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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/00 20060101AFI20220209BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/6592
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020530308
(86)(22)【出願日】2018-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018016579
(87)【国際公開番号】W WO2019132475
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0179656
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ヒョン-チン
(72)【発明者】
【氏名】パク、イン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ペ、キョン-ポク
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュン-フン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274874(US,A1)
【文献】特表2015-524872(JP,A)
【文献】特表2010-504407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/00-10/14
C08F 4/60-4/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)密度(d)が0.850g/cc~0.865g/ccであり、
(2)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件)が0.1g/10分~3.0g/10分であり、
(3)クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が8重量%以上であり、当該分画の重量平均分子量(Mw)が50,000g/mol~500,000g/molである、オレフィン系重合体。
【請求項2】
前記オレフィン系重合体は、前記クロス分別クロマトグラフィ上で、-20℃での可溶性分画の重量平均分子量(Mw)が50,000g/mol~300,000g/molである、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
前記オレフィン系重合体は、前記クロス分別クロマトグラフィ上で、-20℃での可溶性分画の重量平均分子量(Mw)が60,000g/mol~200,000g/molである、請求項1または2に記載のオレフィン系重合体。
【請求項4】
前記オレフィン系重合体は、(4)分子量分布(MWD、Molecular Weight Density)が1.0~3.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項5】
前記オレフィン系重合体は、(5)重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000である、請求項1~4のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項6】
前記オレフィン系重合体は、前記(2)溶融指数(MI)が0.2g/10分~2g/10分である、請求項1~5のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項7】
前記オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素数3~12のα-オレフィン共単量体との共重合体である、請求項1~6のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項8】
前記α-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含む、請求項7に記載のオレフィン系重合体。
【請求項9】
前記オレフィン系重合体は、エチレンと、1-オクテンとの共重合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
前記オレフィン系重合体は、溶離終了温度が60℃以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項11】
クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が10重量%~50重量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【請求項12】
前記オレフィン系重合体は、
(4)分子量分布(MWD、Molecular Weight Density)が1.0~3.0であり、
(6)MI10/MI2.16>7.91(MI2.16-0.188である、請求項1~11のいずれか一項に記載のオレフィン系重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年12月26日付けの韓国特許出願第10‐2017‐0179656号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、オレフィン系重合体に関し、具体的には、2種の遷移金属化合物触媒を用いて製造された、優れたアンチブロッキング(anti-blocking)特性を示す低密度オレフィン系重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンは、成形性、耐熱性、機械的特性、衛生品質、耐水蒸気透過性および成形品の外観特性に優れ、押出成形品、ブロー成形品および射出成形品用として広く使用されている。しかし、ポリオレフィン、特に、ポリエチレンは、分子内に極性基がないため、ナイロンのような極性樹脂との相溶性が低く、極性樹脂および金属との接着性が低いという問題がある。結果、ポリオレフィンを極性樹脂または金属とブレンドするかまたはこれらの材料と積層して使用することが困難であった。また、ポリオレフィンの成形品は、表面親水性および帯電防止性が低いという問題がある。
【0004】
かかる問題を解決し、極性材料に対する親和性を高めるために、ラジカル重合によりポリオレフィン上に極性基含有単量体をグラフトする方法が広く使用された。しかしこの方法は、グラフト反応の途中にポリオレフィンの分子内架橋および分子鎖の切断が生じ、グラフト重合体と極性樹脂の粘度バランスが良好でなく、混和性が低いという問題があった。また、分子内の架橋によって生成されたゲル成分または分子鎖の切断によって生成された異物によって成形品の外観特性が低いという問題があった。
【0005】
また、エチレン単独重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体またはプロピレン/α-オレフィン共重合体のようなオレフィン重合体を製造する方法として、チタン触媒またはバナジウム触媒のような金属触媒下で極性の単量体を共重合する方法が用いられた。しかし、前記のような金属触媒を使用して極性単量体を共重合する場合、分子量分布または組成物分布が広く、重合活性が低いという問題がある。
【0006】
また、他の方法として、二塩化ジルコノセン(zirconocene dichloride)のような遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなるメタロセン触媒の存在下で重合する方法が知られている。メタロセン触媒を使用する場合、高分子量のオレフィン重合体が高活性を有し、また、生成されるオレフィン重合体は、分子量分布が狭く、組成分布が狭い。
【0007】
また、非架橋シクロペンタジエニル基、架橋または非架橋ビスインデニル基、またはエチレン架橋非置換インデニル基/フルオレニル基のリガンドを有するメタロセン化合物を触媒として使用し、極性基を含有するポリオレフィンを製造する方法としては、メタロセン触媒を使用する方法も知られている。しかし、これらの方法は、重合活性が非常に低いという欠点がある。そのため、保護基によって極性基を保護する方法が実施されているが、保護基を導入する場合、反応後にこの保護基をまた除去しなければならないため、工程が複雑になるという問題がある。
【0008】
アンサ-メタロセン(ansa-metallocene)化合物は、ブリッジグループによって互いに連結された二つのリガンドを含む有機金属化合物であり、前記ブリッジグループ(bridge group)によってリガンドの回転が防止され、メタルセンターの活性および構造が決定される。
【0009】
かかるアンサ-メタロセン化合物は、オレフィン系ホモポリマーまたはコポリマーの製造において触媒として使用されている。特に、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)-フルオレニル(fluorenyl)リガンドを含むアンサ-メタロセン化合物は、高分子量のポリエチレンを製造することができ、これにより、ポリプロピレンの微細構造を制御することができると知られている。
【0010】
また、インデニル(indenyl)リガンドを含むアンサ-メタロセン化合物は、活性に優れ、立体規則性が向上したポリオレフィンを製造することができると知られている。
【0011】
このように、より高い活性を有し、且つオレフィン系高分子の微細構造を制御することができるアンサ-メタロセン化合物に対する様々な研究がなされているが、その程度がまだ十分でない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、2種の遷移金属化合物触媒を用いて製造された、優れたアンチブロッキング特性を示す低密度オレフィン系重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、
(1)密度(d)が0.850g/cc~0.865g/ccであり、(2)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件)が0.1g/10分~3.0g/10分であり、(3)クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が8重量%以上であり、当該分画の重量平均分子量(Mw)が50,000g/mol~500,000g/molである、オレフィン系重合体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるオレフィン系重合体は、低密度オレフィン系重合体として超低結晶性領域の分子量を調節することで、向上したアンチブロッキング特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本明細書および請求の範囲に使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0017】
本明細書において、「重合体」という用語は、同一であるか相違する類型の単量体の重合により製造される重合体化合物を意味する。「重合体」という総称は、「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」だけでなく、「混成重合体」という用語を含む。また、前記「混成重合体」とは、二つ以上の相違する類型の単量体の重合により製造された重合体を意味する。「混成重合体」という総称は、(二つの相違する単量体から製造された重合体を指すために通常使用される)「共重合体」という用語だけでなく、(三つの相違する類型の単量体から製造された重合体を指すために通常使用される)「三元共重合体」という用語を含む。これは、四つ以上の類型の単量体の重合により製造された重合体を含む。
【0018】
本発明によるオレフィン系重合体は、下記(1)~(3)の要件を満たすものである。
【0019】
(1)密度(d)が0.850g/cc~0.865g/ccであり、(2)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kg荷重条件)が0.1g/10分~3.0g/10分であり、(3)クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が8重量%以上であり、当該分画の重量平均分子量(Mw)が50,000g/mol~500,000g/mol。
【0020】
前記クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)の測定の際、低い温度で溶出される分画であるほど、結晶性が低く、本明細書では、前記クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃以下で溶出される可溶性分画(SF、Soluble Fraction)を超低結晶性領域と定義する。
【0021】
通常、重合体の密度が低いほど結晶性が低くなり、超低結晶性領域が増加して衝撃強度が改善される。しかし、通常のオレフィン系重合体で超低結晶性領域を所定の水準以上に製造し難く、製造する場合、当該領域の分子量が減少してアンチ(anti)ブロッキング特性が悪くなる。本発明によるオレフィン系重合体は、通常のオレフィン系重合体と比較して、同一水準の密度で、超低結晶含有量を高く維持しながらも当該領域の分子量を高く維持することにより、優れたアンチブロッキング特性を発揮することができる。
【0022】
本発明によるオレフィン系重合体は、ASTM D-792による測定の際、0.850g/cc~0.865g/ccの密度を示し、具体的には、0.853g/cc~0.863g/ccの密度を示すことができる。
【0023】
前記溶融指数(MI)は、オレフィン系重合体を重合する過程で使用される触媒の共単量体に対する使用量を調節することで調節可能であり、オレフィン系重合体の機械的物性および衝撃強度、また成形性に影響を及ぼす。本明細書において、前記溶融指数は、0.850g/cc~0.865g/ccの低密度条件でASTM D1238に準じて、190℃、2.16kgの荷重条件で測定したものであり、0.1g/10分~3g/10分であってもよく、具体的には0.2g/10分~2g/10分、さらに具体的には0.25g/10分~1.8g/10分であってもよい。
【0024】
本発明によるオレフィン系重合体は、クロス分別クロマトグラフィ(CFC、Cross-fractionation Chromatography)上で-20℃での可溶性分画(SF、Soluble Fraction)が8重量%以上であり、具体的には10重量%~50重量%であってもよく、当該分画の重量平均分子量(Mw)が50,000以上を維持することができる。本発明の一例によるオレフィン系重合体は、クロス分別クロマトグラフィ上で-20℃での可溶性分画が前記範囲を満たすことから高い超低結晶含有量を有し、当該分画の分子量を高く維持することにより、一層優れたアンチブロッキング特性を発揮することができる。
【0025】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、超低結晶性領域に定義される前記クロス分別クロマトグラフィ上で、-20℃での可溶性分画の重量平均分子量(Mw)が、具体的には50,000g/mol~500,000g/molを満たすことができ、より具体的には50,000g/mol~300,000g/mol、さらに具体的には60,000g/mol~200,000g/molを満たすことができる。本発明の一例によるオレフィン系重合体は、クロス分別クロマトグラフィ上で-20℃での可溶性分画が、前記重量平均分子量(Mw)範囲を満たすことから、高分子量であるとともに高い超低結晶含有量を示し、特に、前記密度(1)および溶融指数(2)を満たすとともに、前記可溶性分画の含有量および前記可溶性分画の重量平均分子量(Mw)を満たすことから、通常の従来のオレフィン系重合体と比較して、同一水準の密度および溶融指数値で高い可溶性分画の含有量および可溶性分画の重量平均分子量を示し、これにより優れたアンチブロッキング特性を発揮することができる。
【0026】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、前記密度範囲を示す低密度の重合体であって、前記超低結晶含有量が高いため、CFC溶離終了温度が60℃以下であってよく、具体的には20℃~60℃、より具体的には20℃~55℃、さらに具体的には25℃~45℃であってよい。本発明のオレフィン系重合体は、溶離終了温度が60℃以下で全体的な結晶性が低く、それによって衝撃強度などに優れる。特に、60℃以後にも溶出される分画を有するLDPE、HDPE、LLDPEなどとは完全に区分される。
【0027】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である(4)分子量分布(MWD;Molecular Weight Distribution)が1.0~3.0、具体的には1.5~2.8、さらに具体的には1.8~2.6であってもよい。本発明の一例によるオレフィン系重合体は、特徴的構造を有する2種の遷移金属化合物を含む触媒組成物を使用して重合されることで、狭い分子量分布を示すことができる。
【0028】
通常、オレフィン系重合体の密度は、重合時に使用される単量体の種類と含有量、重合度などの影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含有量による影響が大きい。本発明のオレフィン系重合体は、特徴的構造を有する2種の遷移金属化合物を含む触媒組成物を使用して重合されたものであり、多量の共単量体の導入が可能であり、本発明のオレフィン系重合体は、上述のような範囲の低密度を有しており、結果として、優れた発泡加工性を示すことができる。
【0029】
前記オレフィン系重合体は、上述の分子量分布範囲内で、(5)重量平均分子量(Mw)が、10,000g/mol~500,000g/mol、具体的には30,000g/mol~300,000g/mol、さらに具体的には50,000g/mol~200,000g/molであってもよい。本発明において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)で分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0030】
前記オレフィン系重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定して得られるDSC曲線から得られる溶融温度(Tm)が100℃以下であってよく、具体的には80℃以下、さらに具体的には10℃~60℃であってよい。
【0031】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、(4)分子量分布(MWD、Molecular Weight Density)が1.0~3.0であり、(6)MI10/MI2.16>7.91(MI2.16-0.188であるものであってよい。前記MI10及びMI2.16は溶融指数(MI)を表すもので、ASTM D-1238によって測定され、分子量の標識として用いられてよい。
【0032】
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体、具体的にはα-オレフィン系単量体、環状オレフィン系単量体、ジエンオレフィン系単量体、トリエンオレフィン系単量体およびスチレン系単量体から選択されるいずれか一つの単独重合体であるかまたは2種以上の共重合体であってもよい。より具体的には、前記オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素数3~12または炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0033】
前記α-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含んでもよい。
【0034】
さらに具体的には、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンと4-メチル-1-ペンテンまたはエチレンと1-オクテンの共重合体であってもよく、さらに具体的には、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンと1-オクテンの共重合体であってもよい。
【0035】
前記オレフィン系重合体がエチレンとα-オレフィンの共重合体の場合、前記α-オレフィンの量は、共重合体の全重量に対して、90重量%以下、より具体的には70重量%以下、さらに具体的には5重量%~60重量%、より一層具体的には20重量%~50重量%であってもよい。前記α-オレフィンが前記範囲で含まれる時、上述の物性的特性の実現が容易である。
【0036】
前記のような物性および構成的特徴を有する本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体は、単一反応器で1種以上の遷移金属化合物を含むメタロセン触媒組成物の存在下で、連続溶液重合反応により製造され得る。これにより本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体は、重合体内の重合体を構成する単量体のいずれか一つの単量体由来の繰り返し単位が2個以上線状に連結されて構成されたブロックが形成されない。すなわち、本発明によるオレフィン系重合体は、ブロック共重合体(block copolymer)を含まず、ランダム共重合体(random copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)およびグラフト共重合体(graft copolymer)からなる群から選択されてもよく、より具体的にはランダム共重合体であってもよい。
【0037】
具体的には、本発明のオレフィン系共重合体は、下記の化学式1の遷移金属化合物および下記の化学式2の遷移金属化合物を1:1~1:5の当量比、具体的には1:1~1:4の当量比で含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、オレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法によって得られてもよい。
【0038】
ただし、本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体の製造において、下記の第1の遷移金属化合物および第2の遷移金属化合物の構造の範囲を特定した開示形態に限定せず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものと理解すべきである。
【0039】
【化1】
【0040】
前記化学式1中、
1は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイドラジカルであり、前記二つのR1は、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリールラジカルを含むアルキリデンラジカルによって互いに連結されて環を形成してもよく;
2は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミドラジカルであり、前記R2のうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;
3は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリールラジカルで置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数個の場合には、前記置換基のうち2個以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく;
1は、第4族遷移金属であり;
1およびQ2は、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミド;または炭素数1~20のアルキリデンラジカルであり;
【0041】
【化2】
【0042】
前記化学式2中、
4は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイド基であり、前記二つのR1は、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリールを含むアルキリジンによって互いに連結されて環を形成してもよく;
5は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミドであり、前記R2のうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;
6は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリールで置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数個の場合には、前記置換基のうち2個以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく;
2は、第4族遷移金属であり;
3およびQ4は、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミド;または炭素数1~20のアルキリデンである。
【0043】
また、本発明の他の一例において、前記化学式1中、前記R1およびR2は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;アリール;またはシリルであってもよく、
3は、互いに同一または異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;アリールオキシ;またはアミドであってもよく;前記R3のうち隣接する2個以上のR3は、互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく;
1およびQ2は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミドであってもよく、
1は、第4族遷移金属であってもよい。
【0044】
また、前記化学式2中、前記R4およびR5は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;アリール;またはシリルであってもよく、
6は、互いに同一または異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;アリールオキシ;またはアミドであってもよく;前記R6のうち2個以上のR6は、互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく;
前記Q3およびQ4は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミドであってもよく、
2は、第4族遷移金属であってもよい。
【0045】
また、前記化学式1または化学式2で表される遷移金属化合物は、テトラヒドロキノリンが導入されたシクロペンタジエニルリガンドによって金属位が連結されており、構造的にCp-M-N角度は狭く、モノマーが近付くQ1-M-Q2(Q3-M-Q4)角度は広く維持する特徴を有する。また、環形態の結合によってCp、テトラヒドロキノリン、窒素および金属位が順に連結されてより安定し、硬い五角形のリング構造をなす。したがって、かかる化合物をメチルアルミノキサンまたはB(C653のような助触媒と反応させて活性化した後、オレフィン重合に適用すると、高い重合温度でも高活性、高分子量および高空重合性などの特徴を有するオレフィン系重合体を重合することが可能である。
【0046】
本明細書で定義された各置換基について詳細に説明する。
【0047】
本明細書に使用される「ヒドロカルビル(hydrocarbyl group)」という用語は、他に断らない限り、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルなど、その構造に構わず炭素および水素にのみからなる炭素数1~20の1価の炭化水素基を意味する。
【0048】
本明細書に使用される「ハロゲン」という用語は、他に断らない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0049】
本明細書に使用される「アルキル」という用語は、他に断らない限り、直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を意味する。
【0050】
本明細書に使用される「アルケニル」という用語は、他に断らない限り、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味する。
【0051】
前記分岐鎖は、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0052】
本発明の一例によると、前記アリール基は、炭素数6~20であることが好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0053】
前記アルキルアリール基は、前記アルキル基によって置換されたアリール基を意味する。
【0054】
前記アリールアルキル基は、前記アリール基によって置換されたアルキル基を意味する。
【0055】
前記環(またはヘテロ環基)は、炭素数5~20個の環原子を有し、1個以上のヘテロ原子を含む1価の脂肪族または芳香族の炭化水素基を意味し、単一環または2以上の環の縮合環であってもよい。また、前記ヘテロ環基は、アルキル基で置換または非置換であってもよい。これらの例としては、インドリン、テトラヒドロキノリンなどが挙げられるが、本発明がこれらにのみ限定されるものではない。
【0056】
前記アルキルアミノ基は、前記アルキル基によって置換されたアミノ基を意味し、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などがあるが、これらの例にのみ限定されたものではない。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記アリール基は、炭素数6~20であることが好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0058】
前記化学式1の化合物は、下記の化学式1-1~1-2からなる群から選択される1種以上であり、前記化学式2の化合物は、下記の化学式2-1からなる群から選択される1種以上であってもよく、これに限定されない。
【0059】
【化3】
【0060】
【化4】
【0061】
【化5】
【0062】
その他にも、前記化学式1および2に定義された範囲で様々な構造を有する化合物であってもよい。
【0063】
前記化学式1の遷移金属化合物および前記化学式2の遷移金属化合物は、触媒の構造的な特徴上、低密度のポリエチレンだけでなく、多量のα-オレフィンが導入可能であるため、0.850g/cc~0.865g/cc水準の低密度ポリオレフィン共重合体の製造が可能である。また、前記化学式1の遷移金属化合物および前記化学式2の遷移金属化合物を1:1~1:5の当量比、具体的には1:1~1:4の当量比でともに使用する場合、高分子量および狭い分子量分布を有し、低密度を有するオレフィン系重合体を製造することができる。
【0064】
前記化学式1および2の遷移金属化合物は、一例として、以下のような方法により製造されてもよい。
【0065】
【化6】
【0066】
前記反応式1中、R1~R3、M1、Q1、およびQ2は、それぞれ前記化学式1で定義されたとおりである。
【0067】
また、前記化学式2の遷移金属化合物は、一例として、以下のような方法により製造されてもよい。
【0068】
【化7】
【0069】
前記反応式2中、R4~R6、M2、Q3、およびQ4は、前記化学式2で定義したとおりである。
【0070】
前記化学式1および化学式2は、韓国特許公開第2007-0003071号に記載の方法により製造されてもよく、前記特許文献の内容は、その全てが本明細書に組み込まれる。
【0071】
前記化学式1の遷移金属化合物および化学式2の遷移金属化合物は、これらが混合されて単独でまたは前記化学式1の遷移金属化合物および化学式2の遷移金属化合物以外に、下記の化学式3、化学式4、および化学式5で表される助触媒化合物のうち1種以上をさらに含む組成物形態で、重合反応の触媒として使用され得る。
【0072】
【化8】
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
前記化学式3~5中、
7は、互いに同一または異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル、およびハロゲンで置換の炭素数1~20のヒドロカルビルからなる群から選択され、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
Dは、それぞれ独立して、1以上の水素原子が置換基で置換されてもよい炭素数6~20のアリールまたは炭素数1~20のアルキルであり、この際、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル、炭素数1~20のアルコキシおよび炭素数6~20のアリールオキシからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、
Hは、水素原子であり、
Lは、中性またはカチオン性ルイス酸であり、
Wは、第13族元素であり、
aは、2以上の整数である。
【0076】
前記化学式3で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンが挙げられ、また、前記アルキルアルミノキサンが2種以上混合された修飾されたアルキルアルミノキサンが挙げられ、具体的にはメチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)であってもよい。
【0077】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素などが含まれ、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムから選択されてもよい。
【0078】
前記化学式5で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリブチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルホスホニウムテトラフェニルホウ素、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテントラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素またはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素などが挙げられる。
【0079】
前記触媒組成物は、第一の方法として、1)前記化学式1で表される遷移金属化合物および化学式2で表される遷移金属化合物の1次混合物に前記化学式3または化学式4で表される化合物を接触させて混合物を得るステップと、2)前記混合物に前記化学式5で表される化合物を添加するステップとを含む方法で製造されてもよい。
【0080】
また、前記触媒組成物は、第二の方法として、前記化学式1で表される遷移金属化合物および化学式2で表される遷移金属化合物の1次混合物に前記化学式3で表される化合物を接触させる方法で製造されてもよい。
【0081】
前記触媒組成物の製造方法のうち第一の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/前記化学式3または化学式4で表される化合物のモル比は、1/5,000~1/2であってもよく、具体的には1/1,000~1/10であってもよく、さらに具体的には1/500~1/20であってもよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/前記化学式3または化学式4で表される化合物のモル比が1/2を超える場合には、アルキル化剤の量が非常に少なくて金属化合物のアルキル化が完全に行われないという問題があり、モル比が1/5,000未満の場合には、金属化合物のアルキル化は行われるが、残っている過量のアルキル化剤と前記化学式5の化合物である活性化剤との副反応によってアルキル化された金属化合物の活性化が完全に行われないという問題がある。また、前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/前記化学式5で表される化合物のモル比は1/25~1であってもよく、具体的には1/10~1であってもよく、さらに具体的には1/5~1であってもよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/前記化学式5で表される化合物のモル比が1を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて金属化合物の活性化が完全に行われることができず、生成される触媒組成物の活性度が低下することがあり、モル比が1/25未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤によって触媒組成物のコストが経済的でないか生成される高分子の純度が低下することがある。
【0082】
前記触媒組成物の製造方法のうち第二の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/化学式3で表される化合物のモル比は1/10,000~1/10であってもよく、具体的には1/5,000~1/100であってもよく、さらに具体的には1/3,000~1/500であってもよい。前記モル比が1/10を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて金属化合物の活性化が完全に行われず、生成される触媒組成物の活性度が低下することがあり、1/10,000未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤によって触媒組成物のコストが経済的でないか生成される高分子の純度が低下することがある。
【0083】
前記触媒組成物の製造の際、反応溶媒としてペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒が使用されてもよい。
【0084】
また、前記触媒組成物は、前記遷移金属化合物と助触媒化合物を担体に担持された形態で含んでもよい。
【0085】
前記担体は、メタロセン系触媒で担体として使用されるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記担体は、シリカ、シリカ-アルミナまたはシリカ-マグネシアなどであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてもよい。
【0086】
中でも、前記担体がシリカの場合、シリカ担体と前記化学式1のメタロセン化合物の官能基が化学的に結合を形成するため、オレフィン重合過程で表面から遊離されて出る触媒がほとんどない。結果、オレフィン系重合体の製造工程中に反応器の壁面や重合体粒子同士が絡み合うファウリングの発生を防止することができる。また、前記シリカ担体を含む触媒の存在下で製造されるオレフィン系重合体は、重合体の粒子形態および見掛け密度に優れる。
【0087】
より具体的には、前記担体は、高温乾燥などの方法により表面に反応性が大きいシロキサン基を含む、高温乾燥したシリカまたはシリカ-アルミニナなどであってもよい。
【0088】
前記担体は、Na2O、K2CO3、BaSO4またはMg(NO32などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩または硝酸塩成分をさらに含んでもよい。
【0089】
前記オレフィン系単量体を重合する重合反応は、連続式溶液重合、バルク重合、懸濁重合、スラリー重合、または乳化重合などオレフィン単量体の重合に適用される通常の工程によって行われることができる。
【0090】
前記オレフィン単量体の重合反応は、不活性溶媒下で行われてもよく、前記不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、N-ヘキサン、1-ヘキセン、1-オクテンが挙げられ、これに制限されない。
【0091】
前記オレフィン系重合体の重合は、約25℃~約500℃の温度および約1kgf/cm2~約100kgf/cm2の圧力で反応させて行うことができる。
【0092】
具体的に、前記ポリオレフィンの重合は、約25℃~約500℃の温度で行われることができ、具体的には80℃~250℃、より好ましくは100℃~200℃の温度で行われることができる。また、重合時の反応圧力は、1kgf/cm2~150kgf/cm2、好ましくは1kgf/cm2~120kgf/cm2、より好ましくは5kgf/cm2~100kgf/cm2あってもよい。
【0093】
本発明のオレフィン系重合体は、向上した物性を有することから、自動車用、電線用、玩具用、繊維用、医療用などの材料のような各種の包装用、建築用、生活用品などの様々な分野および用途での中空成形用、押出成形用または射出成形用として有用であり、特に、優れた衝撃強度が求められる自動車用として有用に使用され得る。
【0094】
また、本発明のオレフィン系重合体は、成形体の製造に有用に使用され得る。
【0095】
前記成形体は具体的にブローモルディング成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、押出ラミネート成形体、押出成形体、発泡成形体、射出成形体、シート(sheet)、フィルム(film)、繊維、モノフィラメント、または不織布などであってもよい。
【0096】
[実施例]
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、各種の相違する形態に実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0097】
製造例1:遷移金属化合物1の製造
(1)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(8-(2,3,4,5-Tetramethyl-1,3-cyclopentadienyl)-1,2,3,4-tetrahydroquinoline)の製造
【0098】
【化11】
【0099】
(i)リチウムカルバメートの製造
1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(13.08g、98.24mmol)とジエチルエーテル(150mL)をシュレンク(shlenk)フラスコに入れた。ドライアイスとアセトンで作製した-78℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間攪拌した。次いで、n-BuLi(39.3mL、2.5M、98.24mmol)を窒素雰囲気下で注射器で投入し、淡い黄色のスラリーが形成された。次いで、フラスコを2時間攪拌した後、生成されたブタンガスを除去して常温にフラスコの温度を上げた。フラスコを再度-78℃の低温槽に浸して温度を下げた後、CO2ガスを投入した。二酸化炭素ガスを投入することによってスラリーが無くなり透明な溶液になった。フラスコをバブラー(bubbler)に連結して二酸化炭素ガスを除去して温度を常温に上げた。その後、真空下で余分のCO2ガスと溶媒を除去した。ドライボックスにフラスコを移した後、ペンタンを加え、激しく攪拌した後、ろ過して白色の固体化合物であるリチウムカルバメートを得た。前記白色の固体化合物は、ジエチルエーテルが配位結合している。この際、収率は100%である。
【0100】
1H NMR(C66,C55N):δ 1.90(t,J=7.2Hz,6H,ether),1.50(br s,2H,quin-CH2),2.34(br s,2H,quin-CH2),3.25(q,J=7.2Hz,4H,ether),3.87(br,s,2H,quin-CH2),6.76(br d,J=5.6Hz,1H,quin-CH)ppm
13C NMR(C66):δ 24.24,28.54,45.37,65.95,121.17,125.34,125.57,142.04,163.09(C=O)ppm。
【0101】
(ii)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの製造
前記ステップ(i)で製造されたリチウムカルバメート化合物(8.47g、42.60mmol)をシュレンクフラスコに入れた。次いで、テトラヒドロフラン(4.6g、63.9mmol)とジエチルエーテル45mLを順に入れた。アセトンと少量のドライアイスで作製した-20℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間攪拌した後、t-BuLi(25.1mL、1.7M、42.60mmol)を入れた。この際、反応混合物の色が赤色に変化した。-20℃を維持し続けて6時間攪拌した。テトラヒドロフランに溶けているCeCl3・2LiCl溶液(129mL、0.33M、42.60mmol)とテトラメチルシクロペンタノン(5.89g、42.60mmol)を注射器中で混合した後、窒素雰囲気下でフラスコに投入した。フラスコの温度を常温にゆっくり上げてから1時間後に恒温槽を除去し、温度を常温に維持した。次いで、前記フラスコに水(15mL)を添加した後、エチルアセテートを入れてろ過してろ液を得た。そのろ液を分液漏斗に移した後、塩酸(2N、80mL)を入れて12分間振とうした。また、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(160mL)を入れて中和した後、有機層を抽出した。この有機層に無水硫酸マグネシウムを入れて水分を除去しろ過した後、そのろ液を取って溶媒を除去した。得られたろ液をヘキサンとエチルアセテート(v/v、10:1)溶媒を使用してカラムクロマトグラフィ法で精製し、黄色のオイルを得た。収率は40%であった。
【0102】
1H NMR(C66):δ 1.00(br d,3H,Cp-CH3),1.63-1.73(m,2H,quin-CH2),1.80(s,3H,Cp-CH3),1.81(s,3H,Cp-CH3),1.85(s,3H,Cp-CH3),2.64(t,J=6.0Hz,2H,quin-CH2),2.84-2.90(br,2H,quin-CH2),3.06(br s,1H,Cp-H),3.76(br s,1H,N-H),6.77(t,J=7.2Hz,1H,quin-CH),6.92(d,J=2.4Hz,1H,quin-CH),6.94(d,J=2.4Hz,1H,quin-CH)ppm。
【0103】
(2)[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]チタンジメチル([(1,2,3,4-Tetrahydroquinolin-8-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5,kapa-N]titanium dimethyl)の製造
【0104】
【化12】
【0105】
(i)[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]ジリチウム化合物の製造
ドライボックスの中で前記ステップ(1)により製造された8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(8.07g、32.0mmol)とジエチルエーテル140mLを丸底フラスコに入れた後、-30℃に温度を下げ、N-BuLi(17.7g、2.5M、64.0mmol)を攪拌しながらゆっくり入れた。温度を常温に上げながら6時間反応させた。その後、ジエチルエーテルで複数回洗浄しろ過して固体を得た。真空をかけて残っている溶媒を除去し、黄色の固体であるジリチウム化合物(9.83g)を得た。収率は、95%であった。
【0106】
1H NMR(C66,C55N):δ 2.38(br s,2H,quin-CH2),2.53(br s,12H,Cp-CH3),3.48(br s,2H,quin-CH2),4.19(br s,2H,quin-CH2),6.77(t,J=6.8Hz,2H,quin-CH),7.28(br s,1H,quin-CH),7.75(brs,1H,quin-CH)ppm。
【0107】
(ii)(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]チタンジメチルの製造
ドライボックスの中でTiCl4・DME(4.41g、15.76mmol)とジエチルエーテル(150mL)を丸底フラスコに入れて-30℃で攪拌しながらMeLi(21.7mL、31.52mmol、1.4M)をゆっくり入れた。15分間攪拌した後、前記ステップ(i)で製造された[(1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]ジリチウム化合物(5.30g、15.76mmol)をフラスコに入れた。温度を常温に上げながら3時間攪拌した。反応が終了した後、真空をかけて溶媒を除去し、ペンタンに溶かした後、ろ過してろ液を取った。真空をかけてペンタンを除去すると、濃い茶色の化合物(3.70g)が得られた。収率は71.3%であった。
【0108】
1H NMR(C66):δ 0.59(s,6H,Ti-CH3),1.66(s,6H,Cp-CH3),1.69(br t,J=6.4Hz,2H,quin-CH2),2.05(s,6H,Cp-CH3),2.47(t,J=6.0Hz,2H,quin-CH2),4.53(m,2H,quin-CH2),6.84(t,J=7.2Hz,1H,quin-CH),6.93(d,J=7.6Hz,quin-CH),7.01(d,J=6.8Hz,quin-CH)ppm
13C NMR(C66):δ 12.12,23.08,27.30,48.84,51.01,119.70,119.96,120.95,126.99,128.73,131.67,136.21 ppm。
【0109】
製造例2:遷移金属化合物2の製造
(1)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンの製造
前記製造例1の(1)で1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの代わりに2-メチルインドリンを使用した以外は、前記製造例1の(1)と同様の方法で、2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンを製造した。収率は19%であった。
【0110】
1H NMR(C66):δ 6.97(d,J=7.2Hz,1H,CH),δ 6.78(d,J=8Hz,1H,CH),δ 6.67(t,J=7.4Hz,1H,CH),δ 3.94(m,1H,quinoline-CH),δ 3.51(br s,1H,NH),δ 3.24-3.08(m,2H,quinoline-CH2,Cp-CH),δ 2.65(m,1H,quinoline-CH2),δ 1.89(s,3H,Cp-CH3),δ 1.84(s,3H,Cp-CH3),δ 1.82(s,3H,Cp-CH3),δ 1.13(d,J=6Hz,3H,quinoline-CH3),δ 0.93(3H,Cp-CH3)ppm。
【0111】
(2)[(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-エタ5、カパ-N]チタンジメチル([(2-Methylindolin-7-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5、kapa-N]titanium dimethyl)の製造
【0112】
【化13】
【0113】
(i)8-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンの代りに2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-インドリン(2.25g、8.88mmol)を使用した以外は、前記製造例1の(2)(i)と同様の方法で0.58当量のジエチルエーテルが配位されたジリチウム塩化合物(化合物4g)を得た(1.37g、50%)。
【0114】
1H NMR(Pyridine-d8):δ 7.22(br s,1H,CH),δ 7.18(d,J=6Hz,1H,CH),δ 6.32(t,1H,CH),δ 4.61(brs,1H,CH),δ 3.54(m,1H,CH),δ 3.00(m,1H,CH),δ 2.35-2.12(m,13H,CH,Cp-CH3),δ 1.39(d,indoline-CH3)ppm。
【0115】
(ii)前記(i)で製造したジリチウム塩化合物(化合物4g)(1.37g、4.44mmol)で前記製造例1の(2)(ii)と同様の方法でチタン化合物を製造した。
【0116】
1H NMR(C66):δ 7.01-6.96(m,2H,CH),δ 6.82(t,J=7.4Hz,1H,CH),δ 4.96(m,1H,CH),δ 2.88(m,1H,CH),δ 2.40(m,1H,CH),δ 2.02(s,3H,Cp-CH3),δ 2.01(s,3H,Cp-CH3),δ 1.70(s,3H,Cp-CH3),δ 1.69(s,3H,Cp-CH3),δ 1.65(d,J=6.4Hz,3H,indoline-CH3),δ 0.71(d,J=10Hz,6H,TiMe2-CH3)ppm。
【0117】
[実施例1]
1.5L連続工程反応器にヘキサン溶媒(5kg/h)と1-オクテン(1.5kg/h)を満たした後、反応器上端の温度を140.7℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.05mmol/min)、前記製造例1で得た遷移金属化合物1および前記製造例2で得た遷移金属化合物2を1:3のモル比で混合した遷移金属化合物の混合物(0.5μmol/min)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(1.5μmol/min)を同時に反応器で投入した。次いで、前記反応器の中にエチレン(0.87kg/h)を投入し、89barの圧力で連続工程で140.7℃で30分以上維持させて共重合反応を行って共重合体を得た。その後、真空オーブンで12時間以上乾燥した後、物性を測定した。
【0118】
[実施例2~6]
実施例1と同様、2個の遷移金属触媒を用いて共重合反応を行い、二つの遷移金属の比、触媒と助触媒との比、また、反応温度および共単量体の量を下記表1のようにそれぞれ変更して共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0119】
[比較例1]
SK社製のSolumer851Lを購入し使用した。
【0120】
[比較例2]
Dow社製のEG8842を購入し使用した。
【0121】
[比較例3]
触媒として遷移金属化合物1のみを用いた以外は、前記実施例1と同様の方法を用いて共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0122】
[比較例4]
触媒として遷移金属化合物2のみを用いた以外は、実施例1と同様の方式で共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0123】
[比較例5]
実施例1と同様、2個の遷移金属触媒を用いて共重合反応を行い、二つの遷移金属の比、触媒と助触媒との比、また、反応温度および共単量体の量を下記表1のようにそれぞれ変更して共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0124】
【表1】
【0125】
[実験例]
前記実施例1~6、および比較例1~5の共重合体に対して、下記方法によって物性を評価し、下記表2に示した。
【0126】
1)重合体の密度(Density)
ASTM D-792に準じて測定した。
【0127】
2)高分子の溶融指数(Melt Index、MI)
ASTM D-1238[条件E、MI10(190℃、10kg荷重)、MI2.16(190℃、2.16kg荷重)]で測定した。
【0128】
3)重量平均分子量(Mw、g/mol)および分子量分布(MWD)
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)を用いて数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量で除して分子量分布を計算した。
-カラム:PL Olexis
-溶媒:TCB(Trichlorobenzene)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-Detector:Agilent High Temperature RI detector
-Standard:Polystyrene(3次関数で補正)。
【0129】
4)高分子の融点(Tm)
PerKinElmer社製の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 6000)を用いて得た。すなわち、温度を200℃まで増加させた後、1分間その温度を維持し、その後、-100℃まで下げ、また温度を増加させてDSC曲線の頂点を融点とした。この際、温度の上昇と下降の速度は10℃/minであり、融点は二番目の温度が上昇する間に得られる。
【0130】
5)可溶性分画(Soluble Fraction)、可溶性分画の重量平均分子量(Mw)、溶離終了温度
測定装備は、PolymerChar社製のCFCを使用した。先ず、o-ジクロロベンゼンを溶媒として共重合体の溶液をCFC分析装置内のオーブンで130℃で60分間完全に溶解した後、135℃に調整されたTREFカラムに注いだ後、95℃に冷却し、ここで45分間安定化させた。次いで、TREFカラムの温度を0.5℃/分の速度で-20℃まで低下させた後、-20℃で10分間維持させた。その後、溶離量(質量%)を赤外線分光光度計を用いて測定した。次いで、予め設定された温度までTREFカラムの温度上昇率20℃/minの速度で上昇し、予め設定された時間(すなわち、約27分)の間に到達した温度で前記温度を維持させる作業をTREFの温度が130℃に至るまで繰り返し、それぞれの温度範囲の間に溶離された分画の量(質量%)を測定した。また、各温度で溶離された分画をGPCカラムに送り、o-ジクロロベンゼンを溶媒として使用した以外は、GPC測定原理と同様に分子量Mwを測定した。
【0131】
超低結晶性領域の含有量は、-20℃以下で溶出される分画の含有量を意味し、分子量Mwは、CFCのGPCカラムを用いて測定した。溶離終了温度は、検出装置でそれ以上分画が溶出されない最終温度と定義した。
【0132】
【表2】
【0133】
前記表2で溶離終了温度は、検出装置でそれ以上分画が溶出されない最終温度と定義され、溶離終了温度が低いというのは、LDPE、HDPE、LLDPFなど、密度が高いか結晶性が高い重合体と区別される低密度オレフィン系重合体の一般的な特徴である。
【0134】
前記表2においてSFが多いほど(>8%)コンパウンディング時に衝撃強度が向上するが、SF含有量を同一密度で所定以上に高めることは、非常に難しい技術であり、比較例1のようにSF含有量を高めるとしても当該分画の分子量が低くなり、これはアンチブロッキング特性に不利に作用する。実施例の共重合体は、SF含有量を高く維持しながらも当該分画の分子量を高く維持し、衝撃強度およびアンチブロッキング特性に優れる。
【0135】
[実験例2]
実施例2、比較例1および2でそれぞれ製造された共重合体のペレットを50g取って8cm×10cmのジッパー付きビニール袋に入れ、針で穴を開け空気を抜いて圧着させた。チャンバの底から離れた中央部分にジッパー付きビニール袋を置いて上に2kg重り×2個で荷重を加えた。チャンバ温度プログラムを稼働させて35℃で7時間、-5℃で5時間、0℃で5時間放置し、0℃を維持した。その後、ブロッキングの程度を確認した。
【0136】
また、実施例2および比較例1でそれぞれ製造された共重合体のペレットを50g取り、一般的に用いられる表面処理剤であるPDMS(ポリジメチルシロキサン、XIAMETER(R) MEM-0039 Emulsion、Dow-Corning/PDMS 35wt%)とCa-st(ステアリン酸カルシウム、SC-130、ソンウォン産業)をそれぞれ700ppmと450ppm処方し、8cm×10cmのジッパー付きビニール袋に入れ、針で穴を開け空気を抜いて圧着させた。
【0137】
チャンバの底から離れた中央部分にジッパー付きビニール袋を置いて上に2kg重り×2個で荷重を加えた。チャンバ温度プログラムを稼働させて35℃で7時間、-5℃で5時間、0℃で5時間放置し、0℃を維持した。その後、ブロッキングの程度を確認した。
【0138】
また、実施例2および比較例2でそれぞれ製造された共重合体のペレットを50g取り、一般的に用いられる表面処理剤であるタルク(Talc、KCM6300)4,000ppmを処方し、8cm×10cmのジッパー付きビニール袋に入れ、針で穴を開け空気を抜いて圧着させた。
【0139】
チャンバの底から離れた中央部分にジッパー付きビニール袋を置いて上に2kg重り×2個で荷重を加えた。チャンバ温度プログラムを稼働させて35℃で7時間、-5℃で5時間、0℃で5時間放置し、0℃を維持した。その後、ブロッキングの程度を確認した。
【0140】
評価の基準を下記表3に示し、実験の結果を下記表4に示した。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
前記表4を参照すれば、実施例2および比較例1の共重合体に対して別途の表面処理剤を処理していないとき、実施例2の共重合体がアンチブロッキング特性にさらに優れることを確認できた。また、実施例2および比較例1の共重合体に対し、アンチブロッキング剤として一般に用いられる表面処理剤であるPDMSとCa-stを処方した時も、実施例2の共重合体がアンチブロッキング特性にさらに優れていた。これは、表面処理剤としてタルクを処理した時も同様であった。
【0144】
したがって、実施例2の共重合体は、表面処理剤を用いていない条件および同一の表面処理剤を処方した条件のいずれでも、比較例1の共重合体に比べて優れたアンチブロッキング性能を発揮することを確認することができた。