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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】ダイヤモンド平滑化方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/04 20060101AFI20220210BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20220210BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C30B29/04 V
B23K26/352
C30B33/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020533980
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2018028944
(87)【国際公開番号】W WO2020026393
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉武 剛
(72)【発明者】
【氏名】片宗 優貴
(72)【発明者】
【氏名】村澤 功基
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-40797(JP,A)
【文献】特開平8-267259(JP,A)
【文献】WANG, Lanxi, et al.,Study on Site-specific Polishing of Polycrystalline Diamond Film by KrF Excimer Laser,Journal of Laser Micro/Nanoengineering,2017年,Vol.12 No.2,Page.62-66,DOI:10.2961/jlmn.2017.02.0002
【文献】SMEDLEY, John, et al.,Laser patterning of diamond. Part I. Characterization of surface morphology,Journal of Applied Physics,2009年,Vol.105,Page. 123107-1 ~ 123107-5,ISSN 0021-8979
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
B23K 26/00-26/70
C01B 32/28
C23C 16/27
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドの凹凸表面にレーザ光を照射し、該レーザ光の照射に起因して前記ダイヤモンドに生じるアブレーションにより前記凹凸表面を平滑化するダイヤモンド平滑化方法において、
前記レーザ光を前記凹凸表面に照射するとともに、該レーザ光の照射エネルギー密度を変化させて、前記アブレーションが発生する照射エネルギー密度の下限値を閾値エネルギー密度として検出する閾値エネルギー密度検出工程と、
前記閾値エネルギー密度の1倍~15倍の範囲内で設定された平滑化照射エネルギー密度で前記レーザ光を前記凹凸表面に照射して平滑化処理を行う平滑化処理工程と、
を有し、前記平滑化処理工程では、前記凹凸表面の凹所の底からの前記ダイヤモンドの研磨量および前記平滑化処理後の研磨面の変質層の厚さの合計寸法が2.0μm以下で、該研磨面の表面粗さRaが0.2μm以下になるように前記平滑化処理が行われる
ことを特徴とするダイヤモンド平滑化方法。
【請求項2】
前記平滑化処理の対象である前記ダイヤモンドは、結晶粒径が10.0μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されている表面粗さRaが3.0μm以下の多結晶ダイヤモンド膜である
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド平滑化方法。
【請求項3】
前記閾値エネルギー密度検出工程は、前記アブレーションの際に発生するプラズマ電流を検知して該アブレーションの有無を判断する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド平滑化方法。
【請求項4】
前記レーザ光の波長は190nm~270nmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のダイヤモンド平滑化方法。
【請求項5】
前記レーザ光の前記凹凸表面に対する入射角は25°以下である
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のダイヤモンド平滑化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンド平滑化方法に係り、特に、平滑化の際のダイヤモンドの研磨量を低減できるダイヤモンド平滑化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドの凹凸表面を平滑化する技術として、スカイフ研磨やレーザ加工研磨が知られている。スカイフ研磨は、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだ鋳鉄などの金属板を回転させつつ、その回転平面にダイヤモンドを押し付けて凹凸表面の凸部を研磨除去して平滑化する技術である。レーザ加工による平滑化は、例えば特許文献1~4に記載されているように、190nm~360nm程度の波長のレーザ光をダイヤモンドの凹凸表面に照射し、そのレーザ光の照射に起因してダイヤモンドに生じるアブレーションにより凹凸表面を研磨して平滑化する。また、特許文献5には、結晶粒径が10μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されている多結晶ダイヤモンド膜が記載されている。なお、アブレーション(ablation) とは、除去や昇華という意味で、具体的にはレーザ光が照射された物質が分子や原子、プラズマに分解されて放出される現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-40797号公報
【文献】特開平7-40336号公報
【文献】特開平7-41387号公報
【文献】特開平8-267259号公報
【文献】特開2012-176471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記スカイフ研磨による平滑化の場合、加工面は平面に限られ、曲面や複雑な形状のダイヤモンド表面の平滑化には適用できない。レーザ加工研磨によれば、曲面や複雑な形状のダイヤモンド表面の平滑化も可能であるが、平滑化の際のダイヤモンドの研磨量が数十~数百μmに達し、その研磨量を含めてダイヤモンド膜の成膜等を行う必要があるため、製造時間が長くなるとともに製造コストが高くなる。これに対し、未だ公知ではないが、レーザ光を照射する際の照射エネルギー密度をできるだけ低くすることにより、ダイヤモンド内部へのレーザ光の透過を抑制して研磨量を低減することが考えられる。しかし、ダイヤモンドの結晶サイズや品位、ドーピング元素等によってアブレーションが可能な照射エネルギー密度は相違するため、確実にアブレーションによって研磨できるように照射エネルギー密度を大き目に設定すると、平滑化の際の研磨量が必要以上に多くなる。
【0005】
なお、上記問題は、多結晶ダイヤモンド膜に限らず、単結晶ダイヤモンドの平坦な結晶面に結晶成長異常等によって生じる凹凸を研磨して平滑化する場合にも同様に発生する。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ダイヤモンドの凹凸表面にレーザ光を照射して平滑化する場合に、ダイヤモンドの結晶サイズや品位、ドーピング元素等の相違に拘らず研磨量を適切に低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、ダイヤモンドの凹凸表面にレーザ光を照射し、そのレーザ光の照射に起因して前記ダイヤモンドに生じるアブレーションにより前記凹凸表面を平滑化するダイヤモンド平滑化方法において、(a) 前記レーザ光を前記凹凸表面に照射するとともに、そのレーザ光の照射エネルギー密度を変化させて、前記アブレーションが発生する照射エネルギー密度の下限値を閾値エネルギー密度として検出する閾値エネルギー密度検出工程と、(b) 前記閾値エネルギー密度の1倍~15倍の範囲内で設定された平滑化照射エネルギー密度で前記レーザ光を前記凹凸表面に照射して平滑化処理を行う平滑化処理工程と、を有し、(c) 前記平滑化処理工程では、前記凹凸表面の凹所の底からの前記ダイヤモンドの研磨量および前記平滑化処理後の研磨面の変質層の厚さの合計寸法が2.0μm以下で、その研磨面の表面粗さRaが0.2μm以下になるように前記平滑化処理が行われることを特徴とする。
ここで、表面粗さRaは、JISの規定(B0601)による算術平均粗さである。また、研磨量および変質層厚さの合計寸法が2.0μm以下とは、合計寸法の最大値が2.0μm以下であることが望ましいが、複数の測定点で測定した合計寸法の平均値が2.0μm以下であれば良い。
【0008】
第2発明は、第1発明のダイヤモンド平滑化方法において、前記平滑化処理の対象である前記ダイヤモンドは、結晶粒径が10.0μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されている表面粗さRaが3.0μm以下の多結晶ダイヤモンド膜であることを特徴とする。
ここで、結晶粒径は、結晶成長方向(膜厚方向)と直角な方向の最大径寸法で、総てのダイヤモンドの結晶粒径が10.0μm以下であることが望ましいが、表面或いは所定の横断面における結晶粒の少なくとも80%以上が10.0μm以下であれば良い。また、結晶成長方向の寸法が10.0μmより大きくても、結晶粒径が10.0μm以下であれば良い。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明のダイヤモンド平滑化方法において、前記閾値エネルギー密度検出工程は、前記アブレーションの際に発生するプラズマ電流を検知してそのアブレーションの有無を判断することを特徴とする。
【0010】
第4発明は、第1発明~第3発明の何れかのダイヤモンド平滑化方法において、前記レーザ光の波長は190nm~270nmの範囲内であることを特徴とする。
【0011】
第5発明は、第1発明~第4発明の何れかのダイヤモンド平滑化方法において、前記レーザ光の前記凹凸表面に対する入射角は25°以下であることを特徴とする。
ここで、凹凸表面に対するレーザ光の入射角は、凹凸表面の法線方向からのレーザ光の傾斜角度である。すなわち、凹凸表面の法線方向からレーザ光を照射する場合の入射角は0°である。凹凸表面の法線方向とは、例えば凹凸表面の粗さ曲線の中心線に対する法線方向などで、例えば多結晶ダイヤモンド膜の場合、その膜厚方向を法線方向と見做すことができる。
【発明の効果】
【0012】
このようなダイヤモンド平滑化方法によれば、アブレーションが発生する閾値エネルギー密度を検出し、これに基づいて設定された平滑化照射エネルギー密度で平滑化処理を行うため、ダイヤモンドの結晶サイズや品位、ドーピング元素等によってアブレーションが発生する照射エネルギー密度(閾値エネルギー密度)が相違しても、常にアブレーションが可能な照射エネルギー密度で適切に平滑化処理を行うことができる。
【0013】
また、上記平滑化照射エネルギー密度は、閾値エネルギー密度の1倍~15倍の範囲内という低い値に設定されるため、ダイヤモンド内部へのレーザ光の透過が抑制されて凹凸表面の凸部が優先的に研磨除去され、凹凸表面の凹所の底からの研磨量を低減しつつ所定の表面粗さRaに平滑化することができる。すなわち、このような低い平滑化照射エネルギー密度で平滑化処理が行われたダイヤモンドは、機械研磨後とは異なり表面の凹凸を形成する結晶が消失し、少ない研磨量で非晶質のなだらかな凹凸表面が得られる。平滑化処理後の研磨面の表面には、非晶質の変質層が形成されるが、ダイヤモンド内部へのレーザ光の透過が少ないため、影響は表面近傍部分に留まり、変質層の厚さは小さい。これにより、研磨量および変質層厚さの合計寸法が2.0μm以下という少ない量で、表面粗さRaが0.2μm以下になるように平滑化処理を行うことが可能となり、平滑化処理前のダイヤモンドの膜厚を薄くするなどして製造コストを低減することができる。
【0014】
第2発明は、結晶粒径が10.0μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されている表面粗さRaが3.0μm以下の多結晶ダイヤモンド膜の凹凸表面を平滑化する場合で、研磨量および変質層厚さの合計寸法が2.0μm以下で、表面粗さRaが0.2μm以下になるように、適切に平滑化処理を行うことができる。
【0015】
第3発明では、アブレーションの際に発生するプラズマ電流を検知してアブレーションの有無を判断するため、閾値エネルギー密度を簡便に高い精度で検出することができる。
【0016】
第4発明では、レーザ光の波長が270nm以下であるため、ダイヤモンド内部へのレーザ光の透過が抑制されて表層部分を中心に適切に研磨除去できるとともに、レーザ光の波長が190nm以上であるため、酸素によるレーザ光の吸収が抑制され、大気中で簡便にレーザ光による平滑化処理を行うことができる。
【0017】
第5発明では、レーザ光の入射角が25°以下であるため、ダイヤモンドの凹凸表面の凸部にレーザ光が照射された場合、屈折により凸部の内側へ進行して集光されるとともに、反射光も隣接する凸部に照射され易い。すなわち、ダイヤモンド内部へのレーザ光の透過や無駄な反射が抑制され、凹凸表面の凸部にレーザ光が効率よく集められて、その凸部が優先的に効率良く研磨される。これにより、所定の表面粗さRaに平滑化する際の研磨量を一層適切に低減できる。凹凸表面の凸部は、例えば多結晶ダイヤモンド膜の場合、上方へ四角錐状に突き出す結晶の先端部分で、その結晶面は(111)面であるため、入射角が25°以下のレーザ光が屈折等によって凸部に効率よく集光され、その凸部を優先的に適切に研磨できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】多結晶ダイヤモンド膜の凹凸表面を、本発明のダイヤモンド平滑化方法で平滑化する際の概念図である。
図2図1の多結晶ダイヤモンド膜の凹凸表面の平滑化処理前と平滑化処理後の断面形状を比較して示した概念図である。
図3図1において、本発明のダイヤモンド平滑化方法で平滑化する際の手順を説明するフローチャートである。
図4】レーザ光の波長とダイヤモンドによる吸収係数との関係を示したグラフである。
図5】レーザ光の波長と酸素による吸収係数との関係を示したグラフである。
図6】多結晶ダイヤモンド膜の凹凸表面に対して入射角θ=0°でレーザ光を照射した場合の屈折および反射を説明する概念図である。
図7】多結晶ダイヤモンド膜の凹凸表面に対して入射角θ=70°でレーザ光を照射した場合の屈折および反射を説明する概念図である。
図8】多結晶ダイヤモンド膜の平滑化処理前と平滑化処理後の表面の電子顕微鏡写真を比較して示した図である。
図9】多結晶ダイヤモンド膜の平滑化処理前と平滑化処理後の断面の電子顕微鏡写真を比較して示した図である。
図10図9における平滑化処理後のX部の拡大図である。
図11】平滑化処理条件を変更して平滑化処理を行い、処理後の表面粗さRa、およびダイヤモンド研磨量と変質層の厚さとの合計寸法T3を調べた試験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のダイヤモンド平滑化方法は、例えば多結晶ダイヤモンド膜の凹凸表面を平滑化する際に好適に適用されるが、単結晶ダイヤモンドの結晶面に生じる凹凸(異常成長による突起など)を研磨除去する場合にも適用できる。多結晶ダイヤモンド膜は、エンドミルやタップ、ドリル、バイト等の切削工具、耐摩耗性が要求される転造工具や金型等の非切削工具、或いはその他の部材の硬質被膜として広く用いられている。このようなダイヤモンドは、例えばマイクロ波プラズマCVD法やホットフィラメントCVD法、高周波プラズマCVD法等のCVD( Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法を用いて好適に作製されるが、一般に結晶の成長に時間が掛かるため、膜厚を薄くできるように平滑化の際の研磨量を少なくすることが望まれる。
【0020】
閾値エネルギー密度検出工程では、例えば照射エネルギー密度を連続的または段階的に変化させつつ、アブレーションの際にダイヤモンドから発生するプラズマに起因して生じるプラズマ電流を検知することにより、アブレーションの有無を判断し、閾値エネルギー密度を検出することができるが、照射エネルギー密度を変化させつつ照射位置を移動させ、その表面状態の変化や表層部の断面を電子顕微鏡で観察するなどして、どの段階でアブレーションが発生したか否かを判断することもできる。アブレーションに伴うプラズマ発生時の光の発光分析により、アブレーションの有無を判断することもできるなど、種々の態様が可能である。レーザ光の断面積が一定であれば照射エネルギーを変化させるだけで良いなど、結果的に照射エネルギー密度を変化させて閾値エネルギー密度を検出できれば良い。
【0021】
閾値エネルギー密度検出工程は、例えばダイヤモンドに対して平滑化処理を行う毎に実施して閾値エネルギー密度を検出するようにしても良いが、ダイヤモンドが同じ構成、すなわち作製技術が同じで結晶サイズや品位、ドーピング元素等が同じで、且つレーザ光の照射条件が同じであれば、閾値エネルギー密度は略同じであるため、最初に1回閾値エネルギー密度を検出するだけでも良い。閾値エネルギー密度検出工程では、平滑化処理を行う時と同じ照射条件、すなわちレーザ光の種類や波長、発振周波数、入射角等が同じで、照射エネルギー密度だけを変化させることにより、閾値エネルギー密度を検出することが望ましい。入射角については、入射角θに応じて照射面積が変化するため、例えば入射角θ=0°の時の閾値エネルギー密度をXとすると、入射角θ≠0°の場合の閾値エネルギー密度Yは、簡易的にY≒X/cosθによって算出することができる。
【0022】
平滑化照射エネルギー密度は、閾値エネルギー密度の1倍~15倍の範囲内で設定されるが、1倍~10倍程度の範囲内が望ましい。また、凹凸表面の凹所の底からのダイヤモンドの研磨量T1および平滑化処理後の研磨面の変質層の厚さT2の合計寸法T3(=T1+T2)が2.0μm以下で、表面粗さRaが0.2μm以下になるように平滑化する上で、多結晶ダイヤモンド膜の結晶粒径は10.0μm以下で平滑化処理前の表面粗さRaは3.0μm以下であることが適当であり、結晶粒径が5.0μm以下、更には3.0μm以下が望ましく、平滑化処理前の表面粗さRaは2.0μm以下、更には1.0μm以下が望ましい。但し、結晶粒径が10.0μmよりも大きい多結晶ダイヤモンド膜に対しても、本発明方法による平滑化処理を行うことができる。平滑化処理前の表面粗さRaが3.0μmを超えていても良い。
【0023】
平滑化処理後の研磨面(ダイヤモンド表面)の変質層は、例えばダイヤモンドがグラファイト化して非晶質になった部分であり、その変質層の残存が問題となるような用途や更に滑らかな表面が必要な場合など、必要に応じて後加工により表面を研磨除去すれば良い。切削工具の場合、上記変質層は加工中に摩耗粉として除去されるため、変質層がそのまま残存していても良い。
【0024】
レーザ光の波長は、190nmよりも短いと酸素によるレーザ光の吸収が増えるため、大気中でレーザ光による平滑化処理を行うためには、190nm以上が適当で、220nm以上が望ましい。レーザ光の波長が270nmよりも長くなると、ダイヤモンド内部への透過量が増えるため、ダイヤモンド内部への影響を抑えるためには、270nm以下が適当である。具体的には、波長が222nmのKrClエキシマレーザや、波長が248nmのKrFエキシマレーザ、波長が266nmのYAGレーザ(第4高調波)等が好適に用いられるが、その他の光源を採用することもできる。波長が190nmよりも短いレーザ光や、270nmよりも長いレーザ光を用いることも可能である。レーザ光の凹凸表面に対する入射角は25°以下が適当で、10°以下が望ましいが、25°を超える入射角でレーザ光を照射することも可能である。
【実施例
【0025】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のダイヤモンド平滑化方法を用いて多結晶ダイヤモンド膜12の凹凸表面14を平滑化する際の概念図で、多結晶ダイヤモンド膜12は、例えば超硬合金等の基材10の平坦な上面上にコーティングされている。この多結晶ダイヤモンド膜12は、マイクロ波プラズマCVD法によって形成されており、結晶粒径は10.0μm以下で、本実施例では3.0μm以下であり、表面粗さRaは3.0μm以下で、本実施例では0.5μm程度である。図2は、多結晶ダイヤモンド膜12の表層部分の断面形状を拡大して示した概念図で、(a) は平滑化処理を行う前の状態で、(b) は平滑化処理を行った後の状態である。(a) の平滑化処理前の状態では、凹凸表面14に多数の凸部14pが存在するのに対し、(b) の平滑化処理後の研磨面16は、比較的滑らかな凹凸形状を成している。凹凸表面14の凸部14pは、例えば8面体形状や12面体形状のダイヤモンド結晶の結晶成長方向の先端部分などで、四角錐形状を成しているものが多い。この多結晶ダイヤモンド膜12は、平滑化処理の対象であるダイヤモンドである。
【0026】
図1において、レーザ光照射装置20は、凹凸表面14にレーザ光22を照射して平滑化処理を行う装置で、レーザ光22を発生する光源(レーザ発振器)や、そのレーザ光22を所定形状に集光する円筒レンズ等を備えている。レーザ光22の波長は190nm~270nmの範囲内で、発振周波数は例えば100Hzである。光源としては、例えば波長が193nmのArFエキシマレーザや、波長が222nmのKrClエキシマレーザ、波長が248nmのKrFエキシマレーザ、波長が266nmのYAGレーザ(第4高調波)等が好適に用いられる。レーザ光22の波長が190nmよりも短いと、図5に示すように酸素によるレーザ光22の吸収が増えるため、大気中でレーザ光22による平滑化処理を行うためには、190nm以上が適当である。また、レーザ光の波長が270nmよりも長くなると、図4に示すようにダイヤモンドによる吸収が減少して内部への透過量が増えるため、ダイヤモンド内部への影響を抑えるためには、270nm以下が適当である。
【0027】
レーザ光照射装置20はまた、レーザ光22の照射エネルギー密度Eを調整する照射エネルギー密度調整装置、凹凸表面14に対する入射角θを調整する入射角調整装置、凹凸表面14と平行な方向へ相対移動させてレーザ光22の照射位置を移動させる走査装置、などを備えている。入射角θは、本実施例では25°以下の所定角度に設定される。すなわち、凹凸表面14の凸部14pは、主に上方へ四角錐状に突き出すダイヤモンドの結晶の先端部分で、その結晶面は(111)面で垂直方向に対して約35°の角度で傾斜しているため、入射角θが25°以下のレーザ光22によって効率よく研磨することができる。図6は、レーザ光22の入射角θ=0°の場合で、凸部14pの表面における屈折(一点鎖線)によりレーザ光22が凸部14pに集光されるとともに、表面による反射光(破線)も隣接する凸部14pに入射することで、凸部14pが優先的に効率良く研磨される。これに対し、図7は入射角θ=70°の場合で、凸部14pの一方の表面から垂直に近い角度でレーザ光22が入射するだけで、反対側の面にはレーザ光22が照射されないとともに、反射光も上方へ進行して凸部14pの研磨に寄与しないため、研磨効率が悪いとともに、レーザ光22が多結晶ダイヤモンド膜12の内部まで進入する可能性がある。走査速度Vについては、本実施例では100~500μm/秒程度の範囲内で適当に定められる。
【0028】
照射エネルギー密度Eについては、本実施例では図3のフローチャートに示すように、ステップS1で閾値エネルギー密度Esを検出し、ステップS2で、その閾値エネルギー密度Esに基づいて平滑化照射エネルギー密度Efを設定する。ステップS2では、平滑化照射エネルギー密度Efの他に、前記入射角θ、走査速度V、走査回数N等の平滑化処理条件が作業者によって設定される。そして、ステップS3では、その平滑化処理条件に従ってレーザ光照射装置20が作動させられ、多結晶ダイヤモンド膜12の凹凸表面14にレーザ光22を照射して自動的に平滑化処理が実行される。ステップS1で閾値エネルギー密度Esを検出する工程は閾値エネルギー密度検出工程であり、ステップS2およびS3で、閾値エネルギー密度Esに基づいて平滑化照射エネルギー密度Efやその他の平滑化処理条件を設定して平滑化処理を行う工程は平滑化処理工程である。
【0029】
平滑化処理後の多結晶ダイヤモンド膜12の研磨面16は、図2の(b) に模式的に示すように、平滑化処理前の尖った凸部14pが消滅してなだらかな凹凸形状を成している。また、研磨面16の表層部分には、レーザ光22の照射によって変質した変質層18が形成される。この変質層18は、レーザ光22の照射でダイヤモンドがグラファイト化して非晶質になった部分である。図8図10は、実際の多結晶ダイヤモンド膜12の電子顕微鏡写真であり、図8の(a) は平滑化処理前の凹凸表面14で、図8の(b) は平滑化処理後の研磨面16である。図9の(a) は平滑化処理前の多結晶ダイヤモンド膜12の断面で、図9の(b) は平滑化処理後の多結晶ダイヤモンド膜12の断面であり、図10図9(b) におけるX部を更に拡大した写真である。図2および図9の寸法T1は、平滑化処理によって除去された多結晶ダイヤモンド膜12の研磨量(研磨代)で、凹凸表面14の凹所の底から研磨面16までの寸法(平均値)である。また、図2および図10の寸法T2は、変質層18の厚さ(平均値)であり、図2の寸法T3は、研磨量T1と変質層厚さT2とを加算した合計寸法(T1+T2)である。
【0030】
ここで、前記ステップS1で検出する閾値エネルギー密度Esは、レーザ光22が凹凸表面14に照射されることによってアブレーションが発生する照射エネルギー密度Eの下限値で、図1に示すアブレーション検出装置30を用いて検出することができる。アブレーション検出装置30は、多結晶ダイヤモンド膜12の凹凸表面14にレーザ光22が照射された際に、ダイヤモンドのアブレーションによって発生するプラズマに起因して生じるプラズマ電流Ipを検知するもので、導電性を有する金属の棒や板等で構成されたプローブ32を備えている。プローブ32は、電流計34を介してグランド36に接続されており、アブレーションによりプラズマが発生すると、その+イオンに引かれてグランド36から電子がプローブ32に移動するプラズマ電流Ipが生じ、そのプラズマ電流Ipを電流計34によって検出することにより、アブレーションの発生を検知することができる。
【0031】
すなわち、先ず、レーザ光照射装置20を、前記ステップS3の平滑化処理を実行する時と同じ照射条件に設定する。具体的には、レーザ光22の光源や波長、発振周波数、入射角θ等を、平滑化処理を実行する時と同じに設定する。例えば、図11に示す試験品5の場合、波長が248nmのKrFエキシマレーザを光源として用いて入射角θ=0°とする。レーザ光22の発振周波数は100Hzである。そして、照射エネルギー密度調整装置により照射エネルギー密度Eを連続的または段階的に変化させながら、アブレーション検出装置30でプラズマ電流Ipを測定することにより、プラズマ電流Ipが発生した時の照射エネルギー密度Eを閾値エネルギー密度Esとして検出する。照射エネルギー密度調整装置は、照射エネルギー量およびレーザ光22の断面積の少なくとも一方を変化させることができる。この閾値エネルギー密度Esの検出は、作業者が電流計34を目視で観察してプラズマ電流Ipの有無を判断し、プラズマ電流Ipが発生した時の照射エネルギー密度Eを閾値エネルギー密度Esとして検出しても良いが、レーザ光照射装置20および電流計34をコンピュータ等に接続し、予め定められたプログラムに従って自動的に照射エネルギー密度Eを変化させて閾値エネルギー密度Esが検出されるようにすることもできる。
【0032】
上記閾値エネルギー密度Esは、多結晶ダイヤモンド膜12の構成に依存し、多結晶ダイヤモンド膜12の作製技術が同じで結晶サイズや品位、ドーピング元素等が同じで、レーザ光22の波長等の照射条件が同じであれば、閾値エネルギー密度Esは略同じ値になる。したがって、平滑化処理の対象である多結晶ダイヤモンド膜12の構成が同じ場合、例えば同じ多結晶ダイヤモンド膜12をコーティングした多数の切削工具等に対して同じ照射条件で平滑化処理を行う場合には、最初に1回閾値エネルギー密度Esを検出するだけで良い。入射角θが異なるだけであれば、その入射角θの相違による照射面積の違いに基づいて、閾値エネルギー密度Esを計算によって求めることも可能である。
【0033】
前記ステップS2では、上記閾値エネルギー密度Esに基づいて、平滑化処理を行う際の平滑化照射エネルギー密度Efを設定する。平滑化照射エネルギー密度Efは、閾値エネルギー密度Es以上の値で、本実施例では閾値エネルギー密度Esの1倍~15倍の範囲内で設定する。本実施例では、前記研磨量T1および変質層厚さT2の合計寸法T3が2.0μm以下で、且つ研磨面16の表面粗さRaが0.2μm以下になるように、予め実験等を行って上記閾値エネルギー密度Esの1倍~15倍の範囲内で平滑化照射エネルギー密度Efが設定される。
【0034】
このような本実施例のダイヤモンド平滑化方法によれば、アブレーションが発生する閾値エネルギー密度Esを検出し、その閾値エネルギー密度Esに基づいて設定された平滑化照射エネルギー密度Efで平滑化処理を行うため、多結晶ダイヤモンド膜12の結晶サイズや品位、ドーピング元素等によってアブレーションが発生する閾値エネルギー密度Esが相違しても、常にアブレーションが可能な平滑化照射エネルギー密度Efで適切に平滑化処理を行うことができる。
【0035】
また、上記平滑化照射エネルギー密度Efは、閾値エネルギー密度Esの1倍~15倍の範囲内という低い値に設定されるため、多結晶ダイヤモンド膜12の内部へのレーザ光22の透過が抑制されて凹凸表面14の凸部14pが優先的に研磨除去され、凹凸表面14の凹所の底からの研磨量T1を低減しつつ所定の表面粗さRaに平滑化することができる。すなわち、このような低い平滑化照射エネルギー密度Efで平滑化処理が行われた多結晶ダイヤモンド膜12は、機械研磨後とは異なり凹凸表面14の凹凸を形成する結晶が消失し、少ない研磨量T1で非晶質のなだらかな凹凸形状の研磨面16が得られる。平滑化処理後の研磨面16の表面には、非晶質の変質層18が形成されるが、多結晶ダイヤモンド膜12の内部へのレーザ光22の透過が少ないため、影響は表面近傍部分に留まり、変質層18の厚さT2は小さく、例えば0.5μm程度以下である。
【0036】
これにより、研磨量T1および変質層厚さT2の合計寸法T3が2.0μm以下という少ない量で、表面粗さRaが0.2μm以下になるように平滑化処理を行うことが可能となり、平滑化処理前の多結晶ダイヤモンド膜12の膜厚を薄くして製造コストを低減することができる。例えば、図11の試験品5の場合、平滑化照射エネルギー密度Efは閾値エネルギー密度Esの1倍で、平滑化処理後の表面粗さRaは約0.10μmであり、研磨量T1および変質層厚さT2の合計寸法T3は約0.5μmであった。合計寸法T3の内訳は、研磨量T1が約0.3μmで、変質層厚さT2が約0.2μmである。
【0037】
また、本実施例の多結晶ダイヤモンド膜12は、結晶粒径が3.0μm以下の微結晶ダイヤモンドにて構成されているとともに表面粗さRaが0.5μm程度であるため、研磨量T1および変質層厚さT2の合計寸法T3が2.0μm以下で、表面粗さRaが0.2μm以下になるように、適切に平滑化処理を行うことができる。
【0038】
また、アブレーション検出装置30は、アブレーションの際に発生するプラズマ電流Ipを検知するもので、プラズマ電流Ipに基づいてアブレーションの有無を容易に検知することができるため、閾値エネルギー密度Esを簡便に高い精度で検出することができる。
【0039】
また、レーザ光22の波長が270nm以下であるため、多結晶ダイヤモンド膜12の内部へのレーザ光22の透過が抑制されて表層部分を中心に適切に研磨除去できる。また、レーザ光22の波長が190nm以上であるため、酸素によるレーザ光22の吸収が抑制され、大気中で簡便にレーザ光22による平滑化処理を行うことができる。
【0040】
また、レーザ光22の凹凸表面14に対する入射角θが25°以下であるため、凹凸表面14の凸部14pにレーザ光22が照射された場合、屈折により凸部14pの内側へ進行して集光されるとともに、反射光も隣接する凸部14pに照射され易い。すなわち、多結晶ダイヤモンド膜12の内部へのレーザ光22の透過や無駄な反射が抑制され、凹凸表面14の凸部14pにレーザ光22が効率よく集められて、その凸部14pが優先的に効率良く研磨される。これにより、所定の表面粗さRaに平滑化する際の研磨量T1を一層適切に低減できる。
【0041】
次に、図11の試験品1~16に示すように、本実施例による平滑化方法を含む複数の平滑化方法を用いて、前記多結晶ダイヤモンド膜12の凹凸表面14に対して平滑化処理を行い、平滑化処理後の表面粗さRa、および研磨量T1と変質層厚さT2との合計寸法T3を調べた試験結果を説明する。試験品1~11は、レーザ光22の波長が190~270nmの範囲内で、入射角θが25°以下で、且つ平滑化照射エネルギー密度Efが閾値エネルギー密度Esの1倍~15倍の範囲内であり、本実施例品である。試験品12~16は、波長、入射角、および平滑化照射エネルギー密度Efのうち、散点を付した欄(グレー部分)が本実施例の要件から外れている。波長、入射角、および平滑化照射エネルギー密度Ef以外の平滑化処理条件は同じで、走査速度Vは300μm/秒、走査回数N=1、大気中処理であり、多結晶ダイヤモンド膜12の平滑化処理前の表面粗さRaは約0.5μmである。
【0042】
ここで、例えばレーザ光22の波長が248(nm)で入射角θが0°の試験品5~7、14、および16の閾値エネルギー密度Esは同じで、本実施例では3.5(J/cm2 )であり、平滑化照射エネルギー密度Efは、その閾値エネルギー密度Esの倍率で示されており、倍率が1倍の試験品5の平滑化照射エネルギー密度Efは3.5(J/cm2 )である。レーザ光22の波長が異なる試験品は、アブレーション検出装置30を用いて別々に閾値エネルギー密度Esが求められ、その倍率によって平滑化照射エネルギー密度Efが設定される。入射角θが異なる試験品についても、アブレーション検出装置30を用いて予め実験的に閾値エネルギー密度Esを求めることができるが、例えば入射角θ=0°の閾値エネルギー密度EsがXの場合、入射角θ≠0°の時の閾値エネルギー密度Yは、演算式Y≒X/cosθに従って簡易的に算出することもできる。
【0043】
図11の平滑化処理後表面粗さRaは、波長405nmのレーザ顕微鏡で測定長129μm、カットオフ80μmで測定した。平滑化処理前の表面粗さRaも同じ測定方法で測定した。研磨量T1および変質層厚さT2の合計寸法T3(平均値)は、電子顕微鏡による断面観察によって測定した。表面粗さRaは0.2μm以下が合格で、合計寸法T3は2.0μm以下が合格であり、散点を付した欄(グレー部分)は不合格である。本実施例品である試験品1~11は、何れも表面粗さRaが0.2μm以下で且つ合計寸法T3が2.0μm以下という合格要件を満たしている。
【0044】
試験品12は、波長が108nmの場合で、酸素によるレーザ光22の吸収が大きく、凹凸表面14を適切に研磨できなかったと考えられる。試験品13は、入射角θが30°の場合で、凸部14pに対する集光が不十分で、凹凸表面14を適切に研磨できなかったと考えられる。これ等の試験品12、13については、例えば走査速度Vを遅くしたり、走査回数Nを増やしたりすることにより、表面粗さRaを0.2μm以下まで小さくできる可能性がある。
【0045】
試験品14は、平滑化照射エネルギー密度Efが閾値エネルギー密度Esの20倍の場合で、平滑化照射エネルギー密度Efが大き過ぎてレーザ光22が多結晶ダイヤモンド膜12の内部まで進入し、研磨量T1や変質層厚さT2が大きくなったと考えられる。試験品15は、波長が351nmの場合で、多結晶ダイヤモンド膜12の内部へのレーザ光22の透過量が多くなり、研磨量T1や変質層厚さT2が大きくなったと考えられる。試験品16は、平滑化照射エネルギー密度Efが閾値エネルギー密度Esの0.5倍の場合で、アブレーションが発生しないため、多結晶ダイヤモンド膜12の凹凸表面14を全く研磨できない。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
12:多結晶ダイヤモンド膜(ダイヤモンド) 14:凹凸表面 16:研磨面 18:変質層 22:レーザ光 Es:閾値エネルギー密度 Ef:平滑化照射エネルギー密度 θ:入射角 Ip:プラズマ電流 T1:研磨量 T2:変質層厚さ T3:合計寸法 S1:閾値エネルギー密度検出工程 S2、S3:平滑化処理工程
図1
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