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特許7022215ジメチロールブタナールの製造方法および蒸留装置
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  • 特許-ジメチロールブタナールの製造方法および蒸留装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-08
(45)【発行日】2022-02-17
(54)【発明の名称】ジメチロールブタナールの製造方法および蒸留装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/82 20060101AFI20220209BHJP
   C07C 47/198 20060101ALI20220209BHJP
   C07C 45/75 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20220209BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C07C45/82
C07C47/198
C07C45/75
B01D3/14 A
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020530460
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2019001012
(87)【国際公開番号】W WO2019151710
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013043
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オム、ソンシク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、タウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ-ユン
(72)【発明者】
【氏名】コ、トン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ミン-チ
(72)【発明者】
【氏名】キム、テウ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-066204(JP,A)
【文献】特開平11-130719(JP,A)
【文献】特表2012-511533(JP,A)
【文献】特開2003-192620(JP,A)
【文献】特開2002-045604(JP,A)
【文献】特表2008-523161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/00
C07C 47/00
B01D 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)蒸留塔でジメチロールブタナール(DMB)を含む原料を蒸留するステップと、 (B)前記蒸留塔で蒸留した原料を、低沸点成分、ジメチロールブタナールおよび高沸点成分に分離するステップと、
(C)前記高沸点成分の一部または全部を加熱し、前記蒸留塔に還流させるステップとを含み、
前記ジメチロールブタナールは、前記蒸留塔のサイドカット(side cut)で分離されており、
前記(C)ステップにおける加熱温度は、150℃~200℃である、ジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項2】
前記(A)ステップは、アルカナール、ホルムアルデヒド(FA)およびアルキルアミン触媒を反応させてアルドール反応生成物を得るステップと、
前記アルドール反応生成物をアルコール溶媒とともに抽出し、前記ジメチロールブタナールを含む原料を得るステップとをさらに含む、請求項1に記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項3】
前記アルカナール、ホルムアルデヒドおよびアルキルアミン触媒のモル比は、前記アルカナール1モルに対して、ホルムアルデヒド2.5モル~5モルおよびアルキルアミン触媒0.1モル~0.3モルである、請求項2に記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項4】
前記蒸留塔は、20段~40段の多段蒸留塔である、請求項1~3のいずれかに記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項5】
前記(B)ステップにおいて、前記低沸点成分は、前記蒸留塔の塔頂部分に分離する、請求項1~4のいずれかに記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項6】
前記(B)ステップにおいて、前記高沸点成分は、前記蒸留塔の塔底部分に分離する、請求項1~5のいずれかに記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項7】
前記ジメチロールブタナールを94%以上の回収率で分離する、請求項1~6のいずれかに記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項8】
前記蒸留塔の塔頂部分の圧力は、15kPa(150mbar)~65kPa(650mbar)である、請求項1~のいずれかに記載のジメチロールブタナールの製造方法。
【請求項9】
ジメチロールブタナールを含む原料を蒸留するように備えられた蒸留塔と、
前記原料が前記蒸留塔に流入されるように備えられた原料流入部と、
前記原料が蒸留され分離された低沸点成分が前記蒸留塔から流出されるように備えられた第2の流出部と、
前記原料が蒸留され分離されたジメチロールブタナールが前記蒸留塔から流出されるように備えられたサイドカット(side cut)と、
前記原料が蒸留され分離された高沸点成分が前記蒸留塔から流出されるように備えられた第1の流出部と、
前記第1の流出部に流出される高沸点成分の一部または全部を前記蒸留塔に還流するように備えられた再沸器と、
前記再沸器の温度を150℃~200℃に調節するように備えられた温度調節手段を含む、蒸留装置。
【請求項10】
前記蒸留塔は、20段~40段の多段蒸留塔である、請求項に記載の蒸留装置。
【請求項11】
前記原料流入部は、前記蒸留塔の5段から35段の間に位置する、請求項または10に記載の蒸留装置。
【請求項12】
前記第1の流出部は、前記蒸留塔の塔底部分に位置する、請求項11のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項13】
前記サイドカットは、前記原料流入部と前記第1の流出部との間に位置する、請求項12のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項14】
前記サイドカットは、前記蒸留塔の2段から10段の間に位置する、請求項13のいずれかに記載の蒸留装置。
【請求項15】
前記第2の流出部は、前記蒸留塔の塔頂部分に位置する、請求項14のいずれかに記載の蒸留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年2月1日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0013043号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、ジメチロールブタナールの製造方法および蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0003】
トリメチロールプロパン(trimethylolpropane、TMP)は、常温で白色の結晶物質であり、アルキド樹脂、飽和ポリエステル、合成潤滑油、ポリウレタン樹脂、および可塑剤分野などの様々な分野において原料物質として広く使用されている。
【0004】
産業的に重要な原料物質であるトリメチロールプロパンは、様々な方法で製造可能であり、その一つとして、アルドール縮合反応と水素化反応により製造する方法がある。
【0005】
アルドール縮合反応が完了すると、アルドール反応生成物であるジメチロールブタナール、未反応の原料、およびジメチロールブタナールよりも沸点が高いか低い不純物が共存する。そこで、アルドール反応生成物からジメチロールブタナール成分を効率よく分離し、水素化反応に供給することが重要である。
【0006】
したがって、ジメチロールブタナールをアルドール反応生成物から経済的な方法で分離するための研究が行われ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、ジメチロールブタナールの製造方法および蒸留装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施態様は、
(A)蒸留塔でジメチロールブタナール(DMB)を含む原料を蒸留するステップと、
(B)前記蒸留塔で蒸留した原料を、低沸点成分、ジメチロールブタナールおよび高沸点成分に分離するステップと、
(C)前記高沸点成分の一部または全部を加熱し、前記蒸留塔に還流させるステップとを含み、
前記ジメチロールブタナールは、前記蒸留塔のサイドカット(side cut)で分離されるジメチロールブタナールの製造方法を提供する。
【0009】
また、本明細書の一実施態様は、
ジメチロールブタナールを含む原料を蒸留するように備えられた蒸留塔と、
前記原料が前記蒸留塔に流入されるように備えられた原料流入部と、
前記原料が蒸留され分離された低沸点成分が前記蒸留塔から流出されるように備えられた第2の流出部と、
前記原料が蒸留され分離されたジメチロールブタナールが前記蒸留塔から流出されるように備えられたサイドカット(side cut)と、
前記原料が蒸留され分離された高沸点成分が前記蒸留塔から流出されるように備えられた第1の流出部と、
前記第1の流出部に流出される高沸点成分の一部または全部を前記蒸留塔に還流するように備えられた再沸器とを含む蒸留装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書の一実施態様に係るジメチロールブタナールの製造方法により、トリメチロールプロパンの製造原料として使用するジメチロールブタナールを高い回収率で得ることができる。
【0011】
また、本明細書の一実施態様に係る蒸留装置は、蒸留塔のサイドカット(side cut)を使用することで、短期間で効率よくジメチロールブタナールを分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書の一実施態様に係るジメチロールブタナールの製造方法を実施するための蒸留装置を概略的に図示した図である。
図2】従来技術による蒸留装置を概略的に図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書について、より詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「DMB回収率」は、蒸留塔(蒸留カラム)の下部に分離される流量に含まれたジメチロールブタナール(DMB)の量を、蒸留塔に供給される原料の中に含まれたDMBの量で除した値の百分率で定義する。
【0015】
本明細書において、「サイドカット(side cut)」は、蒸留塔の側部に位置した中間部分を意味する。すなわち、蒸留による原料の分離過程において、蒸留塔の中間部分で分離される成分が流出される部分を意味し得る。塔頂部分と塔底部分に分離される成分以外の成分を意味し得る。この場合、サイドカットに分離される成分を側留油とする。
【0016】
本明細書において、「蒸留塔」は、「蒸留カラム」と混用し得る。すなわち、蒸留塔と蒸留カラムは、同じ意味で使用される。
【0017】
本明細書の一実施態様は、(A)蒸留塔でジメチロールブタナール(DMB)を含む原料を蒸留するステップと、(B)前記蒸留塔で蒸留した原料を、低沸点成分、ジメチロールブタナールおよび高沸点成分に分離するステップと、(C)前記高沸点成分の一部または全部を加熱し、前記蒸留塔に還流させるステップとを含み、前記ジメチロールブタナールは、前記蒸留塔のサイドカット(side cut)で分離される、ジメチロールブタナールの製造方法を提供する。
【0018】
アルドール反応の後、ジメチロールブタナール(DMB)と一部の副生成物が形成され、これに伴い塩が生成され、これを除去しないと、以降の水素化反応の際、反応性および安定性が低下する。トリメチロールプロパン(TMP)を水素化反応で製造する場合、1ステップのアルドール反応の後、トリメチロールプロパンの前ステップの物質であるジメチロールブタナール(DMB)の効果的な分離が必要である。
【0019】
アルドール反応生成物の分離のための従来技術として、蒸留カラム(Distillation column)とワイプトフィルム蒸発装置(Wiped Film Evaporator、WFE)を用いる。しかし、蒸留カラムは、分離効率は高いものの、分離過程において再沸器(reboiler)の高温運転および長期滞留時間による有効成分の損失が発生し、DMBの熱分解を防止するために高真空運転が必要である。ワイプトフィルム蒸発装置は、短時間で分離される装置の特性上、DMBの熱分解量は少ないが、分離効率が劣るという欠点がある。そのため、分離効率を増加させるために、WFE運転を繰り返して行うか、装置の数を増加させて運転しなければならないという欠点がある。
【0020】
そこで、本発明者らは、分離効率が高い蒸留カラムの側部にサイドカット(side cut)機能を使用して、短期間で効率よく有効成分(DMBなど)を分離する装置および工程を発明した。これにより、アルドール反応生成物が再沸器(reboiler)で高温に曝されることを最小化して副反応およびDMBの熱分解を減少させ、再沸器に滞留する量を減少させることでエネルギー使用量を削減し、最終的には水素化工程に供給される原料の中で高沸点成分の含量を減少させることができ、水素化反応性を改善し、触媒を保護することができた。
【0021】
本明細書の一実施態様によると、前記(A)ステップは、アルカナール、ホルムアルデヒド(FA)およびアルキルアミン触媒を反応させてアルドール反応生成物を得るステップと、前記アルドール反応生成物をアルコール溶媒とともに抽出し、前記ジメチロールブタナールを含む原料を得るステップとをさらに含んでもよい。
【0022】
換言すれば、前記(A)ステップにおける原料は、アルカナール、ホルムアルデヒド(FA)およびアルキルアミン触媒を反応させて得られた生成物を、アルコール溶媒を用いて抽出するステップにより得た原料であり得る。
【0023】
アルドール反応の原料の投入条件は、アルカナール1モルを基準としたとき、反応原料の一つであるホルムアルデヒドの投入量が多いほど反応収率が良好である。しかし、反応に必要な理論当量比が、アルカナール:ホルムアルデヒド=1:2である点を考慮すると、過量で投入されたホルムアルデヒド、すなわち、2モル以上投入されたホルムアルデヒドは、反応後に残存し、反応の後、分離/回収過程により再使用しなければならないため、工程構成および経済性の面で不都合があり得る。したがって、可能な反応収率の増加幅とホルムアルデヒドの過量投入の割合をともに考慮することで、適正な投入量を選定することができる。
【0024】
本明細書の一実施態様によると、前記アルカナール、ホルムアルデヒドおよびアルキルアミン触媒のモル比は、前記アルカナール1モルに対して、ホルムアルデヒド2.5モル~5モル、およびアルキルアミン触媒0.1モル~0.3モルであってもよい。すなわち、アルカナール:ホルムアルデヒド:アルキルアミン触媒のモル比(mol ratio)は、1:2.5~5:0.1~0.3であってもよい。また、前記アルカナール、ホルムアルデヒドおよびアルキルアミン触媒のモル比は、前記アルカナール1モルに対して、ホルムアルデヒド3.5モル~4.5モル、およびアルキルアミン触媒0.15モル~0.25モルであってもよい。
【0025】
前記アルカナール1モルに対して、ホルムアルデヒドが2.5モル未満の場合には、反応収率が急激に低下する可能性があり、5モルを超える場合には、反応収率の増加幅に比べて反応後に回収すべきホルムアルデヒドの量が急激に増加し、経済性が低下する可能性がある。また、前記アルカナール1モルに対して、アルキルアミン触媒が0.1モル未満の場合には、反応速度が遅くなって反応時間が増加する可能性があり、0.3モルを超える場合には、多量の触媒を使用することから経済性が低下する可能性がある。
【0026】
本明細書の一実施態様によると、前記アルカナール、ホルムアルデヒド(FA)およびアルキルアミン触媒のアルドール反応は、常圧で25℃~50℃の条件で行われ得る。好ましくは、30℃~40℃であってもよい。また、本明細書の一実施態様によると、前記アルドール反応時間は、90分~200分であってもよく、好ましくは、120分~200分であってもよい。本明細書の一実施態様によると、前記アルドール反応の温度および時間の条件を満たした場合に、反応収率を増加させることができる。
【0027】
本明細書の一実施態様によると、前記アルカナールは、炭素数3~10のアルカナールであってもよく、具体的には、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナールなどであってもよいが、これに限定されるものではない。より具体的には、n‐ブタナール(n‐BAL)が好ましい。
【0028】
また、本明細書の一実施態様によると、前記アルキルアミン触媒のアルキルアミンは、炭素数3~20のアルキルアミンであり、具体的には、トリメチルアミン(trimethylamine)、トリエチルアミン(triethylamine、TEA)、トリプロピルアミン(tripropylamine)、またはジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine)などが使用され得、好ましくは、トリエチルアミンが使用され得る。
【0029】
本明細書の一実施態様によると、前記抽出するステップにおいて抽出溶媒として用いられるアルコール溶媒は、炭素数2~10のアルコール溶媒であってもよい。具体的には、炭素数6~8のアルコール溶媒であってもよく、好ましくは、炭素数8のアルコール溶媒であってもよい。
【0030】
本明細書の一実施態様によると、アルコール溶媒は、2‐エチルヘキサノール(2‐ethyl hexanol、2‐EH)であってもよい。
【0031】
本明細書の一実施態様によると、前記抽出溶媒は、前記アルドール反応の初期の原料の重量に対して、1.5倍~3倍を投入することができる。
【0032】
本明細書の一実施態様によると、前記抽出するステップにおいて抽出温度は、25℃~90℃が好ましく、具体的には、30℃~70℃が好ましい。本明細書の一実施態様によると、前記抽出温度を満たした場合に、抽出収率を増加させることができる。
【0033】
本明細書の一実施態様によると、前記蒸留塔は、単蒸留塔または多段蒸留塔であってもよく、これに限定されるものではないが、好ましくは、多段蒸留塔であってもよい。
【0034】
本明細書の一実施態様によると、前記蒸留塔は、20段~40段の多段蒸留塔であってもよい。好ましくは、20段~30段の多段蒸留塔であってもよく、より好ましくは、25段のトレイ式(tray type)多段蒸留塔であってもよい。前記蒸留塔の段数が、20段未満の場合には、DMB回収率が低下する可能性があり、40段を超える場合には、DMB回収率は増加するものの、蒸留塔の段数の増加に伴い装置投資額と運転費用が増加する可能性がある。
【0035】
本明細書の一実施態様によると、前記(B)ステップにおいて、前記低沸点成分は、前記蒸留塔の塔頂部分に分離することができる。前記低沸点成分とは、DMBよりも沸点が低い物質を意味し得る。例えば、ホルムアルデヒド(FA)、水(H2O)、メタノール(MeOH)、トリエチルアミン(TEA)、またはエチルアクロレイン(EA)などが挙げられる。前記低沸点成分が前記蒸留塔の塔頂部分に分離されるとは、前記低沸点成分が、前記蒸留塔の塔底部分およびサイドカットに分離される成分に含まれている含量よりも、塔頂部分に分離される成分に最も高い含量で含まれていることを意味し得る。もしくは、前記蒸留塔の塔底部分およびサイドカットに分離される成分に低沸点成分が含まれていないことを意味し得る。
【0036】
本明細書の一実施態様によると、前記(B)ステップにおいて、前記高沸点成分は、前記蒸留塔の塔底部分に分離され得る。前記高沸点成分とは、DMBよりも沸点が高い物質を意味し得る。例えば、トリメチロールプロパン(TMP)などが挙げられる。前記高沸点成分が前記蒸留塔の塔底部分に分離されるとは、前記高沸点成分が、蒸留塔の塔頂部分およびサイドカットに分離される成分に含まれている含量よりも、塔底部分に分離される成分に最も高い含量で含まれていることを意味し得る。もしくは、前記蒸留塔の塔頂部分およびサイドカットに分離される成分に高沸点成分が含まれていないことを意味し得る。
【0037】
本明細書の一実施態様によると、前記蒸留塔の塔頂部分とは、蒸留塔の上段部分のうち最も高く位置した部分を意味し得る。トレイ式多段蒸留塔の最上段に位置する段を意味し得る。前記蒸留塔の塔底部分とは、蒸留塔の下段部分のうち最も低く位置した部分を意味し得る。トレイ式多段蒸留塔の最下段に位置する段を意味し得る。
【0038】
本明細書の一実施態様によると、前記ジメチロールブタナールは、94%以上、より好ましくは98%以上の回収率で分離され得る。この際、前記ジメチロールブタナールは、前記蒸留塔の側部に位置したサイドカット(side cut)で分離され得る。前記ジメチロールブタナールが前記蒸留塔のサイドカットに分離されるとは、前記ジメチロールブタナールが、前記蒸留塔の塔頂部分および塔底部分に分離される成分に含まれている含量よりも、サイドカットに分離される成分に最も高い含量で含まれていることを意味し得る。もしくは、前記蒸留塔の塔頂部分および塔底部分に分離される成分にジメチロールブタナールが含まれていないことを意味し得る。
【0039】
【化1】
【0040】
TMP製品を水素化工法により製造するためには、前記反応式のように、アルドール反応と水素化反応の2ステップの工程が行われる。前記アルドール反応により製造されるDMBは、その構造上、アルデヒドが含まれた不安定な状態の中間体物質であるため、合成条件や分離条件によって簡単に熱分解されたり副反応を起こし得るという特性がある。
【0041】
一方、TMPは、水素化反応まで完了した安定したアルコール構造を含んでいる最終製品であることから、分離過程で熱分解や副反応が生じ難く、これにより、一般的な蒸留カラムを使用して分離が可能であるという特性がある。
【0042】
したがって、DMBのような不安定な中間体を分離するときには、目的物を分離するとともに分離過程で熱分解や副反応を最小化することが非常に重要であるが、TMPのように安定した製品を分離するときには、少ないエネルギーで目的物を効率よく分離することが非常に重要な因子になる。
【0043】
かかる背景から、反応生成物内でDMBを分離する方法と、反応生成物内でTMPを分離する方法は、分離する方法、条件、装置などが根本的に相違していると考えられる。
【0044】
また、TMPのように安定した製品を分離する場合には、TMPがカラム内で長時間滞留しても安定していることから、垂直分割型カラム(Divided Wall Column;DWC)などを適用して、二つのカラムを使用する代わりに一つのカラムの中に二つのカラム機能を統合することができ、これにより、エネルギーを節約し、投資額を削減する効果を期待することができる。しかし、DMBのように不安定な製品を分離する場合には、前記DWCを使用すると、カラム内での滞留時間が増加し、熱分解可能性がさらに高くなるため好ましくない。すなわち、不安定な物質を分離するときには、高温に曝されることを最小化し、且つカラムに滞留する時間を最小化することで、短時間で目的物を分離することが非常に重要である。
【0045】
したがって、反応生成物内でDMBを分離する方法と、反応生成物内でTMPを分離する方法は、分離する方法、条件、装置などが根本的に相違している。
【0046】
本明細書の一実施態様によると、前記蒸留塔の塔頂部分の圧力は、15kPa(150mbar65kPa(650mbarであってもよく、20kPa(200mbar60kPa(600mbarであってもよい。前記圧力は、カラムの運転温度の適正範囲と関連して選定することができる。前記蒸留塔の塔頂部分の圧力が、15kPa(150mbar未満の場合には、高真空で塔頂で分離される沸点が低い成分を凝縮し回収する際に塔頂カラムの冷却温度が下がって運転に不都合がある可能性があり、65kPa(650mbarを超える場合には、有効成分を分離するために200℃以上のカラム温度を要するため、有効成分が分解される可能性がある。
【0047】
本明細書の一実施態様によると、前記(C)ステップにおいて、加熱温度は、150℃~200℃であってもよい。この際、加熱温度は、再沸器の設定温度を意味し得る。また、前記(C)ステップにおいて、加熱温度は、160℃~195℃であってもよい。有効成分(DMB)を分離するための最低加熱温度が必要であり、前記(C)ステップにおいて、加熱温度が150℃未満の場合には、低沸点成分をカラムの上部に適正な流量で分離し難い可能性があり、200℃を超える場合には、有効成分(DMB)が高い温度で分解される可能性があるため好ましくない。
【0048】
また、本明細書の一実施態様は、ジメチロールブタナールを含む原料を蒸留するように備えられた蒸留塔と、前記原料が前記蒸留塔に流入されるように備えられた原料流入部と、前記原料が蒸留され分離された低沸点成分が前記蒸留塔から流出されるように備えられた第2の流出部と、前記原料が蒸留され分離されたジメチロールブタナールが前記蒸留塔から流出されるように備えられたサイドカット(side cut)と、前記原料が蒸留され分離された高沸点成分が前記蒸留塔から流出されるように備えられた第1の流出部と、前記第1の流出部に流出される高沸点成分の一部または全部を前記蒸留塔に還流するように備えられた再沸器とを含む蒸留装置を提供する。
【0049】
DMBを蒸留カラムを用いて分離する方法においてサイドカットを使用する場合、アルドール反応生成物が、再沸器で高温に曝されることを最小化して副反応およびDMBの熱分解を減少させ、再沸器に滞留する量を減少させることで、エネルギー使用量を削減することができ、高い回収率のDMBを分離することができる。これは、最終的に水素化工程に供給される原料の中で高沸点成分の含量を減少させることができ、水素化反応性を改善し、触媒を保護できるという効果がある。
【0050】
本明細書の一実施態様によると、前記蒸留塔は、単蒸留塔または多段蒸留塔であってもよく、これに限定されるものではないが、好ましくは、20段~40段の多段蒸留塔であってもよい。前記蒸留塔の段数が、20段未満の場合には、DMB回収率が低下する可能性があり、40段を超える場合には、DMB回収率は増加するものの、蒸留塔の段数の増加に伴い、装置投資額と運転費用が増加する可能性がある。
【0051】
本明細書の一実施態様によると、前記原料流入部は、前記蒸留塔の側部に位置することができる。本明細書の一実施態様に係る蒸留塔が20段~40段の多段蒸留塔の場合、前記原料流入部は、前記蒸留塔の5段から35段の間に位置することができる。好ましくは、前記原料流入部は、前記蒸留塔の5段から20段の間に位置することができる。より好ましくは、前記原料流入部は、前記蒸留塔の10段から15段の間に位置することができる。
【0052】
本明細書の一実施態様によると、前記第1の流出部は、前記蒸留塔の塔底部分に位置することができる。前記蒸留塔の塔底部分とは、蒸留塔の下段部分のうち最も低く位置した部分を意味し得る。トレイ式多段蒸留塔の最下段に位置する段を意味し得る。前記第1の流出部に分離される成分は、原料のうち高沸点成分を含むことができる。前記高沸点成分については、上述の通りである。
【0053】
本明細書の一実施態様によると、前記第2の流出部は、前記蒸留塔の塔頂部分に位置することができる。前記蒸留塔の塔頂部分とは、蒸留塔の上段部分のうち最も高く位置した部分を意味し得る。トレイ式多段蒸留塔の最上段に位置する段を意味し得る。前記第2の流出部に分離される成分は、原料のうち低沸点成分を含むことができる。前記低沸点成分については、上述の通りである。
【0054】
本明細書の一実施態様によると、前記サイドカットは、前記蒸留塔の側部に位置することができる。前記サイドカットは、前記原料流入部と前記第1の流出部との間に位置することができる。具体的には、前記サイドカットは、前記蒸留塔の2段から10段の間に位置することができる。好ましくは、前記蒸留塔の2段から5段の間に位置することができる。
【0055】
本明細書の一実施態様によると、前記サイドカットと前記原料流入部との間隔は、3段~30段であってもよい。好ましくは、前記サイドカットと前記原料流入部との間隔は、5段~10段であってもよい。この場合、前記原料流入部は、前記サイドカットよりも高い段数に位置することができる。
【0056】
本明細書の一実施態様によると、前記再沸器(reboiler)は、前記蒸留塔の塔底部分に連結された塔底ライン(bottom line)の一部と連結され、塔底部分に分離される高沸点物質を含む成分をまた蒸留塔の下段に還流する役割を果たすことができる。前記塔底ラインとは、前記蒸留塔の塔底部分に連結され、高沸点物質を含む成分が分離排出される配管を意味し得る。
【0057】
本明細書の一実施態様によると、前記再沸器の温度は、150℃~200℃に調節され得る。好ましくは、160℃~195℃に調節され得る。
【0058】
本明細書の一実施態様によると、前記再沸器の温度を150℃~200℃に調節するように備えられた温度調節手段をさらに含んでもよい。好ましくは、160℃~195℃に調節するように備えられた温度調節手段であってもよい。
【0059】
前記温度調節手段は、温度表示窓、加熱手段、温度制御手段などを意味し得、当技術分野において再沸器に通常使用されるものであれば、制限されない。
【0060】
図1は本明細書の一実施態様に係るジメチロールブタナールの製造方法を実施するための蒸留装置および配管構成の例示的な工程図である。
【0061】
図1によると、ジメチロールブタナール(DMB)を含む原料は、原料流入部11を介して蒸留塔100に流入される。前記ジメチロールブタナール(DMB)を含む原料は、アルカナール、ホルムアルデヒドおよびアルキルアミン触媒を原料としてアルドール縮合反応を行って得られたアルドール反応生成物を、アルコール溶媒を用いて抽出するステップにより得た原料を意味する。この際、前記アルカナールは、炭素数3~10のアルカナールであってもよく、具体的には、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナールなどであってもよいが、これに限定されるものではない。より具体的には、n‐ブタナール(n‐BAL)が好ましい。また、前記アルキルアミン触媒は、炭素数3~20のアルキルアミンであり、具体的には、トリメチルアミン(trimethylamine)、トリエチルアミン(triethylamine、TEA)、トリプロピルアミン(tripropylamine)、またはジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine)などが使用され得、好ましくは、トリエチルアミンが使用され得る。前記抽出するステップにおいて、抽出溶媒として用いられるアルコール溶媒は、炭素数2~10のアルコール溶媒であってもよい。具体的には、炭素数6~8のアルコール溶媒であってもよく、好ましくは、炭素数8のアルコール溶媒であってもよい。具体的には、アルコール溶媒としては、2‐エチルヘキサノール(2‐ethyl hexanol、2‐EH)が好ましい。この際、2‐エチルヘキサノールは、前記アルドール縮合反応の初期の原料の重量に対して1.5倍~3倍を投入することができ、抽出温度は、25℃~90℃であってもよい。
【0062】
前記蒸留塔100は、単蒸留塔または多段蒸留塔であってもよく、これに限定されるものではないが、好ましくは、多段蒸留塔であってもよい。この場合、20段~40段の多段蒸留塔であってもよい。また、前記蒸留塔100の塔頂部分の圧力は、15kPa(150mbar65kPa(650mbarであってもよい。
【0063】
図1によると、前記原料流入部11は、前記蒸留塔100の側部に位置することができる。前記蒸留塔100が20段~40段の多段蒸留塔の場合、前記原料流入部11は、前記蒸留塔100の5段から35段の間に位置することができる。
【0064】
前記第1の流出部14は、前記蒸留塔100の塔底部分に位置することができる。前記蒸留塔100の塔底部分とは、蒸留塔100の下段部分のうち最も低く位置した部分を意味し得る。トレイ式多段蒸留塔の最下段に位置する段を意味し得る。前記第1の流出部14に分離される成分は、原料のうち高沸点成分を含むことができる。前記高沸点成分とは、DMBよりも沸点が高い物質を意味し得る。例えば、トリメチロールプロパン(TMP)などが挙げられる。前記高沸点成分が前記蒸留塔100の第1の流出部14に分離されるとは、前記高沸点成分が、蒸留塔100の第2の流出部12およびサイドカット13に分離される成分に含まれている含量よりも、第1の流出部14に分離される成分に最も高い含量で含まれていることを意味し得る。
【0065】
前記第2の流出部12は、前記蒸留塔100の塔頂部分に位置することができる。前記蒸留塔100の塔頂部分とは、蒸留塔100の上段部分のうち最も高く位置した部分を意味し得る。トレイ式多段蒸留塔の最上段に位置する段を意味し得る。前記第2の流出部12に分離される成分は、原料のうち低沸点成分を含むことができる。前記低沸点成分とは、DMBよりも沸点が低い物質を意味し得る。例えば、ホルムアルデヒド(FA)、水(H2O)、メタノール(MeOH)、トリエチルアミン(TEA)、またはエチルアクロレイン(EA)などが挙げられる。前記低沸点成分が前記蒸留塔100の第2の流出部12に分離されるとは、前記低沸点成分が、前記蒸留塔100の第1の流出部14およびサイドカット13に分離される成分に含まれている含量よりも、第2の流出部12に分離される成分に最も高い含量で含まれていることを意味し得る。
【0066】
前記サイドカット13は、前記蒸留塔100の側部に位置することができる。前記サイドカット13は、前記蒸留塔100内のサイドカット設備200が位した部分に連結され得る。前記サイドカット設備200は、蒸留塔100の原料流入部11から流れる液体を捕集できる装置を意味する。捕集した液体の一部は、サイドカット13に分離され、残りは、蒸留塔100の下段部に流れて第1の流出部14に分離される。
【0067】
前記サイドカット13は、前記原料流入部11と前記第1の流出部14との間に位置することができる。具体的には、前記サイドカット設備200は、前記蒸留塔100の2段から10段の間に位置することができる。前記サイドカット13と前記原料流入部11との間隔は、3段~30段であってもよい。この場合、前記原料流入部11は、前記サイドカット13よりも高い段数に位置することができる。
【0068】
前記ジメチロールブタナールが前記蒸留塔100のサイドカット13に分離されるとは、前記ジメチロールブタナールが、前記蒸留塔100の第2の流出部12および第1の流出部14に分離される成分に含まれている含量よりも、サイドカット13に分離される成分に最も高い含量で含まれていることを意味し得る。
【0069】
前記再沸器300は、前記蒸留塔100の塔底部分に連結された第1の流出部14の一部と連結され、第1の流出部14に分離される高沸点物質を含む成分を還流配管15を介してまた蒸留塔100の下段に還流する役割を果たすことができる。前記再沸器300の温度は、150℃~200℃に調節することができる。
【0070】
上記の通り、本明細書の一実施態様によると、分離効率が高い蒸留カラムにサイドカット設備を用いて、アルドール反応生成物からDMBを効率よく分離することができる。
【実施例
【0071】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0072】
<製造例1>蒸留原料の準備
n‐ブタナール(n‐BAL):ホルムアルデヒド(FA):トリエチルアミン(TEA)を1:4:0.2のモル比で準備し、常圧で35℃の条件で、3時間反応させた。次いで、初期の原料の重量に対して2倍の2‐エチルヘキサノール(2‐EH)を投入し、常圧で70℃の条件で抽出して得られた有機層を蒸留原料として準備した。
【0073】
得られた蒸留原料の代表組成は、下記の表1の通りである。
【0074】
<製造例2>蒸留原料の準備
n‐ブタナール(n‐BAL):ホルムアルデヒド(FA):トリエチルアミン(TEA)を1:2:0.2のモル比で準備し、常圧で35℃の条件で、3時間反応させた。次いで、初期の原料の重量に対して2倍の2‐エチルヘキサノール(2‐EH)を投入し、常圧で70℃の条件で抽出して得られた有機層を蒸留原料として準備した。
【0075】
得られた蒸留原料の代表組成は、下記の表1の通りである。
【0076】
【表1】
【0077】
<実施例1>
直径50mmの25段トレイ式(tray type)蒸留カラムを使用して、原料流入(feed)段は13段に、サイドカット(side cut)段は3段に設置した。蒸留カラムの上部の圧力は20kPa(200mbarに設定し、再沸器(reboiler)の温度は160℃に調節した。
【0078】
製造例1で得られた原料を10g/minの速度で一定に供給しながら、カラム条件が安定化するまで3時間連続運転を行った。
【0079】
カラム条件が安定化した条件で、サイドカット(side cut)段での流量と有機物の組成、およびDMB回収率を下記の表2にまとめた。
【0080】
<実施例2>
実施例1で、蒸留カラムの上部の圧力は60kPa(600mbarに設定し、再沸器(reboiler)の温度は195℃に調節して運転する以外は、実施例1と同じ方法で連続運転を行った。
【0081】
カラム条件が安定化した条件で、サイドカット(side cut)段での流量と有機物の組成、およびDMB回収率を下記の表2にまとめた。
【0082】
<実施例3>
実施例1で、蒸留カラムの上部の圧力は20kPa(200mbarに設定し、再沸器(reboiler)の温度は200℃に調節して運転し、製造例2で得られた原料を11.5g/minの速度で一定に供給した以外は、実施例1と同じ方法で連続運転を行った。
【0083】
カラム条件が安定化した条件で、サイドカット(side cut)段での流量と有機物の組成、およびDMB回収率を下記の表2にまとめた。
【0084】
<比較例1>
実施例1で使用した蒸留カラム装置でサイドカット設備を除去した状態で実験を行った。蒸留カラムの上部の圧力は80kPa(800mbarに設定し、再沸器(reboiler)の温度は190℃に調節して運転し、カラム条件が安定化するまで3時間連続運転を行った。
【0085】
カラム条件が安定化した条件で、再沸器から排出される流量と有機物の組成、およびDMB回収率を下記の表2にまとめた。
【0086】
<比較例2>
比較例1で、蒸留カラムの上部の圧力は20kPa(200mbarに設定し、再沸器(reboiler)の温度は150℃に調節して運転する以外は、比較例1と同じ方法で連続運転を行った。
【0087】
カラム条件が安定化した条件で、再沸器から排出される流量と有機物の組成、およびDMB回収率を下記の表2にまとめた。
【0088】
<比較例3>
ワイプトフィルム蒸発装置(Wiped Film Evaporator;WFE)装置を使用して、DMB分離実験を行った。圧力は20kPa(200mbar、温度は150℃の条件で行い、製造例で得られた原料を10g/minで一定に装置の内部に供給した。
【0089】
この際、蒸発装置(Evaporator)の内部に設置された回転体の速度を150rpmとして運転し、低沸点成分はWFEの上部に除去され、WFEの下部にDMB成分を連続して分離した。
【0090】
装置の下部に分離される流量と有機物の組成、およびDMB回収率を下記の表2にまとめた。
【0091】
【表2】
【0092】
前記表2によると、本明細書の一実施態様により、サイドカットを備えた蒸留カラムでDMBを分離した実施例1および2の場合、サイドカットが備えられていない従来の蒸留カラムを用いた比較例1および2、また、ワイプトフィルム蒸発装置(Wiped Film Evaporator)を用いた比較例3と比較して、高いDMB回収率(98.7%以上)が得られることを確認することができた。
【0093】
つまり、本明細書の一実施態様に係る蒸留装置を用いた場合、アルドール反応生成物が再沸器で高温に曝されることを最小化して副反応およびDMBの熱分解を減少させ、再沸器に滞留する量を減少させることでエネルギー使用量を削減することから、短期間で効率よくDMB成分を分離することができた。
【0094】
これにより、結果として、水素化工程に供給される原料の中で高沸点成分の含量を減少させ、水素化反応性を改善し、触媒を保護することができる。
【0095】
また、実施例1~2と実施例3を比較すると、アルカナール:ホルムアルデヒド:アルキルアミン触媒のモル比(mol ratio)が1:2.5~5:0.1~0.3を満たす場合に、より高いDMB回収率が得られることが分かる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
【符号の説明】
【0097】
11:原料流入部
12:第2の流出部
13:サイドカット
14:第1の流出部
15:還流配管
100:蒸留塔
200:サイドカット設備
300:再沸器
図1
図2