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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】縦型FET構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220209BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220209BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 655G
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019559011
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018013987
(87)【国際公開番号】W WO2018136478
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2019-08-22
(31)【優先権主張番号】15/407,689
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】リュー,セイ-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】シュプバック,マーセロ
(72)【発明者】
【氏名】バークリー,アダム
(72)【発明者】
【氏名】アレン,スコット
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/185544(WO,A1)
【文献】特開2009-158717(JP,A)
【文献】特開2016-015439(JP,A)
【文献】NAKAMURA Yohei et al.,A Simulation Model for SiC Power MOSFET Based on Surface Potential,Proc. SISPAD 2016,米国,IEEE,2016年09月06日,pp.121-124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・上部表面、および、前記上部表面の反対の下部表面を有する炭化ケイ素基板と、
・前記炭化ケイ素基板の前記下部表面上のドレイン/コレクタコンタクトと、
・前記炭化ケイ素基板の前記上部表面上のエピタキシャル構造であって、中に第1のソース/エミッタ注入物が設けられる第1のソース/エミッタウェルが前記エピタキシャル構造内に形成されている、エピタキシャル構造と、
・前記エピタキシャル構造の一部分上のゲート誘電体と、
・第1の複数のソース/エミッタコンタクト片であって、前記ゲート誘電体が前記第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の下方にないように、互いからそれぞれ間をおいて、前記第1のソース/エミッタウェルの連続的な部分上、および前記第1のソース/エミッタ注入物の連続的な部分上に直接隔置される、第1の複数のソース/エミッタコンタクト片と、
・第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトであって、前記ゲート誘電体上にあり、前記第1のソース/エミッタ注入物が、前記第1の細長のゲートコンタクトおよび前記第2の細長のゲートコンタクトの下方にあり、前記第1の細長のゲートコンタクトと前記第2の細長のゲートコンタクトとの間にあるように置かれる、第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトと、
・前記第1の細長のゲートコンタクトおよび前記第2の細長のゲートコンタクトのうちの少なくとも1つから、前記第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の間に形成される空間内へと延在する第1の複数のゲート間プレートと、
を備え、前記第1の複数のゲート間プレートは、前記ゲート誘電体により、前記第1のソース/エミッタ注入物の一部分から分離されている、縦型電界効果トランジスタ(FET)構造。
【請求項2】
少なくとも、第1のトランジスタセルと、第2のトランジスタセルとを、前記第1の細長のゲートコンタクトが前記第1のトランジスタセルの一部を形成し、前記第2の細長のゲートコンタクトが前記第2のトランジスタセルの一部を形成するようにさらに含み、追加的な内部容量が提供され、前記第1の複数のゲート間プレートの各々は、前記第1のソース/エミッタ注入物の前記一部分と重なる、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項3】
前記第1のソース/エミッタ注入物を、前記第1のトランジスタセルおよび前記第2のトランジスタセルにより共有する、請求項2に記載の縦型FET構造。
【請求項4】
前記第1のトランジスタセルおよび前記第2のトランジスタセルは、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)セルである、請求項3に記載の縦型FET構造。
【請求項5】
前記第1のトランジスタセルおよび前記第2のトランジスタセルは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)セルである、請求項3に記載の縦型FET構造。
【請求項6】
前記炭化ケイ素基板および前記第1のソース/エミッタ注入物を、第1の極性を有する材料によってドープし、前記第1のソース/エミッタウェルを、前記第1の極性の反対の極性である第2の極性を有するドーピング材料によってドープする、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項7】
前記炭化ケイ素基板および前記第1のソース/エミッタウェルを、第1の極性を有する材料によってドープし、前記第1のソース/エミッタ注入物を、前記第1の極性の反対の極性である第2の極性を有するドーピング材料によってドープする、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項8】
前記第1の複数のゲート間プレートの各々は、前記第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の近接する対の間に形成される空間を通って、前記第1の細長のゲートコンタクトと前記第2の細長のゲートコンタクトとの間に延在する、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項9】
前記第1の細長のゲートコンタクト、前記第2の細長のゲートコンタクト、および、前記第1の複数のゲート間プレートは、同じ材料から形成される、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項10】
前記第1の細長のゲートコンタクト、前記第2の細長のゲートコンタクト、および、前記第1の複数のゲート間プレートは、同じ材料から、共通の平面上に形成される、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項11】
前記エピタキシャル構造は、炭化ケイ素から形成される、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項12】
前記第1の細長のゲートコンタクトの一部分が、前記第1のソース/エミッタ注入物の第1の部分と重なり、前記第2の細長のゲートコンタクトの一部分が、前記第1のソース/エミッタ注入物の第2の部分と重なる、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項13】
ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とをさらに備え、前記ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対する前記ゲート-ソース/エミッタ容量の比は、170から1000の範囲にある、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項14】
ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とをさらに備え、前記ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対する前記ゲート-ソース/エミッタ容量の比は、250から1000の範囲にある、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項15】
ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とをさらに備え、前記ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対する前記ゲート-ソース/エミッタ容量の比は、350から1000の範囲にある、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項16】
ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とをさらに備え、前記ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対する前記ゲート-ソース/エミッタ容量の比は、200から750の間である、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項17】
ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とをさらに備え、前記ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対する前記ゲート-ソース/エミッタ容量の比は、300から1,000の間である、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項18】
前記エピタキシャル構造は、前記第1のソース/エミッタ注入物から間をおいて隔置される、第2のソース/エミッタ注入物をさらに含み、
・第2の複数のソース/エミッタコンタクト片であって、前記ゲート誘電体が前記第2の複数のソース/エミッタコンタクト片の下方にないように、互いから間をおいて、前記第2のソース/エミッタ注入物上に隔置される、第2の複数のソース/エミッタコンタクト片と、
・第3の細長のゲートコンタクトであって、前記ゲート誘電体上にあり、前記第2のソース/エミッタ注入物が、前記第1の細長のゲートコンタクトおよび前記第3の細長のゲートコンタクトの下方にあり、前記第1の細長のゲートコンタクトと前記第3の細長のゲートコンタクトとの間にあるように置かれる、第3の細長のゲートコンタクトと、
・前記第1の細長のゲートコンタクトおよび前記第3の細長のゲートコンタクトのうちの少なくとも1つから、前記第2の複数のソース/エミッタコンタクト片の間に形成される空間内へと延在する第2の複数のゲート間プレートであって、追加的な内部容量が提供され、前記第2の複数のゲート間プレートの各々は、前記第2のソース/エミッタ注入物の一部分と重なり、前記第1の複数のゲート間プレートは、前記ゲート誘電体により分離される、第2の複数のゲート間プレートと
をさらに備える、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項19】
・前記第1の複数のゲート間プレートの各々は、前記第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の近接する対の間に形成される空間を通って、前記第1の細長のゲートコンタクトと前記第2の細長のゲートコンタクトとの間に延在し、
・前記第2の複数のゲート間プレートの各々は、前記第2の複数のソース/エミッタコンタクト片の近接する対の間に形成される空間を通って、前記第1の細長のゲートコンタクトと前記第3の細長のゲートコンタクトとの間に延在する、
請求項18に記載の縦型FET構造。
【請求項20】
前記第1の細長のゲートコンタクト、前記第2の細長のゲートコンタクト、および、前記第1の複数のゲート間プレートは、同じ材料から形成される、請求項18に記載の縦型FET構造。
【請求項21】
前記第1の細長のゲートコンタクト、前記第2の細長のゲートコンタクト、および、前記第1の複数のゲート間プレートは、同じ材料から、共通の平面上に形成される、請求項18に記載の縦型FET構造。
【請求項22】
前記エピタキシャル構造は、炭化ケイ素から形成される、請求項21に記載の縦型FET構造。
【請求項23】
ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とをさらに備え、前記ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対する前記ゲート-ソース/エミッタ容量の比は、200から750の間である、請求項1に記載の縦型FET構造。
【請求項24】
・上部表面、および、前記上部表面の反対の下部表面を有する炭化ケイ素基板と、
・前記下部表面上のドレインコンタクトと、
・前記炭化ケイ素基板の前記上部表面上にある炭化ケイ素エピタキシャル構造であって、中に第1のソース/エミッタ注入物が設けられている第1のソース/エミッタウェルが前記炭化ケイ素エピタキシャル構造内に形成されている、炭化ケイ素エピタキシャル構造と、
・複数のソースコンタクト片であって、前記複数のソースコンタクト片は前記第1のソース/エミッタウェルの連続的な部分上に直接、および前記第1のソース/エミッタ注入物の連続的な部分上に直接あるように、前記炭化ケイ素エピタキシャル構造上で互いに間をおいてそれぞれ隔置される、複数のソースコンタクト片と、
・前記炭化ケイ素エピタキシャル構造上のゲートコンタクトであって、前記ゲートコンタクトの延在部は、前記複数のソースコンタクト片の近接する対の間に形成される空間内で前記炭化ケイ素エピタキシャル構造上に延在し、
・前記ゲートコンタクトと前記炭化ケイ素エピタキシャル構造との間のゲート誘電体層であって、前記ゲート誘電体層は、前記ゲートコンタクトの前記延在部と前記炭化ケイ素エピタキシャル構造との間にも配置されている、ゲート誘電体層と、を備え、
前記ゲートコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間で測定されるようなゲート-ドレイン容量に対する、前記ゲートコンタクトと前記複数のソースコンタクト片との間で測定されるようなゲート-ソース容量の比は、250から1000の範囲にある、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)構造。
【請求項25】
前記ゲート-ドレイン容量に対する前記ゲート-ソース容量の前記比は、350から1000の範囲にある、請求項24に記載のMOSFET構造。
【請求項26】
前記ゲート-ドレイン容量に対する前記ゲート-ソース容量の前記比は、250から750の間である、請求項24に記載のMOSFET構造。
【請求項27】
前記ゲート-ドレイン容量に対する前記ゲート-ソース容量の前記比は、300から1,000の間である、請求項24に記載のMOSFET構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、縦型電界効果トランジスタ(FET)構造に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]炭化ケイ素(SIC)系金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)は、高電力用途において、MOSFETのケイ素(Si)系対応物に勝る著しい利点を提供する。しかしながら、SiC系MOSFETに勝る、Si系MOSFETが有する1つの利点は、より大きな内部ゲート-ソース容量CGSである。より大きなCGSを有することは、Si系MOSFETを、ドレインバイアスにおいての過渡現象に起因して誤ってターンオンさせないことにつながる。したがって、SiC系MOSFETに対する実効的なCGSを増大するための、空間効率のよい、効果的な技法に対する必要性が存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]縦型電界効果トランジスタ(FET)構造を開示する。縦型FETは、上部表面、および、上部表面の反対の下部表面を有する炭化ケイ素基板と、炭化ケイ素基板の下部表面上のドレイン/コレクタコンタクトと、炭化ケイ素基板の上部表面上のエピタキシャル構造であって、そのエピタキシャル構造内に第1のソース/エミッタ注入物(implant)を形成した、エピタキシャル構造とを含む。ゲート誘電体を、エピタキシャル構造の一部分上に設ける。第1の複数のソース/エミッタコンタクト片を、ゲート誘電体が第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の下方にないように、互いから間をおいて、第1のソース/エミッタ注入物上に隔置する。第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトは、ゲート誘電体上にあり、第1のソース/エミッタ注入物が、第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトの下方にあり、第1の細長のゲートコンタクトと第2の細長のゲートコンタクトとの間にあるように布置される。第1の複数のゲート間プレート(inter-gate plate)が、第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトのうちの少なくとも1つから、第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の間に形成される空間内へと延在する。追加的な内部容量が提供され、第1の複数のゲート間プレートの各々は、第1のソース/エミッタ注入物の一部分と重なり、ゲート間プレートは、ゲート誘電体により分離される。エピタキシャル構造を、炭化ケイ素、または、他の適切な材料システムから形成してもよい。
【0004】
[0004]第1の複数のゲート間プレートの各々は、第1の複数のソース/エミッタコンタクト片の近接する対の間に形成される空間を通って、第1の細長のゲートコンタクトと第2の細長のゲートコンタクトとの間に十分に延在してもよい。さらに、第1の細長のゲートコンタクト、第2の細長のゲートコンタクト、および、第1の複数のゲート間プレートを、同じまたは異なる平面内に、同じ材料から形成してもよい。
【0005】
[0005]1つの実施形態において、縦型FETは、少なくとも、第1のトランジスタセルと、第2のトランジスタセルとを、第1の細長のゲートコンタクトが第1のトランジスタセルの一部を形成し、第2の細長のゲートコンタクトが第2のトランジスタセルの一部を形成するように含んでもよい。第1のソース/エミッタ注入物を、第1のトランジスタセルおよび第2のトランジスタセルにより共有してもよい。第1のトランジスタセルおよび第2のトランジスタセルは、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)セル、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)セル、および同類のものであってもよい。
【0006】
[0006]エピタキシャル構造は、中に第1のソース/エミッタ注入物が設けられる、第1のソース/エミッタウェルをさらに含んでもよい。MOSFET構成については、基板およびソース/エミッタ注入物を、第1の極性を有する材料によってドープし、第1のソースウェルを、第1の極性の反対の極性である第2の極性を有するドーピング材料によってドープする。IGBT構成については、基板およびソース/エミッタウェルを、第1の極性を有する材料によってドープし、第1のソース/エミッタ注入物を、第1の極性の反対の極性である第2の極性を有するドーピング材料によってドープする。
【0007】
[0007]縦型FETは、ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とを有し、ゲート間プレートに起因して、ゲート-ドレイン容量に対するゲート-ソース/エミッタ容量の比は、170、200、250、300、350、またはそれ以上より大きい。また、縦型FETは、ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とを備え、ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対するゲート-ソース/エミッタ容量の比は、200から750の間である。また、縦型FETは、ゲート-ソース/エミッタ容量と、ゲート-ドレイン/コレクタ容量とを備え、ゲート-ドレイン/コレクタ容量に対するゲート-ソース/エミッタ容量の比は、300から1,000の間である。
【0008】
[0008]MOSFETおよびIGBTデバイスの、ソース要素とエミッタ要素との、ならびに、ドレイン要素とコレクタ要素との間の類似性を考慮に入れて、形容詞ソース/エミッタおよびドレイン/コレクタを、MOSFET、IGBT、および同類のデバイスに対する対応する要素を一般的に説明するために使用する。例えば、細長のドレイン/コレクタコンタクトを、本明細書では、細長のドレインコンタクトおよび細長のコレクタコンタクトの両方を包含するように定義する。ソース/エミッタ領域を、本明細書では、ソース領域およびエミッタ領域の両方を包含するように定義する。ソース/エミッタウェルを、本明細書では、ソースウェルおよびエミッタウェルの両方を包含するように定義する。ソース/エミッタ注入物を、本明細書では、ソース注入物およびエミッタ注入物の両方を包含するように定義する、その他諸々である。ゲート-ソース/エミッタ容量は、事情次第で、デバイスの、ゲートと、ソースまたはエミッタのいずれかとの間の容量である。ゲート-ドレイン/コレクタ容量は、事情次第で、デバイスの、ゲートと、ドレインまたはコレクタのいずれかとの間の容量である。
【0009】
[0009]当業者は、付随する図面の図と関連する、好ましい実施形態の、後に続く詳細な説明を読むことで、本開示の範囲を認識し、本開示の追加的な態様を理解するであろう。
[0010]本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する、付随する図面の図は、本開示のいくつかの態様を例解し、説明とともに、本開示の原理を解説する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0011]本開示の1つの実施形態による、第1の場所においてのMOSFETセルの断面の図である。
図2】[0012]従来のMOSFETセルの上面視図である。
図3】[0013]本開示の1つの実施形態による、図1のMOSFETセルの上面視図である。
図4】[0014]本開示の1つの実施形態による、第2の場所においての図1のMOSFETセルの断面の図である。
図5】[0015]従来のMOSFETセルについて、ドレイン-ソース電圧に対しての容量をプロットするグラフである。
図6図1のMOSFETセルについて、ドレイン-ソース電圧に対しての容量をプロットするグラフである。
図7】[0016]本開示の1つの実施形態による、第1の場所においてのIGBTセルの断面の図である。
図8】[0017]本開示の1つの実施形態による、第2の場所においての図7のIGBTセルの断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018]下記で記載する実施形態は、当業者が実施形態を実践することを可能にするための必要な情報を表し、実施形態を実践する最良の形態を例解する。後に続く説明を、付随する図面の図に照らして読むことで、当業者は、本開示の概念を理解することになり、本明細書で特に焦点を当てられない、これらの概念の応用例を認識することになる。これらの概念および応用例は、本開示、および付随する特許請求の範囲に含まれるということを理解すべきである。
【0012】
[0019]用語、第1の、第2の、その他を、本明細書では、様々な要素を説明するために使用することがあるが、これらの要素を、これらの用語により制限すべきではないということを理解することになる。これらの用語を、単に、1つの要素を別のものと区別するために使用する。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と称することができ、同様に、第2の要素を第1の要素と称することができる。本明細書で使用する際、用語「および/または」は、関連する列挙される項目のうちの1つまたは複数の一切の組み合わせを含む。
【0013】
[0020]層、領域、または基板などの要素を、別の要素「上に」ある、または、別の要素「上へと」延在すると言及するとき、その要素は、その別の要素上に直接的にある、もしくは、その別の要素上へと直接的に延在することができ、または、介在する要素が、さらには存在することがあるということを理解することになる。対照的に、要素を、別の要素「上に直接的に」ある、または、別の要素「上へと直接的に」延在すると言及するとき、介在する要素は存在しない。同じように、層、領域、または基板などの要素を、別の要素の「真上に」ある、または、他の要素の「真上に」延在すると言及するとき、その要素は、その他の要素の真上に直接的にある、もしくは、その別の要素の真上に直接的に延在することができ、または、介在する要素が、さらには存在することがあるということを理解することになる。対照的に、要素を、別の要素の「真上に直接的に」ある、または、別の要素の「真上に直接的に」延在すると言及するとき、介在する要素は存在しない。要素を、別の要素に「接続する」または「結合する」と言及するとき、その要素を、その他の要素に直接的に接続する、もしくは結合することができ、または、介在する要素が存在することがあるということを、さらには理解することになる。対照的に、要素を、別の要素に「直接的に接続する」または「直接的に結合する」と言及するとき、介在する要素は存在しない。
【0014】
[0021]「下方」または「上方」または「上側」または「下側」または「水平」または「垂直」などの相対関係を表す用語を、本明細書では、図において例解するような、1つの要素、層、または領域の、別の要素、層、または領域に対する関係性を説明するために使用することがある。これらの用語、および、上記で論考した用語は、図において図示される向きに加えて、デバイスの異なる向きを包括的に含むことを意図されるということを理解することになる。
【0015】
[0022]本明細書で使用する専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、本開示について制限的であることを意図されない。本明細書で使用する際、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈で別段に明確に指示しない限り、複数形もまた含むことを意図される。用語「備える(3人称単数現在形)」、「備える(現在分詞)」、「含む(3人称単数現在形)」、および/または「含む(現在分詞)」は、本明細書で使用するとき、説述される特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の、他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/または、それらの群の、存在または追加を排除しないということを、さらに理解することになる。
【0016】
[0023]別段に定義しない限り、本明細書で使用するすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者により共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用する用語を、本明細書の文脈、および、関連性のある技術分野においてのそれらの用語の意味と整合する意味を有すると解釈すべきであり、理想化された、または、過度に形式的な語意では、本明細書で明示的にそのように定義しない限り、解釈することにはならないということを、さらに理解することになる。
【0017】
[0024]縦型FET構造を、本明細書で開示する。縦型FET構造は、上部表面、および、上部表面の反対の下部表面を有する炭化ケイ素基板と、炭化ケイ素基板の下部表面上のドレイン/コレクタコンタクトと、炭化ケイ素基板の上部表面上のエピタキシャル構造であって、そのエピタキシャル構造内に第1のソース/エミッタ注入物を形成した、エピタキシャル構造とを含む。ゲート誘電体を、エピタキシャル構造の一部分上に設ける。第1のソース/エミッタコンタクト片を、互いから間をおいて、第1のソース/エミッタ注入物上に隔置する。第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトは、ゲート誘電体上にあり、第1のソース/エミッタ注入物が、第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトの下方にあり、第1の細長のゲートコンタクトと第2の細長のゲートコンタクトとの間にあるように置かれる。ゲート間プレートが、第1の細長のゲートコンタクトおよび第2の細長のゲートコンタクトのうちの少なくとも1つから、第1のソース/エミッタコンタクト片の間に形成される空間内へと延在する。追加的な内部容量が提供され、第1の複数のゲート間プレートの各々は、第1のソース/エミッタ注入物の一部分と重なり、ゲート誘電体により分離される。エピタキシャル構造を、炭化ケイ素、または、他の適切な材料システムから形成してもよい。詳細を下記で提供する。
【0018】
[0025]図1を参照すると、DMOSFET(二重注入金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)に対するセルの断面が例解されている。セルに、全体的にMOSFETセル10と参照符号を付ける。MOSFETセル10を、様々な概念を説明するために使用するが、これらの概念は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、および同類のものを含む、事実上任意のタイプの縦型FET構造に適用可能である。
【0019】
[0026]1つの実施形態において、MOSFETセル10を、二重イオン注入プロセスを使用して4H-または6H-炭化ケイ素(SiC)内に形成する。特に、MOSFETセル10は、N型ドーパントによって高濃度にドープされる(N+)、SiC基板12を含む。SiCエピタキシャル構造が、ドリフト領域14を設けるように、基板12の真上にあり、2つのソース領域16が、二重注入プロセスによって、エピタキシャル構造の上側一部分内に形成される。SiC材料システムを、エピタキシャル構造および基板12に対して使用するが、窒化ガリウム(GaN)などの他の材料システムが、本明細書で開示する概念から利益を得ることがある。ドリフト領域14を、N型ドーパントによって低濃度にドープする(N-)。各々のソース領域16は、P型ドーパントによって適度にドープされる(P)、ソースウェル18と、ソースウェル18の中にあり、ソースウェル18の上側表面の方に偏っているソース注入物20とを含む。ソース注入物20を、N型ドーパントによって高濃度にドープする(N+)。ソース領域16を、JFET(接合FET)領域がそれらのソース領域の間に形成されるように、互いから間をおいて、エピタキシャル構造の上側表面に沿って隔置する。
【0020】
[0027]ゲート誘電体22が、エピタキシャル構造の上側表面上にある。細長のゲートコンタクト24が、ゲート誘電体22の真上にある。ソースコンタクト片26が、ソース領域16のそれぞれの一部分の真上にある。特に、各々のソースコンタクト片26は、対応するソースウェル18およびソース注入物20の外方一部分の真上にある。ゲート誘電体22は、ソースコンタクト片26の間に延在し、細長のゲートコンタクト24は、ゲート誘電体22の真上に、および、ソースコンタクト片26の間にある。しかしながら、細長のゲートコンタクト24は、ソースコンタクト片26に接触することにならず、ソースウェル18およびソース注入物20の内方一部分の真上に延在するのみであることになる。例解するように、細長のゲートコンタクト24は、ソース注入物20の小さい一部分のみの真上に延在する。細長のドレインコンタクト28を、基板12の下部側上に設ける。
【0021】
[0028]動作において、細長のドレインコンタクト28およびソースコンタクト片26にわたる高電圧を、しきい値電圧より下のバイアスを細長のゲートコンタクト24にかけるとき、MOSFETセル10により持続させる。正バイアスを細長のゲートコンタクト24にかけるとき、電流が、ソースコンタクト片26から細長のドレインコンタクト28に流れることになる。図1において破線によって例解するように、電流は、ソースコンタクト片26から、ソース注入物20およびソースウェル18を横向きに通って、ならびに次いで、ドリフト領域14および基板12を垂直に通って、細長のドレインコンタクト28に流れることになる。
【0022】
[0029]高電力応用例に向けて適合する特定の実施形態については、基板12は、厚さにおいて、50umから600umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1018cm-3から1×1020cm-3の間でドープされることがある。ドリフト領域14は、厚さにおいて、3umから150umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1014cm-3から1×1018cm-3の間でドープされることがある。ソースウェル18は、厚さにおいて、0.2umから2umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1015cm-3から1×1019cm-3の間でドープされることがある。ソース注入物20は、厚さにおいて、0.1umから0.5umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1019cm-3から5×1021cm-3の間でドープされることがある。ゲート誘電体22を、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ハフニウムなどの高誘電率誘電体、および同類のものから形成してもよい。細長のゲートコンタクト24、ソースコンタクト片26、および、細長のドレインコンタクト28を、ポリシリコン、アルミニウムなどの金属、金属ケイ化物、および同類のものから形成してもよい。例示的なN型ドーパントは、窒素およびリンを含む。例示的なP型ドーパントは、アルミニウムおよびホウ素を含む。さらに、様々な層および領域のドーピング極性を、MOSFETセル10の応用例および所望の動作に応じて、逆にしてもよく、または修正してもよい。
【0023】
[0030]図2を参照すると、従来のMOSFETセル10’に対する従来の配置設計の上面視図が例解されている。特に図2は、左から右に細長である、3つの従来のMOSFETセル10’を例解する。3つの細長のゲートコンタクト24、2つの細長のソース注入物20、および、2つの細長のソースコンタクト30を例解する。明確さのために、ゲート誘電体22を例解しない。この従来の配置設計は、ソースコンタクト片26を用いるのではなく、代わりに、連続的な細長のソースコンタクト30を使用する。細長のゲートコンタクト24の近接する対は、ソース注入物20の、反対位置の関係にある一部分の真上にある。細長のソースコンタクト30は、ソース注入物20の中央一部分の真上にあり、上記で特記したように、細長のゲートコンタクト24から間をおいて隔置される。
【0024】
[0031]後に続く論考は、MOSFETセル10のドレイン、ゲート、およびソースのうちの任意の2つの間で測定されるような、容量および電圧を含む、様々な計量に及ぶものである。これらの測定を、MOSFETセル10のドレイン(細長のドレインコンタクト28)、ゲート(細長のゲートコンタクト24)、およびソース(ソースコンタクト片26)と関連する、対応するコンタクトの間で行う。例えば、ゲート-ソース容量CGSは、ゲート(細長のゲートコンタクト24)とソース(ソースコンタクト片26)との間で測定される容量であり、ゲート-ドレイン容量CGDは、ゲート(細長のゲートコンタクト24)とドレイン(細長のドレインコンタクト28)との間で測定される容量である、等々である。IGBT実施形態については、これらの測定を、コレクタ、ゲート(細長のゲートコンタクト24)、およびエミッタと関連する、対応するコンタクトの間で行う。例えば、下記でさらに説明するように、ゲート-エミッタ容量CGEは、ゲートとエミッタとの間で測定される容量であり、ゲート-コレクタ容量CGCは、ゲートとコレクタとの間で測定される容量である。
【0025】
[0032]MOSFETセル10’は、ゲート-ソース容量CGSおよびゲート-ドレイン容量CGDを含む内部容量を有する。ゲート-ソース容量CGS内の電荷が、いつデバイスがターンオンおよびターンオフすることになるかを決定する。ゲート-ドレイン容量CGD内の電荷が、ドレイン-ソース電圧VDSを決定する。高速のターンオフ過渡現象により引き起こされることがある、ドレインバイアスの急速な変化は、ゲート-ドレイン容量CGDによって、大きい量の電荷をゲートに向けて送る傾向がある。ゲートドライブは、通常、この電荷の大部分を吸収するが、電荷のすべてとは限らない。さらに、電荷は、瞬間的には吸収されない。非吸収の電荷は、ゲート-ソース容量CGSに対して瞬間的に共有される。ゲート-ソース容量CGSと共有される電荷は、ゲート-ソース電圧VGSを増大する。VGSがしきい値電圧より上に増大するとき、MOSFETセル10’は、誤ってターンオンすることになる。この現象を回避するための取り組みは、MOSFETセル10’の構造の外側の外部キャパシタを使用して、ゲートとソースとの間の外部容量を追加して、ゲート-ソース容量CGSを増大することに重点を置いてきた。残念ながら、これらの取り組みは、概ね非効果的であると判明しており、MOSFETセル10’が組み込まれるモジュールのサイズを増大しており、部品点数を増大し、そのことは、モジュールの信頼性に負の影響を与えることがある。
【0026】
[0033]ここで図3に目を向けると、本開示のMOSFETセル10に対する配置設計の上面視図が例解されている。細長のソースコンタクト30の代わりに、一連のソースコンタクト片26を、各々のソース注入物20の中間一部分の真上に設ける。結果として、開放区域を、近接するソースコンタクト片26の間の各々のソース注入物20の真上に形成する。これらの区域において、ゲート間プレート32を設ける。1つの実施形態において、ゲート間プレート32は、細長のゲートコンタクト24の延在部であり、各々のゲート間プレート32は、細長のゲートコンタクト24の近接するものを実際上接続する。したがって、細長のゲートコンタクト24、および、ゲート間プレート32を、同じ材料から、同じ平面内に、および、同じプロセスステップにおいて形成してもよい。1つの実施形態において、細長のゲートコンタクト24、および、ゲート間プレート32を、ポリシリコン、アルミニウムなどの金属、金属ケイ化物、および同類のものから形成してもよい。あるいは、ゲート間プレート32を、異なる材料から、同じまたは異なる平面内に、および、同じまたは異なるプロセスステップにおいて形成してもよい。
【0027】
[0034]図4は、ゲート間プレート32を通してとられた、MOSFETセル10の断面(図3の切り口B-B)を例解し、細長のゲートコンタクト24、および、ゲート間プレート32は、ゲート誘電体22の真上にある連続的な導電構造から形成される。比較のために、図1は、ソースコンタクト片26のうちの1つを通してとられた、MOSFETセル10の断面(図3の切り口A-A)に対応する。
【0028】
[0035]ゲート間プレート32の追加は、それぞれのMOSFETセル10のゲートとソースとの間の容量を追加する。追加的な容量を、
・ゲート間プレート32を、ソース領域16のソースウェル18およびソース注入物20の真上に与えること、ならびに、
・ゲート間プレート32を、ゲート誘電体22により、ソース領域16のソースウェル18およびソース注入物20から分離すること
により形成する。本質的には、各々のゲート間プレート32は、第1の容量性プレートを提供し、ソース領域16の重なり一部分は、第2の容量性プレートを与え、ゲート誘電体22は、第1の容量性プレートおよび第2の容量性プレートを分離する誘電材料を提供して、MOSFETセル10の中の追加的な内部容量を提供する。ゲート間プレート32を用いて、追加的な内部容量を提供することにより、MOSFETセル10の性能を、MOSFETセル10が用いられるモジュラ回路網のサイズの増大をほとんど、または全く伴わずに、大幅に高める。特に、この様式において、MOSFETセル10の中からゲート-ソース容量CGSを増大することは、MOSFETセル10の実効オン抵抗を増大することなく、高速度ターンオフの間の誤ったターンオン事象を抑制する一助となる。
【0029】
[0036]ゲート間プレート32は、近接するMOSFETセル10の細長のゲートコンタクト24の間に十分に延在する必要はない。例えば、ゲート間プレート32は、単純に、細長のゲートコンタクト24から、ソースコンタクト片26の間の区域内へと延在するタブと同類のものであってもよい。さらに、ゲート間プレート32は、矩形でなくてもよく、デバイス幾何形状および性能目標に基づいて、様々な形状、サイズ、および輪郭をもつことがある。同様に、ソース領域16、ソースウェル18、およびソース注入物20は、変動するパターンおよび形状をもつことがあり、よって、図4において図示される、単純な細長の谷部である必要はない。これらの実体の任意のものは、連続的な細長の谷部、はしご形状、および同類のものの、任意の組み合わせであってもよい。さらに、これらの実体は、応用例に応じて、細長で、それにもかかわらず不連続であってもよい。
【0030】
[0037]図5および6のグラフは、それぞれ、ゲート間プレート32を伴わない、および伴う、MOSFETセル10を実装するSiCトランジスタデバイスの様々な容量を比較する。具体的には、各々のグラフは、1200Vを遮断し、20Aを通過させ、80ミリオームのオン状態抵抗(Rds-on)を有するように定格設定される電力炭化ケイ素MOSFETデバイスについて、ドレイン-ソース電圧VDSに対しての、ピコファラッド単位でのCiss、Coss、およびCrssをプロットする。Cissは、ゲート-ソース容量CGSおよびゲート-ドレイン容量CGDの合計と等しい(Ciss=CGS+CGD)。Crssは、ゲート-ドレイン容量CGDと等しい。Cossは、ドレイン-ソース容量CDSおよびゲート-ドレイン容量CGDの合計と等しい(Coss=CDS+CGD)。Crssは、ゲート-ドレイン容量CGDと等しい。これらの測定から、CGS対CGD比(CGS/CGD)を導出することができる。
【0031】
[0038]特に、CGS=Ciss-CGDであり、Ciss=CGSプラスCGDである。900から1,000ボルトの間で、CGS対CGD比は、ゲート間プレート32を含まない従来のデバイスについて、近似的に124である。ゲート間プレート32を含む同様のデバイスについてのCGS対CGD比は、ゲート間プレート32を含まない従来のデバイスに勝る、3倍より多い、385である。ケイ素系デバイスが、この範囲内のCGS対CGD比を達成することができる一方で、炭化ケイ素系デバイスは、本開示のゲート間プレート32の実装より前にはできなかった。本明細書で開示する概念によって、炭化ケイ素系デバイスは、ケイ素系デバイスに匹敵するCGS対CGD比を達成し、一方で、炭化ケイ素系デバイスが、それらの炭化ケイ素系デバイスのケイ素系対応物に勝って提供する追加的な利益のすべてを享受することができる。実施形態に応じて、150、175、200、250、300、350、および400すらより大きいCGS対CGD比が、今や、(外部容量を要することなく)炭化ケイ素系MOSFETセル10に対して可能である。これらの範囲を、異なる実施形態において、500、750、および1000のCGS対CGD比により境界設定してもよい。
【0032】
[0039]上記で特記したように、これらの概念を、MOSFETセル10に適用するのみではなく、IGBTなどの任意の縦型FETデバイスに適用することができる。図7は、例示的なIGBTセル34の断面を例解する。1つの実施形態において、IGBTセル34を、二重イオン注入プロセスを使用して4H-または6H-炭化ケイ素(SiC)内に形成する。特に、IGBTセル34は、P型ドーパントによって高濃度にドープされる(P+)、SiC基板36を含み、そのことは、IGBTセル34とMOSFETセル10との間の主要な違いを表す。MOSFETセル10においては、基板36を、N型ドーパントによって高濃度にドープする。エピタキシャル構造が、ドリフト領域38を設けるように、基板36の真上にあり、MOSFETセル10のソース領域16に似ている、2つのエミッタ領域40が、二重注入プロセスによって、エピタキシャル構造の上側一部分内に形成される。ドリフト領域38を、N型ドーパントによって低濃度にドープする(N-)。各々のエミッタ領域40は、P型ドーパントによって適度にドープされる(P)エミッタウェル42と、このエミッタウェル42の中にあり、このエミッタウェル42の上側表面の方に偏っているエミッタ注入物44とを含む。エミッタ注入物44を、N型ドーパントによって高濃度にドープする(N+)。エミッタ領域40を、JFET(接合FET)領域がそれらのエミッタ領域の間に形成されるように、互いから間をおいて、エピタキシャル構造の上側表面に沿って隔置する。
【0033】
[0040]ゲート誘電体46が、エピタキシャル構造の上側表面上にある。細長のゲートコンタクト48が、ゲート誘電体46の真上にある。エミッタコンタクト片50が、エミッタ領域40のそれぞれの一部分の真上にある。特に、各々のエミッタコンタクト片50は、対応するエミッタウェル42およびエミッタ注入物44の外方一部分の真上にある。ゲート誘電体46は、エミッタコンタクト片50の間に延在し、細長のゲートコンタクト48は、ゲート誘電体46の真上に、および、エミッタコンタクト片50の間にある。しかしながら、細長のゲートコンタクト48は、エミッタコンタクト片50に接触することにならず、エミッタウェル42およびエミッタ注入物44の内方一部分の真上に延在するのみであることになる。例解するように、細長のゲートコンタクト48は、エミッタ注入物44の小さい一部分のみの真上に延在する。細長のコレクタコンタクト52を、基板36の下部側上に設ける。
【0034】
[0041]高電力応用例に向けて適合する特定の実施形態については、基板36は、厚さにおいて、1umから400umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1018cm-3から1×1021cm-3の間でドープされることがある。ドリフト領域38は、厚さにおいて、10umから250umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1013cm-3から5×1016cm-3の間でドープされることがある。エミッタウェル42は、厚さにおいて、0.2umから2umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1015cm-3から1×1019cm-3の間でドープされることがある。エミッタ注入物44は、厚さにおいて、0.1umから0.5umの範囲に及ぶことがあり、濃度において、1×1019cm-3から5×1021cm-3の間でドープされることがある。ゲート誘電体46を、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ハフニウムなどの高誘電率誘電体、および同類のものから形成してもよい。細長のゲートコンタクト48、エミッタコンタクト片50、および、細長のコレクタコンタクト52を、ポリシリコン、アルミニウムなどの金属、金属ケイ化物、および同類のものから形成してもよい。ここでも、様々な層および領域のドーピング極性を、IGBTセル34の応用例および所望の動作に応じて、逆にしてもよく、または修正してもよい。
【0035】
[0042]IGBTセル34を実装するデバイスの上面視図は、図3において例解する上面視図と同一であり、ソース注入物20は、エミッタ注入物44に対応し、ソースコンタクト片26は、エミッタコンタクト片50に対応する。したがって、図7は、図3の断面A-Aに対応し、図8は、図3の断面B-Bに対応する。IGBTセル34についてのゲート間プレート32を、図8において例解し、ゲート間プレート32は、細長のゲートコンタクト48の延在部である。
【0036】
[0043]MOSFETおよびIGBTデバイスの、ソース要素とエミッタ要素との、ならびに、ドレイン要素とコレクタ要素との間の類似性を考慮に入れて、形容詞ソース/エミッタおよびドレイン/コレクタを、MOSFET、IGBT、および同類のデバイスに対する対応する要素を一般的に説明するために使用する。例えば、細長のドレイン/コレクタコンタクトを、本明細書では、細長のドレインコンタクトおよび細長のコレクタコンタクトの両方を包含するように定義する。ソース/エミッタ領域を、本明細書では、ソース領域およびエミッタ領域の両方を包含するように定義する。ソース/エミッタウェルを、本明細書では、ソースウェルおよびエミッタウェルの両方を包含するように定義する。ソース/エミッタ注入物を、本明細書では、ソース注入物およびエミッタ注入物の両方を包含するように定義する、その他諸々である。ゲート-ソース/エミッタ容量は、事情次第で、デバイスの、ゲートと、ソースまたはエミッタのいずれかとの間の容量である。ゲート-ドレイン/コレクタ容量は、事情次第で、デバイスの、ゲートと、ドレインまたはコレクタのいずれかとの間の容量である。
【0037】
[0044]当業者は、本開示の好ましい実施形態に対する改善および修正を認識するであろう。すべてのそのような改善および修正は、本明細書で開示する概念、および、後に続く特許請求の範囲に含まれると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8