IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図1
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図2
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図3
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図4
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図5
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図6
  • 特許-エアロゲルシートの製造方法および装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-09
(45)【発行日】2022-02-18
(54)【発明の名称】エアロゲルシートの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20220210BHJP
【FI】
C01B33/16
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020003705
(22)【出願日】2020-01-14
(62)【分割の表示】P 2018520153の分割
【原出願日】2017-01-17
(65)【公開番号】P2020073443
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-01-14
(31)【優先権主張番号】10-2016-0006337
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、イェ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チェ-キュン
(72)【発明者】
【氏名】オ、キョン-シル
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-524528(JP,A)
【文献】特開平07-316337(JP,A)
【文献】特開平10-070121(JP,A)
【文献】特開2015-003860(JP,A)
【文献】特開昭54-133659(JP,A)
【文献】特開平06-032935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)密度が40kg/m3、60kg/m3、80kg/m3、または100kg/m3のシリカゾルを準備するステップと、
(b)ゲル化用触媒を準備するステップと、
(c)ブランケット(blanket)の表面に、(a)ステップで製造したシリカゾルを噴射して含浸させるステップと、
(d)シリカゾルが含浸されたブランケットの表面に、前記(b)ステップで製造したゲル化用触媒を噴射してシリカゾルをゲル化させるステップと、を含み、
シリカゾルの密度が40kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.035L/minに調節し、
シリカゾルの密度が60kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.017L/minに調節し、
シリカゾルの密度が80kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.014L/minに調節し、
シリカゾルの密度が100kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.012L/minに調節し、
前記(d)ステップの後に、(e)シリカゾルがゲル化したブランケットをエージングするステップをさらに含み、
前記(e)ステップの後に、(f)エージングされたブランケットにコーティング液を投入して表面を改質するステップをさらに含む
エアロゲルシートの製造方法。
【請求項2】
前記(a)ステップにおいて、TEOS(tetraethyl orthosilicate)とエタノールを混合してシリカゾルを準備する、請求項1に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項3】
前記TEOS(tetraethyl orthosilicate)は、加水分解されたTEOSを含む、請求項2に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項4】
前記(b)ステップにおいて、エタノールとアンモニア水(NH4OH)を混合してゲル化用触媒を準備する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項5】
前記(c)ステップおよび前記(d)ステップは、前記ブランケットを一側から他側に搬送するコンベアベルト上で行う、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項6】
前記コンベアベルトには、前記ブランケットの表面に噴射されたシリカゾルの厚さを調節する第1スクレーパと、前記ブランケットの表面に噴射されたゲル化用触媒の厚さを調節する第2スクレーパとを含むスクレーパが含まれる、請求項5に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項7】
前記(d)ステップの後であって、前記(e)ステップの前に、8~12分間放置することでシリカゾルをゲル化させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項8】
前記(e)ステップにおいて、前記シリカゾルがゲル化したブランケットを70℃の高温で50分間エージングする、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項9】
前記(e)ステップにおいて、前記シリカゾルがゲル化したブランケットを常温で10分間放置してからエージングを行う、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項10】
前記(f)ステップにおいて、コーティング液は、エタノールとアンモニア水(NH4OH)を混合して製造する、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項11】
前記(f)ステップにおいて、前記コーティング液を、前記ブランケット(blanket)の表面に含浸されたシリカゾルの1.6倍の量で投入し、70℃の高温で反応容器中で1時間エージングしてHMDS(Hexamethyldisilazane)を用いて表面を改質する、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項12】
前記(f)ステップの後に、(g)表面が改質されたブランケットを乾燥するステップをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項13】
前記(g)ステップは、
表面改質されたブランケットを、28℃および70barの環境で二酸化炭素を10分間70L/minの速度で注入して乾燥する一次乾燥ステップと、
1時間20分間50℃に昇温させて乾燥する二次乾燥ステップと、
さらに50℃および150barの環境で二酸化炭素を20分間0.7L/minの速度で注入して乾燥する三次乾燥ステップと、
20分間休止した後、二酸化炭素を20分間0.7L/minの速度で注入して乾燥する四次乾燥ステップと、を含む、請求項12に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項14】
前記(g)ステップにおける三次乾燥ステップでは、二酸化炭素を注入する間に、表面が改質されることでブランケットから発生したエタノールを回収する、請求項13に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項15】
前記(g)ステップは、四次乾燥ステップの後に、二酸化炭素を2時間排出する排出ステップをさらに含む、請求項13または14に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項16】
前記(e)、(f)、および(g)ステップは、ブランケットを収容する反応容器内で行う、請求項12~15のいずれか一項に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項17】
前記(g)ステップにおいて、ブランケットが前記反応容器に収容された状態で、超臨界乾燥を行う、請求項16に記載のエアロゲルシートの製造方法。
【請求項18】
ブランケットがロール状に巻回された供給ローラと、
前記供給ローラに巻回されたブランケットを一側から他側に搬送するコンベアベルトと、
前記コンベアベルト上に位置した前記ブランケットの表面に密度が40kg/m3、60kg/m3、80kg/m3、または100kg/m3のシリカゾルを噴射して含浸させるシリカゾル供給部材と、
前記コンベアベルトに位置した前記ブランケットの表面にゲル化用触媒を噴射してシリカゾルをゲル化させる触媒供給部材と、
前記コンベアベルトによって他側まで搬送された前記ブランケットをロール状に巻回して前記ブランケットを回収する回収ローラと、
前記回収ローラによって回収されたロール状のブランケットを収容し、収容したブランケットをエージングさせ、コーティング液を投入して表面改質させ、および高温で乾燥する反応容器と、を含み
前記触媒供給部材は、シリカゾルの密度が40kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.035L/minに調節し、シリカゾルの密度が60kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.017L/minに調節し、シリカゾルの密度が80kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.014L/minに調節し、シリカゾルの密度が100kg/m3である場合には、ゲル化用触媒の噴射速度は0.012L/minに調節する、エアロゲルシートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年1月19日付けの韓国特許出願第10‐2016‐0006337号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、エアロゲルシートの製造方法および装置に関し、特に、断熱性および耐久性に優れるとともに、均一な厚さを有するエアロゲルシートの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、エアロゲルは、現在まで知られた固体の中でも、90%以上、最大99%程度の高い気孔率を有する高多孔性物質であって、シリカ前駆体溶液をゾル-ゲル重合反応させてゲルを形成した後、超臨界条件若しくは常圧条件の下で乾燥することで得ることができる。すなわち、エアロゲルは、空気が満ちている気孔構造を有している。
【0004】
かかるエアロゲルは、内部空間の90~99%が空いている独特の気孔構造により、軽いながらも断熱性、吸音性などの物性を有し、中でも最も大きい利点は、従来のスタイロフォームなどの有機断熱材の熱伝導度である36mW/m.kよりも著しく低い30mW/m.k以下の熱伝導率を示す高断熱性を有するということである。
【0005】
しかし、従来技術によるエアロゲルは、シートの厚さが均一ではなく、断熱性および耐久性に劣るという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、断熱性および耐久性に優れ、特に、均一な厚さを有するエアロゲルシートの製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するための本発明によるエアロゲルシートの製造方法は、(a)シリカゾルを準備するステップと、(b)ゲル化用触媒を準備するステップと、(c)ブランケット(blanket)の表面に、(a)ステップで製造したシリカゾルを噴射して含浸させるステップと、(d)シリカゾルが含浸されたブランケットの表面に、前記(b)ステップで製造したゲル化用触媒を噴射してシリカゾルをゲル化させるステップと、を含むことができる。
【0008】
前記(a)ステップにおいて、TEOS(tetraethyl orthosilicate)とエタノールを混合してシリカゾルを準備することができる。
【0009】
前記TEOS(tetraethyl orthosilicate)として、加水分解されたものを用いることができる。
【0010】
前記(b)ステップにおいて、エタノールとアンモニア水(NH4OH)を混合してゲ
ル化用触媒を準備することができる。
【0011】
前記(c)ステップおよび前記(d)ステップは、前記ブランケットを一側から他側に
搬送するコンベアベルト上で行うことができる。
【0012】
前記コンベアベルトには、前記ブランケットの表面に噴射されたシリカゾルの厚さを調節する第1スクレーパと、前記ブランケットの表面に噴射されたゲル化用触媒の厚さを調節する第2スクレーパと、からなるスクレーパが含まれることができる。
【0013】
前記(d)ステップにおいて、前記ブランケットの表面に前記ゲル化用触媒を0.035~0.012L/minの速度で噴射し、8~12分間放置することでシリカゾルをゲル化させることができる。
【0014】
前記(d)ステップの後に、(e)シリカゾルがゲル化したブランケットをエージングするステップをさらに含むことができる。
【0015】
前記(e)ステップにおいて、前記シリカゾルがゲル化したブランケットを70℃の高温で50分間エージングすることができる。
【0016】
前記(e)ステップにおいて、前記シリカゾルがゲル化したブランケットを常温で10分間放置してからエージングを行うことができる。
【0017】
前記(e)ステップの後に、(f)エージングされたブランケットにコーティング液を投入して表面を改質するステップをさらに含むことができる。
【0018】
前記(f)ステップにおいて、コーティング液は、エタノールとアンモニア水(NH4
OH)を混合して製造することができる。
【0019】
前記(f)ステップにおいて、前記コーティング液を、前記ブランケット(blanket)の表面に含浸されたシリカゾルの1.6倍の量で投入し、70℃の高温で1時間エージングしてHMDS(Hexamethyldisilazane)を用いて表面を改質することができる。
【0020】
前記(f)ステップの後に、(g)表面が改質されたブランケットを乾燥するステップをさらに含むことができる。
【0021】
前記(g)ステップは、表面改質されたブランケットを、28℃および70barの環境で二酸化炭素を10分間70L/minの速度で注入して乾燥する一次乾燥ステップと、1時間20分間50℃に昇温させて乾燥する二次乾燥ステップと、さらに50℃および150barの環境で二酸化炭素を20分間0.7L/minの速度で注入して乾燥する三次乾燥ステップと、20分間休止した後、二酸化炭素を20分間0.7L/minの速度で注入して乾燥する四次乾燥ステップと、を含むことができる。
【0022】
前記(g)ステップにおける三次乾燥ステップでは、二酸化炭素を注入すると同時に、表面が改質されることでブランケットから発生したエタノールを回収することができる。
【0023】
前記(g)ステップは、四次乾燥ステップの後に、二酸化炭素を2時間排出する排出ステップをさらに含むことができる。
【0024】
前記(e)、(f)、および(g)ステップは、ブランケットを収容する反応容器内で行うことができる。
【0025】
前記(g)ステップにおいて、ブランケットが前記反応容器に収容された状態で、超臨
界乾燥を行うことができる。
【0026】
一方、このような方法を有するエアロゲルシートの製造方法を行うための製造装置は、ブランケットがロール状に巻回された供給ローラと、前記供給ローラに巻回されたブランケットを一側から他側に搬送するコンベアベルトと、前記コンベアベルトに位置した前記ブランケットの表面にシリカゾルを噴射して含浸させるシリカゾル供給部材と、前記コンベアベルトに位置した前記ブランケットの表面にゲル化用触媒を噴射してシリカゾルをゲル化させる触媒供給部材と、前記コンベアベルトによって他側まで搬送された前記ブランケットをロール状に巻回して回収する回収ローラと、前記回収ローラによって回収されたロール状のブランケットを収容し、収容したブランケットをエージング、コーティング液を投入して表面改質、および高温で乾燥する反応容器と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、下記のような効果を奏する。
【0028】
第一、本発明は、エアロゲルシートの製造方法を用いることで、断熱性および耐久性に優れ、特に、均一な厚さを有するエアロゲルシートを製造することができる。
【0029】
第二に、本発明によるエアロゲルシートの製造方法では、TEOS(tetraethly orthosilicate)とエタノールを混合することで、高品質のシリカゾルを得ることができる。
【0030】
第三に、本発明によるエアロゲルシートの製造方法では、加水分解されたTEOSを用いることで、高品質のシリカゾルを得ることができる。
【0031】
第四に、本発明によるエアロゲルシートの製造方法では、エタノールとアンモニア水(NH4OH)を混合することで、高品質のゲル化用触媒を得ることができる。
【0032】
第五に、本発明によるエアロゲルシートの製造方法では、ブランケットを一側から他側に搬送するコンベアベルトを用いることで、作業の連続性と工程の単純化を得ることができる。
【0033】
第六に、本発明によるエアロゲルシートの製造方法では、コンベアベルトにスクレーパを含むことで、シリカゾルまたはゲル化用触媒の厚さを均一に調節することができる。
【0034】
第七に、本発明によるエアロゲルシートの製造方法では、シリカゾルがゲル化したブランケットをエージングし、表面改質してから乾燥することで、高品質のエアロゲルシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるエアロゲルシートの製造方法を示したフローチャートである。
図2】本発明によるエアロゲルシートの製造装置を示した図である。
図3】本発明によるエアロゲルシートの製造装置に含まれた反応容器を示した図である。
図4】本発明によるエアロゲルが含浸されたブランケットを示した拡大写真である。
図5】本発明によるエアロゲルシートを示した拡大写真である。
図6】本発明によるエアロゲルシートと従来技術によるエアロゲルシートを比較した表である。
図7】本発明によるエアロゲルシートと従来技術によるエアロゲルシートを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は様々な他の形態に実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略しており、明細書全体にわたって類似の部分には類似の図面符号を付す。
【0037】
本発明によるエアロゲルシートの製造方法は、図1に示されているように、(a)シリカゾルを準備するシリカゾル製造ステップと、(b)ゲル化用触媒を準備するゲル化用触媒製造ステップと、(c)ブランケット(blanket)の表面にシリカゾルを噴射して含浸させるシリカゾル噴射ステップと、(d)シリカゾルが含浸されたブランケットの表面にゲル化用触媒を噴射してシリカゾルをゲル化させる触媒噴射ステップと、(e)シリカゾルがゲル化したブランケットをエージングするブランケットエージングステップと、(f)エージングされたブランケットにコーティング液を投入して表面を改質するブランケット表面改質ステップと、(g)表面が改質されたブランケットを乾燥するブランケット乾燥ステップと、を含む。
【0038】
以下、本発明の第1実施形態によるエアロゲルシートの製造方法をより詳細に説明する。
【0039】
(a)シリカゾル準備ステップ
(a)シリカゾル製造ステップは、シリカゾルを得るためのステップであって、TEOS(tetraethyl orthosilicate)とエタノールを混合してシリカゾルを製造する。例えば、反応槽(不図示)にTEOS1.2kgとエタノール2.7kgを含ませてシリカゾルを製造する。
【0040】
一方、TEOSは水との反応性に優れた溶媒であって、加水分解されたものを用いる。これにより、反応性をさらに高めることができる。すなわち、加水分解されたTEOSとエタノールを混合することで、反応性に優れたシリカゾルを得ることができる。
【0041】
(b)ゲル化用触媒準備ステップ
(b)ゲル化用触媒準備ステップは、ゲル化用触媒を得るためのステップであって、エタノールとアンモニア水(NH4OH)を混合してゲル化用触媒を製造する。例えば、反
応槽(不図示)でエタノール0.5kgとアンモニア水(NH4OH)30mlを混合し
てゲル化用触媒を製造する。
【0042】
一方、図2は、本発明の(c)シリカゾル噴射ステップ、(d)ゲル化用触媒噴射ステップを行うためのエアロゲルシートの製造装置100を示した図である。
【0043】
前記エアロゲルシートの製造装置100は、図2に示されているように、ブランケット10がロール状に巻回された供給ローラ110と、供給ローラ110に巻回されたブランケット10を一側から他側に搬送するコンベアベルト120と、コンベアベルト120に位置したブランケット10の表面に、(a)ステップで製造したシリカゾル20を噴射して含浸させるシリカゾル供給部材130と、コンベアベルト120に位置したブランケット10の表面に、(b)ステップで製造したゲル化用触媒30を噴射してシリカゾルをゲル化させる触媒供給部材140と、コンベアベルト120によって他側まで搬送されたブランケット10をロール状に巻回して回収する回収ローラ150と、を含む。
【0044】
このようなエアロゲルシートの製造装置100は、供給ローラ110によって巻回されたブランケット10が供給されると、コンベアベルト120が、供給ローラ110によって供給されたブランケット10を一側から他側まで搬送させ、回収ローラ150がさらにブランケット10を巻回して回収する。この際、シリカゾル供給部材130は、コンベアベルト120によって搬送されるブランケット10の表面に、(a)ステップで製造されたシリカゾル20を噴射してシリカゾルを含浸させ、また、触媒供給部材140は、シリカゾルが含浸されたブランケット10の表面にゲル化用触媒30を噴射してシリカゾルをゲル化させることができる。
【0045】
ここで、コンベアベルト120には、ブランケット10に噴射されたシリカゾル20およびゲル化用触媒30の厚さを均一に調節するスクレーパ160が含まれる。すなわち、スクレーパ160は、ブランケット10の表面に噴射されたシリカゾル20の厚さを調節する第1スクレーパ161と、ブランケット10の表面に噴射されたゲル化用触媒30の厚さを調節する第2スクレーパ162と、を含む。
【0046】
すなわち、第1スクレーパ161と第2スクレーパ162は同一の形態を有し、コンベアベルト120の上面に上下方向に高さ調節可能に設けられて、シリカゾル20およびゲル化用触媒30の厚さを均一に調節する。
【0047】
以下、エアロゲルシートの製造装置100を用いた(c)シリカゾル噴射ステップおおよび(d)ゲル化用触媒噴射ステップを詳細に説明する。
【0048】
(c)シリカゾル噴射ステップ
(c)シリカゾル噴射ステップでは、ブランケット(blanket)の表面に、(a)ステップで製造したシリカゾルを噴射して含浸させる。すなわち、(a)ステップで製造したシリカゾル20をシリカゾル供給部材130に注入して貯蔵する。次に、ブランケット10がコンベアベルト120によってシリカゾル供給部材130の下部まで搬送されると、シリカゾル供給部材130を介してシリカゾル20を噴射してブランケット10の表面に含浸させる。
【0049】
この際、ブランケット10に噴射されたシリカゾル20は、コンベアベルト120に設けられた第1スクレーパ161を通過しながら均一な厚さを有することになる。すなわち、第1スクレーパ161は、所定厚さ以上のシリカゾル20は通過しないように遮断することで、シリカゾル20の厚さを均一に調節することができる。
【0050】
(d)ゲル化用触媒噴射ステップ
(d)ゲル化用触媒噴射ステップでは、(c)ステップによりシリカゾルが含浸されたブランケット10の表面にゲル化用触媒30を噴射することで、シリカゾルをゲル化させる。すなわち、(b)ステップで製造したゲル化用触媒30を触媒供給部材140に注入して貯蔵する。次に、シリカゾルが含浸されたブランケット10がコンベアベルト120によって触媒供給部材140の下部まで搬送されると、触媒供給部材140を介してゲル化用触媒30をブランケット10の表面に噴射することで、シリカゾルをゲル化させることができる。
【0051】
ここで、触媒供給部材140は、貯蔵されたゲル化用触媒30を設定された速度で噴射し、設定された時間放置することで、シリカゾルを安定してゲル化させる。すなわち、触媒供給部材140は、ブランケット10の表面にゲル化用触媒30を0.035~0.012L/minの速度で噴射し、8~12分間放置することで、シリカゾルを徐々にゲル化させる。
【0052】
特に、触媒供給部材140は、図6に示されているように、ブランケット10に含浸されたシリカゾル20の密度に応じて、ゲル化用触媒30の噴射速度を異ならせてシリカゾルのゲル化を均一に調節することができる。
【0053】
すなわち、図6を参照すると、(1)シリカゾルの密度が40kg/m3である場合に
は、ゲル化用触媒30の噴射速度は0.035L/minに調節する。この際、ブランケット10に含浸されたシリカゾル20の含量は30wt%であり、熱伝導度は14.9mW/mKである。
【0054】
(2)シリカゾルの密度が60kg/m3である場合には、ゲル化用触媒30の噴射速
度は0.017L/minに調節する。この際、ブランケット10に含浸されたシリカゾル20の含量は38wt%であり、熱伝導度は14.1mW/mKである。
【0055】
(3)シリカゾルの密度が80kg/m3である場合には、ゲル化用触媒30の噴射速
度は0.014L/minに調節する。この際、ブランケット10に含浸されたシリカゾル20の含量は38wt%であり、熱伝導度は13.6mW/mKである。
【0056】
(4)シリカゾルの密度が100kg/m3である場合には、ゲル化用触媒30の噴射
速度は0.012L/minに調節する。この際、ブランケット10に含浸されたシリカゾル20の含量は55wt%であり、熱伝導度は13.0mW/mKである。
【0057】
このように、シリカゾルの密度が増加するほど、ゲル化用触媒の噴射速度を減少させる。これにより、シリカゾルの安定したゲル化を誘導することができる。
【0058】
一方、シリカゾルがゲル化したブランケット10は回収ローラ150によってロール状に巻回されて回収され、回収されたブランケット10がエージングステップ、表面改質ステップ、および乾燥ステップを経ることで、エアロゲルシートが完成される。この際、反応容器170を用いる。
【0059】
図3は本発明による反応容器170を示した図である。
【0060】
すなわち、反応容器170は、ロール状に回収されたブランケット10を密閉されるように収容する収容空間171を有し、一端に前記収容空間と連結される注入口172が形成され、他端に前記収容空間171と連結される排出口173が形成される。
【0061】
以下、反応容器170を用いて、(e)ブランケットエージングステップ、(f)ブランケット表面改質ステップ、および(g)ブランケット乾燥ステップを説明する。
【0062】
(e)ブランケットエージングステップ
(e)ブランケットエージングステップでは、シリカゾルがゲル化したブランケットをエージングする。すなわち、反応容器170の収容空間171に、(d)ステップでシリカゾルがゲル化した複数のブランケット10を収容した後、反応容器170の収容空間171を70℃に加熱した状態で50分間エージングすることで、ブランケット10の組織を均一化させる。
【0063】
ここで、(e)ブランケットエージングステップでは、反応容器170でエージングする前に、常温(または25℃)で10分間放置してからエージングを行う。すなわち、シリカゾルの安定したゲル化を誘導してからエージングを行うことで、ブランケット10の組織をさらに均一化することができる。
【0064】
(f)ブランケット表面改質ステップ
(f)ブランケット表面改質ステップでは、エージングされたブランケット10にコーティング液を噴射して表面を改質する。すなわち、(f)ブランケット表面改質ステップでは、エタノールとアンモニア水(NH4OH)を混合してコーティング液を製造する。
次に、ブランケット10が挿入されている反応容器170の注入口172を介してコーティング液を収容空間171に注入してブランケット10の表面を改質する。この際、コーティング液は、(c)ステップでブランケット(blanket)の表面に含浸されたシリカゾルの1.6倍の量で噴射し、反応容器170は70℃の高温で1時間エージングしてHMDS(Hexamethyldisilazane)を用いてブランケット10の表面を改質する。
【0065】
一方、HMDS(Hexamethyldisilazane)は、ブラケットの表面を疎水性に変化させるために用いる。
【0066】
(g)ブランケット乾燥ステップ
(g)ブランケット乾燥ステップでは、表面が改質されたブランケット10を乾燥してエアロゲルシートを完成する。この際、(g)ブランケット乾燥ステップでは、反応容器170にブランケット10が収容された状態で、超臨界乾燥を行う。すなわち、(g)ブランケット乾燥ステップは、表面改質されたブランケット10を、28℃および70barの環境で二酸化炭素を10分間70L/minの速度で注入して乾燥する一次乾燥ステップと、1時間20分間50℃に昇温させて乾燥する二次乾燥ステップと、さらに50℃および150barの環境で二酸化炭素を20分間0.7L/minの速度で注入して乾燥する三次乾燥ステップと、20分間休止した後、二酸化炭素を20分間0.7L/minの速度で注入して乾燥する四次乾燥ステップと、を含む。このような乾燥ステップを行うことで、ブランケット10の乾燥率を高めることができる。
【0067】
一方、(g)ブランケット乾燥ステップの三次乾燥では、二酸化炭素とブランケット10の化学反応によって反応容器170内にエタノールが発生し、この反応容器170に発生したエタノールは、排出口173を介して排出させて回収する。
【0068】
そして、(g)ブランケット乾燥ステップは、四次乾燥の後、二酸化炭素を2時間排出する排出ステップを含み、これにより、ブランケット10に緩やかな環境変化を誘導してブランケット10の組織を均一化する。
【0069】
このような本発明によるエアロゲルシートの製造方法によりエアロゲルシートを製造することで、組織を均一化することができるため、断熱性および耐久性を高めることができる。
【0070】
一方、図7に示されたように、本発明により製造されたエアロゲルシート(実施例)と、従来の製造方法により製造されたエアロゲルシート(比較例)とは、気孔分布度において差がある。
【0071】
すなわち、図6を参照すると、本発明のエアロゲルシート(実施例1)は、シリカゾルの密度が40kg/m3である場合に、ゲル化用触媒30の噴射速度は0.035L/m
inに調節する。この際、ブランケット10に含浸されたシリカゾル20の含量は30wt%であり、熱伝導度は14.9mW/mKである。
【0072】
従来のエアロゲルシート(比較例)は、シリカゾルの密度が40kg/m3である場合
に、ゲル化用触媒の噴射速度は0.035L/minに調節する。この際、ブランケット10に含浸されたシリカゾルの含量は27wt%であり、熱伝導度は18mW/mKであ
る。
【0073】
ここで、本発明のエアロゲルシート(実施例)と従来のエアロゲルシート(比較例)は、シリカゾルの含量と熱伝導において差がある。特に、本発明のエアロゲルシートは、エアロゲル密度に応じて触媒投入速度を異ならせている。
【0074】
したがって、本発明により製造されたエアロゲルシート(実施例)は、従来のエアロゲルシート(比較例)に比べてエアロゲルの気孔が均一に分布されていることが分かる。
【0075】
そして、本発明のエアロゲルシート(実施例)は、図4および図5に示されているように、ブランケットにシリカゾルが均一に含浸されていることが分かる。
【0076】
本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述の特許請求の範囲により明らかになり、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出される様々な実施形態が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7