(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】調整アセンブリ及び調整アセンブリを備える基板露光システム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220209BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220209BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 504
H01L21/30 541W
H01L21/30 541Z
H01L21/68 K
(21)【出願番号】P 2019535270
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2017082892
(87)【国際公開番号】W WO2018122003
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-08-27
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ペイジスター,ジェリー ヨハネス マルティヌス
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-200002(JP,A)
【文献】特開2004-085778(JP,A)
【文献】国際公開第2006/009254(WO,A1)
【文献】特開2009-260138(JP,A)
【文献】特表2014-530478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して調整するための機械的調整アセンブリであって、
前記機械的調整アセンブリは、第1のベローズと、第2のベローズと、導管と、を備え、前記導管は水圧系を形成するため前記第1のベローズ及び前記第2のベローズを相互接続し、
前記第1のベローズは前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置され、前記第2のベローズは前記第1のベローズから離間して配置され、前記第1のベローズは前記第2のベローズによって作動されるように配置されて
おり、
前記第2の部分は、フレームに接続されている、基板を担持するための基板サポートモジュールであり、前記第1の部分は、前記フレームによって担持され、前記基板サポートモジュールによって担持された前記基板を露光するため配置された露光装置である、機械的調整アセンブリ。
【請求項2】
前記第2のベローズには、前記第1のベローズを作動させるため前記第2のベローズを収縮又は膨張させるように構成された駆動ユニットが備えられる、請求項1に記載の機械的調整アセンブリ。
【請求項3】
前記システムは、前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対する前記第1の部分の位置、又は前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対する前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分の位置の変化を測定するための少なくとも1つのセンサを備える、請求項1又は2に記載の機械的調整アセンブリ。
【請求項4】
機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して調整するための方法であって、
第1のベローズと、第2のベローズと、導管と、を備える機械的調整アセンブリを提供することであって、前記導管は水圧系を形成するため前記第1のベローズ及び前記第2のベローズを相互接続する、ことと、
前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分と前記第2の部分との間に前記第1のベローズを配置することと、
前記第1のベローズから離間して前記第2のベローズを配置することと、
前記第2のベローズを作動させ、これによって、前記機械的に連結されたコンポーネントの前記第1の部分の前記位置を前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対して調整するように、前記第1のベローズの作動を引き起こすことと、
を含
み、
前記第2の部分は、フレームに接続されている、基板を担持するための基板サポートモジュールであり、前記第1の部分は、前記フレームによって担持され、前記基板サポートモジュールによって担持された前記基板を露光するため配置された露光装置である、方法。
【請求項5】
前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対する前記第1の部分の位置、又は前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対する前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分の位置の変化を測定する少なくとも1つのセンサからの信号に基づいて、前記第2のベローズの前記作動を制御することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フレームと、
前記フレームに接続されている、基板を担持するための基板サポートモジュールと、
前記フレームによって担持され、前記基板サポートモジュールによって担持された前記基板を露光するため配置された露光装置と、
前記基板サポートモジュールに対する前記露光装置の位置を調整するための調整アセンブリであって、前記調整アセンブリは水圧アクチュエータと、水圧ジェネレータと、導管と、を備え、前記導管は水圧系を形成するため前記水圧アクチュエータ及び前記水圧ジェネレータを相互接続する、調整アセンブリと、
を備え、前記露光装置、前記フレーム、前記調整アセンブリ、及び前記基板サポートモジュールは、機械的に連結された一連のコンポーネントの部分として配置され、前記機械的に連結された一連のコンポーネントは、少なくとも前記露光装置を含む第1の部分と少なくとも前記基板サポートモジュールを含む第2の部分とを含み、前記水圧アクチュエータは前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置されている、基板露光システム。
【請求項7】
前記水圧アクチュエータは第1のベローズを含む、請求項6に記載の基板露光システム。
【請求項8】
前記水圧ジェネレータは第2のベローズを含み、
前記駆動ユニットは、前記第1のベローズを作動させるため前記第2のベローズを収縮又は膨張させるように構成されている、請求項6又は7に記載の基板露光システム。
【請求項9】
前記基板露光システムは、前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対する前記第1の部分の位置、又は前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分に対する前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分の位置の変化を測定するための少なくとも1つのセンサを備える、請求項6から8のいずれか一項に記載の基板露光システム。
【請求項10】
前記センサは、前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分の一部であるフレームセグメントに対する前記露光装置の位置、又は前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第2の部分の一部であるフレームセグメントに対する前記露光装置の位置の変化を測定するため構成されている、請求項9に記載の基板露光システム。
【請求項11】
前記露光装置は少なくとも1つのばね要素によって前記フレームに移動可能に接続され、前記機械的に連結された一連のコンポーネントの前記第1の部分は前記ばね要素を含み、
前記水圧アクチュエータは前記フレームと前記ばね要素との間に配置されている、請求項6から10のいずれか一項に記載の基板露光システム。
【請求項12】
水圧アクチュエータは、前記基板サポートモジュールに対して前記露光装置を移動させるために構成されている、請求項6から11のいずれか一項に記載の基板露光システム。
【請求項13】
筐体を更に備え、前記露光装置及び前記基板サポートモジュールは少なくとも部分的に前記筐体の内部に配置され、前記水圧アクチュエータは前記筐体の内部に配置されると共に前記水圧ジェネレータは前記筐体の外部に配置されている、請求項6から12のいずれか一項に記載の基板露光システム。
【請求項14】
前記筐体は真空チャンバとして機能するように構成され、前記筐体は、使用時に前記筐体内部で真空又は減圧を生成するための真空ポンプに結合される、請求項13に記載の基板露光システム。
【請求項15】
前記露光装置は、荷電粒子ビーム光学コラムを含む、請求項6から14のいずれか一項に記載の基板露光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的調整アセンブリ及びそれによって調整されるシステムに関する。具体的には、機械的調整アセンブリは、機械的に連結された一連のコンポーネントを含むシステムにおいて使用され、具体的には、限定ではないが露光システムのような環境に接近するのが難しいコンポーネントを有するシステム、より具体的には、フレームと、フレームに接続された第1のモジュールと、フレームによって担持されるか又はフレームに接続された第2のモジュールと、を含むシステム又は機械的構成において使用される。本発明は更に、第2のモジュールに対する第1のモジュールの位置及び/又は向きを調整するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィシステムは、シリコンウェーハ等のターゲットにパターンを投影するように構成されている。最新のリソグラフィシステムは、ターゲットにパターンを投影するため、特に光のような、より具体的にはUV光のような電磁放射によって、又は、特に電子のような荷電粒子によって、ターゲットを露光する。
【0003】
検査システムは、光学顕微鏡等において電磁放射を用いて、又は電子顕微鏡において電子のような荷電粒子を用いてターゲット又はサンプルを露光し、更に、ターゲットから情報を取得するため露光放射とターゲットとの相互作用から得られた放射又は荷電粒子を分析するように構成されている。
【0004】
WO2013/034753号は、リソグラフィシステム又は検査装置について、特に荷電粒子マルチビームリソグラフィシステムについて記載している。ビームを生成及び投影するためのリソグラフィ又は検査システムのコンポーネントは、典型的にはコラムに配置され、本明細書において「露光装置」と称される。WO2013/034753号に記載されているシステムは、露光装置を保持するためのサポートフレーム及びサポート要素を備えている。サポート要素は、サポート要素を振動から少なくとも部分的に絶縁するため、少なくとも1つのばね要素によってサポートフレームに接続されている。
【0005】
この既知のシステムの欠点は、使用中及び経時的に、とりわけばね要素にクリープが発生する可能性があり、これによってサポートフレームに対するサポート要素の位置が設定位置からずれる(deviation)ことである。この結果、露光対象及び/又は検査対象のターゲットに対するサポート要素の位置、及びサポート要素によって保持される露光装置の位置も、システム内の最適な位置からずれる恐れがある。これはシステムの性能に対して、特にターゲットの露光に対して悪影響を及ぼす。
【0006】
別の露光装置がUS2009/0086178によって既知である。このシステムは、光源と、レチクルを照明する照明光学系とを備えている。円筒形の投影光学系が、レチクルの像をウェーハステージ上の基板に投影する。投影光学系は、3つのサスペンションサポート機構によってフレームに接続されている。更に、フレームと投影光学系との間には3つの駆動機構が設けられている。各駆動機構は、投影光学系を円筒の半径方向に駆動するボイスコイルモータと、投影光学系を光軸の方向(Z軸方向)に駆動するボイスコイルモータと、を含む。3つの駆動機構によって、投影光学系を6自由度の方向に移動させることができる。
【0007】
この既知のシステムの欠点は、露光装置を移動させるアクチュエータが非接触モータとして含まれるので、担持できる負荷が限定されることである。
【0008】
基板露光システムに伴う別の問題は、振動が基板露光に与える負の影響である。アクティブ制振によってそのような問題に対処するシステムが、例えば2008/0218720A1号及びUS2008/0013058A1号において既知である。
【0009】
US2008/0218720A1号は、光源から基板に光を投影するよう構成された露光装置について記載している。露光装置は、光学要素と、この光学要素を移動させるよう構成された駆動ユニットと、を含む投影光学系を含む。装置は、収差又は像面の倍率変化を補正するため光学要素を駆動することに伴う反力による振動を低減させるように構成されている。投影光学系は、ガススプリングによって投影光学系を支持するように構成されたサポート機構と、駆動ユニットのための駆動信号を発生させるように構成された制御ユニットと、駆動信号に従って、駆動ユニットから光学要素への作用の力に伴う反力の方向と反対方向の力を投影光学系に加えるように構成されたアクチュエータと、を更に含む。
【0010】
US2008/0013058A1号は、ガスチャンバが設けられた空気ばね装置について記載している。ガスチャンバは、既定圧力のガスが充填され、ガスチャンバの容量変化による温度変化を調整するための調整装置が備えられている。空気ばね装置は、ガス圧によって物体を支持するための、例えば露光装置内に基板ステージを支持するための防振装置内に含めることができる。
【0011】
一般的に言うと基板露光システム、具体的に言うとリソグラフィシステム又は顕微鏡システムの更に別の欠点は、コンパクトな及び/又は閉鎖された構成内に多数のコンポーネントが配置された極めて複雑なシステムであることである。このようなシステムでは、特にシステムの外部から容易に到達できないコンポーネントの位置を調整することは難しい。
【0012】
本発明の目的は、これらの欠点のうち1つ以上の影響を克服するかもしくは少なくとも最小限に抑えること、又は、少なくとも、代替的な調整アセンブリを備えた基板露光デバイス及び/又は基板露光デバイスのコンポーネントの位置を調整するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様に従って、本発明は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して調整するための機械的調整アセンブリを提供する。
機械的調整アセンブリは、第1のベローズと、第2のベローズと、導管と、を備え、導管は水圧系を形成するため第1のベローズ及び第2のベローズを相互接続し、
第1のベローズは機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分と第2の部分との間に配置され、第2のベローズは第1のベローズから離間して配置され、第1のベローズは第2のベローズによって作動されるように配置されている。
【0014】
第1のモジュール及び第2のモジュールの位置を相対的に調整するため、第1のベローズを第2のベローズによって作動及び/又は駆動することができる。第1及び第2のベローズは相互に離間して配置されるので、第1のベローズはシステム内の、例えばシステムの外部からアクセスするのが難しい場所に配置することができ、システムの外部に配置できる第2のベローズを用いて、アクセスするのが難しいその場所における位置調整を可能とする。
【0015】
一実施形態において、第2のベローズには、第1のベローズを作動させるため第2のベローズを収縮又は膨張させるように構成された駆動ユニットが備えられている。駆動ユニットは好ましくは、ステッパモータ等のモータを備えている。あるいは第2のベローズは、手動で動作される構成によって収縮及び/又は膨張させてもよい。
【0016】
一実施形態において、システムは、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の位置、又は機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置の変化を測定するための少なくとも1つのセンサを備える。これによって、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1、第2の部分の相対位置を確認することが可能となる。駆動ユニットに接続された制御ユニットにセンサ信号を送信することによって、第1及び第2の部分の相対位置を自動的に調整できる。
【0017】
機械的調整アセンブリは基板露光システムにおいて使用することができる。従って一実施形態では、機械的に連結された一連のコンポーネントは、露光装置と、フレームと、機械的調整アセンブリと、基板サポートモジュールと、を含む。好ましくは、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分は少なくとも露光装置を含み、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分は少なくとも基板サポートモジュールを含む。
【0018】
第2の態様に従って、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して調整するための方法が提供される。この方法は、
第1のベローズと、第2のベローズと、導管と、を備える機械的調整アセンブリを提供することであって、導管は水圧系を形成するため第1のベローズ及び第2のベローズを相互接続する、ことと、
機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分と第2の部分との間に第1のベローズを配置することと、
第1のベローズから離間して第2のベローズを配置することと、
第2のベローズを作動させ、これによって、機械的に連結されたコンポーネントの第1の部分の位置を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して調整するように、第1のベローズの作動を引き起こすことと、
を含む。
【0019】
第2の態様の方法は、第1の態様に従った機械的調整アセンブリを用いて実行することができる。
【0020】
一実施形態において、方法は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の位置、又は機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置の変化を測定する少なくとも1つのセンサからの信号に基づいて、第2のベローズの作動を制御することを含む。
【0021】
第3の態様に従って、本発明は基板露光システムを提供する。この基板露光システムは、
フレームと、
フレームに接続されている、基板を担持するための基板サポートモジュールと、
フレームに接続され、基板サポートモジュールによって担持された基板を露光するため配置された露光装置と、
基板サポートモジュールに対する露光装置の位置を調整するための調整アセンブリであって、調整アセンブリは水圧アクチュエータと、水圧ジェネレータ(hydraulic generator)と、導管と、を備え、導管は水圧系を形成するため水圧アクチュエータ及び水圧ジェネレータを相互接続する、調整アセンブリと、
を備え、露光装置、フレーム、調整アセンブリ、及び基板サポートモジュールは、機械的に連結された一連のコンポーネントの部分として配置され、機械的に連結された一連のコンポーネントは、少なくとも露光装置を含む第1の部分と少なくとも基板サポートモジュールを含む第2の部分とを含み、水圧アクチュエータは機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分と第2の部分との間に配置されている。
【0022】
第1の態様の機械的調整アセンブリを、第3の態様の基板露光システムにおいて使用することができる。第1の態様の技術的効果及び利点を第3の態様に適用することができ、その逆も同様である。
【0023】
以下に記載する実施形態は、第1の態様及び/又は第2の態様に適用することも可能である。
【0024】
本発明の基板露光システムにおいて、露光装置、フレーム、調整アセンブリ、及び基板サポートモジュールは、機械的に連結された一連のコンポーネントの部分として配置されている。この相互接続された構成において、水圧アクチュエータは露光装置と基板サポートモジュールとの間に配置されている。水圧アクチュエータは、露光装置と基板サポートモジュールの位置を相対的に調整するため水圧ジェネレータによって作動されるように配置されている。少なくとも使用時に、水圧アクチュエータ、導管、及び水圧ジェネレータは、好ましくは水である作動液が充填されて、水圧系を形成する。
【0025】
本発明の基板露光システムは、水圧アクチュエータによってシステム内のコンポーネントの位置を調整することを可能とする水圧系を備えている。この水圧アクチュエータは、水圧ジェネレータによって遠隔で制御及び/又は作動される。水圧ジェネレータは、好ましくはシステムの外部から容易にアクセスできるように配置されている。従って本発明の調整アセンブリは、例えば露光装置及び/又は基板サポートモジュールのような基板露光システム内のコンポーネントの位置の調整を容易にし、システム内へのアクセスを必要とすることなく基板露光システム内部のコンポーネントの位置を調整することを可能とする。
【0026】
これまで、リソグラフィ又は顕微鏡システムのような基板露光システムにおいて、特にシステム内に配置されたコンポーネント等のコンポーネントの位置を調整するために水圧系は使用されていなかった。しかしながら本発明者は、例えば、通常は比較的ゆっくりしたプロセスであるクリープに起因した、位置のずれ又はドリフト及び/又はミスアライメントを調整するために、本発明の基板露光システムにおける水圧系が極めて適していることを理解した。
【0027】
更に、本発明に従った調整アセンブリが提供する水圧系によって、調整アセンブリが大きい負荷を担持することが可能となり、露光装置及び/又は基板サポートモジュールに剛性のサポートを与えることができる。
【0028】
更に、本発明の機械的調整アセンブリ及び基板露光システムにおける水圧系は、基板露光システムのような適用されるシステム内に電気信号及び/又は電界を導入することなく調整アセンブリの遠隔制御及び/又は作動を行う。これは、電子ビームリソグラフィシステムや電子顕微鏡のような荷電粒子露光装置を含む基板露光システムにとって極めて有利である。電気信号を伝達するリードによって電界又は磁界が発生すると、そのような基板露光システム内で荷電粒子の軌道を妨害する恐れがあるからである。このような妨害は、荷電粒子露光装置を含むそのような基板露光システムの性能に対して、具体的にはターゲットの露光に対して、悪影響を及ぼす。本発明に従った基板露光システムでは、この悪影響は、基板サポートモジュールに対する露光装置の位置を調整するために水圧系を用いることによって少なくとも部分的に回避される。
【0029】
一実施形態において、水圧アクチュエータは第1のベローズを含む。水圧アクチュエータは例えば水圧シリンダも含み得るが、ベローズ内には作動液が良好に閉じ込められると共に、ベローズは水圧シリンダのように外側へ延出する部分がないため作動液が漏れる可能性が低いので、第1のベローズを使用することが有利である。
【0030】
一実施形態において、水圧ジェネレータは第2のベローズを含む。水圧ジェネレータは例えば水圧ポンプを含み得るが、ベローズ内には作動液が良好に閉じ込められると共に漏れの可能性が低いので、第2のベローズを使用することが有利である。
【0031】
第1及び/又は第2のベローズをそれぞれ水圧アクチュエータ及び水圧ジェネレータとして使用することで、第1及び第2のベローズと導管の内部体積によって与えられる実質的に一定の体積内に作動液が閉じ込められている単純な水圧系を提供する。第2のベローズを収縮させた場合、これは、第1のベローズを膨張させる効果を有する流れを導管内に誘発する。同様に、第2のベローズを膨張させると、第1のベローズを収縮させる反対の流れを導管内に誘発する。
【0032】
一実施形態において、第2のベローズには、好ましくは機械的リニア駆動ユニットである駆動ユニットが備えられている。駆動ユニットは、第1のベローズを作動させるため第2のベローズを収縮又は膨張させるように構成されている。機械的リニアアクチュエータは、第2のベローズを収縮及び膨張させるように、これによって第1のベローズの膨張及び収縮を遠隔で制御するように構成されている。
【0033】
一実施形態において、機械的リニアアクチュエータは、調整ねじのような手動で動作可能なアクチュエータを含む。代替的な実施形態において、駆動ユニットは、好ましくはステッパモータであるモータを含む。モータは、第1のベローズを作動させるため第2のベローズを収縮及び/又は膨張させるように構成されている。これによって、例えば制御システムを用いて、基板サポートモジュールに対する露光装置の位置を自動的に調整できる。好ましくは、制御システムは、フレームに対する露光装置又はサポート要素の位置を測定するためのセンサに接続されている。これによって、露光装置の位置のずれを測定することと、測定したずれに基づいて基板サポートモジュールに対する露光装置の位置の調整を制御することが可能となる。
【0034】
一実施形態において、システムは、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の位置を測定するため、又は機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分の位置の変化を測定するための少なくとも1つのセンサを備える。これは、センサが、機械的に連結されたコンポーネントの第2の部分に対する機械的に連結されたコンポーネントの第1の部分の相対位置又は位置の変化を測定するように構成されていること、及び/又は、機械的に連結されたコンポーネントの第1の部分に対する機械的に連結されたコンポーネントの第2の部分の相対位置又は位置の変化を測定するように構成されていることを包含すると解釈するべきである。
【0035】
一実施形態において、センサは、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の垂直位置を測定するため、又は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する露光装置の垂直位置の変化を測定するために構成されている。この実施形態は、例えば露光装置を含む機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分と機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分との間にばね要素が可撓性接続を与えるシステムに、特に適している。このような可撓性接続は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する、具体的には機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分の一部であるフレームセグメントに対する露光装置の実質的に垂直な方向における可撓性を与える。実質的に垂直な方向の可撓性は、好ましくは、露光システムが配置されている床から伝達する振動を減衰させるように構成されている。この振動に起因した基板サポートモジュールに対する露光装置の位置の比較的迅速な変化は、基板サポートモジュール内のアクチュエータによって打ち消すことができる。このような発生し得る振動に加えて、ばね要素は、少なくとも露光装置の重量による実質的に垂直方向の力を常に受けている。この垂直方向の力は、通例ゆっくりしたプロセスであるクリープをばね要素に誘発する可能性がある。クリープのために生じる露光装置と基板サポートモジュールとの間の距離のずれ、特に垂直方向の位置のずれを、センサによって測定する。位置のある程度のずれが測定された場合、フレームに対して露光装置を移動させて位置のずれを適切に打ち消すため、フレームとばね要素との間に配置された水圧アクチュエータを作動させることができる。従って、本発明の調整アセンブリ、特にその水圧系は典型的に、クリープ等のゆっくりしたプロセスによって生じる基板サポートモジュールに対する露光装置の位置のずれを補償するのに適している。
【0036】
一実施形態において、センサは静電容量センサである。静電容量センサによって、フレームに対する、従ってシステムの残り部分に対する、特に基板サポートモジュールに対するサポート要素の位置を正確に測定することを可能としながら、コンパクトで経済的な選択肢を与えることができる。静電容量センサによって、サポート要素とフレームとの間の距離を正確に測定できる。一実施形態において、システムは、サポート要素とフレームとの間の距離並びにフレームに対するサポート要素の傾き及び/又は傾斜を測定するための配置に位置決めされた複数の容量性センサを備えている。
【0037】
一実施形態において、露光装置は少なくとも1つのばね要素によってフレームに移動可能に接続されている。一実施形態において、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分はばね要素を含む。
【0038】
好適な実施形態において、水圧アクチュエータはフレームとばね要素との間に配置され、好ましくは、フレームに対して露光装置を移動させるように配置されている。従って、水圧アクチュエータは、フレームに対する露光装置の設定位置及び/又は既定位置からのずれを打ち消すように配置されている。このずれは典型的にばね要素のクリープによって誘発される。
【0039】
別の好適な実施形態において、水圧アクチュエータはフレームと基板サポートモジュールとの間に配置されている。この実施形態において、水圧アクチュエータは、フレームに対して基板サポートモジュールを移動させて、基板サポートモジュールに対する露光装置の相対位置のずれを打ち消すように配置されている。
【0040】
一実施形態において、水圧アクチュエータは、好ましくは内部エンドストップであるエンドストップを含む。一実施形態では、第1のベローズがこのエンドストップを含む。このエンドストップは、水圧アクチュエータの、具体的には第1のベローズの移動を制限する。好ましくは、エンドストップは、露光装置と基板サポートモジュールとの間の接触を実質的に防止するように配置されている。従ってエンドストップは、基板サポートモジュールの方への露光装置の移動、又はその逆の移動を制限するように配置されている。水圧アクチュエータがエンドストップに到達した場合、露光装置及び基板サポートモジュールは相互に離間されたままであり、従って相互に接触しない。これに加えて又はこの代わりに、エンドストップは、調整アセンブリの水圧系が排水された場合に固定のサポートを与えるように提供されている。この場合、エンドストップは、水圧系が空になったらサポート要素を点検位置(service position)に配置することで、例えば輸送中に、サポートフレーム、露光装置、及び/又は第1のベローズの損傷を防止する。
【0041】
一実施形態において、基板露光システムは筐体を更に備え、露光装置及び基板サポートモジュールは少なくとも部分的に筐体の内部に配置され、水圧アクチュエータは筐体の内部に配置されると共に水圧ジェネレータは筐体の外部に配置されている。
【0042】
一実施形態において、筐体は壁を含み、導管はこの壁を貫通する。これによって水圧アクチュエータをチャンバ内に、水圧ジェネレータをチャンバ外に配置することを可能とする。水圧アクチュエータ及び水圧ジェネレータを接続する導管は、水圧系を形成するために壁を介して延出している。
【0043】
一実施形態において、筐体は真空チャンバとして機能するように構成され、筐体は、使用時に筐体内部で真空又は減圧を生成するための真空ポンプに結合され、好ましくは、少なくとも水圧アクチュエータは真空対応(vacuum compatible)である。真空チャンバによって、チャンバ内部に配置された露光装置の少なくとも一部のための真空環境を確立することができ、更に、電界及び/又は磁界のような外部の影響から遮蔽することができる。基板露光システムが荷電粒子リソグラフィシステム又はEUVリソグラフィシステムを含む場合、真空チャンバは、基板の露光に適した環境を提供する。一実施形態において、好ましくは第1のベローズである水圧アクチュエータは真空対応である。
【0044】
スループット増大のため、すなわちリソグラフィシステムで1時間当たりに露光されるウェーハ数を増やすため、筐体内で利用できる空間を効率的に使用することが要求されている。これは例えば、システムの大きさを縮小して、より多くのシステムを工業環境における特定の面積内に配置可能とするためである。このように筐体内で利用できる空間を効率的に使用する結果として、筐体内に収容された露光装置に対するアクセスは抑制され限定される。本発明に従った調整アセンブリは、筐体内の水圧アクチュエータによって基板サポートモジュールに対する露光装置の位置を調整することができるが、調整アセンブリの作動は筐体外の水圧ジェネレータによって実行される。
【0045】
一実施形態において、フレームは、下壁、側壁、及び上壁を備え、基板サポートモジュールは下壁の上に配置され、露光装置は、側壁のうち1つ以上又は上壁に接続されている。好ましくは、フレームの側壁は少なくとも部分的に露光装置の周りに配置されている。好ましくは、フレームの下壁、側壁、及び上壁は、ボックス又はボックスの一部を形成するように配置されている。下壁、側壁、及び上壁を備えたフレームは、特にボックス又はボックスの一部を形成するように配置されている場合、実質的に剛性の構成を提供できる。これらの壁が実質的に矩形を形成するように配置されている場合、特にボックスの様々な壁の角度配置とそれらの壁の相互接続によって、フレームの剛性は向上する。これらの壁を、露光装置及び/又は基板サポートモジュールを支持するためのフレームの少なくとも一部として使用することができる。このため、ボックスの少なくとも一部は、機械的に連結された一連のコンポーネントの一部である。
【0046】
好ましくは、ばね要素は、ボックス又はボックス形フレームの内部に、具体的には露光装置とボックスの壁との間に配置されている。露光装置及び基板サポートモジュールは、好ましくはボックスの内部に配置されている。
【0047】
一実施形態において、導管は、ボックス又はボックス形フレームの下壁、側壁、及び上壁のうち1つを貫通する。これによって水圧アクチュエータをボックス内に、水圧ジェネレータをボックス外に配置することができる。
【0048】
一実施形態において、ボックス又はボックス形フレームは筐体内に配置され、ボックスの下壁、側壁、及び上壁のうち少なくとも1つに貫通開口アレイを設けることができる。貫通開口は、筐体が真空チャンバとして機能するように構成されている場合は特に適切である。貫通開口は、ボックスの内部からボックスの外部への流路を提供するように配置されている。筐体が真空ポンプに結合され、真空ポンプが筐体内に真空圧を生成するため活性化された場合、ボックスの内部からボックスの外部への流路によってボックス内部に真空圧を生成することができる。
【0049】
一実施形態において、下壁、側壁、及び上壁のうち少なくとも1つには遮蔽層が設けられ、この遮蔽層は好ましくはμ金属(μ-metal)層を含む。遮蔽層は、フレーム内部の空間を、静磁界及び動磁界の双方の外部磁界から少なくとも部分的に遮蔽するように構成されている。この実施形態は、基板を露光するため荷電粒子を用いる露光装置では特に有用である。
【0050】
一実施形態において、露光装置は閉鎖部(enclosure)内に配置され、閉鎖部はフレームに対して移動可能に接続されている。閉鎖部は、好ましくは露光装置を実質的に取り囲む。一実施形態において、閉鎖部はばね要素に接続されている。
【0051】
一実施形態において、閉鎖部は筐体内に配置され、閉鎖部は貫通開口アレイが設けられた少なくとも1つの壁を含む。別の実施形態において、閉鎖部はボックス内に配置されている。貫通開口は、上述の記載と同様、閉鎖部の内部から閉鎖部の外部への流路を与えるように配置されている。
【0052】
一実施形態において、閉鎖部には遮蔽層が設けられ、この遮蔽層は好ましくはμ金属層を含み、上述した遮蔽層と同様に機能する。
【0053】
一実施形態において、基板露光システムは3つの調整アセンブリを備えている。これによって、機械的に連結されたコンポーネントの第1及び第2の部分の相対的な位置及び/又は相対的な向きを調整することができる。一実施形態において、3つの調整アセンブリは、露光装置及び/又は基板サポートモジュールを中心とした三角形又は三角形構成を形成するように配置されている。一実施形態において、3つの調整アセンブリは、露光装置及び/又は基板サポートモジュールに接続されている及び/又は露光装置及び/又は基板サポートモジュールを(部分的に)支持している。これによって、露光装置及び基板サポートモジュールの位置及び/又は向きを相互に調整するための3自由度が得られる。3つの調整アセンブリの各々が、第1のベローズによって実質的に垂直な方向の変位を与えるように構成されている場合、3つの調整アセンブリは、垂直Z方向、水平X軸を中心とした傾き、及びY軸を中心とした傾きを調整し、3自由度を与える。
【0054】
一実施形態において、システムはリソグラフィシステムであり、露光装置はリソグラフィシステムの光学コラムを含む。
【0055】
一実施形態において、露光装置は荷電粒子ビーム光学コラムを含む。一実施形態において、露光装置はマルチビーム荷電粒子光学コラムを含む。一実施形態において、露光装置はマルチビーム荷電粒子リソグラフィシステム又は検査装置を含む。
【0056】
第4の態様に従って、本発明は、上述した基板露光システムにおいて基板サポートモジュールに対する露光装置の位置を調整するための方法を提供する。この方法は、
機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の相対位置の変化を与える水圧アクチュエータを作動させるため水圧ジェネレータを駆動するステップを含む。
【0057】
一実施形態において、この方法は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の位置を測定するか、又は機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対する第1の部分の位置の変化を測定するステップを更に含む。
【0058】
一実施形態において、この方法は、
測定された位置又は位置の変化に従って制御信号を発生させるステップと、
制御信号に従って水圧ジェネレータを駆動するステップと、
を更に含む。
【0059】
様々な態様、様々な態様の実施形態、及び上述した特徴は、組み合わせることができる。
【0060】
本明細書に記載され図示されている様々な態様及び特徴は、可能であれば個別に適用することができる。これらの個別の態様、特に、添付の従属クレームに記載されている態様及び特徴は、分割特許出願の主題となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明について、添付図面に示されている例示的な実施形態に基づいて説明する。
【0062】
【
図1】本発明に従った基板露光システムの第1の例を概略的に示す。
【
図2】本発明に従った基板露光システムの第2の例を概略的に示す。
【
図3】本発明に従った水圧系の一例を概略的に示す。
【
図4A】マルチビーム荷電粒子ビームリソグラフィシステムを提供するため、
図1又は
図2の基板露光システムにおいて使用される露光装置の一例を概略的に示す。
【
図4B】光学リソグラフィシステムを提供するため、
図1又は
図2の基板露光システムにおいて使用される露光装置の一例を概略的に示す。
【
図4C】荷電粒子ビーム顕微鏡システムを提供するため、
図1又は
図2の基板露光システムにおいて使用される露光装置の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明に従った基板露光システム1の第1の実施形態を概略的に示す。垂直方向はZ方向に相当し、水平方向はY方向に相当する。X方向はY方向及びZ方向の双方に対して垂直であり、紙面内及び紙面外へ向かう方向に延出している。
【0064】
基板露光システム1は、フレーム2と、基板5を担持するための基板サポートモジュール3と、半導体ウェーハ等の基板5に電磁放射又は荷電粒子の1又は複数のビームを投影するための露光装置4と、を備えている。
【0065】
基板露光システム1は、露光装置4及び基板サポートモジュール3を実質的に取り囲む筐体11を備えている。露光装置4が、UV、深UV(DUV)、極端UV(EUV)、X線ビーム、又は荷電粒子ビームを使用するために構成されている場合、筐体11は真空チャンバとして機能するよう構成され、使用時に筐体11は、筐体11の内部に真空又は減圧を生成するための真空ポンプ6に結合される。
【0066】
筐体11の内部にフレーム2が配置されている。図示されている実施形態では、フレーム2及び筐体11は共通の下壁12を有する。フレーム2は更に、側壁22、後壁22b、及び上壁23を含む。フレーム2は2つの側壁22及び1つの後壁22bを含み、これらは下側が共通の下壁12に接続され、上側が上壁23に接続されている。共通の下壁、2つの側壁22、後壁22b、及び上壁23は相互に接続されて、好ましくは矩形のボックス形フレーム2であるボックス形フレーム2を提供する。あるいは、側壁22を相互に離間して配置すること、及び/又はフレームを壁の代わりにロッド及び/又は棒(beam)で形成された構造によって提供することも可能である。
【0067】
側壁22及び上壁23には、ボックス形フレーム2の内側と外側との間の流路を可能とする貫通孔24が設けられ、筐体11の内部全体にわたって真空又は減圧を生成及び維持する。
【0068】
基板サポートモジュール3は共通の下壁12上に配置されている。基板サポートモジュール3は、2つのXステージベース31を備えたXYステージを含む。各Xステージベース31はXステージ往復台32を担持している。Xステージ往復台32は、このXステージ往復台32をXステージベース31に沿って駆動するための各アクチュエータA1、A2に接続されている。Xステージ往復台32の上に、Xステージ往復台32の間の空間に延出するYビーム33が配置されている。Yビーム33の上にYビーム往復台34が配置されている。Yビーム往復台34は、このYビーム往復台34をYビームに沿って駆動するためのアクチュエータ(図示せず)を含む。Yビーム往復台34の上に、基板5を担持するチャック36をX方向、Y方向、及び/又はZ方向、並びに1つ以上の回転方向Rz、Rx、Ryに移動させるための位置決めデバイス35が配置されている。位置決めデバイス35は典型的に電気モータを含む。
【0069】
図1に示されているように、ボックス形フレーム2の側壁22及び後壁22bには、各壁22、22bに堅固に接続されたブラケット25が設けられている。
図1に示す正面側から見られるように、ボックス形フレーム2には、
図1に示す左側と右側の壁22に1つずつと後壁22bに1つ、計3つのブラケット25が設けられている。
【0070】
ブラケット25の各々の上に、第1のサポート部材26を支持するための第1のベローズ71が配置されている。第1のサポート部材26は、ばね要素81を介して第2のサポート部材27に接続されている。更に、第1及び第2のサポート部材間には制振要素82が配置されている。ばね要素81及び制振要素82は、第2のサポート要素27を振動から少なくとも部分的に絶縁するように構成されている。
【0071】
図1に示されているように、露光装置4は露光装置フレーム41上に配置されている。この露光装置フレーム41は、複数の振り子ロッド28によって第2の部材27に接続されている。露光装置4は、例えば
図4A~
図4Cを参照して記載される露光装置とすることができる。
【0072】
露光装置4は閉鎖部42内部に配置されている。閉鎖部42は、露光装置4を実質的に取り囲み、露光装置フレーム41に接続することができる。
【0073】
図1に示されているように、閉鎖部42はボックス形フレーム2の内部に配置されている。また、閉鎖部42は、貫通孔43のアレイが設けられた少なくとも1つの壁を含むことができる。貫通孔43のアレイは、閉鎖部42の内部から閉鎖部42の外部への流路を提供するように配置され、閉鎖部42の内部にも真空を生成することを可能とする。
【0074】
図1の実施形態では、ボックス形フレーム2及び閉鎖部42の双方に、露光装置4を磁界から遮蔽するための遮蔽層51、52が設けられている。遮蔽層51、52はμ金属層を含むことが好ましい。
【0075】
上述のように、基板サポートモジュール3は、機械的に連結された一連のコンポーネントを介して露光装置4に接続されている。この機械的に連結された一連のコンポーネントは、ボックス形フレーム2の共通の下壁12、ボックス形フレーム2の側壁22及び後壁22b、ブラケット25、第1のベローズ71、第1のサポート部材26、ばね要素81及び制振要素82、第2のサポート部材27、振り子ロッド28、及び露光装置フレーム41を含む。
【0076】
本記載の導入部で検討したように、ばね要素81においてクリープが発生する可能性がある。これによって、基板サポートフレーム3に対する露光装置4の位置が設定位置からずれる。
【0077】
このクリープを補償するため、基板露光システム1は、基板サポートモジュール3に対する露光装置4の相対位置を調整するための機械的調整アセンブリを備えている。
図1に示されている機械的調整アセンブリは、第1のベローズ71と、水圧系を形成するため導管73によって第1のベローズ71に接続された、後述される第2のベローズ72と、を含む。第1のベローズ71は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して移動させるように構成されている。機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分は、第1のサポート部材26、ばね要素81及び制振要素82、第2のサポート部材27、振り子ロッド28、露光装置フレーム41、並びに露光装置4を含む。機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分は、ブラケット25、ボックス形フレーム2の側壁22及び後壁22b、ボックス形フレーム2の下壁12、並びに基板サポートモジュール3を含む。第1のベローズ71を作動させることによって、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分を、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して移動させることができる。
【0078】
図1に示されているように、第1のベローズ71は導管73によって第2のベローズ72に接続されている。第1のベローズ71は、水圧ジェネレータとして作用するよう構成された第2のベローズ72によって作動させることができる水圧アクチュエータとして作用するように構成されている。第1のベローズ71、第2のベローズ72、及び導管73は、少なくとも使用時に作動液が充填されている。導管73で相互接続された第1のベローズ71と第2のベローズ72の組み合わせが提供する単純な水圧系において、作動液は、第1のベローズ71、第2のベローズ72、及び導管73によって与えられる実質的に一定の体積内に閉じ込められる。第2のベローズ72を収縮させた場合、これは、第1のベローズ71を膨張させる効果を有する流れを導管73内に誘発する。同様に、第2のベローズ72を膨張させると、第1のベローズ71を収縮させる効果を有する反対の流れを導管73内に誘発する。
【0079】
図1に概略的に示されているように、導管73は、筐体11内の第1のベローズ71を筐体11外の第2のベローズ72に接続するため、筐体11の壁及びフレーム2を横断するよう配置されている。第2のベローズ72は筐体11外で容易にアクセス可能であり、筐体11内の第1のベローズ71を活性化して基板サポートモジュール3に対する露光装置4の位置を移動及び/又は再調整するため、筐体11の外で作動させることができる。3つの第1のベローズ71が露光装置4の周りに、具体的には露光装置4の上方に、三角形の構成で配置されているので、これら3つの第1のベローズ71によって第1のサポート部材26を移動させて、Z方向に並進させること、X方向を中心として及び/又はY方向を中心として傾斜させることができる。
【0080】
システム1には、ボックス形フレーム2の側壁22に対する閉鎖部42の位置又は位置の変化を測定し、従って露光装置4の位置を測定するように構成されたセンサ53が設けられている。センサ53は閉鎖部42の外側に接続され、ボックス形フレーム2の側壁22までの距離、具体的には、ボックス形フレーム2の側壁22上の固定位置に配置されたターゲット(図示せず)までの距離を測定する。あるいは、センサ53をフレームの側壁22の内側に接続して、閉鎖部42の外側までの距離を測定してもよい。閉鎖部42は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分に属し、ボックス形フレーム2の側壁22は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に属する。
【0081】
センサ53は、ボックス形フレーム2の側壁22に沿った固定位置に対する露光装置4の少なくとも垂直位置又は垂直位置の変化を測定するように構成されている。ばね要素81は、露光装置4とフレーム2との間に弾性接続を提供する。この弾性接続は、垂直方向又はZ方向に大きい可撓性を与える。ばね要素81は、第2のサポート部材27、振り子ロッド28、露光装置フレーム41、閉鎖部42、及び露光装置4の重量による実質的に垂直方向の力を常に受けている。この垂直方向の力はばね要素81にクリープを誘発する可能性があり、結果として、露光装置4と基板サポートモジュール3との間、特に基板5を担持するチャック36との間の距離にずれが生じる。このずれがセンサ53によって測定される。位置のある程度のずれが測定された場合、フレーム2に対して露光装置4を移動させてクリープによる位置のずれを適切に打ち消すため、露光システム1外の対応する1つ以上の第2のベローズ72を作動させることによって、フレーム2とばね要素81との間に配置された第1のベローズ71のうち1つ以上を作動させる。
【0082】
好ましくは、
図1に概略的に示されているようにシステム1は、閉鎖部42の左側に1つ、閉鎖部42の右側に1つ、及び閉鎖部42の後ろ側に1つ(図示せず)の、計3つのセンサ53が設けられている。センサ53の各々は、好ましくは、センサ53が少なくともZ軸に沿った垂直位置を測定するように配置されている。センサ53は、X軸に沿った水平位置及び/又はY軸に沿った水平位置も測定するため別の構成を含むことができる。例えば、センサ53の各々は、相互に実質的に垂直に配置された2つの検出器を含み得る。
図1の閉鎖部42の左側に示されているセンサ53は、X軸及びZ軸に沿った位置を測定するための2つの検出器を含む。
図1の閉鎖部42の右側に示されているセンサ53は、X軸及びZ軸に沿った位置を測定するための2つの検出器を含む。閉鎖部42の後ろ側のセンサ(図示せず)は、Y軸及びZ軸に沿った位置を測定するための2つの検出器を含む。センサ53の各々は、ボックス形フレーム2の側壁22及び後壁22bに固定されたターゲットに対するセンサの位置を測定するように構成されている。しかしながら、本発明の調整アセンブリでは、特にZ軸に沿った位置を測定するための3つのセンサ53が重要である。
【0083】
システム1には、センサアセンブリ53から位置データを受信するよう構成された制御ユニットが設けられている。制御ユニットは、好ましくは第2のベローズ72ごとに1つずつ備えられた駆動ユニットの一セットを制御するように構成されており、センサ53からのデータに基づいて第1のベローズ71を作動させるため第2のベローズ72を駆動するように駆動ユニットを作動させる。
図2に、このような制御システムが概略的に示されている。
【0084】
図2は、本発明に従った基板露光システム1’の第2の実施形態を示す。この実施形態において、基板サポートモジュール3は第3のサポート部材29の上に配置されている。第3のサポート部材29の下に、いくつかの第1のベローズ71’が配置されている。これらの第1のベローズ71’は、フレーム2’の下壁21と第3のサポート部材29との間に配置されている。第1のベローズ71’は、導管73’を介して第2のベローズ72’と接続されて、フレーム2’の下壁21に対して第3のサポート部材29を移動させることができる水圧系を形成する。
【0085】
第1のサポート部材26は3つのサポートポスト222の上に配置されている。3つのサポートポスト222は、フレーム下壁21上の三角形の頂点に配置され、Z方向に、フレーム下壁21に対して実質的に垂直に延出している。好ましくは、露光装置4は実質的に、3つのサポートポスト222で形成された三角形の中心点に配置されている。従って基板サポートモジュール3は、機械的に連結された一連のコンポーネントを介して露光装置4に接続されている。この機械的に連結された一連のコンポーネントは、第3のサポート部材29、第1のベローズ71’、フレーム2’の下壁21、フレーム2’のサポートポスト222、第1のサポート部材26、ばね要素81及び制振要素82、第2のサポート部材27、振り子ロッド28、及び露光装置フレーム41を含む。
【0086】
ばね要素81で発生する可能性のあるクリープを補償するため、基板露光システム1は、基板サポートモジュール3に対して露光装置4の相対位置を調整するための機械的調整アセンブリを備えている。
図2に示されている調整アセンブリは、第1のベローズ71’、第2のベローズ72’、及び導管73’を含む。第1のベローズ71’は、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分を機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分に対して移動させるように構成されている。機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分は、フレーム2’の下壁21、フレーム2’のサポートポスト222、第1のサポート部材26、ばね要素81及び制振要素82、第2のサポート部材27、振り子ロッド28、露光装置フレーム41、及び露光装置4を含む。機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分は、第3のサポート部材29及び基板サポートモジュール3を含む。第1のベローズ71’を作動させることによって、機械的に連結された一連のコンポーネントの第2の部分を、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分に対して移動させることができる。第1のベローズ71’は、水圧ジェネレータとして作用するよう構成された第2のベローズ72’によって作動させることができる水圧アクチュエータとして作用するように構成されている。導管73’で相互接続された第1のベローズ71’と第2のベローズ72’の組み合わせは、
図1を参照して記載した水圧系と同様の水圧系を提供する。
【0087】
図2に概略的に示されているように、導管73’は、筐体11内の第1のベローズ71’を筐体11外の第2のベローズ72’に接続するため、筐体11の壁を横断するよう配置されている。好ましくは、導管73’は、フレーム2’内の第1のベローズ71’をフレーム2’外の第2のベローズ72’に接続するため、フレーム2’のサポートポスト222を通り越して横方向に横断するよう配置されている。第2のベローズ72’は筐体11外で容易にアクセス可能であり、筐体11内の第1のベローズ71’を活性化して露光装置4に対する基板サポートモジュール3の位置を移動させる及び/又は再調整するため、筐体11外で作動させることができる。
図2に示されている例では、第1のベローズ71’はXステージベース31の実質的に直下に配置されている。
【0088】
図2に示されているように、システム1’には、
図1の実施形態と同様に、フレーム2’のサポートポスト222に対する閉鎖部42の位置又は位置の変化を測定するように構成されたセンサ53が設けられている。
図2の実施形態はこれに加えて、第3のサポート部材29及び/又はXステージベース31の外側に接続された、フレーム2’のサポートポスト222までの距離を測定するように構成された別のセンサ54を備えている。あるいは、別のセンサ54をフレームのサポートポスト222の内側に接続して、第3のサポート部材29及び/又はXステージベース31の外側までの距離を測定してもよい。具体的には、別のセンサ54は、フレーム2’のサポートポスト222に対する基板サポートモジュール3の位置又は位置の変化を測定するように構成されている。
【0089】
別のセンサ54は、フレーム2’のサポートポスト222に沿った固定位置に対する基板サポートモジュール3の少なくとも垂直位置又は垂直の位置の変化を測定するように構成されている。
【0090】
図1を参照して上述したように、ばね要素81は、露光装置4とフレーム2’との間に、実質的に垂直方向又はZ方向の可撓性を与える弾性接続を提供する。ばね要素81は、これにクリープを誘発する可能性のある実質的に垂直方向の力を受け、結果として、フレーム2’のサポートポスト222に沿った露光装置4の位置にずれが生じる。このずれがセンサ53によって測定される。位置のある程度のずれが測定された場合、フレーム2’に対して基板サポートモジュール3を移動させることでフレーム2’に沿ったサポートモジュール3の位置の実質的に同様のずれを与えるため、露光システム1’外の第2のベローズ72’のうち対応する1つ以上を作動させることによって、第1のベローズ71’のうち1つ以上を作動させる。後者のずれは、センサ53によって測定されるフレーム2’に沿った露光装置4の位置のずれと同様に、別のセンサ54によって測定される。
【0091】
図2に概略的に示されており、
図1の実施形態にも適用可能であるように、センサ53は制御ユニット9に結合されて、フレーム2’のサポートポスト222に対する露光装置4の相対位置の位置データを供給する。更に、別のセンサ54も制御ユニット9に接続されて、フレーム2’のサポートポスト222に対する基板サポートモジュール3の相対位置の位置データを供給する。センサ53及び別のセンサ54の位置データから、制御ユニット9は、基板サポートモジュール3、具体的には使用時に基板5を担持するチャック36に対する露光装置4の相対位置及び/又は向きを決定することができる。
【0092】
制御ユニット9は駆動ユニット91に結合されている、具体的には、第2のベローズ72’の各々に1つずつ駆動ユニット91がある。各駆動ユニット91は、対応する第1のベローズ71’を作動させるために対応する第2のベローズ72’を収縮又は膨張させるように構成されている。駆動ユニット91は、第2のベローズ72’と同様、筐体11外に位置付けられている。
【0093】
制御ユニット9が、基板サポートモジュール3に対する露光装置4の相対位置及び/又は向きが設定位置からずれていることを検出すると、制御ユニット9は、基板サポートモジュール3に対する露光装置4の相対位置及び/又は向きのずれを補償するため、第3のサポート部材29及び基板サポートモジュール3を移動させることを目的として、第1のベローズ71’を作動させるため対応する第2のベローズ72’を収縮又は膨張させるように駆動ユニット91の1つ以上を作動させるための制御信号を駆動ユニット91に送信する。
図2に概略的に示されているように、駆動ユニット91はリニアアクチュエータを含む。駆動ユニット91は、リニアアクチュエータを移動させるためのモータを含み、これは好ましくはステッパモータである。
【0094】
制御ユニットが第2のベローズの各々の駆動ユニットに結合されている構成は、
図1に示されている実施形態においても使用できる。
【0095】
更に、フレーム2,2’の様々な構成と共に本発明を使用できることに留意するべきである。第1の実施形態では、フレーム2はボックス形フレームであり、側壁22、22bに取り付けられたブラケット25によって露光装置4が担持されている。第1の実施形態のようにブラケット25の上に第1のベローズ71を位置決めすることに加えて又はその代わりに、第1のベローズを基板サポートモジュール3よりも下方に位置決めしてもよい。第2の実施形態では、フレーム2は露光装置4を担持するための三角形構成の3つのサポートポスト222を含む。第2の実施形態のように基板サポートモジュール3よりも下方に第1のベローズ71’を位置決めすることに加えて又はその代わりに、第1のベローズを3つのサポートポスト222の上に設けてもよい。
【0096】
更に、
図2に示されている実施形態では、筐体11とフレーム2との間に相互接続要素112が配置されていることに留意するべきである。しかしながら、この代わりに、フレーム2及び筐体11が
図1の第1の例に示されているような共通の下壁を有することも可能である。
【0097】
図3は、本発明に従った水圧系を含む機械的調整アセンブリの一実施形態を概略的に示す。典型的に、1つの調整アセンブリ当たり3つのこのような水圧系が使用される。3つの水圧系によって3自由度で、すなわちZ方向、X軸を中心とした回転(Rx)、及びY軸を中心とした回転(Ry)で、サポート要素を調整することが可能となる。調整アセンブリは第1のベローズ403を含む。このベローズは、機械的に連結された一連のコンポーネントの第1の部分と第2の部分との間に配置されており、具体的には、調整アセンブリが配置されているシステムに対する要件に応じて、
図1又は
図2の露光システムのような露光システムの内部、又は点線110で概略的に表されている閉鎖部もしくは筐体の内部に配置されている。
【0098】
第1のベローズ403の内部体積は、第2のベローズ401の内部体積に相互接続するための導管402と流体連通している。第1のベローズ403、導管402、及び第2のベローズ401には、水圧系を形成するための、好ましくは水である作動液が充填されている。第2のベローズ401を収縮させた場合、作動液は第2のベローズ401から導管402を介して第1のベローズ403に流れ、これは第1のベローズ403を膨張させる効果を有する。同様に、第2のベローズ401を膨張させると、導管402に反対の流れを誘発することで第1のベローズ403を収縮させる。この構成では、第2のベローズ401及び第1のベローズ403の双方の直径を変動させ、従って内部体積を変動させることにより、第1のベローズと第2のベローズとの間の移動比(transfer ratio)を調整することが可能となる。これらのベローズの体積の比が移動比を決定する。比Iでは、第2のベローズ401を距離S1だけ収縮させた場合、第1のベローズ403は距離S1/Iだけ膨張する。これに対し、第2のベローズ401を距離S1だけ収縮させるために必要な力F1によって、第1のベローズ403には力F1*Iが加わる。従って、第2のベローズ401に加えるよりも大きいか又ははるかに大きい力を第1のベローズ403に与えることができる。
【0099】
例えば
図1及び
図2を参照して上述したように、第2のベローズ401は、第1のベローズ403が担持するサポート要素の調整を可能とするように作動させることができる。一実施形態において、第2のベローズ401はアクチュエータ機構404によって作動される。アクチュエータ機構404は例えば、回転運動を直線運動M1に変換する機械的リニアアクチュエータ405を含む。直線運動M1を用いて第2のベローズ401を膨張又は収縮させる(M2)ことができ、これは次いで第1のベローズ403の収縮又は膨張M3を生じる。好ましくは、第2のベローズ401に接触して第2のベローズ401を収縮させるように配置されたねじ切りされたねじ(threaded screw)406を含む自己係止機械的リニアアクチュエータ405が使用される。ねじ切りされたねじ405は、好ましくは、第2のベローズ401に対して固定位置にあるねじ切りナット内で回転するように構成されている。ねじ切りされたねじ405及びナットのピッチは、ねじ405の回転力が取り除かれた場合に機械的リニアアクチュエータ404が設定位置に留まって第1のベローズ403及びこれが担持するサポート要素の位置を維持するようになっている。
【0100】
一実施形態において、機械的リニアアクチュエータ404は手動で作動される。あるいは機械的リニアアクチュエータ404は、ねじ切りされたねじ405の回転を駆動するため、好ましくはステッパモータであるモータ(図示せず)によって作動される。ステップモータは、小さい離散的な調整ステップを機械的リニアアクチュエータに与える。これにより、例えば制御システムを用いて、サポート要素の位置を少しずつ自動的に調整することができる。機械的リニアアクチュエータのねじ機構は増力器(force multiplier)として作用するので、最大で1:1000の大きい機械的な比が得られる。更に、第2のベローズ401の膨張又は収縮によって生じる第1のベローズ403の膨張又は収縮はI分の1であるので、第1のベローズ403の移動を正確に制御することが可能となる。実際には、本発明に従った調整アセンブリは数ミリメートルの移動を行うと共にマイクロメートルの精度で位置決めすることができる。動作中、調整アセンブリは第1のベローズ403において大きな力を与える。
【0101】
第1のベローズ403、導管402、及び第2のベローズ401がスチールで作製されている場合、調整アセンブリは充分な剛性であることが保証される。充分に剛性でない調整アセンブリの部分は使用中にばねとして作用するが、これは調整アセンブリの不要な移動を招き、システムを共振させる固有周波数の変化を生じる可能性があるので、調整アセンブリにとって望ましくない。更に、スチールの導管及びベローズは真空対応とすることができ、これは調整アセンブリを真空チャンバ内に収容する場合に必要である。
【0102】
水圧系は、システムを充填する及び/又は空にするためのブリード弁309を備えている。ブリード弁309は、好ましくは水圧系の最も低い位置に含まれ、好ましくはシステムの筐体110の外側に配置される。
【0103】
第1のベローズ403は、好ましくは、水圧系が空になった場合にベローズの完全な収縮を防止するための内部エンドストップ308を備えている。この代わりに外部エンドストップを使用してもよい。エンドストップ308は、水圧系が空になった場合にサポート要素を点検位置に配置することで、サポートフレーム、サポート要素、及び第1のベローズに対する損傷を防止する。モジュールは更に、好ましくは真空ポンプであるポンプ305に接続するためのバルブ304aと、作動液タンク306に接続するためのバルブ304bと、を備えている。バルブ304a及び304bは導管302に沿って配置されるか、又は継手304で共に接続してもよい。この配置では、最初に必要に応じてバルブ309によってシステムを空にし、真空ポンプ305を用いてシステムを特定の真空圧までポンピングし、ポンピングの後システムにタンク306から液体を充填することで、制御しながら水圧系を充填することが可能となる。システムを充填するため、及びベローズと導管に空気が取り込まれないことを保証するために、50mbar未満の真空圧、好ましくは10mbar未満の真空圧が充分であることがわかっている。取り込まれた気泡はばねとして作用するので、水圧系では望ましくない。使用中、システム内の圧力は約6バールである。スチールの導管とベローズ、システム内の加圧液体、更には空気の欠如を組み合わせることによって、システムは、数百キログラムの重量となり得る露光システムのコンポーネントを正確に担持し位置決めすることができる。
【0104】
本発明に従った調整アセンブリは、様々な種類の露光システムにおいて有利に適用できることがわかっている。そのような露光システムは例えば、リソグラフィシステム、電子顕微鏡、ウェーハ検査ツール、又は、一部を既知の位置及び/又は向きに配置する必要があり、経時的にドリフトが発生する可能性のある任意のシステムである。このドリフトは、システム内に弾性又は可撓性の要素が適用されない場合であってもシステム内で発生する。そのようなシステムでは、アクセスが限定されているチャンバ、筐体、又は閉鎖部内に、システムのモジュール又は部分を正確に位置決めする必要がある。従って、本発明に従った調整アセンブリはリソグラフィシステムに限定されない。
【0105】
図4Aから
図4Cは、例えば
図1及び
図2を参照して上述したシステムのうち1つにおいて使用される露光装置の例を示している。
【0106】
図4Aは、露光装置フレーム41上に配置されたマルチビーム荷電粒子リソグラフィシステム440のための露光装置の一例を示している。マルチビーム荷電粒子リソグラフィシステム440は、露光装置フレーム41に対して個別に設置及び除去することができるモジュール441、442、443、444として構成されている。
【0107】
上部モジュール441は、荷電粒子、具体的には電子の発散ビーム446を発生させるように構成された荷電粒子源445を含む。発散荷電粒子ビーム446はコリメータレンズ447によってコリメートされる。コリメートされた荷電粒子ビームは次いでアパーチャアレイ448に到達する。アパーチャアレイ448は、複数のビームレット、具体的には実質的に平行なビームレット449のアレイを発生させる。
【0108】
複数の実質的に平行なビームレット449のアレイは、ビームレットブランカ(beamlet blanker)アレイとも称される偏向器アレイ450を含む後段のモジュール442に誘導される。偏向器アレイ450は、ビームレット449の各々に1つずつ偏向器を含む。各偏向器は、個々のビームレット449を偏向させるように、又は個々のビームレット449を偏向させず通過させるように構成されている。後段の下部モジュール443に、アパーチャのアレイが設けられたビームストップアレイ451が配置されている。個々のビームレット449は、偏向器アレイ450の対応する偏向器によって偏向されていない場合、ビームストップアレイ451の対応するアパーチャを通過する。個々のビームレット449は、偏向器アレイ450の対応する偏向器によって偏向される場合、ビームストップアレイ451のアパーチャから離れる方へ偏向されて、アパーチャの周りのビームストップアレイ451の部分に入射する。偏向アレイ450とビームストップアレイ451の組み合わせにより、個々のビームレット449を効果的にオン又はオフに切り換えることができる。
【0109】
アパーチャアレイ451を通過したビームレット449は、後段の下部モジュール444内のレンズアレイ452の方へ誘導される。レンズアレイ452は、荷電粒子ビームレット449を基板5の表面に集光するためのレンズアレイを備えている。このモジュール444は、基板5の表面全体でビームレット449のアレイをスキャンするための1つ以上の偏向器も備えることができる。偏向器アレイ450を適切にアドレスし、基板5の表面全体でビームレット449をスキャンすることで、基板5の表面にパターンを描画することができる。
【0110】
図4Bは、露光装置フレーム41上に配置された光学リソグラフィシステム540のための露光装置の一例を示している。
【0111】
上部モジュール541は、光ビーム546を発生させるように構成された光源545を備えている。光ビーム546は、光ビーム549を均質化すると共にコリメートするように構成された光学系547、548に誘導される。コリメートされ均質化された光ビーム549は、マスク550を含む後段のモジュール542に誘導される。マスク550は光ビーム549によって照明され、透過光は後段の下部モジュール543に誘導される。マスク550は、固定パターンを有するマスクであるか、又は変更可能パターンを与えるため透明状態もしくは不透明状態に切り替えることができる切り替え可能要素を有するマスクであり得る。モジュール543において、レンズシステム551、552は、マスク550を基板5の表面に結像するように構成されている。これによってマスク550のパターンは基板5の表面に投影される。
【0112】
図4Cは、露光装置フレーム41上に配置された電子顕微鏡640のための露光装置の一例を示している。電子顕微鏡640は、電子ビーム646を発生させるように構成された電子源645を備えている。電子ビーム646は、電子ビーム649をいくつかの電子レンズ650、651の方へ誘導するように配置された光学系647、648に誘導される。電子レンズは、電子ビーム549を基板5の表面に集光するように構成されている。電子顕微鏡640は通常、基板5の表面全体で電子ビーム649をスキャンするための1つ以上の偏向器が設けられている。
【0113】
電子ビーム649が基板5の表面に入射した場合、電子と基板5の表面の材料との相互作用によって、例えば電子の散乱、二次電子の発生、及び/又は光の発生が引き起こされる可能性がある。電子顕微鏡649には、散乱した電子、二次電子、及び/又は発生した光を検出できるセンサ652が設けられている。基板5の表面全体で電子ビーム649をスキャンし、散乱した電子、二次電子、及び/又は発生した光を検出することによって、基板5の表面をマッピング及び/又は結像することができる。
【0114】
上記の記載は、好適な実施形態の動作を説明するために含めるものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。上記の検討から、本発明の精神及び範囲によって包含されていない多くの変形が当業者には明らかとなるであろう。