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特許7022193細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220209BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/34 A
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020501669
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004529
(87)【国際公開番号】W WO2019163551
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2018031781
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大場 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃寿
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-288234(JP,A)
【文献】特開2018-019685(JP,A)
【文献】特開2015-156822(JP,A)
【文献】特表2011-528232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0097331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場において、生体細胞を培養する少なくとも1つの細胞培養デバイスを製造して前記細胞培養デバイスにおいて前記生体細胞を播種して培養を開始すると共に、培養中の前記生体細胞の培養状態を測定して第1測定データを連続的に収集し、
前記工場において、前記生体細胞を培養中の前記細胞培養デバイスを、そのまま、又は低温状態に維持して輸送車に積み込み、
前記輸送車において、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスの温度を制御して、前記生体細胞を培養し、かつ/又は前記低温状態に維持されている前記生体細胞の状態を測定して、第2測定データを連続的に収集しつつ、前記細胞培養デバイスを前記工場から前記細胞培養デバイスの使用者まで輸送し、
前記使用者において、前記輸送車から前記細胞培養デバイスを受け取り、前記培養中の前記生体細胞はそのまま、前記低温状態にある前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスは前記培養状態に戻した後、前記生体細胞を培養し、その培養状態を測定して第3測定データを連続的に収集し、使用可能の状態まで成熟した前記生体細胞を使用するに際し、
前記工場における前記生体細胞の培養の開始から、前記使用者における成熟した前記生体細胞の使用までの間、前記生体細胞の培養状態を示す前記第1測定データ、及び前記第3測定データ、並びに前記生体細胞の状態を示す前記第2測定データ、を連続的に記録して一元的に管理して、前記生体細胞を培養する前記細胞培養デバイスを管理する細胞培養デバイスの管理方法であって、
前記細胞培養デバイスは、
第1流路を有する第1流路部材と、
第2流路を有する第2流路部材と、
前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に設けられ、前記第1流路と前記第2流路とを覆うと共に、隔てている多孔質膜と、
前記第1流路に接触して前記多孔質膜と対向して設けられる第1透明電極と、
前記第2流路に接触して前記多孔質膜と対向して設けられる第2透明電極と、を有し、
前記第1流路は、前記第1流路部材と前記多孔質膜との間に形成され、
前記第2流路は、前記第2透明電極と前記第2流路部材と前記多孔質膜との間に形成される細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項2】
連続的に記録されて一元的に管理されている前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データから、前記生体細胞が使用可能の状態まで成熟したことを判断して、前記使用者に使用タイミングを通知する請求項1に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項3】
連続的に記録されて一元的に管理されている前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データから、前記使用者において前記生体細胞が使用可能の状態まで成熟させるための前記細胞培養デバイスの培養条件を求め、求められた前記培養条件に前記細胞培養デバイスを制御する請求項1、又は2に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項4】
前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データは、1つの地点に設置されたデータサーバに記録される請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項5】
前記第1測定データは、前記工場に設置された第1コントローラに収集され、
前記第1コントローラは、
収集された前記第1測定データを前記サーバに送信し、
収集された前記第1測定データから、前記生体細胞を培養するための前記細胞培養デバイスの第1培養条件を求め、
求められた前記第1培養条件に前記細胞培養デバイスを制御する請求項4に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項6】
前記第2測定データは、前記輸送車に設置された第2コントローラに収集され、
前記第2コントローラは、収集された前記第2測定データを前記サーバに送信し、
前記サーバは、受信した前記第1測定データ、及び前記第2測定データから、輸送中に前記輸送車において前記生体細胞を培養するための前記細胞培養デバイスの第2培養条件を求めて、前記第2培養条件を前記第2コントローラに送信し、
前記第2コントローラは、前記輸送車において輸送中の前記細胞培養デバイスを前記第2培養条件に制御する請求項4又は5に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項7】
前記第3測定データは、前記使用者において設置された第3コントローラに収集され、
前記第3コントローラは、収集された前記第3測定データを前記サーバに送信し、
前記サーバは、受信した前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データから、前記使用者において前記生体細胞が使用可能の状態まで成熟させるための前記細胞培養デバイスの第3培養条件を求めて、前記第3培養条件を前記第3コントローラに送信し、
前記第3コントローラは、前記使用者において前記細胞培養デバイスを前記第3培養条件に制御する請求項4~6のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項8】
前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データを収集するために、前記細胞培養デバイスにおいて培養中の前記生体細胞の培養状態、又は前記低温状態に維持されている前記生体細胞の状態は、電気的に、及び光学的に連続的に測定される請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項9】
前記工場においては、前記輸送車によって輸送する前に、前記生体細胞の培養状態が適正であることを検査する出荷検査を行う請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項10】
前記第1透明電極、及び前記第2透明電極が、面状電極である、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項11】
前記第1流路部材、又は、前記第1流路部材及び前記第2流路部材が、高分子材料で構成され、
前記第1透明電極、及び前記第2透明電極が、カーボンナノチューブである請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項12】
前記輸送車において、前記生体細胞を培養中の前記細胞培養デバイスを前記工場から受け取り、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスの温度を制御して、前記生体細胞の培養を続ける請求項1~11のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項13】
前記低温状態は、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスを冷凍して前記生体細胞を凍結した状態を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項14】
前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスは、前記工場において冷凍され、前記生体細胞が凍結された状態とされる請求項13に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項15】
前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスは、前記輸送車において冷凍され、前記生体細胞が凍結された状態とされる請求項13に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項16】
前記使用者が、前記輸送車から、前記細胞培養デバイス、及び前記生体細胞を凍結された状態で受け取った場合には、前記使用者において解凍する請求項1315のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項17】
前記輸送車において、凍結された状態の前記細胞培養デバイス、及び前記生体細胞を解凍する請求項1315のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理方法。
【請求項18】
生体細胞を培養する少なくとも1つの細胞培養デバイスが配列された細胞培養ユニットと、前記細胞培養デバイスにおいて播種され、培養される前記生体細胞の培養条件を制御する第1条件コントローラ、前記細胞培養デバイスの前記生体細胞の培養状態を測定する測定ユニット、及び前記測定ユニットで測定された第1測定データを収集する第1メモリユニットを有する第1コントローラとを備える工場と、
前記生体細胞を培養する前記細胞培養デバイスを備える前記細胞培養ユニットと、前記細胞培養デバイスの前記生体細胞の条件を制御する第2条件コントローラ、前記細胞培養デバイスの前記生体細胞の状態を測定する第2測定ユニット、及び前記第2測定ユニットで測定された第2測定データを収集する第2メモリユニットを有する第2コントローラとを備え、前記細胞培養ユニットを前記工場から前記細胞培養デバイスの使用者まで輸送する輸送車と、
前記生体細胞を培養して使用可能の状態まで成熟させる前記細胞培養デバイスを備える前記細胞培養ユニットと、前記細胞培養デバイスの前記生体細胞の培養条件を制御する第3条件コントローラ、前記細胞培養デバイスの前記生体細胞の培養状態を測定する第3測定ユニット、及び前記第3測定ユニットで測定された第3測定データを収集する第3メモリユニットを有する第3コントローラとを備える使用者側設備と、
前記第1コントローラから前記工場で収集された前記第1測定データを受信し、前記第2コントローラから前記輸送車で収集された前記第2測定データを受信し、前記第3コントローラから前記使用者側設備で収集された前記第3測定データを受信し、前記生体細胞の状態を示す前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データを、使用可能の状態まで成熟した前記生体細胞を使用するまで、連続的に記録して一元的に管理して、前記生体細胞を培養する前記細胞培養デバイスを管理するデータサーバと、
を有する細胞培養デバイスの管理システムであって、
前記細胞培養デバイスは、
第1流路を有する第1流路部材と、
第2流路を有する第2流路部材と、
前記第1流路部材と前記第2流路部材との間に設けられ、前記第1流路と前記第2流路とを覆うと共に、隔てている多孔質膜と、
前記第1流路に接触して前記多孔質膜と対向して設けられる第1透明電極と、
前記第2流路に接触して前記多孔質膜と対向して設けられる第2透明電極と、を有し、
前記第1流路は、前記第1流路部材と前記多孔質膜との間に形成され、
前記第2流路は、前記第2透明電極と前記第2流路部材と前記多孔質膜との間に形成される細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項19】
前記工場は、更に、前記少なくとも1つの細胞培養デバイスを製造する製造設備を有する請求項18に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項20】
前記輸送車において、前記細胞培養ユニットの前記細胞培養デバイスでは、前記生体細胞を継続して培養しており、
前記第2条件コントローラの前記条件は、前記輸送車において、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスの温度を制御して前記生体細胞の培養するための培養条件であり、
前記第2測定ユニットにおいて測定する前記生体細胞の状態は、前記生体細胞の培養状態であり、
前記データサーバは、前記生体細胞培養の培養状態を示す前記第1測定データ、前記第2測定データ、及び前記第3測定データを、連続的に記録して一元的に管理する請求項18、又は19に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項21】
前記工場は、更に、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスを冷凍して、前記生体細胞を低温状態にする冷凍ユニットを有する請求項18、又は19に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項22】
前記輸送車は、更に、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスを冷凍して、前記生体細胞を低温状態にする冷凍ユニットを有する請求項1821のいずれか1項に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項23】
前記低温状態は、前記生体細胞、及び前記細胞培養デバイスを冷凍して前記生体細胞を凍結した状態を含む請求項21、又は22に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項24】
前記使用者側設備は、更に、凍結された状態の前記細胞培養デバイス、及び前記生体細胞を解凍する解凍ユニットを有する請求項23に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【請求項25】
前記輸送車は、更に、凍結された状態の前記細胞培養デバイス、及び前記生体細胞を解凍する解凍ユニットを有する請求項23に記載の細胞培養デバイスの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な薬剤の研究等に用いられる細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ流路と呼ばれるマイクロメートルオーダの幅の流路を有する流路デバイス(細胞培養デバイス)を、血管、腸管、肝臓、及び肺等の臓器モデルとして使用することが試みられている(特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、中央マイクロ流路(チャネル)を内部に有し、多孔質の膜に複数種の細胞(生体細胞)が固定されている細胞培養デバイスが臓器模倣装置として開示されている。
【0003】
また、特許文献1に開示の臓器模倣装置は、センサ、コンピュータ、ディスプレイ、ならびにソフトウェア、データ構成要素、プロセスステップ、及び/又はデータ構造を利用する他の計算装置を含むシステムとして使用されている。また、そのシステムは、各種の操作システム、計算プラットフォーム、コンピュータプログラム、及び/又は汎用機械を使用して実行できるものである。
この臓器模倣装置は、多孔質の膜に細胞を固定した状態で、中央マイクロ流路に、空気、血液、水、細胞、化合物、粒子、及び培養液等を流し、臓器を再現した多孔質の膜に対して、その状態をセンサで測定し、ディスプレイに表示し、コンピュータで制御することで、様々な解析を行うことができる。
【0004】
例えば、センサとして、圧力センサ、電極、赤外線、及び光検出手段(カメラ及びLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)、又は磁器検出手段等を用いることで、多孔質膜に形成した細胞層等の特性、及び状態等をモニタリングすることもできる。例えば、電極を用いて電位差、抵抗、及び短絡回路電流等の電気特性を測定することで、多孔質膜に形成した細胞層等を通した流体、及びイオン等の輸送機能、及び障壁の形成等を確認できる。
こうして、特許文献1に開示の臓器模倣装置は、例えば、様々な疾患の治療、及び試験の効果の確認、様々な化学薬剤、及び生物薬剤等の薬剤の研究、及び開発、並びに細胞のスクリーニングを含む種々のスクリーニング等に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-528232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の技術では、人体は複雑であるため、細胞培養デバイスを用いて細胞等の評価を正確に行うためには、1つの測定のみでは不十分である。即ち、細胞培養デバイスを用いた細胞等の正確な評価を行うためには、例えば、多孔質膜上の細胞の撮像と電極を用いる抵抗値の測定とを同時に行う等、複数の測定を同時に行って、複数の測定結果に基づいて評価を行う必要がある。
ところが、従来の細胞培養デバイスでは複数の測定を同時に行うこと、特に蛍光標識を用いる測定、及び細胞の撮像などの光学的な測定と、電極を用いる電気的な測定とを、同時に行うことが困難である。
このため、細胞培養デバイスにおいて培養される生体細胞の状態を正確に管理することができないという問題があった。
【0007】
更に、特許文献1に開示の技術を用いても、例えば従来技術の薬剤研究、及び開発においては、薬剤を評価するエンドユーザ(最終使用者)自身が、例えば、図15に示すように、ステップS102において予め製作された細胞培養デバイス(臓器模倣装置)に生体細胞を播種し、ステップS104において培養して、使用可能の状態まで成熟させ、ステップS106において薬剤テストを行うことになっていた。このため、エンドユーザが細胞培養デバイスにおける生体細胞の培養工程の全てを行う必要があり、エンドユーザにおいて薬剤研究、及び開発の時間、及び手間が掛かるという問題があった。
また、細胞培養デバイスの他のバリューチェーンにおいては、細胞播種から初期の培養までは工場で行われた後、出荷検査、及び輸送を経て、所望の性能、及び/又は性質を発揮するように、エンドユーザによる最終の培養工程を経て使用される。このため、エンドユーザは、細胞播種から初期の培養から最終の培養に入る前までの細胞を管理しておらず、その間の細胞の状態を知ることができないため、最終の細胞の品質を管理することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、生体細胞の播種から最終の培養まで細胞培養デバイスの生体細胞の測定データを連続的に記録して測定データの履歴を一元的に管理することを可能にし、使用者が使用するタイミングまでの細胞培養デバイスにおける生体細胞の品質管理を可能とする細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の細胞培養デバイスの管理方法は、工場において、生体細胞を培養する少なくとも1つの細胞培養デバイスを製造して細胞培養デバイスにおいて生体細胞を播種して培養を開始すると共に、培養中の生体細胞の培養状態を測定して第1測定データを連続的に収集し、輸送車において、生体細胞を培養し、その培養状態を測定して第2測定データを連続的に収集しつつ、細胞培養デバイスを工場から細胞培養デバイスの使用者まで輸送し、使用者において、生体細胞を培養し、その培養状態を測定して第3測定データを連続的に収集し、使用可能の状態まで成熟した生体細胞を使用するまで、生体細胞の培養状態を示す第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データを連続的に記録して一元的に管理して、生体細胞を培養する細胞培養デバイスを管理するものである。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様の細胞培養デバイスの管理システムは、生体細胞を培養する少なくとも1つの細胞培養デバイスが配列された細胞培養キットと、細胞培養デバイスにおいて播種され、培養される生体細胞の培養条件を制御する第1条件コントローラ、細胞培養デバイスの生体細胞の培養状態を測定する測定ユニット、及び測定ユニットで測定された第1測定データを収集する第1メモリユニットを有する第1コントローラとを備える工場と、生体細胞を培養している細胞培養デバイスを備える細胞培養キットと、細胞培養デバイスの生体細胞の培養条件を制御する第2条件コントローラ、細胞培養デバイスの生体細胞の培養状態を測定する第2測定ユニット、及び第2測定ユニットで測定された第2測定データを収集する第2メモリユニットを有する第2コントローラとを備え、細胞培養キットを工場から細胞培養デバイスの使用者まで輸送する輸送車と、生体細胞を培養して使用可能の状態まで成熟させる細胞培養デバイスを備える細胞培養キットと、細胞培養デバイスの生体細胞の培養条件を制御する第3条件コントローラ、細胞培養デバイスの生体細胞の培養状態を測定する第3測定ユニット、及び第3測定ユニットで測定された第3測定データを収集する第3メモリユニットを有する第3コントローラとを備える使用者側設備と、第1コントローラから工場で収集された第1測定データを受信し、第2コントローラから輸送車で収集された第2測定データを受信し、第3コントローラから使用者側設備で収集された第3測定データを受信し、生体細胞培養の培養状態を示す第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データを、使用可能の状態まで成熟した生体細胞を使用するまで、連続的に記録して一元的に管理して、生体細胞を培養する細胞培養デバイスを管理するデータサーバと、を有する。
ここで、工場は、更に、少なくとも1つの細胞培養デバイスを製造する製造設備を有することが好ましい。
【0011】
上記第1の態様、及び第2の態様において、連続的に記録されて一元的に管理されている第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、生体細胞が使用可能の状態まで成熟したことを判断して、使用者に使用タイミングを通知することが好ましい。
また、連続的に記録されて一元的に管理されている第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、使用者において生体細胞が使用可能の状態まで成熟させるための細胞培養デバイスの第3培養条件を求め、求められた第3培養条件に細胞培養デバイスを制御することが好ましい。
また、記第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データは、1つの地点に設置されたデータサーバに記録されることが好ましい。
【0012】
また、第1測定データは、工場に設置された第1コントローラに収集され、第1コントローラは、収集された第1測定データをサーバに送信し、収集された第1測定データから、生体細胞を培養するための細胞培養デバイスの第1培養条件を求め、求められた第1培養条件に細胞培養デバイスを制御することが好ましい。
また、第2測定データは、輸送車に設置された第2コントローラに収集され、第2コントローラは、収集された第2測定データをサーバに送信し、サーバは、受信した第1測定データ、及び第2測定データから、輸送中に輸送車において生体細胞を培養するための細胞培養デバイスの第2培養条件を求めて、第2培養条件を第2コントローラに送信し、第2コントローラは、輸送車において輸送中の細胞培養デバイスを第2培養条件に制御することが好ましい。
【0013】
また、第3測定データは、使用者において設置された第3コントローラに収集され、第3コントローラは、収集された第3測定データをサーバに送信し、サーバは、受信した第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、使用者において生体細胞が使用可能の状態まで成熟させるための細胞培養デバイスの第3培養条件を求めて、第3培養条件を第3コントローラに送信し、第3コントローラは、使用者において細胞培養デバイスを第3培養条件に制御することが好ましい。
また、 第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データを収集するために、細胞培養デバイスにおいて培養中の生体細胞の培養状態は、電気的に、及び光学的に連続的に測定されることが好ましい。
【0014】
また、細胞培養デバイスは、第1流路を有する第1流路部材と、第2流路を有する第2流路部材と、第1流路部材と第2流路部材との間に設けられる多孔質膜と、第1流路と第2流路とを挟んで設けられる、一対の透明電極と、を有する流路デバイスであることが好ましい。
また、一対の透明電極が、面状電極であることが好ましい。
また、第1流路部材、又は、第1流路部材及び第2流路部材が、高分子材料で構成され、一対の透明電極が、カーボンナノチューブであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生体細胞の播種から最終の培養まで細胞培養デバイスの生体細胞の測定データを連続的に記録して測定データの履歴を一元的に管理することを可能にし、使用者が使用するタイミングまでの細胞培養デバイスにおける生体細胞の品質管理を可能とする。
また、本発明によれば、管理対象の細胞培養デバイスとして、臓器モデル等として利用され、光学的な測定と電気的な測定とを同時に行うことができる細胞培養デバイスを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の細胞培養デバイスの管理方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図2】本発明の細胞培養デバイスの管理方法を実施する管理システムの一例を示す模式図である。
図3図1に示す管理システムの一例を示すブロック図である。
図4】本発明の細胞培養デバイスの管理方法に細胞培養デバイスとして用いられる流路デバイスの一例の全体構造を示す概略斜視図である。
図5図4に示す流路デバイスの全体構造を示す概略分解斜視図である。
図6図4に示す流路デバイスの多孔質膜の一例を示す概略平面図である。
図7図6のB-B線概略断面図である。
図8】流路ユニットが固定される前の流路デバイスを示す図4におけるA-A線概略断面図である。
図9】流路ユニットが固定された後の流路デバイスを示す図4におけるA-A線概略断面図である。
図10図4に示す流路デバイスを用いる測定方法の一例を概念的に示す図である。
図11図4に示す流路デバイスの作製工程を示す概略断面図である。
図12図4に示す流路デバイスの作製工程を示す概略断面図である。
図13図4に示す流路デバイスの作製工程を示す概略断面図である。
図14図4に示す流路デバイスの作製工程を示す概略断面図である。
図15】従来技術の培養方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システムについて、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。また、各構成部材の説明を明確に行うために、図中の各構成部材の寸法は、適宜、変更している。このため、図中の縮尺は実際とは異なっている。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値、及び上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
本発明の第1の実施態様に係る細胞培養デバイスの管理方法の構成について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施態様に係る細胞培養デバイスの管理方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
本発明の細胞培養デバイスの管理方法においては、図1に示すように、先ず、ステップS10において、生体細胞を培養する所定数(少なくとも1つ)の細胞培養デバイスを工場において製造する。本発明においては、予め製造された細胞培養デバイスを準備して用いても良い。なお、生体細胞、細胞培養デバイス、及び工場の構成等については、後述する。
【0019】
次に、ステップS12において、生体細胞を工場内の細胞培養デバイスにおいて播種する。
細胞培養デバイスへの生体細胞の播種は、例えば、細胞懸濁液を流路内に注入し、静置することによって行うことができる。
【0020】
続いて、ステップS14において、工場内の細胞培養デバイスに播種された生体細胞の培養を開始し、初期培養を行う。
初期培養を行うステップS14においては、培養中の生体細胞の培養状態を電気的に、かつ光学的に測定して第1測定データを工場に設置された第1コントローラに連続的に収集する。第1測定データは、生体細胞の電気的測定データ、及び光学的測定データに加え、例えば、細胞培養デバイスの培養環境の圧力、温度、及び/又は培養液の液量等のデータ等の培養条件(培養環境条件)を含むことが好ましい。
ここで、第1コントローラは、収集された第1測定データを第1コントローラとは異なる1地点に設置されたデータサーバに送信することが好ましい。また、第1コントローラは、収集した第1測定データから、生体細胞を培養するための細胞培養デバイスの第1培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を求め、求めた第1培養条件に細胞培養デバイスを制御することが好ましい。なお、データサーバが、受信した第1測定データから細胞培養デバイスの第1培養条件を求め、求めた第1培養条件を第1コントローラに送信し、第1コントローラが、受信した第1培養条件に細胞培養デバイスを制御しても良い。第1培養条件への細胞培養デバイスの制御は、自動で行っても良いし、第1培養条件をディスプレイ等に表示し、手動で行っても良い。また、第1測定データから細胞培養デバイスの最適な測定条件を求め、求められた測定条件に細胞培養デバイスの測定を自動で、又は手動で制御しても良い。
【0021】
次に、ステップS16において、工場内で生体細胞を培養している、使用者に必要数の細胞培養デバイスを輸送車によって輸送する前に、工場においては、生体細胞の培養状態が適正であることを検査する出荷検査を行うことが好ましい。出荷検査においては、所定状態に成熟していない、成熟しすぎている、又は死んでいる細胞を培養している細胞培養デバイスは除かれ、培養状態が適正である所定状態に成熟している生体細胞を培養している細胞培養デバイスに取り換えられる。こうして、培養状態が適正である生体細胞を培養している、使用者に必要数の細胞培養デバイスが輸送に提供される。
なお、後段のステップ18において、輸送車による輸送時間が長い場合、及び長いことが予想される場合等には、本ステップ16において、出荷検査後、生体細胞を細胞培養デバイスと共に低温状態にして、例えば凍結して、培養を部分的に休止し、又は実質的に停止しても良い。ここで、本発明では、低温状態は、凍結状態も含むものとする。
【0022】
次に、ステップS18において、必要数の細胞培養デバイスは、輸送車によって工場から細胞培養デバイスの使用者まで輸送される。輸送中、輸送車内においては、細胞培養デバイスにおいて生体細胞、及び細胞培養デバイスの温度を制御して、生体細胞を培養し、その培養状態を測定して第2測定データを輸送車に設置された第2コントローラに連続的に収集することが好ましい。第2測定データも、生体細胞の電気的測定データ、及び光学的測定データに加え、例えば、細胞培養デバイスの第2培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を含むことが好ましい。
なお、例えば、輸送時間が長い場合、及び長いと予想される場合等においては、ステップS16において、工場で細胞培養デバイスと共に生体細胞が凍結を含む低温状態にした場合には、このステップS18では、工場から、低温状態にした生体細胞、及び細胞培養デバイスを受け取り、低温状態に維持して、輸送車に積み込み、生体細胞、及び細胞培養デバイスの温度を制御して、低温状態に維持されている生体細胞、及び細胞培養デバイスの輸送車による輸送を行っても良い。
ここで、生体細胞、及び細胞培養デバイスが凍結を含む低温状態で輸送されている間も、生体細胞の状態を測定して第2測定データを輸送車に設置された第2コントローラに連続的に収集することが好ましい。この第2測定データも、生体細胞の電気的測定データ、及び光学的測定データに加え、例えば、細胞培養デバイスの低温状態の維持条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を含むことが好ましい。
【0023】
また、工場から、生体細胞を培養している細胞培養デバイスを受け取った後に、例えば、輸送時間が長いことが分かった場合、及び長いと予想される場合等においては、本ステップ18では、輸送車内において、生体細胞を細胞培養デバイスと共に低温状態にして、例えば凍結して、培養を部分的に休止し、又は実質的に停止し、そのままの低温状態で、輸送しても良い。
更に、輸送車内において、低温状態、例えば凍結状態にある生体細胞、及び細胞培養デバイスの温度をコントロールして、例えば解凍して培養状態に戻しても良い。
即ち、輸送車において、生体細胞、及び細胞培養デバイスの温度をコントロールして、生体細胞を低温状態(凍結した状態を含む)で、輸送の一部、又は全部を行ってもよい。
【0024】
ここで、第2コントローラは、収集された第2測定データをデータサーバに送信することが好ましい。次に、データサーバは、受信した第1測定データ、及び第2測定データから、輸送中に輸送車内において生体細胞を培養するための細胞培養デバイスの第2培養条件、又は低温状態の維持制御条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を求めて、求めた第2培養条件、又は維持制御条件を第2コントローラに送信することが好ましい。
第2コントローラは、輸送車によって輸送中の細胞培養デバイスを第2培養条件、又は維持制御条件に制御することが好ましい。第2培養条件、又は維持制御条件への細胞培養デバイスの制御は、自動で行っても良いし、第2培養条件、又は維持制御条件をディスプレイ等に表示し、手動で行っても良い。また、第2測定データ、又は第1~第2測定データから細胞培養デバイスの最適な測定条件を求め、求められた測定条件に細胞培養デバイスの測定を自動で、又は手動で制御しても良い。
【0025】
次に、ステップS20において、使用者は、輸送車によって輸送された必要数の培養中の細胞培養デバイスを受け取り、使用者において、生体細胞を最終培養する。
なお、使用者において、細胞培養デバイスごと生体細胞が凍結された状態で受け取った場合には、使用者において解凍後、生体細胞を最終培養することが好ましい。
細胞培養デバイスにおいては、その培養状態を測定して生体細胞が使用可能の状態に成熟するまで第3測定データを使用者において設置された第3コントローラに連続的に収集する。第3測定データも、生体細胞の電気的測定データ、及び光学的測定データに加え、例えば、細胞培養デバイスの第3培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を含むことが好ましい。
第3コントローラは、収集された第3測定データをデータサーバに送信することが好ましい。
【0026】
次に、データサーバは、受信した第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、使用者において生体細胞が使用可能の状態まで成熟させるための細胞培養デバイスの第3培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を求めて、第3培養条件を第3コントローラに送信することが好ましい。
第3コントローラは、使用者において培養中の細胞培養デバイスを第3培養条件に制御することが好ましい。
即ち、データサーバは、連続的に記録されて一元的に管理されている第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、使用者において生体細胞が使用可能の状態まで成熟させるための細胞培養デバイスの第3培養条件を求め、求められた第3培養条件に細胞培養デバイスを制御することができる。
第3培養条件への細胞培養デバイスの制御は、自動で行っても良いし、第3培養条件をディスプレイ等に表示し、手動で行っても良い。また、第3測定データ、又は第1~第3測定データから細胞培養デバイスの最適な測定条件を求め、求められた測定条件に細胞培養デバイスの測定を自動で、又は手動で制御しても良い。
【0027】
こうして、データサーバは、生体細胞の培養状態を示す第1測定データ、生体細胞の培養状態、又は低温状態を示す第2測定データ、及び生体細胞の培養状態を示す第3測定データを第1コントローラ、第2コントローラ、及び第3コントローラからそれぞれ連続的に受信して記録して、記録した第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データを一元的に管理する。
その結果、データサーバは、生体細胞を培養する細胞培養デバイスを管理する。
最後に、使用者は、細胞培養デバイスにおいて、使用可能の状態まで成熟した生体細胞を、例えば薬剤テスト、及び薬剤評価等に使用することができる。
ここで、データサーバは、連続的に記録されて一元的に管理されている第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、生体細胞が使用可能の状態まで成熟したことを判断して、使用者に使用タイミングを通知することができる。
【0028】
本発明の第2の実施態様に係る細胞培養デバイスの管理システムの構成について、図2、及び図3を用いて説明する。
図2は、本発明の第2の実施態様に係る細胞培養デバイスの管理システムの一例を示す模式図である。図3は、図1に示す細胞培養デバイスの管理システムの一例を示すブロック図である。
図2、及び図3に示すように、細胞培養デバイスの管理システム80は、細胞培養ユニット84に配列された少なくとも1つ(1つ、又は複数)の細胞培養デバイス86において生体細胞を播種し、生体細胞を培養するメーカ工場82と、生体細胞を培養しながら細胞培養デバイス86を含む細胞培養ユニット84をメーカ工場82から使用者側設備90に輸送する輸送車88と、細胞培養デバイス86において生体細胞を培養して使用可能の状態に成熟させて、薬剤テストユニット92おいて薬剤テスト等に使用し、薬剤評価を行う使用者側設備90と、細胞培養デバイス86において生体細胞を培養して使用可能の状態に成熟させるまで、メーカ工場82、輸送車88、及び使用者側設備90において培養される細胞培養デバイス86の測定データを連続して記録し、一元的に管理するデータサーバ94とによって構成される。
【0029】
メーカ工場82は、細胞培養デバイス86を含む細胞培養ユニット84と、細胞培養ユニット84の細胞培養デバイス86における生体細胞の培養を制御する第1コントローラ96とを含み、更に、細胞培養デバイス86の製造設備98を含むことが好ましい。
なお、製造設備98は、工場内に設置され、複数(好ましくは、大量)の細胞培養デバイス86を製造し、複数の細胞培養デバイス86を有する細胞培養ユニット84を1つ以上製造する。
メーカ工場82は、細胞培養デバイス86の大量生産を行い、大量培養を行うことが好ましい。したがって、メーカ工場82は、細胞培養デバイス86の大量培養のために、複数の細胞培養デバイス86を有する細胞培養ユニット84も大量に製造することが好ましい。
【0030】
第1コントローラ96は、細胞培養デバイス86において播種され、初期培養される生体細胞の培養条件を第1培養条件(初期培養条件)に制御する第1条件コントローラ100、細胞培養デバイス86の生体細胞の培養状態を測定する第1測定ユニット102、及び第1測定ユニット102で測定された第1測定データを収集する第1メモリユニット104を有する。
第1コントローラ96は、メーカ工場82内で大量生産され、大量培養される細胞培養デバイス86の培養状態を制御する大量生産用培養コントローラであることが好ましい。
第1コントローラ96は、パーソナルコンピュータ(PC)のコンピュータ等から構成され、更に、ディスプレイ、キーボード、及びマウス等を含んでいても良い。
【0031】
第1条件コントローラ100は、複数(好ましくは、大量)の生体細胞をそれぞれ培養する複数(好ましくは、大量)の細胞培養デバイス86の培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を、予め設定された、又は第1コントローラ96で第1測定データから求められた第1培養条件に制御するものである。第1条件コントローラ100は、具体的には、細胞培養ユニット84内の環境を制御するための気体ポンプ、ヒータ、及び液ポンプ等を制御するものである。なお、第1条件コントローラ100は、細胞培養デバイス86の培養条件を細胞培養ユニット84毎に(即ち、細胞培養ユニット84内の複数の細胞培養デバイス86を同時に均一に)制御することが好ましいが、個々の細胞培養デバイス86毎に制御しても良い。
【0032】
第1測定ユニット102は、図3においては、1つのブロックとして図示されているが、図2に示すように、1つの細胞培養ユニット84においては、個々の細胞培養デバイス86毎に個々の生体細胞の培養状態の電気的な測定を行うセンサ、光学的な計測を行う光源、及びセンサ等を備えている。なお、電気的な測定としても、光学的な計測としても、それぞれ1以上の測定を行うことができることが好ましく、マルチバリデーション法を構築できる測定が好ましい。
電気的な測定としては、例えば、生体細胞の経上皮電気抵抗(TEER:transepithelial electrical resistance)等の電気抵抗、インピーダンス、及び誘電率、静電容量等の測定を挙げることができる。
光学的な測定としては、例えば、通常の可視光による細胞の形状の測定、赤外線による光干渉断層撮影等に加え、細胞培養デバイス86の流路内に注入した粒子の測定を挙げることができる。使用する粒子は、例えば、RBC(Red Blood Cell:赤血球)(6~8μm)イメージング(405nm光吸収イメージング)、BB(Bright Blue)ポリスチレンビーズ(1.75μm)イメージング(420nm蛍光イメージング)、FITC(Fluorescein isothiocyanate)標識のデキストラン(0.07μm)イメージング(540nm蛍光イメージング)、及びPC(Polychromatic)Redポリスチレンビーズ(0.50μm)イメージング(600nm蛍光イメージング)等を挙げることができる。
また、第1測定ユニット102は、細胞培養ユニット84内の培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を測定するセンサ等を備えていても良い。
【0033】
第1メモリユニット104は、測定ユニット102で計測された電気的測定データ、及び光学的測定データ等を含む、細胞培養ユニット84の培養状態を示す第1測定データを連続的に記録して収集し、収集した第1測定データをデータサーバ94に送信する。
なお、第1メモリユニット104が収集する第1測定データには、細胞培養ユニット84内の培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)の測定データを含んでいても良い。
【0034】
ここで、第1コントローラ96は、第1測定データからメーカ工場82における細胞培養デバイス86の培養条件を求め、求められた培養条件に従って、第1条件コントローラ100に、培養条件を細胞培養ユニット84内の複数の細胞培養デバイス86を制御させるようにすることが好ましい。
なお、第1コントローラ96は、データサーバ94において第1測定データから求められたメーカ工場82における細胞培養デバイス86の培養条件を、データサーバ94から受信し、受信した培養条件に従って、第1条件コントローラ100が、培養条件を細胞培養ユニット84内の複数の細胞培養デバイス86を制御するようにしても良い。
なお、メーカ工場82では、細胞培養ユニット84内の複数の細胞培養デバイス86内の生体細胞の培養状態が適正か否かの出荷検査を行うことが好ましい。出荷検査に合格した培養状態が適正な生体細胞を培養している複数の細胞培養デバイス86を含む細胞培養ユニット84が、使用者側設備90への輸送に供される。
なお、図示しないが、メーカ工場82は、更に、生体細胞、及び細胞培養デバイス86を冷凍して、生体細胞、及び細胞培養デバイス86を低温状態にする冷凍機等の冷凍ユニットを有することが好ましい。なお、第1条件コントローラ100が、冷凍機等の冷凍ユニットを制御して、生体細胞、及び細胞培養デバイス86の温度をコントロールして冷凍し、凍結を含む低温状態に制御しても良い。
【0035】
輸送車88は、出荷検査に合格した培養状態が適正な生体細胞を培養している細胞培養デバイス86を含む細胞培養ユニット84、又は凍結を含む低温状態に維持、又は制御されている生体細胞、及び細胞培養デバイス86をメーカ工場82から使用者側設備90に輸送するものである。
輸送車88は、適正な生体細胞を培養している細胞培養デバイス86、又は低温状態に維持されている生体細胞、及び細胞培養デバイス86を含む細胞培養ユニット84と、細胞培養ユニット84の細胞培養デバイス86における生体細胞の培養、又は生体細胞の低温状態を制御する第2コントローラ106とを含む。
なお、輸送車88は、更に、生体細胞、及び細胞培養デバイス86を冷凍して、生体細胞、及び細胞培養デバイス86を、凍結を含む低温状態にする冷凍機等の冷凍ユニットを有することが好ましい。
また、輸送車88は、更に、凍結を含む低温状態にある生体細胞、及び細胞培養デバイス86を解凍して、生体細胞、及び細胞培養デバイス86を培養状態に戻すヒータ等の解凍ユニットを有することが好ましい。
輸送車88で輸送される細胞培養ユニット84内の培養中、又は低温状態の細胞培養デバイス86は、使用者が薬剤テスト、及び薬剤評価等に供するものであるため、限られた数量の細胞培養デバイス86である。なお、図2に示す例では、細胞培養ユニット84内の培養中、又は低温状態の細胞培養デバイス86は1個として示されているが、1個以上の細胞培養デバイス86を含んでいることは勿論である。また、図3に示す例では、細胞培養ユニット84内の培養中、又は低温状態の細胞培養デバイス86の数は、メーカ工場82においても、輸送車88内においても同じであるが、メーカ工場82においては大量であり、輸送車88内においては限られた数量であることも勿論である。
【0036】
第2コントローラ106は、細胞培養デバイス86において培養中の生体細胞の培養条件を第2培養条件、又は低温状態に維持されている生体細胞の制御条件、又は状態、即ち低温状態に制御する第2条件コントローラ108、細胞培養デバイス86の生体細胞の培養状態、又は状態、即ち低温状態を測定する第2測定ユニット110、及び第2測定ユニット110で測定された第2測定データを収集する第2メモリユニット112を有する。
第2コントローラ106は、輸送車による輸送中に、限られた数量の細胞培養デバイス86の培養状態、又は低温状態を制御するものであるので、簡易培養コントローラであることが好ましい。なお、第2コントローラ106は、第1コントローラ96と同様の構成であれば良い。
【0037】
第2条件コントローラ108は、複数の生体細胞をそれぞれ培養する複数の細胞培養デバイス86の培養条件、又は低温状態の維持制御条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を、予め設定された、又はデータサーバ94において第1測定データ、及び第2測定データから求められ、第2コントローラ106に送信された第2培養条件、又は維持制御条件に制御するものである。第2条件コントローラ108は、第1条件コントローラ100と同様に、細胞培養ユニット84内の環境を制御するための気体ポンプ、ヒータ、冷凍機等の冷凍ユニット、及び液ポンプ等を制御するものである。なお、第2条件コントローラ108は、細胞培養デバイス86の培養条件を細胞培養ユニット84毎に制御することが好ましいが、個々の細胞培養デバイス86毎に制御しても良い。
なお、第2条件コントローラ108は、冷凍機等のユニットを制御して、生体細胞、及び細胞培養デバイス86の温度をコントロールして冷凍し、凍結を含む低温状態に制御しても良い、
また、第2条件コントローラ108は、ヒータ等の解凍ユニットを制御して、凍結を含む低温状態にある生体細胞、及び細胞培養デバイス86の温度をコントロールして、解凍して、培養状態に戻すようにしても良い。
【0038】
第2測定ユニット110は、第1測定ユニット102と同様に、図3においては、1つのブロックとして図示されているが、図2に示すように、1つの細胞培養ユニット84においては、個々の細胞培養デバイス86毎に個々の生体細胞の培養状態、又は低温状態の電気的な測定を行うセンサ、光学的な計測を行う光源、及びセンサ等を備えている。なお、第2測定ユニット110は、第1測定ユニット102と同様に、電気的な測定としても、光学的な計測としても、それぞれ1以上の測定を行うことができることが好ましく、マルチバリデーション法を構築できる測定が好ましい。
また、第2測定ユニット110は、細胞培養ユニット84内の培養条件、又は維持制御条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を測定するセンサ等を備えていても良い。
【0039】
第2メモリユニット112は、第2測定ユニット110で計測された電気的測定データ、及び光学的測定データ等を含む、細胞培養ユニット84の培養状態、又は低温状態を示す第2測定データを連続的に記録して収集し、収集した第2測定データをデータサーバ94に送信する。
なお、第2メモリユニット112が収集する第2測定データには、細胞培養ユニット84内の培養条件、又は維持制御条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)の測定データを含んでいても良い。
ここで、第2コントローラ106は、データサーバ94において連続的に記録された第1測定データ、及び第2測定データから求められた輸送車88における細胞培養デバイス86の第2培養条件をデータサーバ94から受信し、受信した第2培養条件に従って、第2条件コントローラ108が、細胞培養ユニット84内の複数の細胞培養デバイス86を制御するようにしても良い。
【0040】
使用者側設備90は、輸送車88によって輸送された細胞培養ユニット84内の細胞培養デバイス86によって生体細胞を最終培養して、薬剤テスト等に使用可能の状態まで成熟させて、薬剤テストユニット92おいて成熟した生体細胞を薬剤テスト等に使用して、薬剤評価を行うものである。
なお、使用者側設備90は、輸送車88から凍結を含む低温状態にある生体細胞、及び細胞培養デバイス86を受け取った場合に、低温状態にある生体細胞、及び細胞培養デバイス86を解凍して、生体細胞、及び細胞培養デバイス86を培養状態に戻すヒータ等の解凍ユニットを有することが好ましい。
使用者側設備90は、生体細胞を培養して使用可能の状態まで成熟させる細胞培養デバイス86を備える細胞培養ユニット84と、生体細胞が使用可能の状態まで成熟するまで、細胞培養ユニット84の細胞培養デバイス86における生体細胞の最終培養を制御する第3コントローラ114と、使用可能の状態まで成熟した生体細胞を細胞培養デバイス86から取り出し、成熟した生体細胞に薬剤テスト等を行って薬剤評価を行う薬剤テストユニット92とを含む。
使用者側設備90において、培養中の細胞培養デバイス86は、使用者が薬剤テスト等に供するものであるため、限られた数量の細胞培養デバイス86である。したがって、使用者側設備90において、図2、及び図3における細胞培養ユニット84内の培養中の細胞培養デバイス86の数の関係は、輸送車88の場合と同じである。
【0041】
第3コントローラ114は、細胞培養デバイス86において培養中の生体細胞の培養条件を第3培養条件(最終培養条件)に制御する第3条件コントローラ116、細胞培養デバイス86の生体細胞の培養状態を測定する第3測定ユニット118、及び第3測定ユニット118で測定された第3測定データを収集する第3メモリユニット120を有する。
なお、第3条件コントローラ114は、生体細胞が凍結を含む低温状態にある場合には、生体細胞の培養条件を第3培養条件(最終培養条件)に制御する前に、ヒータ等の解凍ユニットを制御して、凍結を含む低温状態にある生体細胞、及び細胞培養デバイス86の温度をコントロールして、解凍して、培養状態に戻すようにしても良い。
第3コントローラ114は、細胞培養ユニット84内の限られた数量の細胞培養デバイス86の培養状態を使用可能な状態に成熟するまで精密に制御するので、精密培養コントローラであることが好ましい。なお、第3コントローラ114も、精密さは異なるが、コントローラの構成としては、第1コントローラ96と同様の構成であれば良い。
【0042】
第3条件コントローラ116は、複数の生体細胞をそれぞれ培養する複数の細胞培養デバイス86の培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を、予め設定された、又はデータサーバ94において第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから求められ、第3コントローラ114に送信された第3培養条件に制御するものである。
第3条件コントローラ116は、第1条件コントローラ100と同様に、細胞培養ユニット84内の環境を制御するための気体ポンプ、ヒータ、及び液ポンプ等を制御するものである。なお、第3条件コントローラ116は、細胞培養デバイス86の培養条件を細胞培養ユニット84毎に制御することが好ましいが、個々の細胞培養デバイス86毎に制御しても良い。
【0043】
第3測定ユニット118は、第1測定ユニット102と同様に、図3においては、1つのブロックとして図示されているが、図2に示すように、1つの細胞培養ユニット84においては、個々の細胞培養デバイス86毎に個々の生体細胞の培養状態の電気的な測定を行うセンサ、並びに光学的な計測を行う光源、及びセンサ等を備えている。なお、第3測定ユニット118は、第1測定ユニット102と同様に、電気的な測定としても、光学的な計測としても、それぞれ1以上の測定を行うことができることが好ましく、マルチバリデーション法を構築できる測定が好ましい。
また、第3測定ユニット118は、細胞培養ユニット84内の培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)を測定するセンサ等を備えていても良い。
【0044】
第3メモリユニット120は、第3測定ユニット118で計測された電気的測定データ、及び光学的測定データ等を含む、細胞培養ユニット84の培養状態を示す第3測定データを連続的に記録して収集し、収集した第3測定データをデータサーバ94に送信する。
なお、第3メモリユニット120が収集する第3測定データには、細胞培養ユニット84内の培養条件(例えば、圧力、温度、及び/又は培養液の液量等)の測定データを含んでいても良い。
ここで、第3コントローラ114は、データサーバ94において連続的に記録された第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから求められた使用者側設備90における細胞培養デバイス86の第3培養条件を、データサーバ94から受信し、受信した第3培養条件に従って、第3条件コントローラ116が、細胞培養ユニット84内の複数の細胞培養デバイス86を制御するようにしても良い。
【0045】
データサーバ94は、第1コントローラ96からメーカ工場82で収集された第1測定データを受信し、第2コントローラ106から輸送車88において収集された第2測定データを受信し、第3コントローラ114から使用者側設備90で収集された第3測定データを受信し、生体細胞の培養状態、又は低温状態を示す第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データを、細胞培養デバイス86において使用可能の状態まで成熟した生体細胞を使用するまで、連続的に記録して一元的に管理して、生体細胞を培養する細胞培養デバイス86を管理する。
また、データサーバ94は、連続的に記録されて一元的に管理されている第1測定データ、第2測定データ、及び第3測定データから、生体細胞が使用可能の状態まで成熟したことを判断して、使用者側設備90内の使用者に使用タイミングを通知することができる。
【0046】
データサーバ94は、メーカ工場82に設置されていていても、使用者側設備90に設置されていていても、どちらでもない別の1つの地点に配置されていても良い。また、データサーバ94をクラウド上に設け、初期培養から最終培養までの全培養の生体細胞の全ての測定データ(第1~第3測定データ)をクラウド上に格納しておき、メーカ工場82からも、使用者側設備90からもアクセスでき、全ての測定データを閲覧できるようにしておいても良い。
なお、良く培養されてより良く成熟する生体細胞を使用者に提供するために、初期培養から最終培養までの全培養の生体細胞の全ての測定データ(第1~第3測定データ)を一元的管理するためには、メーカ工場82に設置することが好ましいが、使用者もデータサーバ94にアクセスできるようにして、一元的管理された全測定データを閲覧できるようにしておくのが良い。
【0047】
ここで、第1条件コントローラ100、第2条件コントローラ108、第3条件コントローラ116によるそれぞれ第1培養条件(初期培養条件)、第2培養条件、又は低温状態の維持制御条件、及び第培養条件(最終培養条件)への細胞培養デバイス86の制御は、自動で行っても良いし、第1培養条件、第2培養条件、又は低温状態の維持制御条件、及び第3培養条件の少なくとも1つをそれぞれディスプレイ等に表示し、手動で行っても良い。また、第1~第3測定データの少なくとも1つから、メーカ工場82、輸送車88、及び使用者側設備90における細胞培養デバイス86の最適な測定条件をそれぞれ求め、それぞれ求められた測定条件にメーカ工場82、輸送車88、及び使用者側設備90における細胞培養デバイス86の測定を、自動で、又は手動で制御しても良い。
なお、本発明は、上述したように、更に、管理対象の細胞培養デバイスとして、臓器モデル等として利用され、光学的な測定と電気的な測定とを同時に行うことができる細胞培養デバイスを用いることのできる細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システムを提供することを目的とするものでもある。
【0048】
以下に、本発明の細胞培養デバイスの管理方法、及び管理システムに管理対象として用いられる細胞培養デバイスは、流路デバイスであることが好ましい。
以下に、本発明において細胞培養デバイスとして用いられる流路デバイスについて、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0049】
<流路デバイス>
図4は、本発明の細胞培養デバイスの管理方法、及び管理システムに細胞培養デバイスとして用いられる流路デバイスの一例の全体構造を示す概略斜視図である。図5は、図4に示す流路デバイスの全体構造を示す概略分解斜視図である。
なお、図示例は、あくまで本発明の一実施形態であり、本発明の流路デバイスは、この実施形態に制限はされない。
図4、及び図5に示すように、流路デバイス10は、厚さ方向に積層された第1流路部材12と第2流路部材14とで構成された流路ユニット16を有している。なお、以下の説明では、図4及び図5中の上側(第1流路部材12側)を『上』、図4及び図5中の下側(第2流路部材14側)を『下』、ともいう。
【0050】
第1流路部材12、及び第2流路部材14の材料は、一例としてPDMS(ポリジメチルシロキサン)等の弾性を有する透明な材料であることが好ましい。
なお、第1流路部材12、及び第2流路部材14を構成する材料としては、PDMSの他、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、及びポリビニルアルコール等の高分子材料(樹脂材料、ポリマー)が挙げられる。
【0051】
ここで、第1流路部材12、及び第2流路部材14は、ゴム硬度が20~80度であることが好ましく、50~70度であることがより好ましい。
「ゴム硬度」は、JIS K6253:2012に規定される方法で、タイプAのデュロメータによって第1流路部材12、及び第2流路部材14の硬さを測定することによって評価できる。
【0052】
図5に示すように、第1流路部材12の下面、即ち、第2流路部材14との対向面12Aには、第1流路(第1マイクロ流路)18を画成する凹部20が形成されている。凹部20は、流入口20A、及び流出口20B、並びに、流入口20Aと流出口20Bとを連通する流路部20Cを有している。また、第1流路部材12には、第1流路部材12を厚さ方向に貫通し、下端が流入口20A、及び流出口20Bに連通する貫通孔22A、及び22Bがそれぞれ形成されている。第1流路18(凹部20)の幅、及び深さは、流路デバイス10のサイズ、及び用途等に応じて、適宜、設定すればよい。
また、後に詳述するが、第1流路部材12の下面には、凹部20(第1流路18)を含む全面に、第1透明電極60が形成される(貫通孔は除く)。
【0053】
他方、第2流路部材14には、第2流路部材14を厚さ方向に貫通して、第2流路(第2マイクロ流路)24を画成する貫通孔26が形成されている。第2流路24は、第2流路部材14の下面(第1流路部材12と逆面)に当接して、後述する保持プレート38Bが設けられ、貫通孔26の下面側を閉塞することで形成される。第2流路24(貫通孔26)の幅、及び深さは、流路デバイス10のサイズ、及び用途等に応じて、適宜、設定すればよい。
貫通孔26は、流入口26A、及び流出口26B、並びに、流入口26Aと流出口26Bとを連通する流路部26Cを有している。
【0054】
ここで、第2流路部材14の流入口26A、及び流出口26Bは、第1流路部材12の流入口20A、及び流出口20Bと、平面視で重ならない位置に設けられている。一方、第2流路部材14の流路部26Cは、第1流路部材12の流路部20Cと、平面視で重なる位置に設けられている。
なお、平面視とは、言い換えれば、本発明の流路デバイス10を、第1流路部材12の主面と直交する方向から見た際を示す。また、主面とは、シート状物、板状物、及びフィルム状物等の最大面を示す。
【0055】
また、第1流路部材12には、第1流路部材12を厚さ方向に貫通し、下端が第2流路部材14の流入口26A、及び流出口26Bに連通する貫通孔28A、及び28Bが形成されている。
さらに、流路ユニット16(第1流路部材12、及び第2流路部材14)の外周面(側面)には、後述するスペーサ46が配置される位置に、凹部29が設けられている。
【0056】
<多孔質膜>
第1流路部材12、及び第2流路部材14の対向面12Aと14Aとの間には、多孔質膜30が配置されている。多孔質膜30は、一例として高分子材料で構成され、特に、疎水性の有機溶媒に溶解可能な疎水性の高分子材料から構成されることが好ましい。なお、疎水性の有機溶媒は、25℃の水に対する溶解度が10(g/100g水)以下の液体である。
【0057】
高分子材料としては、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、及びポリ-3-ヒドロキシブチレート等)、ポリラクトン(例えば、ポリカプロラクトン等)、ポリアミド、及びポリイミド(例えば、ナイロン、及びポリアミド酸等)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、ならびに、セルロースアシレート(例えば、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレート等)などが挙げられる。
【0058】
これらの高分子材料は、溶剤への溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、及び弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマー、コポリマー、ポリマーブレンド、及びポリマーアロイ等であってもよい。また、これらの高分子材料は、1種単独で、又は2種以上を混合して使用してよい。なお、多孔質膜30の素材は高分子材料には制限されず、細胞の接着性の観点等から種々の素材を選択することが可能である。
【0059】
多孔質膜30の上面30A、及び下面30Bは、第1流路18、及び第2流路24の流路部20C、及び流路部26Cを略覆う大きさを有する。
多孔質膜30は、第1流路18、及び第2流路24を覆うよう設けられる。これにより、多孔質膜30が、第1流路18と第2流路24とを隔てている。
【0060】
具体的には、多孔質膜30の上面30A、すなわち第1流路部材12に面する主面が、第1流路部材12の凹部20と共に第1流路18を画成している。
また、多孔質膜30の下面30B、すなわち第2流路部材14に面する主面が、第2流路部材14の貫通孔26と共に第2流路24を画成している。
【0061】
図6、及び図7に示すように、多孔質膜30には、多孔質膜30を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔32が形成されており、多孔質膜30の上面30A、及び下面30Bには貫通孔32の開口32Aがそれぞれ設けられている。また、図6に示すように、開口32Aは平面視で円形状とされている。開口32A同士は互いに離間して設けられており、隣り合う開口32Aの間には平坦部34が延在している。なお、開口32Aは円形状には限られず、多角形状、楕円形状及び不定形状等であってもよい。
【0062】
複数の開口32Aは規則的に配置されている。本発明では、一例として、開口32Aはハニカム状に配置されている。
ハニカム状の配置とは、平行六辺形(好ましくは正六角形)、又は、これに近い形状を単位とし、これら図形の頂点、及び対角線の交点に開口32Aの中心が位置する配置である。ここで「開口の中心」とは、開口32Aの平面視における中心を意味する。
【0063】
なお、開口32Aの配置はハニカム状に限られず、格子状、又は面心格子状とされていてもよい。格子状の配置とは、平行四辺形(正方形、長方形、及び菱形を含む。好ましくは正方形)、又はこれに近い形状を単位とし、これら図形の頂点に開口の中心が位置する配置である。面心格子状の配置とは、平行四辺形(正方形、長方形、及び菱形を含む。好ましくは正方形)、又はこれに近い形状を単位とし、これら図形の頂点、及び対角線の交点に開口の中心が位置する配置である。
なお、以下に示す開口率を達成しやすい点で、開口32Aの配置はハニカム状であることが好ましい。
【0064】
多孔質膜30において、開口32Aの開口径の変動係数は、10%以下が好ましく、小さいほど好ましい。開口径の変動係数が小さいほど、多孔質膜30の複数の貫通孔32を赤血球等が均一に通過することができる。
また、多孔質膜30の開口率(空隙率)は50%以上が好ましい。開口率を50%以上とすることで、多孔質膜30によって赤血球等の移動が阻害されることを抑制できる。なお、空隙率が大きすぎると、必要とされる強度に対して多孔質膜30の強度が不足するため、空隙率は95%以下が好ましい。
ここで、「開口率」とは、多孔質膜30の主面が平滑であると仮定した場合、即ち、開口32Aが無いと仮定した場合の多孔質膜30の単位体積をV1、この単位体積あたりに設けられている貫通孔32、及び連通孔36の容積の和をV2とし、V1とV2の単位を同じとした場合に、V1に対するV2の割合を百分率で示すものである。
【0065】
図7に示すように、多孔質膜30の貫通孔32は球体の上端、及び下端を切り取った球台形状とされている。また、互いに隣り合う貫通孔32同士は、多孔質膜30の内部において連通孔36によって連通している。
【0066】
1つの貫通孔32は、隣り合う全部の貫通孔32と連通していることが好ましい。本発明のように、複数の貫通孔32の開口32Aがハニカム状に配置されている場合には、1つの貫通孔32は、6つの連通孔36によって隣り合う6つの貫通孔32とそれぞれ連通していることが好ましい。
なお、貫通孔32はバレル形状、円柱形状、及び多角柱形状等であってもよく、また、連通孔36は隣り合う貫通孔32同士を繋ぐ筒状の空隙であってもよい。
【0067】
貫通孔32が形成された多孔質膜30を作製する方法としては、例えば、ナノプリント法、結露法、エッチング法、サンドブラスト法、及びプレス成形等の方法が挙げられる。
ナノプリント法とは、凹凸形状を有する型に多孔質膜30を構成する素材を流し込む、又は、型を、多孔質膜30を構成する素材に押し当てることにより、貫通孔32を作製する方法である。また、結露法とは、多孔質膜30を構成する素材の表面を結露させ、水滴を型として貫通孔32を形成する方法である。
【0068】
結露法は、他の方法と比較して、多孔質膜30の膜厚を薄くできるとともに、空隙率及び開口32Aの開口率を大きくすることが可能であり、また、多孔質膜30内に連通孔36を設けることが可能である。このため、本発明では、多孔質膜30を結露法によって作製している。
結露法の詳細は、例えば、特許第4945281号公報、特許第5422230号公報、特開2011-74140号公報、及び、特許第5405374号公報等に記載されている。
【0069】
なお、本発明の流路デバイス10において、多孔質膜は、このような貫通孔を有するものに限定はされず、不織布、及び三次元的に空隙が形成された膜等、公知の多孔質膜(多孔質材)が、各種、利用可能である。
【0070】
なお、本発明の流路デバイス10は、多孔質膜30の少なくとも主面の細胞が播種される領域が、フィブロネクチン、コラーゲン(例えば、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、及びV型コラーゲン等)、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン、パールカン、ニドゲン、プロテオグリカン、オステオポンチン、テネイシン、ネフロネクチン、基底膜マトリックス、及びポリリジンからなる群から選択される少なくとも1種によって被覆されていることが好ましい。
多孔質膜30を、これらの材料で被覆することにより、細胞の接着性を高めることが可能となる。
【0071】
また、本発明の流路デバイス10を臓器模擬装置(臓器モデル)等として用いる場合、多孔質膜30の主面に模擬対象の臓器を構成する細胞層を有してもよい。
多孔質膜30の主面に細胞層を有することで、第1流路18内、及び第2流路24内を模擬対象の臓器内に近い環境とすることが可能となる。
すなわち、本発明の流路デバイスは、細胞を培養するための細胞培養デバイスであってもよく、あるいは、細胞層を有する、細胞、及び/又は薬液などの評価等を行うための測定を行う、測定用の流路デバイスであってもよい。
【0072】
多孔質膜30の主面に設ける細胞としては、例えば、実質細胞(例えば、肝実質細胞、及び膵実質細胞等)、間質細胞(例えば、周皮細胞)、筋細胞(例えば、平滑筋細胞、心筋細胞、及び骨格筋細胞等)、線維芽細胞、神経細胞、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞、及びリンパ管内皮細胞等)、上皮細胞(例えば、肺胞上皮細胞、口腔上皮細胞、胆管上皮細胞、腸管上皮細胞、膵管上皮細胞、腎上皮細胞、尿細管上皮細胞、及び胎盤上皮細胞等)、並びに、このいずれかに分化する細胞(例えば、前駆細胞、間葉系幹細胞、及び多能性幹細胞等)などが例示される。
【0073】
多能性幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell;EG細胞)、胚性癌細胞(embryonal carcinoma cell;EC細胞)、多能性成体前駆細胞(multipotent adult progenitor cell;MAP細胞)、成体多能性幹細胞(adult pluripotent stem cell;APS細胞)、及び、Muse細胞(multi-lineage differentiating stress enduring cell);などが挙げられる。
【0074】
細胞として、病態を再現する目的で、遺伝子変異を有する細胞、及び/又は患者由来の細胞を用いてもよい。
【0075】
多孔質膜30の主面に設ける細胞層は、両面に同じ細胞層を設けてもよく、あるいは、1面ずつ互いに異なる細胞層を設けてもよい。
一例として、多孔質膜30の一方の面に血管内皮細胞層を設け、多孔質膜30の他方の面に平滑筋細胞層を設けることで、血管壁モデルとなる流路デバイス10を得られる。
【0076】
<保持プレート>
図4及び図5に示すように、流路デバイス10は、流路ユニット16を厚さ方向に圧縮した状態で保持する保持部材として、上側(第1流路部材12側)の保持プレート38Aと下側(第2流路部材14側)の保持プレート38Bとを有している。
保持プレート38A、及び保持プレート38Bは、流路ユニット16の厚さ方向における両端、すなわち第1流路部材12の上側、及び第2流路部材14の下側に流路ユニット16と別体に設けられており、第1流路部材12の上面全体、及び第2流路部材14の下面全体を覆う大きさを有する。
【0077】
保持プレート38A、及び保持プレート38Bは、共に、硬質で透明な高分子材料で構成されることが好ましい。
従って、保持プレート38A、及び保持プレート38Bの構成材料としては、シクロオレフィンポリマー、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、及びポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、保持プレート38A、及び保持プレート38Bは、上述の第1流路部材12、及び第2流路部材14よりも硬いことが好ましく、更に、ゴム硬度が80度以上であることが好ましく、90度以上であることがより好ましい。
【0078】
図5に示すように、保持プレート38A、及び保持プレート38Bの互いに対応する位置には、厚さ方向に貫通する複数(本発明では8つ)のボルト孔40がそれぞれ形成されている。また、第1流路部材12の上側に設けられている保持プレート38Aには、第1流路部材12の貫通孔22A、22B、28A、及び28Bに、それぞれ連通する、貫通孔42A、42B、44A、及び44Bが、形成されている。
【0079】
なお、貫通孔42A、42B、44A、及び44Bには、それぞれ、図示しないチューブが接続されており、チューブを通して第1流路18、及び第2流路24に溶液、及び細胞懸濁液等を流入し、第1流路18、及び第2流路24から溶液、及び細胞懸濁液等が流出する。
【0080】
一対の保持プレート38間における流路ユニット16の凹部29の外側には、保持プレート38の間隔を規定する複数(図示例では8つ)のスペーサ46がそれぞれ設けられている。スペーサ46は、内径がボルト孔40の内径と略同じ大きさとされた円筒形状の部材であり、ボルト孔40に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0081】
図8、及び図9に示されるように、一対の保持プレート38は、ボルト孔40、及びスペーサ46に挿通されてナット48で固定された複数のボルト50によって互いに接合される。このとき、第1流路部材12、及び第2流路部材14は、間に多孔質膜30を挟んだ状態で一対の保持プレート38によって圧縮されて保持される。
【0082】
<透明電極>
本発明の流路デバイス10において、第2流路24に当接する保持プレート38Bには、第2流路部材14との当接面の全面を覆って、第2透明電極62が配置される。上述のように、第2流路24は、保持プレート38Bが第2流路部材14の下面に当接して、貫通孔26の下面を閉塞することで形成される。従って、第2流路24は、下面側が第2透明電極62となり、すなわち、第2透明電極62は、第2流路24に接触している。
また、上述のように、第1流路部材12は、下面に、第1流路18を画成する凹部20を有する。第1流路部材12は、下面に、凹部20を含む全面を覆って、第1透明電極60を有する。すなわち、第1透明電極60は、第1流路18に接触している。
流路デバイス10においては、第1流路18に接触する第1透明電極60と、第2流路24に接触する第2透明電極62とで、一対の透明電極(電極対)を構成している。
【0083】
本発明の流路デバイス10は、このような第1透明電極60、及び第2透明電極62を有することにより、光学的な測定と電気的な測定とを同時に行うことを可能にしている。
【0084】
上述のように、人体は複雑であるため、流路デバイスを用いて細胞等の評価を正確に行うためには、一種の測定のみでは不十分であり、複数種の測定を同時に行う、いわゆるマルチバリデーションを行うことが好ましい。
流路デバイスを用いる測定としては、一例として、図10に概念的に示すように、蛍光標識をつけた大分子を第1流路18、又は第2流路24に流して、光源70から励起光を照射して、光センサ72で蛍光を測定する、膜の透過性の評価が例示される。
また、第1流路18、及び/又は第2流路24に液体を流して、多孔質膜30に形成した細胞層等を撮像カメラ74(透過型電子顕微鏡、及び蛍光顕微鏡など)等で撮像(可視化)することで、細胞層等の構造を評価することも行われる。
さらに、第1透明電極60、及び第2透明電極62に電気センサ76を接続して、電位差、抵抗、及び短絡回路電流等の電気特性を測定することで、膜を通した流体、及びイオン等の輸送機能、及び障壁の形成等を評価することも行われる。
【0085】
ところが、従来の流路デバイスでは、多孔質膜に形成した細胞層等の電気的特性を測定するために、第1流路、及び第2流路に対応して電極を形成すると、通常、電極は金属製であるため、電極が遮光部材として作用してしまい、蛍光の測定、及び細胞層の撮像などの光学的な測定、及び評価を適正に行うことができない。
そのため、従来の流路デバイスでは、電気的な測定と、光学的な測定とを、同時に行うことができない。
【0086】
これに対し、本発明の流路デバイス10では、第1流路18と第2流路24とを挟んで、一対の第1透明電極60及び第2透明電極62を設ける。
本発明の流路デバイス10は、第1流路18と第2流路24とを挟んで一対の電極を設けても、透明電極であるので、電極が蛍光、及び細胞層の撮像等の光学的な測定方法の妨害にならない。そのため、本発明の流路デバイス10によれは、図10に示すような光源70と光センサ72とを用いる蛍光の測定、撮像カメラ74等を用いる細胞層等の撮像、及び、電気センサ76を用いる抵抗の測定等、光学的な測定と、電気的な測定とを、同時に行うことが可能である。
また、透明電極を用いるため、電極を面状電極としても、光学的な測定の妨害をすることがない。そのため、十分な面積の電極によって、安定した電気的な測定を行うことができる。さらに、多孔質膜30に形成した細胞層の面の電気的な性質を、電気信号として取り出すことも可能である。
【0087】
本発明の流路デバイス10において、第1透明電極60、及び第2透明電極62は、導電性を有し、かつ、透明な電極である。
本発明において、導電性を有するとは、シート抵抗値が0.1~10,000Ω/□(Ω/sq(Ohms per Square))であり、一般的には電気抵抗層と呼ばれるものも含む。汎用の電源を用いる場合は、シート抵抗値が低いほうが好ましく、具体的には、300Ω/□以下が好ましく、200Ω/□以下がより好ましく、100Ω/□以下がさらに好ましい。なお、本発明において、シート抵抗値(表面抵抗率)は、JIS(Japanese Industrial Standards) K 7194に準拠して測定すればよい。
また、本発明において、透明であるとは、透過率が60~99.99%であることを意味する。透明電極の透過率は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。なお、本発明において、透過率は、JIS K 7361-1に準拠して全光線透過率[%]を測定すればよい。
【0088】
本発明の流路デバイス10において、第1透明電極60、及び第2透明電極62の材料には制限はなく、各種の電子デバイス(電子装置、電子素子)において、透明電極として利用されている材料が、各種、利用可能である。
具体的には、第1透明電極60、及び第2透明電極62に含まれる材料としては、金属酸化物(Indium Tin Oxide:ITOなど)、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube:CNT、及びCarbon Nanobud:CNB等)、グラフェン、高分子導電体(ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェノール、ポリアニリン、及びPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)等)、金属ナノワイヤー(銀ナノワイヤー、及び銅ナノワイヤーなど)、並びに、金属メッシュ(銀メッシュ、及び銅メッシュなど)などが挙げられる。金属メッシュの透明電極は、金属のみで形成されたものよりも、銀、及び銅等の導電性微粒子がマトリクスに分散されて形成されたものが、熱収縮率の観点から好ましい。
【0089】
これらの材料からなる透明電極は、材料に応じた公知の方法で形成すればよい。
例えば、カーボンナノチューブを含む透明電極であれば、カーボンナノチューブを分散してなる塗料を調製して、第1流路部材12の下面等、透明電極を形成する部分に調製した塗料を塗布して乾燥し、さらに必要に応じて熱処理を行う、塗布法によって、透明電極を形成すればよい。
カーボンナノバッドを含む透明電極であれば、同じく第1流路部材12の下面等、透明電極を形成する部分に、SID(Society for Information Display) 2015 DIGEST 1012ページに記載されるダイレクト・ドライ・プリンティング(DDP:Direct Dry Printing)法によって、透明電極を形成すればよい。
さらに、銀ナノワイヤーを含む透明電極であれば、同じく第1流路部材12の下面等、透明電極を形成する部分に、米国特許出願公開第2013/0341074号明細書の実施例1に記載される方法によって、透明電極を形成すればよい。
【0090】
ここで、本発明の流路デバイス10では、第1透明電極60が形成される第1流路部材12、及び第2透明電極62が形成される保持プレート38Bは、共に、高分子材料によって構成されることが好ましい。
この点を考慮すると、第1透明電極60、及び第2透明電極62を構成する材料としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、及び真空蒸着等の気相成膜法(気相堆積法)ではなく、塗布法によって形成可能である材料が好ましく、中でも、カーボンナノチューブは好適に例示される。また、本発明の流路デバイス10では、上述のように、蛍光の観察等も利用可能であるが、金属酸化物等の金属材料の中には、励起光、及び/又は蛍光を吸収して発光する材料もある。この点でも、励起光、及び/又は蛍光を吸収しないカーボンナノチューブは、透明電極の材料として好ましい。
【0091】
なお、後述するが、本発明の流路デバイスにおいては、透明電極は、本発明のように、第1流路部材12の下面全面、及び、保持プレート38Bの全面に形成する構成に制限されない。
【0092】
また、透明電極は、様々な形状及びサイズが利用可能である。従って、透明電極は、線状でも面状でもよいが、上述の理由によって、少なくとも一方の透明電極、好ましくは両方の透明電極が、面状電極であることが好ましい。これにより、十分な面積の電極によって、安定した電気的な測定が可能になる。
なお、本発明において、面状電極とは、第1流路18および第2流路24が多孔質膜30により隔てられている領域の面積よりも大きい面積である電極を示す。
より好ましくは、少なくとも一方の透明電極、好ましくは両方の透明電極が、第1流路部材12の主面と直交する方向から見た際に、多孔質膜30を内包する形状、及びサイズであることが好ましい。第1流路部材12の主面と直交する方向から見た際とは、即ち、上述の平面視と同様である。特に、第1透明電極60のように多孔質膜30に当接する透明電極が、このような構成を有することで、多孔質膜30に形成した細胞層等の面の電気的な性質を取り出すことができ、好ましい。
【0093】
<流路デバイスの作製方法>
本発明の流路デバイス10を作製する際には、まず、滅菌紙が主面に貼り付けられた多孔質膜30を準備する。そして、多孔質膜30の下面30Bの滅菌紙をピンセットによって剥がし、図11に示すように、貫通孔26が形成された第2流路部材14の上に多孔質膜30を載置し、多孔質膜30と第2流路部材14とを接合する。
【0094】
次に、多孔質膜30の上面30Aの滅菌紙をピンセットによって剥がし、顕微鏡で確認しながら、第1透明電極60が形成された第1流路部材12と、第2流路部材14との位置を合わせ、図12に示すように、凹部20が形成された第1流路部材12を多孔質膜30の上に積層する。これにより、第1流路部材12の凹部20と多孔質膜30とによって第1流路18を画成する。また、第1流路18は、第1流路部材12に形成された第1透明電極60に接触する。
【0095】
次に、図13に示すように、互いの貫通孔22A、及び22Bと、42A、及び42Bとの位置を合わせながら、第1流路部材12の上面に保持プレート38Aを載置する。
その後、流路ユニット16を裏返し、第2流路部材14の下面に、第2透明電極62を形成した保持プレート38Bを載置する。これにより、第2流路部材14の貫通孔26と、多孔質膜30と、保持プレート38Aとによって第2流路24を画成する。また、第2流路24は、保持プレート38Bに形成された第2透明電極62に接触する。
【0096】
最後に、図14に示すように、流路ユニット16の周囲にスペーサ46を配置し、保持プレート38Aと保持プレート38Bとを、ボルト50とナット48とで締め付けることにより、流路デバイス10を作製する。
なお、上述の作製工程は一例であり、順序が前後してもよい。また、上述の工程に、その他の工程を追加してもよい。
【0097】
<その他の実施形態>
以上、本発明の流路デバイスの一実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に制限されるものでなく、上述の構成以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、種々、変形して実施可能である。
【0098】
例えば、第1流路18に対応する透明電極は、凹部20を含む第1流路部材12の下面全面ではなく、第1流路18(凹部20)の壁面全面のみに配置してもよく、あるいは、第1流路18の上面のみに配置してもよく、あるいは、第1流路18の側面のみに配置してもよい。
同様に、第2流路24に対応する透明電極は、保持プレート38Bの全面ではなく、保持プレート38Bの第2流路24に対応する部分のみに配置してもよく、あるいは、第2流路24(貫通孔26)の側面のみに配置してもよい。
【0099】
また、本発明においては、透明電極は、第1流路18、及び第2流路24に接触していなくてもよい。
例えば、第1流路18に対応する透明電極を第1流路部材12の上面(多孔質膜30と逆側の面)に配置し、第2流路24に対応する透明電極を保持プレート38Bの下面(多孔質膜30と逆側の面)に配置する等、第1流路18に対応する透明電極、及び第2流路24に対応する透明電極の少なくとも一方を、流路とは離間して配置してもよい。
透明電極を、第1流路18、及び/又は第2流路24と離間して設けることにより、インピーダンス及び誘電率の測定が可能になる。
【0100】
即ち、本発明の流路デバイスにおいては、1対の透明電極は、第1流路18、及び第2流路24(その少なくとも一部)を挟んで設けられれば、様々な位置に、様々な形状で配置可能である。
【0101】
さらに、本発明の流路デバイス10は、第1流路部材12と第2流路部材14との間に多孔質膜30を配置し、この積層体を保持プレート38Aと保持プレート38Bとで挟持した構成を有するが本発明は、この構成に制限されない。
例えば、保持プレートを用いず、かつ、第2流路24を画成する貫通孔26の代わりに、底を有する凹部を有する第2流路部材を用いて、特許文献1に記載される流路デバイス(マイクロチャネルを有する臓器模倣装置)のように、第1流路部材と、多孔質膜と、第2流路部材とで、流路デバイスを構成してもよい。
また、第1流路部材として、第1流路を画成する凹部の代わりに、第1流路を画成する貫通孔を有する第1流路部材を用いて、保持プレートで貫通孔を閉塞する構成であってもよい。この際においては、第1流路に対応する透明電極は、第1流路部材の下面(多孔質膜側の面)に設けてよく、あるいは、保持プレートの主面に設けてもよい。
【0102】
以上、本発明において細胞培養デバイスとして用いられる流路デバイスについて詳細に説明したが、本発明においては上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【0103】
以下に、本発明において細胞培養デバイスとして用いられる流路デバイスの具体例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0104】
<流路デバイスの作製>
上述した方法で、図1に示すような流路デバイス10を作製した。
第1流路部材12、及び第2流路部材14はPDMS製、保持プレート38A、及び保持プレート38Bはシクロオレフィンポリマー製とした。第1流路18(凹部20)、及び第2流路24(貫通孔26)は、共に、幅300μm、深さ300μmとした。
また、第1流路部材12の下面(凹部20の形成面)、及び保持プレート38Bの上面(第1流路部材12側となる面)には、塗布法によって、カーボンナノチューブを含む、厚さ0.5μmの第1透明電極60、及び第2透明電極62を形成した。同様の透明電極を作製して、上述の方法で確認したところ、第1透明電極60、及び第2透明電極62は、共に、シート抵抗値は300Ω/□以下、透過率は80%以上であった。
【0105】
多孔質膜30として、ハニカム状に貫通孔32孔の並んだポリカーボネートのフィルムを準備した。この多孔質膜30の表面をコラーゲンで被覆した。その後、多孔質膜30を滅菌紙に挟みこんだ。
【0106】
多孔質膜30の一方の面の滅菌紙をピンセットによって剥がした。次いで、滅菌紙を剥がした面を下にして、多孔質膜30を第2流路部材14上にセットした(図11参照)。
さらに、綿棒を用いて多孔質膜30にエタノールを浸し、多孔質膜30と第2流路部材14とを接合した。
【0107】
多孔質膜30の他方の面の滅菌紙をピンセットによって剥がした。次いで、第1流路部材12と第2流路部材14とを位置合わせして、第1流路部材12を多孔質膜30の上に積層した(図12参照)。
【0108】
次いで、互いの貫通孔22A、及び貫通孔22Bと、貫通孔42A、及び貫通孔42Bとを位置合わせして、第1流路部材12の上面に保持プレート38Aを載置した。更に、積層体を裏返して、第2流路部材14の下面に保持プレート38Bを配置した(図13参照)。
さらに、流路ユニット16の周囲にスペーサ46を配置し、保持プレート38Aと保持プレート38Bとをボルト50とナット48とで締め付けて、流路デバイス10を作製した(図14参照)。
【0109】
<流路デバイス内での細胞培養>
骨髄由来間葉系幹細胞(Lonza社製)の懸濁液(3×10-6cells/mL(リットル))を調製した。調製した懸濁液200μLを、流路デバイス10の第2流路24に注入した。
【0110】
流路デバイス10を反転し、CO2インキュベーター内に37℃で3時間静置した後、毎分0.7μLの速度で培地を流し、一晩、培養した。
【0111】
次に、CellTracker Orange(Thermo Fischer社製)で染色した、iPS細胞由来の血管内皮細胞(CDI社製、iCell EC)の懸濁液(1×10-6cells/mL)を調整した。
調製した懸濁液200μLを、流路デバイス10の第1流路18に注入した。
【0112】
<細胞の測定>
倒立蛍光顕微鏡(Olympus社製、IX83)を用いて、第1流路18に注入した染色済iPS細胞由来の血管内皮細胞の分布を観察した。
次に、蛍光標識デキストラン(Thermo Fischer社製、D1830)を第1流路18に注入し、倒立蛍光顕微鏡を用い、第1流路18に注入した蛍光標識デキストランの分布を観察し、蛍光標識デキストランの第2流路24への漏れを評価した。
同時に、光検出器(浜松ホトニクス社製、光電子増倍管H11902-20)を用いて、第2流路24を透過してくる光量を検出し、第2流路24に漏れる蛍光標識デキストランの量を測定した。
【0113】
次に、第1流路18にPhenol Red(東京化成工業社製)を注入し、光検出器(ソーラボ社製、差分増幅フォトディテクタPDB210A/M)を用いて、第2流路24を透過してくる光量を検出し、第2流路24に漏れるPhenol Redの量を測定した。この時、蛍光標識デキストランとPhenol Redとでは分子量が異なるため、細胞構造に欠陥があった場合、それぞれの漏れ量を比較することで、欠陥の大きさを定量評価することができる。
【0114】
OCT(Optical Coherence Tomography、特許第6184905号公報参照)を用い、第1流路18、及び第2流路24内の細胞の立体構造、細胞層の構成、及び、細胞層の厚さを測定した。
同時に、第1流路18に形成した第1透明電極60、及び保持プレート38Bに形成した第2透明電極62に、配線を取り付けて、第1流路18、及び第2流路24内部の電気抵抗を測定する(HIOKI社製、デジタルマルチメータDT4282)ことにより、内部構造の状態を監視した。この電気抵抗値が高いことは、細胞が緻密に配置されていることを示し、低いことは細胞間にすき間が生じていることを表しており、電気抵抗値により細胞構造の状態を定量評価することができる。
【0115】
以上のように、本発明に用いられる流路デバイスを用いて、倒立蛍光顕微鏡による光学的な観察と、複数のトレーサーの光検出と、OCTと、電気測定とを組み合わせるマルチバリデーションを行うにより、細胞の構造、及び欠陥サイズを、非破壊、及び非浸襲で評価することが可能となる。
これに対して、これらの測定の内の、いずれか1つの単独の測定では、欠陥の構造の本来の“すきま”と“欠陥(細胞が適正に存在できていない異常部分)”を区別し、それぞれの大きさを定量することまでは難しい。
すなわち、本発明において細胞培養デバイスとして用いられる流路デバイスは、マルチバリデーションによる臓器モデル(生体チップ)の解析に、非常に有効である。したがって、本発明に係る細胞培養デバイスの管理方法、及び管理システムに用いる細胞培養デバイスとして極めて有効である。
【0116】
以上、本発明に係る細胞培養デバイスの管理方法、及び細胞培養デバイスの管理システムについての種々の実施形態、及び実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施形態、及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良、又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0117】
生命科学の研究、創薬、薬物の開発、及び安全性試験、ならびに、化学、及び生物学的な検定等、各種の分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 流路デバイス
12 第1流路部材
12A、14A 対向面
14 第2流路部材
16 流路ユニット
18 第1流路
20 凹部
20A、26A 流入口
20B、26B 流出口
20C、26C 流路部
22A、22B、28A、28B 貫通孔
24 第2流路
26 貫通孔
29 凹部
30 多孔質膜
30A 上面
30B 下面
32 貫通孔
32A 開口
34 平坦部
36 連通孔
38、38A、38B 保持プレート
40 ボルト孔
42A、42B、44A、44B 貫通孔
46 スペーサ
48 ナット
50 ボルト
60 第1透明電極
62 第2透明電極
70 光源
72 光センサ
74 撮像カメラ
76 電気センサ
80 細胞培養デバイスの管理システム
82 メーカ工場
84 細胞培養ユニット
86 細胞培養デバイ
88 輸送車
90 使用者側設備
92 薬剤テストユニット
94 データサーバ
96 第1コントローラ
98 製造設備
100 第1条件コントローラ
102 第1測定ユニット
104 第1メモリユニット
106 第2コントローラ106
108 第2条件コントローラ
110 第2測定ユニット
112 第2メモリユニット
114 第3コントローラ
116 第3条件コントローラ
118 第3測定ユニット
120 第3メモリユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15