoSM-
C18 3μm 150mm×4.6mmID。低圧グラジェント法。分析温度40℃。
溶離液組成:A液酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩素水=3.000g:1ミリリットル:
1リットルの溶液。B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1
ミリリットル:900ミリリットルの溶液。分析時間0分ではA液:B液=60:40(
体積比、以下同様。)分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々
に変化させ、分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、流速0.8ミリリ
ットル/分にて分析した。検出波長は、280nmとした。
【0055】
本発明に係るアセトン基準の反応収率(モル%)は、高速液体クロマトグラフィーによ
り得られたビスフェノールの分析値から反応液中に含まれるビスフェノールのモル量を算
出し、該ビスフェノールのモル量÷原料アセトンのモル量×100%で算出した。
本発明に係るイソペニルクレゾールの2量体の反応収率は、高速液体クロマトグラフィ
ーで得られたイソペニルクレゾールの面積÷2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチル
フェニル)プロパンの面積×100(面積%)で算出した。
本発明に係るアセトン基準の収率(モル%)は、得られたビスフェノールのモル量÷原
料アセトンのモル量×100%で算出した。
【0056】
(粘度平均分子量)
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.
0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記
の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0057】
(ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度)
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度(OH)濃度は、四塩化チタン/酢酸法(Ma
kromol.Chem. 88,215(1965)参照)に準拠し、比色定量を行う
ことにより測定した。
【0058】
(ペレットYI)
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して
、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値
)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件
は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定
部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、
続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210
を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が
-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。ペレットの
測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さ
まで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作
を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
【0059】
参考例1
50ミリリットルのナス型フラスコにメタノール0.2gを取り、そこに92重量%硫
酸0.5gをゆっくり加えて1分間振り混ぜた。この液を5mmφのNMR試料管に入れ
、ロック用の重クロロホルム管(2mmφ封管)を試料中に挿入して1HNMRを測定し
た。1HNMRスペクトル上、δ4.0ppmにシグナルが観測された。試薬の硫酸モノ
メチルナトリウム9.7mgを当該NMR試料管に添加したところδ4.0ppmのピー
クが増加したことから、該ピークが硫酸モノメチルのプロトンのシグナルであることを確
認した。この結果より、硫酸とメタノールを混合すると硫酸モノメチルが生成することを
確認した。
【0060】
参考例2
50ミリリットルのナス型フラスコにエチレングリコール0.2gを取り、そこに92
重量%硫酸0.5gをゆっくり加えて1分間振り混ぜた。この液を5mmφのNMR試料
管に入れ、ロック用の重クロロホルム管(2mmφ封管)を試料中に挿入して1HNMR
を測定した。1HNMRスペクトル上、硫酸(2-ヒドロキシエチル)と考えられるブロ
ードなシグナルがδ3.98-3.99ppm及び4.19-4.21ppmに検出され
た。この結果より、硫酸とエチレングリコールを混合することで硫酸モノ(2-ヒドロキ
シエチル)が生成することを確認した。
【0061】
実施例1
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール35.0g(1.1モル)を入
れた後に、88重量%硫酸77.7g(0.7モル)をゆっくり加えた。得られた溶液の
一部を取り出し、5mmφのNMR試料管に入れ、ロック用の重クロロホルム管(2mm
φ封管)を試料中に挿入して1HNMRを測定した。1HNMRスペクトル上、δ4.0
ppmにシグナルが観測されたことから、硫酸モノメチルが発生していることを確認した
。また、硫酸モノメチルに帰属されるδ4.0ppmとメタノールの帰属されるピークの
積分値から硫酸モノメチルの発生量を算出したところ、硫酸モノメチルの発生量は30重
量%であった。その後、反応器にトルエン72.6g、オルトクレゾール255.0g(
2.4モル)及びドデカンチオール7.3g(0.04モル)をセパラブルフラスコに入
れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにアセトン57.0g
(1.0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した
。アセトンの滴下終了後、反応液の色は橙色であった。この反応液を15時間、50℃で
反応させた。反応終了後、トルエン135.0g及び脱塩素水175.5gを供給して8
0℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相
に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和
の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認
した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。
撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマ
トグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収
率は85モル%であった。また、該高速液体クロマトグラフにおいて保持時間15.7分
に見られたピークを高速液体クロマトグラフ質量分析のNegativeモードで測定し
たところ、マスナンバー295(M+-1)が観測され、該保持時間15.7分のピーク
がイソプロペニルクレゾールの2量体であることが判明した。該イソプロペニルクレゾー
ルの2量体の生成量は、0.7面積%であった。この有機相を80~30℃まで冷却して
、30℃に到達時にした時に種晶ビ2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル
)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)1gを添加させて析出を確認した。その
後、10℃まで冷却して10℃到達後、ガラスフィルターを用いて減圧濾過を行い、ウェ
ットケーキとして粗ビスフェノールC239.9gを得た。
【0062】
温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1リットルのセパラブルフラスコに、前記
粗ビスフェノールC全量とトルエン449gを入れ、80℃に昇温した。均一溶液となっ
たことを確認して、10℃まで冷却した。その後、ガラスフィルターを用いた減圧濾過を
行い、ウエット精ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、
減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC 180.
9g(0.7モル、アセトン基準の収率72モル%)を得た。
【0063】
比較例1
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で92重量%硫酸58.5g(0.6モル)
、トルエン54.3g、オルトクレゾール191.5g(1.8モル)及びドデカンチオ
ール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を50℃にした。前
記滴下ロートにアセトン42.5g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパ
ラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、赤茶色の反応液であった。
この反応液を30分間、50℃で反応させたところ、反応液は完全に固化してしまい、混
合不可になった。その後、脱塩素水100g、酢酸エチル200gを入れた後、5分間混
合して析出物を溶解させた。得られた溶液を静置させ、水相を除去した。その後、得られ
た有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上にな
ったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10
分間撹拌した。撹拌後、静置して水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、
高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、40モ
ル%であった。また、イソプロペニルクレゾールの2量体の生成量は、6.2面積%であ
った。実施例1及び比較例1について、触媒の種類、反応液の色調、反応液の性状及びビ
スフェノールCの反応収率を表1に纏めた。その結果、硫酸モノメチルを触媒として用い
た場合、反応液の着色化及び副生物であるイソプロペニルクレゾールの2量体の生成を抑
制し、反応液を固化させることなく、色調に優れたビスフェノールCを収率良く得られる
ことがわかった。
【0064】
【0065】
実施例2
温度計、撹拌機及び滴下器を備えたフルジャケット式1立方メートルのグラスライニン
グ製反応槽に88%硫酸566kgを供給し、該滴下器にメタノール255kgを供給し
て、該メタノールをゆっくり該反応槽に滴下して、硫酸モノメチル溶液を得た。温度計、
撹拌機及び滴下槽を備えたフルジャケット式8立方メートルのグラスライニング製反応槽
にトルエン530kg、オルトクレゾール1861kg(17.2キロモル)、ドデシル
メルカプタン53kgを供給し、該滴下槽にアセトン413kg(7.1キロモル)を供
給した。その後、前記硫酸モノメチル溶液を該8立方メートルのグラスライニング製反応
槽にゆっくり送液した後、反応槽の内温が30℃を越えないようにアセトンをゆっくり供
給した。アセトン供給後、反応槽の内温を50℃に昇温して15時間混合して反応を完結
させた。その後、トルエン985kg、水1278kg、28重量%水酸化ナトリウム溶
液1160kgを該反応槽の内温が50℃以下になるようにゆっくり供給した。その後、
80℃まで昇温し、静置して下層の水相を抜き出した。得られた有機相に、1.5重量%
の炭酸水素ナトリウム溶液599kgを加えて混合し、静置して下層の水相を抜き出した
。得られた有機相をゆっくり10℃まで冷却したところ、ビスフェノールCが析出したス
ラリー液が得られた。このスラリー液を遠心分離機で濾液を分離し、ウェットケーキ16
27kgを得た。このウェットケーキをフルジャケット式の6.8立方メートルのステン
レス製晶析槽に供給後、トルエン2442kgを供給した。該晶析槽を80℃まで昇温し
、純水551kgを加えて混合し、静置して下層の水相を抜き出した。更に、該晶析槽に
純水552kgを加えて混合し、静置して下層の水相を抜き出した。得られた有機相に0
.001重量%の塩化ナトリウム溶液27kgを加え、10℃まで冷却したところ、ビス
フェノールCが析出し、スラリー液を得た。このスラリー液を遠心分離機で濾液を分離し
、トルエン780kgで振りかけ洗浄し、ウェットケーキ1537kgを得た。得られた
ウェットケーキを6.5立方メートルの乾燥機に供給して十分に乾燥させビスフェノール
1440kg(5.6キロモル、アセトン基準の収率79モル%)を得た。実施例1及び
2について、使用したアセトン量とビスフェノールCの反応収率を表2に纏めた。その結
果、アセトンの量を増加させても同様にビスフェノールを製造することができることがわ
かった。
【0066】
【0067】
実施例3
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式200
ミリリットルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール6.9g(0.2モル
)を入れた後に、92重量%硫酸15.4g(0.1モル)をゆっくり加えることで、硫
酸モノメチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン14.4g、オルトクレゾール
50.6g(0.5モル)及びドデカンチオール1.4g(0.01モル)を入れ、セパ
ラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン11.2g(0.2
0モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセ
トンの滴下終了後、5時間40℃で反応させた。反応終了後、トルエン50.0g及び脱
塩素水50.0gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析
出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。
その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相p
Hが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素
水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一
部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認した
ところ、アセトン基準の反応収率は89モル%であった。
【0068】
実施例4
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール21.2g(0.7モル)を入
れた後に、92重量%硫酸46.5g(0.4モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノ
メチルを発生させた溶液にした。その後、オルトキシレン122.4g、オルトクレゾー
ル137.7g(1.3モル)及びドデカンチオール4.4g(0.02モル)を入れ、
セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン34.3g(0
.6モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。ア
セトンの滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、オルトキシレン100.
0g及び脱塩素水100.0gを供給して80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置し
て反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解したことを確認した後、下層の水相を
抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、
下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有
機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られ
た有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの
量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は88モル%であった。
【0069】
実施例5
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにパラキシレン137.4
g、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにパラキシレン100gを加えた以外は
、実施例4と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラ
フィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は9
1モル%であった。
【0070】
実施例6
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにキシレン122.4g、
反応終了後オルトキシレン100gの代わりにキシレン100gを加えた以外は、実施例
4と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで
生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は88モル%
であった。
【0071】
実施例7
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにメシチレン122.2g
、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにメシチレン100gを加えた以外は、実
施例4と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィ
ーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は85モ
ル%であった。
【0072】
実施例8
セパラブルフラスコにオルトキシレン122.4gの代わりにクロロベンゼン65.0
g、反応終了後オルトキシレン100gの代わりにクロロベンゼン100gを加えた以外
は、実施例4と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグ
ラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は
60モル%であった。
【0073】
実施例3~8について、溶媒の種類と反応収率を表3に纏めた。その結果、溶媒の種類
が変わってもビスフェノールCが収率良く得られることが明らかとなった。
【0074】
【0075】
実施例9
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でイソプロピルアルコール26.1g(0.
4モル)を入れた後に、90重量%硫酸58.3g(0.5モル)をゆっくり加えた。そ
の後、トルエン54.5g、オルトクレゾール191.5g(1.8モル)及びドデカン
チオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を40℃にした
。前記滴下ロートにアセトン42.5g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくり
セパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2時間40℃で反応さ
せた。反応終了後、トルエン100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して80℃ま
で昇温した。80℃に到達後、静置して反応中に析出していた物が有機相及び水相に溶解
したことを確認した後、下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸
水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。
下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後
、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラ
フィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は8
4モル%であった。
【0076】
実施例10
イソプロピルアルコール26.1gの代わりに1-オクタノール26.2g(0.2モ
ル)を供給した以外は、実施例9と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、
高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセト
ン基準の反応収率は82モル%であった。
【0077】
実施例11
イソプロピルアルコール26.1gの代わりにエチレングリコール18.4g(0.3
モル)を供給した以外は、実施例9と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し
、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセ
トン基準の反応収率は75モル%であった。
【0078】
実施例3、実施例9~11について、脂肪族アルコールの種類と反応収率を表4に纏め
た。その結果、脂肪族アルコールの種類が変わってもビスフェノールCが収率良く得られ
ることが明らかとなった。
【0079】
【0080】
実施例12
ドデカンチオール5.5gの代わりに3―メルカプトプロピオン酸2.9g(0.01
モル)、イソプロピルアルコール26.1gの代わりにメタノール26.3g(0.8モ
ル)を供給した以外は、実施例9と同様に実施した。得られた有機相の一部を取り出し、
高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセト
ン基準の反応収率は98モル%であった。
【0081】
実施例13
ドデカンチオール5.5gの代わりに3―メルカプトプロピオン酸2.9g(0.01
モル)、イソプロピルアルコール26.1gの代わりにエチレングリコール18.4g(
0.3モル)を供給した以外は、実施例9と同様に実施した。得られた有機相の一部を取
り出し、高速液体クロマトグラフィーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ
、アセトン基準の反応収率は89モル%であった。
【0082】
実施例3、実施例11~13について、脂肪族アルコールの種類、チオールの種類と反
応収率について表5に纏めた。その結果、脂肪族アルコールやチオールの種類が変わって
もビスフェノールCが収率良く得られることが明らかとなった。
【0083】
【0084】
実施例14
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール1.7g(0.1モル)を入れ
た後に、92重量%硫酸33.0g(0.3モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメ
チルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18g、フェノール63.0g(0.7
モル)及びドデカンチオール1.7g(0.05モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の
温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン16.0g(0.3モル)を入れて、3
0分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2
時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0
gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有
機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になった
ことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間
撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速
液体クロマトグラフィーで分析したところ、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プ
ロパン(以下、ビスフェノールAと称する)が生成していることがわかった。その量は、
73.2面積%であった。
【0085】
実施例15
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール8.7g(0.3モル)を入れ
た後に、90重量%硫酸19.4g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメ
チルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18.1g、フェノール63.8g(0
.7モル)及びドデカンチオール1.8g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラスコ
内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにドデカナール44.9g(0.2モル)を入
れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。ドデカナールの滴
下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素
水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後
、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9
以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加
えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取
り出し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ
フェニル)ドデカンが生成していることがわかった。得られた有機相を1リットルのナス
型フラスコに移し、エバポレータを用いて、トルエン、酢酸エチル及びフェノールを留去
した。残液に、ヘプタンとイソプロピルアルコールを供給し、晶出させた。得られたスラ
リー液を、ガラスフィルターを備えた減圧濾過器で固液分離し、白色固体を得た。この白
色固体を500ミリリットルのナス型フラスコに移し、エバポレータを用いて乾燥させ、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン30.5g(0.1モル、収率35モ
ル%)を得た。
【0086】
実施例16
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール8.7g(0.3モル)を入れ
た後に、90重量%硫酸19.4g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメ
チルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18.2g、オルトクレゾール63.8
g(0.6モル)及びドデカンチオール1.8g(0.01モル)を入れ、セパラブルフ
ラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにドデカナール44.9g(0.2モル
)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。ドデカナー
ル滴下終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱
塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。そ
の後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pH
が9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水
を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部
を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモード
でマスナンバー381(M+-1)が観測され、1,1―ビス(4-ヒドロキシ-3-メ
チルフェニル)ドデカンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを
用いて1,1―ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ドデカンの生成量を確認し
たところ、60.7面積%であった。
【0087】
実施例17
温度計、撹拌機及び100ミリリットルを備えたフルジャケット式1リットルのセパラ
ブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26g(0.8モル)を入れた後に、90重
量%硫酸58.5g(0.5モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発生させ
た溶液にした。その後、トルエン60g、オルトクレゾール197.0g(1.8モル)
及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度を
50℃にした。そこにフルオレノン136g(0.8モル)を入れて、30分かけてゆっ
くりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。その後、2時間50℃で反応させた。反応
終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後
、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウ
ム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を
抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水
相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーを測定
したところ、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが生成し
ていることがわかった。その生成量は、85.6面積%であった。
【0088】
実施例18
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(モル)を入れた後
に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチル
を発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール192g(1
.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ
内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにシクロヘキサノン71.8g(0.7モル)
を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。シクロヘキサ
ノンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及
び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した
。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相
pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩
素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の
一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモ
ードでマスナンバー295(M+-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3
-メチルフェニル)シクロヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグ
ラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン
の生成量を確認したところ、70.8面積%であった。
【0089】
実施例19
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入
れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノ
メチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール191
g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフ
ラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにシクロへプタノン42.5g(0.4
モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。シクロ
へプタノンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.
0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き
出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層
の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相
に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有
機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negati
veモードでマスナンバー309(M+-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキ
シ-3-メチルフェニル)シクロヘプタンが生成していることが分かった。高速液体クロ
マトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘ
プタンの生成量を確認したところ、25.9面積%であった。
【0090】
実施例20
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入
れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノ
メチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール191
.5g(1.8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブ
ルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにメチルエチルケトン52.7g(
0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。
メチルエチルケトンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル
100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水
相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和
し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られ
た有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得
られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Ne
gativeモードでマスナンバー269(M+-1)が観測され、2,2-ビス(4-
ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタンが生成していることが分かった。高速液体クロ
マトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタンの
生成量を確認したところ、47.6面積%であった。
【0091】
実施例21
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入
れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノ
メチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン58.5g、オルトクレゾール191
.5g(1,8モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブ
ルフラスコ内の温度を50℃にした。前記滴下ロートにメチルイソブチルケトン73.2
g(0.7モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給し
た。メチルイソブチルケトンの滴下終了後、5時間50℃で反応させた。反応終了後、酢
酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して
下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加
えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後
、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出
した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したとこ
ろ、Negativeモードでマスナンバー297(M+-1)が観測され、2,2-ビ
ス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-メチルペンタンが生成していることが
分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メ
チルフェニル)-4-メチルペンタンの生成量を確認したところ、65.7面積%であっ
た。
【0092】
実施例22
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール26.2g(0.8モル)を入
れた後に、92重量%硫酸58.5g(0.6モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノ
メチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン18g、2,6-キシレノール72g
(0.6モル)及びドデカンチオール1.8g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラ
スコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン14.6g(0.3モル)を入
れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終
了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水1
00.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得
られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上
になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて
10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出
し、高速液体クロマトグラフィーを測定したところ、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3
,5-ジメチルフェニル)プロパンが生成していることを確認した。その2,2-ビス(
4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンの生成量は、41.9面積%であ
った。
【0093】
実施例23
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール5.0g(0.2モル)を入れ
た後に、92重量%硫酸100g(0.9モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチ
ルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54.3g、フェノール152g(1.6
モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の
温度を50℃にした。前記滴下ロートに3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン81g
(0.6モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した
。3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの滴下終了後、2時間50℃で反応させた。
反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。そ
の後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナト
リウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水
相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し
、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計
を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー309(M+-1)が観測さ
れ、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン
が生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4
-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの生成量を確認したと
ころ、62.5面積%であった。
【0094】
実施例24
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール4g(0.1モル)を入れた後
に、85重量%硫酸84g(0.7モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発
生させた溶液にした。その後、トルエン54g、オルトクレゾール151g(1.4モル
)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内の温度
を40℃にした。前記滴下ロートにアセトフェノン70g(0.6モル)を入れて、30
分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトフェノンの滴下終了後
、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100
.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られ
た有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上にな
ったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10
分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、
高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバ
ー317(M+-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフ
ェニル)-1-フェニルエタンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフ
ィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニ
ルエタンの生成量を確認したところ、48.2面積%であった。
【0095】
実施例25
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール18g(0.6モル)を入れた
後に、85重量%硫酸25.8g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチ
ルを発生させた溶液にした。その後、トルエン24g、2-フェニルフェノール75g(
0.4モル)及びドデカンチオール2.4g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラス
コ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン10.5g(0.2モル)を入れ
て、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了
後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水10
0.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得ら
れた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上に
なったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて1
0分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し
、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナン
バー379(M+-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェ
ニル)プロパンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2
,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパンの生成量を確認したとこ
ろ、9.0面積%であった。
【0096】
実施例26
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール9g(0.3モル)を入れた後
に、85重量%硫酸22g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメチルを発
生させた溶液にした。その後、トルエン24g、2-シクロへキシルフェノール50g(
0.3モル)及びドデカンチオール2.4g(0.01モル)を入れ、セパラブルフラス
コ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン9g(0.2モル)を入れて、3
0分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下終了後、2
時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水100.0
gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、得られた有
機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以上になった
ことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加えて10分間
撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り出し、高速
液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマスナンバー3
91(M+-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロへキシルフェ
ニル)プロパンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用いて2
,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロへキシルフェニル)プロパンの生成量を確認し
たところ、22.9面積%であった。
【0097】
実施例27
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール1.1g(0.03モル)を入
れた後に、85重量%硫酸25.8g(0.2モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノ
メチルを発生させた溶液にした。その後、トルエン7.5g、2-ベンジルフェノール5
0g(0.3モル)及びドデカンチオール2.7g(0.01モル)を入れ、セパラブル
フラスコ内の温度を40℃にした。前記滴下ロートにアセトン7.7g(0.1モル)を
入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。アセトンの滴下
終了後、2時間40℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.0g及び脱塩素水
100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き出した。その後、
得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層の水相pHが9以
上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相に脱塩素水を加え
て10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相の一部を取り
出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negativeモードでマス
ナンバー407(M+-1)が観測され、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ベンジル
フェニル)プロパンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグラフィーを用い
て2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ベンジルフェニル)プロパンの生成量を確認した
ところ、60.0面積%であった。
【0098】
実施例28
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール41.6g(1.3モル)を入
れた後に、80重量%硫酸100g(0.8モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメ
チルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54.3g、フェノール130g(1.
4モル)及びドデカンチオール5.5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラスコ内
の温度を30℃にした。前記滴下ロートに2-エチルヘキサナール73g(0.5モル)
を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。2-エチルヘ
キサナールの滴下終了後、2時間30℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル100.
0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相を抜き
出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し、下層
の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた有機相
に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有
機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Negati
veモードでマスナンバー297(M+-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒドロキ
シフェニル)-2-エチルヘキサンが生成していることが分かった。高速液体クロマトグ
ラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサンの生成
量を確認したところ、52.4面積%であった。
【0099】
実施例29
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でメタノール41.6g(1.3モル)を入
れた後に、80重量%硫酸100g(0.8モル)をゆっくり加えることで、硫酸モノメ
チルを発生させた溶液にした。その後、トルエン54.3g、オルトクレゾール150g
(1.4モル)及びドデカンチオール5,5g(0.03モル)を入れ、セパラブルフラ
スコ内の温度を30℃にした。前記滴下ロートに2-エチルヘキサナール73g(0.5
モル)を入れて、30分かけてゆっくりセパラブルフラスコへ滴下して供給した。2-エ
チルヘキサナールの滴下終了後、2時間30℃で反応させた。反応終了後、酢酸エチル1
00.0g及び脱塩素水100.0gを供給して混合した。その後、静置して下層の水相
を抜き出した。その後、得られた有機相へ飽和の炭酸水素ナトリウム溶液を加えて中和し
、下層の水相pHが9以上になったことを確認した。下層の水相を抜出した後、得られた
有機相に脱塩素水を加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得ら
れた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフ質量計を測定したところ、Neg
ativeモードでマスナンバー325(M+-1)が観測され、1,1-ビス(4-ヒ
ドロキシ-3-メチルフェニル)-2-エチルヘキサンが生成していることが分かった。
高速液体クロマトグラフィーを用いて1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニ
ル)-2-エチルヘキサンの生成量を確認したところ、67.4面積%であった。実施例
13~29について、芳香族アルコール、ケトン又はアルデヒド及び合成したビスフェノ
ールについて表6に纏めた。その結果、硫酸モノアルキルを触媒として用いることで、様
々なビスフェノールが合成できることが明らかとなった。
【0100】
【0101】
【0102】
実施例30
温度計、撹拌機及び100ミリリットルの滴下ロートを備えたフルジャケット式1リッ
トルのセパラブルフラスコのジャケットに、-10℃の冷媒を流した。そこへ窒素雰囲気
下で、トルエン240g、メタノール9g、及びオルトクレゾール172.5g(1.6
0モル)を入れ、内温を―5℃まで冷却した。その後、98重量%硫酸67.5gを加え
た。該滴下ロートに、ドデカンチオール4.1g及びアセトン45.8g(0.79モル
)の混合物を入れた。該セパラブルフラスコの内温が―5℃となったところで、該混合物
を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下後、10℃で1時間撹拌した後、更に45℃に昇
温して45℃のまま1時間撹拌した。得られた反応液に、28重量%の水酸化ナトリウム
水溶液を128g加えた。80℃に昇温しながら、pHが5-8の間となるように28重
量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。内温が80℃に到達後、水相を抜出し、飽和重
曹水で洗浄及び水洗した。得られた有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィ
ーで生成したビスフェノールCの量を確認したところ、アセトン基準の反応収率は80モ
ル%であった。
【0103】
実施例31
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例1で得られた
ビスフェノールC100g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.5g(0.4モル)
及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約
100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内
部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶
解した。撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェ
ニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応
槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反
応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、
エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40
分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出す
るフェノールを系外に除去した。その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶
対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の
撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。次いで、反応槽を窒素により絶対圧力
で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底か
らポリカーボネートをストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得
た。その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状の
ポリカーボネート樹脂を得た。
【0104】
該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は25000であった。またペレットY
Iは、7.6であった。